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JP3560097B2 - 光硬化性樹脂を用いた樹脂シートの製造法 - Google Patents

光硬化性樹脂を用いた樹脂シートの製造法 Download PDF

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昭彦 坂井
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  • Polymerisation Methods In General (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光硬化性樹脂を用いて樹脂シートを製造する方法に関するものであり、特に成形型から樹脂シートを取外す際の破損を防止する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
樹脂シートとしては、用途に応じて、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミドなど種々のものが用いられているが、一部の用途、例えば液晶ディスプレイ、タッチパネル、透明導電膜などには光硬化性樹脂から製造した樹脂シートを用いることが検討されている。光硬化性樹脂から樹脂シートを製造するには、最も簡単には、偏平なキャビティを有する成形型に光硬化性樹脂を注入し、成形型の外部から活性エネルギー線を照射して光硬化性樹脂を硬化させ、次いで成形型から硬化した樹脂シートを取外せばよい。しかし、この方法では、光硬化に際し樹脂シートが成形型に強固に付着してしまい、成形型から樹脂シートを取外す際に、樹脂シートが破損し易いという問題がある。
従って本発明は、光硬化性樹脂を用いて樹脂シートを製造するに際し、生成した樹脂シートを成形型から容易に取外すことのできる樹脂シートの製造法を提供しようとするものである。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、少くとも受光面が活性エネルギー線が透過可能な材料で形成されている偏平なキャビティを有する成形型に、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5,2,1,0 2,6 ]デカンジメタクリレートを含有する光硬化性樹脂を注入し、該受光面を通して活性エネルギー線を照射して光硬化性樹脂を硬化させる光硬化性樹脂を用いた樹脂シートの製造方法において、成形型のキャビティ面側にアルミニウム、珪素、およびこれらの酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種で構成される剥離し易い蒸着層を有する成形型を用いることにより、生成した樹脂シートを容易に成形型から取外すことができる。
【0004】
【発明の実施の形態】
本発明においては、成形型に光硬化性樹脂を注入し、次いでこれに活性エネルギー線を照射して樹脂を硬化させて樹脂シートを生成させること自体は、常法に従って行なえばよい。
光硬化性樹脂としては、一般的なラジカル重合開始剤の存在下に、活性エネルギー線により重合して硬化する任意のものを用いることができる。例えばラジカル反応性の(メタ)アクリレートモノマーにラジカル重合開始剤を配合した組成物、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のオリゴマーを、多官能(メタ)アクリレートモノマーに溶解したものにラジカル重合開始剤を配合した組成物などが用いられる。好ましくは、ラジカル重合開始剤に加えて、チオール基を有する化合物のような連鎖移動剤を含む組成物が用いられる。
【0005】
成形型の材料も光硬化性樹脂の成形に常用されているものを用いることができる。成形型のうち、少くとも活性エネルギー線の照射を受ける面は、活性エネルギー線に対して十分な透過性を有する材料で構成する必要がある。成形型はポリメチルメタクリレートのような透明性のよいプラスチックで構成することもできるが、通常は活性エネルギー線の照射を受けても劣化したり熱変形したりしないようにガラスで構成するのが好ましい。成形型のキャビティの深さ(=生成する樹脂シートの厚さ)は通常3mm以下、好ましくは0.1〜3mmである。0.1mmより薄い樹脂シートは機械的強度が小さく、本発明方法によっても製造が困難なことが多い。逆に3mmよりも厚い樹脂シートは、機械的強度が大きいので、本発明方法によらなくても製造が比較的容易である。本発明方法が特に有利に適用されるのは、0.1〜1mmの厚さの樹脂シートを製造する場合、すなわちキャビティの深さが0.1〜1mmの成形型を用いる場合である。
【0006】
本発明では、成形型のキャビティ面側にアルミニウム、珪素又はこれらの金属の酸化物などの1種又は数種からなる蒸着層を有する成形型を用いる。蒸着層は通常は1種類の金属又は金属化合物から構成されているが、所望ならば複数の金属ないしは複数の金属の複合酸化物や複合窒化物で構成することもできる。蒸着層の厚さは100Å以下で十分であり、通常10〜100Åである。蒸着層が厚すぎると活性エネルギー線の透過が阻害されるので好ましくない。

【0007】
蒸着層は、必ずしも成形型に強固に付着している必要は無い。すなわち、生成した樹脂シートを成形型から取外す際に、成形型と蒸着層又は蒸着層と生成した樹脂シートのいずれか一方の界面で容易に剥離が生ずるように、いずれかの界面の付着力が小さくなるように蒸着層が形成されていればよい。成形型と蒸着層との界面で剥離した場合には、蒸着層は生成した樹脂シートに付着して剥離される。
【0008】
蒸着層の形成は真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVDなど、公知の任意の方法で行なうことができるが、基体に強固に付着させる通常の蒸着の場合と異なり、基体の前処理などは通常は必要としない。すなわち蒸着層の形成は簡易な方法で行なうことができる。
本発明では、成形型のキャビティ面側に上述の蒸着層を有する成形型に光硬化性樹脂を注入し、これに活性エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる。活性エネルギー線は、重合開始剤に応じて、紫外線、電子線などから適宜の波長のものを選択して用いる。また、その照射量は光硬化性樹脂を硬化させるに十分なものでなければならない。
【0009】
本発明の好ましい一態様では、活性エネルギー線を照射して樹脂を硬化させたのち、成形型がまた高温に保たれている間に、生成した樹脂シートを成形型から取外す。これにより、成形型を冷却する過程において、樹脂シートが成形型内において破損するのを防止することができる。好ましくは、硬化反応中に樹脂シートが到達した最高温度から成形型の温度が30℃低下するまでの間に、生成した樹脂シートを成形型から取外す。そのためには成形型を所定の温度に保温しつつ、成形型から樹脂シートを取外せばよい。成形型の保温は、所定の温度に維持されている雰囲気内に成形型を保持すればよく、また熱風、遠赤外線、電熱ヒーターなどで加温してもよい。
【0010】
光硬化させた樹脂が成形型内で破損するのは、成形型と光硬化した樹脂との熱膨張率が異なることに起因していると考えられる。
すなわち成形型は前述の如く一般にガラスで構成されているが、ガラスは光硬化した樹脂よりも一般に熱膨張率が小さい。また、光硬化性樹脂の組成にもよるが、光硬化した樹脂は三次元架橋していて固く、可撓性に乏しい。従って、成形型内の光硬化性樹脂に活性エネルギー線を照射して硬化させると、生成した樹脂シート及びこれが接触している成形型は、反応熱及び活性エネルギー線により昇温して最高温度に達したのち降温するが、この降温過程において樹脂シートとこれに接している成形型との熱膨張率の差により樹脂シートに歪みが生じ、ついには樹脂シートが破損するに至る。
【0011】
一般に硬化過程で樹脂シートの到達した最高温度での、成形型と樹脂シートとの熱膨張率の差が3×10−5/℃以上の場合には、可撓性の大きい樹脂シートでない限り、温度降下が30℃よりも大きくなると、膨張率の差により成形型と樹脂シートとの界面で生ずる歪みを吸収できずに、樹脂シートが成形型内で破損し易い。
以下に実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0012】
【実施例】
実施例1
2枚のガラス平板(300×400×5mm)に、真空蒸着法により純度99.9%のアルミニウムを蒸着し、厚さ50Åの蒸着膜を形成した。このガラス平板を蒸着膜が内面となるように対向させ、その周囲に幅5mm、厚さ1mmのシリコンゴムをスペーサーとして介在させて成形型を形成した。なお、成形型の長辺の中央部のスペーサーに設けた孔から温度計を挿入し、その先端をキャビティ内に10mm突出させた。
【0013】
この成形型に、下記(1)式で示されるビス(オキシメチル)トリシクロ〔5,2,1,02,6 〕デカンジメタクリレート94重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量部、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(ルシリンTPO、BASF社製品)0.06重量部、ベンゾフェノン0.04重量部を混合して均一になるように攪拌したのち脱泡した光硬化性樹脂を注入した。
【0014】
成形型の上下に、ガラス面から400mm離して、出力80W/cmのメタルハライドランプを設置し、30分間紫外線を照射して光硬化性樹脂を硬化させた。このとき温度計は150℃に達した。
成形型を直ちに150℃に維持されているオーブンに収容し、この中で生成した樹脂シートをへらで成形型から剥がした。結果を表−1に示す。
【0015】
【化1】
Figure 0003560097
【0016】
比較例1
アルミニウムを蒸着しないガラス平板を用いた以外は、実施例1と同じ成形型を製作し、且つこれを用いて実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0017】
実施例2
実施例1と同じく厚さ50Åのアルミニウム蒸着膜を形成した2枚のガラス平板(300×400×5mm)と、幅5mm、厚さ0.3mmのシリコンゴムスペーサーとで成形型を構成した。
この成形型を用いた以外に、実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0018】
比較例2
アルミニウムを蒸着しないガラス平板を用いた以外は、実施例2と同じ成形型を製作し、且つこれを用いて実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0019】
実施例3
厚さ50Åのアルミニウム蒸着膜を形成した2枚のガラス平板(100×100×5mm)を用いた以外は実施例1と同じ成形型を製作し、且つこれを用いて実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0020】
比較例3
アルミニウムを蒸着しないガラス平板を用いた以外は、実施例3と同じ成形型を製作し、且つこれを用いて実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0021】
実施例4
実施例3と同じく厚さ50Åのアルミニウムを蒸着した2枚のガラス平板(100×100×5mm)と、幅5mm、厚さ0.3mmのシリコンゴムスペーサーとで成形型を製作した。
この成形型を用いた以外は、実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0022】
比較例4
アルミニウムを蒸着しないガラス平板を用いた以外は実施例4と同じ成形型を製作し、且つこれを用いて実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0023】
実施例5
2枚のガラス平板(300×400×5mm)に、真空蒸着法により純度99.9%の一酸化珪素を蒸着し、厚さ50Åの蒸着膜を形成した。
このガラス平板を用いた以外は実施例1と同様にして成形型を製作し、且つこれを用いて実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0024】
実施例6
実施例5と同じく厚さ50Åの一酸化珪素蒸着膜を形成した2枚のガラス平板(300×400×5mm)と、幅5mm、厚さ0.3mmのシリコンゴムスペーサーとで成形型を製作した。
この成形型を用いた以外は、実施例1と全く同様にして樹脂シートを製造した。結果を表−1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003560097
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、光硬化性樹脂からシートを製造するに際し、シートの破損を回避して薄い大きなシートでも容易に製造することができる。

Claims (3)

  1. 少くとも受光面が活性エネルギー線が透過可能な材料で形成されている偏平なキャビティを有する成形型に、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5,2,1,0 2,6 ]デカンジメタクリレートを含有する光硬化性樹脂を注入し、該受光面を通して活性エネルギー線を照射して光硬化性樹脂を硬化させる光硬化性樹脂を用いた樹脂シートの製造方法において、成形型のキャビティ面側にアルミニウム、珪素、およびこれらの酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種で構成される剥離し易い蒸着層を有する成形型を用いることを特徴とする方法。
  2. シートの厚さが0.1〜3mmであることを特徴とする請求項に記載の方法。
  3. 成形型が、硬化後の光硬化性樹脂と成形型との熱膨張率の差が3×10 -5 /℃以上となるものであって、成形型の温度が、硬化過程における樹脂の最高温度よりも30℃よりも大きく降下しない間に、成形型から生成した樹脂シートを取外すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
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