JP3578545B2 - 可溶性ポリイミド樹脂 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ吸湿性が低くかつ有機溶剤に可溶で成形加工性に優れたポリイミド樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、耐熱性が高く難燃性で電気絶縁性に優れていることからフィルムとしてフレキシブル印刷配線板や耐熱性接着テープの基材に、樹脂ワニスとして半導体の層間絶縁膜、表面保護膜に広く使用されている。しかし、従来のポリイミド樹脂は吸湿性が高く、耐熱性に優れている反面不溶不融であったり融点が極めて高く、加工性の点で決して使いやすい材料とはいえなかった。また半導体の実装材料として層間絶縁膜、表面保護膜などに使用されているが、これらは有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の前駆体ポリアミック酸を半導体表面に塗布し、加熱処理によって溶剤を除去すると共にイミド化して用いている。この時、イミド化を完全に進めるために、また高沸点のアミド系溶剤を揮散させるために300℃以上の高温乾燥工程を必要とする。このため高温にさらされ、他に使用する部材の熱損傷や素子の劣化を招きアセンブリ工程の収率を劣化させる。また、皮膜の吸湿性が高いため、高温時に吸収した水分が一気に蒸発して膨れやクラックの原因となるなどの問題があった。
【0003】
前記の欠点を改良する方法として、有機溶剤に可溶で既にイミド化されたポリイミド樹脂組成物からフィルム状接着剤を形成し、これを被着体に熱圧着する方法等が提案されている(特開平5−105850号、特開平5−112760号、特開平5−112761号公報を参照)。しかしながら、ポリイミド樹脂をホットメルト型の接着剤として使用するこの様な場合、ポリイミド樹脂のガラス転移温度が高いと加工に非常な高温を要し被着材に熱損傷を与える恐れが大きい。一方、低温加工性を付与するためポリイミド樹脂のガラス転移温度を下げるとポリイミド樹脂の耐熱性という特徴を十分に生かすことができないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性に優れ、かつ低温での成形加工性の優れた耐熱性樹脂を得るべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリイミド樹脂が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物aモル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物bモル及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物cモルを酸成分とし、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンdモルと、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン及びジメチルフェニレンジアミンからなる群から選ばれた1種類または2種類のジアミンeモルと、一般式(1)で表されるシロキサン化合物fモルとをアミン成分とし、a、b、c、d、e、fのモル比が 0.5 ≦ a/(a+b+c)≦ 0.8、0.1≦ b/(a+b+c)≦ 0.5、0.05 ≦ c/(a+b+c)≦ 0.25、かつ 0.05 ≦ f/(d+e+f)≦ 0.5 の割合で反応させてイミド閉環せしめた有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂である。
【0006】
【化1】
(式中、R1,R2:二価の、炭素数1〜4の脂肪族基または芳香族基
R3,R4,R5,R6:一価の脂肪族基または芳香族基
k:1〜20の整数)
【0007】
【発明の実施の形態】
酸成分として、上記3種、特に1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、耐熱性を向上させることができる。1,2,4,5,−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物は酸成分の総量の5モル%より少ないと耐熱性を向上させる効果が少なく、25モル%を越えると溶解性が低下するので好ましくない。また、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物により耐熱性が向上することにより、アミン成分の選択の幅が広がり、接着性や溶解性等の特性が向上することが期待できる。他の酸成分として4,4’−オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物からなる群より選ばれた1種または2種のテトラカルボン酸二無水物を特性を損なわない範囲で併用することもできる。他のアミン成分として、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォンなどを特性を損なわない範囲で、それらを単独、あるいは併用して使用することができる。
【0008】
さらに該ジアミノシロキサン化合物はジアミン成分総量の5〜50モル%用いることがより好ましい。ジアミン成分の総量の5モル%より少ないと有機溶剤への溶解性が低下し、50モル%を越えるとガラス転移温度が著しく低下し耐熱性に問題が生じる。一般式(1)で表されるシロキサン化合物として具体的には、下記一般式(2)で表されるα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS)が好ましく、特にkの値が4〜10の範囲が、ガラス転移温度、接着性、耐熱性の点から好ましい。これらのシロキサン化合物は単独で用いることは勿論、2種類以上を併用することもできる。特にk=1と上記k=4〜10のものをブレンドして用いることは接着性を重視する用途では好ましい。
【0009】
【化2】
(式中、k:1〜20の整数)
【0010】
重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリアミック酸の分子量を決定する重要な因子である。ポリマの分子量と物性、特に数平均分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られている。数平均分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度を得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。本発明では、酸成分とアミン成分の当量比rが
0.900 ≦ r ≦ 1.06
より好ましくは、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くて脆くなるため接着力が弱くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸してガス発生、発泡の原因となり好ましくないことがある。
本発明においてポリイミド樹脂の分子量制御のためジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比の範囲であれば特にこれを妨げない。
【0011】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行われる。非プロトン性極性溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジグライム、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン(1,4−DO)などである。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30重量%以上では溶媒の溶解力が低下しポリアミック酸が析出する恐れがあるためである。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、良く乾燥したジアミン成分を脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに閉環率98%、より好ましくは99%以上の良く乾燥したテトラカルボン酸二無水物を添加して反応を進める。
【0012】
このようにして得たポリアミック酸溶液を続いて有機溶剤中で加熱脱水環化してイミド化しポリイミドにする。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を妨害するため、水と相溶しない有機溶剤を系中に加えて共沸させてディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。水と相溶しない有機溶剤としてはジクロルベンゼンが知られているが、エレクトロニクス用としては塩素成分が混入する恐れがあるので、好ましくは前記芳香族炭化水素を使用する。また、イミド化反応の触媒として無水酢酸、β−ピコリン、ピリジンなどの化合物を使用することは妨げない。
【0013】
本発明において、イミド閉環は程度が高いほど良く、イミド化率が低いと使用時の熱でイミド化が起こり水が発生して好ましくないため、95%以上、より好ましくは98%以上のイミド化率が達成されていることが望ましい。
本発明では得られたポリイミド溶液は塗布用ワニスとしてそのまま使用することができる。また、該ポリイミド溶液を貧溶媒中に投入してポリイミド樹脂を再沈析出させて未反応モノマを取り除いて精製し、乾燥して固形のポリイミド樹脂として使用することもできる。高温工程を嫌う用途や特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。この時使用する溶剤は加工作業性を考え、沸点の低い溶剤を選択することが可能である。
【0014】
本発明のポリイミド樹脂では、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンを、エーテル系溶剤として、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライムを沸点200℃以下の低沸点溶剤として使用することができる。これらの溶剤は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。
ポリイミド本発明の使用法は特に限定されるものではないが、有機溶剤に溶解して樹脂ワニスとしコーティングやディッピングに、流延成形によってフィルムに、固体状態で押出成形用に、耐熱性と加工性の両立した絶縁材料、接着フィルム等として使用することができる。
【0015】
本発明のポリイミド樹脂は、完全にイミド化した後も有機溶剤に可溶である特定構造のポリイミド樹脂であり、耐熱性に優れているにも拘わらず、化学反応を伴う熱硬化性樹脂に比べると短時間に成形加工が可能である。以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、撹拌機を備えた四口フラスコに、脱水精製したNMP764gを入れ、窒素ガスを流しながら10分間激しくかき混ぜる。次に2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)82.10g(0.200モル)、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン(DPX)18.16g(0.133モル)、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS、式(2))93.00g(平均分子量837、0.111モル)を投入し、系を60℃に加熱し、均一になるまでかき混ぜる。均一に溶解後、系を氷水浴で5℃に冷却し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)89.70g(0.305モル)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)21.05g(0.065モル)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物14.25g(0.065モル)を粉末状のまま15分間かけて添加し、その後3時間撹拌を続けた。この間フラスコは5℃に保った。
【0017】
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、キシレンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にキシレン179gを添加した。油浴に代えて系を175℃に加熱し発生する水を系外に除いた。4時間加熱したところ、系からの水の発生は認められなくなった。冷却後この反応溶液を大量のメタノール中に投入し、ポリイミド樹脂を析出させた。固形分を濾過後、80℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、291.22g(収率91.5%)の固形樹脂を得た。KBr錠剤法で赤外吸収スペクトルを測定したところ、環状イミド結合に由来する5.6μmの吸収を認めたが、アミド結合に由来する6.06μmの吸収を認めることはできず、この樹脂はほぼ100%イミド化していることが確かめられた。このようにして得たポリイミド樹脂は、ガラス転移温度が190℃、引張り弾性率が210kgf/mm2、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,4−ジオキサン(1,4−DO)に良く溶解することが確かめられた。このときの酸、アミンのモル比は、a/(a+b+c)=0.70、b/(a+b+c)=0.15、c/(a+b+c)=0.15、f/(d+e+f)=0.25である。
【0018】
(実施例2、3)
実施例1と同様にして、第1表に示した処方で反応させて可溶性ポリイミド樹脂を得た。これらのポリイミド樹脂について得られた評価結果を第1表に示す。いずれも有機溶剤への溶解性に優れていることがわかる。
【0019】
【表1】
【0020】
溶解性の欄のSは該当する溶媒に溶解することを示す。ガラス転移温度はDSC測定により求めた。引張り試験は室温、引張り速度5mm/minにて測定した。
また、配合の数値はそれぞれの成分中の配合等量比であり、吸水率は85℃85%RHの環境下で168時間放置(HH−168処理)後の飽和吸水率を測定した値を示す。
【0021】
(比較例)
(比較例1)実施例1と同条件で、BPDA、BTDA、PMDAをa/(a+b+c)=0.5、b/(a+b+c)=0.5、c/(a+b+c)=0、f/(d+e+f)=0の量比で反応し、ポリイミド樹脂を得た。この樹脂をシクロヘキサノンに溶解しようとしたが、膨潤ゲル状態となり、完全に溶解することができなかった。また、DMF、THFに対しても同様の状態となり、樹脂ワニスを調整することができなかった。
【0022】
【表2】
【0023】
(比較例2〜4)実施例1と同様に、第2表に示した処方で反応させて得られたポリイミド樹脂について評価した結果を第2表に示す。なお、第2表において、4,4’−DDEは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを略記したもの、溶解性の欄のIは該当する溶媒に不溶であることを示す。
以上の実施例から本発明により、有機溶剤に可溶で耐熱性と低吸湿性に優れたポリイミド樹脂が得られることが示される。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と成形加工性に優れたポリイミド樹脂を提供することが可能である。低沸点溶剤に可溶であるため残留溶剤をほぼ完璧に無くすことが可能で、また既にイミド化されているため加工時にイミド化のための高温過程が不要で水分の発生もない。このため高温信頼性と耐熱性を要求するエレクトロニクス用材料として工業的に極めて利用価値が高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性に優れ吸湿性が低くかつ有機溶剤に可溶で成形加工性に優れたポリイミド樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、耐熱性が高く難燃性で電気絶縁性に優れていることからフィルムとしてフレキシブル印刷配線板や耐熱性接着テープの基材に、樹脂ワニスとして半導体の層間絶縁膜、表面保護膜に広く使用されている。しかし、従来のポリイミド樹脂は吸湿性が高く、耐熱性に優れている反面不溶不融であったり融点が極めて高く、加工性の点で決して使いやすい材料とはいえなかった。また半導体の実装材料として層間絶縁膜、表面保護膜などに使用されているが、これらは有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の前駆体ポリアミック酸を半導体表面に塗布し、加熱処理によって溶剤を除去すると共にイミド化して用いている。この時、イミド化を完全に進めるために、また高沸点のアミド系溶剤を揮散させるために300℃以上の高温乾燥工程を必要とする。このため高温にさらされ、他に使用する部材の熱損傷や素子の劣化を招きアセンブリ工程の収率を劣化させる。また、皮膜の吸湿性が高いため、高温時に吸収した水分が一気に蒸発して膨れやクラックの原因となるなどの問題があった。
【0003】
前記の欠点を改良する方法として、有機溶剤に可溶で既にイミド化されたポリイミド樹脂組成物からフィルム状接着剤を形成し、これを被着体に熱圧着する方法等が提案されている(特開平5−105850号、特開平5−112760号、特開平5−112761号公報を参照)。しかしながら、ポリイミド樹脂をホットメルト型の接着剤として使用するこの様な場合、ポリイミド樹脂のガラス転移温度が高いと加工に非常な高温を要し被着材に熱損傷を与える恐れが大きい。一方、低温加工性を付与するためポリイミド樹脂のガラス転移温度を下げるとポリイミド樹脂の耐熱性という特徴を十分に生かすことができないという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性に優れ、かつ低温での成形加工性の優れた耐熱性樹脂を得るべく鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリイミド樹脂が上記課題を解決することを見出し、本発明に到達したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物aモル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物bモル及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物cモルを酸成分とし、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンdモルと、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン及びジメチルフェニレンジアミンからなる群から選ばれた1種類または2種類のジアミンeモルと、一般式(1)で表されるシロキサン化合物fモルとをアミン成分とし、a、b、c、d、e、fのモル比が 0.5 ≦ a/(a+b+c)≦ 0.8、0.1≦ b/(a+b+c)≦ 0.5、0.05 ≦ c/(a+b+c)≦ 0.25、かつ 0.05 ≦ f/(d+e+f)≦ 0.5 の割合で反応させてイミド閉環せしめた有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂である。
【0006】
【化1】
(式中、R1,R2:二価の、炭素数1〜4の脂肪族基または芳香族基
R3,R4,R5,R6:一価の脂肪族基または芳香族基
k:1〜20の整数)
【0007】
【発明の実施の形態】
酸成分として、上記3種、特に1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、耐熱性を向上させることができる。1,2,4,5,−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物は酸成分の総量の5モル%より少ないと耐熱性を向上させる効果が少なく、25モル%を越えると溶解性が低下するので好ましくない。また、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物により耐熱性が向上することにより、アミン成分の選択の幅が広がり、接着性や溶解性等の特性が向上することが期待できる。他の酸成分として4,4’−オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物からなる群より選ばれた1種または2種のテトラカルボン酸二無水物を特性を損なわない範囲で併用することもできる。他のアミン成分として、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォンなどを特性を損なわない範囲で、それらを単独、あるいは併用して使用することができる。
【0008】
さらに該ジアミノシロキサン化合物はジアミン成分総量の5〜50モル%用いることがより好ましい。ジアミン成分の総量の5モル%より少ないと有機溶剤への溶解性が低下し、50モル%を越えるとガラス転移温度が著しく低下し耐熱性に問題が生じる。一般式(1)で表されるシロキサン化合物として具体的には、下記一般式(2)で表されるα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS)が好ましく、特にkの値が4〜10の範囲が、ガラス転移温度、接着性、耐熱性の点から好ましい。これらのシロキサン化合物は単独で用いることは勿論、2種類以上を併用することもできる。特にk=1と上記k=4〜10のものをブレンドして用いることは接着性を重視する用途では好ましい。
【0009】
【化2】
(式中、k:1〜20の整数)
【0010】
重縮合反応における酸成分とアミン成分の当量比は、得られるポリアミック酸の分子量を決定する重要な因子である。ポリマの分子量と物性、特に数平均分子量と機械的性質の間に相関があることは良く知られている。数平均分子量が大きいほど機械的性質が優れている。従って、実用的に優れた強度を得るためには、ある程度高分子量であることが必要である。本発明では、酸成分とアミン成分の当量比rが
0.900 ≦ r ≦ 1.06
より好ましくは、
0.975 ≦ r ≦ 1.025
の範囲にあることが好ましい。ただし、r=[全酸成分の当量数]/[全アミン成分の当量数]である。rが0.900未満では、分子量が低くて脆くなるため接着力が弱くなる。また1.06を越えると、未反応のカルボン酸が加熱時に脱炭酸してガス発生、発泡の原因となり好ましくないことがある。
本発明においてポリイミド樹脂の分子量制御のためジカルボン酸無水物あるいはモノアミンを添加することは、上述の酸/アミンモル比の範囲であれば特にこれを妨げない。
【0011】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、非プロトン性極性溶媒中で公知の方法で行われる。非プロトン性極性溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジグライム、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン(1,4−DO)などである。非プロトン性極性溶媒は、一種類のみ用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。この時、上記非プロトン性極性溶媒と相溶性がある非極性溶媒を混合して使用しても良い。トルエン、キシレン、ソルベントナフサなどの芳香族炭化水素が良く使用される。混合溶媒における非極性溶媒の割合は、30重量%以下であることが好ましい。これは非極性溶媒が30重量%以上では溶媒の溶解力が低下しポリアミック酸が析出する恐れがあるためである。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、良く乾燥したジアミン成分を脱水精製した前述反応溶媒に溶解し、これに閉環率98%、より好ましくは99%以上の良く乾燥したテトラカルボン酸二無水物を添加して反応を進める。
【0012】
このようにして得たポリアミック酸溶液を続いて有機溶剤中で加熱脱水環化してイミド化しポリイミドにする。イミド化反応によって生じた水は閉環反応を妨害するため、水と相溶しない有機溶剤を系中に加えて共沸させてディーン・スターク(Dean−Stark)管などの装置を使用して系外に排出する。水と相溶しない有機溶剤としてはジクロルベンゼンが知られているが、エレクトロニクス用としては塩素成分が混入する恐れがあるので、好ましくは前記芳香族炭化水素を使用する。また、イミド化反応の触媒として無水酢酸、β−ピコリン、ピリジンなどの化合物を使用することは妨げない。
【0013】
本発明において、イミド閉環は程度が高いほど良く、イミド化率が低いと使用時の熱でイミド化が起こり水が発生して好ましくないため、95%以上、より好ましくは98%以上のイミド化率が達成されていることが望ましい。
本発明では得られたポリイミド溶液は塗布用ワニスとしてそのまま使用することができる。また、該ポリイミド溶液を貧溶媒中に投入してポリイミド樹脂を再沈析出させて未反応モノマを取り除いて精製し、乾燥して固形のポリイミド樹脂として使用することもできる。高温工程を嫌う用途や特に不純物や異物が問題になる用途では、再び有機溶剤に溶解して濾過精製ワニスとすることが好ましい。この時使用する溶剤は加工作業性を考え、沸点の低い溶剤を選択することが可能である。
【0014】
本発明のポリイミド樹脂では、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンを、エーテル系溶剤として、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライムを沸点200℃以下の低沸点溶剤として使用することができる。これらの溶剤は単独で使用しても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。
ポリイミド本発明の使用法は特に限定されるものではないが、有機溶剤に溶解して樹脂ワニスとしコーティングやディッピングに、流延成形によってフィルムに、固体状態で押出成形用に、耐熱性と加工性の両立した絶縁材料、接着フィルム等として使用することができる。
【0015】
本発明のポリイミド樹脂は、完全にイミド化した後も有機溶剤に可溶である特定構造のポリイミド樹脂であり、耐熱性に優れているにも拘わらず、化学反応を伴う熱硬化性樹脂に比べると短時間に成形加工が可能である。以下実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、温度計、撹拌機を備えた四口フラスコに、脱水精製したNMP764gを入れ、窒素ガスを流しながら10分間激しくかき混ぜる。次に2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)82.10g(0.200モル)、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン(DPX)18.16g(0.133モル)、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(APPS、式(2))93.00g(平均分子量837、0.111モル)を投入し、系を60℃に加熱し、均一になるまでかき混ぜる。均一に溶解後、系を氷水浴で5℃に冷却し、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)89.70g(0.305モル)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)21.05g(0.065モル)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物14.25g(0.065モル)を粉末状のまま15分間かけて添加し、その後3時間撹拌を続けた。この間フラスコは5℃に保った。
【0017】
その後、窒素ガス導入管と冷却器を外し、キシレンを満たしたディーン・スターク管をフラスコに装着し、系にキシレン179gを添加した。油浴に代えて系を175℃に加熱し発生する水を系外に除いた。4時間加熱したところ、系からの水の発生は認められなくなった。冷却後この反応溶液を大量のメタノール中に投入し、ポリイミド樹脂を析出させた。固形分を濾過後、80℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き、291.22g(収率91.5%)の固形樹脂を得た。KBr錠剤法で赤外吸収スペクトルを測定したところ、環状イミド結合に由来する5.6μmの吸収を認めたが、アミド結合に由来する6.06μmの吸収を認めることはできず、この樹脂はほぼ100%イミド化していることが確かめられた。このようにして得たポリイミド樹脂は、ガラス転移温度が190℃、引張り弾性率が210kgf/mm2、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,4−ジオキサン(1,4−DO)に良く溶解することが確かめられた。このときの酸、アミンのモル比は、a/(a+b+c)=0.70、b/(a+b+c)=0.15、c/(a+b+c)=0.15、f/(d+e+f)=0.25である。
【0018】
(実施例2、3)
実施例1と同様にして、第1表に示した処方で反応させて可溶性ポリイミド樹脂を得た。これらのポリイミド樹脂について得られた評価結果を第1表に示す。いずれも有機溶剤への溶解性に優れていることがわかる。
【0019】
【表1】
【0020】
溶解性の欄のSは該当する溶媒に溶解することを示す。ガラス転移温度はDSC測定により求めた。引張り試験は室温、引張り速度5mm/minにて測定した。
また、配合の数値はそれぞれの成分中の配合等量比であり、吸水率は85℃85%RHの環境下で168時間放置(HH−168処理)後の飽和吸水率を測定した値を示す。
【0021】
(比較例)
(比較例1)実施例1と同条件で、BPDA、BTDA、PMDAをa/(a+b+c)=0.5、b/(a+b+c)=0.5、c/(a+b+c)=0、f/(d+e+f)=0の量比で反応し、ポリイミド樹脂を得た。この樹脂をシクロヘキサノンに溶解しようとしたが、膨潤ゲル状態となり、完全に溶解することができなかった。また、DMF、THFに対しても同様の状態となり、樹脂ワニスを調整することができなかった。
【0022】
【表2】
【0023】
(比較例2〜4)実施例1と同様に、第2表に示した処方で反応させて得られたポリイミド樹脂について評価した結果を第2表に示す。なお、第2表において、4,4’−DDEは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを略記したもの、溶解性の欄のIは該当する溶媒に不溶であることを示す。
以上の実施例から本発明により、有機溶剤に可溶で耐熱性と低吸湿性に優れたポリイミド樹脂が得られることが示される。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性と成形加工性に優れたポリイミド樹脂を提供することが可能である。低沸点溶剤に可溶であるため残留溶剤をほぼ完璧に無くすことが可能で、また既にイミド化されているため加工時にイミド化のための高温過程が不要で水分の発生もない。このため高温信頼性と耐熱性を要求するエレクトロニクス用材料として工業的に極めて利用価値が高い。
Claims (1)
- 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物aモル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物bモル及び1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物cモルを酸成分とし、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンdモルと、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン及びジメチルフェニレンジアミンからなる群から選ばれた1種類または2種類のジアミンeモルと、一般式(1)で表されるシロキサン化合物fモルとをアミン成分とし、a、b、c、d、e、fのモル比が 0.5 ≦ a/(a+b+c)≦ 0.8、0.1≦ b/(a+b+c)≦ 0.5、0.05 ≦ c/(a+b+c)≦ 0.25、かつ 0.05 ≦ f/(d+e+f)≦ 0.5 の割合で両成分を反応させてイミド閉環せしめた有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂。
R3,R4,R5,R6:一価の脂肪族基または芳香族基
k:1〜20の整数)
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