JP3585393B2 - 乗客コンベアの改造方法 - Google Patents
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Description
【発明に属する利用分野】
本発明は、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアの改造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に乗客コンベアは、踏段を一定速度で駆動しており、スイッチ操作などにより踏段の駆動速度を変えることはできなかった。しかし、近年、乗客コンベアに高齢者が乗り込む際に転倒事故などが散見されるため、乗客コンベアの駆動速度を状況に応じて遅くしたり速くしたりする制御機能、すなわち可変速駆動の機能に関する二ーズが高まり、可変速駆動の機能を備えた乗客コンベアが求められるようになってきた。従来、このような可変速駆動の機能を既設の乗客コンベアに加える場合、駆動装置の動作を制御する既設の制御部を取り外して、可変速可能な制御回路を組み込んだ新しい制御部を取り付けるか、あるいは、取り外した既設の制御部に可変速可能な制御回路を組み込む改造を施したものを再び取り付けて配線を変更することにより行なっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の乗客コンベアは、前者の既設の制御部を取り外して新しい制御部を取り付けるものでは、新しい制御部の製作費用が高いことから高価になってしまい、一方、後者の既設の制御部を改造するものでは、この改造作業に要する工期が長くなって乗客コンベアを長い期間にわたって停止させなければならない。また、いづれも既設の制御部を一旦取り外す必要があるため、配線を最初からやり直さねばならなかったり、上述したように制御部の新設や改造に伴って制御装置が大きくなるため、現状の設置スペースには収まらず、やむなく設置場所を変更したり取付器具の新設あるいは改造や配線の大幅な変更といった手間がかかることから、工期および費用が増大してしまう。
【0004】
本発明の目的は、既設の制御部を取り外すことなく、踏段の駆動速度を変えることができるようにした乗客コンベアの改造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、三相交流電源と踏段を駆動する電動機との間に電気配線を介して接続され、上記三相交流電源からの電力を電動機に供給して、一定速度の運転もしくは起動停止の運転制御を行う既設の第一の制御部を機械室に備えた乗客コンベアの改造方法において、上記第一の制御部と電動機との間を接続する電気配線を取り外し、この電気配線を取り外した上記第一の制御部と上記電動機との間に、上記三相交流電源の周波数を変換する電力変換機と、この電力変換機に速度指令を発して周波数変換を制御する速度制御回路とからなり複数の速度での運転制御を行う第二の制御部を、電気配線を介して接続するようにしたことを特徴とする。
【0006】
本発明の乗客コンベアの改造方法は、上述したように既設の第一制御部をそのまま流用し、新たに追加するのは周波数を変換する電力変換器と、電力変換器に速度指令を発して周波数変換を制御する速度制御回路と、電力変換器の電源を制御する電源制御回路とを有した第二制御部のみとしたため、既設の第一制御部の取り外しおよび取り付けを必要としないので、機械室のスペースが狭い場合にも容易に作業を行なうことができ、比較的安い費用で、かつ短工期で可変速駆動の機能を備えた乗客コンベアの改造方法を提供できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施の形態による乗客コンベアの改造方法の全体構成を示す側面図である。
図示しない二つの階床間にわたって斜め方向に延設したフレーム1の上端側には機械室14が形成され、この機械室14内には電動機2と、電動機2の回転を必要な一定の速度に減速する減速機3が配置されている。減速機3に連結した駆動スプロケット4には、駆動チェーン5を介して第一スプロケット6が従動するように連結され、第一スプロケット6には踏段チェーン8を介して第二スプロケット7が従動するように連結されている。踏段チェーン8には無端状の複数の踏段9が連結され、これら踏段9がフレーム1内を移動するようにしている。電動機2には、その起動停止を制御する第一制御部10と、電動機2の回転数を変えることよって踏段9の移動遠度を可変制御する第二制御部11が接続されている。上述した電動機2、減速機3、第一制御部10および第二制御部11は機械室14内のべースフレーム12上に配置されており、通常この機械室14の上方は床板13によって覆われている。ここで第一制御部10は、三相交流電源17からの電力を直接電動機2に供給して、一定速度での上昇あるいは下降運転の起動停止などの運転制御や、安全装置21や図示しない照明器具などの電気設備を制御しており、これに対して第二制御部11は、可変速運転制御を行なうものである。
【0008】
図1は、上述した電動機2と第一制御部10および第二制御部11の接続関係を示す回路図である。
三相交流電源17は、第一制御部10および第二制御部11を介して電動機2に接続されており、この電動機2にはその回転を機械的に停止させる電磁ブレーキ18が設けられている。運転制御回路19には停止スイッチ20と、安全装置21の動作信号により動作する常閉接点21bとが直列に接続されており、第一制御部10には、この運転制御回路19によって発する信号により動作する各常開接点19Aa1,19Aa2,19Ba1,19Ba2がそれぞれ設けられている。つまり、三相交流電源17と電動機2間には、上昇運転指令コイル19Aの常開接点19Aa1と下降運転指令コイル19Bの常開接点19Ba1とを並列接続したスイッチ191が接続され、またスイッチ191と電磁ブレーキ18間には、上昇運転指令コイル19Aの常開接点19Aa2と下降運転指令コイル19Bの常開接点19Ba2とを並列接続したスイッチ192が接続されている。
【0009】
第二制御部11には、三相交流電源17の周波数を変換する電力変換器22と、電力変換器22に速度指令を発して周波数変換を制御する速度制御回路23とが設けられている。電源制御回路25は、電源投入指令コイル25A、電源遮断指令コイル25Bおよび電源切替スイッチ25Sとからなり、第一制御部10のスイッチ191と電動機2間に電源遮断指令コイル25Bの常開接点25Baを直列に接続し、この常開接点25Baと並列に、電源投入指令コイル25Aの常開接点25Aa1と電力変換器22と電源投入指令コイル25Aの常開接点25Aa2とを直列に接続したものを接続している。速度制御回路23は、速度切替指令を発する速度切替スイッチ24から指令信号が与えられると、これに対応する速度指令を電力変換器22に与えるようにしている。
【0010】
ここで説明の便宜上、第一制御部10に、運転方向切替スイッチ19S、停止スイッチ20および安全装置21を備え、第二制御部11に、電源切替スイッチ25Sを有する電源制御回路25を備えたように図示したが、これらの各スイツチ類は操作しやすい位置、例えば、踏段9の両側に立設される図示しない欄干部に設置することができる。
【0011】
次に、一定速度で踏段9を駆動している既設の乗客コンベアを可変速の乗客コンベアに改造する手順を説明する。
既設の乗客コンベアは、第二制御部11を持たずにスイッチ191と電動機2間を直接接続しているので、スイッチ191と電動機2間の電気配線による接続を外す。次に、図2の要部拡大図である図4とその平面図である図3に示すように、機械室14内のべースフレーム12の上部に取付け台座15をボルト等で固定する。この取付け台座15には筒状の嵌合部15aを一対形成している。一方、新設の第二制御部11は、その下部に棒状の突出部11bを形成しており、またその上部には把持部11aが備えられている。従って、作業者は機械室14内に降りることなく床板13から把持部11aで掴みながら第二制御部11を降ろし、その下部の突出部11bが取付け台座15に形成した筒状の嵌合部15aに嵌合するようにする。
【0012】
また第二制御部11は、電動機2と接続する電気配線と、第一制御部10と接続する電気配線とを有しており、各電気配線の長さを、第二制御部11を取り外して機械室14の外へ搬出できる程度の所定の長さに設定している。この各電気配線を電動機2および第一制御部10に接続し、その他の信号線などの接続作業を行なうと、図1に示した回路図のようになり改造を完了する。
【0013】
このように既設の第一制御部10はそのまま流用し、既設の第一制御部10の取り外しおよび取り付けを必要としないので、機械室14のスペースが狭い場合にも容易に作業を行なうことができる。また、新たに追加するのは周波数を変換する電力変換器22と、電力変換器22に速度指令を発して周波数変換を制御する速度制御回路23と、電力変換器22の電源を制御する電源制御回路25とを有する第二制御部11のみであり、製作費も安価である。
【0014】
次に、上述した乗客コンベアの動作を説明する。
先ず、乗客コンベアの運転を行なう場合、電源切替スイッチ25SをON側に切り替えて電源遮断指令コイル25bを消勢し、電源投入指令コイル25Aを付勢する。これにより閉じていた常開接点25Baが開き、常開接点25Aa1,25Aa2が閉じ、電力変換器22に電力が供給可能な状態になる。
【0015】
この状態で、運転方向切替スイッチ19SをUP側に操作すると、上昇運転指令コイル19Aが付勢され、常開接点19Aa1,19Aa2が閉じ、三相交流電源17……スイッチ191の常開接点19Aa1……常開接点25Aa1……電力変換器22……常開接点25Aa2……電動機2の回路が形成されて電動機2へ電力が供給される。これと同時に、三相交流電源17……スイッチ191の常開接点19Aa1……スイッチ192の常開接点19Aa2……電磁ブレーキ18の回路が形成されて、電磁ブレーキ18が開く。このため、電動機2が正転方向に回転し、減速機3、駆動スプロケット4、駆動チェーン5、第一スプロケット6、踏段チェーン8を介して踏段9を上昇方向に移動させ乗客コンベアを上昇運転する。
【0016】
一方、運転方向切替スイツチ19SをDN側に操作すれば、下降運転指令コイル19Bが付勢され、常開接点19Ba1,19Ba2が閉じる。このため、三相交流電源17……スイッチ191の常開接点19Ba1……常開接点25Aa1……電力変換器22……常開接点25Aa2……電動機2の回路が形成されて電動機2へ電力が供給される。これと同時に、三相交流電源17……スイッチ191の常開接点19Ba1……スイッチ192の常開接点19Ba2……電磁ブレーキ18の回路が形成されて、電磁ブレーキ18が開く。従って、電動機2が今度は逆転方向に回転し、減速機3、駆動スプロケット4、駆動チェーン5、第一スプロケット6、踏段チェーン8を介して踏段9を下降方向に移動させ乗客コンベアを下降運転する。
【0017】
ここで、停止スイッチ20は常時閉じている状態にある。また、運転方向切替スイッチ19Sは自動復帰式キースイッチで構成されているため、操作後に放すと中立位置すなわち開いた状態に戻るが、運転制御回路19には、上昇運転指令コイル19Aおよび下降運転指令コイル19Bの付勢を保持する図示しない自己保持回路を有している。この自己保持回路は、停止スイツチ20を操作するか、安全スイッチ21が動作して常閉接点21bが開かない限り、上昇運転指令コイル19Aおよび下降運転指令コイル19Bの付勢状態を継続するように構成されている。
【0018】
このようにして上昇あるいは下降運転した乗客コンベアの運転速度は、電力変換器22より出力される電力の周波数により設定される。つまり、三相交流電源17から供給される電力は、電力変換器22において、速度制御回路23の速度指令に基づき、一旦直流電力に変換され可変電圧可変周波数の交流電流に再変換され電動機2に供給され、電動機2はこの電力に応じた回転数で駆動して乗客コンベアを駆動する。
【0019】
ここで、速度切替スイッチ24を操作して速度制御回路23に速度切替指令を発すると、速度制御回路23はこれまでとは異なる他の速度指令を出力させる。この速度指令を受けた電力変換器22は、その出力周波数を変更して踏段9の移動速度すなわち乗客コンベアの運転速度を変化させる。この速度切り替えを行なう速度切替スイッチ24は、乗客コンベアの利用者が操作可能な押し釦スイッチで構成したり、キースイッチで構成してもよいし、また、第2の制御部11にタイマーを設け、このタイマーの設定時間により速度切替指令を発するように構成してもよい。
【0020】
次に、乗客コンベアの運転を停止させるために停止スイッチ20を操作すると、上昇運転指令コイル19Aあるいは下降運転指令コイル19Bが消勢され、閉じていた常開接点19Aa1あるいは常開接点19Ba1が開き、電動機2への電力供給が遮断される。これによって電動機2の回転が停止すると共に、閉じていた常開接点19Aa2あるいは常開接点19Ba2が開き、電磁ブレーキ18への電力供給が遮断されるため、電磁ブレーキ18が閉じ、電動機2の回転を機械的に停止させることで、乗客コンベアの運転が停止する。
【0021】
一方、安全装置21が動作した場合、安全装置21の動作信号により常閉接点21bが開き、停止スイッチ20を操作した場合と同様に上昇運転指令コイル19A、あるいは下降運転指令コイル19Bが消勢され、閉じていた常開接点19Aa1あるいは常開接点19Ba1が開き、電動機2への電力供給が遮断され、電動機2の回転が停止する。また、閉じていた常開接点19Aa2あるいは常開接点19Ba2が開き、電磁ブレーキ18への電力供給が遮断されるため、電磁ブレーキ18が閉じて電動機2の回転を機械的に停止させ、乗客コンベアの運転が停止する。
【0022】
また、電力変換器22が故障した場合、電源切替スイッチ25SをOFF側に操作すると、電源投入指令コイル25Aが消勢され、閉じていた常開接点25Aa1,25Aa2が開き、電力変換器22への電力供給が遮断される。これと同時に、電源遮断指令コイル25Bが付勢されて常開接点25Baが閉じ、三相交流電源17から電動機2に電力を直接供給することができるので、乗客コンベアを一定速度で稼動することが可能である。
【0023】
尚、上述した実施の形態では、第二制御部11の設置位置に筒状嵌合部15aを有する取付け台座15を設け、この取付け台座15上に設置する第二制御部11の下部には棒状突出部11bを設け、両者を嵌合して据え付けるようにしたが、嵌合形状は逆でも良いし、その他の係合構造としても良い。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による乗客コンベアの改造方法は、既設の第一制御部をそのまま流用し、新たに追加するのは周波数を変換する電力変換器と、電力変換器に速度指令を発して周波数変換を制御する速度制御回路と、電力変換器の電源を制御する電源制御回路とを有する第二制御部のみであるため、既設の第一制御部の取り外しおよび取り付けを必要としないので、機械室のスペースが狭い場合にも容易に作業を行なうことができ、比較的安い費用で、かつ短工期で可変速駆動の機能を備えた乗客コンベアの改造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による乗客コンベアの要部を示す回路図である。
【図2】図1に示した乗客コンベアの側面図である。
【図3】図1に示した乗客コンベアの要部を示す平面図である。
【図4】図3に示した乗客コンベアの要部の側面図である。
【符号の説明】
2 電動機
3 減速機
5 駆動チェーン
9 踏段
10 第一制御部
11 第二制御部
12 べースフレーム
13 床板
14 機械室
17 三相交流電源
19 運転制御回路
22 電力変換器
23 速度制御回路
24 速度切替スイッチ
25 電源制御回路
Claims (5)
- 三相交流電源と踏段を駆動する電動機との間に電気配線を介して接続され、上記三相交流電源からの電力を電動機に供給して、一定速度の運転もしくは起動停止の運転制御を行う既設の第一の制御部を機械室に備えた乗客コンベアの改造方法において、上記第一の制御部と電動機との間を接続する電気配線を取り外し、この電気配線を取り外した上記第一の制御部と上記電動機との間に、上記三相交流電源の周波数を変換する電力変換機と、この電力変換機に速度指令を発して周波数変換を制御する速度制御回路とからなり複数の速度での運転制御を行う第二の制御部を、電気配線を介して接続するようにしたことを特徴とする乗客コンベアの改造方法。
- 請求項1記載のものにおいて、上記第二制御部は、上記機械室内にその上方から取付けおよび取り外し可能に配置したことを特徴とする乗客コンベアの改造方法。
- 請求項2記載のものにおいて、上記機械室に取付け台座を設け、この取付け台座と上記第二制御部の下部の対向部にそれぞれ嵌合部を形成したことを特徴とする乗客コンベアの改造方法。
- 請求項2記載のものにおいて、上記第二制御部は、その上部に把持部を備えたことを特徴とする乗客コンベアの改造方法。
- 請求項2記載のものにおいて、上記第二制御部と上記第一制御部間を接続する電気配線、および上記第二制御部と上記駆動装置間を接続する電気配線の長さを、上記第二制御部を上記機械室外に搬出できる所定の長さに設定したことを特徴とする乗客コンベアの改造方法。
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