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JP3652296B2 - 光学装置 - Google Patents

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    • G01N23/20Investigating or analysing materials by the use of wave or particle radiation, e.g. X-rays or neutrons, not covered by groups G01N3/00 – G01N17/00, G01N21/00 or G01N22/00 by using diffraction of the radiation by the materials, e.g. for investigating crystal structure; by using scattering of the radiation by the materials, e.g. for investigating non-crystalline materials; by using reflection of the radiation by the materials

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  • Polarising Elements (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般には、測定装置に係り、特に、光源として極端紫外線領域(EUV:extreme ultraviolet)、又はX線領域の発光光源を利用する測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のX線、軟X線、EUV光学の発展に伴い、その利用分野は多岐にわたるようになってきた。特に、EUV光を用いた光学素子等の評価は注目を集めている。一般に、光を照射して光学素子の反射率を評価する際には、光の偏光によって光学素子が示す性質が異なるので、かかる偏光を考慮する必要がある。光の偏光は、図18に示すように、反射面1000aに対して紙面に垂直な電場ベクトルをもつ偏光をs偏光、s偏光に垂直でかつ波数ベクトルに垂直な電場ベクトルをもつ偏光をp偏光と定義し、偏光度Pはs偏光の強度Iとp偏光の強度Iを用いて、次式で与えられる。
【0003】
【数1】
Figure 0003652296
【0004】
ここで、図18は、光の偏光を示す概略図である。
【0005】
例えば、X線、軟X線領域に高い反射率を有する多層膜ミラーがあるが、かかる多層膜反射ミラーは入射光の偏光によって反射率が大きく異なる。図19に、光の入射角を42.6°、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層を合わせた膜厚9.6nm、膜数5層対として計算で求めた多層膜ミラーの反射率特性を示す。同図は、横軸に多層膜ミラーに入射する光の波長を、縦軸に多層膜ミラーの反射率を採用している。即ち、p及びs偏光が混在する光では偏光度によって値が異なるため正確な反射率を測定することができず、高精度に反射率を測定するにはp偏光又はs偏光の直線偏光に分けて測定を行う必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来では、無偏光の光源から高偏光度、且つ、偏光面の切り替えが可能な直線偏光を作り出して測定に用いることは容易ではなかった。
【0007】
例えば、高精度に反射率を測定する装置として、従来からシンクロトロン光源を用いた反射率計が使用されている。図20は、シンクロトロン光源を用いた反射率計2000の概略図である。反射率計2000は、光源2100の偏向電磁石からの放射光を利用する。偏向電磁石からの放射光は、電子軌道面内に電場ベクトルがある直線偏光を持つ。従って、後段の光学系2200を介してp偏光又はs偏光に分離した光が被測定体2300に照射され、検出器2700により偏光を考慮した反射率測定が可能となっている。しかし、シンクロトロン光源を用いた反射率計2000は、光源2100からの放射光が必ず電子軌道平面内に直線偏光しているため被測定体2300上の偏光の向きを替える(即ち、s偏光又はp偏光の選択)には被測定体2300の向きを変えるしかない。従って、被測定体2300の向きを変えるには、被測定体2300の入った通常数百キログラム程度のチャンバーを回転させなければならず、s偏光又はp偏光の選択は非常に困難であった。また、シンクロトロン光源自体も非常に大規模で高価であった。
【0008】
そこで、シンクロトロン光源と比較して小型で安価なレーザープロデュースプラズマ光源(以下、LPP光源と称する)を用いた反射率計がProceedings of SPIE Vol.4144(2000).pp76−81. Development of an EUV Reflectometer using a laser−plasma X−ray source.において提案されている。かかる装置は、測定で得られたデータをカーブフィッティングすることにより多層膜パラメータを決定している。しかし、光源からの偏光をランダムと仮定し、s偏光を光学系配置の計算から5%と見積もっているため偏光度に不確定性が残り、反射率に誤差が生じ高精度な多層膜パラメータの決定を行うことができない。
【0009】
更に、優れた偏光特性を有する透過型の多層膜偏光子を挿入することで上述の問題を回避する反射率計がProceedings of SPIE Vol.1720(1992).pp190−194. Soft−x−ray polarization measurement with a laboratory reflectometer.において提案されている。かかる装置は、LLP光源を用いながらも、MoとSiを積層した透過型多層膜偏光子を取り付けることで偏光を分離した反射率の測定を可能にしている。しかし、透過率を考えると多層膜偏光子の厚み(多層膜と基板とを含めた厚み)を数百nm以下に抑えることが必要なため作製が困難であり、壊れやすく耐熱性にも問題がある。また、MoとSiを41層積層した偏光子に無偏光の波長12.8nmの軟X線が透過した場合、s偏光とp偏光の透過強度比は0.2程度であり、高い偏光度を得ることができない。
【0010】
一方、所望の偏光状態を得るために、作製が容易で耐久性にも優れた反射型の偏光子を用いることもRev.Sci.Instrum.66(2)pp1598−1600,February 1995.Performance evaluation of a soft x−ray quadruple reflection circular polarizer.で提案されているが、これは4枚の多層膜ミラー構成で直線偏光を円偏光にするだけであり、高精度な試料の偏光に依存した特性の測定に用いることはできない。
【0011】
更に、光軸周りに回転可能な3枚の多層膜ミラー構成の偏光子を2つ用いることがRev.Sci.Instrum.66(2)pp1923−1925,February 1995.Polarization characterization of circularly polarized vacuum−ultraviolet and Soft−x−ray helicalundulator radiation.で提案されているが、これはシンクロトロン光源の特性や円偏光の度合いを測定する装置であり用途が異なる。
【0012】
つまり、上述の装置では、偏光を考慮した精度の高い測定をシンクロトロンを用いて行うには大規模な構成の使用が避けられず、一方小型且つ安価な非直線偏光光源であるLPP光源を用いた場合の精度の高い測定に適した構成が実現していなかった。
【0013】
そこで、本発明は、非直線偏光の光源を用いた場合であっても高偏光度且つ容易に偏光面の切り替えを可能とし、容易に高精度な測定をすることができる光学装置を提供することを例示的目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての光学装置は、被測定体の偏光に依存した特性を測定する光学装置であって、極端紫外線領域又はX線領域の非直線偏光の光束を射出する光源と、前記光源から射出された前記光束を順次反射するとともに入射光束の光軸と出射光束の光軸とが同一直線上にあるように配置された3回以上反射するミラー群で構成され回転可能な偏光子とを有する。かかる光学装置によれば、偏光子によって入射光束の光軸と出射光束の光軸を変化させずに、非直線偏光の光束を直線偏光に変換して被測定体に照射し、偏光依存特性を測定することができる。前記偏光子は、前記入射光束の光軸を中心軸として回転する。これにより、被測定体に対する偏光面を切り替えることができる。即ち、偏光子を回転させるだけで、s偏光又はp偏光を選択することができる。前記偏光子は、前記光源から射出される前記光束の光路に対して退避可能である。これにより、被処理体に無偏光の光を照射することができる。前記光源から射出された前記光束を集光する光学系と、前記偏光子からの前記出射光束を前記被測定体で結像する結像光学系とを更に有し、前記偏光子は、前記被測定体と光学的に略共役な位置に配置される。これにより、偏光子の設計誤差及び/又は配置誤差による角度ずれ及び位置ずれの影響を防ぐことができる。前記光源から射出された前記光束を集光する光学系を更に有し、前記偏光子は、前記被測定体に近接して配置される。これにより、偏光子の設計誤差及び/又は配置誤差による角度ずれの影響を防ぐことができる。
【0015】
本発明の更に別の側面としての光学素子は、上述の光学装置を用いて偏光に依存する特性が測定され、特性が所定値以上である。かかる光学素子は、レンズ、回折格子、光学膜体及びそれらの複合体、例えば、レンズ、マルチレンズ、レンズアレイ、レンチキュラーレンズ、ハエの目レンズ、非球面レンズ、回折格子、バイナリ−オプティックス素子及びそれらの複合体を含む。
【0018】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の光学装置の一例としての反射率測定装置1及び光電子分光装置2について説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定するものではなく、本発明の目的が達成される範囲において、各構成要素が代替的に置換されてもよい。ここで、図1は、反射率測定装置1の概略図である。反射率測定装置1は、図1に示すように、光源10と、前置鏡20と、スリット30と、回折格子40と、スリット50と、偏光子60と、後置鏡70と、検出器80とを有し、被測定体90の反射率を測定する。
【0020】
光源10は、EUV又はX線領域のプラズマ光源であり、等方的に無偏光で連続波長を持つ発散光を発光する。前置鏡20は、光源10からのEUV光を取り込み、光源10の像を結像する。前置鏡20の後段にスリット30を設置することで取り込む光源10のサイズを制限する。回折格子40は、入射される光を波長により異なる角度に回折するので、後段にスリット50を設けることで分光を行なうことができる。前置鏡20、スリット30、回折格子40、スリット50の構成は、Dragon型モノクロメーターと呼ばれ、公知の技術として用いられているのでここでは詳しい説明は省略する。光源10から発せられたEUV光は、スリット50の直後ではほぼ無偏光の単色光である。
【0021】
偏光子60は、多層膜ミラーを複数枚組み合わせ、このうち少なくとも1枚の多層膜ミラーをブリュースター角に近い入射角度となるように構成し、s偏光とp偏光の反射率の違いを利用して無偏光の光を直線偏光にする。多層膜ミラーの組み合わせは、偏光子60の入射光束の光軸と出射光束の光軸とが同一直線上にあるように配置する(以下、この構成を「光軸を変化させない構成」と称する)。
【0022】
偏光子60の多層膜ミラーの配置の一例を図2に示す。図2は、偏光子60の概略図である。偏光子60は、図2に示すように、第1の多層膜ミラー62の入射角度を66.3°、第2の多層膜ミラー64の入射角度を42.6°、第3の多層膜ミラー66の入射角度を66.3°で構成する。従って、偏光子60は、光軸を変化させることなく、第2の多層膜ミラー64がブリュースター角の近傍であるので高い偏光度が実現できる。第1乃至第3の多層膜ミラー62乃至66は、Mo/Si多層膜ミラーであり、計算上、波長13.5nm近傍でp偏光とs偏光の比は1×10−3である。また、第1及び第3の多層膜ミラー62及び66は、膜厚20nm、膜数3層対であり、第2の多層膜ミラー64は、膜厚9.6nm、膜数5層対である。但し、偏光子60を構成する多層膜ミラーは3枚に限らず、偏光子60への入射光束の光軸と出射光束の光軸が変わらない構成であれば何枚使用してもよく、例えば、図3に示すように、第4の多層膜ミラー68を加えて4枚で構成してもよい。ここで、図3は、偏光子60の変形例である偏光子60Aの概略図である。
【0023】
また、偏光子60は、図示しない駆動機構を有し、光軸を回転軸として偏光子60を回転することで偏光面を切り替えることでs偏光又はp偏光を選択することができる。更に、図示しない駆動機構により光軸と垂直方向に偏光子60を移動(出し入れ)して無偏光を選択することもできる。無偏光の光源10と偏光子60を用いることで、回転のみの容易な操作で偏光の向きの選択が可能となる。
【0024】
偏光子60は使用の有無に限らず、また偏光を切り替えても光軸を動かさないので原理的には反射率測定装置1内のどの部分にも設置可能である。しかし、実際には、設計値通りに作製されずに設計誤差や、設置のときの設置誤差を含む場合がある。偏光子60の設計誤差及び設置誤差は、図4及び図5に示すように、理想的な光軸から出射光束の光軸角度がずれてしまう角度ずれや出射光束の光軸位置が理想的な光軸から出射光束の位置がずれてしまう位置ずれを引き起こし、偏光子60を設置する場所によって反射率測定装置1の性能に与える影響が異なる。ここで、図4は、偏光子60における出射光束光軸の角度ずれを示す図であり、図5は、偏光子60における出射光束の光軸の位置ずれを示す図である。
【0025】
ここで、図6乃至図9を参照して、偏光子60の角度ずれ及び位置ずれについて、図2で示した第1乃至第3の多層膜ミラー62乃至66の配置を例に詳しく説明する。図6は、偏光子60の設計誤差による角度ずれを示す図、図7は、偏光子60の設計誤差による位置ずれを示す図、図8は、偏光子60の設置誤差による角度ずれを示す図、図9は、偏光子60の設置誤差による位置ずれを示す図である。
【0026】
図6を参照するに、第1及び第2の多層膜ミラー62及び64は、入射光束の光軸に対し正しく設置されているが、第3の多層膜ミラー66の角度が正しい角度からΔθずれている。この場合、出射光束の光軸角度は入射光束の光軸に対して2Δθほどずれてしまう。また、図7を参照するに、第1及び第2の多層膜ミラー62及び64は、入射光束の光軸に対し正しく設置されているが、第3の多層膜ミラー66の位置が正しい位置からΔyだけずれている。この場合、出射光束の光軸角度は入射光束の光軸と平行であるが、位置がΔyだけずれてしまう。
【0027】
また、第1乃至第3の多層膜ミラー62乃至66の位置関係が正しく設置されて、それ自体は正確な偏光子であったとしても、入射光束の光軸に対して正しく設置されなければ誤差が生じる。図8を参照するに、第1の多層膜ミラー62へ入射される入射光束の光軸角度がΔθずれている。この場合、出射光束の光軸角度は光軸に対して2Δθほどずれてしまう。また、図9を参照するに、入射光束の光軸と第1の多層膜ミラー62の中心62aがΔyずれている。この場合、出射光束の光軸角度は入射光束の光軸と平行であるが、位置が2Δyだけずれてしまう。
【0028】
従って、偏光子60の角度ずれ及び/又は位置ずれが起きると理想的な結像位置から像が動くという問題が生じる。図10は、偏光子60の角度ずれによる結像位置のずれを示す図である。図10を参照するに、偏光子60の出射光束の光軸角度ずれΔθと、スリット50と偏光子60までの距離dの積は、後置鏡70から見たスリット50の開口位置(即ち、物点位置)の移動量Mと等価である。例えば、偏光子60の設置誤差により出射光束に1mradの誤差が生じた場合、スリット50から1mの場所に偏光子60があればスリット50の位置が1mm動いたことになり、0.1mの場所に偏光子60があればスリット50の位置が0.1mm動いたことに等価である。また、被測定体90上での光束移動量(即ち、結像位置の移動量)は、スリット50の開口位置の移動量Mと後置鏡70の倍率との積と等価である。従って、偏光子60の後段に後置鏡70などの結像光学系がある場合には、偏光子60をスリット50に近い場所(即ち、被測定試料と略共役な位置)に設置する方が、偏光子60の角度に関する設置誤差を軽減することになる。
【0029】
一方、光軸に垂直な方向の偏光子60の位置ずれは、図11に示すように、出射光束の光軸を平行に動かす。ここで、図11は、偏光子60の位置ずれによる結像位置のずれを示す図である。図11を参照するに、光軸に垂直な方向の偏光子60の位置ずれにより、出射光束の後置鏡70への入射位置が変化する。しかし、後置鏡70の入射位置の変化は平行移動であるので、スリット50から後置鏡70までのどの場所に偏光子60を設置した場合も後置鏡70の入射位置に与える影響は同じである。
【0030】
従って、偏光子60の後段に後置鏡70のような結像光学系がある場合は、偏光子60の角度ずれに対しては偏光子60をスリット50(即ち、物点位置)又は可能な限りその近傍(略共役な位置)に設置することが望ましい。また、偏光子60と被測定体の間に後置鏡70のような結像光学系がない場合は、できるだけ被測定体90の近傍に偏光子60を設置することで設置誤差の影響を小さくすることができる。
【0031】
再び、図1に戻って、後置鏡70は、集光作用を持ちスリット50の像を被測定体90上へ結像する。被測定体90と検出器80は、図示しないθ‐2θステージに設置され、検出器80により被測定体90の反射光強度を検出し反射率を測定する。
【0032】
測定において、光源10から発せられた無偏光のEUV光は、前置鏡20で結像され、スリット30によりサイズが整形される。サイズが整形されたEUV光は、回折格子40により波長毎に異なる角度に回折されスリット50により分光される。分光されたEUV光は、偏光子60により直線偏光の単色光に変換され、後置鏡70によって集光され被測定体90を照射し、検出器80により反射率が測定される。前置鏡20、回折格子40、後置鏡70は、X線領域での全反射を利用するため、通常、斜入射で用いられる。また、偏光子60を導入することで、p偏光又はs偏光又は無偏光の選択が可能となり3種類の測定を容易に行なうことができる。また、直線偏光のX線を用いて測定する場合には充分な偏光度が得られる。
【0033】
以上、無偏光の光源10と、光軸を変化させないと共に、移動及び回転可能な偏光子60を組み合わせることで、容易に偏光を考慮した測定が可能となる。また、同時に偏光子60の設置場所を最適化することで、設計誤差及び設置誤差があった場合の影響を軽減することができる。従って、反射率測定装置1は、偏光のゆらぎの影響を受けることなく、光学部材等の反射率を高精度に測定することが可能となる。
【0034】
更に、波長依存性を測定するときには、スリット30を固定したまま回折格子40を回転し、波長走査を行う。偏光子60は、第1乃至第3の多層膜ミラー62乃至66で構成されているため、近似的に以下の数式2に示すブラッグの式で表されるように、波長によって最適な膜厚が変化する。
【0035】
【数2】
Figure 0003652296
【0036】
そこで、図12に示すように、第2の多層膜ミラー64の多層膜に位置の関数として膜厚分布Tをつける。従って、波長に応じて第2の多層膜ミラーだけを光軸方向に移動することで反射率の低下を防ぐことができる。ここで、図12は、膜厚分布Tを施した第2の多層膜ミラー64の概略断面図である。
【0037】
図13は、膜厚選択装置の概略図である。分光器100と多層膜ミラー駆動ステージ110は、コントローラー120を介して接続されており、波長に応じて多層膜ミラー駆動ステージ110が駆動し、第2の多層膜ミラー64を最適な膜厚分布位置に移動させる。分光器100は、波長による回折角の違いを利用して所望の波長だけがスリット50を通過するようにする。偏光子60の角度ずれ及び位置ずれが起きると所望の波長がスリット50を通過できず、所望の波長と異なった波長の光がスリット50を通過することになり、所望の波長の光が取り出せないことになる。従って、偏光子60はスリット50から下段に設置することが望ましい。さらに、後置鏡70がある場合は可能な限りスリット50に近い場所に設置することが望ましく、後置鏡70がない場合は可能な限り被測定体90に近い場所に設置することが望ましい。なお、本実施形態においては、第2の多層膜ミラー64に膜厚分布Tを施したが、第1及び第3の多層膜ミラー62及び66に膜厚分布Tを施して波長の変化に応じて移動させてもよい。
【0038】
以下、図14を参照して、光電子分光装置2について説明する。図14は、本発明の光電子分光装置2の概略図である。なお、図1及び図13で示すのと同一の部材については同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。光電子分光装置2は直線偏光が必要な測定装置の1つであり、特に、結晶や配向試料の測定に必要となる。
【0039】
光電子分光装置2は、図14に示すように、光源10と、分光器100と、偏光子60と、回転ステージ130と、エネルギー分析器140と、真空チャンバ150とを有する。光電子分光装置2は真空中に置かれた被測定体90に、高エネルギーの直線偏光した単色光を照射し、外部光電効果によって放出される光電子のスペクトルを測定する。光電子分光装置2は、分光器100と被測定体90の間に光学系がない装置である。このような装置の場合、偏光子60を設置することによる被測定体90のビーム位置変動は、偏光子60をできるだけ被測定体90近傍に設置することで低減される。
【0040】
光源10からの光は、分光器100により単色化される。そして、被測定体90近傍に設置された偏光子60により直線偏光となって被測定体90に照射され、被測定体90から出てきた光電子をエネルギー分析器140により測定及び解析することで被測定体90の固有の情報を得ることができる。より詳細な情報を得るには、偏光子90の偏光面を切り替えて、再度測定を行う。
【0041】
光源10をシンクロトロン光源とし、偏光子60を用いずに測定を行う場合、被測定体90に対する偏光面を切り替えるためには、被測定体90の入った真空チャンバー150を回転させなければならない。しかし、図14に示した構成であれば、偏光子60を回転するだけで、被測定体60に対する偏光面を切り替えることができ、容易に詳細な被測定体90の情報を得ることができる。従って、光電子分光装置2は、偏光のゆらぎの影響を受けることなく、光学部材等に用いられる結晶等を高精度に測定することが可能となる。
【0042】
以上、反射率測定装置1及び光電子分光装置2を例に説明したが、本発明はこれらに限るものではなく、偏光が必要な反射型XAFS、蛍光XAFS、X線小角散乱、軟X線分光計、X線回折、XPS、AES、RHEED、REED等の測定にも有効である。
【0043】
以下、図15を参照して、本発明の例示的な露光装置300について説明する。ここで、図15は、露光装置300の概略ブロック図である。露光装置300は、図15に示すように、回路パターンが形成されたマスク又はレチクル(本出願ではこれらの用語を交換可能に使用する)320を照明する照明装置310と、プレートを支持するステージ345と、照明されたマスクパターンから生じる回折光をプレート340に投影する投影光学系330とを有する。
【0044】
露光装置300は、例えば、ステップアンドリピート方式やステップアンドスキャン方式でマスク320に形成された回路パターンをプレート340に露光する投影露光装置である。かかる露光装置は、サブミクロンやクオーターミクロン以下のリソグラフィ工程に好適であり、以下、本実施形態ではステップアンドスキャン方式の露光装置(「スキャナー」とも呼ばれる)を例に説明する。ここで、「ステップアンドスキャン方式」は、マスクに対してウェハを連続的にスキャンしてマスクパターンをウェハに露光すると共に、1ショットの露光終了後ウェハをステップ移動して、次のショットの露光領域に移動する露光方法である。「ステップアンドリピート方式」は、ウェハのショットの一括露光ごとにウェハをステップ移動して次のショットを露光領域に移動する露光方法である。
【0045】
照明装置310は、転写用の回路パターンが形成されたマスク320を照明し、光源部312と照明光学系314とを有する。
【0046】
光源部312は、例えば、光源としてレーザーを使用する。レーザーは、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザー、波長約157nmのFエキシマレーザーなどを使用することができるが、レーザーの種類はエキシマレーザーに限定されず、例えば、YAGレーザーを使用してもよいし、そのレーザーの個数も限定されない。例えば、独立に動作する2個の固体レーザーを使用すれば固体レーザー間相互のコヒーレンスはなく、コヒーレンスに起因するスペックルはかなり低減する。さらにスペックルを低減するために光学系を直線的又は回転的に揺動させてもよい。また、光源部312にレーザーが使用される場合、レーザー光源からの平行光束を所望のビーム形状に整形する光束整形光学系、コヒーレントなレーザー光束をインコヒーレント化するインコヒーレント化光学系を使用することが好ましい。また、光源部312に使用可能な光源はレーザーに限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプなどのランプも使用可能である。
【0047】
照明光学系314は、マスク320を照明する光学系であり、レンズ、ミラー、ライトインテグレーター、絞り等を含む。例えば、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順で整列する等である。照明光学系314は、軸上光、軸外光を問わず使用することができる。ライトインテグレーターは、ハエの目レンズや2組のシリンドリカルレンズアレイ(又はレンチキュラーレンズ)板を重ねることによって構成されるインテグレーター等を含むが、光学ロッドや回折素子に置換される場合もある。かかる照明光学系314のレンズなどの光学素子に本発明の光学装置で所定値の光学特性を有すると測定された光学素子を使用することができる。
【0048】
マスク320は、例えば、石英製で、その上には転写されるべき回路パターン(又は像)が形成され、図示しないマスクステージに支持及び駆動される。マスク320から発せられた回折光は投影光学系330を通りプレート340上に投影される。プレート340は、ウェハや液晶基板などの被処理体でありレジストが塗布されている。マスク320とプレート340とは共役の関係にある。スキャナーの場合は、マスク320とプレート340を走査することによりマスク320のパターンをプレート340上に転写する。ステッパーの場合は、マスク320とプレート340を静止させた状態で露光が行われる。
【0049】
投影光学系330は、複数のレンズ素子のみからなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも一枚の凹面鏡とを有する光学系(カタディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子と少なくとも一枚のキノフォームなどの回折光学素子とを有する光学系、全ミラー型の光学系等を使用することができる。色収差の補正が必要な場合には、互いに分散値(アッベ値)の異なるガラス材からなる複数のレンズ素子を使用したり、回折光学素子をレンズ素子と逆方法の分散が生じるように構成したりする。かかる投影光学系330のレンズなどの光学素子に本発明の光学装置で所定値の光学特性を有すると測定された光学素子を使用することができる。
【0050】
プレート340にはフォトレジストが塗布されている。フォトレジスト塗布工程は、前処理と、密着性向上剤塗布処理と、フォトレジスト塗布処理と、プリベーク処理とを含む。前処理は、洗浄、乾燥などを含む。密着性向上剤塗布処理は、フォトレジストと下地との密着性を高めるための表面改質(即ち、界面活性剤塗布による疎水性化)処理であり、HMDS(Hexamethyl−disilazane)などの有機膜をコート又は蒸気処理する。プリベークは、ベーキング(焼成)工程であるが現像後のそれよりもソフトであり、溶剤を除去する。
【0051】
ステージ345は、プレート340を支持する。ステージ345は、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができるので、ここでは詳しい構造及び動作の説明は省略する。例えば、ステージ345は、リニアモーターを利用してXY方向にプレート340を移動することができる。マスク320とプレート340は、例えば、同期走査され、ステージ345と図示しないマスクステージの位置は、例えば、レーザー干渉計などにより監視され、両者は一定の速度比率で駆動される。ステージ345は、例えば、ダンパを介して床等の上に支持されるステージ定盤上に設けられ、マスクステージ及び投影光学系330は、例えば、鏡筒定盤は床等に載置されたベースフレーム上にダンパ等を介して支持される図示しない鏡筒定盤上に設けられる。
【0052】
露光において、光源部312から発せられた光束は、照明光学系314によりマスク320を、例えば、ケーラー照明する。マスク320を通過してマスクパターンを反映する光は投影光学系330によりプレート340に結像される。露光装置300が使用する照明光学系314及び投影光学系330は、本発明の光学装置で光学特性が所定値を満たすと測定された光学素子を含んで紫外光、遠赤外光及び真空紫外光を高い透過率で透過するので、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。
【0053】
次に、図16及び図17を参照して、上述の露光装置300を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。図16は、デバイス(ICやLSIなどの半導体チップ、LCD、CCD等)の製造を説明するためのフローチャートである。ここでは、半導体チップの製造を例に説明する。ステップ1(回路設計)では、デバイスの回路設計を行う。ステップ2(マスク製作)では、設計した回路パターンを形成したマスクを製作する。ステップ3(ウェハ製造)では、シリコンなどの材料を用いてウェハを製造する。ステップ4(ウェハプロセス)は、前工程と呼ばれ、マスクとウェハを用いてリソグラフィ技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。ステップ5(組み立て)は、後工程と呼ばれ、ステップ4によって作成されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では、ステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テストなどの検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、それが出荷(ステップ7)される。
【0054】
図17は、ステップ4のウェハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウェハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウェハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウェハ上に電極を蒸着などによって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)では、ウェハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)では、ウェハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置300によってマスクの回路パターンをウェハに露光する。ステップ17(現像)では、露光したウェハを現像する。ステップ18(エッチング)では、現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによってウェハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施例の製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されずその要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、非直線偏光の光源と、光軸を変えずに直線偏光に変換する偏光子を用いることで、偏光度の高い、偏光面の切り替え可能な直線偏光を作り出すことが可能となり、容易に高精度な被測定試料の偏光に依存した特性の測定をすることができる。さらに、偏光子の設置場所を最適化することで偏光子の設計誤差、設置誤差があった場合に被測定体上の照射位置変動、被測定体への入射角変動等の影響を軽減することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学装置の一例としての反射率測定装置の概略図である。
【図2】 図1に示す偏光子の概略図である。
【図3】 図2に示す偏光子の変形例である偏光子の概略図である。
【図4】 図1に示す偏光子における出射光束の光軸の角度ずれを示す図である。
【図5】 図1に示す偏光子における出射光束の光軸の位置ずれを示す図である。
【図6】 図1に示す偏光子の設計誤差による出射光束の光軸の角度ずれを示す図である。
【図7】 図1に示す偏光子の設計誤差による出射光束の光軸の位置ずれを示す図である。
【図8】 図1に示す偏光子の設置誤差による出射光束の光軸の角度ずれを示す図である。
【図9】 図1に示す偏光子の設置誤差による出射光束の光軸の位置ずれを示す図である。
【図10】 図1に示す偏光子の角度ずれによる結像位置のずれを示す図である。
【図11】 図1に示す偏光子の位置ずれによる結像位置のずれを示す図である。
【図12】 膜厚分布を施した多層膜ミラーの概略断面図である。
【図13】 膜厚選択装置の概略図である。
【図14】 本発明の光学装置の一例としての光電子分光装置の概略図である。
【図15】 本発明の例示的な露光装置の概略ブロック図である。
【図16】 本発明の露光装置を有するデバイス製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図17】 図5に示すステップ4の詳細なフローチャートである。
【図18】 光の偏光を示す概略図である。
【図19】 多層膜ミラーの反射率特性を示すグラフである。
【図20】 シンクロトロン光源を用いた反射率計の概略図である。
【符号の説明】
1 反射率測定装置
2 光電子分光装置
10 光源
40 回折格子
60、60A 偏光子
62 第1の多層膜ミラー
64 第2の多層膜ミラー
66 第3の多層膜ミラー
68 第4の多層膜ミラー
100 分光器
300 露光装置

Claims (6)

  1. 被測定体の偏光に依存した特性を測定する光学装置であって、
    極端紫外線領域又はX線領域の非直線偏光の光束を射出する光源と、
    前記光源から射出された前記光束を順次反射するとともに入射光束の光軸と出射光束の光軸とが同一直線上にあるように配置された3回以上反射するミラー群で構成され回転可能な偏光子とを有する光学装置。
  2. 前記偏光子は、前記入射光束の光軸を中心軸として回転可能である請求項1記載の光学装置。
  3. 前記偏光子は、前記光源から射出される前記光束の光路に対して退避可能である請求項1記載の光学装置。
  4. 前記偏光子からの前記出射光束を前記被測定体で結像する結像光学系を有し、
    前記偏光子は、前記結像光学系と光学的に略共役な位置に配置される請求項1記載の光学装置。
  5. 前記偏光子は、前記被測定体に近接して配置される請求項1記載の光学装置。
  6. 前記ミラー群の少なくとも一枚のミラーは、入射光束に対しブリュースター角に近い入射角度となるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項記載の光学装置。
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