JP3570414B2 - ショートアーク型超高圧放電ランプ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、点灯時の水銀蒸気圧が150気圧以上となるショートアーク型超高圧放電ランプに関し、特に、液晶ディスプレイ装置やDMD(デジタルミラーデバイス)を使ったDLP(デジタルライトプロセッサ)などのプロジェクター装置のバックライトとして使うショートアーク型超高圧放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
投射型のプロジェクター装置は、矩形状のスクリーンに対して、均一にしかも十分な演色性をもって画像を照明させることが要求され、このため、光源としては、水銀や金属ハロゲン化物を封入させたメタルハライドランプが使われている。また、このようなメタルハライドランプも、最近では、より一層の小型化、点光源化が進められ、また電極間距離の極めて小さいものが実用化されている。
【0003】
このような背景のもと、最近では、メタルハライドランプに代わって、今までにない高い水銀蒸気圧、例えば150気圧、を持つランプが提案されている。これは、水銀蒸気圧をより高くすることで、アークの広がりを抑える(絞り込む)とともに、より一層の光出力の向上を図るというものである。
このような超高圧放電ランプは、例えば、特開平2−148561号、特開平6−52830号に開示されている。
【0004】
ところで、このような超高圧放電ランプは、発光管内の圧力が点灯時に極めて高くなるので発光部の両側に延在する側管部においては、当該側管部を構成する石英ガラスと電極および給電用の金属箔を十分かつ強固に密着させる必要がある。密着性が悪いと封入ガスが抜けたり、あるいはクラック発生の原因になるからである。
このため、側管部の封止工程では、例えば、2000℃もの高温で石英ガラスを加熱して、その状態において、厚肉の石英ガラスを徐々に収縮させて側管部の密着性を上げていた。
【0005】
しかしながら、あまりに高温で石英ガラスを焼き込むと、石英ガラスと、電極あるいは金属箔との密着性は向上するものの、それでもなお、放電ランプ完成後に側管部が破損し易くなるという問題が発生した。
この問題は、加熱処理後の側管部の温度が徐々に下がる段階において、電極を構成する材料(タングステン)と側管部を構成する材料(石英ガラス)との膨張係数の違いによって相対的な伸縮量が異なり、これが原因して両者の接触部分にクラックが発生するからである。
このクラックは、ごく小さいものではあるが、ランプ点灯中において点灯時の超高圧状態とも相俟ってクラックの成長を導き、これが原因となり放電ランプの破損を導くものと考えられる。
【0006】
この問題を解決するために図9に示す構造が提案されている。この図は放電ランプ1の発光部2に側管部3が繋がり、発光部2内の電極6,7は各々側管部3の中で金属箔8と接合される。そして、電極6,7の側管部8に埋設される部分にはコイル部材10が巻き付けられている。
この構造は電極棒に巻回させたコイル部材10によって、電極(棒)の熱膨張に起因する石英ガラスへの応力を緩和させるものであり、例えば、特開平11−176385号に記載されている。
【0007】
しかしながら、このような構造により電極の熱膨張を緩和させたとしても、現実には、電極6、7やコイル部材10の周辺にクラックが残るものであった。
このクラックは、非常に微小なものではあるが、発光部2の水銀蒸気圧が150気圧程度というような場合には、時として、側管部3の破損につながる場合がある。また、近年、200気圧、さらには300気圧という非常に高い水銀蒸気圧が要求されており、このような高い水銀蒸気圧においては、ランプ点灯中に、クラックの成長が促進され、結果として、側管部3の破損が顕著に起こるという問題があった。つまり、クラックの存在が最初は微少なものであったとしても、高い水銀蒸気圧におけるランプの点灯において次第に大きく成長してしまうということである。
これは50〜100気圧程度の点灯時蒸気圧を有する水銀ランプにおいては決して存在しない新規な技術的課題であるといえる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、極めて高い水銀蒸気圧で点灯する超高圧水銀ランプにおいて、十分に高い耐圧力性を有する構造を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明のショートアーク型超高圧放電ランプは、内部に一対の電極が対向配置され、かつ、0.15mg/mm3以上の水銀を封入した発光部と、その両側に延在して電極の一部を封止するとともに電極と金属箔を接合する側管部からなり、前記金属箔の前記電極との溶接部分は、矩形状に小幅化されており、かつ、当該電極の外表面を巻きつくように形成されるとともに、前記小幅化された部分以外の幅広部の断面が概略Ω状であることを特徴とする。
【0010】
また、前記溶接部分は、前記金属箔の幅方向から溶接された溶接跡を少なくとも2つ有することを特徴とする。
【0011】
【作用】
この発明に係るショートアーク型超高圧放電ランプは、上記構成を採用することにより、側管部における空隙そのものを小さくすることで、微少クラックの発生、成長をより抑えようとするものである。
そして、本発明者は、側管部の金属箔と電極の溶接部分には、図10に示すように、金属箔8と電極7の間に空隙Xが不可避的に発生しており、この空隙Xに発光部内の極めて高い圧力が直接印加され、このことがクラックの発生、助長に影響していることを突き止めた。
つまり、従来技術で説明したように、電極にコイル部材を巻きつけて両者の熱膨張率の違いを良好に緩和させたとしても、このような空隙Xの存在そのものを消滅させているわけではないので、クラックの発生、成長、助長を導いていると考えたわけである。
そして、本願発明は上記構成を新たに採用することで、側管部において電極と金属箔を良好に溶接できるとともに、空隙Xをきわめて小さく、現実にはほとんど発生しない程度にまで抑えることができるというものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の超高圧放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」ともいう)の全体構成を示す。
放電ランプ1は、石英ガラスからなる放電容器によって形成された大略球形の発光部2を有し、この発光部2内には、陰極6と陽極7が互いに対向するよう配置されている。また、発光部2の両端部から伸びるよう各々側管部3が形成され、これらの側管部3内には、通常モリブデンよりなる導電用金属箔8が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されており、陰極6および陽極7の端部が金属箔8の一端部に配置された状態で溶接されて電気的に接続される。また、金属箔8の他端には、外部に突出する外部リード9が溶接されている。
なお、陰極6、陽極7は、金属箔と接合される棒状部分を区別する場合もあるが、本発明では、特段のことわりがない限り、棒状部分まで含めて称することとする。
【0013】
発光部2内には、水銀と、希ガスと、ハロゲンガスが封入されている。
水銀は、必要な可視光波長、例えば、波長360〜780nmという放射光を得るためのもので、0.15mg/mm3以上封入されている。この封入量は、温度条件によっても異なるが、点灯時150気圧以上で極めて高い蒸気圧となる。また、水銀をより多く封入することで点灯時の水銀蒸気圧200気圧以上、300気圧以上という高い水銀蒸気圧の放電ランプを作ることができ、水銀蒸気圧が高くなるほどプロジェクター装置に適した光源を実現することができる。
希ガスは、例えば、アルゴンガスが約13kPa封入され、点灯始動性を改善するためのものである。
ハロゲンは、沃素、臭素、塩素などが水銀その他の金属との化合物の形態で封入され、ハロゲンの封入量は、例えば、10−6〜10−2μmol/mm3の範囲から選択できるものであって、その機能はハロゲンサイクルを利用した長寿命化であるが、本発明の放電ランプのように極めて小型で高い内圧を有するものは、このようなハロゲンを封入することも、放電容器の破損、失透という現象に影響を及ぼしていることが考えられる。
【0014】
このような放電ランプの数値例を示すと、例えば、発光部の最大外径9.5mm、電極間距離1.5mm、発光管内容積75mm3、管壁負荷1.5W/mm2、定格電圧80V、定格電力150Wである。
そして、この放電ランプは、前記したプロジェクター装置やオーバーヘッドプロジェクターのようなプレゼンテーション用機器に搭載され、演色性の良い放射光を提供することができる。
【0015】
図2は、本発明の放電ランプの陽極と金属箔の説明用拡大図を示す。
(a)は陽極7と金属箔8を接合する前の両者の形態を示し、(b)は陽極7と金属箔8を接合した後の状態を示す。(c)は(b)におけるA―A’の断面図を示す。
金属箔8は全体形状は概略的には矩形状であるが、電極8と接合する部分には当該電極8に対応して小幅化された部分(小幅部)8aが形成される。つまり、金属箔8は小幅部8aとその他の幅広部8bより構成される。
小幅部8aの幅8a1は、陽極7の外径値7a1より僅かに大きい程度であり、(b)、(c)に示すように両者が接合された後は、小幅部8aは電極7の外面を巻きつくように形成される。
このような構造により、陽極7と金属箔8の接合部分において、前記図10に示した空隙Xをほぼ完全に消滅させることができ、あるいは、仮に存在していたとしても劇的に小さいものとすることができる。結果として、この空隙Xより発生するクラックそのものを良好に防止することができる。
なお、図2に示す実施形態は陽極7と金属箔8との接合に関するものであるが、陰極6と金属箔8との接合においても本発明、すなわち、金属箔の先端に小幅部を設けることは採用できる。
【0016】
上記図2に示す構造に関して数値例をあげると、陽極7の軸部分7aの直径はφ0.3〜1.5mmの範囲から選ばれ、例えば、φ0.8mmであり、金属箔8の小幅部8aの幅は8a1は0.3〜1.6mmの範囲から選ばれ、例えば、1.0mmである。小幅部8aの長さ方向8a2は、2.0〜6.0mmの範囲から選ばれ、例えば、4.0mmであり、このうち、陽極7と接する領域8a3は、1.0〜4.0mmの範囲から選ばれ、例えば、2.0mmである。
金属箔8の幅広部8bの幅8b1は、1.0〜4.0mmの範囲から選ばれ、例えば、1.5mmであり、長さ方向8b2は、8.0〜30.0mmの範囲から選ばれ、例えば、11.0mmである。
また、金属箔8の厚みは、10〜40μmの範囲から選ばれ、例えば、20μmであり、小幅部8a、幅広部8bともに厚みは同じである。
金属箔8と陽極の給電作用という観点においては、小幅部8aの幅は大きい方が好ましく、また、前記のようき空隙の発生を防止するためには陽極に巻き付ける構成が好ましいことから、(c)に示す陽極軸の断面形状において半周(1/2)以上金属箔を巻き付けることが好ましく、より好ましくは、7/10(分子は8a1で示される長さ、分母はπ×7a1)以上巻き付けることである。
また、小幅部8aの長さ方向と陽極7(軸)との関係では、陽極7は小幅部8aの範囲内、すなわち、陽極7の先端は金属箔の幅広領域8bには到達しないことが好ましい。これは、陽極の先端が小幅部8aを超えて幅広領域8bまで伸びてしまうと、当該部分において不可避的な空隙が発生しかねないからである。
【0017】
図3は、電極軸との溶接をする前の金属箔8を表す。(a)は金属箔8の全体構造を示すもので、図1に示す構造において紙面垂直方向から眺めた状態を示す。(b)は小幅部8aの断面図であって(a)のB−Bにおける断面形状を示している。(c)は幅広部8bの断面図であって同様に(a)のC−Cにおける断面図を示している。また、(d)は(c)に代わる他の実施例であって、断面形状が(c)と異なるものを示している。
【0018】
小幅部8aは、前記のように電極を巻き付くように接合されるため、接合作業を行なう前においても予め曲面状に形成されている。
幅広部8bは、例えば、(c)に示すような概略オメガ状としたり、あるいは(d)に示すように概略W字形状とすることができる。幅広部をこのような形状とすることの利点は、小幅部8aの曲面形状を形成しやすく、かつ、維持しやすいことである。また、金属箔8の他端に外部リードを溶接する際、外部リードの偏芯を良好に防止できるという効果も有する。さらに、(d)に示す概略W字形状は溶接によって生じる応力との関係という意味においてもより有利な効果を生じる。
【0019】
この点について、より詳しく説明すると以下のとおりである。
図4は、金属箔を石英ガラスに封止した時の応力の発生を表すもので、石英ガラスは省略して金属箔と電極(軸部分)のみを表している。(a)はW字状金属箔を使った場合の状態図を示し、(b)は平板状金属箔を使った場合の状態図を比較のために示している。
両図において金属箔は石英ガラスにより気密に封止されているので、金属箔8と垂直方向には矢印で示す応力が発生する。この応力は石英ガラスとモリブデンとの膨張係数が一桁以上異なるため起こるものである。
この場合、(a)では、モリブデン箔8に矢印8cで示す応力や矢印8dで示す応力が発生するが、これら応力のいくつかは他の部位からにおいて生じる応力と互いに打ち消す方向に作用しあうため、全体の応力は小さくなり、その結果、金属箔とその周囲の石英ガラスの密着性は保持されることになる。しかしながら、(b)では、モリブデン箔に生じる矢印8eに示す応力や矢印8fに示す応力は、他の部位で発生する応力と打ち消すことがなく、これら応力の総和によって、金属(モリブデン)箔は石英ガラスとの間で密着性が弱まり、結果として、放電空間の超高圧が印加されるとクラックの発生を導くことになる。
【0020】
このように、金属箔の幅広部8bを図3(d)に示すように概略W字形状とすることで、応力による空隙の発生を軽減させることができる。なお、図3(c)に示すように概略Ω状のものであっても平板状の金属箔に比べると上記応力の打ち消し作用により空隙の発生を低減することができる。
ここで、小幅部8aによる作用効果との関係について補足すると、本願発明の金属箔構造によれば、前記した小幅部8aの作用効果によって、小幅部8aの位置において本来空隙の発生を阻止、あるいは劇的に低減するものであるが、仮に、微小の空隙が存在していたとしても幅広部8bにおいて図3(c)(d)のような形状とすることで、より一層空隙の発生を低減できるものである。
なお、このような幅広部8bにおける応力打ち消し作用は、図3(c)に示す概略Ω状の形状や(d)に示す概略W字形状に限定されるものではなく、その他の形状であっても可能であることは言うまでもない。
【0021】
図3に戻り、(a)に示す金属箔8は、例えば、完全な矩形状の金属箔に対して、プレス機などの切断、成形手段を用いて小幅部と幅広部を形成する。
【0022】
次に、金属箔8と電極7の接合作業について説明する。
図5は、電極7と金属箔8の抵抗溶接の状態を示し、(a)はゲージ50に金属箔と電極が配置された状態を示し、(b)は(a)のD方向から見た状態を示す。また、(a)は(b)におけるE−Eの断面を示すものである。
電極7と金属箔8は所定の型が形成されたゲージ50の中の支持台51にセッティングされる。ゲージ50には溶接棒用貫通路52が左右に2箇所形成されており、各々の開口52から溶接棒53が挿入される。
【0023】
そして、左右2つの溶接棒53がそれぞれ内部に向かって動くことで、溶接点55において電極7と金属箔8が溶接され、また、金属箔8は電極7の外表面を巻きつくように形成される。
ここで、本発明の構造は、電極の両側面から溶接棒を押さえつけて金属箔と接合するため、溶接点55が電極の両側部に最低2箇所形成され、このことは耐圧強度という点で大きな利点を有する。
【0024】
図6は溶接点が電極の側部に形成されることの利点を説明するための図であって、(a)は本発明の溶接方法による電極と金属箔の拡大図を示し、(b)は比較のため従来の溶接方法による電極と金属箔の拡大図を示している。
すなわち、(a)では電極7の側部に溶接棒が当たるため溶接点55も両側部に形成されるのに対し、(b)では電極7の上下方向から溶接棒が当たるために溶接点55’は電極7の下部に1箇所だけ形成されることになる。図における53’は溶接棒による押圧方向を表す。
このような溶接棒の接触方向の違いは、溶接箇所の数の違いによる強度向上という効果だけではない。すなわち、(b)においては、溶接後、電極自体が溶接棒の押し付けによる左右方向に広がるように変形し、この変形により金属箔と電極との間に空隙Yが形成されやすくなる。一方、(a)においては、溶接棒の押し付け方向が異なることから、このような不所望な空隙の発生を良好に抑えるという効果も有している。
【0025】
ここで、金属箔と電極の溶接における1つの溶接領域(溶接点)55の面積は、0.3mm2以下であることが好ましい。これは、溶接部分において金属箔の構成材料であるモリブデンと電極の構成材料であるタングステンの合金状態を溶接時に形成していまい、この合金状態が溶接領域近傍のモリブテン部分の間に熱膨張率に違いを生じさせ、この熱膨張率の違いが当該溶接領域にいわゆる箔浮き現象を生ずるからである。
このような数値は、電極と金属箔の材料、寸法、放電ランプの構成など種々の条件によって最適値が本来異なるものであり、厳密な意味においては、単純に溶接面積のみを数値規定できるものではない。しかしながら、本願発明に係る放電ランプはプロジェクターなどの光源として採用されるものであって一般的な寸法や仕様条件は概ね限定されているものであり、このような通常規定されている条件の範囲において、溶接面積が耐圧に大きく影響することも見出したものである。具体例をあげると、電極の軸部分の外径φ0.2〜1.0mm、金属箔の幅広部の幅1.0〜4.0mmという範囲内であれば溶接面積は0.3mm2以下が優れていることを確認している。
【0026】
図5に戻り、(b)に示す溶接点55が形成された後は、さらに、金属箔と電極の組合体を図示F方向に移動させることで、別の溶接点55’を形成することもできる。このようにして溶接点の数を増加させることは、金属箔を電極に対してより強固に巻き付けることが可能となり、溶接後における金属箔の剥がれなどを防止することにもなる。さらには、前記のように1の溶接領域そのものの面積を増大させるものではないので、前記した箔浮き現象を防止できるとともに強固な接合を可能とすることができる。
【0027】
図7は、上記溶接工程を終えた後の電極組立体70を示す。なお、外部リード9と金属箔8との溶接は、上記のように外部リードの側部に対して溶接を行なってもよいが、従来のように上下方向から溶接を行なってもかまわない。これは、外部リードと金属箔との溶接においては空隙の発生を発光空間との関係において考慮する必要がないからである。
このようにして完成した電極組立体70は、電極6、金属箔7、外部リード9が一体につながり、かつ、電気的接続も完成している。そして、次工程において、この電極組立体70を、発光部と側管部の形に成形された石英ガラスの側管部の中に配置して封止、例えばシュリンクシールを行なう。
【0028】
以上説明した金属箔と電極の接合構造は、陽極に限定されるものではなく、陰極にも適用することができる。
また、電極の構造として、図1に示される陽極のように先端の太径部とそれを支える電極棒から構成されるものと、図1に示される陰極のように同一径の電極棒のまま先端まで伸びる形状が存在するが、本発明の金属箔と電極の接合構造は、陽極、陰極を問うことなく、いずれの構造の電極においても採用することができる。
さらに、本発明の構造は、直流点灯型、交流点灯型のいずれの放電ランプに対しても適用することができる。
【0029】
さらに、本出願人は、先に特開2001−351576号において、電極と側管部の間に微小空隙を形成する放電ランプを提案している。
図8は、この電極と側管部の間に微小空隙を形成する放電ランプの概略構成を示し、さらに、本発明に係る金属箔と電極の接合構造を適用した状態を表す。発光部には0.15mg/cc以上の水銀が封入され、陰極6と陽極7の側管部3における外表面には空隙10が形成される。これは電極の構成材料であるタングステンと側管部の構成材料である石英ガラスが密着すると、封止工程後の両者の膨張係数の違いからクラックを生じるおそれがあるため、両者の相対的な伸縮を自由にするために形成するのである。空隙は幅5〜20μm程度である。
そして、このような構造の放電ランプにおいては、電極と金属箔の接合部に発光部内の高圧が直接印加されるため、耐圧強度を向上できる本発明の金属箔構造を採用することは極めて有用である。
【0030】
次に、本発明によるショートアーク型放電ランプに関する数値例を紹介する。
側管部の外径 : 6.0mm
ランプ全長 : 65.0mm
側管の長さ : 25.0mm
発光管の内容積: 0.08cc
電極間距離 : 2.0mm
定格点灯電圧 : 200w
定格点灯電流 : 2.5A
封入水銀量 : 0.25mg/mm3
希ガス : アルゴンを100Torr
【0031】
次に、本発明の効果を表す実験の結果について説明する。
放電ランプ1は、図2に示す接合構造であり、金属箔の幅広部が断面W字形状としたものを採用した。
放電ランプ2は、金属箔の形状は断面W字形状であるが、小幅部を有しておらず幅広部のみの構造である。
放電ランプ3は、金属箔の形状は平板矩形状、すなわち、図4(b)、図9に示すものである。
その他の構造は、基本的に同一であり、これら放電ランプ1,2,3を各々100本定格200Wで点灯させて耐圧試験を行なった。
結果は、放電ランプ1は点灯400時間においてクラック発生、側官部破損が0%であり、放電ランプ2は同じく点灯400時間において30%がクラックの発生、あるいは側管部の破損を生じさせた。また、放電ランプ3は点灯10時間以内にほぼ100%がクラックの発生、側管部の破損を生じさせた。
この実験結果から、金属箔は電極との溶接部分において当該電極の外径値に対応する大きさまで小幅化されており、かつ、電極と溶接されていない幅広部が断面W字形状であることが最もクラック発生防止、側管部の破損防止に効果があることが示される。
【0032】
以上説明したように、本発明に係るショートアーク型超高圧水銀ランプは、点灯時内気圧が150気圧を超える超高圧であり、その点灯条件極めて厳しいものであるが、金属箔の形状を小幅部と幅広部からなり、小幅部は電極軸と対応して小さな幅であって、当該小幅部は電極の外表面を巻き付けるように構成したので、当該小幅部において金属箔と電極との溶接において、従来、不回避的に発生していた空隙を劇的に低減させることができる。
さらに、電極の側部において金属箔との接合をすることで、接合箇所をバランス良く複数箇所設けることが可能になり、さらには溶接時における電極形状の変形に伴う空隙の発生も防止することができる。
さらに、金属箔に幅広部を概略Ω状、あるいは概略W字形状とすることで溶接により発生する応力を打ち消すように働かせることができるので不所望な空隙の発生をより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの全体図を示す。
【図2】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの金属箔と電極を示す。
【図3】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの金属箔を示す。
【図4】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの金属箔と電極を示す。
【図5】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの金属箔と電極の接合状態を示す。
【図6】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの金属箔と電極を示す。
【図7】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの電極組立体を示す。
【図8】本発明のショートアーク型超高圧放電ランプの他の実施形態を示す。
【図9】従来のショートアーク型超高圧放電ランプの全体構成を示す。
【図10】従来のショートアーク型超高圧放電ランプの金属箔と電極の接合状態を示す。
【符号の説明】
1 放電ランプ
2 発光部
3 側管部
6 陰極
7 陽極
8 金属箔
9 外部リード
Claims (2)
- 内部に一対の電極が対向配置され、かつ、0.15mg/mm3以上の水銀を封入した発光部と、その両側に延在して電極の一部を封止するとともに電極と金属箔を接合する側管部からなるショートアーク型超高圧放電ランプにおいて、
前記金属箔の前記電極との溶接部分は、矩形状に小幅化されており、かつ、当該電極の外表面を巻きつくように形成されるとともに、前記小幅化された部分以外の幅広部の断面が概略Ω状であることを特徴とするショートアーク型超高圧放電ランプ。 - 前記溶接部分は、前記金属箔の幅方向から溶接された溶接跡を少なくとも2つ有することを特徴とする請求項1のショートアーク型超高圧放電ランプ。
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