JP3581040B2 - 配線パターン検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業用画像処理でのパターン2値化方法に係り、特に、プリント配線板やセラミック基板及びグリーンシートなどの自動外観検査装置において、配線パターンを高精度に検出する配線パターン検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のプリント基板などの検査装置、例えば、外観検査装置において、パターン検出方法としては、単純2値化、即ち、単一の2値化閾値による2値化処理が一般的な方法であるが、特に、特開平1−142988公報に記載の2値化装置の場合、配線パターンに生ずる細いヘアライン状の断線欠陥を安定に検出可能とするため、固定閾値による2値画像と2次微分の2値化画像とを合成する方式がとられている。この方式によれば、検出対象である配線パターンを固定閾値にて検出するとともに、ヘアライン状の断線欠陥や配線パターン間をショートするショート欠陥を、2次微分画像により、顕在化検出することが可能な構成となっている。
【0003】
この他にも、「精密工学会誌 JSPE−59−06」1993 pp.993〜1000の論文「設計パターンとの比較による高精度プリント基板パターン検査装置」には、微小振幅欠陥を抽出する2値化方式について詳細に述べられている。この方式も、微分を基本とするオペレータを作用させることにより、微細な欠陥を検出するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、検出された配線パターンの濃淡画像を2次微分することにより、細いヘアライン状の欠陥部分が急峻な信号変化となって現われるようにし、これによってかかる欠陥を検出するものである。
【0005】
しかしながら、導体パターン内部に発生するピンホール状の欠陥(以下、ピンホール欠陥という)や、実際にショートはしていないが、導体間隔が基準値(設計仕様)以下となるような半ショート欠陥では、一般的に、濃淡画像での信号変化がなだらかとなるため、2次微分処理によるかかる欠陥の顕在化の効果が小さいし、また、微小なピンホール欠陥は、信号コントラストも低いため、通常の場合に設定される2値化閾値では、検出できない。
【0006】
一方、配線パターンに生ずる欠陥としては、不足系欠陥(または欠落性欠陥とも呼ばれ、ピンホール、断線や半断線などの欠陥がこれに該当する)と余剰系欠陥(または突出性欠陥とも呼ばれ、飛散、孤立点、半ショートやショートなどの欠陥がこれに該当する)とがあるが、単一の2値化閾値では、これらの欠陥モードを同等に扱うことは困難である。
【0007】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、検出対象物の形状や面積などによる図形的性質の違いや対象パターン密度の変化に依存せず、画像から安定して検出対象物を抽出することができるようにした配線パターン検査方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、プリント基板あるいはセラミックス基板などの被検査対象物に形成された配線パターンの濃淡画像を入力する手段と、該濃淡画像を2次微分画像に変換する2次微分処理手段と、該2次微分画像を互いに異なる所定の閾値で2値化する複数の2次微分画像2値化手段と、該濃淡画像を互いに異なる所定の閾値で2値化する複数の濃淡画像2値化手段と、該濃淡画像での該2次微分画像2値化手段と該濃淡画像2値化手段とで処理される画素が該配線パターンの部分の画素であるか、該被対象物の基材部分の画素であるか、該配線パターンの境界部の画素であるかを判定する領域判定手段とを備え、該2次微分画像2値化手段の出力と該濃淡画像2値化手段の出力とを、該領域判定手段の出力に応じて、選択し、合成することにより、該濃淡画像の2値化画像を得るものである。
【0009】
領域判定手段は、濃淡画像2値化手段の出力画像に対し、N×M(N,Mは整数)の領域分割オペレータ中の所定画素値の有効画素数を計数し、その計数値に応じて上記の判定を行なうものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
プリント基板やセラミック基板,グリーンシート(以下では、プリント基板で代表させる)に形成された配線パターンには、図4に示すように、配線パターン1の断線や配線パターン1の幅が基準値(設計仕様)よりも狭い半断線,ピンホールといった欠陥で代表される不足系欠陥(欠落性欠陥または凹系欠陥とも呼称される)や、半ショートやショート,飛散といった欠陥で代表される余剰系欠陥(突出性欠陥または凸系欠陥とも呼称される)が発生する。外観検査装置などの配線パターン検査装置は、このような欠陥の有無を検査するものである。
【0015】
図5は配線パターン検査装置でのかかる欠陥の検査アルゴリズムの一例であるパターンの連結関係比較方式を示す図である。かかる検査アルゴリズムの詳細に関しては、特許第1589793号に記述されているので、ここでは、その原理について簡単に説明する。
【0016】
同図において、連結関係比較方式は、検出された配線パターンの濃淡画像を2値化し、この2値パターンを太線状に膨張させることにより、半ショート部分(パターンの間隔が基準値以下の部分)をショート状態とする画像パターンに変換する膨張系と、この2値パターンを細線状に収縮させて半断線部分(パターンの幅が基準値以下の部分)を断線状態とする画像パターンに変換する収縮系との2通りの処理を行ない、これら膨張系で得られた画像パターンと収縮系で得られた画像パターンとについて、パッド(パターンの端部の円形部分)間の連結関係を抽出して設計情報と比較し、半ショートや半断線などの欠陥を検出するものである。
【0017】
これは、導体間隔が規定の間隔以下のとき欠陥とし、あるいは導体幅が規定の幅以下のとき欠陥とする検査規定によるものであって、膨張系は、欠陥とする規定値以下の間隔を潰して導体間をくっつけるようにし、また、収縮系では、規定値以下の導体幅をなくして切断された状態とし、欠陥の検査を行なうものである。従って、もとの配線パターンから膨張パターンを形成する場合の膨張量は最小導体間隔とし、収縮量は最小パターン幅とするものである。
【0018】
ここで、連結関係の抽出処理とは、パッドの中心に番号(パッド番号)を割り当ててパッド番号をパターンに沿って伝播させ、これが他のパッド番号に到達したとき、そのパッド番号と出発点のパッド番号との間に連結があったものとして記憶させるという方法である。
【0019】
図5によると、膨張系の場合、パッド番号▲1▼がパッド番号▲2▼,▲3▼,▲4▼と連結されているという連結関係が抽出されるが、設計情報によると、パッド番号▲1▼とパッド番号▲2▼とが、また、パッド番号▲3▼とパッド番号▲4▼とが夫々連結されていることになるから、抽出された連結関係と設計情報とを比較することにより、パッド番号▲1▼とパッド番号▲3▼,▲4▼との間に半ショートあるいはショートといった欠陥があることが分かる。
【0020】
また、収縮系の場合には、同様にして、パッド番号▲3▼,▲4▼間のみが連結されているという連結関係が抽出されるが、設計情報によると、パッド番号▲1▼,▲2▼間も連結されていることになるから、このパッド番号▲1▼,▲2▼間に半断線あるいは断線といった欠陥があることが分かる。
【0021】
図6は配線パターン検査装置の検査アルゴリズムの全体構成を示す図である。
【0022】
同図において、パターン検出部100では、プリント基板からの光画像を光電変換することにより、このプリント基板の表面の濃淡画像の信号を得る。この濃淡画像は膨張系と収縮系とに送られる。
【0023】
膨張系では、この配線パターンの濃淡画像を2値化101し、得られた2値パターンを、上記のように、膨張110aさせ、この膨張パターンを、連結関係を保ったまま画像を縮小変化させるデータ圧縮処理111aを行なった後、一旦画像メモリに記憶112させる。縮小系でも同様であって、配線パターンの濃淡画像を2値化102し、得られた2値パターンを、上記のように、縮小120させ、この縮小パターンを、連結関係を保ったまま画像を縮小変化させるデータ圧縮処理111bを行なった後、一旦画像メモリに記憶113させる。
【0024】
しかる後、画像メモリから膨張パターンと縮小パターンとを読み出して夫々の連結関係を抽出114し、夫々の抽出結果を設計情報115と比較して欠陥の判定116を行ない、この判定結果に基づいて膨張パターンと収縮パターンでの欠陥を含む連結関係部分を抽出117し、欠陥位置を特定118する。
【0025】
このような配線パターンの検査において、膨張系では、図4に示すようなショートは勿論のこと、半ショートや細い幅のヘアラインショートや細かい飛散,孤立点といった小さい余剰系欠陥も明確に欠陥として検出可能となり、かつヘアライン断線やピンホールといった不足系欠陥がなくなるような膨張パターンが得られるようにすることが必要であるし、また、収縮系についても、図4に示すような断線や半断線は勿論のこと、細い幅のヘアライン断線や細かいピンホールといった不足系欠陥も明確に欠陥として検出可能となり、かつヘアラインショートや細かい飛散,孤立点といった余剰系欠陥がなくなるような収縮パターンが得られるようにすることが必要である。
【0026】
従来では、2値化処理101,102としては、単一の2値化閾値を用いる単純2値化方式により、検出された濃淡画像の2値化を行ない、これを膨張系,収縮系で処理するようにしていたが、上記のような余剰系,不足系の欠陥全てを検出できるような2値化閾値を設定することができなかった。これに対し、本発明では、膨張系,収縮系での処理で上記の欠陥が全て検出できるような2値化101,102を可能とするものである。
【0027】
以下、本発明による配線パターン検査方法の一実施形態について説明する。
この実施形態は、3閾値による2値化と2次微分による2値化とを併用し、かつこれら2値化のための5種類の閾値を適正に設定することができるようにしたものであるが、まず、図1により、かかる5種類の閾値について説明する。
【0028】
図1(a)はプリント基板上の配線パターンの一具体例を示すものであって、1は配線パターン、2はヘアライン断線、3はピンホール、4はヘアラインショート、5は飛散、6はプリント基板の基材部である。
【0029】
同図(a)において、プリント基板の基材部6の表面は輝度が高くて明るく、この表面に輝度が低くて暗い配線パターン1が形成されているものとする。そして、ここでは、この配線パターン1にヘアライン断線2やピンホール3が生じており、また、この配線パターン1と他の配線パターンとの間にヘアラインショート4が、さらに、基材部6の表面に飛散5が発生しているものとする。
【0030】
かかるプリント基板上のA−A線に沿って読み取られる濃淡画像信号10は、図1(b)に示すように、配線パターン1に対する低レベル部分と基材部6に対する高レベル部分とからなり、これら低レベル部分と高レベル部分との境のレベル変化部分が配線パターン1のエッジ部分となる。
【0031】
ここで、暗い配線パターン1中に存在はヘアライン断線2は、配線パターン1の部分よりも明るいが、基材部6に比べて暗く、細くなるほど配線パターン1の明るさに近づいていく。このため、濃淡画像信号10では、図1(b)に示すように、ヘアライン断線2の部分のレベルは配線パターン1の部分のレベルよりも若干高くなっている。また、ピンホール3も、ヘアライン断線2と同様、配線パターン1と基材部6との間の明るさを持つが、ヘアライン断線2に比べて広い面積を持つため、濃淡画像信号10では、図1(b)に示すように、ヘアライン断線2の部分よりもレベルが高いものとなる。
【0032】
また、ヘアラインショート4や飛散5は、その周りが基材部6で囲まれているため、むしろ基材部6に近い明るさを持っており、その幅や大きさが小さくなるほど、その明るさが基材部6に近づいてくる。従って、濃淡画像信号10では、図1(b)に示すように、ヘアラインショート4や飛散5の部分のレベルは、基材部6のレベルよりも低いが、ヘアライン断線2やピンホール3の部分のレベルよりも高く、これら間のレベル差は、基材部6と配線パターン1との明るさの差(コントラスト)が大きくなるほど、大きくなる。この場合も、飛散5は、ヘアラインショート4に対して面積を持つため、濃淡画像信号10では、飛散5の部分のレベルがヘアラインショート4の部分のレベルよりも低い。
【0033】
このように、ヘアライン断線2やピンホール3といった不足系欠陥とヘアラインショート4や飛散5といった余剰系欠陥とでは、濃淡画像信号10での信号レベルが大きく異なるものであり、このため、従来のような単一の2値化閾値を用いた2値化方式では、これら欠陥を全て含む2値化パターンを得ることができない。
【0034】
この実施形態では、図1(b)に示すように、濃淡画像信号10に対しては、
th1:基本閾値
thH:飛散検出用の高い閾値
thL:ピンホール検出用の低い閾値
を用いる。
【0035】
また、ヘアライン断線2やヘアラインショート4の検出には、濃淡画像信号10の2次微分信号の2値化方式を併用するものである。図1(c)はこの2次微分信号11を示すものである。濃淡画像信号10でのヘアライン断線2の部分はピンホール3の部分よりも信号変化も急峻であるから、図1(c)に示すように、2次微分信号11において、ヘアライン断線2の部分はピンホール3の部分よりも振幅が大きい。同様にして、2次微分信号11において、ヘアラインショート4の部分は飛散5の部分よりも振幅が大きい。このことから、この2次微分信号11に対し、
th2:2次微分画像に対するヘアラインショート検出用閾値
th3:2次微分画像に対するヘアライン断線検出用閾値
を設定する。
【0036】
図1(d)は図1(b)における濃淡画像信号10を適切に設定された基本閾値th1で2値化して得られる2値パターンA1を示すものであって、この濃淡画像信号の明るさ(濃淡値)をIとすると、
【0037】
【数1】
【0038】
である。図1(h)は図1(b)における濃淡画像信号10を適切に設定された飛散検出用閾値thHで2値化して得られる2値パターンAHを示すものであって、
【0039】
【数2】
【0040】
である。図1(j)は図1(b)における濃淡画像信号10を適切に設定されたピンホール検出用閾値thLで2値化して得られる2値パターンALを示すものであって、
【0041】
【数3】
【0042】
である。
【0043】
また、図1(i)は図1(c)における2次微分信号11を適切に設定されたヘアラインショート検出用閾値th2で2値化して得られる2値パターンA2を示すものであって、2次微分値をI”a,I”b,I”c,I”dとして、
【0044】
【数4】
【0045】
である。ここで、2次微分値I”aは図1(b)に示した濃淡画像信号10に図2(a)に示す画素単位で5×5の2次微分オペレータを作用させることによって得られるものであり、以下、2次微分値をI”b,I”c,I”dは夫々、濃淡画像信号10に図2(b),(c),(d)に示す画素単位で5×5の2次微分オペレータを作用させることによって得られるものである。図1(k)は図1(c)における2次微分信号11を適切に設定されたヘアラインショート検出用閾値th3で2値化して得られる2値パターンA3を示すものであって、
【0046】
【数5】
【0047】
である。
【0048】
なお、図2(a)に示す2次微分オペレータは水平方向に沿うパターンエッジを顕在化するものであり、図2(b)に示す2次微分オペレータは右上がり方向に沿うパターンエッジを顕在化するものであり、図2(c)に示す2次微分オペレータは垂直方向に沿うパターンエッジを顕在化するものであり、図2(d)に示す2次微分オペレータは右下がり方向に沿うパターンエッジを顕在化するものである。即ち、これら2次微分オペレータは入力される濃淡画像のエッジ部分を顕在化するものであり、このエッジ部が急峻なほど2次微分値I”a,I”b,I”c,I”dは大きくなる。従って、図1(c)に示すように、ヘアライン断線2やヘアラインショート4の部分の2次微分値はピンホール3や飛散5の部分の2次微分値よりも大きくなる。
【0049】
ところで、上記数1〜5による2値化を行なうと、基準閾値による2値パターンA1は、図1(d)に示すように、パターンエッジを境として、配線パターン1の部分で“1”,基材部6の部分で“0”となる。つまり、パターンエッジでレベルが反転する信号である。
【0050】
濃淡画像10の飛散検出用閾値thHによる2値パターンAHは、図1(h)に示すように、基材部6に存在するヘアラインショート4や飛散5といった欠陥に対して“1”となり、飛散検出用閾値thHを適切に設定することにより、飛散5に対する信号成分はこの飛散5の幅の実寸法に応じた時間幅の信号として含まれる。しかし、この2値パターンAHには、かかる飛散5に対する信号成分ばかりでなく、ヘアラインショート4に対する信号成分も含まれる場合もあるし、また、配線パターン1の部分では、常時“1”である。
【0051】
また、濃淡画像10のピンホール検出用閾値thLによる2値パターンALは、図1(j)に示すように、配線パターン1に存在するヘアライン断線2やピンホール3といった欠陥に対して“0”となり、ピンホール検出用閾値thLを適切に設定することにより、ピンホール3に対する信号成分はこのピンホール3の幅の実寸法に応じた時間幅の信号として含まれる。基材部6の部分では、2値パターンALは常時“0”となる。
【0052】
2次微分パターン11のヘアラインショート検出用閾値th2による微分2値パターンA2は、図1(i)に示すように、ヘアラインショート検出用閾値th2を適切に設定することにより、ヘアラインショート4に対する信号成分がこの欠陥の幅の実寸法に応じた時間幅の“1”の信号として含まれるのであるが、エッジ部分の急峻さに応じて、ピンホール3や飛散5のエッジ部や配線パターン1のエッジ部なども含まれることになる。
【0053】
2次微分パターン11のヘアライン断線検出用閾値th3による微分2値パターンA2は、図1(k)に示すように、ヘアライン断線検出用閾値th3を適切に設定することにより、ヘアライン断線2に対する信号成分がこの欠陥の幅の実寸法に応じた時間幅の“0”の信号として含まれるのであるが、エッジ部分の急峻さに応じて、ピンホール3や配線パターン1などのエッジ部も含まれることになる。
【0054】
さて、以上のような2値パターンにおいて、2値パターンAL,A3を論理積処理することにより、ヘアライン断線2及びピンホール3の夫々の欠陥に対するそれらの実寸法に応じた時間幅の信号成分を含む2値パターン(AL・A3)が得られる。同様にして、2値パターンAH,A2を論理積処理することにより、ヘアラインショート4及び飛散5の夫々の欠陥に対するそれらの実寸法に応じた時間幅の信号成分を含む2値パターン(AH+A2)が得られる。ここで、・は論理積、+は論理和を表わす。
【0055】
ところで、上記2値パターン(AL・A3)についてみると、ヘアライン断線2及びピンホール3は配線パターン1の領域に存在する欠陥であるから、これら欠陥の信号成分を得るためには、この2値パターン(AL・A3)のうちの配線パターン1の領域の部分のみ抽出する必要がある。同様にして、上記2値パターン(AH+A2)についてみると、ヘアラインショート4及び飛散5は基材部6の領域に存在する欠陥であるから、これら欠陥の信号成分を得るためには、この2値パターン(AH+A2)のうちの基材部6の領域の部分のみ抽出する必要がある。なお、配線パターン1のエッジ部は、上記の各閾値th1,thH,thL,th2,th3による2値化で検出されるが、欠陥ではない。また、閾値th1,thH,thL,th2,th3による2値化では、この配線パターン1のエッジ部は正しく検出されない。即ち、基本閾値th1が配線パターン1のエッジ部を検出するためのものであり、この基本閾値th1を適切に設定することにより、配線パターン1のエッジ部が正しい位置で検出されることになる。図1(d)に示す2値パターンA1のレベル反転部が配線パターン1のエッジ部を表わしていることになる。
【0056】
以上のことからして、ヘアライン断線2及びピンホール3は2値パターン(AL・A3)から、ヘアラインショート4及び飛散5は2値パターン(AH+A2)から、配線パターン1のエッジ部は2値パターンA1から夫々得られるようにする必要がある。
【0057】
そこで、この実施形態では、さらに、信号の時間軸方向に、エッジ部を除いた配線パターン1の領域とこの配線パターン1のエッジ部を含むエッジ領域と基材部6の領域とに領域分割する。図1(e)は配線パターン1の領域を表わす2値パターンANL(なお、この配線パターン1の領域も配線パターン領域ANLという)を、図1(f)は配線パターン1のエッジ部の領域を表わす2値パターンANM(なお、このエッジ部の領域もエッジ領域ANMという)を、図1(g)は基材部6の領域を表わす2値パターンANH(なお、この基材部6の領域も基材部領域ANHという)を夫々表わしている。かかる領域ANL,ANM,ANHは、後述する領域分割オペレータでの着目画素の周囲の“1”の有効画素数をN、後述するように判定値をNL,NHとして、次の数6で表わされる。
【0058】
【数6】
【0059】
但し、
ANL+ANM+ANH=1
である。
【0060】
そして、配線パターン領域でヘアライン断線2及びピンホール3の検出を行なうために、2値パターン(AL・A3),ANLの演算処理、即ち、
ANL・(AL・A3)
を行ない、基材部6の領域でヘアラインライン4及び飛散5の検出を行なうために、2値パターン(AH+A2),ANHの演算処理、即ち、
ANH・(AH+A2)
を行なう。また、エッジ領域で配線パターン1のエッジ部の検出を行なうために
、 ANM・(A1・A3+A1・A2)
の処理を行なう。なお、上記演算式において、A1・A3はこのエッジ領域でのレベルと配線パターン領域でのANL・(AL・A3)のレベルとを揃えるための演算であり、また、A1・A2は2値パターンA1が図示とはレベル反転しているときのエッジ領域でのレベルと基材部領域でのANH・(AH+A2)のレベルとを揃えるための演算である。
【0061】
従って、以上の2値化処理によって得られる2値化出力ARは、
【0062】
【数7】
【0063】
となる。この出力ARを図1(l)に示す。
【0064】
次に、上記の領域分割について説明する。
【0065】
ここで、このような配線パターン領域ANL,エッジ領域ANM,基材部領域ANHへの分割は、図1(d)に示す基本閾値th1による2値パターンA1へ領域分割オペレータを作用させ、2値パターンA1での着目画素がこれら領域ANL,ANM,ANHのいずれに属しているかを判定するものである。この領域分割オペレータは、2値パターンA1での画素の2次元配列に作用させるものであって、着目画素が判定基準となる周囲の有効画素にどのような状態で囲まれているかに応じて、この着目画素が領域ANL,ANM,ANHのいずれに属しているかを判定するものである。
【0066】
図3は領域分割オペレータの具体例を示すものである。かかる具体例は、有効画素を着目画素Pを中心とする円周上の画素Bとするものであって、これら有効画素Bが“1”であるか否かを判定して、“1”の有効画素Bの個数Nをカウントし、このカウント値Nに応じてこの着目画素Pが領域ANL,ANM,ANHのいずれに属しているかを判定するものである。
【0067】
ここで、周囲画素Bが存在する円周の直径が画素単位でn画素であるとき、この領域分割オペレータをサイズn×nのオペレータという。このオペレータサイズは配線パターン1の線幅やこの配線パターンのエッジ幅に応じて設定されるものであって、異なる線幅やエッジ幅の配線パターンのプリント基板を検査する検査装置の場合には、各プリント基板毎に最適なサイズの領域分割オペレータが予め設けられており、検査するプリント基板に応じて使用する領域分割オペレータを異ならせる。
【0068】
図3には、サイズが7×7,9×9及び11×11の領域分割オペレータを示している。サイズ7×7の領域分割オペレータでは、有効画素Bは16画素であり、この画素数に対して2つの判定値NL=14,NH=2が設定されている。また、サイズ9×9の領域分割オペレータでは、有効画素Bは24画素であって、この画素数に対して2つの判定値NL=22,NH=2が設定され、サイズ11×11の領域分割オペレータでは、有効画素Bは28画素であり、この画素数に対して2つの判定値NL=25,NH=3が設定されている。
【0069】
このような領域分割オペレータの判定値NL,NHと上記の“1”の有効画素Bの個数Nとから、上記数6に基づいて着目画素Pの属する領域ANL,ANM,ANHを判定するものである。
【0070】
ところで、上記のような欠陥が発生しないとするならば、有効画素Bが全て“1”のとき、着目画素Pは配線パターンの領域にあると判定でき、また、有効画素Bが全て“0”のとき、着目画素Pは基材部の領域にあると判定でき、さらに、一部の有効画素Bが“1”での凝りの有効画素Bが“0”のとき、着目画素Pは配線パターンのエッジ部の領域に属すると判定することができる。このため、例えば、サイズ7×7の領域分割オペレータにおいて、NL=16,NH=0とすることも考えられる。
【0071】
しかし、このようにすると、例えば、サイズ7×7の領域分割オペレータにおいて、配線パターン領域ANLで有効画素Bが並んだ円周を1画素以下の幅のヘアライン断線が横切る場合、2個の有効画素が“0”となって“1”の有効画素Bの個数N=14となり、N<NLであるから、配線パターン領域ANLであるにもかかわらず、配線パターンのエッジ部の領域ANMと誤った判定をすることになる。このため、図3では、判定値NLを有効画素Bの総数よりもヘアライン断線の幅分少ない値としているのである。同様にして、判定値NHにも、ヘアラインショートの幅分の値を持たせ、ヘアラインショートがあっても、これにより、基材部の領域ANHを配線パターンのエッジ部の領域ANMと誤って判定することがないようにしている。
【0072】
そして、このように判定値NL,NHを設定して正しく配線パターン,そのエッジ部,基材部の各領域を判定できることにより、配線パターンの領域ANLでのヘアライン断線を、また、基材部の領域ANHでのヘアラインショートを検出できるようになる。
【0073】
なお、ヘアライン断線やヘアラインショートの幅は、領域分割オペレータのサイズに応じて異ならせてもよく、その領域分割オペレータを使用する配線パターンでのかかる欠陥の幅がどの程度となるかに応じて決定されるものである。
【0074】
また、ここでは、有効画素Bを着目画素Pに対して等方的な配置となる円周上に配置されたものとしたが、これのみに限定されるものではなく、例えば、着目画素Pを中心とする円内の全ての画素や着目画素を中心とする正方形内の全ての画素など、被検査物の図形的性質や仕様などに応じて適宜その範囲を変更可能である。
【0075】
次に、領域分割オペレータと配線パターンの線幅との関係について、図7を用いて説明する。
【0076】
図7(a)は配線パターン1の線幅(ここでは、この線幅を5画素分とする)以下のサイズの領域分割オペレータ(ここでは、オペレータサイズ5×5とする)がこの配線パターン1を、図面上、右方向に横切る動作を示しており、配線パターン1に対する領域分割オペレータの位置が(i),(ii),(iii)の順に変化していくものとする。
【0077】
(i)の状態は着目画素Pの周りの有効画素Bが全て配線パターン1の領域内にあり、このときの有効画素Bは全て“1”である。ここで、全有効画素Bの個数に対する“1”の有効画素Bの個数Nの比をαとすると、この(i)の状態では、α=12/12である。次に、配線パターン1に対して領域分割オペレータが2画素分右方に移動した(ii)の状態では、右側の5個の有効画素Bが配線パターン1からはみ出して“0”となり、このときには、比α=7/12となる。さらに、配線パターン1に対して領域分割オペレータが1画素分右方に移動した(iii)の状態になると、右側の7個の有効画素Bが配線パターン1からはみ出して“0”となり、このときには、比α=5/12となる。
【0078】
このように、オペレータサイズが配線パターン1の線幅よりも小さいときには、領域分割オペレータが配線パターン1内にあるとき、比α=1となって最大となり、領域分割オペレータが配線パターン1から外れていくにつれてαが小さくなっていく。
【0079】
これに対し、図7(b)はオペレータサイズが配線パターン1の線幅(ここでも、この線幅を5画素分としている)よりも大きい場合(ここでは、オペレータサイズ7×7とする)を示すものである。この場合も、図7(a)の場合と同様、領域分割オペレータがこの配線パターン1を、図面上、右方向に横切る動作を示しており、配線パターン1に対する領域分割オペレータの位置が(イ),(ロ),(ハ)の順に変化していくものとする。
【0080】
(イ)の状態は着目画素Pが配線パターン1の幅方向中心部に位置しているものとしている。この場合には、5画素の線幅に対してオペレータサイズが7×7であるから、左右両側3個ずつの有効画素Bが配線パターン1の領域からはみ出して“0”である。従って、この(イ)の状態では、α=10/12である。次に、配線パターン1に対して領域分割オペレータが1画素分右方に移動した(ロ)の状態では、右側の5個の有効画素Bのみが配線パターン1からはみ出して“0”となり、このときには、比α=11/12となる。さらに、配線パターン1に対して領域分割オペレータが1画素分右方に移動した(ハ)の状態になると、右側の7個の有効画素Bが配線パターン1からはみ出して“0”となり、このときには、比α=9/12となる。
【0081】
このように、オペレータサイズが配線パターン1の線幅よりも大きいときには、着目画素Pが配線パターン1の幅方向中心部にあるよりも、領域分割オペレータが配線パターン1から一方に若干片寄った方が比αが大きくなり、しかる後、領域分割オペレータが配線パターン1から外れていくにつれてαが小さくなっていく。
【0082】
以上のことからして、オペレータサイズが配線パターン1の線幅以下のときには、領域分割オペレータがこの配線パターン1内にあるとき、比α=1となって最大となり、領域オペレータが配線パターン1から外れていくにつれてαは単調に小さくなっていくが、オペレータサイズが配線パターン1の線幅よりも大きいと、着目画素Pが配線パターン1の幅方向中心部にあるよりも、これよりも若干ずれた方がαが大きくなり、領域分割オペレータと配線パターンとの位置関係とαとの関係が不自然なものとなる。
【0083】
従って、領域分割オペレータのサイズとしては、プリント基板上での配線パターン1の最小線幅以下であることが必要である。これにより、検査対象となるプリント基板上での配線パターン1の最小線幅に応じて、使用可能な領域分割オペレータの最大のサイズが決まることになる。
【0084】
図8は検査対象となるプリント基板上での配線パターン1に対する使用可能な領域分割オペレータの最小のサイズを説明した図である。
【0085】
配線パターン1の濃淡画像信号10のエッジ部は、パターンのにじみにより、図8に示すように、明るさ(濃淡値)が連続して変化していく傾斜した波形の有限の期間を有している。ここで、このエッジ部において、ピンホール検出用閾値thLの明るさから飛散検出用閾値thHの明るさまでの明るさ範囲に含まれる明るさの画素数を、以下、明かるさ変化画素数という。
【0086】
図8(a)はオペレータサイズ>明るさ変化画素数の場合のエッジ部近傍での2値パターンを示すものであって、この場合には、領域分割オペレータで決まるエッジ部の領域ANMはこの濃淡画像信号10のエッジ部全体を含むため、このこのエッジ部の領域ANM 内にのみ基本閾値th1で得られた2値パターンA1のエッジE0が得られることになる。
【0087】
これに対し、図8(b)に示すように、オペレータサイズ<明るさ変化画素数の場合には、領域分割オペレータで決まるエッジ部の領域ANMは濃淡画像信号10のエッジ部の範囲よりも狭くなり、領域分割オペレータで決まる配線パターン1の領域ANLも基材部6の領域ANHもこのエッジ部の範囲に入り込んでくる。このため、勿論領域ANMで基本閾値th1で得られた2値パターンA1のエッジE0が得られるが、領域ANLでも、ピンホール検出用閾値thLで得られる2値パターンALでこのエッジ部に対するエッジELが、また、領域ANHでも、飛散検出用閾値thHで得られる2値パターンAHでこのエッジ部に対するエッジEHが夫々発生することになる。
【0088】
このように、オペレータサイズ<明るさ変化画素数にすると、領域ANL,ANM,ANHの全てに配線パターン1での同じエッジ部が誤って検出されるという不自然な事態が発生することになる。従って、領域分割オペレータのサイズは、配線パターン1のエッジ部の幅以上とすることが必要となる。
【0089】
なお、領域分割オペレータはサイズを7×7,9×9,11×11と離散的な値しかとれないが、有効画素数のカウントに対して閾値NH、NLを設けることにより、かかる離散的な実際のサイズの間のサイズの領域分割オペレータを実現することができる。即ち、閾値NH,NLを近づけると、オペレータサイズが小さくなることと同様な効果が得られるのである。
【0090】
この実施形態では、上記のようにして、低い閾値thLでピンホール欠陥を、高い閾値thHで飛散欠陥を夫々顕在化し、また、ヘアライン断線やヘアラインショートは専ら2次微分閾値により検出するものであり、この結果、上記数7で示す2値化出力ARが得られるのであるが、上記各閾値th1,thH,thL,th2,th3の設定は、図6に示す欠陥検査装置の場合、2値化手段101,102とこれによって得られる上記数7で表わされる2値化画像を表示する画像表示手段131,132を用いて行なわれる。
【0091】
なお、これら2値化手段101,102では、上記閾値を適宜設定することにより、2値化機能の切り替えを可能となる。即ち、2次微分併用の2値化とするためには、閾値の設定をth1=thH=thLとすればよい。これにより、数1,2,3からA1=AH=ALとなるので、上記数7に示す2値化出力信号ARは、
となり、従来の2次微分を併用した2値化を実現できる。但し、この場合の上記数7では、ANM・A1・A2はANM=1(パターンエッジ領域)かつA1=0の領域での閾値th2による2次微分2値画像を表わすものであり、また、ANH・A3・A2はANH=1の領域であるが、この領域ではA3=1であり、A1=1と同等である。従って、この場合の数7における(ANM・A1・A2+ANH・A3・A2)はA1・A2となり、上記の2値化出力信号AR が得られることになる。
【0092】
一方、2次微分2値化を用いないで3閾値2値化として機能させるためには、2次微分画像I”の閾値をth2=∞、th3=−∞とすればよく、上記数4により、A2=0、また、上記数5により、A3=1となるため、これを上記数7に代入すると、2値化出力信号ARは、
AR=ANL・AL+ANM・A1+ANH・AH
となり、3閾値2値化パターンが得られることになる。
【0093】
さらに、単純2値化(閾値th1のみによる2値化)として機能させる場合には、th1=thH=thL,th2=∞,th3=−∞とすればよい。これにより、A1=AH=AL、A2=0,A3=1となり、かつANL+ANM+ANH=1であるから、これを上記数7に代入すると、2値化出力信号ARは、
AR=A1
となる。
【0094】
このように、この実施形態では、各種欠陥の検出に対応することが可能であると共に、柔軟に機能の切り替えを行なうことができる。
【0095】
次に、パターンを精度良く検出するための2値化閾値th1,th2,th3,thH,thLの設定方法について説明する。
【0096】
この設定のためには、各欠陥モード(即ち、ヘアライン断線やヘアラインショートなどの欠陥の種類)の限界欠陥サンプルを基準として用いる。基準となるサンプルは、実欠陥でも、模擬欠陥でもよい。即ち、検出すべき最小幅を有するヘアライン断線やヘアラインショート,最小導体間隔となる半ショート,最小線幅を有する半断線欠陥,最小検出サイズのピンホールや飛散欠陥などである。
【0097】
図9は図6の膨張系と収縮系での各2値化閾値の設定基準の一具体例を示すものである。
【0098】
図6の膨張系での各閾値を設定する場合、パターン検出手段100から上記のサンプルを持つ濃淡画像を2値化手段101に供給し、ここで得られる2値化パターンAR を画像表示手段131で表示させ、閾値を調整することにより、最適な閾値に設定するものである。以下、その設定方法を図9を用いて説明する。
【0099】
膨張系の場合、パターン検出用の基準閾値th1は、検出対象をパターンのエッジ部と半ショート(導体パターン間隔が規定される最小間隔よりも狭くなっている欠陥:図4を参照)とするものであって、この基準閾値th1で得られる2値化パターンを、先に説明したように、規定幅だけ膨張したとき、この半ショートが必ずショートするような閾値とするものであり、また、飛散検出用の閾値thHを決定する際の基準となるものである。従って、濃淡画像をこの基準閾値th1で2値化して得られる2値化パターンの規定される最小導体間隔(欠陥ではない)が実寸通りに検出されるように、この閾値th1を設定する必要がある。このことは、半ショートがなければ、導体パターンの間隔が規定の最小の場所でも、膨張したときにショートが生じないことを意味している。このように基準閾値th1を設定するためには、th1=thH=thL,th2=∞,th3=−∞とし、かつ最小導体間隔の濃淡画像をサンプルとして使用して、このサンプルから得られる上記数7の2値化出力信号ARをAR=A1として画像表示手段131で表示しながら基準閾値th1を調整する。
【0100】
膨張系の場合、閾値th2は、2次微分画像を2値化するものであって、余剰系欠陥としてのヘアラインショートや孤立点を検査対象欠陥とするものであり、検出すべき最小サイズのかかる欠陥が実寸で検出されるように設定されるものであるが、このためには、かかるサイズの欠陥を持つサンプルの濃淡画像を得、これを上記のように基準閾値th1で2値化して2値化パターンA1を得るとともに、この濃淡画像の2次微分画像を得、これを閾値th2で2値化してかかる最小サイズのかかる欠陥が実寸で検出されるように、この閾値th2を調整するものである。この場合、検査対象欠陥が抽出されて画像表示手段131で表示されるように、2次微分画像の閾値th2による2値画像のうちの2値化パターンA1の“0”の領域だけを抽出して画像表示手段131に供給するようにする。このために、th1=thH=thL,th3=−∞とすることにより、A1=AH=AL=0(従って、A1=1),かつA3=1とし、2値化出力信号ARを、上記数7から、
AR=ANM・A1・A2+ANH・A2=(ANM・A1+ANH)・A2
とするものである。領域(ANM・A1+ANH)は、図1から明らかなように、A1=1の領域である。
【0101】
膨張系の場合、閾値thHは、濃淡画像を2値化して余剰系欠陥としての飛散を検出するためのものであって、その2値化画像で検出する最小サイズのかかる欠陥が実寸で検出されるように設定される。この場合、検査対象欠陥が抽出されて画像表示手段131で表示されるように、濃淡画像の閾値thHによる2値画像のうちの2値化パターンA1の“0”の領域だけを抽出して画像表示手段131に供給するようにする。このために、th1=thL,th2=∞,th3=−∞とすることにより、A1=AL=A2=0(従って、A1=1),かつA3=1とし、2値化出力信号ARを、上記数7から、
AR=ANH・AH
とするものである。領域ANHは、図1から明らかなように、パターンエッジ部を除いたA1=1の領域である。
【0102】
閾値th3は導体パターン中の不足系欠陥であるヘアライン断線を検出するためのものであり、閾値thLは導体パターン中の不足系欠陥であるピンホールを検出するためのものであるから、膨張系では、これら閾値th3,thLは使用されず、一例として収縮系と同じ値に設定される。
【0103】
次に、図6の収縮系での各閾値を設定する場合、パターン検出手段100からサンプルを持つ濃淡画像を2値化手段102に供給し、ここで得られる2値化パターンARを画像表示手段132で表示させ、閾値を調整することにより、最適な閾値に設定するものである。以下、その設定方法を図9を用いて説明する。
【0104】
収縮系の場合、パターン検出用の基準閾値th1は、検出対象をパターンのエッジ部と半断線(導体パターンの幅が規定される最小幅よりも狭くなっている欠陥:図4を参照)とするものであって、この基準閾値th1で得られる2値化パターンを、先に説明したように、規定幅だけ縮小したとき、この半断線が必ず断線するような閾値とするものであり、また、ピンホール検出用の閾値thLとを決定する際の基準となるものである。従って、濃淡画像をこの基準閾値th1で2値化して得られる2値化パターンの規定される最小導体幅(欠陥ではない)が実寸通りに検出されるように、この閾値th1を設定する必要がある。このことは、半断線がなければ、導体パターンの幅が規定の最小の場所でも、収縮したときに断線が生じないことを意味している。このように基準閾値th1を設定するためには、th1=thH=thL,th2=∞,th3=−∞とし、かつ最小導体幅の濃淡画像をサンプルとして使用して、このサンプルから得られる上記数7の2値化出力信号ARをAR=A1として画像表示手段131で表示しながら基準閾値th1を調整する。
【0105】
収縮系の場合、閾値th3は、2次微分画像を2値化するものであって、不足系欠陥としてのヘアライン断線を検査対象欠陥とするものであり、検出すべき最小サイズのかかる欠陥が実寸で検出されるように設定されるものであるが、このためには、かかるサイズの欠陥を持つサンプルの濃淡画像を得、これを上記のように基準閾値th1で2値化して2値化パターンA1を得るとともに、この濃淡画像の2次微分画像を得、これを閾値th3で2値化してかかる最小サイズのかかる欠陥が実寸で検出されるように、この閾値th3を調整するものである。この場合、検査対象欠陥が抽出されて画像表示手段132で表示されるように、2次微分画像の閾値th3による2値画像のうちの2値化パターンA1の“1”の領域だけを抽出して画像表示手段132に供給するようにする。このために、th1=thH=thL,th2=∞とすることにより、A1=AH=AL=1(従って、A1=0),かつA2=0とし、2値化出力信号ARを、上記数7から、
AR=ANL・A3+ANM・A3=(ANL+ANM)・A3
(但し、ANH=1の領域でA1=AH=0であるから、ANH・A3・AH=0)
とするものである。領域(ANL+ANM)は、図1から明らかなように、A1=1の領域である。
【0106】
収縮系の場合、閾値thLは、濃淡画像を2値化して不足系欠陥としてのピンホールを検出するためのものであって、その2値化画像で検出する最小サイズのかかる欠陥が実寸で検出されるように設定される。この場合、検査対象欠陥が抽出されて画像表示手段132で表示されるように、濃淡画像の閾値thLによる2値画像のうちの2値化パターンA1の“1”の領域だけを抽出して画像表示手段132に供給するようにする。このために、th1=thH,th2=∞,th3=−∞とすることにより、A1=AH=1(従って、A1=0),かつA2=0,A3=1とし、2値化出力信号ARを、上記数7から、
AR=ANL・AL+ANM・A1
(但し、ANH=1の領域でA1=AH=0であるから、ANH・A3・AH=0)
とするものである。領域ANLは、図1から明らかなように、パターンエッジ部を除いたA1=1の領域であり、また、分割領域ANM(即ち、パターンエッジ部)でのA1=1の領域である。
【0107】
閾値th2は導体パターン中の余剰系欠陥であるヘアラインショートを検出するためのものであり、閾値thHは導体パターン中の余剰系欠陥である飛散を検出するためのものであるから、収縮系では、これら閾値th2,thHは使用されず、一例として膨張系と同じ値に設定される。
【0108】
以上のようにして、図6の膨張系では、2値化手段101と画像表示手段131とを用いて、基準閾値th1とヘアラインショート/孤立点検出用の閾値th2と飛散検出用の閾値thHとが設定され、また、図6の収縮系では、2値化手段102と画像表示手段132とを用いて、基準閾値th1とヘアライン断線検出用の閾値th2とピンホール検出用の閾値thLとが設定される。
【0109】
以上の設定に際しては、2値化閾値をパラメータとして、対象欠陥の検出寸法の関係を求めるとよい。図10にピンホール検出用の閾値thLと飛散検出用の閾値thHの設定例を示す。
【0110】
図10(a)は直径25μmのピンホール欠陥に対して閾値thLを変化させた場合のこのピンホール欠陥の検出サイズを示したものである。この検出結果から明らかなように、閾値thLを高めるにつれて検出サイズが小さくなっていき、図示する関係から、ピンホール欠陥が正確に検出することができるためには、閾値thLを50階調とすればよいことが分かる。ここで、閾値に依存して検出欠陥サイズが変化するのは、濃淡画像におけるパターン波形のモジュレーションに起因するものである。なお、基準閾値th1は、上記手順によって最小導体間隔から求めたものを用いる。
【0111】
また、図10(b)は直径28μmの飛散欠陥に対する閾値thHを変化させた場合のこの飛散欠陥の検出サイズを示したものである。この検出結果から明らかなように、閾値thHを高めるにつれて検出サイズが大きくなっていき、図示する関係から、飛散欠陥が正確に検出することができるためには、閾値thHを90〜110階調の範囲にすればよく、特に、100階調が最適であることが分かる。
【0112】
以上の2値化閾値の決定に際しては、夫々の2値化画像の表示及び閾値をパラメータとしたときの基準欠陥の検出サイズに関するデータの集計が、図6において、画像表示手段131,132で行なわれる。これら画像表示手段131,132は、例えば、パーソナルコンピュータとモニタで構成されたものとすることができる。
【0113】
図11はかかる画像表示手段131,132での表示画面200の一具体例を示す図である。
【0114】
同図において、画像表示手段131,132の機能としては、夫々の閾値を変化させたときの2値画像201の記憶及び表示画面200での表示機能、上記5つの閾値th1,th2,th3,thL,thHによる2値画像を表示画面200で選択表示する機能、原画像202と2値画像との比較表示が表示画面200でできるように構成することも可能である。また、表示画面200で上記2値画像の任意の局所領域203を所定の倍率により拡大表示するように構成することも可能である。さらに、上記2値化閾値と欠陥検出サイズに関するデータの集計及び図10で説明したようなグラフ204を表示画面200で表示するように構成することも可能である。さらにまた、かかるデータの集計にあたっては、対象物の2値画像において、寸法の測定位置を予め教示しておくことにより、上記2値化閾値の設定手順を自動化するように構成することも可能である。そして、以上の機能を実行する際には、グラフィックインタフェースによるメニュー205に集約すると使い勝手がよい。
【0115】
なお、この実施形態の検査アルゴリズムの構成においては、最小線幅と最小導体間隔を実寸通り検出する基本閾値th1が各々異なる場合を想定し、図6に示したように、膨張系と収縮系とで個別に2値化手段101,102を設けた。但し、これら膨張系,収縮系で基本閾値th1が一致するか、またはその差が無視できる条件下では、膨張系と収縮系とでの2値化を共通化してもよい。
【0116】
また、パターンの検出に際しては、シェーディング補正や暗レベル補正を行なった上で2値化閾値の設定を行なうことにより、パラメータの標準化が可能となる。即ち、これにより、材質の変化や検出系の特性に依存するような明るさ変化の影響を最小限に抑制する効果がある。
【0117】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、所定の画像入力手段により入力したパターンを、実寸通り高精度に2値化検出することが可能となり、パターン上の欠陥をより安定かつ精密に検査することができるし、2値化の際には、検出対象欠陥の限界値サンプルを使用することにより、容易に2値化閾値を設定することができる。これにより、従来の検査では対応が困難であったような微小欠陥を検出することが可能になるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による配線パターン検査方法の一実施形態を示す図である。
【図2】図1における2次微分画像を得るための2次微分オペレータの一具体例を示す図である。
【図3】図1における領域分割のための領域分割オペレータの具体例を示す図である。
【図4】配線パターン上の検査対象欠陥の種類を示す図である。
【図5】欠陥検出のためのパターンの連結関係抽出処理を示す図である。
【図6】本発明による配線パターン検査方法を用いた検査アルゴリズムの全体構成を示す図である。
【図7】パターンの最小幅と領域分割オペレータのサイズとの関係を示す図である。
【図8】パターンエッジ幅と領域分割オペレータのサイズとの関係を示す図である。
【図9】図1に示した各2値化閾値の設定基準を示す図である。
【図10】設定閾値とピンホール欠陥,飛散欠陥の検出サイズとの関係を示す図である。
【図11】図6に示す画像表示手段における表示画面の一具体例を示す図である。
【符号の説明】
1 配線パターン
2 ヘアライン断線
3 ピンホール欠陥
4 ヘアラインショート
5 飛散欠陥
6 基材部
10 濃淡画像
11 2次微分画像
100 パターン検出/画像入力手段
101,102 2値化手段
131,132 画像表示手段
th1 基準閾値
thH 飛散検出用の閾値
thL ピンホール検出用の閾値
th2 ヘアラインショート検出用の閾値
th3 ヘアライン断線検出用の閾値
Claims (2)
- プリント基板あるいはセラミックス基板などの被検査対象物に形成された配線パターンの濃淡画像を入力する手段と、
該濃淡画像を2次微分画像に変換する2次微分処理手段と、
該2次微分画像を互いに異なる所定の閾値で2値化する複数の2次微分画像2値化手段と、
該濃淡画像を互いに異なる所定の閾値で2値化する複数の濃淡画像2値化手段と、
該濃淡画像での該2次微分画像2値化手段と該濃淡画像2値化手段とで処理される画素が該配線パターンの部分の画素であるか、該被対象物の基材部分の画素であるか、該配線パターンの境界部の画素であるかを判定する領域判定手段と
を備え、
該2次微分画像2値化手段の出力と該濃淡画像2値化手段の出力とを、該領域判定手段の出力に応じて、選択し、合成することにより、該濃淡画像の2値化画像を得ることを特徴とする配線パターン検査方法。 - 請求項2において、
前記領域判定手段は、前記濃淡画像2値化手段の出力画像に対し、N×M(N,Mは整数)の領域分割オペレータ中の所定画素値の有効画素数を計数し、その計数値に応じて前記判定を行なうことを特徴とする配線パターン検査方法。
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