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JP3557916B2 - インクジェット用水性インク及びインクジェット記録方法並びに該インクの製造方法 - Google Patents

インクジェット用水性インク及びインクジェット記録方法並びに該インクの製造方法 Download PDF

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JP3557916B2
JP3557916B2 JP26820098A JP26820098A JP3557916B2 JP 3557916 B2 JP3557916 B2 JP 3557916B2 JP 26820098 A JP26820098 A JP 26820098A JP 26820098 A JP26820098 A JP 26820098A JP 3557916 B2 JP3557916 B2 JP 3557916B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分として成るインクジェット用水性インク及びそのインクを微細な液滴として飛翔させて記録を行うインクジェット記録方法並びに該インクの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、例えば、静電吸引方法、圧電素子を用いてインクに機械的振動又は変位を与える方法、インクを加熱することにより気泡を発生させ、この時に発生する圧力を利用する方法等、種々のインク噴射方法により、インク滴を形成し、これらの一部又は全部を紙等の被記録材に付着させて記録を行うものである。従来、このようなインクジェット記録方法に使用するインクとして、水を主溶剤として使用した水性インクの開発が盛んに行われている。
【0003】
インクジェット用水性インクには、記録装置のヘッド先端部やインク流路内で目詰まりを起こさず、安定した噴射が可能であること、鮮明な色調で十分に高い濃度の記録画像を与えること、記録物の耐水性、耐擦性に優れていること等の性能が要求される。
【0004】
インクジェット用水性インクの着色剤としては一般に染料もしくは顔料が用いられている。
【0005】
顔料は染料よりも耐水性に優れているが、顔料はインク媒体に溶解しているのではなく分散しているので、液安定性に劣り、長期間保存や水分蒸発によって顔料の分散が不安定となり凝集が起こる。このため、顔料インクは染料インクと比べると、インクジェットプリンターのヘッドの先端部やインク流路内で目詰まりを起こしやすい。また、顔料は記録物上で粒子として存在するため、耐擦性にも問題を有している。そのためインクジェットプリンター用として製品化されている例は少なく、開発段階の物が多い。それに対して水溶性の染料は顔料と比べて耐水性は劣るものの、インク媒体中に完全に溶解するため、染料インクはインクジェットプリンターのヘッドの先端部やインク流路内で目詰まりしにくく、鮮明な色調で高濃度の記録物を得ることが比較的容易に可能である。そのためインクジェットプリンター用として水溶性染料を着色剤として用いたインクジェット用水性インクの製品化の例は多い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のインクジェット用水性インクでは、インクジェット記録における十分な噴射安定性と記録物の鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性を同時に満足している例はない。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インクジェット記録における十分な噴射安定性と記録物の鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性を同時に満足するインクジェット用水性インク及びインクジェット記録方法並びに該インクの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1記載のインクジェット用水性インクは、着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであり、かつ前記水溶性着色樹脂が、前記水溶性樹脂を60℃以上の温度に加熱して低粘度の液体とした状態で該水溶性樹脂に前記塩基性染料を混合攪拌し常温まで冷却して得られたものであることを特徴とする。また、請求項2記載のインクジェット用水性インクは、前記水溶性着色樹脂が、不揮発性有機溶剤を60℃以上の温度に加熱した状態で該溶剤中に前記水溶性樹脂と前記塩基性染料を混合攪拌し常温まで冷却して水溶性着色樹脂の不揮発性有機溶剤溶液として得られたものであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載のインクジェット用水性インクは、該水溶性着色樹脂の該水溶性樹脂の分子量が10000以下であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載のインクジェット用水性インクは、該水溶性着色樹脂中の該水溶性樹脂と該塩基性染料の配合比が10:1から1:1の範囲内であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載のインクジェット用水性インクは、該水溶性着色樹脂のインク中の含有量が1から10重量%であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載のインクジェット記録方法は、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用水性インクを使用して記録を行うことを特徴とする。
また、請求項7記載のインクジェット用水性インクの製造方法は、水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分とし、前記着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、かつ前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであるインクジェット用水性インクの製造方法において、前記水溶性樹脂を60℃以上の温度に加熱して低粘度の液体とし、該水溶性樹脂の液体中に前記塩基性染料を混合攪拌した後、常温まで冷却して前記水溶性着色樹脂を得ることを特徴とする。また、請求項8記載のインクジェット用水性インクの製造方法は、水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分とし、前記着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、かつ前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであるインクジェット用水性インクの製造方法において、不揮発性有機溶剤を60℃以上の温度に加熱し、該加熱溶剤中に前記水溶性樹脂と前記塩基性染料を混合攪拌した後、常温まで冷却して前記水溶性着色樹脂の不揮発性有機溶剤溶液を得ることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明における着色剤主成分の水溶性着色樹脂は、水溶性樹脂を塩基性染料によって均一に着色処理したものである。該水溶性着色樹脂をインクジェット用水性インクの着色剤として使用することにより、単に染料を着色剤として使用した場合と比べて、極めて優れた耐水性を得ることが可能となる。また、該水溶性着色樹脂は、インク中では染料を着色剤として使用した場合と同様に完全に溶解しているため、安定噴射を阻害することなく、鮮明性、高濃度記録、耐擦性に優れた記録を得ることが可能である。
【0015】
水溶性着色樹脂により、優れた耐水性が得られる理由は以下のように考えられる。
【0016】
本発明の水溶性着色樹脂はその着色過程において、水溶性樹脂と塩基性染料の弱い結合を形成し、インク中に溶解混合された後においても、この結合は微小な会合体として維持される。さらに、インクジェット記録により記録された記録物上においてもこの結合は維持される。すなわち、記録物上の塩基性染料は、水溶性樹脂との結合により保持され、記録物が乾燥した後に水が供給されても水溶性樹脂の水中への拡散速度の遅さに起因して、簡単に水に流れることはない。
【0017】
このように、水溶性着色樹脂の使用により、安定噴射性と鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性に優れたインクジェット用水性インク及びインクジェット記録方法が達成される。
【0018】
本発明の該水溶性樹脂としては、水に対して5%もしくはそれ以上の溶解度を示し、且つ、水への溶解速度が遅く、且つ、その水溶液が著しい増粘を起こさないものが好適に使用される。具体的には、5,5’−ジメチルヒダントインとホルムアルデヒドの共重合により得られる5,5’−ジメチルヒダントインホルムアルデヒド樹脂、または1−メチロール−5,5’−ジメチルヒダントインの縮重合により得られる1−メチロール−5,5’−ジメチルヒダントイン樹脂、またはビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドン、あるいはこれらの誘導体類が挙げられるが、本発明の効果が得られる限りにおいて、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂は2種類以上を混合して使用することも可能である。また、該水溶性樹脂の分子量は10000以下であることがさらに望ましい。
【0019】
本発明の該塩基性染料としては、各種市販品を使用することができる。具体的には、カラーインデックスナンバーベーシックレッド1,1:1,2,12,13,14,18,22,27,28,29,34,38,39,46,46:1,67,69,70、カラーインデックスナンバーベーシックバイオレット1,2,3,4,5,7,8,10,11,11:1,20,33、カラーインデックスナンバーベーシックブルー3,6,7,9,11,12,16,17,24,26,41,47,66、カラーインデックスナンバーベーシックグリーン1,4,5、カラーインデックスナンバーベーシックイエロー1,11,19,21,24,25,28,29,36,45,51,67,73、カラーインデックスナンバーベーシックオレンジ14,21,22,32、カラーインデックスナンバーベーシックブラウン1,4等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの塩基性染料は2種類以上を混合して使用することも可能であり、その場合には単独では得られない所望の色を得ることも可能となる。また、該塩基性染料は市販品の状態では硫酸ナトリウム等の無機不純物を多量に含む場合があるため、必要に応じてイオン交換樹脂による精製処理や、濾過による精製処理を行っても良い。不純物が多い場合、着色過程における結合が阻害されたり、十分な着色が得られなかったり、ヘッド先端部で析出し目詰まりの原因となる等の弊害が起こる場合がある。このような点から、該塩基性染料の純度は90%以上が望ましく、95%以上であることがさらに望ましい。
【0020】
該水溶性着色樹脂中の水溶性樹脂と塩基性染料の配合比は10:1から1:1の範囲内であることが望ましい。塩基性染料の配合比が前記比より少ないと十分な着色力が得られず、多いと水溶性樹脂との結合による効果が十分に得られなくなる。
【0021】
本発明の該水溶性着色樹脂は以下に示すいづれかの方法によって調製することが可能である。
1)水溶性樹脂を60℃以上の温度に加熱して低粘度の液体とし、該液体中に塩基性染料を加え、均一になるまで混合攪拌した後、常温まで冷却して水溶性着色樹脂を得る。
2)インク成分である不揮発性有機溶剤を60℃以上の温度に加熱し、該加熱溶剤中に水溶性樹脂と塩基性染料を加えて均一になるまで混合攪拌した後、常温まで冷却して水溶性着色樹脂の不揮発性有機溶剤溶液を得る。
【0022】
以上のようにして得られた水溶性着色樹脂のインクジェット用水性インクへの着色剤としての望ましい含有量は、インク全量に対して1〜10重量%、好ましくは2〜6重量%である。もし、1重量%未満であると、十分な着色力が得られず、鮮明で高濃度の記録が得られない。また、10重量%を越えると必要以上に増粘し、噴射安定性が阻害され、記録紙上での乾燥が極端に遅くなる等の問題を生じる。
【0023】
本発明において使用される溶媒は水と水溶性有機溶剤の混合溶媒である。
【0024】
水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが望ましい。この時の水の含有量は、所望されるインクの特性に依存して広い範囲で決定されるが、インクの全重量に対して一般に10〜90重量%、好ましくは40〜80重量%の範囲内である。
【0025】
また、水溶性有機溶剤は主としてインクジェットヘッドの先端部におけるインクの乾燥防止を目的として使用され、従って揮発性の低い溶剤を選択することが望ましい。このような水溶性有機溶剤としては、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いることも可能である。
【0026】
インク中の上記水溶性有機溶剤の含有量は、インク全量に対して重量%で5〜50重量%、好ましくは7〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%である。もし、5重量%未満であると、湿潤作用が不十分となり、目詰まり等の問題が生じる。また、50重量%を越えると、インクが必要以上に増粘し、噴射不能となったり、記録紙上での乾燥が極端に遅くなる等の問題を生じる。
【0027】
本発明の及び本発明に使用するインクの基本構成は以上の通りであるが、その他従来公知の各種浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐防カビ剤等を必要に応じて添加することができる。
【0028】
上記浸透剤としては、20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下の多価アルコールモノアルキルエーテルを使用することが望ましい。該多価アルコールモノアルキルエーテルは、記録紙へのインク浸透速度を効果的に速めることにより、インクの紙面上での速乾性を向上させ、記録紙上での遅乾性に起因するブリーディング(異なる色の境界でのにじみ)を防止し、且つ、浸透に伴うフェザリング(紙の繊維に沿ったヒゲ状のにじみ)を起こし難いものが好適に使用される。
【0029】
上記多価アルコールモノアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(20℃での蒸気圧0.1mmHg)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(20℃での蒸気圧0.01mmHg)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(20℃での蒸気圧0.01mmHg)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃での蒸気圧0.06mmHg)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(20℃での蒸気圧0.02mmHg)、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル(20℃での蒸気圧0.05mmHg)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(20℃での蒸気圧0.05mmHg)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(20℃での蒸気圧0.01mmHg未満)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(20℃での蒸気圧0.01mmHg未満)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(20℃での蒸気圧0.02mmHg)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(20℃での蒸気圧0.01mmHg未満)等が挙げられる。
【0030】
一般的な多価アルコールアルキルエーテルは独特の臭気を有しており、その蒸気圧が20℃で0.1mmHgより高いものをインクに用いると、インク自体も高臭気性となり、一般オフィス、家庭で使用するには大きな問題となる。しかしながら、上記に例示した多価アルコールモノアルキルエーテルは20℃での蒸気圧が0.1mmHg以下と低く、インクに使用しても低臭気性であり、前述の問題はない。
【0031】
さらに、上記多価アルコールアルキルエーテルの中でも、20℃での蒸気圧が0.01mmHg未満のものは、特に臭気が少なく、好適に使用することができる。インク中の上記多価アルコールアルキルエーテルの含有量は、インク全量に対して重量%で3〜15重量%が好ましい。もし、3重量%未満であると、インクの記録紙への浸透速度が遅く、乾燥時間、ブリーディングに問題を生じる。また、15重量%を越えると、インクの記録紙への浸透が激しくなり、記録紙の裏までインクが達してしまったり、フェザリングにも問題を生じる。
【0032】
また、浸透性、乾燥性の制御を目的として、エチルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール等の1価アルコールを必要に応じて添加してもよい。
【0033】
また、記録液を帯電させるタイプのインクジェット記録方法に使用されるインクを調合する場合には、塩化リチウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム等の無機塩類等の比抵抗調整剤が添加される。
【0034】
尚、熱エネルギーの作用によってインクを噴射させるタイプのインクジェット方式に適用する場合には、熱的な物性値(例えば比熱、熱膨張係数、熱電導率等)が調整されることもある。
【0035】
以上のようにして得られる本発明で使用するインク及び該インクを使用したインクジェット記録方法は、従来技術の問題点が十分に解決されており、インクジェット記録における安定噴射、記録物の鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性いずれもバランスのとれた優れたものであり、各種の方式のインクジェット記録用のインクとして有用であり、優れた記録を与えることができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。
【0037】
尚、文、表中%とあるのは重量基準である。
【0038】
表1に示す通り、本発明の水溶性着色樹脂を得た。
【0039】
【表1】
Figure 0003557916
着色樹脂例1〜例6は、加熱温度約120℃の条件下で各例に示す水溶性樹脂を溶融液体化し、各例に示す塩基性染料を加えて1時間混合攪拌を行い、常温に冷却して着色樹脂の固形物を得た。
【0040】
着色樹脂例7は、100℃に加熱した例に示す水溶性有機溶剤中に例に示す水溶性樹脂と例に示す塩基性染料を加え、2時間攪拌混合し、常温に冷却して着色樹脂の水溶性有機溶剤溶液を得た。
【0041】
尚、表1中の水溶性樹脂の分子量は重量平均分子量であり、光散乱法もしくはゲル濾過クロマトグラフィ−により求めることができる。
<実施例1>
液組成
着色樹脂 例1 5%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 79%
上記各材料を十分に混合攪拌した後、0.8μmのメンブランフィルタで濾過してインクとした。
【0042】
このインクを用いて、記録ヘッド内のインクに熱エネルギーを与えて液滴を発生させ、記録を行うオンデマンドタイプのマルチヘッド(噴射オリフィス径35μm、発熱抵抗体抵抗値150オーム、駆動電圧30ボルト、周波数2KHz)を有する記録装置、及び記録ヘッド内のインクにピエゾ素子振動による圧力を与えて液滴を発生させ、記録を行うオンデマンドタイプのマルチヘッド(噴射オリフィス径40μm、駆動電圧30ボルト、周波数10KHz)を有する記録装置により、以下の試験評価を行ったところ、いずれにおいても良好な結果を得た。
【0043】
(試験評価1)噴射安定性;室温(25℃)、5℃、40℃の雰囲気下でそれぞれ24時間の連続噴射を行ったが、いずれの条件でも終始安定した高品質の記録が行えた。
【0044】
(試験評価2)噴射応答性;2秒間の間欠噴射と2カ月間放置後の噴射について調べたが、いずれの場合にもオリフィス先端での目詰まりはなく、安定で均一に記録された。
【0045】
(試験評価3)記録画像の品質;以下に示す被記録材に記録された画像は、濃度が高く鮮明であり、その色調は鮮やかなマゼンタ色であった。
【0046】
被記録材;ゼロックス社製「ゼロックス4200」
ゼロックス社製「ゼロックスL」
ハンマーミル社製「ハンマーミルコピープラスホワイト」
東洋濾紙社製ノンサイズ紙「東洋濾紙No4」
(試験評価4)各種被記録材に対する耐擦性;上記(試験評価3)に示した被記録材に噴射記録5秒後、インク付着部を指で擦り、画像ずれ、滲みの有無を判定した結果、いずれも画像ずれ、滲み等がなく、優れた定着性を示した。
【0047】
(試験評価5)各種被記録材での耐水性;上記(試験評価3)に示した被記録材に記録された文字、画像を30秒間水道水中に浸した後、引き上げて自然乾燥させて文字、画像の劣化を確認したところ、にじみはなく、文字も良好に判読可能であった。
【0048】
<実施例2>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示した。また、試験評価3での色調は鮮やかなシアン色であった。
【0049】
液組成
着色樹脂 例2 5%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 79%
<実施例3>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示した。また、試験評価3での色調は鮮やかなイエロー色であった。
【0050】
液組成
着色樹脂 例3 5%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 79%
<実施例4>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示した。また、試験評価3での色調は深みのあるブラック色であった。
【0051】
液組成
着色樹脂 例4 5%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 79%
次に、実施例1〜4のインクをそれぞれマゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインクとして使用し、フルカラー記録を実施例1に示した記録装置で行ったところ、鮮明で高濃度、且つ、良好な色調の記録が得られた。また、記録された画像や文字はブリーディングやフェザリングもなく、良好な印字品質となった。
【0052】
<実施例5>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示した。
【0053】
液組成
着色樹脂 例5 2%
グリセリン 20%
2−ピロリドン 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4%
純水 64%
<実施例6>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示した。
【0054】
液組成
着色樹脂 例6 4%
グリセリン 25%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 8%
純水 63%
<実施例7>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。これらはいずれも実施例1と同様に優れた結果を示した。
【0055】
液組成
着色樹脂 例7 20%
(ポリエチレングリコールを16%含む)
カラーインデックスナンバーベーシックイエロー37 1%
2−ピロリドン 10%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 4%
純水 65%
<比較例1>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、それぞれについて実施例と同様に試験評価1〜5の検討を行った。その結果、試験評価3において、鮮明性に欠ける薄い濃度の記録となった。また、試験評価5においては、にじみが激しく、文字の認識も困難となった。
【0056】
液組成
カラーインデックスナンバーダイレクトレッド227 1%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 83%
<比較例2>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、それぞれについて実施例と同様に試験評価1〜5の検討を行った。その結果、試験評価3において画像の鮮明性が十分でなく、試験評価5においては文字の認識は可能であったが、にじみが目立っていた。
【0057】
液組成
カラーインデックスナンバーベーシックバイオレット11:1 1%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 83%
<比較例3>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、それぞれについて実施例と同様に試験評価1〜5の検討を行った。その結果、試験評価1において一部不安定な噴射が観察された。また、試験評価2においても、2ヶ月放置後の噴射において噴射曲がりや不噴射が一部発生した。
【0058】
液組成
着色樹脂 例1 15%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 69%
次に比較実験のため、表2に示す比較用着色樹脂を得た。
【0059】
【表2】
Figure 0003557916
比較用着色樹脂1〜2は、加熱温度120℃の条件下で各例に示す水溶性樹脂を溶融液体化し、各例に示す染料を加えて1時間混合攪拌を行い、常温に冷却して比較用着色樹脂の固形物を得た。
【0060】
比較用着色樹脂例3は、例に示す水溶性樹脂と例に示す塩基性染料を水を溶媒として、常温で1時間攪拌混合した後、フリーズドライによって比較用着色樹脂の固形物を得た。
【0061】
<比較例4>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。その結果、試験評価5において明らかなにじみが発生した。
【0062】
液組成
比較用着色樹脂 例1 3%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 81%
<比較例5>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。その結果、試験評価3において、鮮明性に欠ける薄い濃度の記録となった。また、試験評価5においては、にじみが激しく、文字の判読が困難となった。
【0063】
液組成
比較用着色樹脂 例2 5%
ポリエチレングリコール(平均分子量200) 10%
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 6%
純水 79%
<比較例6>実施例1と同様の方法により下記の液組成を用いてインクを調製し、ぞれぞれについて実施例1と同様に試験評価1〜5の検討を行った。その結果、試験評価1において不安定な噴射が頻繁に観察された。また、試験評価2においても、2ヶ月放置後の噴射において噴射曲がりや不噴射が発生した。
【0064】
液組成
比較用着色樹脂 例3 4%
トリエチレングリコール 16%
純水 80%
以上の実施例、比較例についての試験評価1〜5の結果を表3に示す。
【0065】
【表3】
Figure 0003557916
表3に示す通り、本発明の実施例によれば、インクジェット記録における安定噴射、記録物の鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性いずれもバランスのとれた優れたものであり、各種の方式のインクジェット記録用のインクとして有用であり、優れた記録を与えることができる。一方、比較例においては、試験評価のいづれかにおいて問題を有している。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したことから明かなように本発明のインクジェット用水性インクは、着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであり、かつ前記水溶性着色樹脂が、前記水溶性樹脂を60℃以上の温度に加熱して低粘度の液体とした状態で該水溶性樹脂に前記塩基性染料を混合攪拌し常温まで冷却して得られたものである。または、前記水溶性着色樹脂が、不揮発性有機溶剤を60℃以上の温度に加熱した状態で該溶剤中に前記水溶性樹脂と前記塩基性染料を混合攪拌し常温まで冷却して水溶性着色樹脂の不揮発性有機溶剤溶液として得られたものである。また、その製造方法を特徴とする。そして、望ましくは、望ましくは、該水溶性着色樹脂の該水溶性樹脂の分子量が10000以下であることを特徴とし、さらに望ましくは、該水溶性着色樹脂中の該水溶性樹脂と該塩基性染料の配合比が10:1から1:1の範囲内であることを特徴とし、さらに望ましくは、該水溶性着色樹脂のインク中の含有量が1から10重量%であることを特徴としているため、インクジェット記録における安定噴射、記録物の鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性いずれもバランスのとれた優れたものであり、各種の方式のインクジェット記録用のインクとして有用であり、優れた記録を与えることができる。
【0067】
また、本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット用水性インクを使用して記録を行うことを特徴としているため、インクジェット記録における安定噴射、記録物の鮮明性、高濃度記録、耐水性、耐擦性いずれもバランスのとれた優れたものであり、各種の方式のインクジェット記録方法として有用であり、優れた記録を与えることができる。

Claims (8)

  1. 水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分として成るインクジェット用水性インクにおいて、
    着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、
    前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであり、
    かつ前記水溶性着色樹脂が、前記水溶性樹脂を60℃以上の温度に加熱して低粘度の液体とした状態で該水溶性樹脂に前記塩基性染料を混合攪拌し常温まで冷却して得られたものである
    ことを特徴とするインクジェット用水性インク。
  2. 水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分として成るインクジェット用水性インクにおいて、
    着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、
    前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであり、
    前記水溶性着色樹脂が、不揮発性有機溶剤を60℃以上の温度に加熱した状態で該溶剤中に前記水溶性樹脂と前記塩基性染料を混合攪拌し常温まで冷却して水溶性着色樹脂の不揮発性有機溶剤溶液として得られたものである
    ことを特徴とするインクジェット用水性インク。
  3. 前記水溶性着色樹脂の前記水溶性樹脂の分子量が10000以下であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット用水性インク。
  4. 前記水溶性着色樹脂中の前記水溶性樹脂と前記塩基性染料の配合比が10:1から1:1の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
  5. 該水溶性着色樹脂のインク中の含有量が1から10重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット用水性インク。
  6. 水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分として成るインクジェット用水性インクを微細な液滴として飛翔させて記録を行うインクジェット記録方法において、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット用水性インクを使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. 水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分とし、前記着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、かつ前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであるインクジェット用水性インクの製造方法において、
    前記水溶性樹脂を60℃以上の温度に加熱して低粘度の液体とし、該水溶性樹脂の液体中に前記塩基性染料を混合攪拌した後、常温まで冷却して前記水溶性着色樹脂を得ることを特徴とするインクジェット用水性インクの製造方法。
  8. 水と水溶性有機溶剤と着色剤を必須成分とし、前記着色剤主成分として水溶性樹脂が塩基性染料によって均一に着色処理された水溶性着色樹脂を含有するものであり、かつ前記水溶性樹脂がビニルピロリドンの付加重合によって得られるポリビニルピロリドンであるインクジェット用水性インクの製造方法において、
    揮発性有機溶剤を60℃以上の温度に加熱し、該加熱溶剤中に前記水溶性樹脂と前記塩基性染料を混合攪拌した後、常温まで冷却して前記水溶性着色樹脂の不揮発性有機溶剤溶液を得ることを特徴とするインクジェット用水性インクの製造方法。
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