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JP3557015B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 Download PDF

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JP3557015B2
JP3557015B2 JP25007595A JP25007595A JP3557015B2 JP 3557015 B2 JP3557015 B2 JP 3557015B2 JP 25007595 A JP25007595 A JP 25007595A JP 25007595 A JP25007595 A JP 25007595A JP 3557015 B2 JP3557015 B2 JP 3557015B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関し、更に詳しくは色相に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略すことがある)の色相を向上し、また、変色を低減するために種々の手段が採られてきた。
【0003】
例えば、ポリハロ芳香族化合物等のハロ置換有機化合物を重合後期に重合系に添加して、ポリマー鎖末端を安定化する方法が知られている(特開昭62‐97821号公報)。しかし、溶融粘度が小さくなりがちであるという欠点が判明している。白色顔料をポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある)樹脂に混入して白色化し、かつ白色顔料添加に起因する機械的強度の低下をエポキシ樹脂の添加により補償することが提案されている(特開昭60‐8359号公報)。しかし、これはコスト高を招く。白色顔料として酸化チタンと硫化亜鉛が記載されている。任意的な強化材の例示中にシリカが挙げられているが、シリカについてそれ以上の記載はない。また、PASと無機充填剤より成る組成物において、無機充填剤に起因する変色を防止するために、これの表面に予め有機系安定剤を付着させる方法が知られている(特開平3‐229760号公報)。しかし、溶融成形中に溶融粘度が小さくなると共に、分解ガスが発生するという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PAS本来の溶融粘度を変化させることなく、引張強度等の機械的強度を低下させることもなく、白色度の向上したPAS樹脂組成物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、種々の検討を重ねた。その結果、PASに下記所定の性状を有するシリカを配合すれば、上記課題の全てを解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)(A)ポリアリーレンスルフィド 100重量部及び
(B)細孔容積が1.00ml/g以下であり、かつ平均細孔径が100オングストローム以下であるシリカ 0.01〜15重量部
を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物である。
【0007】
好ましい態様として、
(2)(B)シリカの細孔容積が0.20〜0.90ml/gであり、かつ平均細孔径が20〜80オングストロームである上記(1)記載の樹脂組成物、
(3)(B)シリカの平均粒径が1.0〜10μmである上記(1)又は(2)記載の樹脂組成物、
を挙げることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(B)シリカの細孔容積は、上限が1.00ml/g、好ましくは0.90ml/g、特に好ましくは0.85ml/gであり、下限が好ましくは0.20ml/g、特に好ましくは0.30ml/gである。上記上限を超えては、PAS樹脂組成物の溶融粘度Vが増加するため好ましくない。(B)シリカの平均細孔径は、上限が100オングストローム、好ましくは80オングストローム、特に好ましくは70オングストロームであり、下限が好ましくは20オングストローム、特に好ましくは25オングストロームである。上記上限を超えては、PAS樹脂組成物の溶融粘度Vが増加して、加工性が悪化するため好ましくない。ここで、上記の細孔容積及び平均細孔径は、気体の吸着等温線のヒステリシスをケルビン式により解析して求めたものである。
【0009】
本発明で使用する(B)シリカの平均粒径は、上限が好ましくは10μm、特に好ましくは6.0μmであり、下限が好ましくは1.0μm、特に好ましくは2.0μmである。ここで、平均粒径はコールカウンター法により求めた値である(D50)。平均粒径が上記上限を超えては、分散性が悪化するだけでなく、本発明の効果も得られない。上記下限未満では、PAS樹脂組成物の溶融粘度Vの増加を招く。また、該シリカ粒子は、粒度分布において好ましくは粒径が8μm以下の粒子が90重量%以上であり、特に好ましくは粒径が9μm以下の粒子が95重量%以上がよい。
【0010】
(B)シリカとしては、上記性状を有するものであれば、特に制限はない。好ましくはコロイド性シリカが使用され、例えば、高純度珪砂を原料としてケイ酸ソーダと硫酸を混合させて、ケイ酸ゾルを生成させ、これらのケイ酸ゾルを重合させて凝集体を形成しゾル化させる方法等により製造したものを使用することができる。市販のものとしては、例えば富士シリシア株式会社製のサイシリア730、サイシリア740、サイシリア770、サイシリア530、サイシリア540、サイシリア550(いずれも商標)等が挙げられる。
【0011】
本発明の樹脂組成物において使用する成分(A)PASは、アリーレンスルフィド繰り返し単位を有する公知のポリマーであり、特に好ましくはポリフェニレンスルフィドである。
【0012】
本発明の(A)PASの製造法に特に制限はない。例えば、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とを有機アミド溶媒中で反応させる方法(特公昭45‐3368号公報)等を使用し得る。
【0013】
好ましくは反応缶の気相部分を冷却して、気相の一部を液相に還流せしめる方法(特開平5‐222196号公報)が用いられる。該方法により製造されるPASは、実質的に線状構造を持つ比較的高分子量のPASであり、引張強度等の機械的強度に優れているため好ましい。即ち、該方法は、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させPASを製造する方法において、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめることを特徴とする、PASの製造法である。
【0014】
該PAS製造法において、還流される液体は、水とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに比較して水含有率が高い。この水含有率の高い還流液は、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その結果、残存のアルカリ金属硫化物(例えばNaS)、ハロゲン化アルカリ金属(例えばNaCl)、オリゴマー等が、その層に多く含有されるようになる。従来法においては230℃以上の高温下で、生成したPASとNaS等の原料及び副生成物とが均一に混じりあった状態では、高分子量のPASが得られないばかりでなく、せっかく生成したPASの解重合も生じ、チオフェノールの副生成が認められる。しかし、本発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻してやることによって上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害するような因子を真に効率良く除外でき、高分子量PASを得ることができるものと思われる。但し、本発明は上記現象による効果のみにより限定されるものではなく、気相部分を冷却することによって生じる種々の影響によって、高分子量のPASが得られるのである。
【0015】
該方法においては、反応の途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加することを全く排除するものではない。但し、水を添加する操作を行えば、この方法の利点のいくつかは失われる。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反応の間中一定である。
【0016】
反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイルに冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いずれの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応缶壁を伝わって液相中に入る。
【0017】
一方、液相バルクの温度は、所定の一定温度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従ってコントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275 ℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。より好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間である。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さすぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速すぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみならず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じやすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量PASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うことが好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPASを得ることができず、また 270℃より高い温度では解重合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を得難くなる。
【0018】
実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1モル当り0.5 〜2.5 モル、特に0.8 〜1.2 モルとする。2.5 モルを超えては、反応速度が小さくなり、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成物量が増大し、重合度も上がらない。0.5 モル未満では、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ることができない。
【0019】
反応時の気相部分の冷却は、一定温度での1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望ましいが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなければならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下していることを意味しており、その相対的な低下の度合いが水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行うのが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0020】
ここで使用する有機アミド系溶媒は、PAS重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロリドン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラクタム等、及びこれらの混合物を使用でき、N‐メチルピロリドンが好ましい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。アルカリ金属硫化物も公知であり、たとえば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物である。これらの水和物及び水溶液であっても良い。又、これらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用いることができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0021】
ジハロ芳香族化合物は、たとえば特公昭45‐3368号公報記載のものから選ぶことができるが、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少量(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハロ物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。例えば、m‐ジクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、p,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,m´‐ジクロロジフェニルエーテル、p,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,m´‐ジクロロジフェニルスルホン、p,p´‐ジクロロビフェニル、m,p´‐ジクロロビフェニル、m,m´‐ジクロロビフェニルである。
【0022】
PASの分子量をより大きくするために、ポリハロ芳香族化合物をジハロ芳香族化合物に対して好ましくは5モル%以下の濃度で使用することもできる。該ポリハロ芳香族化合物は、1分子に3個以上のハロゲン置換基を有する化合物であり、例えば1,2,3‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,3‐ジクロロ‐5‐ブロモベンゼン、2,4,6‐トリクロロトルエン、1,2,3,5‐テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロ‐2,4,6‐トリメチルベンゼン、2,2´,4,4´‐テトラクロロビフェニル、2,2´,6,6´‐テトラブロモ‐3,3´,5,5´‐テトラメチルビフェニル、1,2,3,4‐テトラクロロナフタレン、1,2,4‐トリブロモ‐6‐メチルナフタレン等及びそれらの混合物が挙げられ、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロベンゼンが好ましい。
【0023】
また、PASの重合工程における反応の後期、例えば反応系内のジハロ芳香族化合物の反応率が好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の時点において、末端封止剤、例えばポリハロ芳香族化合物、アルカリ土類金属の塩、その水酸化物又はその酸化物、若しくは亜鉛化合物等を仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して好ましくは0.001〜0.1モル添加することができる。
【0024】
ポリハロ芳香族化合物としては、上記と同じものが使用できる。また、アルカリ土類金属の塩、その水酸化物又はその酸化物としては、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸カルシウム又は水酸化バリウム等が挙げられ、亜鉛化合物としては、例えば塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛等が挙げられる。一例として、塩化カルシウムを使用した場合には、PASの‐SX(Xはアルカリ金属を示す)末端を、‐SCaS‐及び‐SCaClの形態に変えることができると考えられる。該形態を取ることにより、PASの色相の悪化に影響を及ぼすと考えられる‐SX末端を減少せしめて、PASの色相の改善を図ることができる。
【0025】
こうして得られたPASは、当業者にとって公知の後処理法によって副生物から分離することができる。
【0026】
PASの後処理として行われる水洗浄として、好ましくは、下記の方法を使用することができる。
【0027】
即ち、水洗浄は、PAS製造工程で生成した重合スラリーを濾過した後、濾過ケーキを水に分散させることにより行われる。例えば、上記のようにして得られたPASの重合スラリーを濾過し、溶媒を少ししか含まないPASケーキを得る。該PASケーキを、重量で好ましくは1〜5倍の水中に投入して、好ましくは常温〜90℃で、好ましくは5分間〜10時間攪拌混合した後、濾過する。該攪拌混合及び濾過操作を好ましくは2〜10回繰り返すことにより、PASに付着した溶媒及び副生塩の除去を行って水洗浄を終了する。
【0028】
また、分離後のPASに酸処理を施すことが好ましい。該酸処理は、好ましくは100℃以下の温度、特に好ましくは常温〜80℃の温度で実施される。該温度が上記上限を超えると、酸処理後のPAS分子量が低下するため好ましくない。該酸処理に使用する酸溶液のpHは、好ましくは3.5〜6.0、特に好ましくは4.0〜5.5である。該pHを採用することにより、被処理物であるPAS中の‐SX(Xはアルカリ金属を示す)末端の大部分を‐SH末端に転化することができる。pHが上記範囲未満では、酸の使用量が多くコスト高となり、上記範囲を超えては、PAS中のアルカリ金属末端の除去が不十分となる。該酸処理に要する時間は、上記酸処理温度及び酸溶液の濃度に依存するが、好ましくは5分間以上、特に好ましくは10分間以上である。上記未満では、PAS中の‐SX末端を‐SH末端に十分に転化できず好ましくない。上記酸処理には、例えば酢酸、ギ酸、シュウ酸、フタル酸、塩酸、リン酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、ホウ酸、ケイ酸、炭酸、プロピオン酸等が使用され、酢酸が特に好ましい。該処理を施すことにより、PAS中の不純物であるアルカリ金属、例えばナトリウムを低減でき、PASの色相を向上することができる。
【0029】
また、上記の後処理法に代えて下記の後処理法を使用することもできる。
【0030】
即ち、上記重合工程で得られたPASスラリーを濾過した後、得られた含溶媒濾過ケーキを非酸化性ガス雰囲気下150〜250℃の温度で加熱して溶媒を除去し、次いで水洗浄を施す方法である。
【0031】
例えば、上記のようにして得られたPASスラリーを濾過し、溶媒を含むPASケーキを得る。次いで、該PASケーキは、ヘリウム、アルゴン、水素、窒素等の非酸化性ガス気流中、好ましくは窒素ガス気流中、150〜250℃、好ましくは180〜230℃の温度で、好ましくは0.5〜20時間、特に好ましくは1〜10時間加熱される。該加熱は、好ましくは常圧〜3気圧、特に好ましくは常圧下で行われる。上記の加熱による溶媒除去を行うことにより、PASの接着強度を高めることができると共に、従来の水洗浄により溶媒を除去する方法に比べて、水洗浄等の工程を簡略化でき、かつ溶媒の回収率を著しく向上せしめることができるため、生産性が高くコスト的に有利である。
【0032】
次いで行われる水洗浄は、公知の方法に従って行うことができる。好ましくは上記の水洗浄法が使用される。いずれにしても、水洗浄を簡略化することができる。
【0033】
更に、該水洗浄後のPASに、上記と同様の方法で酸処理を施すこともできる。
【0034】
該後処理法は、上記の末端封止を行ったPASに好ましく用いられる。
【0035】
本発明の樹脂組成物において、成分(A)と成分(B)の配合比は、(A)100重量部に対して、(B)の上限が15重量部、好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部であり、下限が0.01重量部、好ましくは0.1重量部、特に好ましくは0.5重量部である。上記範囲を超えては、溶融粘度Vの増加を招き、成分(B)が上記範囲未満では、色相の向上を図ることができない。
【0036】
本発明の樹脂組成物には、発明の目的を損なわない限り、慣用の添加剤、例えば、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、クレー、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、窒化ケイ素、ガラス、ハイドロタルサイト、酸化ジルコニウム等の粒状、粉末状あるいは鱗片状のもの、又はガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素繊維、マイカセラミック繊維等の繊維状のものを配合することができる。これら無機充填材は、夫々単独で、あるいは二種以上組合わせて用いることができる。また、これらの無機充填材は、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤で処理したものであってもよい。充填材の配合割合は、PAS100重量部に対して好ましくは1〜400重量部、特に好ましくは10〜200重量部である。
【0037】
更に、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、着色剤等の添加剤を配合することもできる。
【0038】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、上記の各成分を予めヘンシェルミキサー等の混合機で予備混合した後、押出機等の慣用の装置にて溶融混練して組成物とし、あるいは更にペレット化することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、例えば射出成形あるいは圧縮成形して所望の形状に成形され、特に外観の美しさが要求される成形品、例えば電子部品、家電部品、あるいはカメラ、時計等の精密機械部品等に使用される。
【0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0041】
【実施例】
実施例において、溶融粘度Vは島津製作所製フローテスターCFT‐500Cを用いて300℃、荷重20kgf/cm、L/D=10で6分間保持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0042】
合成例1
4mのオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.7重量%NaS)515.4kgとN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNMPと略すことがある)1200kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら液温204℃まで昇温して、水125.4kgを留出させた。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、p‐ジクロロベンゼン(以下ではp‐DCBと略すことがある)596.0kg及びNMP400kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cmGまで加圧して昇温を開始した。液温が215℃になった時点からオートクレーブ上部の外側に取り付けた散水装置により水を散水しオートクレーブ上部を冷却した。その後、昇温を継続して液温を260℃とし、次いで、該温度で2時間攪拌し反応を進めた。次に、降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を止めた。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらないように一定に保持した。
【0043】
得られたスラリーに対し常法により濾過、温水洗を繰り返し、130℃で約4時間熱風循環乾燥機中で乾燥し、白色粉末状の線状構造を持つPPSを得た。得られたPPSの溶融粘度Vは1140ポイズであった。
【0044】
該PPSを下記の実施例及び比較例において使用した。
【0045】
【実施例1〜4及び比較例1〜6】
実施例及び比較例で使用したシリカ及び他の添加物は下記の通りである。
<シリカ>
【0046】
【表1】
Figure 0003557015
<他の添加物(比較成分)>
・リン化合物:PEP36、商標、旭電化株式会社製
・白色顔料:ドライカラー HS‐D 921285、商標、大日精化株式会社製
各実施例及び比較例とも、各成分を表2に示す量(重量部)でヘンシェルミキサーを使用して混合し、溶融粘度Vの測定に供した。白色度(ホットプレスL値)については、同じくヘンシェルミキサーで混合後、更に溶融混練して試料とした。
【0047】
溶融粘度Vは、該試料を上記と同じく島津製作所製フローテスターCFT‐500Cを用いて測定した。
【0048】
白色度(ホットプレスL値)は下記の如く測定した。
<白色度(ホットプレスL値)>
上記試料を320℃で1.5分間予熱後、320℃で1.5分間、続けて130℃で1.5分間、30kg/cmの圧力でホットプレスにより加圧成形して円盤状プレートを作り、これについて、色彩色差計(東京電色株式会社製、Color Ace)を用いて測定した。
【0049】
引張強度は、下記の如く測定した。
<引張強度>
各実施例及び比較例とも、表2に示す量(重量部)の各成分に、更にガラス繊維(3J961S、商標、日東紡績株式会社製)67重量部を加えて、ヘンシェルミキサーを使用して混合した。次いで、25mmφ二軸押出機を用いてバレル設定温度300℃で溶融混練して押出し、ペレットを作成した。得られたペレットから、シリンダー温度320℃、金型温度130℃に設定した射出成形機により、ASTM D638に従うダンベル片を作成した。該ダンベル片を用い、ASTM D638に準拠して引張強度を測定した。
【0050】
以上の結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0003557015
実施例1〜5は、(A)PPSに(B)シリカを配合したものである。シリカを配合していないPPSのみの比較例6に比べて、白色度はいずれも高くなった。溶融粘度V及び引張強度はいずれも大きな変化は認められなかった。実施例1〜4は、(B)シリカの配合量を本発明の範囲内で変化させたものである。シリカの配合量を増加すると、白色度が増加する傾向にあることが分かった。比較例4では、Vの多少の増加が見られたが、本発明の効果を十分に達成し得るものであった。実施例5は、実施例2のシリカを本発明の範囲内でより大きな細孔容積及び平均細孔径を持つシリカに変えたものである。樹脂組成物の白色度、V及び引張強度はいずれも大きな変化はなかった。
【0052】
一方、比較例1は、シリカの配合量が本発明の範囲を超えたものである。PPSのみの比較例6に比べて、白色度は増加したが、Vも著しく増加した。また、引張強度の少しの低下も見られた。比較例2及び3は、いずれも細孔容積及び平均細孔径において、本発明の範囲を超えるシリカを使用したものである。比較例6に比べて、いずれもVの増加が著しく、また、引張強度の少しの低下も見られた。比較例4は、(B)シリカに代えて、リン化合物を配合したものである。比較例6と比べてVの減少が見られ、引張強度も低下した。また、溶融成形時にガスの発生があった。比較例5は、(B)シリカに代えて、白色顔料を配合したものである。比較例6に比べて、著しいVの減少及び引張強度の低下が見られた。このように、細孔容積及び平均細孔径のより大きいシリカ、リン化合物又は白色顔料の添加では、樹脂組成物の白色度を高めることはできるが、V及び引張強度の変化も大きいことが分かった。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、PAS本来の溶融粘度を変化させることなく、引張強度等の機械的強度を低下させることもなく、白色度の向上したPAS樹脂組成物を提供する。

Claims (3)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド 100重量部及び
    (B)細孔容積が1.00ml/g以下であり、かつ平均細孔径が100オングストローム以下であるシリカ 0.01〜15重量部
    を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. (B)シリカの細孔容積が0.20〜0.90ml/gであり、かつ平均細孔径が20〜80オングストロームである請求項1記載の樹脂組成物。
  3. (B)シリカの平均粒径が1.0〜10μmである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
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