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JP3561468B2 - 複合化木材用樹脂組成物 - Google Patents

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JP3561468B2
JP3561468B2 JP2000337443A JP2000337443A JP3561468B2 JP 3561468 B2 JP3561468 B2 JP 3561468B2 JP 2000337443 A JP2000337443 A JP 2000337443A JP 2000337443 A JP2000337443 A JP 2000337443A JP 3561468 B2 JP3561468 B2 JP 3561468B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合化木材用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅やオフィス等の建築物の分野においては、住む人の自然回帰の嗜好が強くなりつつあることから、木材のもつ自然な風合いが好まれるようになり、建材の分野においても木材系の材料への要求が高まっている。
【0003】
しかしながら、このような木材系建材において木材をそのまま用いると、木材は熱、水、機械的衝撃に対する抵抗性が弱いため、経時によって熱劣化、変質、腐敗、表面亀裂、破損等が起こって建材としての品質を保つことができない。そこで、木材の有する自然な美観や使用感を保ちつつ、かつ熱、水、機械的衝撃に対する抵抗性を高めた複合化木材が検討されている。
【0004】
複合化木材のうちWPC(Wood−Plastic−Combination、Wood−Polymer−Composite等の略称)は、木材に液状の硬化性樹脂や重合性モノマーを含浸させたのち硬化させることにより得られるものであり、木材のもつ特徴を生かして基本性能を高めることができることから、内装用建築材等に広く用いられている。このような複合化木材に用いられる、木材に含浸させる樹脂組成物としては、例えば、機械的強度や耐久性等の基本性能に優れることから、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂が従来から使用されている。
【0005】
一般に不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂には、重合性不飽和単量体としてスチレンモノマー(SM)が使用されている。SMは不飽和ポリエステルやビニルエステルとの共重合性に優れ、また、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物もバランスのとれた強度物性を有することから、このような樹脂組成物を含浸させて得られるWPCは優れた物性を有することになる。
【0006】
ところで、昨今、住宅業界においてWPCを含む内装建築材に使用する塗料、接着剤等の樹脂組成物中に含まれるトルエン、キシレン、スチレン等の揮発性有機物質(VOC)が原因の1つであると考えられているシックハウス症候群等の対策の一環で、室内空気中のVOC濃度指針値を制定し、これらのVOCの使用を抑制しようとする動きが見られる。すなわち、このようなVOCの使用抑制の動きは、消費者での使用状況において内装建築材等から放散されるスチレン等の量を抑制することを目的としている。このような要望に応えるため、縁甲板やフローリング等の内装建築材として用いられるWPCにおいても、充分な性能を発揮しつつスチレン等の揮発量を削減することができる樹脂組成物を研究する余地があった。
【0007】
WPCに使用される不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂に含有されるSMは、WPC製造時においてそのほとんどが不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂と共重合し、共重合したSMは、その後、WPCより揮発することはない。しかし、ごくわずかな量の未反応の残存SMが存在し、これが、WPCより揮発することになる。したがって、WPCの製造時において残存SMを低減すれば、スチレンの揮発量を抑制することができることとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、外観や物性等において充分な性能を発揮しつつスチレンモノマー等の揮発性有機物質(VOC)の揮発量を削減するためにWPCにおける残存SMを低減することができる複合化木材用樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルと、スチレン(イ)と、(メタ)アクリレート(ロ)とを必須成分として含有する複合化木材用樹脂組成物であって、上記(メタ)アクリレート(ロ)が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つだけ有し、かつ、常圧下での沸点が110℃以上であり、上記スチレン(イ)と上記(メタ)アクリレート(ロ)との重量比率〔(イ)/(ロ)〕が、9/1〜2/8の範囲内である複合化木材用樹脂組成物である。
【0010】
本発明者らは、WPCを形成するための複合化木材用樹脂組成物について、縁甲板やフローリング等の内装建築材等として消費者での使用状況において揮発するSM等の量を抑制することを検討するうち、SM系ラジカル重合性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂に特定の(メタ)アクリレートモノマーを配合すると、WPC製品における残存SM量が低減し、その結果、揮発するSMのVOC測定値が従来の1/10〜1/20に低減することにまず着目した。このようなSMの低減割合は、樹脂中のSM配合量の低減割合より明らかに大きいことから、特定の(メタ)アクリレートモノマーを少量配合することにより効果的にWPC製品における残存SM量が低減して、揮発するSM量を低減できることになる。また、不飽和ポリエステルの二重結合力価を特定値以上としたり、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを用いたりすると、WPC製品がより充分な性能を発揮することになることにも着目し、これらのことから上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の複合化木材用樹脂組成物は、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルと、スチレン(イ)と、(メタ)アクリレート(ロ)とを必須成分として含有する。
【0012】
本発明の複合化木材用樹脂組成物におけるスチレン(イ)と(メタ)アクリレート(ロ)との配合割合は、重量比率〔(イ)/(ロ)〕で、9/1〜2/8の範囲内である。上記比率が2/8未満であると、樹脂組成物を含浸させてなる複合化木材の耐クラック性が不充分となるおそれがあり、9/1を超えると、硬化に関与せずに残存する未反応の残存SM量が多くなることに起因して、樹脂組成物を含浸させてなる複合化木材からのVOC揮発量が多くなるおそれがある。(イ)/(ロ)の重量比率は、7/3〜3/7の範囲内であることが好ましく、6/4〜4/6の範囲内であることがより好ましい。
【0013】
本発明の複合化木材用樹脂組成物における不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルに対する、スチレン(イ)及び(メタ)アクリレート(ロ)の合計量の配合割合としては特に限定されないが、重量比率〔(不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステル)/(スチレン(イ)及び(メタ)アクリレート(ロ)の合計量)〕で、2/8〜9/1の範囲内であることが好ましく、3/7〜8/2の範囲内であることがより好ましい。上記比率が2/8未満であると、樹脂組成物を含浸させてなる複合化木材の耐クラック性が不充分となるおそれがあり、9/1を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなることから、樹脂組成物の木材に対する含浸性が低下するおそれがある。
【0014】
本発明の複合化木材用樹脂組成物における不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルとスチレン(イ)と(メタ)アクリレート(ロ)との合計量の配合割合としては特に限定されないが、樹脂組成物全体を100重量%とすると、50〜100重量%の範囲内であることが好ましく、70〜99重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0015】
上記(メタ)アクリレート(ロ)は、分子中に(メタ)アクリロイル基を1つだけ有し、かつ、常圧下での沸点が110℃以上の単量体である。
上記(メタ)アクリレート(ロ)における分子中の(メタ)アクリロイル基とは、CH =CR−CO−(Rは水素又はメチル基)で表される基であり、具体的には、▲1▼CH =CH−CO−又は▲2▼CH =C(CH )−CO−で表される基であり、該(メタ)アクリロイル基が2つ以上であると、(メタ)アクリレート(ロ)を含有する樹脂組成物を含浸してなる複合化木材の耐クラック性が不充分となるおそれがある。また、上記(メタ)アクリレート(ロ)の常圧下での沸点とは、1013hPaでの沸点であり、該沸点が110℃未満であると、特に、熱硬化により複合化木材を製造する際に、該(メタ)アクリレート(ロ)が揮散して複合化木材の表面にカスレが発生したり、複合化木材内部に空隙が生じ、耐熱性や耐水性が低下するおそれがある。
【0016】
上記(メタ)アクリレート(ロ)の好ましい形態としては、分子中に水酸基を有することである。これにより、木材とのなじみがよくなり、木材への含浸性が向上して複合化木材がより充分な性能を発揮することになる。
上記分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレート(ロ)としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。木材への含浸性のためには、上記の様なアルコール性のOH基を水酸基として、分子中に有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0017】
上記分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレート(ロ)以外の(メタ)アクリレート(ロ)としては特に限定されず、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
本発明の複合化木材用樹脂組成物には、その効果が妨げられない範囲内で、その他の重合性不飽和単量体を配合することができる。このような重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、メチル(メタ)アクリレート、メチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
本発明における不飽和ポリエステルとしては、酸成分とアルコール成分との脱水縮合反応によって得られるオリゴマー、又は、酸エステル成分とアルコール成分との脱アルコール縮合反応によって得られるオリゴマーであれば特に限定されるものではない。不飽和ポリエステルを形成する各成分はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明では、不飽和ポリエステルの二重結合力価が450以上であることが好ましい。二重結合力価が450未満であると、不飽和ポリエステルを含有する樹脂組成物を含浸してなる複合化木材の耐クラック性が低下するおそれがある。上記二重結合力価は、450〜3000の範囲内がより好ましく、500〜2000の範囲内が更に好ましく、500〜1500の範囲内が最も好ましい。
【0020】
本発明において、二重結合力価とは、例えば、不飽和ポリエステルの原料である酸成分、酸エステル成分及びアルコール成分のそれぞれの(分子量×モル数)の理論合計量から、酸成分とアルコール成分との脱水縮合反応における理論脱水量、又は、酸エステル成分とアルコール成分との脱アルコール縮合反応における理論脱アルコール量を引いた値を、酸成分に含まれる不飽和二塩基酸及び/若しくはその無水物、又は、酸エステル成分に含まれる不飽和二塩基酸のエステル化物のモル数で割ることにより計算することができる。すなわち、二重結合力価は、二重結合1つ当たりの数平均分子量であり、この値が大きいほど、単位重量当たりの二重結合数が小さくなり、硬化物の架橋密度が低くなる結果、柔軟な硬化物が得られる。
【0021】
上記不飽和ポリエステルを得るための酸成分は、不飽和二塩基酸及び/又はその無水物を必須成分とする。このような不飽和二塩基酸及び/又はその無水物としては特に限定されず、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0022】
上記不飽和ポリエステルを得るための酸エステル成分は、不飽和二塩基酸のエステル化物を必須成分とする。このような不飽和二塩基酸のエステル化物としては特に限定されず、例えば、上記例示の不飽和二塩基酸をエステル化した化合物等が挙げられる。
【0023】
更に、上記酸成分又は酸エステル成分としては、不飽和ポリエステルの二重結合力価が450以上となるように、不飽和二塩基酸及び/若しくはその無水物、又は、不飽和二塩基酸のエステル化物の他に、飽和多塩基酸及び/若しくはその無水物、又は、飽和多塩基酸のエステル化物を、酸成分又は酸エステル成分の一部として併用することが好ましい。
【0024】
上記飽和多塩基酸及び/又はその無水物としては特に限定されず、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族飽和多塩基酸;テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、ダイマー酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドカン二酸等の脂肪族飽和多塩基酸が挙げられる。これらの中でも、不飽和ポリエステルを含有する樹脂組成物を含浸してなる複合化木材の耐クラック性が向上することから、ダイマー酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドカン二酸等を酸成分の一部として用いることが好ましい。
上記飽和多塩基酸のエステル化物としては特に限定されず、例えば、上記例示の飽和多塩基酸をエステル化した化合物等が挙げられる。
【0025】
上記不飽和ポリエステルを得るための全酸成分における不飽和二塩基酸及び/若しくはその無水物、又は、不飽和二塩基酸のエステル化物の割合としては、併用する飽和多塩基酸及び/若しくはその無水物、又は、飽和多塩基酸のエステル化物と、アルコール成分との種類及び使用量を考慮して、不飽和ポリエステルの二重結合力価が450以上の範囲となるように設定すれば特に限定されないが、0を超えて70モル%以下の範囲内が好ましく、5〜50モル%の範囲内がより好ましく、10〜40モル%の範囲内が最も好ましい。
【0026】
上記不飽和ポリエステルを得るためのアルコール成分としては特に限定されないが、オキシアルキレングリコールを主成分として使用することが、不飽和ポリエステルを含有する樹脂組成物の木材との親和性が向上し、また、樹脂組成物を含浸してなる複合化木材の耐クラック性が向上するため好ましい。
【0027】
上記オキシアルキレングリコールとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0028】
上記不飽和ポリエステルを得るためのアルコール成分としては、必要に応じて、上記オキシアルキレングリコール以外のアルコール成分も使用することができる。このようなアルコール成分としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、ビスフェノールAとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物、トリメチロールプロパン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0029】
上記不飽和ポリエステルを得るための酸成分又は酸エステル成分と、アルコール成分との使用割合としては特に限定されないが、酸成分又は酸エステル成分1.0当量に対して、アルコール成分が0.90〜1.10当量となるようにすることが好ましい。
【0030】
上記不飽和ポリエステルを得るための縮合反応においては、酸成分又は酸エステル成分や、アルコール成分に加えて、必要に応じ、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、反応促進触媒、消泡剤、ゲル化を防止するための重合禁止剤等が挙げられる。これらの使用割合としては、その目的等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
上記不飽和ポリエステルを得る際の反応条件、すなわち酸成分又は酸エステル成分と、アルコール成分とを縮合反応させる条件については特に限定されない。例えば、反応温度、反応時間等については、該反応が完結するように適宜設定すればよい。また、縮合反応は、窒素やヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスは、例えば、反応系に吹き込むように(いわゆる、バブリング)することにより反応系中に供給すればよい。
【0032】
上記不飽和ポリエステルの数平均分子量としては特に限定されないが、1000〜5000の範囲内が好ましく、1500〜4000の範囲内がより好ましい。1000未満であると、不飽和ポリエステルを含有する樹脂組成物を含浸してなる複合化木材の耐水性が低下するおそれがあり、5000を超えると、不飽和ポリエステルを含有する樹脂組成物の粘度が高くなることから、樹脂組成物の木材に対する含浸性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明におけるビニルエステルは、多官能エポキシ化合物、不飽和一塩基酸、及び、必要により多塩基酸をエステル化触媒の存在下、エステル化反応させて得られるオリゴマーである。ビニルエステルを形成する各成分はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記多官能エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、これらの水素化ビスフェノール型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、これらの水素化ノボラック型エポキシ化合物等のノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0035】
上記多官能エポキシ化合物の平均エポキシ当量としては特に限定されないが、170〜700の範囲内が好ましく、300〜700の範囲内であることがより好ましい。700を超えると、ビニルエステルを含有する樹脂組成物の粘度が高くなることから、樹脂組成物の木材に対する含浸性が低下するおそれがある。
【0036】
上記不飽和一塩基酸としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、ソルビン酸や、モノメチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート等の不飽和二塩基酸ハーフエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレートと不飽和二塩基酸又は飽和二塩基酸とのハーフエステル化物等が挙げられる。
【0037】
上記不飽和二塩基酸又は飽和二塩基酸としては、不飽和ポリエステルにおいて例示したものを同様に使用することができるが、これらの中でも、ビニルエステルを含有する樹脂組成物を用いてなる複合化木材の耐クラック性が向上することから、ダイマー酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドカン二酸等を用いることが好ましい。
【0038】
上記多塩基酸としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0039】
上記多官能エポキシ化合物、不飽和一塩基酸、及び、必要に応じて用いられる多塩基酸の使用割合としては特に限定されないが、多官能エポキシ化合物が有するエポキシ基1.0当量に対して、不飽和一塩基酸及び多塩基酸が有するカルボキシル基の合計量が0.9〜1.1当量の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0040】
上記ビニルエステルを得る際に用いるエステル化触媒としては特に限定されず、例えば、トリエチルアミン等のアミン類、アミン類の酸付加物、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、アミド類、イミダゾール類、ピリジン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩、スルホニウム塩、スルホン酸類、オクチル酸亜鉛等の有機金属塩等が挙げられる。
【0041】
上記エステル化触媒の添加量としては特に限定されないが、多官能エポキシ化合物、不飽和一塩基酸、及び、必要により用いる多塩基酸の合計量(総重量)に対して、該触媒が0.005〜3.0重量%の範囲内となるように設定することが好ましい。
【0042】
上記エステル化反応においては、必要に応じて、反応系に重合性不飽和単量体や溶剤を共存させてもよい。更に、エステル化反応の反応温度、反応時間は特に限定されるものではなく、反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0043】
上記エステル化反応に際しては、重合によるゲル化を防止するために重合禁止剤や分子状酸素を添加することが好ましい。このような重合禁止剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の化合物を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2−t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、メトキシハイドロキノン、フェノチアジン、メチルベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルベンゾキノン、4−ヒドロキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、ナフテン酸銅等が挙げられる。
【0044】
上記分子状酸素としては特に限定されず、例えば、空気や空気と窒素等の不活性ガスの混合ガスを用いることができる。この場合、反応系に吹き込むように(いわゆる、バブリング)すればよい。なお、反応におけるゲル化を充分に防止するために、重合禁止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。
【0045】
上記ビニルエステルの数平均分子量としては特に限定されないが、500〜3000の範囲内であることが好ましく、700〜2000の範囲内であることがより好ましい。3000を超えると、ビニルエステルを含む樹脂組成物の粘度が高くなることから、樹脂組成物の木材に対する含浸性が低下するおそれがある。
【0046】
本発明の複合化木材用樹脂組成物は、木材に含浸させた後、硬化させることにより木材と一体化し、複合化木材とすることができる。
木材に複合化木材用樹脂組成物を含浸させる方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、減圧注入法、加圧注入法、減圧・加圧注入法、塗布含浸法(静置、加圧)等を、木材の性状や用途に応じて採用すればよい。また、硬化方法としては特に限定されず、例えば、加圧加熱、常圧加熱等の加熱による方法や、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線の照射による方法等が挙げられる。
【0047】
本発明の複合化木材用樹脂組成物には、硬化を促進させるために、硬化剤を配合することが好ましく、活性エネルギー線を照射して重合硬化する場合には光増感剤を配合してもよい。
上記硬化剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルヒドロパーオキシド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の複合化木材用樹脂組成物に上記のような硬化剤を配合する場合の配合量としては特に限定されないが、不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステル、スチレン(イ)、並びに、(メタ)アクリレート(ロ)の合計量100重量部に対して、0.1〜3.0重量部の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0049】
本発明の複合化木材用樹脂組成物には、必要に応じて、更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、着色顔料、染料、充填剤、硬化促進剤、可塑剤、酢酸ビニルポリマーやポリエステル等の低収縮剤、エラストマー等の添加剤を配合してもよい。
【0050】
本発明の複合化木材用樹脂組成物を用いて得られる複合化木材は、複合化木材に通常求められる化粧外観を有し、熱や水等の影響によりクラックが発生しにくい優れた耐久性等を有し、しかも、残存SM量がわずかであるため、複合化木材より揮発するスチレンモノマーがほとんどなく、また、このような作用効果を奏しつつ廉価にすることが可能であることから、例えば、快適な室内環境を実現するためのWPC製品として、縁甲板やフローリング等の内装建材等として好適に用いることができるものである。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に記載の「部」は、「重量部」を示す。
【0052】
合成例1
温度計、ガス吹込管、還流冷却器及び攪拌機を備えた四つ口フラスコを反応器とし、これにジエチレングリコール1113部、アジピン酸292部、無水フタル酸592部、及び、無水マレイン酸392部を仕込んだ。次いで、この混合物を窒素ガス気流中で攪拌しながら、215℃に昇温し、10時間脱水縮合反応させて、不飽和ポリエステル(1)を得た。該不飽和ポリエステル(1)の二重結合力価は543、酸価は26mgKOH/g、数平均分子量は1982であった。
【0053】
合成例2
合成例1と同様の反応器に、ジエチレングリコール1113部、イソフタル酸747部、アジピン酸365部、及び、無水マレイン酸294部を仕込んだ。次いで、この混合物を窒素ガス気流中で攪拌しながら、215℃に昇温し、15時間脱水縮合反応させて、不飽和ポリエステル(2)を得た。該不飽和ポリエステル(2)の二重結合力価は738、酸価は25mgKOH/g、数平均分子量は2010であった。
【0054】
合成例3
合成例1と同様の反応器に、ジエチレングリコール1113部、アジピン酸292部、無水フタル酸888部、及び、無水マレイン酸196部を仕込んだ。次いで、この混合物を窒素ガス気流中で攪拌しながら、215℃に昇温し、10時間脱水縮合反応させて、不飽和ポリエステル(3)を得た。該不飽和ポリエステル(3)の二重結合力価は1137、酸価は24mgKOH/g、数平均分子量は2120であった。
【0055】
合成例4
合成例1と同様の反応器に、ジエチレングリコール1113部、無水フタル酸740部、及び、無水マレイン酸433部を仕込んだ。次いで、この混合物を窒素ガス気流中で攪拌しながら、215℃に昇温し、10時間脱水縮合反応させて、不飽和ポリエステル(4)を得た。該不飽和ポリエステル(4)の二重結合力価は433、酸価は22mgKOH/g、数平均分子量は1890であった。
【0056】
合成例5
合成例1と同様の反応器に、ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名「エポトートYD−901」、東都化成社製、平均エポキシ当量456)456部、メタクリル酸86部、エステル化触媒としてトリエチルアミン2.3部、及び、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部を仕込んだ。次いで、この混合物を空気気流中で攪拌しながら、115℃に昇温し、6時間反応させて、ビニルエステル(1)を得た。該ビニルエステル(1)の酸価は7.0mgKOH/g、数平均分量は990であった。
【0057】
実施例1〜8、比較例1〜7
合成例1〜5で得られた不飽和ポリエステル(1)〜(4)、ビニルエステル(1)、スチレン、(メタ)アクリレート(ロ)として、ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートを表1及び表2に記載した配合量で均一に混合して複合化木材用樹脂組成物を得た。各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いて、以下の方法により試験片を作製し、性能を評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0058】
試験片の作製
上記の樹脂組成物それぞれ100部に、硬化剤(商品名「パーキュアーO」、日本油脂社製)1部を添加して、硬化剤添加樹脂組成物を得た。
次に、厚さ0.3mmのナラ単板を80℃で3時間乾燥させた後、減圧容器に入れ、15トールの減圧下で30分間脱気させた。更に、このナラ単板に上記の硬化剤添加樹脂組成物を吸入させ、常圧に戻して6時間静置した。その後、樹脂含浸後の単板を液きりを行ってから、単板をPETフィルムで挟み、ホットプレスで125℃、98N/cm で5分間硬化させ、その後、PETフィルムを除去してWPCを得た。次に、あらかじめウレタン系接着剤を塗布した15mm厚の合板にWPCを載置し、ホットプレスで110℃、49N/cm で5分間熱圧着させることによりWPC化粧板を得た。
得られたWPCを2mm幅の短冊にカットして、残存SM量測定の試験片とするとともに、WPC化粧板を15cm×15cmにカットして耐熱試験及び耐水試験の試験片とした。
【0059】
性能評価方法・評価基準
(1)残存SM量の測定
試験片をジクロロメタンに3昼夜浸漬し、浸漬後のジクロロメタン中に含まれる抽出された残存SM量をガスクロマトグラフィーにより定量分析した。
【0060】
(2)耐熱試験
試験片を80℃±3℃の恒温器中に放置し、24時間毎に取り出して、試験片表面のクラックの発生状態を目視で確認し、以下の様に評価した。
◎:クラックの発生なし
○:目視では確認しにくい微少なクラックが発生
△:小さなクラックが発生
×:大きなクラックが発生
【0061】
(3)耐水試験
試験片を水温25℃±3℃の中に24時間浸漬した後、60℃±3℃の恒温器中で20時間乾燥し、これを1サイクルとする。1サイクル毎に試験片表面のクラックの発生状態を目視で確認し、耐熱試験と同様に評価した。
【0062】
【表1】
Figure 0003561468
【0063】
【表2】
Figure 0003561468
【0064】
【発明の効果】
本発明の複合化木材用樹脂組成物は、上述の構成よりなるので、外観や物性等において充分な性能を発揮しつつスチレンモノマー等の揮発性有機物質(VOC)の揮発量を削減した複合化木材を得ることができるため、該複合化木材用樹脂組成物を用いて得られる複合化木材は、快適な室内環境を実現するためのWPC製品として、縁甲板やフローリング等の木材の風合いを重視する内装建材等として好適に用いることができるものとなる。

Claims (3)

  1. 不飽和ポリエステル及び/又はビニルエステルと、スチレン(イ)と、(メタ)アクリレート(ロ)とを必須成分として含有する複合化木材用樹脂組成物であって、
    該(メタ)アクリレート(ロ)が、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つだけ有し、かつ、常圧下での沸点が110℃以上であり、
    該スチレン(イ)と該(メタ)アクリレート(ロ)との重量比率〔(イ)/(ロ)〕が、9/1〜2/8の範囲内である
    ことを特徴とする複合化木材用樹脂組成物。
  2. 前記不飽和ポリエステルの二重結合力価が、450以上である
    ことを特徴とする請求項1記載の複合化木材用樹脂組成物。
  3. 前記(メタ)アクリレート(ロ)が、分子中に水酸基を有する
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の複合化木材用樹脂組成物。
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