JP3568448B2 - 電気自動車の電源システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の減速または制動時に車両の駆動系統からの回転力によって回生発電を行う電気自動車の電源システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の動力源としてエンジンとモータ(電動機と発電機とを兼ねる回転電機)とを併有し、いずれか一方または双方の駆動力により走行するようにしたハイブリッド車両が知られている。
【0003】
このようなハイブリッド車両では、車両の減速または制動時に車両の駆動系統からの回転力によってモータを発電機として作動させる回生運転を行い、車両の減速エネルギを蓄電装置の充電に利用するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば車両が長い下り坂を走行するような運転条件において、回生運転が続けられて蓄電装置が満充電状態になると、回生発電が停止されるため、モータが回生発電によって制動力を付与しなくなり、他の制動装置としてホイールブレーキ等の負担が増えるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、回生発電電力の配分を最適に制御する電気自動車の電源システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、蓄電装置からの電力によって車両の駆動系統に駆動力を伝達するとともに車両の減速または制動時に車両の駆動系統からの回転力によって回生発電を行う回転電機を備える電気自動車の電源システムに適用する。
【0007】
回転電機の回生発電電力を吸収可能とする電力吸収装置と、回転電機の回生発電電力を電力吸収装置に供給する回路を断続する切換スイッチと、蓄電装置の満充電状態時に切換スイッチを介して回生発電電力を電力吸収装置に供給する電力吸収制御手段とを備え、電力吸収装置は回生発電電流が流れる回路に抵抗器とコンデンサとを並列に介装し、コンデンサに供給される電流を制限する電流制限手段を備え、電流制限手段を半導体スイッチング素子で構成した。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、電流制限手段を可変抵抗器で構成した。
【0011】
第5の発明は、第2から第4のいずれか一つの発明において、コンデンサの極性を切換える極性切換スイッチを備え、極性切換スイッチを周期的に切換え作動させる構成とした。
【0012】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、例えば車両が長い下り坂を走行するような運転条件において、回生運転が続けられて蓄電装置が満充電状態になったら、回生発電電力が電力吸収装置にて消費される。これにより、満充電状態でも回生運転を継続して制動力を付与するので、他の制動装置としてホイールブレーキ等の負担が増えることを回避できる。
【0013】
そして、電力吸収装置は回生発電電力を抵抗器を介して熱エネルギに変換するとともに、コンデンサを介して一時的に蓄える。
【0014】
電流制限手段は、コンデンサに供給される電流を制限してコンデンサが瞬間的に充電されるのを抑える。これにより、例えばインバータにおける急激な電流の変化が抑えられ、安定した作動が維持される。
【0015】
そして、電流制限手段は半導体スイッチング素子の作動によって電流を制限するため、発熱が少なく大容量に適用することが可能となる。
【0016】
第2の発明において、電流制限手段は可変抵抗器を介してコンデンサに供給される電流を制限する。
【0017】
第3の発明において、コンデンサに蓄えられる電流の流れ方向が周期的に逆転することにより、コンデンサの端子間電圧が繰り返し上昇し、電流が流れ続ける。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をシリーズ式ハイブリッド車に搭載される電源システムに適用した実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、エンジン1は発電機2を駆動し、発電機2で発電される電力が整流器3を介して主蓄電装置4に供給されるとともに、インバータ5を介して走行用モータ6に供給される。図示しない車両の駆動系統は走行用モータ6によって駆動される。図において、8は補助蓄電装置、7は補助蓄電装置8を充電するDC−DCコンバータ、9は補機である。
【0020】
主蓄電装置4は化学電池または多数のコンデンサによって構成され、所定の電力を蓄えられる。
【0021】
インバータ5は主蓄電装置4の直流電力を交流電力に変換して走行用モータ6に供給するとともに、走行用モータ6の交流発電電力を直流電力に変換して主蓄電装置4に充電する。
【0022】
コントローラ20はマイクロコンピュータとその周辺部品を備え、車両の運転条件に応じてエンジン1の運転を制御し、整流器3を介して発電力を制御するとともに、インバータ5を介して走行用モータ6の回転数や出力トルクまたは回生発電電力等を制御する。
【0023】
以上は本発明が適用可能なハイブリッド車両の基本的な構成例を示したものであり、本発明はこうしたハイブリッド車両の回生発電電力配分を最適制御することを目的とする。
【0024】
本発明は、主蓄電装置4と並列に電力吸収装置11を備え、走行用モータ6の回生発電電力を電力吸収装置11に供給する回路を断続する切換スイッチ13を備える。切換スイッチ13は回生発電電力を主蓄電装置4に供給するOFFポジションと、回生発電電力を電力吸収装置11に供給するONポジションとを有する。
【0025】
図2に示すように、電力吸収装置11は可変抵抗器15を主体として構成される。可変抵抗器15は回生発電電力を熱エネルギに変換し、コントローラ20からの制御信号に基づきその抵抗値が変化し、抵抗値すなわち吸収する電力が大きくなる程消費する電力が大きくなる。
【0026】
電力吸収装置11は、可変抵抗器15と並列にコンデンサ16が介装される。コンデンサ16は所定の回生発電電力を一時的に蓄える働きをし、要求される蓄電力に応じて複数のコンデンサを直並列に組み合わせて構成する。
【0027】
電力吸収装置11は、コンデンサ16に供給される電流を制限する電流制限手段としてスイッチングコンバータ17がコンデンサ16と直列に介装される。スイッチングコンバータ17は半導体スイッチング素子によって構成され、コントローラ20からの制御信号に基づきコンデンサ16に供給される電流を調節し、コンデンサ16が瞬間的に充電されるのを抑える。
【0028】
コントローラ20は主蓄電装置4の充電可能電力が所定値以下となる満充電状態を判定し、満充電状態時に切換スイッチ13を介して回生発電電力を電力吸収装置11に供給する制御を行う。
【0029】
図3のフローチャートは上記制御ルーチンを示しており、これに表される処理はコントローラ20によるハイブリッド車両の総合的な制御の一部を構成するものとして割り込み処理等により周期的に実行される。
【0030】
これについて説明すると、まず、運転状態検出信号を入力した後、車両が減速状態にあるか否かを判定する(ステップ1、2)。減速状態は、例えば図示しない車速センサとアクセルペダルセンサからの信号に基づき、車速がある程度以上あってアクセルペダルが踏み込まれていないことから判定する。減速状態でないときは回生発電を行わないので、以下の処理を迂回してステップ9に進んで切換スイッチ13をOFFとして電力吸収装置11を遮断する。
【0031】
減速状態と判定したときは、主蓄電装置4のバッテリSOC(State of Charge)の検出値に基づいて充電可能電力WHを求めるとともに、走行用モータ6の回生発電電力WEを求める。
【0032】
続いてステップ5に進んで充電可能電力WHと回生発電電力WEを比較する。このときWH>WEでは主蓄電装置4には十分に充電する余裕があるので、ステップ9に進んで切換スイッチ13をOFFとして電力吸収装置11を遮断する。他方、WH≦WEのときには、切換スイッチ13をONとして主蓄電装置4を遮断させ、回生発電電力WEに応じてスイッチングコンバータ17および可変抵抗器15を制御する(ステップ6〜8)。なお、ステップ5,6で行われる処理が本発明の電力吸収制御手段に相当する。
【0033】
以上のように構成され、例えば車両が長い下り坂を走行するような運転条件において、回生運転が続けられて主蓄電装置4が満充電状態になったら、回生発電電力が電力吸収装置11にて消費される。これにより、走行用モータ6が回生発電を継続して制動力を付与するので、他の制動装置としてホイールブレーキ等の負担が増えることを回避できる。
【0034】
電力吸収装置11は回生発電電力を可変抵抗器15を介して熱エネルギに変換するとともに、コンデンサ16を介して一時的に蓄える。コンデンサ16に蓄えられた電力は可変抵抗器15を介して消費されるが、補機9等の駆動に消費されるように構成してもよい。
【0035】
スイッチングコンバータ17は、コンデンサ16に供給される電流を制限してコンデンサ16が瞬間的に充電されるのを抑える。これにより、インバータ5における急激な電流の変化が抑えられ、インバータ5の安定した作動が維持される。スイッチングコンバータ17は半導体スイッチング素子の作動によって電流を制限するため、発熱が少なく大容量に適用することが可能となる。
【0036】
次に図4に示す他の実施の形態は、走行用モータ6に対して主蓄電装置4を常に接続し、電力吸収装置11を切換スイッチ23を介して選択的に接続する構成としてもよい。切換スイッチ23は電力吸収装置11を遮断するOFFポジションと、回生発電電力を電力吸収装置11にも供給するONポジションとを有する。
【0037】
次に図5に示す他の実施の形態は、コンデンサ16に供給される電流を制限する電流制限手段として可変抵抗器25がコンデンサ16と直列に介装される。可変抵抗器25はコントローラからの制御信号に基づきその抵抗値が変化し、コンデンサ16が瞬間的に充電されるのを抑える。
【0038】
次に図6に示す他の実施の形態は、コンデンサ16に供給される電流を制限する電流制限手段として抵抗値の異なる複数の抵抗器26がコンデンサ16と直列に介装され、各抵抗器26の一つを選択的に接続するスイッチ27を備える。スイッチ27はコントローラからの制御信号に基づき切換え作動し、コンデンサ16が瞬間的に充電されるのを抑える。
【0039】
次に図7に示す他の実施の形態は、電力吸収装置11のコンデンサ16の極性を切換える一対の極性切換スイッチ31,32を備える。極性切換スイッチ31,32はコントローラからの制御信号に基づき周期的に切換え作動する。
【0040】
この場合、コンデンサ16に蓄えられる電流の流れ方向は周期的に逆転することにより、図8に示すように、コンデンサ16の端子間電圧は−V1から+V1へと繰り返し上昇し、電流が流れ続ける。
【0041】
以上、シリーズ式ハイブリッド電気自動車の場合で説明したが、本発明はパラレル式ハイブリッド電気自動車や発電機を搭載しない電気自動車、燃料電池を電源とする電気自動車をはじめとする他の電気自動車の電源システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す電気自動車の電源システムの構成図。
【図2】同じく電力吸収装置の回路図。
【図3】同じく制御内容を示すフローチャート。
【図4】他の実施の形態を示す切換スイッチの回路図。
【図5】さらに他の実施の形態を示す電力吸収装置の回路図。
【図6】さらに他の実施の形態を示す電力吸収装置の回路図。
【図7】さらに他の実施の形態を示す電力吸収装置の回路図。
【図8】同じくコンデンサの充放電特性図。
【符号の説明】
1 エンジン
2 発電機
3 整流器
4 主蓄電装置
5 インバータ
6 走行用モータ
11 電力吸収装置
13 切換スイッチ
15 可変抵抗器
16 コンデンサ
17 スイッチングコンバータ
20 コントローラ
Claims (3)
- 蓄電装置からの電力によって車両の駆動系統に駆動力を伝達するとともに車両の減速または制動時に車両の駆動系統からの回転力によって回生発電を行う回転電機を備える電気自動車の電源システムにおいて、前記回転電機の回生発電電力を吸収可能とする電力吸収装置と、前記回転電機の回生発電電力を前記電力吸収装置に供給する回路を断続する切換スイッチと、前記蓄電装置の満充電状態時に前記切換スイッチを介して回生発電電力を前記電力吸収装置に供給する電力吸収制御手段とを備え、前記電力吸収装置は回生発電電流が流れる回路に抵抗器とコンデンサとを並列に介装し、前記コンデンサに供給される電流を制限する電流制限手段を備え、前記電流制限手段を半導体スイッチング素子で構成したことを特徴とする電気自動車の電源システム。
- 前記電流制限手段を可変抵抗器で構成したことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車の電源システム。
- 前記コンデンサの極性を切換える極性切換スイッチを備え、前記極性切換スイッチを周期的に切換え作動させる構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の電気自動車の電源システム。
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