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JP3588008B2 - トナーおよびその製造方法 - Google Patents

トナーおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式の複写機、およびプリンター等の画像形成装置において、電気的潜像または磁気的潜像を現像するのに用いられる一成分現像または二成分現像用の表面改質処理が施されたトナーおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスは、プリンター、ファクシミリ、カラー複写機、あるいは高速複写機等の多くの分野に用いられている。これらの機器に対する高画質化の要求の高まりのなかで、様々な現像方式が提案され、また、それぞれの様式に適したトナー等の現像剤もそれぞれの分野や機能に応じて、帯電の極性制御、流動特性の向上を始めとする種々の特性を兼ね備えたものが必要とされている。
【0003】
また、近年の情報化、ネットワーク化の進展の中で、これらの機器には環境への負荷を最小限にすることが求められている。すなわち、現像剤としては、低エネルギー定着(低温定着)、排出トナーの低減、さらには複写機、プリンター機器の現像槽、現像ユニットの長寿命化、リサイクルの観点から現像剤のロングライフ化等の要求に答えた開発が望まれている。
【0004】
これらの観点から、各機能を有する改質用微粒子をトナー芯粒子表面に乾式あるいは湿式で固着させ、添加された改質用微粒子によって効率よく十分な機能を付与させたもの、軟化温度が低い芯粒子の表層に硬化樹脂微粒子を被覆させてトナーの耐久性や定着特性を改良したもの、球形化処理によって帯電特性や流動特性を改良したもの等のいわゆる表面改質トナーが数多く検討されている。
【0005】
このような表面改質トナーとして、特開平7−209910号公報には、少なくとも結着樹脂、着色剤、外添剤から構成され、少なくとも混練処理、粉砕処理されたトナー芯粒子(母粒子)に、前記外添剤を外添混合して付着させた後、分散状態で熱風による表面改質処理により、前記外添剤の前記トナー芯粒子への固定化処理を施すことを特徴とするトナーが開示されている。
【0006】
また、表面改質トナーの製造方法として、特開平4−3171号公報には、芯粒子表面上に表面改質用微粒子を付着させ、これに機械的衝撃力を与えることにより、芯粒子表面に均一に固定させた後、さらに、200℃〜600℃の熱気流場中で熱処理し、表面改質用微粒子を芯粒子表面上に均一に定着または成膜化させる製造方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの提案は、何れも熱的処理を施すことによって、単に芯粒子表面上に改質微粒子を固定化、成膜化する方法もしくは単に固定化、成膜化された状態のトナーが得られることを提案しているだけである。単に所定の条件で熱処理を施した場合、その処理条件により添加微粒子の固定化の割合が低いときには現像機内でのストレスにより簡単に添加微粒子の剥離、離脱が起こり、帯電量の変動や遊離微粒子の存在により画像濃度やカブリ等の画質に影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
また、十分な固定化の処理が行われていたとしても、トナーの粒子形状が完全球状に近くなれば、残留トナーに対するブレードクリーニング性が悪化しクリーニング不良を引き起こす原因になり、画質の劣化を生じる可能性がある。
【0009】
実際には、芯粒子表面上の改質微粒子が実使用上のストレスに耐え、剥離、離脱等の防止されたライフ性能を備えた状態のトナーを得るためには、その処理後の状態がどのようなものであるかが重要であり、その状態を定量的に把握した上で目的とする機能を発現できるトナーが求められる。
【0010】
上記従来では、表面改質されて得られたトナーの具体的な状態は、表面改質トナー粒子表面上のSEM観察等による視覚的な判断によってのみなされていることが多いが、このことはつまり製造過程や得られたトナーの状態が定量的に把握されておらず、その製造においては目的とする機能を十分に発現させた表面改質トナーの成否の判断が困難であり、製造のたびに不均一で安定性に欠けたトナーが得られる可能性が極めて高いという問題点を生じている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、従来の表面改質トナーの課題であった改質微粒子の剥離、離脱等によりフィルミング、トナー飛散、カブリ等の画質劣化の発生、トナーが球形化されることによるクリーニング不良の発生がなく、定量的な改質状態の把握ができないことによる不均一で不安定な改質トナーの製造と開発といった問題を解決できるトナーおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0012】
さらに、本発明は、無機微粒子の付与機能が十分に発現できるトナー粒子表面近傍への固定化とトナー形状の制御を施す表面改質処理により、定着性、保存安定性、耐湿環境性に優れ、かつ、現像槽内での耐久性に強く、帯電性、流動性などが長期にわたって安定し、二成分現像剤中でのキャリアの汚染や一成分現像剤における帯電ブレードなどの電荷付与部材への固着や融着がなく長寿命化を可能にしたトナーおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、熱風中での改質処理を施す際に問題となるトナー同士の凝集や処理能力の低下を抑制し生産性を向上させ、安価にトナーを製造できると共に、流動性や帯電性の安定化と高い画像品質を維持できるトナーを提供することも目的としている。
【0014】
本発明のトナーは、以上の課題を解決するために、着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子の少なくとも一部が熱気流場中での加熱により固定化されているとともに、該加熱後における芯粒子が不定形の形状を保持しており、
2.0×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(1)
S:トナーのBET比表面積、ρ:トナーの比重、D:トナーの体積平均粒径、上記の式(1)を満たす不定形の粒子状であることを特徴としている。
【0015】
上記構成に関し、まず、式(1)について説明すると、粒子状のトナーが完全球形であり、粒度分布がない、つまり粒径が単一であると仮定した場合、1個のトナー粒子が有する表面積は、S=4π(D/2)で表される。また、このトナー粒子の体積は、D=〔4π(D/2)〕/3である。したがって、単位重量当たりの表面積は、トナー粒子の比重をρとすると、S/(ρD)=6/(ρD)と計算できる。
【0016】
このことから、用いるトナー粒子においては、実際上、粒度分布を有するので、粒度分布を有するトナー粒子の比表面積Sは〔6/(ρD)〕となる。上記のDは、上記のDに代えて用いた、粒度分布を有するトナー粒子の体積平均粒径である。
【0017】
そして、製造の各条件を代えて製造した各トナーについて、それぞれ評価したところ、上記の式(1)を満たすものが好適であることが判った。
【0018】
上記構成によれば、熱処理により芯粒子の表面近傍に硬い無機微粒子を固定化すると共に、形状制御を行い、上記範囲のBET比表面積値を有するトナーを製造することで、トナーの表面状態を定量的に把握して安定した製品としての表面が改質されたトナーを供給できる。
【0019】
また、上記構成では、添加する無機微粒子の剥離、離脱が抑制され、トナーの現像機内でのストレスに対する耐久性を大幅に向上させ、現像機の長寿命化ができると共に、長期間にわたって帯電性、流動性、粒度等のトナーの諸特性の変化が軽減されるので、安定した画像を得ることができるトナーを提供することが可能となる。
【0020】
上記無機微粒子のBET比表面積値は、80m/g以上であることが好ましい。上記構成によれば、80m/g以上のBET比表面積値を有する無機微粒子を固定化粒子に用いることで、芯粒子の表面上に対し薄層状に効率よく被覆することができ、定着性能等の阻害を回避しながら、かつ十分被覆固定が可能となる。80m/g未満のBET比表面積値を有する無機微粒子を固定化粒子に用いた場合、例えば、芯粒子の表面上に十分に被覆しようとすると、相当量の無機微粒子の添加が必要であり、定着性能を著しく阻害したり、芯粒子の表面からの離脱を起こし易い。
【0021】
上記無機微粒子は、シリカ微粒子であり、かつ、シリカ微粒子の表面の疎水化度が80%以上であることが望ましい。上記構成によれば、表面の疎水化度が80%以上有するシリカ微粒子を無機微粒子として用いることで、得られたトナーは、耐湿環境性に優れ、帯電性にも優れている。
【0022】
すなわち、上記シリカ微粒子を無機微粒子として、芯粒子の表面上に耐久性付与を目的として相当量添加した場合、添加したシリカ微粒子の環境性がトナー性能に大きく影響を与え、添加したシリカ微粒子の疎水化度が80%以上であれば、高湿度環境下での帯電性の変化は許容範囲内であるので、耐湿環境性に優れ、帯電性にも優れたものとなる。
【0023】
また、上記構成では、シリカ微粒子は帯電能力も大きく、トナーへの帯電付与剤としても有効であると共に分散性に優れ、流動性能の向上も可能であり、本発明における表面改質用の無機微粒子として好適なものである。
【0024】
上記無機微粒子は、芯粒子の体積平均粒径の0.004倍以上、0.08倍以下である微粒子を含むことが好ましい。上記構成によれば、熱処理するときに、トナー粒子同士の融着、凝集を防止できる効果により、製造処理能力を高めることができ、生産性の向上により、より安価なトナーを製造できる。無機微粒子の平均粒径が芯粒子の体積平均粒径の0.004倍未満であれば、不定形のトナー粒子同士の凝集防止材としては効果がでない可能性があり、0.08倍を超えると、熱処理後のトナーにおいてもほとんど固定化されることなる遊離した状態で存在し、感光体ドラムのフィルミングや画像カブリの原因となったり、現像機内の帯電付与部材への固着が発生したりする可能性がある。
【0025】
上記発明においては、芯粒子に対する無機微粒子の配合量は、
0.05×S/(4S)≦M≦0.5×S/(4S) ……(2)
:芯粒子のBET比表面積値、S:無機微粒子のBET比表面積値、M:芯粒子100重量部に対する無機微粒子の配合量(重量部)、上記式(2)を満たしていることが望ましい。
【0026】
上記構成に関し、まず式(2)について説明すると、芯粒子の表面の全てに無機微粒子が1層で完全に被覆されると仮定した場合に、無機微粒子は芯粒子に比べ十分に小さいとすると、被覆面積は無機微粒子の投影面積(平面近似)で計算できる。すなわち、添加した無機微粒子を完全球形であると仮定して、その投影面積はπRであり、表面積は4πRである(Rは半径)。
【0027】
このことを元に実際の無機微粒子の投影面積を、無機微粒子のBET比表面積値Sとすると、S/4であると考える(近接粒子間での空隙はないものとする)。この仮定において、SのBET比表面積値を有する芯粒子の表面を完全に被覆する無機微粒子の添加量比kは、S:S/4=1:kとなる。したがって、k=S/(4×S)となる。このとき、kは芯粒子の1重量部当たりに対する添加される無機微粒子の重量部で表される(比表面積は1g当たりの数値)。
【0028】
そこで、添加した無機微粒子の添加量を種々代えて、得られた各トナーについて種々評価試験を行い、実際上の添加範囲を調べた結果、上記式(2)を満たす範囲の添加量にすることで、芯粒子の表面近傍に剥離、離脱なく耐久性を付与するに十分な無機微粒子が固定化され、耐久性に優れ長期間にわたって安定したトナー諸特性を維持したトナーを提供できる。
【0029】
上記の範囲の下限未満の添加量では、無機微粒子で覆われていない芯粒子の表面が多く露出しているため、キャリアや帯電ブレードへのトナー融着を引き起し易い。また、上記の範囲の上限を超えると、芯粒子の表面上に付着、固定化しきれない無機微粒子や十分に芯粒子表面上に固定化されずに剥離、離脱して存在する無機微粒子が多数発生し、キャリアや帯電ブレードへの無機微粒子の固着を核とするトナー融着を引き起こしたり、トナー諸特性の安定性に劣ったりする。
【0030】
本発明の他のトナーは、以上の課題を解決するために、着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子の少なくとも一部が熱気流場中での加熱により固定化され、該加熱後における芯粒子が不定形の形状を保持しているとともに、さらに、表面処理微粒子が添加されており、
4.2×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(3)
:トナーのBET比表面積、ρ:トナーの比重、D:トナーの体積平均粒径、上記の式(3)を満たしていることを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、無機微粒子で外郭構造を備えた熱処理後の芯粒子に、さらに、流動化剤や研磨剤等の機能を有する表面処理微粒子を添加することにより、上記表面処理微粒子を芯粒子に埋没させることを回避して、上記表面処理微粒子による所望の機能を発揮させることが可能となる。さらに、上記構成では、添加された表面処理微粒子は、芯粒子への埋没が生じ難いため、その機能を発現させるのに必要な添加量を軽減できる。
【0032】
その上、上記構成では、得られたトナーにおけるBET比表面積値を上記式(3)にて規定される範囲内に設定されていることにより、トナーの表面状態を定量的に把握して安定した製品としてのトナーを供給できる。上記の範囲の上限を超えると、表面処理微粒子は熱処理後の芯粒子の表面上に付着しきれず、感光体ドラムへのフィルミングや画像カブリの原因となる。
【0033】
上記表面処理微粒子のBET比表面積値は、80m/g以上であることが好ましい。上記構成によれば、80m/g以上のBET比表面積値を有する表面処理微粒子を用いることで、芯粒子の表面上に対し薄層状に効率よく被覆することができ、定着性能等の阻害を回避しながら、かつ十分な被覆が可能となる。
【0034】
80m/g未満のBET比表面積値を有する表面処理微粒子を用いた場合、例えば、芯粒子の表面上に十分に被覆しようとすると、相当量の表面処理微粒子の添加が必要であり、定着性能を著しく阻害したり、芯粒子の表面からの離脱を起こし易い。
【0035】
上記表面処理微粒子は、シリカ微粒子であり、かつ、シリカ微粒子の表面の疎水化度が80%以上であることが望ましい。上記構成によれば、表面の疎水化度が80%以上有するシリカ微粒子を表面処理微粒子として用いることで、得られたトナーは、耐湿環境性に優れ、流動性や帯電性にも優れている。
【0036】
すなわち、上記シリカ微粒子を表面処理微粒子として、芯粒子の表面上に耐久性付与を目的として相当量添加した場合、添加したシリカ微粒子の環境性がトナー性能に大きく影響を与え、添加したシリカ微粒子の疎水化度が80%以上であれば、高湿度環境下での帯電性の変化は許容範囲内であるので、耐湿環境性に優れ、帯電性にも優れたものとなる。
【0037】
また、上記構成では、シリカ微粒子は帯電能力も大きく、トナーへの帯電付与剤としても有効であると共に分散性に優れ、流動性能の向上も可能であり、本発明における表面改質用の表面処理微粒子として好適なものである。
【0038】
本発明のトナーの製造方法は、以上の課題を解決するために、着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子を分散させる分散工程と、
上記芯粒子の表面上に、無機微粒子の少なくとも一部を熱気流場中での加熱により固定化する固定化工程とを含み、上記固定化工程では、
2.0×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(1)
S:トナーのBET比表面積、ρ:トナーの比重、D:トナーの体積平均粒径、上記の式(1)を満たすとともに、上記芯粒子が不定形の形状を保持したままの状態を維持するように、芯粒子の表面に無機微粒子を固定化することを特徴としている。
【0039】
上記方法によれば、熱処理により芯粒子の表面近傍に、芯粒子より硬い無機微粒子を固定化すると共に、上記範囲のBET比表面積値を有するように、形状制御を行ってトナーを製造することで、トナーの表面状態を定量的に把握して、特性の安定した製品を供給できる。
【0040】
また、上記方法では、添加する無機微粒子の剥離、離脱が抑制され、トナーの現像機内でのストレスに対する耐久性を大幅に向上させ、現像機の長寿命化ができると共に、長期間にわたって帯電性、流動性、粒度等のトナーの諸特性の変化が軽減されるので、安定した画像を得ることができるトナーを、より確実に製造できる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本発明のトナーは、図1に示すように、着色剤を有する結着樹脂からなる芯粒子1の表面上に、無機微粒子2の少なくとも一部が固定化されたものであって、さらに、表面改質されたトナーの体積平均粒径から計算される、トナーを完全球形と仮定した場合の比表面積値に対して1.1倍から2倍までの比表面積値を有する状態となるように、芯粒子1の表面に対し、熱気流場中にて、無機微粒子2を付着固定化した、不定形の粒子状のものである。上記不定形とは、破砕等により形成されるものであり、完全球形以外の形状である。
【0042】
このような表面改質によって、得られたトナーを完全に球形化せずに、無機微粒子2を芯粒子1の表面近傍に固定化し、かつ、表面改質されたトナーのN吸着法によるBET比表面積値で、その表面改質状態を定量的に把握でき、状態の制御が可能である。
【0043】
具体的には、粉砕法等によって得られた不定形の芯粒子1の表面上に予め表面改質用の無機微粒子2を付着、均一に分散させ、例えば図2に示すように、その混合粒子表面上に150℃〜450℃の熱風を利用して瞬間的に熱を加えることで芯粒子1の表面上の無機微粒子2を芯粒子1の表面近傍上に固定化し、かつ、芯粒子1の形状は不定形を保持したままの状態を維持できることが判った。
【0044】
本発明における表面改質処理において、150℃未満の温度では固定化させるに十分な熱エネルギーを加えることができず、また、450℃を超える温度では芯粒子1の球形化が進行すると共に、表面改質処理時にトナー粒子同士の融着・凝集が起こり所定粒径のトナーが得られない場合があり、これを避けるために処理速度を遅くすると生産効率が悪くなり、生産コストが高くなるなどの問題が生じる。
【0045】
また、表面改質されたトナーの状態は、上記製造方法による種々の操作パラメーター、例えば温度、処理時間、処理量等の装置条件や、芯粒子1や表面改質用の無機微粒子2の組成、芯粒子1と無機微粒子2との混合比率、それらの各粒径や、各形状、芯粒子1のガラス転移点(Tg)や分子量などを変えた場合に、その融着度合いや熱の加わり方による改質の度合いの差が、N吸着法によるBET比表面積値により把握できる。
【0046】
本発明者らによって見出した良好な表面改質されたトナーの状態は、具体的には、製造された表面改質されたトナーの体積平均粒径から計算される、トナーを完全球形と仮定した場合の比表面積値に対して1.1倍から2倍までの比表面積値を有する状態となるように、芯粒子1の表面に対し無機微粒子2を付着固定化した状態であり、これらの数値は添加する無機微粒子2の量や種類さらに複数種のものを調合した場合でも、それらの条件に関わらず規定されるものである。
【0047】
これらの方法によって得られたトナーでは、表面改質用の無機微粒子2が芯粒子1の表面上から剥離したり、または離脱したりすることによって感光体ドラム上に付着して起こるフィルミング、互いに遊離した無機微粒子2や芯粒子1の存在に起因するトナー飛散や画像カブリ等の現象を防止できて、安定した画像を示し、トナー形状の球形化によるクリーニング不良の発生も回避できるようになっている。
【0048】
また、本発明のトナーは、二成分系現像剤におけるキャリアや一成分系現像における帯電ブレードなどへのトナー融着や添加の無機微粒子2を核とする固着を防止できて、トナーのライフ性が大幅に向上できると共に、長期にわたりその帯電性、流動性などの変化を抑制して安定したトナー諸特性を維持したままで、良好な画像を安定に得ることができるものである。
【0049】
該表面改質処理における添加される無機微粒子2としては、後述する芯粒子1の材質に対し親和性を有する、例えば、シリカ、チタン、アルミナ、マグネタイト、フェライト等の金属酸化物微粒子、チッ化けい素、チッ化ホウ素等の金属チッ化物微粒子等の微粉末が挙げられ、さらにこれらの微粉末の表面をジメチルジクロルシラン、アミロシラン等のシランカップリング処理やシリコーンオイル処理を施したもの、フッ素含有成分などを付与したものなどが使用でき、これらの内の1種あるいは複数種を添加すればよい。
【0050】
また、該表面改質処理において得られたトナーに対し、図3に示すように、さらに、流動性やドラム研磨剤の機能付与を目的とした、表面処理微粒子3を添加混合して、所望の複数処理されたトナーを得てもよい。表面処理微粒子3としては、先に挙げた熱処理により固定化される無機微粒子2と同一のものでよく、これらの内1種あるいは複数種を添加すればよい。この場合においても、電荷付与部材等への汚染をより防止できて、さらに長期にわたりその帯電性、流動性などの変化をより回避できて、安定したトナー諸特性を維持したままで良好な画像を得ることができる。
【0051】
上記トナーは、現像剤の長寿命化による現像機の長寿命化が図れ、さらには現像機のリサイクルやトナーリサイクルを容易にし、乾式現像剤を使用する電子写真機器の環境への負荷を最小限にとどめることができるものとなっている。
【0052】
トナー製造には、付着混合分散の状態を得る装置として、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(川田社製)、メカノミル(岡田精工社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、コスモシステム(川崎重工業社製)等の装置が使用できる。トナー製造では、熱処理装置としては、サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)等の熱気流場を発生させることができる装置を用いることが好ましい。
【0053】
使用する熱処理装置としては、例えば図2に示すように、熱処理用の熱気流場Aを形成するための熱風発生装置11、芯粒子1と無機微粒子2とが混合された混合粒子である被処理粒子を一時的に貯え、かつ、定量的に供給するためのホッパー12、被処理粒子を熱気流場Aに噴霧分散供給する材料供給装置14、被処理粒子が熱気流場Aへ分散供給された直後に急速冷却する冷却風導入部分を有する被処理材料の回収装置13のそれぞれを具備し、連続的に処理できるものを用いることが望ましい。
【0054】
さらに、上記熱処理装置においては、冷却を急速に行うために熱処理後のトナーの回収部部並びにその流路である配管部分を冷却水の通水などにより冷却することが望ましい。また、上記熱処理装置では、熱気流場Aは上方から下方に向かって熱風が形成されることが好ましい。
【0055】
また、上記熱処理装置においては、熱処理に伴うトナーの凝集を防止して、処理量を向上させるために、材料供給装置14には複数の分散ノズルを熱気流場Aの周囲に等間隔に配置し、圧縮エアー等の気流を利用して噴霧させればよい。また、熱気流場Aの熱風の風量と分散供給エアーの風量の比は概ね3:1から20:1程度までが望ましい。
【0056】
以下に、上記熱処理装置を用いた、トナーの製造方法例を示すと、まず、上記被処理粒子を圧縮空気と共にホッパー12から材料供給装置14の分散ノズルを通して、熱風発生装置11から発生された熱風によって形成される熱気流場A中へ噴霧させる。このとき、上記熱風は所定温度に調整されており、被処理粒子はこの熱気流場Aによって瞬間的に熱エネルギーを受ける。
【0057】
その後、被処理粒子における無機微粒子2を芯粒子1の表面上に固定化させるために、熱エネルギーを受けた被処理粒子を回収装置13に導入し、冷却エアーによって直ちに冷却する。ここで、冷却エアーは、常温(25℃前後)の外気あるいは温度調整された冷風とする。このような熱処理装置で表面改質された所定状態のトナーは、芯粒子1の主樹脂のガラス転移点以下の温度で捕集され、製品とされる。
【0058】
上記の芯粒子1に使用できる結着樹脂としては、無機微粒子2と親和性を有し、熱処理による加熱により軟化または溶融するものであればよい。上記結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル−無水マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を単独あるいは混合物として使用できるほか、ブロック重合体、グラフト重合体として使用することができる。また、結着樹脂として、1山あるいは2山分布等の公知の分子量分布を有するトナー用結着樹脂がすべて使用可能である。
【0059】
また、上記芯粒子1としての結着樹脂中には、カーボンブラック、アゾ系染料、鉄黒、ニグロシン系染料、ベンジンイエロー、及びフタロシアニンブルー等の着色剤が必要に応じて含有されているが、さらに、特に限定せずに公知である各種の機能付与剤、例えば、カルボン酸金属錯体、四級アンモニウム化合物、及びニグロシン系染料等の帯電制御剤、、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体等のオフセット防止剤等の内の1種または複数種を混合分散させておいてもよく、また、磁性粉を含有せしめてもよい。
【0060】
芯粒子1の熱的特性としては、ガラス転移点(Tg)が40℃〜70℃であるものがよい。これにより、トナーの低温定着性を向上させることができる。これに対して、40℃未満のガラス転移点を有するものでは、トナー製造過程において150℃以上の熱処理を施した場合に容易に溶融し、球形化が進行するために実写においてクリーニング不良が発生し、感光体ドラム上でのフィルミングといった不具合を生じる。
【0061】
また、70℃を超える温度のガラス転移点を有するものでは、通常の熱定着において紙面上へ融解定着させるときに十分にトナーが溶融せずに紙面との接着性が劣るために、十分な定着強度が得られないことによる画像の剥離や接触部への付着等が起こり、実使用上に耐えない。
【0062】
また、芯粒子1の粒径は通常の粉体トナーとして使用する場合の粒径のものでよく、体積平均粒径で4μm〜15μm程度のものが適当である。
【0063】
【実施例】
本発明の一実施例について図1ないし図3に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施例において使用したトナーの製造方法の一例を以下に示す。芯粒子1の製造は、スチレン−アクリル共重合体(三洋化成工業社製)100重量部に対し、着色剤としてのカーボンブラック(Printex70:デグサ社製) 6重量部、帯電制御剤としてのクロム錯塩型アゾ染料(S34:オリエント化学社製)1重量部、オフセット防止剤としてのポリエチレン(PE130:クラリアント社製)2重量部を加え、ヘンシェルミキサーで10分間混合した後、所定の条件で混練し、粗砕、粉砕、分級工程をへて体積平均粒径を7μmに調整して行った。
【0064】
得られた芯粒子1への無機微粒子2の混合分散には、スーパーミキサー(川田社製)を用い、5分間の混合分散により、芯粒子1の表面上に無機微粒子2を均一分散させた。用いた無機微粒子2の詳細については、後述する。
【0065】
続いて、添加した無機微粒子2の加熱、固定化には、図2に示すように、サーフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)を用い、後述する各条件による熱処理に基づく表面改質処理を行った。
【0066】
さらに、表面改質処理後のトナー粒子への、表面処理微粒子3の分散、混合には、前記の混合処理と同様に、スーパーミキサー(川田社製)を用い、5分間の混合分散により、芯粒子1の表面上に表面処理微粒子3を均一分散させ、付着させた。
【0067】
以下に、各測定値の評価方法についてそれぞれ説明する。
〔表面積、粒径〕
芯粒子1のBET比表面積値(S)、無機微粒子2のBET比表面積値(S)、および得られたトナーのBET比表面積値(S)の測定には、BET比表面積測定装置ジェミニ2360(島津製作所製)を用い、3点測定法での値を採用した。芯粒子1の体積平均粒径、および得られたトナーの体積平均粒径(D)の測定には、マルチサイザーII(コールター社製)を使用した。
【0068】
〔耐久性〕
トナーの耐久性とは、実機における長期間にわたる使用により、帯電ブレード等の電荷付与部材へのトナー融着や添加された無機微粒子2を核とする固着を防止できて、安定した画質を供給できる期間つまりライフ性により示されるものである。例えば、シャープ社製の複写機(AR−5030)を一成分現像に変更して、変更した上記複写機を用いて空転試験を行い、10時間以上、帯電ブレードなどの電荷付与部材へのトナー融着や、無機微粒子2を核とする固着を引き起こすといった不都合の発生が防止されている場合を○と評価し、10時間未満にて上記不都合が発生した場合を×と評価した。
【0069】
〔画像評価、クリーニング性〕
シャープ社製の複写機(AR−5030)を一成分現像に変更して、その変更した複写機を用いて、一万枚実写試験を行い、実写での白地画像カブリ、クリーニング性不良の発生の有無を評価した。白地画像カブリは目視にて実用上問題ないレベルであれば○と評価し、問題となるレベルであれば×と評価し、また、クリーニング性不良については、感光体の表面上でのフィルミングが発生なき場合を○と評価し、フィルミングが発生した場合を×と評価した。
【0070】
〔定着性〕
シャープ社製の複写機(AR−S330)を用い、ネコサ紙上に未定着のまま、当所規定グレースケールチャートを画出し、シャープ社製の定着機(AL−1001)にて160℃で定着させた画像に対し、1kgの荷重を印加した消しゴムを上記画像上にて3往復させる擦り試験を行った。この試験における擦る前と後との画像濃度変化をマクベス反射濃度計によってそれぞれ測定し、画像の残存率を算出した。濃度の違う7点からグラフを描かせ、ID=0.50のときの残存率60%以上を○と評価し残存率60%未満を×と評価した。
【0071】
〔凝集率〕
フロー式粒子像分析装置を用いた視覚的判断結果により、凝集率が15%以下のとき、○と評価し、凝集率が15%を超えるとき、×と評価した。
【0072】
〔ボールミル帯電性評価〕
250mlボトルにキャリアと所定濃度のトナーを合わせて、400g 装填し、所定速度で30分間回転混合させた後のトナーをブローオフ法により帯電量の測定を行った。
【0073】
(処理温度)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μmまたは7.3μm)100重量部に対し、無機微粒子2としてのシリカ微粒子R972(日本アエロジル社製、平均粒径16nm)2重量部を添加混合し、5kg/hの処理速度にて、下記の表1に記載の各温度にて熱処理をそれぞれ施した各トナーについて種々評価を行った。
【0074】
【表1】
Figure 0003588008
【0075】
得られたトナーの体積平均粒径より、トナーが完全球形の場合での比表面積計算値〔3/(ρD/2)〕を計算すると、D=7.0μm、ρ=1.1×10g/mのときの比表面積計算値は0.779m/gであり、D=7.3μm、ρ=1.1×10g/mのときの比表面積計算値は0.747m/gであった。表1の結果から、得られたトナーのBET比表面積値は、比表面積計算値に対し、1.1倍から2.0倍までの値となるように、処理速度や処理温度を設定することが好ましいことが判った。
【0076】
(添加される無機微粒子2の比表面積値)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、表2に記載の種々のBET比表面積値を有する各シリカ微粒子を2重量部添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hの処理速度にて熱処理をそれぞれ施した各トナーについて、耐久性、定着性に関する評価をそれぞれ行った。
【0077】
【表2】
Figure 0003588008
【0078】
得られた結果から、用いる無機微粒子2においては、そのBET比表面積値が40m/gから180m/gまでが好ましいことが判った。
【0079】
(添加される無機微粒子2の疎水化度)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、表3に記載の疎水化度の相異なる種々の各シリカ微粒子を2重量部添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hの処理速度にて熱処理をそれぞれ施した各トナーについて、帯電量のよる評価をそれぞれ行った。
【0080】
評価条件としては、25℃/50%RHの温湿度環境(N/N 環境)、および35℃/85%RHの温湿度環境(H/H 環境)をそれぞれ用い、平均粒径60μmの鉄粉キャリアにトナー濃度が6重量%となるように調整し、その混合物(二成分トナー)をボールミルに装填し、30分間、ボールミルを作動させた後のトナーの帯電量をブローオフ法により測定した。
【0081】
【表3】
Figure 0003588008
【0082】
得られた結果から、用いる無機微粒子2においては、その疎水化度が80%以上の無機微粒子2を用いた場合、環境差での帯電量変化の許容量である20%以内で良好であることが判った。
【0083】
(無機微粒子2の平均粒径)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、表4に記載のごとく無機微粒子2を総量で2重量部添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hまたは10kg/hの処理速度にて熱処理をそれぞれ施した各トナーについて、表4に記載の評価をそれぞれ行った。それらの結果を表4にそれぞれ示した。なお、10kg/hの処理速度にて第一無機微粒子としてシリカ(平均粒径16nm)のみを添加混合して熱処理したものは、凝集したので、耐久性テストおよび画像カブリの評価ができなかった。
【0084】
【表4】
Figure 0003588008
【0085】
表4に記載の結果より、平均粒径16nmのシリカ微粒子(第一無機微粒子)に加えて、30nmのシリカ微粒子、または500nmのチタン微粒子を第2無機微粒子として添加した場合、処理速度の向上が図れた。このことから、無機微粒子2には、第一無機微粒子に加えて、第一無機微粒子と異なる平均粒径、好ましくは、第一無機微粒子より大きな平均粒径を有し、かつ、芯粒子1の体積平均粒径の0.004倍から0.08倍までの平均粒径を有する第2無機微粒子を含むことことが処理速度の向上の点から好ましいと判った。
【0086】
また、このように互いに異なる平均粒径を有する第一無機微粒子および第二無機微粒子を添加する場合、第1無機微粒子および第2無機微粒子を合わせた重量平均粒径が、芯粒子1の体積平均粒径の0.002倍から0.02倍までが好ましいと判った。
【0087】
重量平均粒径Zは以下の式(3a)にて算出した。まず、第1無機微粒子の平均粒径をXnm、第二無機微粒子の平均粒径をYnm、第1無機微粒子の配合重量部を、W、第二無機微粒子の配合重量部をWとした。
【0088】
Z=(X×W+Y×W)÷(W+W) ……(3a)
(無機微粒子2の添加量)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、無機微粒子2としてのシリカ微粒子R972(日本アエロジル社製、平均粒径16nm)を表5に記載の重量部にて添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hの処理速度により熱処理をそれぞれ施して得られた各トナーについて表5に示したように種々評価をそれぞれ行った。芯粒子1のBET比表面積値Sは、3.02m/gであり、シリカ微粒子R972のBET比表面積値Sは、110m/gであった。このことから、芯粒子1を完全に被覆する無機微粒子2の添加量比k(無機微粒子2が完全球形の場合)については、上記の場合では、k=S/4S=110/(4×3.02)=9.106となった。
【0089】
【表5】
Figure 0003588008
【0090】
この表5の結果から、明らかなように、芯粒子100重量部に対する無機微粒子の配合量(重量部)Mは、0.05kから0.5kまでの範囲内が好ましいことが判った。
【0091】
(処理後のトナーへの表面処理微粒子3の添加量)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、無機微粒子2としてのシリカ微粒子R972を(日本エアロジル社製、平均粒径16nm)2重量部にて添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hの処理速度により熱処理を施し、平均粒径7μm、比表面積1.013m/gの処理後のトナーを得た。上記の処理後のトナー100重量部に対し、さらに、表6に記載の各添加量にて、それぞれ、シリカ微粒子R974(日本アエロジル社製)を添加混合分散した複数処理後の各トナーについて表6に示したように種々評価をそれぞれ行った。
【0092】
【表6】
Figure 0003588008
【0093】
得られたトナーの体積平均粒径から、上記トナーが完全球形であるときの比表面積値Sを示す〔3/(ρD/2)〕を計算すると、D=7μm、ρ=1.1×10g/mであるから、Sは0.779m/gであった。これに基づき、かつ、表6の結果から、上記の複数処理されたトナーの比表面積値Sは、4.2×S以下、1.1×S以上が好ましいことが判った。
【0094】
(処理後のトナーへの表面処理微粒子3のBET比表面積値)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、無機微粒子2(第一無機微粒子)としてのシリカ微粒子R972を(日本エアロジル社製、平均粒径16nm)2重量部にて添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hの処理速度により熱処理を施し、平均粒径7μm、比表面積1.013m/gの処理後のトナーを得た。
【0095】
続いて、上記の処理後のトナー100重量部に対し、さらに、表7に記載の、相異なる各BET比表面積値を有するシリカ微粒子(表面処理微粒子3、第二無機微粒子)を1重量部、それぞれ添加混合分散した複数処理後の各トナーについて、それぞれ表7に示したように種々な評価をそれぞれ行った。
【0096】
【表7】
Figure 0003588008
【0097】
表7の結果から明らかなようにから、表面処理微粒子3(第二無機微粒子)としては、BET比表面積値が80m/g以上が好ましいことが判った。
【0098】
(処理後のトナーへの表面処理微粒子3の疎水化度)
芯粒子1(体積平均粒径7.0μm)100重量部に対し、無機微粒子2(第一無機微粒子)としてのシリカ微粒子R972を(日本エアロジル社製、平均粒径16nm)2重量部にて添加混合し、300℃の処理温度、5kg/hの処理速度により熱処理を施し、平均粒径7μm、比表面積1.013m/gの処理後のトナーを得た。
【0099】
続いて、上記の処理後のトナー100重量部に対し、さらに、表8に記載の、相異なる各疎水化度を有するシリカ微粒子(表面処理微粒子3、第二無機微粒子)を1重量部、それぞれ添加混合分散した複数処理後の各トナーについて、それぞれ表8に示したように種々な評価をそれぞれ行った。
【0100】
評価条件としては、25℃/50%RHの温湿度環境(N/N 環境)、および35℃/85%RHの温湿度環境(H/H 環境)をそれぞれ用い、平均粒径60μmの鉄粉キャリアにトナー濃度が6重量%となるように調整し、その混合物(二成分トナー)をボールミルに装填し、30分間、ボールミルを作動させて撹拌した後のトナーの帯電量をブローオフ法により測定した。
【0101】
【表8】
Figure 0003588008
【0102】
表8の結果から明らかなようにから、表面処理微粒子3(第二無機微粒子)として、疎水化度が80%以上のシリカ微粒子を用いた場合、環境差での帯電量変化の許容量である20%以内で良好であることが判った。
【0103】
【発明の効果】
本発明のトナーは、以上のように、着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子の少なくとも一部が熱気流場中での加熱により固定化されているとともに、該加熱後における芯粒子が不定形の形状を保持しており、
2.0×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(1)
S:トナーのBET比表面積、ρ:トナーの比重、D:トナーの体積平均粒径、上記の式(1)を満たす不定形の粒子状である構成である。
【0104】
それゆえ、上記構成は、熱処理により芯粒子の表面近傍に、芯粒子より硬い無機微粒子を固定化すると共に、形状制御を行い、上記範囲のBET比表面積値を有するトナーを製造することで、トナーの表面状態を定量的に把握して安定した製品を供給できる。
【0105】
また、上記構成では、添加する無機微粒子の剥離、離脱が抑制され、トナーの現像機内でのストレスに対する耐久性を大幅に向上させ、現像機の長寿命化ができると共に、長期間にわたって帯電性、流動性、粒度等のトナーの諸特性の変化が軽減されるので、安定した画像を得ることができるという効果を奏する。
【0106】
本発明の他のトナーは、以上のように、着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子の少なくとも一部が熱気流場中での加熱により固定化され、該加熱後における芯粒子が不定形の形状を保持しているとともに、さらに、表面処理微粒子が添加されており、
4.2×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(3)
:トナーのBET比表面積、ρ:トナーの比重、D:トナーの体積平均粒径、上記の式(3)を満たしている構成である。
【0107】
それゆえ、上記構成は、無機微粒子で外郭構造を備えた熱処理後の芯粒子に、さらに、流動化剤や研磨剤等の機能を有する表面処理微粒子を添加することにより、上記表面処理微粒子を芯粒子に埋没させることを回避して、上記表面処理微粒子による所望の機能を発揮させることが可能となる。さらに、上記構成では、添加された表面処理微粒子は、芯粒子への埋没が生じ難いため、その機能を発現させるのに必要な添加量を軽減できる。
【0108】
その上、上記構成では、得られたトナーにおけるBET比表面積値を上記式(3)にて規定される範囲内に設定されていることにより、トナーの表面状態を定量的に把握して安定した製品を供給できるという効果を奏する。
【0109】
本発明のトナーの製造方法は、以上のように、着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子を分散させる分散工程と、
上記芯粒子の表面上に、無機微粒子の少なくとも一部を熱気流場中での加熱により固定化する固定化工程とを含み、上記固定化工程では、
2.0×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(1)
S:トナーのBET比表面積、ρ:トナーの比重、D:トナーの体積平均粒径、上記の式(1)を満たすとともに、上記芯粒子が不定形の形状を保持したままの状態を維持するように、芯粒子の表面に無機微粒子を固定化する方法である。
【0110】
それゆえ、上記方法は、熱処理により芯粒子の表面近傍に、芯粒子より硬い無機微粒子を固定化すると共に、上記範囲のBET比表面積値を有するように、形状制御を行ってトナーを製造することで、トナーの表面状態を定量的に把握して、特性の安定した製品を供給できる。
【0111】
また、上記方法では、添加する無機微粒子の剥離、離脱が抑制され、トナーの現像機内でのストレスに対する耐久性を大幅に向上させ、現像機の長寿命化ができると共に、長期間にわたって帯電性、流動性、粒度等のトナーの諸特性の変化が軽減されるので、安定した画像を得ることができるトナーを、より確実に製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のトナーの概略断面図である。
【図2】上記トナーを製造するための熱気流場を発生する表面改質処理用の熱処理装置の概略構成図である。
【図3】本発明の他のトナーの概略断面図である。
【符号の説明】
1 芯粒子
2 無機微粒子
3 表面処理微粒子

Claims (8)

  1. 着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する、無機微粒子が熱気流場中での加熱により固定化されているとともに、該加熱後における芯粒子が不定形の形状を保持しており、
    上記無機微粒子は、互いに異なる平均粒径を有する第一無機微粒子および第二無機微粒子を含み、
    上記第二無機微粒子は、第一無機微粒子の平均粒径よりも大きな平均粒径を有し、かつ、上記芯粒子の体積平均粒径の0.004倍から0.08倍までの平均粒径を有し、
    2.0×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(1)
    S:トナーのBET比表面積
    ρ:トナーの比重
    D:トナーの体積平均粒径
    上記の式(1)を満たす不定形の粒子状であることを特徴とするトナー。
  2. 無機微粒子のBET比表面積値が、80m2 /g以上であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
  3. 無機微粒子は、シリカ微粒子であり、かつ、シリカ微粒子の表面の疎水化度が80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のトナー。
  4. 芯粒子に対する無機微粒子の配合量は、
    0.05×Sa /(4S0 )≦M≦0.5×Sa /(4S0 ) ……(2)
    0 :芯粒子のBET比表面積値
    a :無機微粒子のBET比表面積値
    M:芯粒子100重量部に対する無機微粒子の配合量(重量部)
    上記式(2)を満たしていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載のトナー。
  5. 着色剤を有する結着樹脂からなる不定形の芯粒子の表面上に、該芯粒子の材質に対して親和性を有する無機微粒子が熱気流場中での加熱により固定化され、該加熱後における芯粒子が不定形の形状を保持しているとともに、さらに、表面処理微粒子が添加されており、
    上記無機微粒子は、互いに異なる平均粒径を有する第一無機微粒子および第二無機微粒子を含み、
    上記第二無機微粒子は、第一無機微粒子の平均粒径よりも大きな平均粒径を有し、かつ、上記芯粒子の体積平均粒径の0.004倍から0.08倍までの平均粒径を有し、
    4.2×〔6/(ρD)〕≧Sb ≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(3)
    b :トナーのBET比表面積
    ρ:トナーの比重
    D:トナーの体積平均粒径
    上記の式(3)を満たしていることを特徴とするトナー。
  6. 表面処理微粒子のBET比表面積値が、80m2 /g以上であることを特徴とする請求項5記載のトナー。
  7. 表面処理微粒子は、シリカ微粒子であり、かつ、シリカ微粒子の表面の疎水化度が80%以上であることを特徴とする請求項5または6に記載のトナー。
  8. 着色剤を有する結着樹脂からなる芯粒子、および、無機微粒子を用いたトナーの製造方法であって、
    上記無機微粒子は、芯粒子の材質に対して親和性を有するとともに、互いに異なる平均粒径を有する第一無機微粒子および第二無機微粒子を含み、
    該第二無機微粒子は、第一無機微粒子の平均粒径よりも大きな平均粒径を有し、かつ、上記芯粒子の体積平均粒径の0.004倍から0.08倍までの平均粒径を有しており、
    上記芯粒子として不定形の芯粒子を用い、該不定形の芯粒子の表面上に無機微粒子を分散させる分散工程と、
    上記芯粒子の表面上に、上記無機微粒子を熱気流場中での加熱により固定化する固定化工程とを含み、
    上記固定化工程では、
    2.0×〔6/(ρD)〕≧S≧1.1×〔6/(ρD)〕 ……(1)
    S:トナーのBET比表面積
    ρ:トナーの比重
    D:トナーの体積平均粒径
    上記の式(1)を満たすとともに、上記芯粒子が不定形の形状を保持したままの状態を維持するように、芯粒子の表面に無機微粒子を固定化することを特徴とするトナーの製造方法。
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