JP3558150B2 - プレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物及びそれを用いたプレコート鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性に優れた樹脂層を形成することができ、かつ厚膜塗装が可能なプレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を用いた、主として建材(内装材及び外装材)として使用されるプレコート鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建材用に用いられているプレコート鋼板には、ポリエステル系、シリコンポリエステル系、ふっ素系、塩化ビニル系等の樹脂が使用されている。その中で、塩化ビニル樹脂(PVC)は、加工性に優れており、しかも、通常は200μm程度の非常に厚い層をなすように被覆されていて、施工時等、材料を取り扱う際に生じやすい傷が素地まで達しにくいため、内装材及び外装材として広く使用されている。
【0003】
しかし、近年、PVCが有している有害性が指摘されている。すなわち、廃棄されたPVCは、一般に焼却処理されるが、焼却時にダイオキシンや塩素ガス等の有害ガスを発生する。
【0004】
このPVCに代わる樹脂(プレコート用の樹脂)としては、加工性に優れ、かつ、材料を取扱う際に傷が生じても鋼板の素地にまで損傷を与えることがないように、厚膜塗装が可能なことが必要である。
【0005】
この条件を満たす樹脂系としては、イソシアネート化合物で架橋させるポリウレタン系の樹脂が考えられ、特公平5−73155号公報には、ポリエステル樹脂とポリイソシアネート化合物を重縮合したウレタン結合を含んだ樹脂と、ブロックイソシアネート化合物からなるプレコート鋼板用の樹脂組成物が開示されている。しかし、この樹脂組成物を用いたプレコート鋼板は、加工性が不十分であることに加え、屋根、壁等、外装材としての使用を考えると、耐候性等に問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、加工性、耐候性等に優れた樹脂層を形成することができ、かつ厚膜塗装が可能で、しかも、廃棄後、焼却処理するに際して、環境への悪影響のないプレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物、及びこの樹脂組成物を用いたプレコート鋼板を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、下塗り塗料用の樹脂組成物として、所定の条件を満たすアミン系の樹脂及びブロックイソシアネート化合物を適切に配合することにより得られる樹脂組成物を用いれば上記目的を達成することができることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0008】
本発明の要旨は、下記(1)の塗料用樹脂組成物、ならびに、これら樹脂組成物を用いた(2)及び(3)のプレコート鋼板にある。
【0009】
(1)下記のAとBとが、アミノ基に対するイソシアネート基の比が0.6〜2.0の範囲に入るように配合されていることを特徴とするプレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物。
【0010】
A:下記(1)の化学式で表される3、3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジ シクロヘキシルメタン。
【0011】
【化1】
【0012】
B:ブロック剤がε−カプロラクタムで、ブロックNCOの含有率が2.0〜9.0重量%であり、数平均分子量が1000〜4000であるトリレンジイソシアネート化合物のブロック体。
【0013】
(2)化成処理が施された表面処理鋼板を母材とするプレコート鋼板であって、下塗り樹脂層と上塗り樹脂層を有し、下塗り樹脂層が上記(1)に記載の樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであることを特徴とするプレコート鋼板。
【0014】
(3)化成処理が施された表面処理鋼板を母材とするプレコート鋼板であって、下塗り樹脂層と上塗り樹脂層を有し、下塗り樹脂層が上記(1)に記載の樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであり、上塗り樹脂層が下記の上塗り塗料用樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであることを特徴とするプレコート鋼板。
下記のCとDとが、水酸基に対するイソシアネート基の比が0.6〜2.0の範囲に入るように配合されている上塗り塗料用樹脂組成物。
C:重量平均分子量が8000〜15000、水酸基含有率が1.0〜4.0重量%で、ガラス転移温度が−30〜0℃であるポリエステル樹脂。
D:ブロックNCOの含有率が6〜10重量%である水素添加ジフェニルメタンジイイソシアネート化合物のブロック体がブロックイソシアネート化合物中に20〜80重量%配合されているブロックイソシアネート化合物。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明(上記(1)〜(3)の発明)について詳細に説明する。
【0016】
上記(1)の発明は、プレコートメタルの下塗り塗料用の樹脂組成物で、3、3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンとトリレンジイソシアネート化合物のブロック体とが、イソシアネート基/アミノ基の比(モル比)が0.6〜2.0の範囲に入るように配合された樹脂組成物である。
【0017】
トリレンジイソシアネート化合物のブロック体を生じさせるブロック剤は、塗料の1液化を可能ならしめるために必要であるが、解離温度が170℃であるε−カプロラクタムを使用することが必要である。ブロック剤として、解離温度が170℃よりも低い、例えばメチルエチルケトンオキシム(MEKオキシム、解離温度140℃)、エタノール(解離温度140℃)、クレゾール(解離温度120℃)、ジエチルマロネート(解離温度120℃)等が使用された場合は、この樹脂組成物を塗装した後の焼付時にワキが発生しやすく、厚膜塗装ができなくなる。また、解離温度が170℃よりも高いフェノール等が使用された場合は、焼付温度を非常に高くしたり、焼付時間を非常に長くしたりしなければならず、生産性が著しく低下する。
【0018】
ブロックNCOの含有率(ブロック剤によりブロックされたNCO基のイソシアネート化合物中における重量%で、以下、単にブロックNCOという)は、2.0〜9.0重量%であることが必要である。ブロックNCOが2.0重量%よりも少なければ、この樹脂組成物を用いて形成される樹脂層の耐薬品性が低下し、9.0重量%より多ければ加工性が低下する。望ましくは、3.0〜5.0重量%である。
【0019】
上記ブロック体の数平均分子量は1000〜4000であることが必要である。数平均分子量が1000よりも小さければ、この樹脂組成物により形成される皮膜の加工性が低下し、4000よりも大きければ耐薬品性が低下する。望ましくは、1500〜3000である。なお、ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミッションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線を使用して測定したものである。
【0020】
イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート化合物を用いることとしたのは、他の、例えばジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物では、加工性、耐薬品性等の性能バランスが良好な樹脂層を形成することができる樹脂組成物が得られないからである。
【0021】
また、トリレンジイソシアネート化合物の単量体に限らず、トリレンジイソシアネート化合物のプレポリマー、アダクト(トリメチロールプロパン等の付加体)、イソシアヌレート体、及びビウレットと呼ばれる化学構造をもったもの等のイソシアネート化合物も同様に使用することができる。これらのイソシアネート化合物は、2種類以上を混合して使用しても差し支えない。
【0022】
3、3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(A)とトリレンジイソシアネート化合物のブロック体(B)との配合比率は、イソシアネート基/アミノ基の比、すなわち、A中のアミノ基に対するB中のイソシアネート基の比が0.6〜2.0の範囲に入るようにする。イソシアネート基/アミノ基の比が0.6未満であると、この樹脂組成物により形成される樹脂層の耐薬品性が低下し、2.0を超えると加工性が低下する。望ましくは、0.8〜1.2とする。
【0023】
なお、上記のAとBとを熱硬化させるに際し、必要に応じて有機スズ化合物等の触媒、あるいは硬化促進剤を適宜添加してもよい。また、必要に応じシランカップリング剤、消泡剤、レベリング剤等の薬剤や酸化チタンをはじめ着色顔料等添加することができる。
【0024】
この樹脂組成物をプレコートメタルの下塗り塗料として用いるに際しては、樹脂層の厚さ(乾燥膜厚)を20〜50μmとするのが好適である。望ましくは、30〜45μmである。
【0025】
上記のプレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物を用いれば、加工性、耐薬品性、及び耐候性に優れた下塗り樹脂層を形成することができ、かつ上記のように厚膜塗装が可能である。しかも、廃棄後、焼却処理するに際して、環境に悪影響を及ぼすこともない。
【0026】
上記(2)の発明は、表面処理鋼板を母材とし、その上に下塗り樹脂層と上塗り樹脂層を有するプレコート鋼板であって、下塗り樹脂層が上記(1)の樹脂組成物からなる塗料を用いて形成されたものであるプレコート鋼板である。
【0027】
また、前記(3)の発明は、同じく下塗り樹脂層と上塗り樹脂層を有するプレコート鋼板であって、下塗り樹脂層が前記(1)の樹脂組成物からなる塗料を用いて形成されたものであり、上塗り樹脂層が下記の上塗り塗料用樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであるプレコート鋼板である。
【0028】
下記のCとDとが、水酸基に対するイソシアネート基の比が0.6〜2.0の範囲に入るように配合されている上塗り塗料用樹脂組成物。
C:重量平均分子量が8000〜15000、水酸基含有率が1.0〜4.0重量%で、ガラス転移温度が−30〜0℃であるポリエステル樹脂。
D:ブロックNCOの含有率が6〜10重量%である水素添加ジフェニルメタンジイイソシアネート化合物のブロック体がブロックイソシアネート化合物中に20〜80重量%配合されているブロックイソシアネート化合物。
【0029】
上記の上塗り塗料用樹脂組成物において、ポリエステル樹脂の重量平均分子量は8000〜15000とする。重量平均分子量が8000未満では、この樹脂組成物を用いて形成される樹脂層の加工性が低下し、15000を超えると樹脂層の耐候性が低下する。望ましくは、10000〜13000である。なお、ここでいう重量平均分子量とは、前記の数平均分子量の場合と同様に、ゲルパーミッションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線を使用して測定したものである。
【0030】
ポリエステル樹脂の水酸基含有率は、1.0〜4.0重量%とする。水酸基の含有率が1.0重量%よりも少なければ、この樹脂組成物により形成される樹脂層の耐候性が劣化し、4.0重量%を超えると加工性が低下する。望ましくは、2.0〜3.0重量%である。
【0031】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は−30〜0℃とする。ガラス転移温度が−30℃未満であるとこの樹脂組成物により形成される樹脂層の耐候性が低下し、0℃を超えると加工性が低下する。望ましくは−25〜−5℃である。
【0032】
ポリエステル樹脂は、一般に1種以上の多価カルボン酸もしくはそのエステルを形成することができる誘導体と、1種以上の多価アルコールもしくはそのエステルを形成することができる誘導体との縮重合により製造される。
【0033】
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸などの芳香族、脂肪族もしくは環状脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0034】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロパンギオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ヒドロキノン、スチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族、環状脂肪族もしくは芳香族多価アルコールが挙げられる。
【0034】
一方、ブロックイソシアネート化合物としては、ブロックNCOが6〜10重量%である水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート化合物のブロック体を使用する。ブロックNCOが6重量%未満であると、この樹脂組成物により形成される樹脂層の耐候性が低下し、10重量%を超えると加工性が低下する。望ましくは8.0〜9.5重量%である。なお、ここでいう「水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート」とは、ジフェニルメタンジイソシアネートに含まれる2つのベンゼン環を水素添加することによりシクロヘキサン環にしたものである。
【0035】
上記の水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート化合物のブロック体は、ブロックイソシアネート化合物中に20〜80重量%含まれていればよい。20重量%よりも少なければこの樹脂組成物により形成される樹脂層の加工性が低下し、80重量%より多くてもコスト高になるだけである。望ましくは、30〜50重量%である。なお、ブロックイソシアネート化合物中のその他の、つまり、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート化合物のブロック体以外のブロックイソシアネート化合物としては、住友バイエルウレタン社製デスモジュールBL4265、スミジュールBL3175等が挙げられる。
【0036】
また、上記のブロックイソシアネート化合物は、単量体に限らず、そのプレポリマー、アダクト(トリメチロールプロパン等の付加体)、イソシアヌレート体、及びビウレットと呼ばれる化学構造をもったもの等のイソシアネート化合物も同様に使用することができる。
【0037】
ポリエステル樹脂(C)とブロックイソシアネート化合物(D)との配合比率は、イソシアネート基/水酸基の比、すなわち、C中の水酸基に対するD中のイソシアネート基の比が0.6〜2.0の範囲に入るようにする。イソシアネート基/水酸基の比が0.6未満であると、この樹脂組成物により形成される樹脂層の耐候性が低下し、2.0を超えると加工性が低下する。望ましくは、0.8〜1.2とする。
【0038】
なお、上記のCとDとを熱硬化させるに際し、必要に応じて有機スズ化合物等の触媒、あるいは硬化促進剤を適宜添加してもよい。また、必要に応じシランカップリング剤、消泡剤、レベリング剤等の薬剤や酸化チタンをはじめ着色顔料等添加することができる。
【0039】
上記の上塗り塗料用樹脂組成物を用いれば、加工性、耐薬品性、及び耐候性に優れた上塗り樹脂層を形成することができる。また、前記の下塗り塗料と同様に、廃棄後、焼却処理するに際して、環境に悪影響を及ぼすこともない。
【0040】
上記(2)または(3)のプレコート鋼板に使用される表面処理鋼板は特に限定されず、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−5%アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−55%アルミニウムめっき鋼板、電気めっき鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等のめっき鋼板を使用することができる。
【0041】
これらの表面処理鋼板は化成処理が施されたものであるが、この処理についても特に限定されない。りん酸亜鉛処理、クロメート処理等、通常用いられている方法により処理されたものであればよい。
【0042】
この化成処理が施された表面処理鋼板に、上記(1)の樹脂組成物からなる塗料を下塗り塗料として塗布、焼き付けし、さらに上塗り塗料を塗布、焼き付けすることにより、(2)の発明のプレコート鋼板を製造することができる。上塗り塗料としては、従来公知のものを使用すればよい。
【0043】
下塗り塗料の調製は、上記(1)の樹脂組成物を、通常用いられるシクロヘキサノン、キシレン等の溶剤と適宜混合すればよい。
【0044】
塗布方法、焼き付け(加熱)方法についても特に限定はない。塗布方法としては、ロールコーター、カーテンフローコーター等の方法が適用でき、加熱方法としては、熱風、インダクションヒーター等による方法を用いることができる。加熱は、180〜250℃の温度域で行えばよい。
【0045】
この(2)のプレコート鋼板は、下塗り樹脂層が上記(1)の樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであることから、加工性、耐薬品性、及び耐候性に優れており、また、樹脂層が厚いので、施工時等、材料を取り扱う際に傷が生じても素地まで達しにくく、内装材及び外装材として好適である。
【0046】
化成処理が施された表面処理鋼板に、上記(1)の樹脂組成物からなる塗料を下塗り塗料として塗布、焼き付けし、さらにその上に、先に述べた特性を備えるポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とが、イソシアネート基/水酸基の比(モル比)が0.6〜2.0の範囲に入るように配合された樹脂組成物からなる塗料を上塗り塗料として塗布、焼き付けすることにより、(3)の発明のプレコート鋼板を製造することができる。
【0047】
塗料の調製は、下塗り塗料、上塗り塗料のいずれについても、(2)のプレコート鋼板の場合と同様、通常用いられるシクロヘキサノン、キシレン等の溶剤と混合すればよい。
【0048】
塗布方法、焼き付け(加熱)方法についても特に限定はなく、加熱温度についても、(2)のプレコート鋼板の場合と同様、180〜250℃とすればよい。
【0049】
この(3)のプレコート鋼板は、下塗り樹脂層及び上塗り樹脂層がそれぞれ上記(1)の樹脂組成物及び先に述べた特性を備えるポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物を適切に配合することにより得られた樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであるため、加工性、耐薬品性、及び耐候性に一層優れた性能を発揮する。例えば、(2)のプレコート鋼板では、20℃まででしか0T(密着曲げ試験)の加工性が得られないが、(3)のプレコート鋼板では、0℃においても加工性0Tがほぼ達成できる。また、上塗り樹脂層が上記の特性を備 えるポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物を適切に配合することにより得られた樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであるため、特に優れた耐候性が付与される。
【0050】
【実施例】
母材として、厚さ0.6mmの溶融亜鉛めっき鋼板(JIS−G3302、Z27相当材)を用い、その上にクロメート処理(Cr付着量30mg/m2 )を施し、その後、以下に示すように調製した下塗り塗料及び上塗り塗料を塗布、焼き付けしてプレコート鋼板を得た。なお、焼き付けは、下塗り塗料については、鋼板到達温度220℃で60秒間とし、上塗り塗料については、鋼板到達温度240℃で70秒間とした。
【0051】
得られたプレコート鋼板について、次の評価試験を行った。
【0052】
[加工性]
25mm×300mmの試験片を切り出し、20℃及び0℃で評価しようとする面を外側にして密着曲げを行い、曲げ部におけるクラックの有無を10倍ルーペで観察し、クラックが認められない最小の板挟み数で評価した。0Tまたは1Tであれば、良好とした。
【0053】
[耐薬品性]
5%の硫酸溶液及び5%の水酸化ナトリウム溶液を試験片表面のそれぞれ別の箇所に滴下し、20℃で24時間放置した後の塗膜の外観を観察し、クラック及びブリスターの発生の有無を評価した。硫酸溶液及び水酸化ナトリウム溶液のいずれについても、クラック及び/又はブリスターの発生が認められなかった場合、良好とした。
【0054】
[耐候性]
サンシャインカーボンアークウェザーメーターを用い、ブラックパネル温度を63℃、試験片表面への水のスプレー時間を12分/60分として、3000時間経過後の塗膜の光沢度を測定した。その時の光沢保持率により下記の5段階で評価し、◎または○で有れば良好とした。
【0055】
◎:光沢保持率85%以上
○:光沢保持率80%以上85%未満
△:光沢保持率70%以上80%未満
×:光沢保持率60%以上70%未満
××:光沢保持率60%未満
最初に、本発明(上記(1)の発明)の下塗り用樹脂組成物からなる下塗り塗料を用いた、塗装膜厚(乾燥膜厚)の異なるプレコート鋼板の塗装外観を評価した。
【0056】
まず、上記(1)の化学式で表される3、3′−ジメチル−4、4′−ジアミノジシクロヘキシルメタンとブロックイソシアネート化合物を、イソシアネート基/アミノ基の比が1.0となるように配合した樹脂組成物からなる下塗り塗料を調製した。用いたブロックイソシアネート化合物は、ブロックNCOが6.0%で、数平均分子量が15000のものである。また、ブロック剤には、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、またはジエチルマロネートを使用した。
【0056】
これらの下塗り塗料を前記のクロメート処理を施した母材表面に乾燥膜厚を10〜50μmの範囲で変えて塗布した後、前記の条件で焼き付けし、プレコート鋼板とした。
【0057】
塗装外観の評価結果を表1に示す。この結果から明らかなように、ブロック剤としてε−カプロラクタムを使用すれば、膜厚50μmまでの塗装を一度に行うことができる。これに対して、メチルエチルケトンオキシムを使用した場合は、膜厚30μmで、また、ジエチルマロネートを使用した場合は膜厚20μmでワキが発生してしまい、厚膜塗装ができなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
次に、本発明(上記(1)の発明)の下塗り用樹脂組成物からなる下塗り塗料を用いたプレコート鋼板を作製し、性能評価試験を行った。
【0060】
表2に示す下塗り用樹脂組成物(B− 1〜B−13)からなる塗料を調製し、この下塗り塗料を前記の母材表面に乾燥膜厚が40μmとなるように塗布、焼き付けして、下塗り樹脂層を形成させた。表2に示したB−1〜B−7が本発明の下塗り用樹脂組成物である。
【0061】
その後、ポリエステル樹脂(東洋紡社製バイロン630、数平均分子量:20000、ガラス転移温度:7℃)とメラミン樹脂(三井サイアナミッド社製サイメル303)を重量比で前者80/後者20の割合で配合した樹脂組成物からなる上塗り塗料を塗布、焼き付けし、乾燥膜厚が20μmの上塗り樹脂層を設けてプレコート鋼板とした。
【0062】
このプレコート鋼板について性能評価試験を行った。
【0063】
その結果を表3に示す。本発明の下塗り用樹脂組成物からなる塗料を用いたプレコート鋼板(実施例2〜8)は、ワキの発生なく40μmの厚膜塗装することができ、加工性、及び耐薬品性にも優れていた。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
次に、本発明の下塗り用樹脂組成物(上記(1)の発明)からなる下塗り塗料及びポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物を配合して得られた上塗り用樹脂組成物からなる上塗り塗料を用いたプレコート鋼板を作製し、性能評価試験を行った。
【0067】
下塗り塗料には、前記の実施例3で用いたB−2の下塗り用樹脂組成物からなる塗料を用いた。
【0068】
上塗り塗料に使用した樹脂組成物のうち、ポリエステル樹脂を表4に、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート化合物のブロック体を表5に示す。表4のC−1〜C−7が先に述べた特性を備えるポリエステル樹脂であり、表5のd−1〜d−3が同じく先に述べた特性を備える水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート化合物である。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
また、表6に、上塗り塗料に使用した樹脂組成物のうちのブロックイソシアネート化合物の配合を示す。すなわち、表5に示した水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート化合物のブロック体と他のブロックイソシアネート化合物との配合割合である。なお、他のブロックイソシアネート化合物としては、住友バイエルウレタン社製デスモジュールBL4265(IPDIタイプ)を、メチルエチルケトンオキシムをブロック剤として、ブロックNCOが8.1%となるようにブロックしたものを用いた。表6のD−1〜D−4が先に述べた特性を備えるブロックイソシアネート化合物である。
【0072】
【表6】
【0073】
上記の下塗り塗料及び上塗り塗料を用いて作製したプレコート鋼板を表7に示す。表7のNo.1〜12が本発明(上記(3)の発明)に規定する条件を満たすプレコート鋼板である。
【0074】
【表7】
【0075】
これらのプレコート鋼板について行った性能評価試験を表8に示す。この結果から明らかなように、本発明のプレコート鋼板(実施例No.9〜20)では、20℃での加工性は全て0Tであり、0℃での加工性も0〜1Tと非常に良好な結果が得られた。また、耐候性及び耐薬品性も良好であった。
【0076】
【表8】
【0077】
【発明の効果】
本発明のプレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物を用いれば、加工性、耐薬品性、及び耐候性に優れた下塗り樹脂層を形成することができ、かつ厚膜塗装が可能である。また、上塗り塗料として先に述べた特性を備えるポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物とが、所定の割合で配合された樹脂組成物を用いれば、同様の性能を有する上塗り樹脂層を形成することが可能である。これら樹脂組成物を用いて得られる本発明のプレコート鋼板は、加工性、耐薬品性、及び耐候性に優れ、廃棄後、焼却処理するに際して、環境に悪影響を及ぼすこともなく、内装用及び外装用の建材として好適である。
Claims (3)
- 化成処理が施された表面処理鋼板を母材とするプレコート鋼板であって、下塗り樹脂層と上塗り樹脂層を有し、下塗り樹脂層が請求項1に記載の樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであることを特徴とするプレコート鋼板。
- 化成処理が施された表面処理鋼板を母材とするプレコート鋼板であって、下塗り樹脂層と上塗り樹脂層を有し、下塗り樹脂層が請求項1に記載の樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであり、上塗り樹脂層が下記の樹脂組成物からなる塗料を硬化させたものであることを特徴とするプレコート鋼板。
下記のCとDとが、水酸基に対するイソシアネート基の比が0.6〜2.0の範囲に入るように配合されている上塗り塗料用樹脂組成物。
C:重量平均分子量が8000〜15000、水酸基含有率が1.0〜4.0重量%で、ガラス転移温度が−30〜0℃であるポリエステル樹脂。
D:ブロックNCOの含有率が6〜10重量%である水素添加ジフェニルメタンジイイソシアネート化合物のブロック体がブロックイソシアネート化合物中に20〜80重量%配合されているブロックイソシアネート化合物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28779796A JP3558150B2 (ja) | 1996-10-30 | 1996-10-30 | プレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物及びそれを用いたプレコート鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP28779796A JP3558150B2 (ja) | 1996-10-30 | 1996-10-30 | プレコートメタルの下塗り塗料用樹脂組成物及びそれを用いたプレコート鋼板 |
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JPH10130572A JPH10130572A (ja) | 1998-05-19 |
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1996
- 1996-10-30 JP JP28779796A patent/JP3558150B2/ja not_active Expired - Lifetime
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