JP3658238B2 - 中性点クランプ型電力変換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は初充電装置を備え3レベルの電圧を出力する中性点クランプ型電力変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
中性点クランプ型電力変換装置は、3レベルの電圧を出力するので高調波を低減できる等の利点があり、大型の交流電動機の駆動に多く用いられている。中性点クランプ型電力変換装置は直流側に、直流電圧を2つに分圧するために直列接続された平滑コンデンサが設けられている。
【0003】
中性点クランプ型電力変換装置を起動する際には平滑コンデンサを予め充電する必要がある。このことは、初充電あるいは初期充電と称されている。平滑コンデンサの電圧が初充電により確立する前に電力変換装置を起動すると、平滑コンデンサに突入電流が流れ焼損することになる。
【0004】
平滑コンデンサの初充電は、トランス、ダイオード整流回路、ヒユーズ等で構成される初充電装置によって行なわれる。初充電装置を構成する部品の異常や中性点クランプ型電力変換装置を構成するダイオードの短絡故障により、平滑コンデンサの初充電ができなくなる。
【0005】
このため、中性点クランプ型電力変換装置を起動する際には、平滑コンデンサの初充電に異常がないかを検出することを必要とする。
【0006】
従来、平滑コンデンサの初充電に異常がないかを検出するには、平滑コンデンサに流れる直流電流を直流電流検出器で検出し、電流検出器の出力に基づき異常を判断する方法が知られている。このことは、例えば特開平8−9647号公報に記載されている。
【0007】
なお、中性点クランプ型電力変換装置における2個の平滑コンデンサの電圧を検出して比較することは、例えば、特開平10ー4626号公報に記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術においては、異常検出に平滑コンデンサに流れる直流電流検出器が必要になり、電力変換装置の小形化および低価格化の点で問題を有する。特に、中性点クランプ型(3レベル)電力変換装置に従来技術を適用した場合には、直流電流検出器が2個必要になり、上述の問題が顕著になる。
【0009】
本発明の目的は、平滑コンデンサの初充電異常を電力変換装置の小形化と低価格化して実現出来る中性点クランプ型電力変換装置
を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴とするところは、初充電開始時から設定時間後における2個の平滑コンデンサのそれぞれの電圧を検出し、両コンデンサ電圧の電圧偏差が第1規定値以上であるときに初充電異常と判断するようにしたことにある。
【0011】
本発明の他の特徴とするところは、初充電開始時から設定時間後における2個の平滑コンデンサのそれぞれの電圧を検出し、両コンデンサ電圧の電圧偏差が第1規定値以上あるいは両コンデンサ電圧の電圧和が第2規定値以下であるときに初充電異常と判断するようにしたことにある。
【0012】
本発明は平滑コンデンサの電圧を検出して初充電開始時から設定時間後における2個の平滑コンデンサの電圧偏差の大きさによって異常判断している。2個の平滑コンデンサの電圧検出器は電圧制御に用いられているものであり、簡単な構成の異常検出回路を付加するだけで異常を検出できる。したがって、平滑コンデンサの初充電異常を、電力変換装置を小型化かつ低価格化して検出できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に本発明の一実施例を示す。
【0015】
図1において、コンバータ1の交流側は電源開閉器7を介して交流電源8(U、V、W)に接続される。コンバータ1の入力電流は電流検出器16により検出される。コンバータ1の直流側にはコンデンサ4a、4bが接続され、コンデンサ4aと4bの直列接続点(以下、中性点と称する)とコンデンサ4aの正側端子およびコンデンサ4bの負側端子がインバータ2に接続される。
【0016】
インバータ2の交流出力が交流電動機3に供給される。交流電動機3には速度検出器27が機械的に連結されている。交流電動機3の電動機電流は電流検出器26により検出される。
【0017】
初充電開閉器9を介して初充電電源10(u,v,w)に一次巻線を接続された初充電トランス71は2個の二次巻線を有する。初充電トランス71の2個の二次巻線にはそれぞれダイオード整流回路72a、72bが接続される。ダイオード整流回路72a、72bの出力端子にそれぞれヒューズ73a,73bが接続される。ヒューズ73a,73bとダイオード整流回路2a、72bの中性点がコンデンサ4a、4bに接続される。
【0018】
初充電装置70は初充電開閉器9、初充電トランス71、2個のダイオード整流回路72a、72bおよびヒューズ73a,73bとで構成される。
【0019】
平滑コンデンサ4a,4bの電圧は直流電圧検出器6a、6bで検出され、加減算器15cに図示の極性で加えられる。加減算器15cは電圧検出器6a、6bで検出したコンデンサ4a,4bの両端電圧を加算し、コンバータ1の出力電圧検出値とする。加減算器15aはコンバータ1の出力電圧を設定する電圧指令設定器11の電圧指令値と加減算器15cの電圧検出値との電圧偏差を求める。
【0020】
電圧制御器(AVR)12は、加減算器15aの電圧偏差に基づいた電流指令値を電流制御器13に加える。加減算器15bは電圧制御器12の電流指令値と電流検出器16の電流検出値との電流偏差を求める。電流制御器(ACRーC)13は加減算器15bの電流偏差に基づいたパルス幅変調信号をパルス幅変調器(PWMーC)14に加える。パルス幅変調器14は電流制御器13の電流指令値に基づきコンバータ1を制御する。
【0021】
速度指令設定器21の速度指令値と速度検出器27により検出される速度検出値とを図示の極性で加減算器25aに加え速度偏差を求める。速度制御器(ASR)22は加減算器25aの速度偏差に基づいた電流指令値を電流制御器(ACRーI)23に加える。加減算器25bは速度制御器22の電流指令値と電流検出器26の電流検出値との電流偏差を求める。
【0022】
電流制御器23は加減算器25bの電流偏差に基づいたパルス幅変調信号をパルス幅変調器(PWMーI)24に加える。パルス幅変調器24は電流制御器23の電流指令値に基づきインバータ2を制御する。
【0023】
図2に異常検出回路5の一例を示す。
【0024】
図2において、電圧検出器6a、6bにより検出された平滑コンデンサ4a、4bのコンデンサ電圧Ea、Ebは加減算器51に入力される。加減算器51はコンデンサ電圧EaとEbの電圧偏差ΔVを出力する。比較器52a、52bは、偏差電圧ΔVを入力し規定値+Vs1、−Vs1と比較し規定値+Vs1以上の場合、あるいは、規定値−Vs1以下の場合に出力を生じる。
【0025】
図3にコンバータ1あるいはインバータ2の一相分の主回路構成を示す。コンバータ1とインバータ2の主回路は同一構成で、三相(U、V,W)とも同じ構成である。図3はコンバータ1のU相のみを示している。
【0026】
図3において、自己消弧可能な4個のスイッチング素子(例えば、GTO、IGBT、トランジスタ等)Gp、Gpc、Gnc、Gnが直列接続され、これらスイッチング素子Gp、Gpc、Gnc、Gnと逆並列にフリーホイールダイオードDfp、Dfpc、Dfnc、Dfnが接続されている。
【0027】
正側の外側素子Gpと内側素子Gpcの接続点と、負側の外側素子Gnと内側素子Gncの接続点との間にクランプダイオードDcp、Dcnが接続されている。また、正側母線Pと外側素子Gpの間および負側母線Nと外側素子Gnの間にアノードリアクトルLpあるいはLnが設けられている。
【0028】
次に動作を説明する。
【0029】
まず、中性点クランプ型電力変換装置の動作を図4を用いて説明する。
【0030】
図4に、通常のスイッチング動作とコンバータ入力電圧の関係を示す。
【0031】
図4(a)のように、スイッチング素子GpとGpcがオンするとコンバータ入力端子の電位は+Eとなる。また、図4(b)のように、スイッチング素子GpcとGncがオンすると入力端子の電位は、クランプダイオードDcp、Dcnを介し中性点に接続されるため0電位となる。さらに、図4(b)のように、スイッチング素子GncとGnがオンすると入力端子の電位は−Eとなる。
【0032】
U相の直列接続されたスイッチング素子Gp、Gpc、Gnc、Gnは図5に示すようにオン、オフ制御される。なお、図5においてスイッチング素子GpとGncのオンとオフの間の時間tはオンデレイタイムである。また、U相のスイッチング素子Gp、Gpc、Gnc、Gnのオン、オフとコンバータ入力端子電圧の関係を纏めると図6のようになる。
【0033】
コンバータ1のV相とW相におけるスイッチング素子も120度の位相差をもって同様に制御され、コンバータ1は交流電圧を直流電圧に変換する。
【0034】
インバータ2が交流電動機3の回生運転を行う場合にも全く同じ動作となる。
【0035】
一方、コンバータ1の回生運転時とインバータ2の電動運転時には、同様な動作によって直流電圧を+E,0,−Eの3レベルの交流電圧に変換する。
【0036】
以上のようにして中性点クランプ型電力変換装置は交流電圧を直流電圧に、あるいは直流電圧を交流電圧に変換するのであるが、本発明の理解を容易にするために初充電の必要性を図7を用いて説明する。
【0037】
平滑コンデンサ4a,4bを充電しない状態で電源開閉器7をオンして交流電源8を投入すると、スイッチング素子に逆並列された各相のフリーホイールダイオードDfp、Dfpc、Dfnc、Dfnがダイオード整流回路となり、平滑コンデンサ4a,4bの充電が開始される。
【0038】
交流電源8の投入時は、平滑コンデンサ4a,4bが短絡状態のため交流電源8からコンバータ1を介して平滑コンデンサ4a,4bへ突入電流Irが流れる。このため、交流電源8を投入する前に初充電装置で平滑コンデンサ4a,4bを予め突入電流Irが流れない電圧レベルに充電する必要がある。
【0039】
さて、図1、図2に戻り、本発明の一実施例における初充電時の動作を図8のタイムチャートを参照して説明する。
【0040】
コンバータ1を起動する場合には、まず、図8(a)に示すように初充電開閉器9をオンにする。開閉器9をオンすることにより初充電電源10の交流電圧は初充電トランス71で昇圧され、トランス71の2個の二次巻線からそれぞれ昇圧された交流電圧が得られる。初充電電源10の交流電圧が400ボルトの場合には2Kボルト程度まで昇圧される。
【0041】
トランス71の2個の二次巻線から得られた交流電圧はダイオード整流回路72a,72bで整流され直流電圧に変換される。ダイオード整流回路72aの直流電圧はコンデンサ4aに印加され、ダイオード整流回路72bの直流電圧はコンデンサ4bに印加される。
【0042】
平滑コンデンサ4a、4bは充電を開始される。この際、初充電装置70は、初充電電流をインピーダンスによって制限して供給する。平滑コンデンサ4a、4bはこのようにして充電され、その充電電圧が図8(b)に示すように次第に高くなる。平滑コンデンサ4a、4bは初充電によって、定格電圧の80〜90%まで充電される。平滑コンデンサ4a、4bのコンデンサ電圧Ea、Ebは電圧検出器6a、6bにより検出され、異常検出回路5に入力される。
【0043】
電圧検出器6a、6bにより検出された平滑コンデンサ4a、4bのコンデンサ電圧Ea、Ebは異常検出回路5の加減算器51に入力される。加減算器51はコンデンサ電圧EaとEbの電圧偏差ΔVを出力する。比較器52a、52bは、偏差電圧ΔVを入力し規定値+Vs1、−Vs1と比較し規定値+Vs1以上の場合、あるいは、規定値−Vs1以下の場合に出力を生じる。
【0044】
スイッチ53a、53bは図8(c)に示すように初充電開閉器9をオンした後、所定時間(10〜15秒)Ts後にオンされる。スイッチ53a、53bのオン時に比較器52a、52bが出力を生じていなければ、初充電が正常に行われたことになる。
【0045】
初充電が正常に行われたことを確認してから図8(d)に示すように電源開閉器7をオンしてコンバータ1とインバータ2を起動する。その後、コンバータ1は平滑コンデンサ4a、4bの電圧が電圧指令設定器11で設定する電圧指令値となるように制御され、インバータ2は交流電動機3の速度が速度指令設定器21で設定する速度指令値となるように制御される。コンバータ1とインバータ2の制御については良く知られており、それに本発明の要旨に直接関係ないので詳細説明を省略する。
【0046】
一方、スイッチ53a、53bをオンした時に比較器52aあるいは52bが出力を生じていた場合には、初充電が異常であったと判断する。異常検出回路5は異常信号を出力する。
【0047】
このようにして平滑コンデンサ4a、4bの初充電の異常を検出するのであるが、初充電開始時から設定時間後における2個の平滑コンデンサ4a、4bの電圧偏差の大きさによって異常を判断している。2個の平滑コンデンサ4a、4bの電圧検出器6a、6bはコンバータ1の電圧制御に用いられているものであり、簡単な構成の異常検出回路5を付加するだけで異常を検出できる。したがって、平滑コンデンサの初充電異常を、電力変換装置を小型化かつ低価格化して検出できる。
【0048】
図9に異常検出回路5の他の一例を示す。
【0049】
図9において図2と異なるところは、平滑コンデンサ4aと4bの電圧EaとEbを加算器54で加算して、比較器55の規定値Vs2と比較するようにしたことにある。比較器55は電圧EaとEbを加算値が規定値Vs2より大きい場合に出力を生じる。また、スイッチ53cはスイッチ53a,53bと同様に、図8(c)に示すように初充電開閉器9をオンした後、所定時間(10〜15秒)Ts後にオンされる。
【0050】
図9の異常検出回路5では平滑コンデンサ4aと4bの一方が初充電されない場合と、平滑コンデンサ4aと4bの両方が充電されないことを検出できる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は平滑コンデンサの電圧を検出して初充電開始時から設定時間後における2個の平滑コンデンサの電圧偏差の大きさによって異常判断している。2個の平滑コンデンサの電圧検出器は電圧制御に用いられているものであり、簡単な構成の異常検出回路を付加するだけで異常を検出できる。したがって、平滑コンデンサの初充電異常を、電力変換装置を小型化かつ低価格化して検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】異常検出回路の一例を示す構成図である。
【図3】中性点クランプ型電力変換装置の一相分の主回路構成図である。
【図4】中性点クランプ型電力変換装置のスイッチング動作説明図である。
【図5】中性点クランプ型電力変換装置のスイッチング動作タイムチャートである。
【図6】スイッチング動作とコンバータ入力端子電圧の説明図である。
【図7】初充電装置の説明図である。
【図8】本発明の動作説明用のタイムチャートである。
【図9】異常検出回路の他の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
1…コンバータ、2…インバータ、3…交流電動機、4a,4b…は、平滑コンデンサ
5…異常検出回路、6a、6b…電圧検出器、7…電源開閉器、9…初充電開閉器、70…初期充電装置、71…初充電トランス、72a,72b…ダイオード整流回路
Claims (2)
- 電源開閉器を介して交流電源に接続され、パルス幅変調制御されて交流電圧を直流電圧に変換する中性点クランプ型コンバータと、前記中性点クランプ型コンバータの直流出力電圧を2つに分圧する直列接続された2個の平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの電圧をそれぞれ検出する2つの電圧検出手段と、初充電開閉器を介して初充電電源に接続され、交流電圧を整流した直流電圧で前記2個の平滑コンデンサを初充電する初充電装置とを具備し、
前記初充電装置は、一次巻線が前記初充電開閉器を介して初充電電源に接続され、2個の二次巻線からそれぞれ昇圧した交流電圧を得る初充電トランスと、前記2個の二次巻線にそれぞれ接続され、交流電圧を直流電圧に変換して前記2個の平滑コンデンサにそれぞれ印加する2個のダイオード整流回路とを備え、初充電電流をインピーダンスによって制限して供給するものであり、
前記初充電開閉器をオンして初充電開始時から設定時間後における前記2個の平滑コンデンサの電圧偏差が第1規定値以上であるときに初充電異常を検出する異常検出手段を設けたことを特徴とする中性点クランプ型電力変換装置。 - ダイオードを逆並列接続された4個のスイッチイング素子を含み一相分を構成し、3レベルの電圧を出力して交流電圧を直流電圧に変換する中性点クランプ型コンバータと、前記中性点クランプ型コンバータの直流出力電圧を2つに分圧する直列接続された2個の平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサの電圧をそれぞれ検出する2つの電圧検出手段と、初充電開閉器を介して初充電電源に接続され、交流電圧を整流した直流電圧で前記2個の平滑コンデンサを初充電する初充電装置と、前記初充電開閉器をオンして初充電開始時から設定時間後における前記2個の平滑コンデンサの電圧偏差が第1規定値以上であるときに初充電異常を検出する異常検出手段を備えた中前記中性点クランプ型コンバータの起動前に前記2個の平滑コンデンサを初充電する初充電装置とを備え、
前記初充電装置は、一次巻線が前記初充電開閉器を介して初充電電源に接続され、2個の二次巻線からそれぞれ昇圧した交流電圧を得る初充電トランスと、前記2個の二次巻線にそれぞれ接続され、交流電圧を直流電圧に変換して前記2個の平滑コンデンサにそれぞれ印加する2個のダイオード整流回路とを備え、初充電電流をインピーダンスによって制限して供給するものであり、
前記初充電開閉器をオンして初充電開始時から設定時間後における前記2個の平滑コンデンサの電圧偏差が第1規定値以上であることを判定、あるいは前記2個の平滑コンデンサの電圧和が第2規定値以下であることを判定し初充電異常を検出する異常検出手段を設けたことを特徴とする中性点クランプ型電力変換装置。
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