JP3527185B2 - 生体組織の電気化学計測方法 - Google Patents
生体組織の電気化学計測方法Info
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Description
学計測方法に関する。
体中の特定の物質の検出は、装置が簡便かつ安価である
ため広く使用されている。特に、pH電極やイオン電極
のように汎用性の高い電極は、水質管理等の環境測定で
は不可欠である。
(例えば、M. Morita, O. Niwa, T. Horiuchi, Electro
chemical Acta, 42, 3177-3183, 1997)、極微小範囲に
おける時間分解能の高い「その場」測定を行うことがで
きるようになったため、電極は生体を対象にした測定に
も用いられるようになった(例えば、K. Torimitsu, O.
Niwa, Neuro Report, 8, 1353-1358, 1997)。電気化学
的な測定法では生体組織や細胞に対するダメージを軽減
することが可能であるため、同じ生体試料を長時間用い
ることができ、また繰り返し用いることが可能である。
電極を用いた、電気化学的手法による生体多点計測の試
みもなされている(N. Kasai, Y. Jimbo, O. Niwa, T.
Matsue, K. Torimitsu, Abstract for International M
eeting of ElectrochemicalSociety, 99-2, 1986, 199
9)。アレイ型電極を用いた測定法は、同時に複数の微
小領域における物質の濃度の変化を計測し、物質の分布
の動的変化を得るのに極めてすぐれた手法である。
て電極に特異性を与える際に頻繁に用いられる方法とし
て、電極上を修飾物により修飾する方法がある。修飾物
というのは、酵素、および酵素反応を効率よく検出する
ための電子移動メディエータの少なくとも一方である。
は複数の微小電極上を修飾物により修飾する場合、「酵
素、電子移動メディエータの少なくとも一方」(以下、
「酵素/メディエータ」と記す)を望む領域のみを修飾
することは困難であった。すなわち、酵素/メディエー
タを含む溶液を電極上のみに塗布することはできず、電
極およびその周辺部全体に塗布するという方法で行って
いた。
飾する酵素/メディエータの量を制御したり、均一な修
飾を行うことは困難である。また、異なる酵素/メディ
エータを複数の電極のうちの任意の電極上に修飾するこ
とは不可能である。また、修飾された電気化学的に活性
な物質が電極間に位置している場合、条件によっては、
その物質を通して電流が流れるなど電極間の相互干渉が
発生する。さらに、修飾される酵素の絶対量が多いた
め、酵素によって測定溶液中の測定対象である基質が消
費されて、溶液の濃度が低くなり、測定そのものの信頼
性を損なうことがある。
上のみに酵素/メディエータを修飾する技術が必要不可
欠の段階にきている。
る問題点を解消するものであって、例えばラット海馬内
の神経細胞間の情報伝達を担う代表的な神経伝達物質で
あるグルタミン酸のリアルタイム多点計測が可能とな
り、複数の細胞や生体組織を対象にした神経伝達物質の
分布のリアルタイムモニタリングが可能となる生体組織
の電気化学計測方法を提供することにある。
組織の電気化学計測方法は、電極が基板上にアレイ状に
配列され、該電極部分のみが選択的に酵素または電子移
動メディエータの少なくとも一方を含む修飾物により修
飾されているアレイ状の作用極を用い、上記アレイ状の
作用極を生体組織切片に密着させて測定溶液に浸し、上
記測定溶液に対極および参照極を配置して上記アレイ状
の作用極の各電極の電流変化を計測することを特徴とす
る。また、上記生体組織切片として脳切片を用いること
を特徴とする。また、上記生体組織切片として海馬切片
を用いることを特徴とする。また、上記測定溶液として
HEPES緩衝溶液を用いることを特徴とする。また、
上記修飾物として少なくともグルタミン酸酸化酵素を含
む修飾物により修飾されているアレイ状の作用極を用い
ることを特徴とする。また、上記修飾物として少なくと
もペルオキシダーゼを含む修飾物により修飾されている
アレイ状の作用極を用いることを特徴とする。また、上
記修飾物として少なくともオスミウムビピリジンを含む
修飾物により修飾されているアレイ状の作用極を用いる
ことを特徴とする。
用して電極上のみに効率よく酵素/メディエータを修飾
することにポイントがある。つまり、電極に電位を印加
する、あるいは電流を流すという至極簡便な方法によ
り、電極表面で例えば高分子が電気化学的に、すなわ
ち、酸化あるいは還元されて堆積する際に、同時に酵素
/メディエータを電極上に固定する。高分子とは、分子
量が10000以上の分子で、主として共有結合で連な
り、ある構造単位が規則的に繰り返された構造になって
いる化合物である。なお、本発明では、酵素/メディエ
ータが結合しているような高分子を用いることも可能で
ある(例えば、後述のポリビニルビピリジンは、西洋ワ
サビペルオキシダーゼという酵素と、オスミウムビピリ
ジン([Os(bpy)2Cl]2+/3+)という電
子移動メディエータが共有結合で結合している)。
ない分子。低分子)が重合されて高分子になる際に同時
に酵素/メディエータを取り込み、膜として電極表面に
固定する。なお、本発明では、単分子あるいは高分子が
メディエータとしての役割を担う場合もある。例えば後
述のトルイジンブルーは単分子であるが、電子移動メデ
ィエータでもある。
異なる電極上に修飾することにより、異なる領域におけ
る特定物質の分布の変化を観察することが可能である。
また、異なる酵素/メディエータを異なる電極上に修飾
することにより、同時に異なる物質を検出したり、濃度
変化を観察することが可能である。前者の場合は、生体
試料内の特定の物質の分布の変化に、後者の場合は、フ
ローインジェクション法や高速液体クロマトグラフィな
どと組み合わせ、均一の溶液中に含まれる複数の物質の
分析にも使用することが可能である。
重合の程度を制御できると同時に、固定される酵素/メ
ディエータの量を制御することが可能である。また、電
流を流していない電極には、高分子の生成・析出や酵素
/メディエータの修飾も行われないため、酵素/メディ
エータを修飾させる電極を、非常に簡単な方法で任意に
選択することも可能である。さらに、ある酵素/メディ
エータを含む溶液中で所定の電極群に電流を流してこれ
らの電極上にその酵素/メディエータを修飾させた後
に、溶液を交換して別の酵素/メディエータを含む溶液
中で、任意に選択した別の電流群に電流を流して、別の
酵素/メディエータを修飾させることも可能である。ま
た、修飾された修飾物である電気化学的に活性な物質は
電極上にのみ存在するため、電極間の電流の相互干渉を
低減できる。さらに、修飾された酵素の絶対量を少なく
するように制御できるため、測定対象である基質の消費
を極力抑えることが可能で、基質の濃度が低くなるのを
抑制し、基質の濃度を正確に測定することができる。
任意の電極上のみに、酵素/メディエータを精度良く修
飾させることを可能にし、複数の物質を検出できる微小
なセンサとしても極めて有効であり、また、特定の物質
を異なる位置で同時に計測し、二次元あるいは三次元に
おける濃度分布の変化を求めることも可能である。
詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機
能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明
は省略する。
る際に使用した電極(作用極)を説明する上面図であ
る。
ド部である。
1上に平板酸化インジウムスズ薄膜を形成した後、リソ
グラフィーにより一辺20μmの正方形の電極2からな
る微小平板電極アレイを作製して使用した。電極2のリ
ード部3は絶縁膜(図示省略)で完全に覆い、溶液とは
接触しないようにした。本参考例では電極2以外の基板
1上が覆われている。平板アレイ電極以外にも、一般的
に用いられている円盤電極、平板電極の他、微小針型電
極なども使用可能である。電極2の材料としては、酸化
インジウムスズ以外にも金、白金等の金属や金属酸化
物、炭素などを用いる場合もある。参照極あるいは対極
は、基板1上に作用極と同様に作製される場合もある。
ータを修飾する際に使用した装置の概略構成を示す図で
ある。
ソナルコンピュータ、1は基板、6は測定用セル(底の
ない円筒状のガラスと基板1とが一体化され形成されて
いる)、7は溶液、8は参照極、9は対極、10は倒立
顕微鏡、11はCCD(チャージ カプルド デバイ
ス)、12はシールドボックス、13はモニタ、14は
接地である。電極(作用極)2およびリード部3は拡大
して示した。
製)を用いて、測定用セル6内に設置した複数の電極2
の電位をそれぞれ制御し、それぞれの電極2上を酵素/
メディエータを修飾した。各々の電極2の電位等の制
御、および電流値等のモニタリングは、パーソナルコン
ピュータ5によって行った。参照極8には銀/塩化銀電
極を、対極9には白金線を用いた。本参考例では、3電
極法(作用極、対極、参照極)を用い、作用極(電極
2)が複数の場合を示したが、電流値が極微量の場合
は、検出は2電極法(作用極と、対極を兼ねた参照極)
でも行うことができる。必要であれば、電極2とマルチ
ポテンシオスタット4との間に電流増幅器を用いる場合
もある。
(bpy)2Cl]2+/3+(オスミウムビピリジ
ン)を含有するポリビニルビピリジン溶液を含むリン酸
緩衝液(pH7.4)を図2のセル6の中に入れ、電極
2の電位を掃引して酵素(西洋ワサビ由来ペルオキシダ
ーゼ)および電子移動メディエータ([Os(bpy)
2Cl]2+/3+)を電極2上に修飾した。なお、高
分子であるポリビニルビピリジンは、西洋ワサビペルオ
キシダーゼという酵素と、[Os(bpy)2Cl]
2+/3+という電子移動メディエータが共有結合で結
合している。電極2の電位を掃引する以外にも、電極2
の電位を固定する、電極2に電位のステップを印加す
る、電極2に流れる電流を制御する、などの方法も有効
である。
い、酵素/メディエータを修飾した電極2の過酸化水素
に対するセンシング特性を検討した。セル6中の修飾溶
液を測定溶液(pH7.4、HEPES緩衝液)に入れ
替え、各電極2の電位を−100mVに固定し、過酸化
水素を溶液に添加した際の各電極2における電流応答値
(還元電流値)を測定した。その結果を図3に示す。図
中の矢頭(黒色下向き三角)は、過酸化水素の添加を示
し、それぞれ最終濃度80、200、320、460、
580μモル/lを示す。
に修飾された酵素の西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼの
酵素反応により、電極2はメディエータ[Os(bp
y)2Cl]3+)還元電流を検出することになる。つ
まり、過酸化水素が西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼに
より酸化されて水分子を生成し、同時にメディエータ
[Os(bpy)2Cl]2+が酸化されてメディエー
タ[Os(bpy)2Cl]3+を生成する。−100
mVはメディエータ[Os(bpy)2Cl]3+が十
分還元される電位であるため、電極2でその還元電流の
変化を測定することにより、過酸化水素の濃度を算出す
るというのが過酸化水素のセンシングの原理である。図
3では、過酸化水素に対して還元電流値の増加が観察さ
れた。電極2間の応答は互いに独立であることを確認
し、顕微鏡9およびモニタ12でも電極2上のみに酵素
が均一に修飾されていることを確認した。また、異なる
酵素を用いることにより、過酸化水素以外の物質も測定
することが可能である。
同じ平板アレイ電極と、図2に示した装置を使用し、複
数の電極2上に2種類の酵素を修飾した例を示す。
平板酸化インジウムスズ薄膜を形成した後、リソグラフ
ィーにより一辺20μmの正方形の電極2からなる微小
平板電極アレイを作製して使用した。電極2のリード部
3は絶縁膜(図示省略)で完全に覆い、溶液とは接触し
ないようにした。平板アレイ電極以外にも、一般的に用
いられている円盤電極、平板電極の他、微小針型電極な
ども使用可能である。電極2の材料としては、酸化イン
ジウムスズ以外にも金属や金属酸化物、炭素などを用い
る場合もある。参照極8には銀/塩化銀電極を、対極9
には白金線を用いたが、参照極8あるいは対極9は、基
板1上に作用極(電極2)と同様に作製される場合もあ
る。また、本参考例では、3電極法で作用極(電極2)
が複数の場合を示したが、電流値が極微量の場合は、検
出は2電極法でも行うことができる。必要であれば、電
流増幅器を用いる場合もある。
は、以下の通りである。西洋ワサビ由来ペルオキシダー
ゼと[Os(bpy)2Cl]2+/3+を含有するポ
リビニルビピリジン溶液と、グルタミン酸オキシダーゼ
を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を図2のセル6中に
入れ、電極2の電位を掃引して酵素(西洋ワサビ由来ペ
ルオキシダーゼとグルタミン酸オキシダーゼ)および電
子移動メディエータ([Os(bpy)2Cl]
2+/3+)を電極2上に修飾した。
H7.4、HEPES緩衝液)に入れ替え、各電極2の
電位を−100mVに固定し、グルタミン酸を溶液に添
加した際の各電極2における電流応答値(還元電流値)
を測定した。その結果を図4に示す。図中の黒い矢頭
(黒色下向き三角)は、グルタミン酸の添加を示し、そ
れぞれ最終濃度17、29、38、47μモル/lを示
し、白い矢頭(白色下向き三角)は、最終濃度27μM
のアスコルビン酸の添加を示す。
ィエータ[Os(bpy)2Cl] 3+の還元電流を検
出する。つまり、グルタミン酸がグルタミン酸オキシダ
ーゼにより酸化されて過酸化水素を生成し、その過酸化
水素が西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼにより還元さ
れ、同時にメディエータ[Os(bpy)2Cl]2+
が酸化される。メディエータ[Os(bpy)2Cl]
3+の還元電流の変化を測定することにより、グルタミ
ン酸の濃度を算出できる。この結果から、グルタミン酸
の濃度の増加に応じた還元電流の増加が観測されること
が分かった。妨害物質の1つであるアスコルビン酸に対
する応答は小さく、また、アスコルビン酸存在下でもグ
ルタミン酸の濃度変化を検出できることが確認された。
各々の電極2間の応答は互いに独立であることを確認
し、顕微鏡10およびモニタ13でも電極2上のみに酵
素が均一に修飾されていることを確認した。
に酵素/メディエータを修飾し、それを生体試料測定に
用いた例を示す。
じ平板アレイ電極と、図2の装置を使用した。基板(ガ
ラス基板)1上に平板酸化インジウムスズ薄膜を形成し
た後、リソグラフィーにより一辺20μmの正方形の電
極2からなる微小平板電極アレイを作製して使用した。
電極2のリード部3は絶縁膜(図示省略)で完全に覆
い、溶液とは接触しないようにした。平板アレイ電極以
外にも、一般的に用いられている円盤電極、平板電極の
他、微小針型電極なども使用可能である。電極2の材料
としては、酸化インジウムスズ以外にも金属や金属酸化
物、炭素などを用いる場合もある。参照極8には銀/塩
化銀電極を、対極9には白金線を用いたが、参照極8あ
るいは対極9は、基板1上に作用極(電極2)と同様に
作製される場合もある。また、本実施例では、3電極法
で作用極(電極2)が複数の場合を示したが、電流値が
極微量の場合は、検出は2電極法でも行うことができ
る。必要であれば、電流増幅器を用いる場合もある。
キシダーゼと[Os(bpy)2Cl]2+/3+を含
有するポリビニルビピリジン溶液と、グルタミン酸オキ
シダーゼを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を入れ、電
極2の電位を掃引することにより酵素の西洋ワサビ由来
ペルオキシダーゼとグルタミン酸オキシダーゼ、および
電子移動メディエータ[Os(bpy)2Cl]
2+/3+を電極2上に修飾した。
装置の概略構成を示す図である。
ロンメッシュ、17はテフロン(登録商標)チューブで
ある。
の海馬切片15(400μm厚)を、電極2からなる電
極アレイ上に静置し、ナイロンメッシュ16を用いて密
着させた。測定は、HEPES緩衝溶液(pH7.4)
中で行い、マルチポテンシオスタット4により電極2の
電位−100mVで電流変化を観察した。グルタミン酸
を放出させる刺激にはミューシモル(Muscimol)を用
い、インジェクションポンプによりテフロンチューブ1
7から測定溶液中に注入した。
一切片15内でも部位により異なるグルタミン酸の濃度
変化を示すことが観察された。つまり、本実施例による
電極2により、ラット海馬内の神経細胞間の情報伝達を
担う代表的な神経伝達物質であるグルタミン酸のリアル
タイム多点計測が可能となった。これにより、脳におけ
る記憶のメカニズムのみならず、グルタミン酸の生体内
での作用に関する知見を得ることが可能となる。
び高分子であるポリビニルフェロセンを修飾した例を示
す。
じ平板アレイ電極と、図2の装置を使用した。基板(ガ
ラス基板)1上に平板酸化インジウムスズ薄膜を形成し
た後、リソグラフィーにより一辺20μmの正方形の電
極2からなる微小平板電極アレイを作製して使用した。
電極2のリード部3は絶縁膜(図示省略)で完全に覆
い、溶液とは接触しないようにした。平板アレイ電極以
外にも、一般的に用いられている円盤電極、平板電極の
他、微小針型電極なども使用可能である。電極2の材料
としては、酸化インジウムスズ以外にも金属や金属酸化
物、炭素などを用いる場合もある。参照極8には銀/塩
化銀電極を、対極9には白金線を用いたが、参照極8あ
るいは対極9は、基板1上に作用極(電極2)と同様に
作製される場合もある。また、本参考例では、3電極法
で作用極(電極2)が複数の場合を示したが、電流値が
極微量の場合は、検出は2電極法でも行うことができ
る。必要であれば、電流増幅器を用いる場合もある。
キシダーゼを含むHEPES緩衝溶液(pH7.4)を
図2のセル6内に入れ、複数の電極2の電位を掃引する
ことにより、複数の電極2上にポリビニルフェロセンお
よびグルコースオキシダーゼを修飾した。その後、セル
6内の溶液をHEPES緩衝溶液(pH7.4)に交換
し、電極2の電位を500mVに固定してグルコースの
添加に対する各電極2の電流応答値(酸化電流値)を調
べた。その結果を図6に示す。図中の矢頭(黒色下向き
三角)は、グルコースの添加を示し、それぞれ最終濃度
12、35、75、110μモル/lを示す。
して酸化電流の増加が観察された。グルコースは、グル
コースオキシダーゼにより酸化され、同時にポリビニル
フェロセン中のフェロセンが還元される。観測された電
流は、還元体のフェロセンを各電極2上で酸化するため
に観察される酸化電流である。この結果から、各電極に
高分子であるポリビニルフェロセンとグルコースオキシ
ダーゼが修飾されたことが確認できた。
を修飾した例を示す。
じ平板アレイ電極と、図2の装置を使用した。基板(ガ
ラス基板)1上にリソグラフィーにより作製した一辺2
0μmの正方形の金の電極2からなる微小平板電極アレ
イを使用した。電極2のリード部3は絶縁膜(図示省
略)で完全に覆い、溶液とは接触しないようにした。平
板アレイ電極以外にも、一般的に用いられている円盤電
極、平板電極の他、微小針型電極なども使用可能であ
る。電極2の材料としては、金以外の金属や金属酸化
物、炭素などを用いる場合もある。参照極8には銀/塩
化銀電極を、対極9には白金線を用いたが、参照極8あ
るいは対極9は、基板1上に作用極(電極2)と同様に
作製される場合もある。また、本参考例では、3電極法
で作用極(電極2)が複数の場合を示したが、電流値が
極微量の場合は、検出は2電極法でも行うことができ
る。必要であれば、電流増幅器を用いる場合もある。
コースオキシダーゼを含むHEPES緩衝溶液(pH
7.4)を図2のセル6内に入れ、複数の電極2の電位
を掃引し、その後さらにこれらの電極2の電位を1.2
Vに固定することにより、複数の電極2(A群)上にグ
ルコースオキシダーゼを修飾した。
ーおよび西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼを含むHEP
ES緩衝溶液(pH7.4)に交換し、A群の電極2と
は異なる複数の電極2(B群)の電位を掃引し、さらに
これらの電極2の電位を1.2Vに固定することによ
り、複数の電極2(B群)上に西洋ワサビ由来ペルオキ
シダーゼを修飾した。
溶液(pH7.4)に交換し、電極2(A群及びB群)
の電位を500mVに固定してグルコースおよび過酸化
水素の添加に対する各電極2の電流応答値(酸化電流
値)を調べた。その結果を図7に示す。図中の黒い矢頭
(黒色下向き三角)は、グルコースの添加を示し、それ
ぞれ最終濃度0.1、0.4、0.8ミリモル/lを示
し、白い矢頭(白色下向き三角)は、過酸化水素の添加
を示し、それぞれ最終濃度0.1、0.2、0.5ミリ
モル/lを示す。
おいて酸化電流の増加が観察されたが、B群の電極2で
はほとんど電流値に変化が見られなかった。一方、過酸
化水素を溶液中に添加した場合は、B群の電極2におい
て酸化電流の増加が観察されたが、A群の電極2ではほ
とんど電流値に変化が見られなかった。このとき、グル
コースはグルコースオキシダーゼにより酸化され、同時
にトルイジンブルー分子が電子移動メディエータとなっ
てグルコースオキシダーゼにより還元され、電極2上で
酸化されるため、酸化電流が観察される。また、過酸化
水素は西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼにより酸化さ
れ、同時にトルイジンブルー分子が電子移動メディエー
タとなって西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼにより還元
され、電極2上で酸化されるため、酸化電流が観察され
る。
電極2の電位を変化させることによって、電極2上にト
ルイジンブルーが析出したと同時にそれぞれの酵素を電
極2上に修飾することができた。
より修飾した電気化学計測用電極は、微小電極の持つ優
れた特性を生かしながら、酵素が有する特異性を有効に
活用でき、さらに多点計測をも可能にする優れた手法で
ある。微小電極上に酵素/メディエータを修飾した場
合、任意の微小領域における特定物質の濃度変化を、濃
度の増加、減少ともに感度良く検出することができる。
にした場合は、測定時に生体試料に悪影響を与えること
も少ないため、長時間の測定あるいは連続測定が可能で
ある。複数の電極に修飾して計測した場合、特定の物質
の分布や、刺激に対する分布の変化を把握することで、
生体におけるその物質の作用やメカニズムを解明するこ
とが可能である。
上にそれぞれ異なる酵素/メディエータを修飾した場合
は、電極という簡便な手法によるマルチセンシングが可
能となり、例えば、フローインジェクションや高速液体
クロマトグラフィの検出器として複数の物質を同時に電
気化学検出することが可能である。
ため、目的物質である基質の消費が抑えられ、正確な測
定が可能となる。
の微小電極アレイの電極のみに酵素/メディエータを修
飾することで、簡便な方法で高性能な「その場」測定が
でき、近年社会的に注目されている水質分析などの環境
分野などでのリアルタイムマルチセンシングや、複数の
細胞や生体組織を対象にした神経伝達物質の分布のリア
ルタイムモニタリングなどにきわめて有効であり、利用
範囲が広い。
明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではな
く、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能で
あることは勿論である。例えば、実施例では、高分子が
電気化学的に、すなわち、酸化あるいは還元されて堆積
する際に、同時に修飾物である酵素/メディエータを電
極上に修飾したが、参考例4のように、単分子(高分子
ではない分子。低分子)を用いて修飾してもよい。具体
的には、トルイジンブルー以外にもピロールやアニリン
などの単分子を電気化学的に電極表面に重合させるとき
に同時に酵素/メディエータを取り込むことが可能であ
る。この場合、単分子はいわゆるバインダー(架橋剤、
固定化剤、担体)的な役割を果たすこともあるし、さら
にメディエータとして働く場合もある。単分子がメディ
エータとして働く場合は、メディエータとなる分子の修
飾は不要である。
えばラット海馬内の神経細胞間の情報伝達を担う代表的
な神経伝達物質であるグルタミン酸のリアルタイム多点
計測が可能となり、複数の細胞や生体組織を対象にした
神経伝達物質の分布のリアルタイムモニタリングが可能
となる。
る。
ある。
オキシダーゼとメディエータ[Os(bpy)2Cl]
2+/3+で修飾した電極アレイを用い、溶液中に過酸
化水素を添加した際の各電極の電流応答を示す図であ
る。
オキシダーゼおよびグルタミン酸オキシダーゼと、メデ
ィエータ[Os(bpy)2Cl]2+/3+で修飾し
た電極アレイを用い、溶液中にグルタミン酸・アスコル
ビン酸を添加した際の各電極の電流応答を示す図であ
る。
酵素/メディエータ修飾電極アレイを用いて、生体試料
計測を行う場合の装置の概略構成図である。
ンとグルコースオキシダーゼで修飾した電極アレイを用
い、溶液中にグルコースを添加した際の各電極の電流応
答を示す図である。
修飾した電極(A群)と西洋ワサビ由来ペルオキシダー
ゼで修飾した電極(B群)を有する電極アレイを用い、
溶液中にグルコースおよび過酸化水素を添加した際の各
電極の電流応答を示す図である。
シオスタット、5…パーソナルコンピュータ、6…測定
用セル、7…溶液、8…参照極、9…対極、10…倒立
顕微鏡、11…CCD、12…シールドボックス、13
…モニタ、14…接地、15…海馬切片、16…ナイロ
ンメッシュ、17…テフロンチューブ。
Claims (7)
- 【請求項1】生体組織の電気化学計測方法であって、 電極が基板上にアレイ状に配列され、該電極部分のみが
選択的に酵素または電子移動メディエータの少なくとも
一方を含む修飾物により修飾されているアレイ状の作用
極を用い、上記アレイ状の作用極を生体組織切片に密着
させて測定溶液に浸し、上記測定溶液に対極および参照
極を配置して上記アレイ状の作用極の各電極の電流変化
を計測することを特徴とする生体組織の電気化学計測方
法。 - 【請求項2】上記生体組織切片として脳切片を用いるこ
とを特徴とする請求項1記載の生体組織の電気化学計測
方法。 - 【請求項3】上記生体組織切片として海馬切片を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の生体組織の電気化学計
測方法。 - 【請求項4】上記測定溶液としてHEPES緩衝溶液を
用いることを特徴とする請求項1乃至3記載の生体組織
の電気化学計測方法。 - 【請求項5】上記修飾物として少なくともグルタミン酸
酸化酵素を含む修飾物により修飾されているアレイ状の
作用極を用いることを特徴とする請求項1乃至4記載の
生体組織の電気化学計測方法。 - 【請求項6】上記修飾物として少なくともペルオキシダ
ーゼを含む修飾物により修飾されているアレイ状の作用
極を用いることを特徴とする請求項1乃至4記載の生体
組織の電気化学計測方法。 - 【請求項7】上記修飾物として少なくともオスミウムビ
ピリジンを含む修飾物により修飾されているアレイ状の
作用極を用いることを特徴とする請求項1乃至4記載の
生体組織の電気化学計測方法。
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