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JP3539634B2 - 回路搭載用窒化ケイ素基板および回路基板 - Google Patents

回路搭載用窒化ケイ素基板および回路基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐圧・高電流のパワ−モジュ−ル等の実装に適した回路基板およびそれに用いる回路搭載用窒化ケイ素質基板(以下、窒化ケイ素基板と称する)に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化ケイ素焼結体は、高温強度特性、耐摩耗性等の機械的特性に加え、耐熱性、低熱膨張性、耐熱衝撃性及び金属に対する耐食性に優れているので、従来からガスタ−ビン用部材、エンジン用部材、製鋼用機械部材あるいは溶融金属の耐溶部材等の各種の構造用部材に用いられている。また、高い絶縁性を利用して電気絶縁材料としても使用されている。
【0003】
最近、高周波トランジスタ、パワーIC等の発熱量の大きい半導体素子の発展に伴い、電気絶縁性に加えて良好な放熱特性(高い熱伝導率)を有するセラミックス基板の需要が増加している。このようなセラミックス基板として既に窒化アルミニウム基板が用いられているが、窒化アルミニウム基板は機械的強度や破壊靭性等が低く、基板ユニットの組立て工程での締め付けによって割れるおそれがある。また、ケイ素半導体素子を窒化アルミニウム基板に実装した回路基板では、ケイ素(Si)と窒化アルミニウム基板との熱膨張差が大きいため、冷熱サイクルにより窒化アルミニウム基板にクラックや割れが発生し、実装信頼性が低下するという問題がある。
【0004】
そこで、窒化アルミニウムより熱伝導率は劣るものの、熱膨張率がSiに近似すると共に、機械的強度、破壊靭性及び耐熱疲労特性に優れた高熱伝導性窒化ケイ素焼結体からなる基板が注目されている。
【0005】
また、回路基板としては、上記のような材料特性に優れる窒化ケイ素基板に銅回路を形成させてなるものや、更なる耐冷熱サイクル特性に対する向上を目的にアルミニウム回路を形成させてなるものが種々検討されている。
【0006】
例えば銅回路基板については、特開平6−216481号公報には、熱伝導率が60〜180W/m・Kである窒化ケイ素基板の表面に、活性金属を含有する接合金属層を介して、銅回路板を一体的に接合してなるセラミックス銅回路基板が記載されている。この回路基板では、15〜35重量%のCuと、Ti、Zr、Hf及びNbからなる群から選択された少なくとも一種の活性金属1〜10重量%とを含有し、残部実質的にAgからなる組成を有するろう材を用いることにより、銅回路板と窒化ケイ素基板との間の接合強度を向上させている。
【0007】
また、特開平8−319187号公報には、大気中にて温度150〜360℃の範囲で表面酸化処理により酸化銅層を形成した銅回路板を窒化ケイ素基板表面の所定位置に配置し、銅の融点(1083℃)未満で銅−酸化銅の共晶温度(1065℃)以上の温度に加熱し、生成したCu-O共晶化合物液相を接合剤として銅回路板を窒化ケイ素基板表面に直接的に接合する、いわゆるDBC(Direct Bonding Cupper)回路基板が記載されている。この回路基板では、銅板を窒化珪素基板に直接接合するため、金属回路板と窒化珪素基板との間に接着剤及びろう材のような介在物が存在しない。したがって両者間での熱抵抗が低く、金属回路板上に設けられた半導体素子の発熱を系外に迅速に放散できるという利点を有する。
【0008】
また、アルミニウム回路基板については、特開平10−65296号公報には、Siにより形成されたセラミックス基板と、当該セラミックス基板の両面にAl-Siろう材を介してそれぞれ接着したアルミニウム板とを備えた回路基板が記載されている。この回路基板は、従来の銅や銅合金等にて形成された金属部材に比して変形抵抗が小さくなり、回路基板に冷熱サイクルを付加したとき、セラミックス基板に作用する熱応力が小さいので、セラミックス基板にクラックが発生しないという利点を有する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の回路基板では、銅又はアルミニウム等の金属回路板と窒化ケイ素基板との接合状態を支配する窒化ケイ素基板の表面形態の検討はなされていない。上記したいずれの接合方法でも窒化ケイ素基板の表面形態を調整しないと、銅又はアルミニウム等の金属回路板と窒化ケイ素基板との接合強度および耐冷熱サイクル特性等にばらつきが生じ、高信頼性の回路基板が得られないといった問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、接合強度および耐冷熱サイクル特性に優れた回路基板の製造に好適な表面性状を有する窒化ケイ素基板およびこれを用いた回路基板を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の回路搭載用窒化ケイ素基板は、実質的に窒化ケイ素粒子と粒界相とからなる窒化ケイ素焼結体基板において、当該焼結体基板表面における窒化ケイ素粒子と粒界相の合計面積率を 100 %としたとき、前記窒化ケイ素粒子の面積率が 70 100 %であり、表面に露出した窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と、窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)が 1.5 15 μmであり、中心線平均粗さ( Ra )が 0.2 5 μmの表面性状を有することを特徴とする。
【0012】
本発明において、中心線平均粗さ( Ra )が 20 μm超では、窒化ケイ素基板に金属回路板を接合したとき接合界面に局所的にボイドが生成し、未接着面積が多くなり接合強度の著しい低下を招く。一方、中心線平均粗さ( Ra )が 0.2 μm未満では、ボイドの生成を抑制できるが、アンカ−リングによる複合効果が得られないため、やはり充分な接合強度が得られない。従って、窒化ケイ素基板の表面性状に関し、中心線平均粗さ( Ra )は 0.2 20 μmが望ましい。特に実施例に示すように 0.2 5 μmが望ましい。
また、本発明の窒化ケイ素基板は、実質的に窒化ケイ素粒子と粒界相とからなる窒化ケイ素焼結体からなり、基板表面における前記窒化ケイ素粒子及び前記粒界相の合計面積率を100%として、前記窒化ケイ素粒子の面積率が70〜100%であるのが好ましい。この条件を満たす窒化ケイ素基板は、優れた耐熱衝撃性及び耐熱疲労信頼性を有する。
【0013】
また、基板表面に露出した窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と、窒化ケイ素粒子又は粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)が1〜40μmであるのが好ましい。高低差(L)が40μm超では窒化ケイ素基板と金属回路板との接合界面に局所的にボイドが生成し、未接着面積が多くなり接合強度の低下を生じる。また1μm未満ではボイドの生成を抑制できるが、アンカ−リングによる複合効果が得られないため、やはり充分な接合強度が得られない。特に実施例に示すように 1.5 15 μmが望ましい。
【0014】
本発明の回路基板は、高強度・高熱伝導性窒化珪素焼結体からなる基板の少なくとも一面に金属回路板を接合してなる。金属回路板としてはAlあるいはCuを接合してなるものが好ましく、従来に比べて格段に優れた接合強度および耐冷熱サイクル特性が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。まず、本発明の窒化ケイ素基板の表面性状を調整する方法としては、例えばサンドブラスト、ショットブラスト、グリッドブラストまたはハイドロブラスト等の機械加工により粒界相を機械的に除去する方法がある
【0016】
銅又はアルミニウム等の金属板を窒化ケイ素基板に接合するには、ろう付け法が好ましい。前述のように、銅板に対してはTi、ZrまたはHf等の活性金属を含有するAg−Cu合金を、またアルミニウム板に対してはAl-Si合金をろう材として用いるのが好ましい。さらに銅板およびアルミニウム板にそれぞれCu-O及びAl−O共晶化合物液相を接着層として用い、これらの金属回路板を直接窒化ケイ素基板に接合しても良い。
【0017】
金属回路板と窒化ケイ素基板との接合強度を支配する因子には、(1)接合物質間のぬれ及び拡散、(2)界面生成物の強度、及び(3)界面構造がある。
例えば、活性金属のTiを含有するAg-Cu合金をろう材として、金属板を窒化ケイ素基板に接合する活性金属法では、界面の接合強度は、(2)および(3)の因子に大きく影響される。この場合、界面生成物はろう材相/窒化ケイ素の界面に生成するTiN相である。このTiN相の生成過程について詳述すると、窒化ケイ素が加熱処理過程でろう材相と接触すると、SiとNはろう材相に解けて液相の混相が生成する。次に分解によって生成した液相領域からTiN粒子が核生成し、窒化ケイ素とろう材との接合界面に沿って成長する。TiN粒子は特定の結晶学的方位関係にある結晶粒界で生成し成長するため、TiN相と窒化ケイ素とは結晶的整合性があり、接合強度が上昇する。したがって、強固な接合強度を得るためには、ろう材相/窒化ケイ素界面に、充分にTiN粒子を析出させることが肝要である。
【0018】
また、銅又はアルミニウムの共晶酸化物液相を接着剤として用いる直接接合法でも、接合界面に界面生成物となる酸化膜相の最適化を図る必要がある。ここで、酸化膜相は、窒化ケイ素基板の場合、焼結助剤成分とSiOとのシリケ−ト結晶相およびガラス相からなる。具体的に焼結助剤としてYを用いる場合、Y・2SiO相とY−SiO系ガラスとを生成する。金属回路板と窒化ケイ素基板との接合強度はこれらシリケ−ト相及びガラス相の生成形態に大きく依存する。したがって、直接接合法では、酸化膜相の生成形態を制御することが肝要である。
【0019】
しかしながら、これら金属回路板と窒化ケイ素基板との接合強度を支配するTiN相又は酸化膜相の生成は、基板表面性状が適切な場合にのみ形成される。前者では、窒化ケイ素基板表面に大きな凹凸があると、ろう材相が全面に浸透せず、ろう材相/窒化ケイ素界面にボイドが形成され、接合不良が生じる。後者では、酸化膜相の生成はあるものの、やはり全面に浸透せず、同様に接合不良が生じる。
一方、窒化ケイ素基板の表面に凹凸が極めて少ない場合、界面生成物は析出するが、その反面、ろう材相の窒化ケイ素粒子間への噛み込みによるアンカ−効果がなくなり、その結果、接合強度が低下する。このように充分な接合強度を得るためには、窒化ケイ素基板の表面形態は所定の条件を満たす必要がある。
【0020】
また、本発明の窒化ケイ素基板では、窒化ケイ素粒子の面積率が70〜100%であるものが好ましい。
上述した活性金属法の場合、ろう材相と窒化ケイ素粒子とが接触した結果生成するTiN相が接合強度を支配するが、焼結助剤成分からなる粒界相が多いと、このTiN相に加え粒界相に溶解したSi成分が粒界相を通じて拡散し、過剰なTi成分と反応して5Ti+3Si→TiSiの反応によりTiケイ化物を形成する。このTiケイ化物は低強度であるのみならず、熱膨張係数は9.5×10−6/KとSi34の熱膨張係数3.2×10−6/Kの約3倍も大きい。このため、熱膨張係数差に起因するSi34/TiSi間での界面剥離が生じ、著しい接合強度の低下を招く。したがって、充分な接合強度を得るために、粒界相量を低減することが重要である。
【0021】
また直接接合法の場合、接合界面に生成する酸化膜相が接合強度を支配するが、この酸化膜は焼結助剤成分とSiOとのシリケ−ト結晶相およびガラス相からなり、Yを焼結助剤とした場合はY・2SiO相及びY−SiO系ガラス相を生成する。接合界面において助剤成分からなる粒界相量が多くなると、ガラス相の生成割合が高くなり、これに伴い接合強度は向上する。しかしながら、更に粒界相量が増大すると低強度であるシリケ−ト相の生成割合が大きくなり、強度は著しく低下する。
したがって、いずれの接合方法を用いる場合も、窒化ケイ素粒子及び粒界相の適正な比率範囲が存在する。本発明では窒化ケイ素基板での窒化ケイ素粒子の面積率は70〜100%であるのが好ましいことを新しく知見した。
【0022】
本発明の窒化ケイ素基板を用いて構成される回路基板は、金属とセラミックス基板の接合強度が優れる点、また高い耐冷熱サイクル特性等の強度信頼性を生かしてパワ−半導体用基板、マルチチップモジュ−ル用基板などの各種基板、ペルチェ素子用熱伝板、あるいは各種発熱素子用ヒ−トシンクなどの電子部品用部材として好適である。
【0023】
本発明の窒化ケイ素基板により半導体素子用基板を構成した場合、半導体素子の作動に伴う繰り返しの冷熱サイクルによる基板のクラックの発生が抑制され、耐熱衝撃性および耐冷熱サイクル性が著しく向上し、耐久性ならびに信頼性に優れたものを提供できる。また、高出力化および高集積化を指向する半導体素子を搭載した場合でも熱抵抗特性の劣化が少なく、かつ優れた放熱特性を発揮する。また本発明の窒化ケイ素基板による優れた機械的特性を反映してそれ自体が構造部材を兼ねることができるので回路基板構造を簡略化できるという実用性に富んだ利点を有する。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
平均粒子径が0.2〜3.0μmの窒化ケイ素粉末:96重量部に対し、MgO:3重量部、および Y:1重量部の焼結助剤を添加した混合粉末を作製した。次に、アミン系の分散剤を2wt%添加したトルエン・ブタノール溶液を満たしたボールミルの樹脂製ポット中に、前記混合粉末および粉砕媒体の窒化ケイ素製ボールを投入し、48時間湿式混合した。次に、前記ポット中の混合粉末:83.3重量部に対しポリビニル系の有機バインダー:12.5重量部および可塑剤(ジメチルフタレ−ト):4.2重量部を添加し、次いで48時間湿式混合しシート成形用スラリーを得た。この成形用スラリーを調整後、ドクターブレード法によりグリーンシートを成形した。次に、成形したグリーンシートを空気中400〜600℃で2〜5時間加熱することにより前記有機バインダー成分を十分に除去し、脱脂したグリーンシートを0.9MPa(9気圧)の窒素雰囲気中で1850℃で5時間焼結し、さらに同じ窒素雰囲気中で1900℃で24時間熱処理し、次いで室温に冷却した。得られたシート状窒化ケイ素焼結体を機械加工し、サンドブラストにより表面性状を調整し、縦50mm×横50mm×厚さ0.6mmの半導体モジュール用窒化ケイ素基板を得た。サンドブラスト条件は以下の通りであった。
基板の送り速度:20 cm/分
処理ゾーンの長さ:80 cm
ノズル数:4本
ノズルの噴出圧力:0.35 MPa
基板表面に対する噴射角度:30°
砥粒:アルミナ製#240
【0025】
サンドブラスト処理により焼結体表面の粒界相が除去されるので、サンドブラスト処理条件(板の送り速度、処理ゾーンの長さ、ノズルの数及び噴出圧力、基板表面に対する噴射角度、砥粒の種類及び粒度等)を調整すれば、焼結体の中心線平均表面粗さ(Ra)、窒化ケイ素粒子、粒界相の面積率、及び窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と、窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)を自在に変化させた窒化ケイ素基板を得ることができる。上記のサンドブラスト条件で処理して得られた本発明の半導体モジュール用の代表的な窒化ケイ素基板の中心線平均粗さ(Ra)を触針式表面粗さ測定器により測定した結果を図1に示す。図1において、横軸は窒化ケイ素基板表面の測定長さ(30mm)を示し、縦軸はRaを示す。また測定の原点は0であり、Raおよび測定長さのスケールは左下に示す。この結果、本実施例の窒化ケイ素基板のRaは0.6μmであり、窒化ケイ素粒子の面積率は81.0%であり、粒界相の面積率は19.0%であった。
【0026】
得られた窒化ケイ素基板の表面部組織を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、商品名:S4500)により倍率2000倍で撮影した写真を図2(a)に示す。図2(b)は図2(a)の走査型電子顕微鏡写真に対応する模式図であり、窒化ケイ素粒子は21、粒界相は22で示されている。また、比較例として窒化ケイ素粒子の面積率が5%である窒化ケイ素基板の表面組織写真を図7に示す。次に、図3(a)および(b)はRa=0.6μmの前記窒化ケイ素基板を用いて構成した本発明の回路基板の代表的な断面組織を走査型電子顕微鏡により倍率50倍及び4000倍で撮影した写真であり、Cu回路板31と窒化ケイ素基板33とがろう材層32を介して接合されている。図4は、図3(b)におけるCu回路板31とろう材層32とを除去した状態、すなわちCu回路板31に接合する前の窒化ケイ素基板33の表面状態を示す断面模式図である。ここで窒化ケイ素基板33における(L)は、窒化ケイ素粒子21の最大高さの山頂部41と、窒化ケイ素粒子21あるいは粒界相22の最低高さの谷底部42との高低差43に相当する。
【0027】
次に、サンドブラスト処理条件を適宜変えて作製した前記窒化ケイ素基板のうちの代表的なもの(試料No.1〜10)をサンプリングし、それらの断面組織写真を前記走査型電子顕微鏡により倍率2000倍で撮影し、得られた断面組織写真の200μm×500μmの視野において長さ:500μmにわたり窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)を測定した。また得られた断面組織写真の200μm×500μmの視野を画像解析装置により解析し、窒化ケイ素粒子および粒界相の平均面積率を求めた。また金属回路板と窒化ケイ素基板(試料No.1〜10)との接合強度を評価するためにピール強度試験を行った。ピ−ル強度試験は、図5に示す回路基板50の銅製またはアルミニウム製回路板52の一端部が窒化ケイ素基板51の側面に対し5mm突出するように予め接合しておき、これを90度上方に引張りあげるのに要する単位長さ当りの力で評価した。
【0028】
次に、作製した前記窒化ケイ素基板(試料No.1〜10)により図6の回路基板60を作製した。回路基板60は前記縦50mm×横50mm×厚さ0.6mmの寸法の窒化ケイ素基板51の表面に銅製またはアルミニウム製の回路板61をろう材53により接合して設け、基板51の裏面には銅板またはアルミニウム板62をろう材53により接合して構成している。
試料No.1〜10の各窒化ケイ素基板の中心線平均粗さRa、窒化ケイ素粒子、粒界相の面積率およびLを表1に示す。また前記窒化ケイ素基板を用い、接合金属板が銅またはアルミニウム製で、ろう付けまたは直接接合した場合のピール強度および破壊発生位置(破壊モード)を表1に示す。なお、表1中の破壊モードの項目において、Cuは接合金属の銅より破壊した、Alは接合金属のアルミニウムより破壊した、接合界面は基板と接合金属との接合界面から破壊したことをそれぞれ示している。
【0029】
(比較例1)
サンドブラスト処理条件を変化させた以外は実施例1と同様にして、窒化ケイ素基板及び回路基板を作製し、評価した。結果を表1の試料No.21〜28に示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003539634
【0031】
表1の実施例の試料No.1〜10から、以下の知見が得られた。中心線平均粗さ(Ra)が0.2 5μmの表面性状を有し、表面部の窒化ケイ素粒子の面積率が70〜100%であり、窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)が1.5 15μmである窒化ケイ素基板を用い、銅またはアルミニウム製の金属板を接合した回路基板を作製し、ピ−ル強度を測定した場合、得られた回路基板のいずれも22.0kN/m以上と高いピール強度を有し、破壊は接合部から起こらないことが確認できた。
【0032】
これに対し、表1の比較例1の試料No.21〜23から、以下の知見が得られた。
(1)No.21の中心線平均粗さ(Ra)は0.2μm未満であり、ピール強度は8.5kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(2)No.22の中心線平均粗さ(Ra)は20μm超であり、ピール強度は9.5kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(3)No.23は窒化ケイ素粒子の面積率が70%未満でかつ粒界相の面積率が30%超であり、ピール強度は5.5kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(4)No.24の窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)は1μm未満であり、ピール強度は7.0kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(5)No.25の窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部の高低差(L)は45μmであり、ピール強度は6.5kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(6)No.26は、接合方法をろう付けから直接接合に変更した以外No.22と同じであるが、この場合もピール強度は7.0kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(7)No.27は、金属回路板を銅製からアルミニウム製に変更した以外No.22と同じであるが、この場合もピール強度は6.5kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
(8)No.28は、接合方法をろう付けから直接接合に変更した以外No.27と同じであるが、この場合もピール強度は6.2kN/mと低く、破壊は接合界面から生じた。
【0033】
(実施例2)
実施例1と同様の製造条件により作製した窒化ケイ素基板により図6の回路基板60を作製した。回路基板60は作製した縦50mm×横50mm×厚さ0.6mm寸法の窒化ケイ素基板51の表面にろう材53を介して銅製回路板61を設け、また窒化ケイ素基板51の裏面にもろう材53を介して銅製回路板62を接合して構成されている。得られた窒化ケイ素基板51のRaは5μmであり、窒化ケイ素粒子の面積率は85%であり、粒界相の面積率は15%であり、表面の頂部と谷底との高低差Lは5μmであった。回路基板60に対し、3点曲げ強度試験および耐冷熱サイクル試験を行った。その結果、曲げ強度は600MPa以上と大きく、回路基板60の実装工程における締め付け割れ及びはんだ付け工程時の熱応力に起因するクラックの発生は見られなかった。また回路基板60を実装した半導体装置(図示省略)の製造歩留まりが飛躍的に向上することが実証された。また耐冷熱サイクル試験は、−40℃での冷却を30分間、室温での保持を10分間、及び125℃における加熱を30分間とする昇温/降温サイクルを1サイクルとし、これを繰り返し行い、回路基板60にクラック等が発生するまでのサイクル数を測定した。その結果、1000サイクル経過後でも窒化ケイ素基板51の割れや銅製回路板61、62の剥離はなく、優れた耐久性と信頼性とを兼備することが確認された。また1000サイクル経過後においても回路基板60の耐電圧特性の低下はなかった。さらに、回路基板60を1000枚製造し、上記耐冷熱サイクル試験による不良発生個数のばらつきを調査したが、いずれの回路基板においても窒化ケイ素基板の割れや銅回路板の剥離は発生せず、優れた耐熱衝撃及び耐熱疲労信頼性を堅持していることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の窒化ケイ素基板は、銅あるいはアルミニウム等の金属回路基板を接合するのに好適な表面形態を有し、金属回路板と窒化ケイ素基板との接合強度を著しく向上することができる。
また本発明の窒化ケイ素基板は本来有する高強度/高靭性に加えて高い熱伝導率を具備するので、半導体素子用回路基板を構成した場合に半導体素子の作動に伴う繰り返しの冷熱サイクルに起因する基板の割れや金属回路板の剥離の発生を抑制でき、耐熱衝撃性ならびに耐冷熱サイクル性を著しく向上した回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化ケイ素基板の代表的な表面部のRa測定結果の一例を示す図である。
【図2】本発明の窒化ケイ素基板の代表的な表面部組織を走査型電子顕微鏡により撮影した顕微鏡写真(a)、(a)に対応する模式図(b)である。
【図3】本発明の窒化ケイ素基板の代表的な断面組織を走査型電子顕微鏡により撮影した顕微鏡写真(a)および(b)である。
【図4】図3(b)に対応する模式図である。
【図5】ピール強度試験用試料を示す断面図である。
【図6】本発明の代表的な回路基板を示す断面図である。
【図7】比較例の窒化ケイ素基板の表面部組織を走査型電子顕微鏡で撮影した写真である。
【符号の説明】
21:窒化ケイ素粒子
22:粒界相
31:Cu回路板
32:ろう材層
33:窒化ケイ素基板
41:窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部
42:窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部
43:窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)
50、60:回路基板
51:窒化ケイ素基板
52:銅合金製またはアルミニウム合金製回路板
53:ろう材
61、62:銅合金製回路板

Claims (2)

  1. 実質的に窒化ケイ素粒子と粒界相とからなる窒化ケイ素焼結体基板において、当該焼結体基板表面における窒化ケイ素粒子と粒界相の合計面積率を100%としたとき、前記窒化ケイ素粒子の面積率が70〜100%であり、表面に露出した窒化ケイ素粒子の最大高さの山頂部と、窒化ケイ素粒子あるいは粒界相の最低高さの谷底部との高低差(L)が 1.5 15 μmであり、中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜5 μmの表面性状を有することを特徴とする回路搭載用窒化ケイ素基板。
  2. 請求項1記載の回路搭載用窒化ケイ素基板の少なくとも一面にAlあるいはCuの回路板を接合してなることを特徴とする高強度・高熱伝導性に優れた回路基板。
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