JP3580180B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関から排出される排気ガス中の有害成分の大気への排出量を低減するための一手段として、触媒の酸化作用あるいは還元作用を利用して有害成分を浄化するシステムがある。
【0003】
近年の触媒に関する研究開発により触媒の性能向上は目覚ましいものがあり、小型でも浄化性能が高い触媒装置の実現が可能になった。その結果、近年、車両用内燃機関の排気ガスを浄化する排気浄化システムとして、触媒を組み込んだ排気浄化装置が多用されるに至っている。
【0004】
現在、実用に供されている排気ガス浄化用の触媒には、酸化触媒、三元触媒、リーンNOx触媒などがあり、これら触媒を、内燃機関の空燃比や燃焼形態、あるいは浄化すべき有害物質の種類などに応じて使い分けている。
【0005】
例えば、リーンNOx触媒の一種である吸蔵還元型NOx触媒は、流入排気ガスの空燃比がリーンのときにNOxを吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出しN2に還元するので、希薄燃焼可能な内燃機関(リーンバーンガソリンエンジンやディーゼルエンジン)から排出される排気ガスの浄化に好適であり、実用化されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この吸蔵還元型NOx触媒には活性温度域があり、この活性温度域(例えば、250〜500゜C)においてはNOxを高浄化率で浄化することができるが、前記活性温度域を外れるとNOxの浄化率が急激に低下し、あるいは殆ど浄化できなくなる。そのため、内燃機関の冷間始動時などにおいて吸蔵還元型NOx触媒が活性温度域に達するまでの間は、NOxが大気に排出される虞れがあり、改良の余地があった。
【0007】
また、内燃機関の冷間始動時には未燃のHCが多く生成され、この未燃のHCを含む排気ガスが前記吸蔵還元型NOx触媒に流入すると、吸蔵還元型NOx触媒がHC被毒を受け、吸蔵還元型NOx触媒のNOx浄化能が低下するという現象が生じる。
【0008】
このHC被毒に対する防止策として、特開平5−187230号公報に開示されているように、吸蔵還元型NOx触媒の上流にHC低減手段を設けることが考えられた。この公報では、HC低減手段として三元触媒や酸化触媒を挙げているが、これら触媒は低温活性がない。したがって、未燃HCが多く排出される冷間始動時にHCを低減することができない。
【0009】
本発明はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、冷間始動時などの低温時にHC及びNOxの大気排出を低減することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、(イ)内燃機関の排気通路に設けられ低温時にHCを吸着するHC吸着材と、(ロ)前記HC吸着材よりも下流の排気通路に設けられ低温時にNOxを吸着するNOx吸着材と、(ハ)前記NOx吸着材よりも下流の排気通路に吸蔵還元型NOx触媒と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この排気浄化措置では、内燃機関の冷間始動時などの低温時には、排気ガス中のHCはHC吸着材に吸着され、NOxはNOx吸着材に吸着されるので、低温時にHCやNOxが大気に排出されるのを防止することができる。また、NOx吸着材の上流にHC吸着材を配置しているので、NOx吸着材がHC被毒するのを防止することができる。
【0012】
本発明における内燃機関は、通常時ストイキで燃焼するガソリンエンジン(以下、ストイキエンジンと称す)や、希薄燃焼可能なガソリンエンジン(所謂、リーンバーンガソリンエンジン)やディーゼルエンジンを例示することができる。
【0013】
本発明において、HC吸着材としてはゼオライトを例示することができ、NOx吸着材としては、モルデナイトからなる担体にカルシウム(Ca)あるいはセリウム(Ce)あるいは白金(Pt)を坦持させたものや、ジルコニア(ZrO2)からなる担体に白金(Pt)を坦持したものなどを例示することができる。
【0014】
ここで、吸蔵還元型NOx触媒が活性温度に達していない低温時には吸蔵還元型NOx触媒でNOxやHCを浄化することはできない。しかしながら、このときにはHC吸着材が排気ガス中のHCを吸着し、NOx吸着材が排気ガス中のNOxを吸着するので、低温時のNOxやHCの大気への排出を防止することができる。そして、吸蔵還元型NOx触媒が活性温度に達したときには、排気ガス中のNOxやHCは吸蔵還元型NOx触媒によって浄化され、大気への排出が防止される。また、吸蔵還元型NOx触媒が活性温度に達する頃にはHC吸着材及びNOx吸着材もHC脱離温度もしくはNOx脱離温度になるためHC吸着材からHCが脱離しNOx吸着材からNOxが脱離する。HC吸着材から脱離したHC及びNOx吸着材から脱離したNOxは、HC吸着材及びNOx吸着材の下流に配置されている吸蔵還元型NOx触媒によって浄化される。
【0015】
NOx吸着材の下流に吸蔵還元型NOx触媒を備えた排気浄化装置は、リーンバーンガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど希薄燃焼可能な内燃機関から排出される排気ガスの浄化に好適である。
【0017】
吸蔵還元型NOx触媒は、流入排気ガスの空燃比がリーンのときはNOxを吸収し、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出しN2に還元する触媒をいう。ここで、流入排気ガスの空燃比とは、機関吸気通路及び吸蔵還元型NOx触媒上流での排気通路内に供給された空気及び燃料(炭化水素)の比をいう。
【0018】
吸蔵還元型NOx触媒は、例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されてなる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の実施の形態を図1から図3の図面に基いて説明する。
【0022】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置を、リーン空燃比で燃焼可能なガソリンエンジン(いわゆるリーンバーンガソリンエンジン)に適用した場合の実施の形態における概略構成を示す図である。
【0023】
この図において、エンジン1は直列4気筒であり、吸気管2及び吸気マニホルド3を介して各気筒に吸気が供給される。吸気管2には、図示しないアクセルペダルと連動して吸気管2内の吸気通路を開閉するスロットル弁4が設けられ、このスロットル弁4には、スロットル弁4の開度に対応した出力信号をエンジンコントロール用電子制御ユニット(ECU)100に出力するスロットルポジションセンサ5が取り付けられている。
【0024】
吸気管2においてスロットル弁4よりも上流側には、吸気管2内を流れる吸入空気量(吸入空気質量)Qに対応した出力信号をECU100に出力するエアフロメータ6が取り付けられている。
【0025】
エンジン1の各気筒に連なる各吸気通路には燃料噴射弁7から燃料(ガソリン)が噴射される。燃料噴射弁7の開弁時期及び開弁期間は、エンジン1の運転状態に応じてECU100によって制御される。また、エンジン1の各気筒にはそれぞれ図示しない点火栓が設けられており、各点火栓の点火時期はECU100によって制御される。
【0026】
エンジン1の各気筒から排出される排気ガスは、排気マニホールド8及び排気管(排気通路)9を通り、図示しないマフラーを介して排気される。排気管9にはその上流側から順に、HC吸着材21を内蔵したケーシング20、NOx吸着材31を内蔵したケーシング30、リーンNOx触媒としての吸蔵還元型NOx触媒(以下、NOx触媒と略す)41を内蔵したケーシング40が設置されている。
【0027】
HC吸着材21は、該吸着材温度が低温(例えば、常温から約200゜Cの温度域)の時に炭化水素(HC)を吸着し、それよりも高温になると吸着したHCを放出する。したがって、排気通路にHC吸着材21を設けると、エンジン1の冷間始動時に多く排出される未燃HCはHC吸着材21に吸着され、時間経過に伴いHC吸着材21の温度が上昇してくると、HC吸着材21に吸着されていた未燃HCがHC吸着材21から脱離し、下流へと流れることになる。HC吸着材21は例えばゼオライトで構成することができる。
【0028】
NOx吸着材31は、該吸着材温度が低温(例えば、約100〜400゜C)の時にNOxを吸着し、それよりも高温になると吸着したNOxを放出する。したがって、排気通路にNOx吸着材31を設けると、エンジン1の冷間始動時及び暖機運転時に、エンジン1から排出される排気ガス中のNOxはNOx吸着材31に吸着され、時間経過に伴いNOx吸着材31の温度が上昇してくると、NOx吸着材31に吸着されていたNOxがNOx吸着材31から離脱し、下流へと流れることになる。
【0029】
NOx吸着材31としては、モルデナイトからなる担体にカルシウム(Ca)あるいはセリウム(Ce)あるいは白金(Pt)を坦持させたものや、ジルコニア(ZrO2)からなる担体に白金(Pt)を坦持したものなどを例示することができる。
NOx触媒41については後で詳述する。
【0030】
ECU100はデジタルコンピュータからなり、双方向バスによって相互に接続されたROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、CPU(セントラルプロセッサユニット)、入力ポート、出力ポートを具備し、エンジン1の空燃比制御等の基本制御等を行う。
【0031】
これら制御のために、ECU100の入力ポートには、前記エアフロメータ6からの入力信号、回転数センサ14からの入力信号が入力される。回転数センサ14はエンジン1の回転数に応じた出力信号をECU100に出力し、この出力信号からECU100はエンジン回転数Nを演算する。また、ECU100はエアフロメータ6の出力信号から吸入空気量Qを演算し、エンジン負荷Q/N(吸入空気量Q/エンジン回転数N)を演算する。そして、ECU100は、エンジン回転数Nとエンジン負荷Q/Nからエンジン1の運転状態を判定し、その運転状態に応じて燃料噴射弁から噴射する燃料量を制御することにより空燃比制御を行う。
【0032】
尚、この実施の形態のエンジン1では、機関低中負荷運転領域ではリーン空燃比制御が実行され、機関高負荷運転領域並びにエンジン始動時の暖機運転時や加速時や高速の定速運転時では理論空燃比制御が実行され、機関全負荷運転領域ではリッチ空燃比制御が実行される。
【0033】
図2はエンジン1の燃焼室から排出される排気ガス中の代表的な成分の濃度を概略的に示している。この図からわかるように、燃焼室から排出される排気ガス中の未燃HC,COの濃度は燃焼室内に供給される混合気の空燃比がリッチになるほど増大し、燃焼室から排出される排気ガス中の酸素O2の濃度は燃焼室内に供給される混合気の空燃比がリーンになるほど増大する。
【0034】
ケーシング40内に収容されているNOx触媒41は、例えばアルミナを担体とし、この担体上に例えばカリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つと、白金Ptのような貴金属とが担持されてなる。機関吸気通路およびNOx触媒41より上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比をNOx触媒41への流入排気ガスの空燃比と称する(以下、排気空燃比と略称する)と、このNOx触媒41は、排気空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、流入排気ガスの酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出するNOxの吸放出作用を行う。
【0035】
なお、NOx触媒41より上流の排気通路内に燃料(炭化水素)あるいは空気が供給されない場合には、排気空燃比はエンジンの燃焼室内に供給される混合気の空燃比に一致し、したがってこの場合には、NOx触媒41は燃焼室内に供給される混合気の空燃比がリーンのときにはNOxを吸収し、燃焼室内に供給される混合気の酸素濃度が低下すると吸収したNOxを放出することになる。
【0036】
NOx触媒41によるNOxの吸放出作用は図3に示すようなメカニズムで行われているものと考えられる。以下、このメカニズムについて担体上に白金PtおよびバリウムBaを担持させた場合を例にとって説明するが、他の貴金属,アルカリ金属,アルカリ土類,希土類を用いても同様なメカニズムとなる。
【0037】
まず、流入排気ガスの空燃比がかなりリーンになると流入排気ガスの酸素濃度が大巾に増大し、図3(A)に示されるように酸素O2 がO2 −又はO2−の形で白金Ptの表面に付着する。一方、流入排気ガスに含まれるNOは、白金Ptの表面上でO2 −又はO2−と反応し、NO2 となる(2NO+O2 →2NO2 )。
【0038】
次いで、生成されたNO2の一部は、白金Pt上で酸化されつつNOx触媒41内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら、図3(A)に示されるように硝酸イオンNO3 −の形でNOx触媒41内に拡散する。このようにしてNOxがNOx触媒41内に吸収される。
【0039】
流入排気ガスの酸素濃度が高い限り白金Ptの表面でNO2が生成され、NOx触媒41のNOx 吸収能力が飽和しない限り、NO2がNOx触媒41内に吸収されて硝酸イオンNO3 −が生成される。
【0040】
これに対して、流入排気ガスの酸素濃度が低下してNO2の生成量が低下すると反応が逆方向(NO3 −→NO2)に進み、NOx触媒41内の硝酸イオンNO3 −がNO2またはNOの形でNOx触媒41から放出される。即ち、流入排気ガス中の酸素濃度が低下すると、NOx触媒41からNOxが放出されることになる。図2に示されるように、流入排気ガスのリーンの度合いが低くなれば流入排気ガスの酸素濃度が低下し、したがって流入排気ガスのリーンの度合いを低くすればNOx触媒41からNOxが放出されることとなる。
【0041】
一方、このとき、燃焼室内に供給される混合気がストイキまたはリッチにされて排気空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比になると、図2に示されるように機関からは多量の未燃HC,COが排出され、これら未燃HC,COは、白金Pt上の酸素O2 −又はO2−と反応して酸化せしめられる。
【0042】
また、排気空燃比が理論空燃比またはリッチ空燃比になると流入排気ガスの酸素濃度が極度に低下するためにNOx触媒41からNO2またはNOが放出され、このNO2またはNOは、図3(B)に示されるように未燃HC、COと反応して還元せしめられてN2となる。
【0043】
即ち、流入排気ガス中のHC,COは、まず白金Pt上の酸素O2 −又はO2−とただちに反応して酸化せしめられ、次いで白金Pt上の酸素O2 −又はO2−が消費されてもまだHC,COが残っていれば、このHC,COによってNOx触媒から放出されたNOxおよびエンジンから排出されたNOxがN2に還元せしめられる。
【0044】
このようにして白金Ptの表面上にNO2またはNOが存在しなくなると、NOx触媒41から次から次へとNO2またはNOが放出され、さらにN2に還元せしめられる。したがって、排気空燃比を理論空燃比またはリッチ空燃比にすると短時間の内にNOx触媒41からNOxが放出されることになる。
【0045】
このように、排気空燃比がリーンになるとNOxがNOx触媒41に吸収され、排気空燃比を理論空燃比あるいはリッチ空燃比にするとNOxがNOx触媒41から短時間のうちに放出され、N2に還元される。したがって、大気中へのNOxの排出を阻止することができる。
【0046】
ところで、この実施の形態では前述したように、全負荷運転時には燃焼室内に供給される混合気がリッチ空燃比とされ、また高負荷運転時、エンジン始動時の暖機運転時、加速時、高速の定速運転時には混合気が理論空燃比とされ、低中負荷運転時には混合気がリーン空燃比とされるので、低中負荷運転時に排気ガス中のNOxがNOx触媒41に吸収され、全負荷運転時及び高負荷運転時等においてNOx触媒41からNOxが放出され還元されることになる。しかしながら、全負荷運転あるいは高負荷運転等の頻度が少なく、低中負荷運転の頻度が多くその運転時間が長ければ、NOxの放出・還元が間に合わなくなり、NOx触媒41のNOxの吸収能力が飽和してNOxを吸収できなくなってしまう。
【0047】
一般に、内燃機関では通常、低中負荷運転される頻度が最も高く、したがって運転期間中の大部分においてリーン混合気が燃焼せしめられることになる。
そこで、この実施の形態では、リーン混合気の燃焼が行われている場合、即ち中低負荷運転を行っているときには、比較的に短い周期でスパイク的(短時間)にストイキまたはリッチ混合気の燃焼が行われるように混合気の空燃比を制御し、短周期的にNOxの放出・還元を行っている。このようにNOxの吸放出のために、排気空燃比(この実施の形態では混合気の空燃比)が比較的に短い周期で「リーン空燃比」と「スパイク的な理論空燃比またはリッチ空燃比」を交互に繰り返されるように制御することを、リーン・リッチスパイク制御と称している。
【0048】
次に、この実施の形態における排気浄化装置の作用を説明する。
まず、エンジン1の冷間始動時や暖機運転時には、NOx触媒41がまだその活性温度域(例えば、約250〜500゜C)に達していないので、NOx触媒41で排気ガス中のNOxやHCを浄化することはできない。しかしながら、HC吸着材21のHC吸着温度(例えば、常温から約200゜C)はNOx触媒41の活性温度域よりも低いので、NOx触媒41が活性化されていないときにも、排気ガス中のHCを吸着することができる。したがって、エンジンの冷間始動時や暖機運転中、排気ガス中のHCはHC吸着材21に吸着され、HCを除去された排気ガスが下流のNOx吸着材31及びNOx触媒41に流れる。
【0049】
また、NOx吸着材31のNOx吸着温度は、例えば約100〜400゜Cであり、NOx触媒41が活性温度域に達していない低温時にも、排気ガス中のNOxを吸着することができる。したがって、エンジンの暖機運転中などの低温時には、排気ガス中のNOxはNOx吸着材31に吸着され、NOxを除去された排気ガスが下流のNOx触媒41に流れる
【0050】
したがって、HC吸着材21とNOx吸着材31を設けたことにより、エンジン始動時などの低温時にHCやNOxが大気に排出されるのを防止することができる。また、HC吸着材21がNOx吸着材31及びNOx触媒41よりも上流に配置されていることにより、低温時にはHC吸着材21によってHCを除去された排気ガスがNOx吸着材31及びNOx触媒41に流れるので、NOx吸着材31及びNOx触媒41がHC被毒するのを防止することができる。
【0051】
そして、エンジン始動後の時間経過に伴い、HC吸着材21、NOx吸着材31、NOx触媒41の温度が徐々に上昇する。HC吸着材21の温度がHC吸着温度を越えると、HC吸着材21に吸着されていたHCはHC吸着材21から脱離し、下流のNOx吸着材31及びNOx触媒41へと流れる。また、NOx吸着材31の温度がNOx吸着温度を越えると、NOx吸着材31に吸着されていたNOxはNOx吸着材31から脱離し、下流のNOx触媒41へと流れる。
【0052】
そして、NOx触媒41の温度がその活性温度域に達すると、HC吸着材21から脱離したHCはNOx触媒41において酸化されて浄化され、NOx吸着材31から脱離したNOxはNOx触媒41により吸・放出されて還元浄化される。
【0053】
したがって、HC吸着材21とNOx吸着材31とNOx触媒41を備えたこの排気浄化装置では、エンジン1の始動直後の冷間時から暖機完了後の温間時に至るまで広い温度範囲に亙って、エンジン1から排出される排気ガスのHC及びNOxを浄化することができ、低温時のHC及びNOxの排出を防止することができる。また、低温時にNOx触媒41の昇温を早めるための手段(例えば、電気ヒータ付き触媒)が不要である。
【0054】
尚、この実施の形態では、HC吸着材21とNOx吸着材31をそれぞれ別々のケーシング20,30に収容しているが、両吸着材21,31を単一のケーシングに収容することも可能である。即ち、1つのケーシング内において、その上流側にHC吸着材21を収容し、下流側にNOx吸着材31を収容するようにしてもよい。
【0055】
〔第2の実施の形態〕
上述第1の実施の形態では、ケーシング40に収容するリーンNOx触媒として吸蔵還元型NOx触媒を用いているが、この吸蔵還元型NOx触媒に代えて選択還元型NOx触媒を用いても本発明は成立する。選択還元型NOx触媒はリーンNOx触媒の一種であり、酸素過剰の雰囲気でHCの存在下でNOxを還元または分解する触媒である。選択還元型NOx触媒には、ゼオライトにCu等の遷移金属をイオン交換して担持した触媒、ゼオライトまたはアルミナに貴金属を担持した触媒、等が含まれる。
【0056】
選択還元型NOx触媒にも活性温度域(例えば、Pt系の触媒の場合、230〜300゜C)があり、この活性温度域から外れるとHCもNOxも浄化することができない。選択還元型NOx触媒の上流に、その上流側から順にHC吸着材及びNOx吸着材を設けると、選択還元型NOx触媒が活性温度域に達しない低温時には、HC吸着材により排気ガス中のHCを吸着除去することができ、NOx吸着材によって排気ガス中のNOxを吸着除去することができる。そして、選択還元型NOx触媒が活性温度域に達したときに、HC吸着材から脱離したHCは選択還元型NOx触媒においてNOxを還元する際に利用されて酸化浄化され、NOx吸着材から脱離したNOxは選択還元型NOx触媒で還元浄化される。
【0057】
また、NOx吸着材及び選択還元型NOx触媒の上流にHC吸着材を設けることにより、NOx吸着材及び選択還元型NOx触媒に対する低温時のHC被毒を防止することができる。
したがって、第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
〔第3の実施の形態〕
上述第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、内燃機関としてのリーンバーンガソリンエンジンに適用した例であるので、ケーシング40に収容する触媒をリーンNOx触媒としているが、内燃機関としてストイキエンジンを用いる場合には、ケーシング40にはリーンNOx触媒の代わりに三元触媒を収容する。
【0059】
周知のように、三元触媒は理論空燃比近傍において浄化率が高い触媒であるが、この三元触媒にも活性温度域(例えば、250゜C以上)があり、この活性温度域よりも低温ではHCもNOxも浄化することができない。
【0060】
三元触媒の上流に、その上流側から順にHC吸着材及びNOx吸着材を設けると、三元触媒が活性温度域に達しない低温時に、HC吸着材によりHCを吸着除去することができ、NOx吸着材によってNOxを吸着除去することができる。そして、三元触媒が活性温度域に達したときに、HC吸着材から脱離したHCとNOx吸着材から脱離したNOxは三元触媒で浄化される。
【0061】
また、NOx吸着材及び三元触媒の上流にHC吸着材を設けることにより、NOx吸着材及び三元触媒に対する低温時のHC被毒を防止することができる。
したがって、第3の実施の形態においても第1及び第2の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
〔他の実施の形態〕
前述した第1及び第2の実施の形態は、希薄燃焼可能な内燃機関としてリーンバーンガソリンエンジンに適用した例であるが、ディーゼルエンジンに適用することができることは勿論である。ディーゼルエンジンの場合は、燃焼室での燃焼が理論空燃比よりもはるかにリーン域で行われるので、通常の機関運転状態ではリーンNOx触媒に流入する排気ガスの空燃比は非常にリーンであり、NOxの吸収は行われるものの、NOxの放出が行われることは殆どない。
【0063】
また、ガソリンエンジンの場合には、前述したように燃焼室に供給する混合気を理論空燃比あるいはリッチ空燃比にすることによりリーンNOx触媒に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比あるいはリッチ空燃比にし、NOx触媒に吸収されているNOxを放出させることができるが、ディーゼルエンジンの場合には、燃焼室に供給する混合気を理論空燃比あるいはリッチ空燃比にすると燃焼の際に煤が発生するなどの問題があり採用することはできない。
【0064】
したがって、本発明をディーゼルエンジンに適用する場合、流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比あるいはリッチ空燃比にするためには、機関出力を得るために燃料を燃焼するのとは別に、還元剤(例えば燃料である軽油)を排気ガス中に供給する必要がある。排気ガスへの還元剤の供給は、吸気行程や膨張行程や排気行程において気筒内に燃料を副噴射することによっても可能であるし、あるいは、リーンNOx触媒の上流の排気通路内に還元剤を供給することによっても可能である。
【0065】
尚、ディーゼルエンジンであっても排気再循環装置(所謂、EGR装置)を備えている場合には、排気再循環ガスを多量に燃焼室に導入することによって、排気ガスの空燃比を理論空燃比またはリッチ空燃比にすることが可能である。
【0066】
【発明の効果】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置によれば、内燃機関の排気通路に、その上流側から順にHC吸着材とNOx吸着材を備えることにより、内燃機関の冷間始動時などの低温時に、HCやNOxが大気に排出されるのを防止することができるという優れた効果が奏される。
【0067】
また、前記NOx吸着材よりも下流の排気通路にリーンNOx触媒を備えた場合には、低温から高温に至る広い温度範囲において排気ガスの浄化が可能であるという効果がある。
【0068】
また、前記NOx吸着材よりも下流の排気通路に三元触媒を備えた場合にも、低温から高温に至る広い温度範囲において排気ガスの浄化が可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の概略構成を示す図である。
【図2】機関から排出される排気ガス中の未燃HC,COおよび酸素の濃度を概略的に示す線図である。
【図3】吸蔵還元型NOx触媒のNOx吸放出作用を説明するための図である。
【符号の説明】
1 エンジン(リーンバーンガソリンエンジン)
7 燃料噴射弁
9 排気管(排気通路)
21 HC吸着材
31 NOx吸着材
41 吸蔵還元型NOx触媒(リーンNOx触媒)
Claims (1)
- 内燃機関の排気通路に設けられ低温時にHCを吸着するHC吸着材と、前記HC吸着材よりも下流の排気通路に設けられ低温時にNOxを吸着するNOx吸着材と、前記NOx吸着材よりも下流の排気通路に吸蔵還元型NOx触媒と、を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
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