JP3565470B2 - 地絡保護装置並びにその動作方法、これを有した太陽光発電システム及びこれを有した太陽光発電システム用インバータ - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、地絡保護装置並びにその動作方法、これを有した太陽光発電システム及びこれを有した太陽光発電システム用インバータに係る。より詳細には、太陽電池アレイの内部で生じる地絡の検出感度を高く保持した状態で、太陽光発電システムの不必要な停止を防止できる、地絡保護装置並びにその動作方法、これを有した太陽光発電システム及びこれを有した太陽光発電システム用インバータに関する。
【０００２】
【従来の技術】
太陽電池アレイは、複数個の太陽電池を直並列接続したものであり、個々の太陽電池に十分太陽光が照射されるように屋外に設置して用いられる。従って、例えば１つの太陽電池において、導電性の物体（例えば、金属体はもとより、動物や人間など）と誤って接触してアース電位との短絡（以後、この現象を地絡と呼称する）が生じると、太陽電池アレイが組み込まれた太陽光発電システムは、安全対策上その動作を一端停止せざるをえない。このようなシステムの停止は、システムが接続されている負荷に対して多大な影響を与える。
【０００３】
図２は、上記対策として制御・保護装置を設けた系統連係型の太陽光発電システムの一例を示す構成図である。図２において、２１は太陽電池アレイ、２２はインバータ、２３は制御・保護装置、２４は遮断装置、２５は電力系統である。
【０００４】
図２のシステムでは、太陽電池アレイ２１はインバータ２２を介して電力系統２５に電力を送出する。インバータ２２と電力系統２５との間には機械的接点を有した遮断装置２４が設けられ、システムの故障時には電力系統２５と太陽電池アレイ２１との間を機械的に分離すると共に、インバータの内部のスイッチング素子が電子的にＯＦＦされる、いわゆるゲートブロック動作が行われる。制御・保護装置２３は電力系統２５と太陽電池アレイ２１の状態を検出し、上記遮断動作を行う。具体的には、システムの故障状態を検出すると、ゲートブロック信号と遮断装置の動作指令信号とを送出し、遮断動作を実行する。システムの故障としては、例えば、電力系統２５の異常、太陽電池アレイ２１内の地絡異常等が挙げられる。
【０００５】
特に、後者の地絡異常に対しては以下に示すような保護動作が一般的に採られていた。
（１）従来技術１（瞬時停止タイプ）：地絡異常を検出した時、瞬時に応答し、システムを遮断する方法。
（２）従来技術２（一定時限停止タイプ）：地絡異常を検出した時、一定時間が経ってから遮断動作を行う方法。この一定時間としては、約０．５秒以下が一般的である。
【０００６】
しかしながら、上記従来技術には次のような課題があった。
【０００７】
▲１▼瞬時に遮断動作を行う方法（従来技術１）には、ノイズ等の混入により誤動作しやすいという問題があり、検出感度をあまり高めることはできなかった。誤動作が頻繁に起きると遮断装置２４の接点の機械的開閉回数が増加し、遮断装置の寿命を縮めることにつながる。
【０００８】
▲２▼遮断までに一定時限をおく方法（従来技術２）には、動作時限が短い場合は誤動作が起きやすくなるので検出感度を高めることが難しく、この時限を長く設定してしまうと保護動作自体が遅くなってしまうので保護の役目を果たさないという問題があった。
【０００９】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、太陽電池アレイの内部で生じる地絡の検出感度を高く保持した状態で、太陽光発電システムの不必要な停止を防止できる、地絡保護装置並びにその動作方法、これを有した太陽光発電システム及びこれを有した太陽光発電システム用インバータを提供することを目的とする。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る地絡保護装置は、太陽電池アレイの内部において地絡が発生したとき、該太陽電池アレイと負荷との間に設けたゲートブロック手段に対してはゲートブロック信号を、該太陽電池アレイと前記負荷との間に設けた機械的な遮断手段に対しては遮断指令信号を、個別に出力し、
かつ、地絡検出手段と時間計測手段とを備え、
さらに、前記地絡検出手段及び前記時間計測手段を用いて、
地絡が所定の第１の時限Ｔ１の間継続して発生していることを検出したときにはゲートブロック信号を前記ゲートブロック手段に対して出力し、
その後、前記第１の時限Ｔ１より長い第２の時限Ｔ２が経過してから、地絡が再び検出されたときには故障と判断して遮断指令信号を前記機械的な遮断手段に対して与え、
地絡が再び検出されなかったときには前記ゲートブロック信号を解除する
ことを特徴としている。
【００１１】
時間計測手段を用いることにより、所定の時間及び所定の時間間隔で、太陽電池アレイの内部における地絡発生の有無を地絡検出手段で調べることができるため、太陽電池アレイの定期的な診断が可能となり、誤動作が低減することから長時間の運用においても高い信頼性を有する地絡保護装置がえられる。
【００１２】
また上記特徴において、前記地絡保護装置は、前記地絡検出手段及び前記時間計測手段を用いて、地絡が所定の第１の時限Ｔ１の間継続して発生していることを検出したときにはゲートブロック信号を前記ゲートブロック手段に対して出力し、その後、前記第１の時限Ｔ１より長い第２の時限Ｔ２が経過してから、地絡が再び検出されたときには故障と判断して遮断指令信号を前記機械的な遮断手段に対して与え、地絡が再び検出されなかったときには前記ゲートブロック信号を解除することにより、まず比較的短いＴ１時間地絡が継続したことを検出した時には機械的遮断を伴わないゲートブロック動作のみ行ってインバータを停止し、その後、Ｔ２時間が経ってからなお地絡が検出された時に初めて機械的な遮断（電力系統との分離）を行うという制御が可能となる。そのため、地絡検出手段の検出感度を高くしても、誤検知による機械的遮断を減らすことができ、遮断手段の寿命を長くできる。また、インバータ自体の動作は最初の地絡検出時に停止させてあるので、従来技術で時限を長くした場合のように保護動作の目的（安全性の確保）を損ねることもない。
【００１３】
上述した地絡検出手段と時間計測手段とを備えた地絡保護装置の動作方法は、地絡が所定の第１の時限Ｔ１の間継続して発生していることを検出したときには軽度地絡信号を生成する第１工程と、前記第１工程の後、前記第１の時限Ｔ１より長い第２の時限Ｔ２が経過してから、再び地絡の有無を検査する第２の工程と、前記第２工程において地絡が再び検出されたときには故障と判断して重度地絡信号を生成し、前記第２工程において地絡が再び検出されなかったときには前記軽度地絡信号を解除する第３の工程と、を有することにより達成される。
【００１４】
【発明の実施の形態】
以下では、本発明に係る地絡保護装置並びにその動作方法、これを有した太陽光発電システム及びこれを有した太陽光発電システム用インバータについて具体的に説明する。
【００１５】
（実施例１）
図２は、本発明に係る地絡保護装置を、系統連係型の太陽光発電システムに適用した場合を示すブロック図である。図２において、２１は太陽電池アレイ、２２はインバータ、２３は制御・保護装置、２４は遮断装置、２５は電力系統である。 太陽電池アレイ２１は、複数の太陽電池モジュールを直並列に接続して構成されている。太陽電池モジュールは光電変換部材を有しており、該光電変換部材の材料としては、例えばシリコン単結晶、シリコン多結晶、アモルファスシリコンが挙げられる。本発明の実施にあたっては特に太陽電池の種類や、それらの設置方法については何ら制限はない。
【００１６】
本例では、キヤノン製屋根材一体型太陽電池モジュール（製品型式ＢＳ−０３）を１４直列４並列に接続し、３３６０Ｗの太陽電池アレイを構成して用いた。
【００１７】
インバータ２２は、太陽電池から発電される直流電力を自己消弧型素子によるフルブリッジ回路を用いて交流に変換し、遮断装置２４を通じて商用電力系統２５に供給する機能を有する。インバータ２２は、マイコンを用いた制御・保護装置２３を内蔵しており、各種保護機能と電力変換制御機能を実装している。本発明に係る地絡保護装置の機能は、この制御・保護装置２３の中の保護機能の一部として実現される。
【００１８】
図４は、制御・保護装置２３を構成する地絡保護装置の地絡検出用回路の一例である。図４において、１１〜１５は抵抗、１６は電圧差の絶対値検出回路、１７は閾値との比較回路、２１は太陽電池アレイである。
【００１９】
この回路は、太陽電池アレイ２１と並列に、抵抗１１と抵抗１２を直列に接続したものを設けた回路と、抵抗１３と抵抗１４を直列に接続したものを設けた回路とを備えている。ここで、抵抗１１と抵抗１２との中点Ａは抵抗１５を介して接地してあり、抵抗１３と抵抗１４との中点Ｂは未接地の状態とした。そして、高抵抗で接地した回路の中点Ａと非接地の回路の中点Ｂとの間の電位差を電圧差の絶対値検出回路を用いて測定した。この電位差がある閾値を超えたとき、地絡が生じたとして検出信号を出力するようにした。
【００２０】
本例ではこの閾値として１０Ｖを採用した。これを絶縁抵抗に換算するとほぼ０．５ＭΩになり、地絡保護装置の感度としては著しく高いものとなっている。従来、この閾値の設定は５０Ｖ以上（絶縁抵抗換算で１００ＫΩ以下）の場合が普通であり、誤動作しにくいよう検出感度を抑えてあった。
【００２１】
上記検出回路としては、このほかにもアレイ回路の正負の回路の電流差を利用したものなど、公知の方法を適宜用いることが可能である。
【００２２】
そして、上記検出信号は制御・保護装置２３に入力される。多くの場合、制御・保護装置２３はマイコンを備えており、マイコンへのＩ／Ｏポートへ入力するのが一般的である。マイコンの種別には特に制限はない。本例では三菱電機製マイコン（製品名ｍ７７１０）を利用して構成した。
【００２３】
図１は、図２の制御・保護装置２３を構成する地絡保護装置の構成及び動作を示したブロック図である。図１において、１は地絡検出手段、２は第１の継続確認手段、３はゲートブロック信号生成手段、４は第２の継続確認手段、５は遮断信号生成手段、２３は制御・保護装置である。図１の地絡検出手段１は、図４に示した地絡検出用回路に相当する。
【００２４】
図１に示すように、本発明は、地絡検出用回路すなわち地絡検出手段１から出力された検出信号の継続時間を調べることによって保護動作を行うものである。この保護動作自体は、制御・保護装置２３が内蔵するマイコンのプログラムとして実施される。図３には、このプログラムのフローチャートを示した。
【００２５】
本発明は、太陽電池のアレイ回路において地絡が生じた場合、地絡検出用回路が検出信号を出力し、その検出信号の継続時間を調べることによって、その後の動作を行う方法である。
【００２６】
（１）まず、検出手段１および第１の継続確認手段２は、地絡が所定の第１の時限Ｔ１の間継続して発生していることを検出したときには、ゲートブロック信号生成手段３からゲートブロック信号をゲートブロック手段に対して出力する。
【００２７】
（２）その後、第１の時限Ｔ１より長い第２の時限Ｔ２が経過してから、検出手段１および第２の継続確認手段４において、地絡が再び検出されたときには故障と判断して、遮断信号生成手段５から遮断指令信号を機械的な遮断手段に対して与え、地絡が再び検出されなかったときには前記ゲートブロック信号を解除する。
【００２８】
本発明の方法は、このように２段階で保護動作を行うところに特徴がある。
【００２９】
本例では、Ｔ１を０．２秒、Ｔ２を５秒に設定した。この程度の時間設定をしておけば、実用上十分な精度で保護動作が確実に実施されることを本発明者は見出した。ここで、Ｔ１およびＴ２の設定時間はＴ２がＴ１よりも長いことが必須であるが、それ以外には特に制限はない。しかしながら、実用的にはＴ１が０．０１〜０．５秒程度、Ｔ２が数秒程度が好ましい。
【００３０】
すなわち、本例では、地絡が０．２秒以上継続したときに、まずインバータのゲートブロックが行われてインバータの動作が停止し、その後地絡が５秒以上継続したときに初めて遮断動作が行われる。継続が５秒以下の時にはゲートブロックが解除されて、通常状態に戻る。
【００３１】
このように早いタイミングでインバータを停止動作させてしまうので安全上には何等問題を与えず、一方では遮断動作までの時限を十分長く設定できるので、地絡の検出感度を上げても遮断装置の誤動作が起きにくく、遮断装置の接点寿命にも悪影響を与えずに済ませることができる。
【００３２】
（比較例１）
本例では、図５及び図６に基づき、従来の地絡保護装置を説明する。図５は装置の動作フローチャートであり、図６は装置の構成及び動作を示したブロック図である。図６において、１は地絡検出手段、６は遮断信号とゲートブロック信号生成手段、２６は制御・保護装置である。
【００３３】
図５に示すように、従来の地絡保護装置では、地絡があった場合はすぐに遮断装置を動かしている。従来、この遮断動作は、地絡を検出してから一定の時限をおいてから行われているが、本発明のように地絡を検出してから数秒間経過した後で遮断動作を行うことは安全上許容できなかった。何故ならば、その数秒間という時限の間はインバータが動作を継続してしまうためである。また、地絡検出手段の感度を上げて設定した場合には、誤動作が起きやすくなり頻繁に遮断動作が行われ、遮断手段の接点寿命が短くなるという問題もあった。
【００３４】
（実施例２）
本例では、負荷として商用電力系統２５の代わりに蛍光灯（１００Ｗ、直管）を用いた点が実施例１と異なる。
【００３５】
このように、商用電力系統とは未接続の状態にある独立型のシステムの場合は、連係インバータに必要な保護装置の多くが省略可能な場合が多い。本例では、実施例１に係る制御・保護装置２３のプログラムを改変することで、その使用を可能とした。
【００３６】
地絡検出回路と保護方式に関しては実施例１と全く同一の構成とした。太陽電池アレイとしては、多結晶モジュール（京セラ社製、ＬＡ３６１Ｋ５４）を１４枚使用して、１４直列にして、アレイを構成した。
【００３７】
実際に太陽電池モジュールの電極を大地に接触させることによって、わざとアレイ回路で地絡を生じさせて動作を確認したところ、実施例１と同様に地絡保護動作が可能であることが確認できた。
【００３８】
このように独立型の太陽光発電システムであっても、本発明は十分にその目的を果たすことができることが分かった。
【００３９】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項１に係る発明によれば、太陽電池アレイの定期的な診断が可能となり、誤動作が低減し、長時間の運用においても高い信頼性を有する地絡保護装置がえられる。
【００４０】
また、請求項２に係る発明によれば、以下の優れた効果を有する地絡保護装置並びにその動作方法、これを有した太陽光発電システム及びこれを有した太陽光発電システム用インバータの提供が可能となる。
【００４１】
（１）検出感度を高く保った状態で、システムの不要な停止を防ぐことができるとともに、システムの発電効率も向上させることが可能となる。
【００４２】
（２）システムの不要な停止を減らせるため、遮断装置の開閉回数を減らすことができ、接点の長寿命化が図れる。
【００４３】
（３）検出感度が高く保てるため、微小が地絡でも検出することができ、システムの安全性を飛躍的に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る地絡保護装置の構成及び動作を示したブロック図である。
【図２】本発明に係る地絡保護装置を、系統連係型の太陽光発電システムに適用した場合を示すブロック図である。
【図３】本発明に係る地絡保護装置において保護動作を行うマイコンのプログラムのフローチャートである。
【図４】本発明に係る地絡保護装置の地絡検出用回路の一例を示す回路図である。
【図５】従来の地絡保護装置の動作を示すフローチャートである。
【図６】従来の地絡保護装置の構成及び動作を示したブロック図である。
【符号の説明】
１ 地絡検出手段、
２ 第１の継続確認手段、
３ ゲートブロック信号生成手段、
４ 第２の継続確認手段、
５ 遮断信号生成手段、
６ 遮断信号とゲートブロック信号生成手段、
１１、１２、１３、１４、１５ 抵抗、
１６ 電圧差の絶対値検出回路、
１７ 閾値との比較回路、
２１ 太陽電池アレイ、
２２ インバータ、
２３、２６ 制御・保護装置、
２４ 遮断装置、
２５ 電力系統。

Claims (4)

1. 太陽電池アレイの内部において地絡が発生したとき、該太陽電池アレイと負荷との間に設けたゲートブロック手段に対してはゲートブロック信号を、該太陽電池アレイと前記負荷との間に設けた機械的な遮断手段に対しては遮断指令信号を、個別に出力し、
   かつ、地絡検出手段と時間計測手段とを備え、
   さらに、前記地絡検出手段及び前記時間計測手段を用いて、
   地絡が所定の第１の時限Ｔ１の間継続して発生していることを検出したときにはゲートブロック信号を前記ゲートブロック手段に対して出力し、
   その後、前記第１の時限Ｔ１より長い第２の時限Ｔ２が経過してから、地絡が再び検出されたときには故障と判断して遮断指令信号を前記機械的な遮断手段に対して与え、
   地絡が再び検出されなかったときには前記ゲートブロック信号を解除する
   ことを特徴とする地絡保護装置。
2. 地絡検出手段と時間計測手段とを備えた地絡保護装置の動作方法において、
   地絡が所定の第１の時限Ｔ１の間継続して発生していることを検出したときには軽度地絡信号を生成する第１工程と、
   前記第１工程の後、前記第１の時限Ｔ１より長い第２の時限Ｔ２が経過してから、再び地絡の有無を検査する第２の工程と、
   前記第２工程において地絡が再び検出されたときには故障と判断して重度地絡信号を生成し、前記第２工程において地絡が再び検出されなかったときには前記軽度地絡信号を解除する第３の工程と、
   を有することを特徴とする地絡保護装置の動作方法。
3. 請求項１に記載の地絡保護装置を有することを特徴とする太陽光発電システム。
4. 請求項１に記載の地絡保護装置を有することを特徴とする太陽光発電システム用インバータ。

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