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JP3656454B2 - 窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は窒化物半導体(InbAlcGa1-b-cN、0≦b、0≦c、b+c<1)よりなるレーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明者は、実用可能な窒化物半導体レーザ素子として、例えばJpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.L309-L312、Part2,No.3B,15 March 1998の文献に素子構造を提案している。
上記文献の技術は、サファイア基板上部に、部分的に形成されたSiO2膜を介して選択成長された転位の少ないGaNよりなる窒化物半導体基板の上に、レーザ素子構造となる窒化物半導体層を複数積層してなる素子とすることで、室温での連続発振1万時間以上を可能とするものである。素子構造としては、選択成長された窒化物半導体基板上に、n−AlkGa1-kN(0≦k<1)よりなるn型コンタクト層、In0.1Ga0.9Nよりなるクラック防止層、n−Al0.14Ga0.86N/GaNの多層膜よりなるn型クラッド層、n−GaNよりなるn型光ガイド層、In0.02Ga0.98N/In0.15Ga0.85Nよりなる多重量子井戸構造の活性層、p−Al0.2Ga0.8Nよりなるp型電子閉じ込め層、p−GaNよりなるp型光ガイド層、p−Al0.14Ga0.86N/GaNの多層膜よりなるp型クラッド層、p−GaNよりなるp型コンタクト層により構成されている。
【0003】
さらにこのレーザ素子は、FFP(ファーフィールドパターン)が良好な単一の横モードとなるようにp型コンタクト層からp型クラッド層の一部までを部分的にエッチングした、リッジ構造をとっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような屈折率導波型構造で高出力タイプの窒化物半導体レーザ素子を実現するためにはエッチングする位置としては、リッジ直下の活性層部とその他の活性層部との実効屈折率差を100分の1のオーダーで制御する必要があり、それにはp型クラッド層がほんの一部だけ残るまで、すなわちp型光ガイド層の直前までの0.01μm以下の精度でエッチングしてリッジを形成しなければならない。それには上記の構造でも可能ではあるが、歩留の点で問題があった。
【0005】
そこで本発明ではリッジ形成のためのエッチングを必要としない新規な素子構造を提供することで、高出力タイプ(例えば30mW)でも歩留が良く、FFPも良好な単一横モードとなるような窒化物半導体レーザ素子を得ることが可能になる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、下記(1)〜(8)の構成により本発明の目的を達成することができる。
(1) 活性層上に形成された第1のp型窒化物半導体層の上に、SiONから成り、且つストライプ状の開口部を有する第1の絶縁膜が形成され、さらに前記開口部より第2のp型窒化物半導体層が選択成長されることによって、該第2のp型窒化物半導体にリッジが形成されており、前記リッジの側面および前記第1の絶縁膜表面にはZrO 、又はSiO から成る第2の絶縁膜が形成されていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
(2) 前記第1のp型窒化物半導体層と第2のp型窒化物半導体層が同じ組成を有することを特徴とする前記(1)に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0007】
(3) 前記ストライプ状の開口部は3μm以下であることを特徴とする前記(1)ないし(2)のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
(4) 前記第1のp型窒化物半導体層はAlGa1−XN(0≦X<1)層を有する光ガイド層であり、第2のp型窒化物半導体層はAlGa1−YN(0≦Y<1かつX<Y)を有するクラッド層であることを特徴とする前記(1)に記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0008】
(5) 前記第1および第2のp型窒化物半導体層はいずれもAlXGa1-XN(0≦X<1)層を有する光ガイド層であることを特徴とする前記(2)または(3)のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
(6) 前記第1の絶縁膜はストライプ幅が2μm以上200μm以下、膜厚が0.5μm以下であることを特徴とする前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0009】
(7) 前記リッジの最上層表面には電極が形成されていることを特徴とする前記(1)ないし(6)のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
(8) 前記窒化物半導体レーザ素子は少なくともエピタキシャル成長されたGaNを含んだ基板上に窒化物半導体が積層されてなるものであることを特徴とする前記(1)ないし(7)のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
【0010】
つまり本発明は、活性層上に形成された第1のp型窒化物半導体層の上にストライプ状の開口部を有する第1の絶縁膜を形成することで、次に形成する第2のp型窒化物半導体層は前記開口部より選択成長していく。すなわちこの窒化物半導体レーザ素子は、エッチングによってリッジを形成する必要がなくなり、窒化物半導体層を積層していくだけで、所望の屈折率差が得られるようになる。さらにエッチングによってリッジを形成するよりも歩留が良く、FFPも良好な単一横モードとなる素子が得られるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化物半導体レーザ素子は、第1のp型窒化物半導体層の上に形成する第1の絶縁膜を開口部を有するストライプ状とすることで、第1の絶縁膜形成後の第2のp型窒化物半導体層をMOVPE(有機金属気相成長法)で成長させるとき、窒化物半導体は、絶縁膜と絶縁膜との間の開口部から上方(積層方向)に選択成長される。選択成長されることにより窒化物半導体はエッチングをすることなく既にリッジ状になっており、新たにリッジを形成することなくFFP(ファーフィールドパターン)が良好な単一の横モードを得ることができる。また、この絶縁膜と絶縁膜との間の開口部の幅は3μm以下とする。3μmより大きいと、発振は単一の横モードでなく、多モードとなってしまう。さらに開口部の幅は1μm以上2μm以下とすることが望ましい。
【0012】
本発明において、前記第1の絶縁膜の膜厚は、好ましくは10オングストローム以上、0.5μm以下とし、好ましくは10オングストローム以上、0.1μm以下とする。このように第1の絶縁膜は薄ければ薄いほど好ましい。この第1の絶縁膜を厚く形成すると、第2のp型窒化物半導体をMOVPEで成長させるとき、絶縁膜と絶縁膜との間の開口部に、原料ガスやキャリアガスなどが効率的に当たらなくなってしまい、結晶性が悪くなってしまう。
【0013】
本発明において第1の絶縁膜のストライプ幅は、2μm以上200μm以下にすることが望ましい。ストライプ幅を2μm以上とするのは、リッジ状に形成された窒化物窒化物半導体をp電極で覆い被せるとき、p電極の端部が絶縁膜上にあるようにするためである。ストライプ幅が小さいと、p電極が第1の絶縁膜すべてを覆ってしまい、さらにp電極の端部が第1の絶縁膜下の第1のp型窒化物半導体まで達するおそれがあり、通電してしまうとレーザとして発振しなくなってしまう。さらに好ましくはストライプ幅を10μm以上とする。またストライプ幅が200μmより大きいと、第2の窒化物半導体を形成するとき、第1の絶縁膜の開口部から窒化物半導体が選択成長されるだけでなく、第1の絶縁膜上からも窒化物半導体が成長してしまう。この絶縁膜上から成長する窒化物半導体は非常に転位が多く、さらに選択成長された窒化物半導体と結合してしまい、この絶縁膜上の窒化物半導体をエッチングしないとリッジ状にならなくなってしまうので好ましくない。
【0014】
また、前記第1の絶縁膜はMOVPE反応雰囲気に耐えることのできるものとする。この条件を満たす物質としては、例えばSiON(SiN、SiO2の化合物)、SiN、SiO2などが挙げられ、いずれの物質を用いても良いが、好ましくはSiONを用いる。SiONは、化学的に非常に安定な物質であり、この膜を極端に薄くしても分解などは起こらない。
【0015】
また、リッジの側面および第1の絶縁膜表面に形成される第2の絶縁膜は、屈折率がGaNより小さい材料であればよく、例えばZrO2やSiO2があるが、好ましい材料としてはZrO2が挙げられる。この材料によって、リッジ直下の活性層部とその他の活性層部との実効屈折率差が決まる。
【0016】
また、p型光ガイド層は少なくともAlXGa1-XN(0≦X<1)層を有し、またp型クラッド層は少なくともAlYGa1-YN(0≦Y<1かつX<Y)を有していればよく、例えばどちらも後述の実施例のような構造が挙げられる。これらの層の一部またはすべては、これらを形成する前にストライプ状の第1の絶縁膜を形成するためにウエハーを一度MOVPE反応容器から外に出してしまうので、転位などが発生し、結晶性は若干悪くなってしまう。しかし、活性層までは結晶性が良く、転位もほとんどないので、本発明の構造は、高出力でもFFPが良好な単一横モードとなる本発明の目的を十分達成しうるものである。
【0017】
さらに、以下に本発明の一実施の形態である窒化物半導体素子の構造を示す窒化物半導体素子の模式的断面図である図1を用いて説明する。
図1はサファイア基板1上に、窒化物半導体基板2、n型コンタクト層3、n型クラッド層4、n型光ガイド層5、活性層6、p側キャップ層7、p型光ガイド層8、p型クラッド層9、p型コンタクト層10が順に積層された構造を有する。さらに、n型コンタクト層3上にnオーミック電極20とnパッド電極21を、p型コンタクト層10上にpオーミック電極22とpパッド電極23がそれぞれ形成されている。
【0018】
本発明において、基板としては例えば、C面、R面及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA124)のような絶縁性基板、窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている基板材料を用い、またこれらをオフアングルしたものを用いることができる。さらにこれらの基板材料は後述の選択成長で用いられる異種基板としても用いることができる。
【0019】
また、本発明において、基板としては上記基板材料と、この上に窒化物半導体の横方向の成長を利用して選択成長させた転位の少ない窒化物半導体とを有する材料を基板とすることができる。
【0020】
窒化物半導体の選択成長の方法としては、特に限定されず、窒化物半導体の結晶転位を低減できる方法であればよい。例えば、前記J.J.A.P.に記載の方法、本出願人が提出した特願平10−77245号、特願平10−275826号、特願平10−363520号の各明細書に記載の方法等を挙げることができ、これらの方法によってELOG(Epitaxial Lateral Overgrowth GaN)と呼ばれる基板が得られる。
【0021】
本発明では、このELOG基板を用いることが望ましい。ELOG基板を用いることで、少なくとも第1のp型GaNまでは非常に結晶転位の少ない窒化物半導体が得られ、高出力でも特性のよい窒化物半導体レーザが得られる。
【0022】
また、本発明において、その他の活性層、クラッド層等のデバイス構造としては、特に限定されず、種々の層構造を用いることができる。デバイス構造の具体的な実施の形態としては、例えば後述の実施例に記載されているデバイス構造が挙げられる。また、電極等も特に限定されず種々のものを用いることができる。本発明において、窒化物半導体の成長はMOVPE、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られているすべての方法を適用できる。
【0023】
【実施例】
[実施例1]
(窒化物半導体基板2)
図1に示すようにA面がオリフラ面として形成されているC面を主面とするサファイア基板1を用意し、まずサファイア基板1をMOCVD反応容器内にセットし、下地層として500℃にてアンドープのGaNよりなる層を200オングストロームと、続けて1050℃にてアンドープのGaNよりなる層を2.5μmの、総膜厚が約2.5μmとなる窒化物半導体層を形成する。
【0024】
次に窒化物半導体層を成長させた後、窒化物半導体層表面にストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅10μm、窓部5μmのSiO2よりなる保護膜を0.5μmの膜厚で形成する。このとき、ストライプ方向はオリフラ面に対して垂直に形成する。
【0025】
続いて、RIE装置によりSiO2膜の形成されていない部分のGaNをサファイア基板が露出されるまでエッチングして凹凸を形成することで、GaNをストライプ状にし、最後に凸部上部のSiO2を除去する。
【0026】
ストライプ状のGaNを形成後、ウエハーを反応容器に移し、1050℃にて、原料ガスにTMG(トリメチルガリウム)、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体層を15μmの膜厚で成長させる。以上のようにして窒化物半導体基板(ELOG基板)2を得る。
【0027】
(n型コンタクト層3)
次に得られた窒化物半導体基板2上にTMG、アンモニア、不純物ガスとしてシランガスを用い、1050℃でSiを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなるn型コンタクト層3を4.5μmの膜厚で成長させる。
【0028】
(n型クラッド層4)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAlGaNよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚8000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるn型クラッド層4を成長させる。
【0029】
(n型光ガイド層5)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn型光ガイド層5を750オングストロームの膜厚で成長させる。
【0030】
(活性層6)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMI(トリメチルインジウム)、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたInGaNよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させる。続いて、シランガスを止め、アンドープのInGaNよりなる井戸層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を3回繰り返し、最後に障壁層を積層した総膜厚550オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層6を成長させる。
【0031】
(p側キャップ層7)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAlGaNよりなるp側キャップ層7を100オングストロームの膜厚で成長させる。
【0032】
(p型光ガイド層8)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp型光ガイド層9を750オングストロームの膜厚で成長させる。
このp型光ガイド層8は、アンドープとして成長させるが、p側キャップ層7からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cm3となりp型を示す。またこの層は意図的にMgをドープしても良い。
以上までの層を積層した後、ウエハーをMOVPE反応容器から取り出す。
【0033】
(第1の絶縁膜30)
次にCVD装置に移し、SiONよりなる第1の絶縁膜30をサファイアのオリフラ面に対して垂直にストライプ状に形成する。この絶縁膜30は、マスク技術を用いてストライプ幅10μm、開口部1.5μm、膜厚500オングストロームとする。
【0034】
(p型クラッド層9)
次に、CVD装置から取り出し、再びMOVPE反応容器内にセットし、温度を1050℃にして原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAlGaNよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ100回繰り返してA層とB層を積層し、総膜厚5000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるp型クラッド層9を成長させる。
【0035】
(p型コンタクト層10)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaNよりなるp型コンタクト層10を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0036】
反応終了後、反応容器内において、ウエハーを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハーを反応容器から取り出し、RIE(反応性イオンエッチング)を用い、n電極を形成すべきn型コンタクト層3の表面を露出させる。
【0037】
さらにそれぞれのコンタクト層上にpオーミック電極22とpパッド電極23、nオーミック電極20とnパッド電極21を、その他のp側層のリッジ側面および第1の絶縁膜30表面には第2の絶縁膜31としてZrO2を形成する。第2の絶縁膜としてZr酸化物を形成すると、p−n面の絶縁がとれるだけでなく、横モードの安定を図ることもでき好ましい。
【0038】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウエハーのサファイア基板を研磨して70μmとした後、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面(11−00面、六角柱状の結晶の側面に相当する面=M面)に共振器を作製する。共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断して図1に示すようなレーザ素子とする。
得られたレーザ素子をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みた。
【0039】
その結果、室温においてしきい値2.0kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示し、さらに歩留を挙げることができた。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、活性層6およびp側キャップ層7までは同様に形成する。(p型光ガイド層8および第1の絶縁膜30)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、p型光ガイド層8の一部として、アンドープのGaNを50オングストロームの膜厚で成長させる。
【0041】
以上p型光ガイド層の一部までを積層した後、ウエハーをMOVPE反応容器から取り出す。続いてウエハーをCVD装置に移し、SiONよりなる第1の絶縁膜30をサファイアのオリフラ面に対して垂直にストライプ状に形成する。この絶縁膜30は、マスク技術を用いてストライプ幅10μm、開口部1.5μm、膜厚500オングストロームとする。
【0042】
さらに、CVD装置から取り出し、再びMOVPE反応容器にセットし、アンドープのGaNを700オングストロームの膜厚で成長させる。これにより、アンドープのGaNはストライプ状に形成した絶縁膜の開口部から選択成長するので、p型光ガイド層は総膜厚750オングストロームの、部分的に絶縁膜を挟んだ層となる。
【0043】
以下、p型クラッド層以降は実施例1と同様にしてレーザ素子を得る。このレーザ素子は実施例1と同様に室温においてしきい値2.0kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0044】
[実施例3]
実施例1において、第1の絶縁膜30の膜厚を1000オングストロームにした他は同様にしてレーザ素子を作製した。室温においてしきい値2.3kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、800時間以上の寿命を示した。
【0045】
[実施例4]
実施例1において、ストライプ状に形成した第1の絶縁膜30の開口部を2μmにした他は同様にしてレーザ素子を作製した。
その結果、しきい値2.5kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、800時間以上の寿命を示した。
【0046】
[実施例5]
実施例1において、第1の絶縁膜30をSiNとした他は同様にしてレーザ素子を作製した。
その結果、実施例1と同様にしきい値2.5kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0047】
[実施例6]
実施例1において、窒化物半導体を作製する際に用いるサファイア基板を、C面を主面とし、A面がオリフラ面として形成されており、さらにステップ上にオフアングルされ、そのオフ角が0.13°、ステップに沿う方向(段差方向)がA面に垂直に形成された基板を用いる。
その他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得る。この結果、室温においてしきい値1.8kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0048】
[実施例7]
実施例1において、窒化物半導体基板を以下のようにした他は同様にしてレーザ素子を作製した。
(窒化物半導体基板2)
図1に示すようにA面がオリフラ面として形成されているC面を主面とするサファイア基板1を用意し、まずサファイア基板1をMOCVD反応容器内にセットし、下地層として500℃にてアンドープのGaNよりなる層を200オングストロームと、続けて1050℃にてアンドープのGaNよりなる層を2.5μmの、総膜厚が約2.5μmとなる窒化物半導体層を形成する。
【0049】
次にストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅10μm、窓部2μmのSiO2よりなる保護膜を0.5μmの膜厚で形成する。ストライプ方向は、オリフラ面に対して垂直な方向で形成する。
保護膜形成後、ウエハーをMOVPE反応容器に移し、1050℃にて、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる窒化物半導体層を15μmの膜厚で成長させ、これを窒化物半導体基板とする。
【0050】
その他は実施例1と同様にしてレーザ素子を得る。この結果、室温においてしきい値2.0kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0051】
[実施例8]
実施例1において、窒化物半導体基板および電極を以下のようにした他は同様にしてレーザ素子を作製した。
(窒化物半導体基板2’)
A面がオリフラ面として形成されているC面を主面とするサファイア基板上にMOVPE反応容器内で500℃にてアンドープのGaNよりなる層を200オングストロームと、続けて1050℃にてアンドープのGaNよりなる層を2.5μmの、総膜厚が約2.5μmとなる窒化物半導体層を形成する。
【0052】
次に窒化物半導体層を成長させた後、窒化物半導体層表面にストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅10μm、窓部5μmのSiO2よりなる保護膜を0.5μmの膜厚で形成する。このとき、ストライプ方向はオリフラ面に対して垂直に形成する。
【0053】
続いて、RIE装置によりSiO2膜の形成されていない部分のGaNをサファイア基板が露出されるまでエッチングして凹凸を形成することで、GaNをストライプ状にし、最後に凸部上部のSiO2を除去する。
【0054】
ストライプ状のGaNを形成後、ウエハーをMOVPE反応容器に移し、1050℃にて、原料ガスにTMG(トリメチルガリウム)、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体層を15μmの膜厚で成長させる。続いて、HVPEで150μmの膜厚SiドープのGaNを作製する。次に得られたウエハーのサファイア基板およびMOVPEにより作製したアンドープのGaN層を研磨、除去し厚さが約100μmのGaN基板2’を得た。
【0055】
得られたGaN基板2’上にn型コンタクト層3からp型コンタクト層10までを実施例1と同様にして作製する。
反応終了後、反応容器内において、ウエハーを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
【0056】
アニーリング後、ウエハーを反応容器から取り出し、p型コンタクト層上にpオーミック電極22とpパッド電極23を、その他のリッジ側面および第1の絶縁膜表面には第2の絶縁膜31としてZrO2を形成し、窒化物半導体の素子構造が形成されていない表面をさ研磨し、総膜厚を100μm〜200μmとする。その研磨表面の全面に、nオーミック電極20とnパッド電極21を形成する。
【0057】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウエハーをストライプ状の電極に垂直な方向でバー状に劈開し、劈開面(M面)に共振器を作製する。共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断して図3に示すようなレーザ素子とする。
得られたレーザ素子をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みた。
【0058】
その結果、実施例1と同様に、室温においてしきい値2.0kA/cm2、30mWの出力において発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0059】
【発明の効果】
本発明のような素子構造にすることによって、高出力タイプでも歩留が良く、FFPも良好な単一横モードとなるよう窒化物半導体レーザ素子を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態である窒化物半導体レーザ素子を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施の形態である窒化物半導体レーザ素子を示す模式的断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施の形態である窒化物半導体レーザ素子を示す模式的断面図である。
【符号の簡単な説明】
1・・・サファイア基板
2・・・窒化物半導体基板
3・・・n型コンタクト層
4・・・n型クラッド層
5・・・n型光ガイド層
6・・・活性層
7・・・p側キャップ層
8・・・p型光ガイド層
9・・・p型クラッド層
10・・・p型コンタクト層
20・・・nオーミック電極
21・・・nパッド電極
22・・・pオーミック電極
23・・・pパッド電極
30・・・第1の絶縁膜
31・・・第2の絶縁膜

Claims (8)

  1. 活性層上に形成された第1のp型窒化物半導体層の上に、SiONから成り、且つストライプ状の開口部を有する第1の絶縁膜が形成され、さらに前記開口部より第2のp型窒化物半導体層が選択成長されることによって、該第2のp型窒化物半導体にリッジが形成されており、前記リッジの側面および前記第1の絶縁膜表面にはZrO 、又はSiO から成る第2の絶縁膜が形成されていることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記第1のp型窒化物半導体層と第2のp型窒化物半導体層が同じ組成を有することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記ストライプ状の開口部は3μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項2のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記第1のp型窒化物半導体層はAlGa1−XN(0≦X<1)層を有する光ガイド層であり、第2のp型窒化物半導体層はAlGa1−YN(0≦Y<1かつX<Y)を有するクラッド層であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記第1および第2のp型窒化物半導体層はいずれもAlGa1−XN(0≦X<1)層を有する光ガイド層であることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記第1の絶縁膜はストライプ幅が2μm以上200μm以下、膜厚が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  7. 前記リッジの最上層表面には電極が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 前記窒化物半導体レーザ素子は少なくともエピタキシャル成長されたGaNを含んだ基板上に窒化物半導体が積層されてなるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の窒化物半導体レーザ素子。
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