JP3665932B2 - 感熱記録体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐光性に優れると共に、白紙外観性および発色性が良好で、且つカス付着やスティッキングが防止された感熱記録体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に感熱記録体は、通常無色ないし淡色の塩基性無色染料とフェノール性物質等の有機顕色剤とを、それぞれ微細な粒子に磨砕分散した後両者を混合し、バインダー、充填剤、感度向上剤、滑剤その他の助剤を添加して得た塗液を紙、合成紙、フィルム、プラスチック等の支持体に塗工したもので、熱ペン、感熱ヘッド、ホットスタンプ、レーザー光等の加熱による瞬時の化学反応により発色記録を得るものである。これらの感熱記録体は計測用レコーダー、コンピュータの端末プリンター、ファクシミリ、自動券売機、バーコードラベルなど広範囲の分野に応用されている。
この感熱記録体の一つの用途として、近年各種の見出しラベル、ポスターなどの表示媒体や、チケット等に用いられることが多くなっている。しかしながらこの種の感熱記録体は光や熱に対する安定性が低いため、感熱記録体が長期間に渡って室内光や太陽光に曝されたり高湿条件下に置かれると、地肌部が黄変して外観が悪くなったり、記録画像の安定性が損なわれたりするため、結果的に感熱記録体の商品イメージも著しく損ねる原因となっていた。
【0003】
感熱記録体の耐光性を向上させる目的で、紫外線遮断効果を持つ無機充填剤を感熱記録層やそれを被覆している保護層中に含有させる方法が特開昭62−18626号公報、特開平6−64324号公報等に記載されている。しかし、紫外線遮断効果を持つ酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機充填剤の場合、紫外線遮断効果は大きいものの可視光領域の透過性が小さく、発色部が隠蔽されて印字濃度が低くなり、これを防ぐために使用量を減少すると、紫外線遮断効果が悪くなり実用的でないといった問題があった。また、酸化セリウムは材料自体が淡黄色に着色しており、感熱記録体の材料としては不適であった。
【0004】
一方、耐光性を向上させる目的で、微粉砕した紫外線吸収剤を感熱記録層および/またはそれを被覆している保護層中に添加する方法(特開昭50−104650号公報、同55−55891号公報、同55−93492号公報、同58−87093号公報など)が開示されている。しかし、感熱記録層に微粉砕した紫外線吸収剤を含有して十分な耐光性を得ようとすれば、紫外線の吸収効率、遮断効率が悪いため、この欠点を補う為に紫外線吸収剤を多量に添加する必要がある。その為このような感熱記録体が高温環境下に置かれると、地肌カブリを生じたり、あるいは記録濃度が低下するなどの新たな欠点を付随し、感熱記録体としての性能を損なうという欠点がある。
また、保護層中に微粉砕した紫外線吸収剤が含まれていても、それが従来提案されている紫外線吸収剤の場合、それらの化合物が比較的低融点であるためか、記録時に感熱ヘッドの加熱で紫外線吸収剤が容易に溶け、カス、スティックが発生し、長時間の印字によって感熱ヘッドが汚れるといった問題が引き起こされる。それに加えて、紫外線吸収剤が可塑剤や油脂類等の影響によって保護層より溶出するため、保護層の機能が失われ、結果として記録画像の保存性が低下してしまう。また、水溶性の紫外線吸収剤を用いた場合については、特開平7−17131号公報に記載されているように、水溶性の紫外線吸収剤の可溶化にあたりナトリウム塩等のイオンを形成させているため、サーマルヘッドを電気化学的に摩耗させるという欠点があった。
【0005】
この他、マイクロカプセル化した紫外線吸収剤を保護層に添加して、保存安定性と耐光性に優れた感熱記録体を得ることが、特開平5−155134号公報などに提案されている。しかし、この方法では紫外線吸収剤のマイクロカプセル化が必要となり、紫外線の吸収効率を上げるためにはマイクロカプセルを微細化させる必要があるが、合成上最小値には限界がある。従って十分な耐光性を発現させるためには紫外線吸収剤内包マイクロカプセルの必要量が多くなりコストアップを招く。また、紫外線吸収剤内包マイクロカプセルは熱、圧力に対して安定でなければならないため膜厚を厚くしなければならず、これもコストアップの原因となる。
【0006】
最近、紫外線吸収性のベンゾトリアゾール分子あるいはベンゾフェノン分子を高分子化した紫外線吸収剤を用いた感熱記録体が、特開平7−314894、特開平9−221487、特開平9−268183、特開平9−314496、特開平10−71770、特開平10−36371号公報等に提案されている。さらに、紫外線吸収性モノマーとこのモノマーと共重合可能なビニル化合物モノマーと、架橋性モノマーとの乳化共重合物からなる紫外線吸収剤を感熱記録層に含有させた感熱記録体が特開平6−73368号公報等に記載されている。しかし、これらの特許に記載の化合物を用いた場合でも、材料自体の色により感熱記録体の白紙外観性が劣る、感熱層に用いた場合、十分な効果を得るためには多量に添加せねばならず記録濃度が低下する、化合物中に残存する乳化剤の影響で発色阻害が生じる、保護層に用いた場合、可塑剤や油脂類に溶けやすいためバリアー性が劣る、耐熱性が劣るためカス・スティックが発生する等、いずれかの問題が見うけられ、各品質のバランスのとれた紫外線吸収剤は依然として得られていない。
以上のように、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤を用いての感熱記録体への耐光性の付与については古くから行われているものの、未だ満足な方法が開発されていないというのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、耐光性に優れると共に、白紙外観性および発色性が良好で、且つカス付着やスティッキングが防止された感熱記録体を提供することを課題とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の感熱記録体を得た。すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、支持体上に無色ないし淡色の塩基性無色染料と有機顕色剤とを主成分とする感熱記録層を設けた感熱記録体において、紫外線吸収性モノマー(a)、このモノマーと共重合可能なビニル化合物モノマー(b)、親水性モノマー(c)、およびこれらのモノマー成分の総量100重量部に対し、0.5〜5重量部の反応性乳化剤(d)を使用して乳化重合して得られたガラス転移温度(Tg)が50 \UL\ また、請求項2記載の発明は、水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を構成する前記紫外線吸収性モノマーが、一般式(I)および/または一般式(II)で示される化合物であることを特徴とするものである。
【0009】
【化3】
【0010】
(R1:水素、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基、R2:炭素数1〜10のアルキレン基またはオキシアルキレン基、あるいは存在しない(この場合はXがベンゼン環に直接結合する)、X:エステル結合、アミド結合、エーテル結合またはウレタン結合、R3:水素または低級アルキル基)
【0011】
【化4】
【0012】
(R4:水素、ハロゲンまたはメチル基、R5:水素または炭素数1〜6の炭化水素基、R6:炭素数1〜10のアルキレン基、またはオキシアルキレン基、あるいは存在しない(この場合はYがベンゼン環に直接結合する)、Y:エステル結合、アミド結合、エーテル結合またはウレタン結合、R7:炭素数1〜8のアルキレン基、アミノアルキレン基または側鎖に水酸基を有するアルキル基、あるいは存在しない(この場合はYとCが直接結合する)、R8:水素または低級アルキル基)
請求項3記載の発明は、水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を構成する前記反応性乳化剤が重合性ビニル化合物であることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱記録体に含有される水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を構成する紫外線吸収性モノマー(a)としては、紫外線吸収性を示すモノマーであればいずれも使用しうるが、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基が置換していてもよい2−ヒドロキシベンゾフェノン基または炭素数1〜6の炭化水素基が置換していてもよい2−ヒドロキシベンゾトリアゾール基が結合した重合性ビニル化合物であり、その具体例としては下記の(1)または(2)のものを挙げることができる。また、下記の(1)と(2)とを併用することもできる。もちろん、これらに限定されるものでなく、更にこれら紫外線吸収性モノマーを二種以上併用することもできる。
(1)一般式(I)で示される2−ヒドロキシベンゾフェノン誘導体。
【0014】
【化5】
【0015】
(R1:水素、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基、R2:炭素数1〜10のアルキレン基またはオキシアルキレン基、あるいは存在しない(この場合はXがベンゼン環に直接結合する)、X:エステル結合、アミド結合、エーテル結合またはウレタン結合、R3:水素または低級アルキル基)
一般式(I)で表されるモノマーは、例えば、BP−R2−OH(BP:2−ヒドロキシベンゾフェノン骨格)等の官能基を有する紫外線吸収性化合物と、CH2=CR3−COOH等の官能基を有する重合性ビニル化合物とを反応させ、エステル結合X(−COO−)により重合性ビニル化合物中に紫外線吸収性化合物残基を結合、導入する事により得られる。
前記一般式(I)で表されるモノマー化合物の具体例としては、2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−メチル−2−アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0016】
(2)一般式(II)で表される2−ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体。
【0017】
【化6】
【0018】
(R4:水素、ハロゲンまたはメチル基、R5:水素または炭素数1〜6の炭化水素基、R6:炭素数1〜10のアルキレン基、またはオキシアルキレン基、あるいは存在しない(この場合はYがベンゼン環に直接結合する)、Y:エステル結合、アミド結合、エーテル結合またはウレタン結合、R7:炭素数1〜8のアルキレン基、アミノアルキレン基または側鎖に水酸基を有するアルキル基、あるいは存在しない(この場合はYとCが直接結合する)、R8:水素または低級アルキル基)
前記一般式(II)で表されるモノマー化合物の具体例としては、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシ)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシ)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシ)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(アクリロイルオキシ)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(アクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(アクリロイルオキシブチル)フェニル〕−5−メチルベンゾトリアゾール、〔2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(アクリロイルオキシエトキシカルボニルエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0019】
また、上記の紫外線吸収性モノマーと共重合可能な他のビニル化合物モノマー(b)(以下、共重合モノマーと呼ぶ)としては、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、スチレンなどがあり、この場合のアルキル基の炭素数は特に制約されないが、好ましくは1〜18である。これら化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
(1)アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等。
(2)アルキルビニルエーテル。
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等。
(3)アルキルビニルエステル。
酢酸ビニル、エチルビニル、ブチルビニル、2−エチルヘキシルビニル等。
共重合モノマーの共重合割合としては、全モノマーの5〜69重量%を使用する。
【0020】
本発明では、さらに親水性モノマー(c)を用いることにより、耐溶剤性および親水性樹脂との相溶性が向上し、耐久性のある紫外線吸収性高分子被膜が形成される。
親水性モノマーとしては、親水性の反応性官能基を有するモノマーであればいずれも使用しうるが、好ましくはヒドロキシ基含有モノマー、カルボン酸含有モノマーなどであり、その具体例としては以下のものが挙げられる。
(1)ヒドロキシ基含有モノマー。
2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等。
(2)カルボン酸基含有モノマー。
アクリル酸、メタクリル酸等。
親水性モノマーの共重合割合としては、全モノマーの1〜20重量%が好適である。20重量%を越える場合では、紫外線吸収性モノマーとの共重合性の問題で重合しにくい。
【0021】
本発明で用いられる水性エマルション型高分子紫外線吸収剤は、水系媒体中で乳化剤と共に各モノマーを混合し、水溶性重合開始剤を用いて乳化重合することにより得られる。
乳化共重合物は、皮膜の耐熱性等の面からある程度高めのガラス転移温度(Tg)を有することが望ましく、Tgが50℃以上であることにより、良好な皮膜の耐熱性(耐スティッキング性)が得られる。好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。本発明では、乳化共重合するモノマーの組成を調整することにより、Tgが50℃以上の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤が容易に得られる。
【0022】
反応性乳化剤としては、従来から乳化重合で使用されているラジカル重合可能な反応性乳化剤であればいずれも使用しうるが、重合性ビニル化合物がより好ましい。反応性乳化剤を単独に限らず二種類以上混合して用いることもできる。これらはエマルション重合時に得られる共重合体に取り込まれ、非反応性の乳化剤で一般に見られる被膜形成後の被膜の耐水性、透明性への悪影響を防止できる。具体的には、ラテムルS−180、S−180A、S−120A(花王(株))、アクアロンHS−10、HS−20、RNシリーズ(第一工業製薬(株))、エレミノールJS−2(三洋化成工業(株))、アデカリアソープNE−30(旭電化工業(株))、等が挙げられる。感熱記録体の発色性の点から、アニオン性の反応性乳化剤が好ましく用いられる。反応性乳化剤の使用量は、モノマー総量100重量部に対し、0.5〜5重量部が好適である。5重量部を越えて用いた場合、塩基性無色染料への影響が大きく発色阻害等の原因となるとともに、皮膜の耐水性が劣る傾向がみられる。
一般に、乳化に用いられる乳化剤は、乳化される材料の周りに接触して取り囲む形で存在するものが多い。これに対し本発明で用いられる反応性乳化剤は、乳化される材料と反応してそのものの一部になってしまうため、乳化剤として形が残らず、それゆえ本発明の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤はソープフリーな状態となり、発色材料に悪影響を及ぼすことがほとんどないという利点を有するものと考える。
【0023】
重合開始剤としては、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩類などの過酸化物および2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラハイドロピリミジン−2−イル)プロパン〕塩酸塩等のアゾ系水溶性重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤の使用量は、対モノマー当たり0.05〜1重量%が好適である。
【0024】
本発明で用いられる水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を構成する乳化共重合体は、内部架橋型の重合体粒子となっており、平均粒径100nmより大きく500nm以下程度のものが使用でき、好ましくは180nm以上、また、好ましくは400nmより小さく、さらに好ましくは300nm以下のものが使用できる。本発明の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤は、上記の各成分を用いて乳化重合を行うことにより得られるが、その具体的な調製例を下記に示す。
【0025】
(調製例1)
アクアロンHS−20(第一工業製薬(株)製)1g、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロキシ)エトキシベンゾフェノン50g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル10g、メチルメタクリレート40g、イオン交換水200gからなるモノマー混合物301gを調製し、このうち100gを、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に加え、70℃で30分間乳化を行った。次いで重合開始剤として2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩0.5gをイオン交換水33gで溶解した水溶液を前記反応容器に添加し、直ちにモノマー混合物の残量を90分間にわたって反応容器内に連続的に滴下し、70℃で重合を行った。モノマー混合物の滴下終了後、70℃で90分間熟成し、調製例1の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を得た。
以下、同様にして、下記表1に示すように紫外線吸収性モノマー、親水性モノマー、共重合モノマー、反応性乳化剤、重合開始剤を変えて調製例2〜4の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を得た。表中の括弧内の数値は、各成分の使用量を示す。尚、紫外線吸収モノマーの使用量は、全て50gで統一した。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明は、支持体上に塩基性無色染料と有機顕色剤とを含有する感熱記録層、および必要に応じて感熱記録層と支持体の間に下塗り層、感熱記録層の上に保護層、感熱記録層と保護層の間に中間層を設けた感熱記録体において、少なくともいずれか一層中に、上記の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤の少なくとも一種を含有させることによって、従来提案されている紫外線吸収剤および紫外線遮断剤に比べて、耐光性、白紙外観性、発色性、スティッキングや印字カス等の性能が顕著に改善されるものである。また、本発明の感熱記録体が保護層を有し、かかる保護層中に上記の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を含有する場合、従来の紫外線吸収剤等を含有する場合と比べ、上記性質の他バリアー性も顕著に改善されるものである。
すなわち、本発明の水性エマルション型高分子紫外線吸剤は、分子中に有する多量の紫外線吸収性モノマーにより紫外線吸収能が高く、少量使用で良好な耐光性を示すため、大量配合による感熱記録体の発色濃度低下や地肌カブリが避けられる。また、乳化剤が反応性であることにより発色材料に及ぼす影響が小さいため、良好な発色性および白紙外観性が得られる。さらに、親水性モノマーにより水性バインダーとの相溶性が良好であり、可塑剤、油および有機溶剤等の溶媒に対する溶解性が低いため、保護層に配合する場合は紫外線吸収剤の溶出に起因するバリアー機能の低下をきたすことが無く、耐薬品性に優れている。加えて、ガラス転移点(Tg)が高い場合は耐熱性が良好となり、保護層に使用してもサーマルヘッドでの記録時に溶融によるスティッキングやヘッドカスを発生することが無く、記録走行性にも優れた改善効果が得られる。また、一般に、紫外線吸収剤を感熱記録体に用いる場合には、平均粒径が大きい程画像の白化カブリ(画像が白っぽくなる、濁る、霞がかったような状態になる等の状態)が生じ易いため、平均粒径は小さい程良いとされている。しかし、本発明で用いられる水性エマルション型高分子紫外線吸収剤は、平均粒径が比較的大きいものを使用した場合でも、白化カブリの防止された鮮明な記録画像が得られる。この理由は明確には解明されていないが、本発明で用いられる水性エマルション型高分子紫外線吸収剤は、構成要素の一つに親水性モノマーを使用しているため、水性バインダーとの相溶性が高く、皮膜となった時に良好な透明性を示すことによるのではないかと推測される。
【0028】
本発明では、かかる特定の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を、感熱記録層、および必要により設けた下塗り層、中間層、保護層のいずれか一層に含有させることにより所望の効果が得られるものであるが、二層以上に含有せしめることもでき、これら紫外線吸収剤を含有せしめる層の組合せは特に制限されるものではない。また、感熱記録層、下塗り層、中間層、保護層は各一層のみに制限されることなく、それぞれ複数層設けることもできる。
なお、紫外線吸収剤の感熱記録体への使用量および含有せしめる箇所(層)は、その感熱記録体に要求される性能品質に依るものであるが、紫外線の吸収効率の点では、下塗り層よりは感熱記録層、感熱記録層よりは保護層というように、当該紫外線吸収剤をより外層に配合する方が優れている。
【0029】
本発明の紫外線吸収剤の下塗り層への使用量については、下塗り層の乾燥重量に対して0.1〜80重量%を含有させるのが好ましい。より好ましくは1〜50重量%である。使用量が0.1重量%未満であると、十分な耐光性が得られにくい。また、使用量が80重量%を越えると、支持体と下塗り層の結着性が低下し、その結果感熱記録体としての表面強度が低下するので、セロピック強度、印刷適性等が要求される用途には不適当である。
本発明の紫外線吸収剤の感熱記録層への使用量については、感熱記録層の乾燥重量に対して0.1〜25重量%を含有させるのが好ましい。より好ましくは1〜20重量%である。使用量が0.1%未満であると、十分な耐光性が得られにくい。また、使用量が25重量%を越えると発色濃度の低下や地肌カブリへの影響が大きい。
本発明の紫外線吸収剤の保護層への使用量については、保護層の乾燥重量に対して、0.1〜30重量%を含有させるのが好ましい。より好ましくは、1〜25重量%である。使用量が0.1重量%未満であると、十分な耐光性が得られにくい。また、使用量が30重量%を越えるとバリアー性が不充分となる傾向がある。
【0030】
本発明において、感熱記録層で用いられる塩基性無色染料としては、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系、フルオラン系、アザフタリド系、フルオレン系等のロイコ染料が好ましく、以下にこれらの具体例を示す。これらの塩基性無色染料は、単独又は二種以上を混合して使用することもできる。
【0031】
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド
〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド
〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0032】
<フルオラン系ロイコ染料>
3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−メチルアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアニリノフルオラン
【0033】
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−p−メチルアニリノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン
3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン
3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン
【0034】
3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン
3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン
3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔c〕フルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−フルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン
【0035】
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−クロロフルオラン
3−ジブチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン
3−ジブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−p−メチルアニリノフルオラン
3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン
【0036】
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン
3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン
3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン
3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−エチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−エチル−N−キシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン
3−(N−エチル−p−トルイディノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
【0037】
3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−クロロ−7−アニリノフルオラン
3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−(N−エチル−N−エトキシプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン
3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン
2−(4−オキサヘキシル)−3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
2−(4−オキサヘキシル)−3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
2−(4−オキサヘキシル)−3−ジプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
2−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−メトキシ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−クロロ−3−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−クロロ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
【0038】
2−ニトロ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−アミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−フェニル−6−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−ベンジル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2−ヒドロキシ−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
3−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン
2,4−ジメチル−6−[(4−ジメチルアミノ)アニリノ]−フルオラン
【0039】
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6´−トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3´−フタリド〕
3,6,6´−トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3´−フタリド〕
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド
3,3−ビス−〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド
3,3−ビス−〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド
【0040】
<その他>
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド
3−(4−シクロヘキシルエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド
3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド
3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(3´−ニトロ)アニリノラクタム
3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4´−ニトロ)アニリノラクタム
1,1−ビス−〔2´,2´,2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジニトリルエタン
1,1−ビス−〔2´,2´,2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2−β−ナフトイルエタン
1,1−ビス−〔2´,2´,2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジアセチルエタン
ビス−〔2,2,2´,2´−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−メチルマロン酸ジメチルエステル
【0041】
本発明の感熱記録層で用いられる有機顕色剤としては、特に制限されるものではないが、例えば下記の如き公知の顕色剤が挙げられる。
活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−n−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシ−4’−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシフェニル−4’−ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4’−メチルフェニルスルホン、
【0042】
特開平8−59603記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、2,2’−チオビス(3−tert−オクチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、
【0043】
国際公開WO97/16420号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物等のフェノール性化合物、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p−クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス〔4−(n−オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛〕2水和物、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸、4−〔3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸の芳香族カルボン酸、およびこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。これらの有機顕色剤は、単独又は二種以上を混合して使用することもできる。
この他、特開平10−258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を使用することもできる。
【0044】
本発明では、感熱記録発色感度を向上させるために、感熱記録層中に感度向上剤を含有させることができる。感度向上剤としては、従来から感熱記録体で使用されている化合物であればいずれも使用しうる。例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアマイド、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ−p−トリルカーボネート、p−ベンジルビフェニル、フェニルα−ナフチルカーボネート、1,4−ジエトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、β−ベンジルオキシナフタレン、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、O−キシレン−ビス−(フェニルエーテル)、4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル、p−トルエンスルホンアマイド、o−トルエンスルホンアマイド等を添加することができるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの感度向上剤は、単独または二種以上混合して使用してもよい。
【0045】
本発明においては、主に発色記録画像の保存性向上のために、感熱記録層中に画像安定剤を含有させても良い。このような画像安定剤としては、例えば1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、および4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、4,4′−ブチリデン(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチル−4,4′−スルホニルジフェノールなどのフェノール系の化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4’−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、および4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸などのイソシアヌル酸化合物から選ばれた一種以上を含むものを用いることができる。これらの画像安定剤は、単独または二種以上を混合して使用することもできる。
【0046】
本発明の感熱記録体を製造するために、塩基性無色染料及び有機顕色剤を支持体上に結合支持させる場合、従来公知のバインダーを適宜用いることができる。その具体例としては、重合度が200〜1900の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、並びにエチルセルロース、アセチルセルロースのようなセルロース誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロールおよびそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等が挙げられる。これらの高分子物質は水、アルコール類、ケトン類、エステル類、炭化水素等の溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用し、要求品質に応じて併用することも出来る。
【0047】
本発明における感熱記録体で使用することのできる充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、合成ケイ酸アルミニウム、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカなどの無機充填剤、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン等の有機充填剤などが挙げられる。
このほかに、脂肪酸金属塩などの離型剤、ワックス類などの滑剤、グリオキザールなどの耐水化剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等、感熱記録体に慣用の従来公知の材料を適宜使用することができる。
【0048】
本発明の感熱記録層用塗液の調製方法は特に限定されるものではないが、一般に記録体に使用する塩基性無色染料及び有機顕色剤の量、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能および記録適性に従って決定され、通常、塩基性無色染料の1部に対して、有機顕色剤1〜8部、充填剤1〜20部を使用し、バインダーは全固形分中5〜25%が適当である。これらの塩基性無色染料、有機顕色剤並びに必要に応じて添加する材料はボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダー及び必要に応じて本発明の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤等、各種の添加材料を加えて塗液とする。
感熱記録層の形成方法については特に限定されず、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、バーコーター、リバースロールコーター等により上記組成から成る塗液を支持体上に塗布、乾燥することによって目的とする感熱記録体が得られる。
【0049】
本発明の感熱記録体において、感熱記録層と支持体との間に下塗り層を設ける場合、このような下塗り層は通常、バインダーと充填剤を含有するものである。バインダー、充填剤および各種助剤としては、感熱記録層の構成成分として例示された材料を要求品質に応じて適宜使用することができる。なお、焼成カオリンや、特公平3−54074号公報記載の殻を有する微小中空球粒子や特開平10−258577号公報記載のお椀型状中空重合体粒子など従来感熱記録体の下塗り層に用いられている公知の中空粒子は断熱効果が高く、下塗り層の充填剤としてより好ましい。本発明では、必要に応じ、前記の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を下塗り層に適宜配合することができる。
下塗り層用の塗液の調整方法については特に限定されるものではなく、一般に水を分散媒体とし、バインダー、充填剤の他に、必要に応じて添加される前記特定の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤、消泡剤等を混合して調製される。下塗り層の形成方法については特に限定されず、例えば前記感熱層の形成方法の如き各種の塗布方法により下塗り層用塗液を支持体上に塗布・乾燥するなどの方法で形成される。
【0050】
本発明の感熱記録体において、感熱記録層の上に保護層を設ける場合、このような保護層は通常、水溶性または水分散性バインダーと充填剤を含有するものである。バインダー、充填剤および各種助剤としては、感熱記録層の構成成分として例示された材料を要求品質に応じて適宜使用することができる。この時架橋剤を添加して、保護層に耐水性を付与することがより好ましい。本発明では、必要に応じ、前記の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を保護層に適宜配合することができる。
保護層用塗液の調製方法については特に限定されるものではなく、一般に水を分散媒体とし、水性バインダーの他に、必要に応じて添加される前記特定の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤、充填剤および滑剤などを混合して調製される。保護層の形成方法については特に限定されず、例えば前記の如き各種の塗布方法により保護層用塗液を感熱記録層上に塗布・乾燥するなどの方法で形成される。
【0051】
本発明の感熱記録体において、感熱記録層と保護層の間に中間層を設ける場合、このような中間層は通常、バインダーと充填剤を含有するものである。バインダー、充填剤および各種助剤としては、感熱記録層の構成成分として例示された材料を要求品質に応じて適宜使用することができる。この時架橋剤を添加して、中間層に耐水性を付与することもできる。本発明では、必要に応じ、前記の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を中間層に適宜配合することができる。
中間層用塗液の調製方法については特に限定されるものではなく、一般に水を分散媒体とし、水性バインダーの他に、必要に応じて添加される前記特定の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤、充填剤および滑剤などを混合して調製される。中間層の形成方法については特に限定されず、例えば前記の如き各種の塗布方法により中間層用塗液を感熱記録層上に塗布・乾燥するなどの方法で形成される。
本発明の感熱記録体に使われる支持体としては、紙(酸性紙、中性紙)、再生紙、プラスティックフィルム、合成紙、不織布、金属蒸着シート等、感熱記録層および必要に応じて設けたその他の層を保持できるものであればいずれも使用しうる。
【0052】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって説明する。尚、説明中、部は、特に断わらない限り、重量部を示す。
【0053】
〔実施例1、4〕
実施例1、4は、保護層に本発明の紫外線吸収剤を使用した例である。紫外線吸収剤として、調製例1、4の化合物をそれぞれ単独で使用した。
(1)感熱記録層の形成下記の組成物の各液をサンドグライダーで平均粒子径1ミクロンまで磨砕した。
A液(顕色剤分散液)
2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン 6.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 18.8部
水 11.2部
B液(塩基性無色染料分散液)
3−ジ−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(ODB−2) 2.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 4.6部
水 2.6部
C液(感度向上剤分散液)
パラベンジルビフェニル 4.0部
10%ポリビニルアルコール水溶液 5.0部
水 3.0部
次いで下記の割合で分散液を混合、撹拌し、感熱記録層用塗液とした。
A液 36.0部
B液 9.2部
C液 12.0部
カオリンクレー(50%分散液) 12.0部
上記塗液を50g/m2のLBKP80%、NBKP20%より構成される上質紙の片面に塗布量6.0g/m2になるように塗布乾燥して感熱記録層を得た。
(2)保護層の形成
下記の割合で分散液を混合、撹拌し、保護層用塗液とした。
10%ポリビニルアルコール水溶液 60.0部
水酸化アルミニウム(50%分散液) 30.0部
ステアリン酸亜鉛 10.0部
水 50.0部
調製例1、4の化合物(30%) 20.0部
上記塗液を感熱記録層上に塗布量4.0g/m2になるように塗布乾燥して保護層を得た。
このシートをスーパーカレンダーでベック平滑度が200〜600秒となるよう処理し、感熱記録体を得た。
【0054】
〔実施例5〕
実施例5は、感熱記録層に本発明の紫外線吸収剤を使用した例である。実施例1の感熱層の形成において、感熱記録層用塗液に調製例4の紫外線吸収剤(30%)を10.0部加え、保護層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0056】
〔実施例6〕
実施例6は、下塗り層と保護層に本発明の紫外線吸収剤を含有させた例である。実施例4において、支持体と感熱層の間に紫外線吸収剤として調製例2を含む下塗り層を下記のようにして設けた他は、実施例4と同様にして感熱記録体を得た。
下塗り層の形成 10%ポリビニルアルコール水溶液 150部 焼成カオリン(40%分散液) 250部 調製例4の化合物(30%) 50部上記の割合で材料を混合、撹拌し、下塗り層用塗液とした。この塗液を50g/m2 のLBKP80%、NBKP20%より構成される上質紙の片面に塗布量5.0g/m2となるように塗布乾燥して、下塗り層を形成した。
【0058】
〔比較例1〕
比較例1は、紫外線吸収剤無配合の例である。実施例1の保護層の形成において、紫外線吸収剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
〔比較例2〕
比較例2は、実施例9の感熱記録層の形成において、調製例8の化合物の代わりに、下記表2に示す化合物1(30%)を用いた他は、実施例9と同様にして感熱記録体を得た。なお、表2に記載の化合物はすべて、調製例1に準じて調製した。ここで、化合物1は非反応性の乳化剤を用いた紫外線吸収剤である。
〔比較例3〜5〕
比較例3〜5は、実施例1の保護層の形成において、調製例1の化合物の代わりに、下記表2に示す化合物2、3、4(各30%)を用いた他は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。ここで、化合物2はTgが0℃である紫外線吸収剤である。また、化合物3は親水性モノマーを用いない紫外線吸収剤であり、化合物4は親水性モノマーの代わりに疎水性の架橋性モノマーを用いた紫外線吸収剤である。
【0059】
【表2】
【0060】
〔発色性の評価〕
得られた感熱記録体について、大倉電気社製のTH−PMD(感熱記録紙印字試験機、京セラ社製サーマルヘッドを装着)を用い、印加エネルギー0.42mJ/dotで印字した。記録部の記録濃度を、マクベス濃度計(RD−914、アンバーフィルター使用)で測定した(濃度:Da)。
〔耐光性の評価〕
(1)上記条件で印字した感熱記録体をカーボンアークフェードメータ(東洋精機BH)により12時間処理し、記録部の濃度を上記条件で測定した(濃度:Db)。また、同時に地肌部の濃度を使用フィルターをブルーフィルターに替えて測定した(濃度:Dc)。
(2)下記式により評価を行った。
記録部耐光性(残存率):Db/Da×100=Rd(%)
地肌部耐光性 :Dc
Rdの値が大きい程、記録部の耐光性が良いことを示す。実用的には80%以上が望ましい。また、Dcの値が小さいほど、地肌部の耐光性が良好であることを示す。実用的には0.15以下が望ましい。
【0061】
〔スティッキングの評価〕
得られた感熱記録体を、パナソニック製パナファックスUF−22を使用し、送信モードにて印字し、印字音および印字画像のスティック状態を、官能的に評価した。
印字音が小さく、画像のスティック状態が少ない程望ましい。
〔印字カスの評価〕
得られた感熱記録体を、パナソニック製パナファックスUF−60を使用し、コピーモードでB4版縦縞原稿40枚印字後、サーマルヘッドの印字カス付着状態を目視にて評価した。印字カスは少ない程望ましい。
評価: ○ ほとんど無い、 △ 有る、 × 非常に多い
【0062】
〔バリアー性の評価〕
この評価は、保護層を有する感熱記録体のみに関して行った。得られた感熱記録体の保護層表面に、酢酸エチルをスポイトにて一滴滴下しガーゼを用いて直径約3cmの円状に広げ、1分後の感熱層の発色度合いを目視にて評価した。発色度合いが小さい程望ましい。
上記の結果を表3に示す。なお、表3中の記号「−」は、試験を行っていないことを示す。
【0063】
【表3】
【0064】
前記の表3から明らかなように、本発明の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を用いると、良好な耐光性が示され、発色性、スティッキング、印字カスの発生状態も良好である。特にスティッキングに関しては、感熱記録体印字面最上層に用いる当該紫外線吸収剤のTgが高いほど良好であり、Tgが80℃以上である実施例1、4〜5の方がスティック音が小さく静かである。なお、Tgが70℃〜80℃である実施例2、3のスティッキングの状態は、両者の中間程度である。また、感熱記録体が保護層を有し、該保護層にかかる紫外線吸収剤を用いた場合、優れたバリアー性が示される。一方、紫外線吸収剤無配合の場合、比較例1のように耐光性が非常に劣り、また他の紫外線吸収剤用いた場合、非反応性の乳化剤を使用した比較例2では発色性が劣り、親水性モノマーを含まない比較例4、5ではバリアー性が劣る。また、Tgの低い比較例3ではスティッッキング、印字カスの発生がみられる。このように、本発明の水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を用いることにより、耐光性および発色性が良好で、スティッキング、印字カスの発生が防止された感熱記録体が得られることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、耐光性および白紙外観性、発色性が良好で、スティッキング、印字カスの発生が防止された感熱記録体が提供される。
Claims (3)
- 支持体上に、無色ないし淡色の塩基性無色染料と有機顕色剤とを主成分として含有する感熱記録層を設けた感熱記録体において、紫外線吸収性モノマー(a)、このモノマーと共重合可能なビニル化合物モノマー(b)、親水性モノマー(c)、およびこれらのモノマー成分の総量100重量部に対し、0.5〜5重量部の反応性乳化剤(d)を使用して乳化重合して得られたガラス転移温度(Tg)が50℃以上、平均粒径が100nmより大きく500nm以下である乳化共重合体からなる水性エマルジョン型高分子紫外線吸収剤の少なくとも一種を含有することを特徴とする感熱記録体。
- 前記水性エマルション型高分子紫外線吸収剤を構成する紫外線吸収性モノマーが下記一般式(I)および/または一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の感熱記録体。
- 前記反応性乳化剤が重合性ビニル化合物である請求項1または2記載の感熱記録体。
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