JP3574092B2 - 耐熱性フレキシブル積層板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧加熱成形装置で製造される積層板の製造方法に関し、さらには、電子電気機器等に用いられるフレキシブル積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子電気機器用印刷回路基板に用いられる積層板には、金属箔が熱硬化性樹脂等の熱硬化型接着剤によって貼付された積層板(以下、熱硬化型の積層板と表す)と、熱可塑性樹脂等の熱融着型接着剤によって貼付された積層板(以下、熱融着型の積層板と表す)がある。
【0003】
熱硬化型のフレキシブル積層板の製造方法は、従来より種々研究されており、ポリイミドフィルム等の耐熱性フィルムの両面にエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂を塗布した接着フィルムと金属箔を多段プレスや真空プレスを用いてプレスし、その後、高温で数時間熱硬化させてフレキシブル積層板を得る方法や、上記のような接着フィルムを100℃程度の加熱ロールに挟んでラミネートし、その後、高温で数時間熱硬化させてフレキシブル積層板を得る方法、上記加熱ロールの代わりにダブルベルトプレス装置を用いて熱ラミネートする方法等が実施されている。
【0004】
上記、熱硬化型の積層板を製造する場合、加圧加熱成形温度は200℃以下である場合が殆どであり、この程度の加熱温度では、被積層材料にかかる熱応力が小さく、熱ラミネート時のシワ等の外観不良は発生しにくい。
【0005】
ところが、熱融着型の積層板を製造する場合、接着層を構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で加圧加熱を行わなければ熱融着ができない。一方、電子電気機器用積層板は、部品実装の過程で高温加熱を受けるので、接着層を構成する熱可塑性樹脂には少なくとも180℃以上のTgが求められる。更にその熱融着のためには200℃以上の熱ラミネート温度が必要となる。この様な高温でのラミネートでは、被積層材料の熱膨張・熱収縮の変化が大きくなり、ラミネートされた積層体にシワ等の外観不良を生じやすいという問題がある。
【0006】
シワの発生原因をより詳しく説明すると、熱ロールラミネート機で銅箔と熱可塑性ポリイミドをラミネートする場合、熱ロールラミネート機の加熱加圧状態のプレスロール間を通過することで、銅箔と熱可塑性ポリイミドが貼り合わされる。ラミネート時、各被積層材料は熱によって膨張した状態にあるが、一般に銅箔の線膨張係数よりも熱可塑性ポリイミドの線膨張係数は大きいため、銅箔より面方向に大きく伸びた状態で熱可塑性ポリイミドは銅箔と熱ラミネートされ、逆に、冷却時には熱可塑性ポリイミドは銅箔より面方向に大きく縮む。このため、できた積層板は面方向にシワを生じる。これは、圧力が開放されるラミネート直後も、材料が熱を保持しており、その温度が熱可塑性ポリイミドのTgよりも高いために熱可塑性ポリイミドは流動状態にあり、シワの発生を抑止できないことも一因となっている。
【0007】
そのシワの発生を抑制する方法として、ラミネート時に被積層材料とラミネートロールの間に保護材料を配してラミネートすると、ラミネート直後、圧力が開放されると熱可塑性ポリイミドは収縮しようとするが、銅箔の外側に保護材料があるために面方向の動きが抑制され、熱可塑性ポリイミドの動きが制限されてシワが抑制される。この保護材料にポリイミドフィルムを使用する場合を考えると、一般にポリイミドフィルムは接着剤との相性が悪いため、ポリイミドフィルムの表面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を施してポリイミドフィルムの表面性を改善し、接着剤との接着性を向上させる方法が取られている。そのため、熱ラミネート直後、銅箔とも良く密着し、ラミネートされたフレキシブル積層板の銅箔面と保護材料であるポリイミドフィルムを引き剥がす際に、その密着力が強いため、材料の幅方向でのフレキシブル積層板と保護材料の剥がれ方に多少のタイミングのずれが発生すると、それによって剥がれたフレキシブル積層板にカタが生じる問題がある。つまり、保護材料がラミネートされたフレキシブル積層板から剥がれる際、フレキシブル積層板の幅方向で保護材料が剥がれるのが早い部分と遅い部分が生じると、その剥がれの早い部分と遅い部分の境目でフレキシブル積層板に金属材料の塑性変形によるカタが生じる問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は前記問題点に鑑み、熱ラミネート後、フレキシブル積層板から保護フィルムを引き剥がす時に生じるカタ等の外観不良のないフレキシブル基板材料として好適な積層板を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記同様の系でラミネート時に銅箔の外側に保護材料を配してラミネートし、ラミネート後、保護材料とフレキシブル積層板を引き剥がす際に、保護材料とフレキシブル積層板の界面の密着強度が0.1から3N/cmの範囲であれば、剥がれるときのカタが発生しないことを見出し本発明に達した。
すなわち本発明は、耐熱性接着フィルムと金属材料とを熱ロールラミネート装置により連続的に貼り合わせる熱ラミネートを行い、かつ、熱ラミネート時に該装置の加圧面と被積層材料との間に保護材料を配する耐熱性フレキシブル積層板の製造方法であって、冷却後に該保護材料を積層板から剥離するときに、その剥がれの早い部分と遅い部分の境目で金属材料の塑性変形によるカタを発生させないために、200℃以上で熱ラミネートを行い、かつ、保護材料と被積層材料との界面の密着強度が0.1から3N/cmの範囲で密着させることを特徴とする耐熱性フレキシブル積層板の製造方法である。
【0010】
前記耐熱性接着フィルムは、接着成分中に熱可塑性ポリイミドを50重量%以上含有するものが好ましく、前記金属材料は、厚みが50μm以下の銅箔であるのが好ましい。また前記保護材料は、ポリイミドフィルムであるのが好ましい。さらに、保護材料であるポリイミドフィルムの表面には、コロナ処理、プラズマ処理または火炎処理を施すのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の製造方法で得られる積層板の用途は特に限定されるものではないが、主として電子電気用のフレキシブル積層板として用いられるものである。
【0012】
耐熱性接着フィルムとしては、熱融着性を有する樹脂から成る単層フィルム、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルム、紙、ガラスクロス等の基材に熱融着性を有する樹脂を含浸したフィルム等が挙げられるが、ガラスクロス等の剛性のある基材を使用すると屈曲性が劣ることより、フレキシブル積層板用の耐熱性接着フィルムとしては、熱融着性を有する樹脂から成る単層フィルム、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルムが好ましい。熱融着性を有する樹脂から成る単層フィルム、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性を有する樹脂層を形成して成る複数層フィルムとしては耐熱性を有するものが好ましく、接着成分が熱可塑性ポリイミド系成分から成るもの、例えば、熱可塑性ポリアミドイミド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリエステルイミド等が好適に用いられ得る。これらの耐熱性の熱可塑性樹脂を接着成分中の50%以上含有する耐熱性接着フィルムも本発明には好ましく用いられ、エポキシ樹脂やアクリル樹脂のような熱硬化性樹脂等を配合した耐熱性接着フィルムの使用も好ましい。各種特性の向上のために耐熱性接着フィルムには種々の添加剤が配合されていても構わない。
【0013】
耐熱性接着フィルムの構成は、耐熱性の接着層を外側に有するものであれば、熱融着性の接着成分のみから成る単層でも構わないが、寸法特性等の観点から、熱融着性を有さないコア層の両側に熱融着性の接着層を有する3層構造のフィルムが好ましい。この熱融着性を有さないコア層は、耐熱性があれば特に限定しないが、非熱可塑性のポリイミドフィルムの使用が好ましい。
【0014】
耐熱性接着フィルムの作製方法については特に限定しないが、接着剤層単層からなる場合、ベルトキャスト法、押出法等により製膜することができる。また、耐熱性接着フィルムの構成が接着層/熱融着性を有さないコア層/接着層という3層からなる場合、熱融着性を有さないコア層(例えば、耐熱性フィルム)の両面に接着剤を、片面ずつ、もしくは両面同時に塗布して3層の耐熱性接着フィルムを作製する方法や、耐熱性フィルムの両面に接着成分のみからなる単層の耐熱性接着フィルムを配して貼り合わせて3層の耐熱性接着フィルムを作製する方法がある。接着剤を塗布して3層の耐熱性接着フィルムを作製する方法において、特にポリイミド系の接着剤を使用する場合、ポリアミック酸の状態で耐熱性フィルムに塗布し、次いで乾燥させながらイミド化を行う方法と、そのまま可溶性ポリイミド樹脂を塗布し、乾燥させる方法があり、接着剤層を形成する方法は特に問わない。その他に、接着層/耐熱融着性を有さないコア層/接着層のそれぞれの樹脂を共押出して、一度に耐熱性耐熱性接着フィルムを製膜する方法もある。
【0015】
金属材料としては、特に限定しないが、電子電気機器用に用いられる積層板の場合、導電性・コストの点から銅箔を用いるのが好ましい。また、金属箔の厚みについては、銅箔の厚みが薄いほど回路パターンの線幅を細線化できることから、50μm以下の銅箔が好ましい。特に35μm以下の銅箔はそれ以上の厚みの銅箔に比べてコシがなく、熱ラミネートする際にシワを生じやすいため、35μm以下の銅箔について、本発明は顕著な効果を発揮する。また、銅箔の種類としては圧延銅箔、電解銅箔、HTE銅箔等が挙げられ特に制限はなく、これらの表面に接着剤が塗布されていても構わない。
【0016】
熱ロールラミネート装置については、被積層材料を加熱して圧力を加えてラミネートする装置であれば特にこだわらない。加熱方法について、所定の温度で加熱することができるものであれば特にこだわらず、熱媒循環方式、熱風加熱方式、誘電加熱方式等が挙げられる。加熱温度は200℃以上が好ましいが、電子部品実装のために積層板が雰囲気温度240℃の半田リフロー炉を通過する用途に供される場合には、それに応じたTgを有する熱融着フィルムを使用するため240℃以上の加熱が好ましい。プレスロールの材質はゴム、金属等、特に限定しないが、ラミネート温度が280℃以上の高温になると、ゴムロールは劣化するため使用できず、金属ロールが好ましい。加圧方式についても所定の圧力を加えることができるものであれば特にこだわらず、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等が挙げられ、圧力は特に限定されない。
【0017】
保護材料は、ラミネート直後のフレキシブル積層板との密着強度が0.1から3N/cmの範囲であれば、特に限定しない。ただし、加工時の温度に耐え得るものでなければならず、例えば250℃で加工する場合は、それ以上の耐熱性を有するポリイミドフィルム等が有効である。ポリイミドフィルムは一般に接着力を向上させるために、ポリイミドフィルムの表面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を施しているが、その処理の程度を調節して、ラミネート直後の保護材料とフレキシブル積層板との密着強度が0.1から3N/cmの範囲にしておかなければならない。この密着強度が0.1N/cmよりも低ければ、ラミネート直後に保護材料とフレキシブル積層板が直ちに剥がれてしまい、ラミネート直後の残熱が熱可塑性ポリイミド樹脂のTgより高いと熱可塑性ポリイミド樹脂はまだ流動状態であるため、熱可塑性ポリイミド樹脂と金属材料との線膨張係数の差によってフレキシブル積層板にシワが生じてしまう。またこの密着強度が3N/cmより高ければ、保護材料とフレキシブル積層板がよく密着しているということなので、保護材料をフレキシブル積層板から引き剥がす際に、幅方向に剥がれの早い部分と遅い部分が明確に現れ、それによって早い部分と遅い部分の境目でフレキシブル積層板が塑性変形しカタになってしまう。
【0018】
保護材料の厚みは特に限定しないが、ラミネート後の積層板のシワ形成を抑制する目的から、50μm以上の厚みが好ましい。保護材料の厚みが75μm以上であればシワ形成をほぼ完全に抑制できるため、さらに好ましい。
【0019】
保護材料を剥離する際の積層板の温度は、熱可塑性樹脂を被積層材料として使用する場合には、そのTg以下の温度が好ましい。より好ましくはTgよりも50℃以上低い温度、更に好ましくはTgよりも100℃以上低い温度である。最も好ましくは室温まで冷却された時点で保護材料を積層板から剥離するのが好ましい。
以下実施例を記載して本発明をより詳細に説明する。
【0020】
【実施例】
本発明の実施例及び比較例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。以下、実施例、比較例において、接着剤層の物性およびフレキシブル基板の物性は次のようにして測定した。
【0021】
(界面強度)
JIS C6471「6.5引きはがし強さ」に準拠して行った。
具体的には、島津製作所(株)製:オートグラフS−100−Cを用いて、ラミネート直後の保護材料とフレキシブル積層板が密着した状態でサンプルを抜き取り、それを1cm幅に切り出して硬い基板上に両面テープで固定し、保護フィルム側から180度の剥離角度で引張り速度50mm/minで剥離し、その荷重を測定した。
【0022】
(実施例1〜4)
耐熱性接着フィルムとして鐘淵化学工業製の25μm厚のPIXEO BP HT−142を、金属材料としてジャパンエナジー製の18μm圧延銅箔BHY−22B−Tを使用し、保護材料は鐘淵化学工業製のアピカル125AH無処理品をコロナ処理装置を用いて表1に示すコロナ処理密度でアピカルをコロナ処理し、表面改質を行ったものを使用した。熱ラミネート装置を用いて、ラミ温度350℃、ラミ圧力50N/mm、ラミ速度2.0m/minの条件でラミネートを行い、フレキシブル積層板を得た。この時、ラミネート直後の保護材料とフレキシブル積層板との界面強度を測定した値を表1に示す。ラミネートされたフレキシブル積層板に保護フィルムが剥がれるときに生じるカタ等の外観欠陥はなかった。詳細の結果は表1に示す。
【0023】
【表1】
(比較例1)
保護材料に鐘淵化学工業製のアピカル125AH無処理品を使用した他は、実施例1と同様にして行った。その結果、ラミネート直後に保護材料とフレキシブル積層板が剥がれてしまい、ラミネートされたフレキシブル積層板にラミネート進行方向にシワが発生した。
【0024】
(比較例2)
保護材料のコロナ処理密度が異なる他は、実施例1と同様な条件で実施した。その結果、保護材料とフレキシブル積層板が剥がれる時に、幅方向で剥がれの早い部分と遅い部分が発生し、その境目でフレキシブル積層板にカタが生じた。
【0025】
(比較例3)
保護材料に実施例1と同様のコロナ処理を施した後、マット処理を施した以外は実施例1と同様な条件で実施した。その結果、ラミネート直後に保護材料とフレキシブル積層板が剥がれてしまい、ラミネートされたフレキシブル積層板にラミネート進行方向にシワが発生した。
【0026】
【発明の効果】
本発明による積層板の作製方法を用いることによって、ラミネート時にシワになりやすい圧延銅箔を用いた場合においても、外観良好な積層板を得ることが出来る。また、積層板から保護材料を引き剥がす時に生じるカタもなくすことができる。従って本発明は、特に電子電気機器用のフレキシブル積層板として好適な材料を提供するものである。
Claims (5)
- 耐熱性接着フィルムと金属材料とを熱ロールラミネート装置により連続的に貼り合わせる熱ラミネートを行い、かつ、熱ラミネート時に該装置の加圧面と被積層材料との間に保護材料を配する耐熱性フレキシブル積層板の製造方法であって、
冷却後に該保護材料を積層板から剥離するときに、その剥がれの早い部分と遅い部分の境目で金属材料の塑性変形によるカタを発生させないために、200℃以上で熱ラミネートを行い、かつ、保護材料と被積層材料との界面の密着強度が0.1〜3N/cmの範囲で密着させることを特徴とする耐熱性フレキシブル積層板の製造方法。 - 前記耐熱性接着フィルムが、接着成分中に熱可塑性ポリイミドを50重量%以上含有するものである請求項1記載の耐熱性フレキシブル積層板の製造方法。
- 前記金属材料が、厚みが50μm以下の銅箔である請求項1または請求項2に記載の耐熱性フレキシブル積層板の製造方法。
- 前記保護材料が、ポリイミドフィルムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性フレキシブル積層板の製造方法。
- 保護材料であるポリイミドフィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理または火炎処理を施す請求項4に記載の耐熱性フレキシブル積層板の製造方法。
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