JP3687759B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造法 - Google Patents
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド(以下ではPPSと略すことがある)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下ではPASと略すことがある)は、高い耐熱性を有し、かつ耐化学薬品性を有する熱可塑性樹脂として、電気・電子機器部品、自動車機器部品、あるいは化学機器部品用等に使用されている。
【0003】
かかるPAS成形品の殆どの色は、素材色のまま、あるいは黒色に着色されている。PAS自体の色相は、製造方法や後処理方法等の違いにより様々である。殊に、現在市場の大部分を占めている、いわゆる架橋PASの色相は、ホットプレスL値で50以下(暗色)であるが、各製品ごとにその値は異なり、かつ広い範囲に亘っている。従って、異なるグレードのPASから作られた異なる部品を組立てて製品を作ると、部品間の色相のずれが問題となることがあった。特に外観の美しさが要求される成形品、例えば電子部品、家電部品、あるいはカメラ、時計等の精密機械部品等に使用するに際しては問題であった。また、黒色の成形品を得るためには、PASにカーボンブラックを添加している。しかし、部品を組合せて使用するに際して、部品間の色相の差異を少なくするためには、カーボンブラックの添加量を調節すること等が必要であり、作業が煩雑になるという欠点があった。また、カーボンブラックの添加量が多くなるに伴い、機械的強度等のPAS物性が低下するという欠点をも有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、暗色、かつカーボンブラックの少量の添加で良好な黒色の成形品を得ることができるPAS樹脂組成物の製造法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、下記所定の製造法を用いれば、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)ポリアリーレンスルフィドの水スラリーを、ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して0.005〜10重量部の鉄原子に相当する量の鉄化合物を含有する水溶液で処理することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造法である。
【0007】
本発明の好ましい態様として、
(2)鉄化合物の量が、ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して0.01〜5重量部の鉄原子に相当する量である上記(1)記載の方法、
を挙げることができる。
【0008】
本発明の製造法を用いると、所望の暗色の色相を持つPASを製造することができる。従って、異なるグレードのPAS間において、その色相を一致させることができる。即ち、異なるグレードのPASから作られた部品を組立てて製品を作った際に、部品間の色相のずれが少なく、良好なバランスのとれた色合いが得られる。また、得られたPASの黒色化に際して、少量のカーボンブラックの添加で十分に満足のいく黒色の成形品を作ることができる。従って、従来、問題となっていた比較的多量のカーボンブラックの添加による機械的強度の低下はない。更に、上記のように、素材色のままで色合いのバランスがよいことから、黒色化に際して、各部品毎にカーボンブラックの添加量を調節する必要がない。従って、黒色製品の製造工程を簡略化することができる。
【0009】
特開昭64‐11136号公報には、PASを鉄及び/又は鉄系化合物の流動層中で処理し、高耐溶融性PAS樹脂を製造する方法が記載されている。該方法は、鉄及び/又は鉄系化合物を触媒として、PASを不融化、即ち熱酸化架橋するものである。これに対して、本発明は、PASを鉄化合物を用いて水中で処理して、PASを黒色化するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のPAS樹脂組成物の製造法において、使用する鉄化合物の量は、PAS100重量部に対して、上限が10重量部、好ましくは5重量部、特に好ましくは3重量部の鉄原子に相当する量であり、下限が0.005重量部、好ましくは0.01重量部、特に好ましくは0.03重量部の鉄原子に相当する量である。上記上限を超えても、発明の効果が格別に増大することなく、一方、得られたPAS樹脂組成物の成形性及び成形品の絶縁性等の電気的特性に悪影響を及ぼす。上記下限未満では、PAS樹脂組成物中の鉄含有量が低くなり、成形品の色相を十分に暗色にすることができない。
【0011】
PASを、鉄化合物を含有する水溶液で処理する方法は、好ましくは下記の通りである。
【0012】
まず、PAS製造工程で生成したPASスラリーから、好ましくはフラッシュ蒸発又は濾過して溶媒及び副生物を分離し、乾燥パウダー状又はケーキ状のPASを得る。次いで、該PASを、予め水スラリー化した後、鉄化合物をそのまま又は水溶液として、該水スラリーと混合する。該処理は、好ましくは、PAS製造工程で生成した副生塩の除去と併せて行うことができる。例えば、該副生塩の除去は、通常、上記のようにして分離して得られたPASを水でスラリー化し、濾過するという操作を、数回繰り返すことにより実施している。この繰り返し操作の任意の段階におけるPASの水スラリー中に、鉄化合物を混合することにより実施し得る。また、上記どの段階の水スラリーに、鉄化合物を混合しても、本発明の効果を十分に達成することができる。スラリー中のPASの濃度は、該処理又は処理後の取扱いの簡便さから、好ましくは2〜60重量%であり、特に好ましくは5〜30重量%である。PASの濃度が、上記下限未満では処理時間が長くなり、上記上限を超えてはスラリーの流動性が低下してプロセス上好ましくなく、かつPAS製造工程で生成した副生塩の除去効果も低下する。
処理温度は、好ましくは常温〜200℃、特に好ましくは常温〜160℃である。上記上限を超えては、高耐圧の設備が必要となり設備費が増大する。処理時間は、処理温度及び処理されるPASの性質等により異なるが、好ましくは5分〜2時間、特に好ましくは10分〜1時間である。また、圧力は、混合物中の水を液相として維持することができればよく、好ましくは大気圧〜約10kg/cm2である。上記圧力を超えては、上記同様設備費が高くなり好ましくない。
【0013】
上記処理は、バッチ方式又は連続方式のいずれでも実施することができる。該処理を実施するのに便利な方法は、例えばPASの水スラリーと鉄化合物とを攪拌機付の密閉タンク内で接触させることである。該接触は、単一又は複数の容器中で行うことができる。接触後のスラリーからPASの分離及びその乾燥は、通常公知の方法を使用して行うことができる。
【0014】
また、PAS製造工程で生成した副生塩の除去をフィルターケーキに水を注ぐ洗浄方法により実施する場合には、鉄化合物を含有する水溶液での処理は、該洗浄段階において、鉄化合物を含有する水溶液をフィルターケーキに注ぐことにより実施することができる。
【0015】
こうして得られたPAS樹脂組成物は、PAS100重量部に対して、鉄化合物(鉄原子として計算)を好ましくは0.0005〜3重量部、特に好ましくは0.001〜1重量部、更に好ましくは0.005〜0.5重量部含む。鉄化合物が上記上限より多くても発明の効果が格別に増大することなく、一方、成形性及び成形品の絶縁性等の電気的特性に悪影響を及ぼす。鉄化合物が上記下限未満ではPAS樹脂組成物が暗色にならない。
【0016】
本発明で用いる鉄化合物としては、例えば、酸化第二鉄、四三酸化鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、亜酸化鉄、硫酸鉄、硫化鉄、硝酸鉄、リン酸鉄等が挙げられる。好ましくは、酸化鉄及び/又は塩化鉄が使用され、効果及び経済性の面から四三酸化鉄又は塩化第二鉄が特に好ましく使用される。
【0017】
本発明の方法に用いるPASは、アリーレンスルフィド繰り返し単位を有する公知のポリマーであり、特に好ましくはPPSである。該PASを製造する方法は特に制限されない。例えば、特公昭45‐3368号公報に記載の有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてPASを製造する方法、特公昭52‐12240号公報記載のアルカリ金属カルボン酸塩を使用する方法、米国特許第4038263号明細書に記載のハロゲン化リチウム等の重合助剤を使用する方法、特公昭54‐8719号公報に記載のポリハロ芳香族化合物等の架橋剤を使用する方法、特公昭63‐33775号公報に記載の異なる水の存在量下、多段階反応を使用する方法等により製造し得る。
【0018】
好ましくは、特開平5‐222196号公報に記載された、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてPASを製造する方法において、反応中に反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめる方法を使用することができる。該方法を使用することにより、比較的溶融粘度V6 の高いPASを製造することができ、従って、引張強度、衝撃強度等の機械的強度の高いPASを得ることができるため好ましい。
【0019】
該方法において、還流される液体は、水とアミド系溶媒の蒸気圧差の故に、液相バルクに比較して水含有率が高い。この水含有率の高い還流液は、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する。その結果、残存のアルカリ金属硫化物(例えばNa2 S)、ハロゲン化アルカリ金属(例えばNaCl)、オリゴマー等が、その層に多く含有されるようになる。従来法においては230℃以上の高温下で、生成したPASとNa2 S等の原料及び副生成物とが均一に混じりあった状態では、高分子量のPASが得られないばかりでなく、せっかく生成したPASの解重合も生じ、チオフェノールの副生成が認められる。しかし、本発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻してやることによって上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害するような因子を真に効率良く除外でき、高分子量PASを得ることができるものと思われる。但し、本発明は上記現象による効果のみにより限定されるものではなく、気相部分を冷却することによって生じる種々の影響によって、高分子量のPASが得られるのである。
【0020】
この方法においては、反応の途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加することを全く排除するものではない。但し、水を添加する操作を行えば、この方法の利点のいくつかは失われる。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反応の間中一定である。
【0021】
反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイルに冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いずれの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応缶壁を伝わって液相中に入る。
【0022】
一方、液相バルクの温度は、所定の一定温度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従ってコントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275 ℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。より好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間である。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さすぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速すぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみならず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じやすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量PASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うことが好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPASを得ることができず、また 270℃より高い温度では解重合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を得難くなる。
【0023】
実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1モル当り0.5 〜2.5 モル、特に0.8 〜1.2 モルとする。2.5 モルを超えては、反応速度が小さくなり、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成物量が増大し、重合度も上がらない。0.5 モル未満では、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ることができない。
【0024】
反応時の気相部分の冷却は、一定温度での1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望ましいが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなければならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下していることを意味しており、その相対的な低下の度合いが水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行うのが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0025】
ここで使用する有機アミド系溶媒は、PAS重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロリドン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラクタム等、及びこれらの混合物を使用でき、N‐メチルピロリドンが好ましい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。アルカリ金属硫化物も公知であり、たとえば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びこれらの混合物である。これらの水和物及び水溶液であっても良い。又、これらにそれぞれ対応する水硫化物及び水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用いることができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0026】
ジハロ芳香族化合物は、たとえば特公昭45‐3368号公報記載のものから選ぶことができるが、好ましくはp‐ジクロロベンゼンである。又、少量(20モル%以下)のジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン又はビフェニルのパラ、メタ又はオルトジハロ物を1種類以上用いて共重合体を得ることができる。例えば、m‐ジクロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、p,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,p´‐ジクロロジフェニルエーテル、m,m´‐ジクロロジフェニルエーテル、p,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,p´‐ジクロロジフェニルスルホン、m,m´‐ジクロロジフェニルスルホン、p,p´‐ジクロロビフェニル、m,p´‐ジクロロビフェニル、m,m´‐ジクロロビフェニルである。
【0027】
PASの分子量をより大きくするために、ポリハロ芳香族化合物をジハロ芳香族化合物に対して好ましくは5モル%以下の濃度で使用することもできる。該ポリハロ芳香族化合物は、1分子に3個以上のハロゲン置換基を有する化合物であり、例えば1,2,3‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,3‐ジクロロ‐5‐ブロモベンゼン、2,4,6‐トリクロロトルエン、1,2,3,5‐テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロ‐2,4,6‐トリメチルベンゼン、2,2´,4,4´‐テトラクロロビフェニル、2,2´,6,6´‐テトラブロモ‐3,3´,5,5´‐テトラメチルビフェニル、1,2,3,4‐テトラクロロナフタレン、1,2,4‐トリブロモ‐6‐メチルナフタレン等及びそれらの混合物が挙げられ、1,2,4‐トリクロロベンゼン、1,3,5‐トリクロロベンゼンが好ましい。
【0028】
また、他の少量添加物として、末端停止剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもできる。
【0029】
こうして得られたPASは、当業者にとって公知の後処理法によって副生物から分離することができる。
【0030】
また、本発明においては、上記の種々の方法で得られたPASを更に熱酸化架橋処理したものも使用することができる。
【0031】
本発明の方法により得られたPAS樹脂組成物には、任意成分として無機充填剤を配合することができる。無機充填剤としては特に限定されないが、例えば粉末状/リン片状の充填剤、繊維状充填剤などが使用できる。粉末状/リン片状の充填剤としては、例えばシリカ、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、クレー、シリカアルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、窒化ケイ素、ガラス、ハイドロタルサイト、酸化ジルコニウム、ガラスビーズ、カーボンブラック等が挙げられる。また、繊維状充填剤としては、例えばガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ/アルミナ繊維、チタン酸カリ繊維、ポリアラミド繊維等が挙げられる。また、この他にZnOテトラポット、金属塩(例えば塩化亜鉛、硫酸鉛など)、酸化物(例えば酸化鉄、二酸化モリブデンなど)、金属(例えばアルミニウム、ステンレスなど)等の充填剤を使用することもできる。これらを1種単独でまたは2種以上組合せて使用できる。また、無機充填剤は、その表面が、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤で処理してあってもよい。無機充填剤は、PAS100重量部に対して400重量部以下の量で、好ましくは300重量部以下の量で使用される。無機充填剤の量が上記値を超えると粘度変化が大きくなって成形不能となることがある。また機械的強度を高めるためには、1重量部以上配合するのが好ましい。
【0032】
更に、必要に応じて、公知の添加剤及び充填剤、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、熱安定剤、滑剤等を配合することができる。
【0033】
成形品の製造は、例えば、上記の各成分を予めヘンシェルミキサー等の混合機で混合後、押出機等の慣用の装置にて溶融混練し、押出し、ペレット化した後、射出成形、押出成形等により実施することができる。
【0034】
また、本発明の方法により得られたPAS樹脂組成物は、好ましくはカーボンブラックを添加して、黒色の成形品を製造するために適している。カーボンブラックの添加量は、PAS及び鉄化合物の合計100重量部に対して、上限が好ましくは5重量部、特に好ましくは1重量部であり、下限が好ましくは0.01重量部、特に好ましくは0.05重量部である。上記上限を超えては、成形品の衝撃強度、引張強度等の機械的強度が低下し、上記下限未満では、満足な黒色成形品を得ることができない。本発明のPAS樹脂組成物においては、カーボンブラックの少量の添加で十分に満足のいく黒色の成形品を得ることができる。従って、従来、添加量が多いために生じていた成形品の衝撃強度、引張強度等の機械的強度の低下がない。更には、予め素材色において、組合せるPASどうしの色相を一致させることができるので、黒色化に際して、組合せるPASの色相に合せてカーボンブラックの添加量を調節する必要がない。従って、黒色製品の製造工程が著しく簡略化できる。
【0035】
本発明の方法により得られたPAS樹脂組成物は、自動車機器部品、電気・電子機器部品、化学機器部品、及びその他機械部品等の材料として使用し得る。特に外観上、組合せる成形品どうしの色合いの美しさが要求されるもの、例えば電子部品、家電部品、あるいはカメラ、時計等の精密機械部品等に有用である。
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
実施例において、PPS組成物中の鉄含有量は、島津製作所製原子吸光分光光度計AA660を用いて測定した。ここで、各実施例及び比較例の鉄含有量は、鉄化合物を添加していない比較例1のPPSを標準サンプルとし、該標準サンプルとの比較で算出した値である。また、前処理はH2 SO4 ‐HClO4 系での湿式分解により実施した。
【0038】
白色度(ホットプレスL値)は、PPS組成物を320℃で1.5分間予熱後、320℃で1.5分間、続けて130℃で1.5分間、30kg/cm2 の圧力でホットプレスにより加圧成形して円盤状プレートを作り、これについて、色彩色差計(東京電色株式会社製、Color Ace)を用いて測定した。
【0039】
溶融粘度V6 測定の際に用いたフローテスターは、島津製作所製フローテスターCFT‐500Cである。
【0040】
【実施例1】
150リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.5重量%Na2 S)19.317kgとN‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNMPと略すことがある)45.0kgを仕込んだ。窒素気流下攪拌しながら液温204℃まで昇温して、水4.600kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル当り1.08モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、p‐ジクロロベンゼン(以下ではp‐DCBと略すことがある)22.463kg及びNMP18.0kgを仕込んだ。液温150℃で窒素ガスを用いて1kg/cm2 Gまで加圧して昇温を開始した。液温255℃になったところで昇温をやめ、そのまま3時間攪拌した。
【0041】
得られたスラリーに対し常法により濾過、温水洗を繰り返した。次に、得られたPPS及び水を混合してスラリー(PPS濃度は11.0重量%)とした後、PPS100重量部に対して鉄原子が0.05重量部となるように塩化第二鉄水溶液を加えた。これを室温で30分間攪拌した後、濾過、温水洗を行い、120℃で約5時間熱風循環乾燥機中で乾燥し、粉末状のPPS組成物を得た。
【0042】
【実施例2〜5】
表1に示す種類の鉄化合物及び量を使用した以外は、実施例1と同一にして各PPS組成物を製造した。
【0043】
【実施例6】
PPSの水スラリーに塩化第二鉄水溶液を加えたものを、次いで、オートクレーブ中で150℃で2時間攪拌した以外は、実施例1と同一にして実施し、PPS組成物を製造した。
【0044】
【実施例7及び8】
表1に示す塩化第二鉄量を使用した以外は、実施例6と同一にして実施し、各PPS組成物を製造した。
【0045】
【比較例1】
塩化第二鉄水溶液を加えなかった以外は、実施例1と同一にして実施し、PPSを製造した。
【0046】
上記の各実施例及び比較例で得られたPPS組成物の鉄含有量、ホットプレスL値及び溶融粘度V6 は、表1に示した。
【0047】
【表1】
実施例1〜4は、鉄化合物として塩化第二鉄を用い、鉄の使用量を本発明の方法の範囲内で変化させ、室温で処理したものである。いずれも得られたPPS組成物のL値は低く、暗色のPPS組成物が得られた。鉄の使用量を増加すると、PPS組成物中の鉄含有量が増加して、ホットプレスL値を低くできることが分かった。実施例5は、鉄化合物として塩化第一鉄を用い、室温で処理したものである。L値は低く、暗色のPPS組成物が得られた。実施例6〜8は、夫々実施例1、3及び4と同一の鉄使用量において、処理温度及び時間を150℃、2時間としたものである。上記と同じく、いずれも得られたPPS組成物のL値は低く、暗色のPPS組成物が得られた。鉄の使用量を増加すると、PPS組成物中の鉄含有量が増加して、ホットプレスL値を低くできることが分かった。また、処理温度を高くすると、ホットプレスL値はより低くなる傾向にあった。
【0048】
一方、比較例1は、鉄化合物での処理をしなかったものである。ホットプレスL値は高く、その値は50を超えるもので明るく、暗色のPPSが得られなかった。
【0049】
【実施例9及び比較例2】
実施例1で得たPPS組成物及び比較例1で得たPPSの夫々100重量部に対して、ガラス繊維(CS 3PE945S、商標、日東紡績株式会社製)66.7重量部を配合し、ヘンシェルミキサーを使用して5分間予備混合して均一にした後、20mmφの二軸異方向回転押出機を用い、温度300℃、回転数400rpmで溶融混練してペレットを作成した。得られたペレットを射出成形機に供給し、シリンダー温度320℃、金型温度130℃で射出成形し、縦4cm×横8cm×高さ3cm×厚さ0.3cmの箱を作成した。
【0050】
一方、比較例1で得られたPPSを230℃に設定したオーブン中で16時間熱処理した。得られた架橋PPSの溶融粘度V6 は2030ポイズであり、ホットプレスL値は34.0であった。該PPSを用いて、上記と同じくして縦4cm×横8cm×厚さ0.3cmの上記箱の蓋を作成した。
【0051】
実施例1のPPS組成物で作った箱(L値は34.5である)と上記蓋は、色相がほぼ一致するためにバランスよく見栄えのする組合せであった。
【0052】
これに対して、比較例1のPPSで作った箱(L値は51.0である)は、上記蓋との色相が著しく相違しており、箱が明るく、蓋が暗いアンバランスな組合せであり、見栄えが悪いものであった。
【0053】
【実施例10及び比較例3】
着色剤としてカーボンブラック(HS‐D912678、商標、大日精化工業株式会社製)を配合した以外は、実施例9及び比較例2と同一にして、箱及び蓋を成形した。この際、カーボンブラックの配合量は、実施例1で得られたPPS組成物については該組成物100重量部に対して0.15重量部、比較例1で得られたPPSについては該PPS100重量部に対して0.45重量部、及び加熱処理して得た架橋PPSについては該PPS100重量部に対して0.15重量部であった。
【0054】
各箱及び蓋の衝撃強度及び引張強度は表2の通りであった。
【0055】
【表2】
上記のように、実施例10の箱の衝撃強度及び引張強度は高く、かつ箱と蓋との色合いのバランスは良好で美しいものであった。これに対して、比較例3の箱の衝撃強度及び引張強度は、カーボンブラックを多量に添加したため、実施例10と比べて著しく低かった。更に、比較例3の箱においては、多量のカーボンブラックを配合したにもかかわらず、十分な黒色を得ることができず、箱と蓋との色合いにバランスを欠くものであった。
【0056】
ここで、衝撃強度及び引張強度は、上記のようにして成形した各箱及び蓋から12.7×80×3mmのたんざく型のテストピースを切り出し、夫々ASTM
D256及びASTM D638に準拠して測定したものである。
【0057】
【発明の効果】
本発明は、暗色、かつカーボンブラックの少量の添加で良好な黒色の成形品を得ることができるPAS樹脂組成物の製造法を提供する。
Claims (2)
- ポリアリーレンスルフィドの水スラリーを、ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して0.005〜10重量部の鉄原子に相当する量の鉄化合物を含有する水溶液で処理することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造法。
- 鉄化合物の量が、ポリアリーレンスルフィド100重量部に対して0.01〜5重量部の鉄原子に相当する量である請求項1記載の方法。
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