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JP3552157B2 - 対導線配列及び対導線の端部接合方法及びそれを用いた回転電機の巻線製造方法 - Google Patents

対導線配列及び対導線の端部接合方法及びそれを用いた回転電機の巻線製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば回転電機のコイル導体に用いられる対導線配列及びその端部接合方法及びそれを用いた回転電機の巻線製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オルタネータなどの回転電機や電磁石などの種々の電機機器において、多数の電線をそれらの延線方向と直角の方向へ一列に並べ、電気絶縁性樹脂膜が剥離された各導体線の先端部を隣接する二本ずつ、近接あるいは密着させて対導線となし、各対導線の両導体線の先端部同士をはんだやろう材などの溶融型接合材を用いて一括接合する場合がある。
【0003】
従来例を図10を参照して説明する。
200は半田浴、201は導体線である。それぞれ電気絶縁性樹脂膜が剥離された先端部202を有して互いに密着して平行配置される一対の導体線201からなる対導線203を3対、所定ギャップを隔てて延線方向と直角な一方向へ順次配列して対導線配列が形成されている。204は対導線配列をはんだ浴から引き上げる際にできるはんだブリッジである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高密度化のために隣接する導体線対203、203間のギャップ(対間ギャップ)を縮小すると、図9に示すように、隣接する対導線203、203同士が溶融型接合材で電気的に接続されるいわゆるブリッジ接続が形成されるという問題があった。
【0005】
もちろん、対間ギャップを大きく取ればこのブリッジ接続を解消することができるが、その結果、多数の対導線を一列に並べてなる対導線配列の必要スペースが増大してしまう。
その他、上記ブリッジ接続した溶融型接合材の部分(ブリッジ部分という)204を熱風で溶融して吹き飛ばすことも考えられるが、対導線接合部分の必要な溶融型接合材も吹き飛ばしてしまうという問題が派生してしまう。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、接合信頼性の低下を招くことなく、溶融型接合材による接合を高密度に実現可能な対導線配列及びその端部接合方法及びそれを用いた回転電機の巻線製造方法を提供することを、その目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の対導線配列は、それぞれ電気絶縁性樹脂膜が剥離された先端部を有して前記先端部の一面と平行な方向にて所定の微小間隔を隔てて又は密着して延線方向へ平行配置される一対の導体線からなる対導線を複数、所定ギャップを隔てて前記延線方向と直角、かつ、前記先端部の前記一面と平行な方向へ順次配列してなり、各前記導体線の最先端部が前記延線方向同位置に配置され、前記導体線は角線からなる導体線群と、前記各導体線の前記最先端部から前記各導体線の前記先端部の所定部位までの濡れにより前記先端部の表面に被着されて、同一の前記対導線の互いに隣接する前記両導体線の先端部同士を接合する溶融型接合材からなる接合材部とを備える対導線配列であって、
前記対導線の一方の前記導体線の先端部は、前記対導線の他方の前記導体線に近接する側の部分が前記対導線の他方の前記導体線から遠ざかる側の部分よりも前記延線方向に長く形成された先細形状を有し、
前記対導線の他方の前記導体線の先端部は、前記対導線の一方の前記導体線に近接する側の部分が、前記対導線の一方の前記導体線から遠ざかる側の部分よりも前記延線方向に長く形成された先細形状を有することを特徴としている。
すなわち、高密度の対導線配列に関する上記課題を解決する請求項1記載の対導線配列を構成する各導体線は先端部を一列に揃えて延線方向同一に互いに平行に配置され、各先端部のうち互いに隣接する複数の先端部(通常は隣接する一対の先端部であるが、場合によっては一列に隣接する3本以上の先端部でもよい)づつ、溶融型接合材により接合される。当然、同一の対導線を構成する両導体線の先端部は側面を密接させて又は微小間隔を隔てて配置されるとともに、異なる対導線に属して隣接する二本の導体線間には所定のギャップ(対間ギャップ)が確保される。
【0008】
本構成では特に、互いに隣接して同一の対導線を構成する一対の導体線の両先端部の最先端部分がその基端部分よりも隣の対導線から遠ざかる形状(以下、先細形状ともいう)をもつ点を特徴とする。
このようにすれば、導体線の先端部がその最先端部分もその基端部分も等しい形状をもつ従来の各導体線を用いて対導線配列を形成するのに比較して、実質的な対間ギャップを増大することなく、導体線の先端部の最先端部分における上記対間ギャップを実質的に増大することができ、その結果として上記ブリッジの発生を低減することができる。
【0009】
なお、このブリッジについて更に説明する。
上記対導線配列の各導体線の先端部に被着した溶融型接合材を溶融したり、又は、上記先端部に溶融型接合材の融液を被着する場合、融液が導体線の主部の電気絶縁性樹脂膜側に付着するのを防止するために、導体線の先端部を最下方へ配置した姿勢を採用するのが通常であり、この場合、導体線の先端部に付着した融液はその自重により、最先端部分に移動する。したがって、異なる対導線に属して隣接する二本の導体線間の対間ギャップを上記手法により増大すればブリッジの発生が抑止される。
【0010】
請求項2記載の方法によれば請求項1記載の対導線配列において、前記各導体線は平角線からなり、前記各導体線の前記先端部の前記一面は、略直角三角形の形状をもつことを特徴としている。
請求項記載の方法によれば請求項1記載の対導線配列の端部を溶融型接合材で接合するに際し、各対導線の先端部を溶融型接合材により一括して接合する。
このようにすれば、ブリッジの発生を抑止しつつ、高密度の対導線配列の端部接続を高能率に行うことができる。
更に、上記対導線配列をなすように配列された導体線群の先端部を溶融型接合材の融液槽に降下させ、引き上げて接合を行う。このようにすれば各導体線の先端部に付着した余分の融液は、最先端部分の対間ギャップが十分広いのでブリッジを形成することなく槽に再落下することができ、ブリッジのない高密度対導線配列を高能率に作製することができる。
【0011】
請求項4記載の方法によれば請求項記載の対導線配列の端部接合方法において更に、導体線の先端部は、延線方向へ伸長するように、若しくは、延線方向及び導体線群配列方向と直角な方向へ伸長するように、導体線の先端部を塑性変形することにより実施されるので、切断屑が発生せず、工程を簡素化することができる。更に、導体線の先端部を、延線方向及び導体線群配列方向と直角な方向へ膨らませる場合には、同じ対導線をなす両導体線の接合面積を稼いで、接合信頼性を向上でき、線間電気抵抗を低減することができる。
【0012】
請求項5記載の方法によれば請求項又は記載の対導線配列の端部接合方法において更に、切断加工により導体線の先端部を上記先細形状に形成する。このようにすれば、上記先細形状を簡素な工程で実現することができる。
請求項6記載の方法によれば請求項5記載の対導線配列の端部接合方法を用いた回転電機の巻線製造方法において更に、長尺ワイヤから所定長さの前記導体線を切り出す際に、導体線の先端部が先細形状となるように切り出すので、先端部を先細形状とする工程を追加する必要がなく製造工程を短縮することができる。
【0013】
なお、その他の態様として、電気絶縁性樹脂膜で被覆されたワイヤ(被覆電線)から導体線を一定長さに切り出す前に、この導体線の端部となる部位の電気絶縁性樹脂膜を回転砥石により切削除去する。この際、この回転砥石により電気絶縁性樹脂膜を切削すると同時に導体線の先端部を先細形状に形成してもよい。
請求項7記載の方法によれば請求項2乃至のいずれか記載の対導線配列の端部接合方法を用いて、回転電機のコイルが作製される。
【0014】
このようにすれば、細切れの導体線を多数接続してコイルを作製できるので、従来のように長い導線をコアのスロットに順次巻装する代わりに、これら多数の短い導体線を各スロットに挿入して固定子コイルを作製するタイプのコイル製造方法を採用する場合に、各導体線の接続の信頼性を向上することができる。
【0015】
【発明を実施するための態様】
本発明の好適な態様を以下の実施例により説明する。
【0016】
【実施例1】
本発明の対導線配列及びその端部接合方法を用いた車両用交流発電機(いわゆるオルタネータ)の固定子コイルの製造方法の関連部分を図1に示す工程図を参照して以下に説明する。
(工程1)
まず銅系の導体線(被覆電線)1を準備し、その先端部2の電気絶縁性樹脂膜3を除去する。
(工程2)
次に、先端部2を斜めに切断して先細形状とする。導体線1としてはスロット占積率に優れた平角線が用いられ、その狭幅側の略平坦面を側面と呼称するものとする。したがって、導体線1の先端部2は、その一方の側面20の基端部分21から他方の側面22の最先端部分23に向けてその広幅側の主面24側からみて次第に延線方向へ突出する直角三角形の形状に形成される。
(工程3)
次に、各導体線1を一対づつ、それぞれの最先端部分23側の側面が互いに密着するように配列して対導線4を必要数作製し、更に、各対導線4の先端部2の最先端部分23を延線方向同位置に揃えつつ、各対導線4を所定の対間ギャップ5を挟んで延線方向と直角で主面24に平行な方向に配列し、図示しない治具により保持する。
(工程4、5、6)
次に、上記配列状態を維持しつつ治具により保持された対導線配列5の先端部2を、軟ろう材例えば溶融したSn100はんだの融液槽に降下し浸漬し、引き上げ、各対導線4の先端部2を一括接合する。
【0017】
これにより、隣接する対導線4間にブリッジが形成されることなく、各対導線の先端部2を一括接合することができる。
なお、上記実施例でははんだ融液槽への浸漬により接合を行ったが、噴流はんだ槽を用いたり、窒素や不活性ガスなどの無酸化雰囲気又はこの無酸化雰囲気に水素を適量添加した還元雰囲気にすることで、接合部のはんだ量が安定し、接合部抵抗値のばらつき低減が可能となる。
【0018】
使用する軟ろう材は、Sn100はんだの他に、PbーSn系はんだ、SnーZn系はんだ、Sn系はんだ、Pb系はんだ、Zn系はんだなどを用いてもよいことはもちろんである。導体線1がアルミニウム系である場合は、SnーZn系はんだ、Zn系はんだが有利である。また、各々の軟ろう材に適合した所定のフラックスを用いることも当然好ましいことである。その他、融液槽の融液又は対導線4に超音波を照射してフラックスを省略することも可能である。
【0019】
その他、接合に溶融型接合材を用いるものであれば、溶融型接合材の被着後、それを熱対流、超音波、レーザー光などで溶融してもよい。
(変形態様)
導体線1の先端部2の先細形状としては、上記実施例で用いた三角形形状(図2参照)の他、狭幅長方形形状(図3参照)、それらを組み合わせた形状(図3参照)など種々のものを採用することができる。
【0020】
また、電気絶縁性樹脂膜3は、導体線1の先細形状の先端部2の全てを剥離する必要はなく、同一の対導線4を構成する相手側の導体線1に接触する側面22及びその近傍部分のみを部分的に剥離してもよく(図5参照)、先端部2の最も細幅の部分のみ剥離してもよい(図6参照)。
【0021】
【実施例2】
他の実施例を図7を参照して以下に説明する。
この実施例では、長い導体線1aの一部の領域1bの電気絶縁性樹脂膜3が予め剥離されており、露出している。この領域1bを図示する切断位置wで斜めに切断することにより、必要な長さの導体線1の先端部2を上述した先細形状の先端部2を形成することができる。したがって、この実施例では、両端部2が先細形状となる導体線1を、予め電気絶縁性樹脂膜3の所定部分が剥離された長い導体線1aから切断する工程で自動的に作製することができる。
【0022】
上記切断工程の一例を図8を参照して更に詳しく説明する。
100は平角線コイル材ドラムであり、平角線1aが巻かれている。ドラム100から引き出された平角線1aはテンション部101で一対のテンションローラー102で所定の引っ張りテンションを与えられ、送り部103の図示しない一対の送りローラーにより所定速度で延線先端側へ送られている。
【0023】
104は多数の歪み取りローラー105を設けてなる歪み取り部であり、歪みを除去された平角線1aは第一はくり部106に送られ、その樹脂剥離すべき領域の電気絶縁性樹脂膜は、第一はくり部106に設けられた回転砥石により、一部(4つの主面と2つの角部)が除去され、残る二つの角部の皮膜残部が第二はくり部107で回転砥石により除去される。続いて、平角線1aは切断部108に送られ、所定長さに切断されて所定長さの平角線1となる。この切断部108において、切断刃は延線方向に対して斜めにセットされており、切断されて作製された平角線1の先端部2は先細形状となる。
【0024】
【実施例3】
他の実施例を図9を参照して以下に説明する。
この実施例では、先端部2の電気絶縁性樹脂膜3が剥離された平角線1の略直方体形状の先端部2を図1に示す三角形形状に変更するために、たとえばダイを用いて先端部2を先細形状に塑性変形して作製する。そしてこの時、余分となった部分で先端部2を厚肉化する(図8(c)参照)。このようにすれば、切り屑が出ないので、その処理が省略できるという利点及び、上記ブリッジの発生を抑止しつつ導体線1の先端部2の接合面積の増大を図ることができるという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の対導線配列の端部接合工程を示す工程図である。
【図2】図1の導体線の先端部の変形例を示す斜視図である。
【図3】図1の導体線の先端部の変形例を示す斜視図である。
【図4】図1の導体線の先端部の変形例を示す斜視図である。
【図5】図1の導体線の先端部の変形例を示す斜視図である。
【図6】図1の一対の回転砥石で研削された平角線の断面図である。
【図7】導体線の先端部を先細に形成する切断工程を示す説明図である。
【図8】図7に示す切断工程の自動化装置の模式図である。
【図9】導体線の先端部を塑性変形により導体線隣接方向と直角方向に膨らませた態様を示す模式斜視図であり、(a)は塑性変形前の斜視図、(b)は塑性変形後の正面図、(c)は塑性変形後の側面図である。
【図10】従来の対導線配列の端部接合工程を示す工程図である。
【符号の説明】
1は導体線、2はその先端部、3は電気絶縁性樹脂膜、4は対導線、5は対導線配列である。

Claims (7)

  1. それぞれ電気絶縁性樹脂膜が剥離された先端部を有して前記先端部の一面と平行な方向にて所定の微小間隔を隔てて又は密着して延線方向へ平行配置される一対の導体線からなる対導線を複数、所定ギャップを隔てて前記延線方向と直角、かつ、前記先端部の前記一面と平行な方向へ順次配列してなり、各前記導体線の先端部が前記延線方向同位置に配置され、前記導体線は角線からなる導体線群と、前記各導体線の前記最先端部から前記各導体線の前記先端部の所定部位までの濡れにより前記先端部の表面に被着されて、同一の前記対導線の互いに隣接する前記両導体線の先端部同士を接合する溶融型接合材からなる接合材部とを備える対導線配列であって、
    前記対導線の一方の前記導体線の先端部は、前記対導線の他方の前記導体線に近接する側の部分が前記対導線の他方の前記導体線から遠ざかる側の部分よりも前記延線方向に長く形成された先細形状を有し、
    前記対導線の他方の前記導体線の先端部は、前記対導線の一方の前記導体線に近接する側の部分が、前記対導線の一方の前記導体線から遠ざかる側の部分よりも前記延線方向に長く形成された先細形状を有することを特徴とする対導線配列。
  2. 請求項1記載の対導線配列において、
    前記各導体線は平角線からなり、前記各導体線の前記先端部前記一面は、略直角三角形の形状をもつことを特徴とする対導線配列。
  3. それぞれ電気絶縁性樹脂膜が剥離された先端部を有して前記先端部の一面と平行な方向にて所定間隔を隔てて又は密着して延線方向へ平行配置される一対の導体線からなる対導線を複数、所定ギャップを隔てて前記延線方向と直角、かつ、前記先端部の一面と平行な方向へ順次配列し、各前記導体線の先端部を前記延線方向同位置に配置し、前記導体線は角線からなる導体線群を準備し、
    前記各導体線の前記最先端部から前記各導体線の前記先端部の所定部位までの濡れにより前記先端部の表面に被着されて、同一の前記対導線の互いに隣接する前記両導体線の先端部同士を溶融型接合材で接合する対導線配列の端部接合方法であって
    前記対導線の一方の前記導体線の先端部を、前記対導線の他方の導体線に近接する側の部分が、前記対導線の他方の導体線から遠ざかる側の部分よりも前記延線方向に長く形成された先細形状に形成し、
    前記対導線の他方の前記導体線の先端部を、前記対導線の一方の前記導体線に近接する側の部分が前記対導線の一方の前記導体線から遠ざかる側の部分よりも前記延線方向に長く形成された先細形状に形成し、
    溶融型接合材の融液が貯溜された槽に前記導体線群の先端部を降下させて、前記導体線群の先端部を前記融液に浸漬し、引き上げ、前記導体線群の先端部に前記溶融型接合材を被着することにより、各対導線の先端部を前記溶融型接合材により一括して接合することを特徴とする対導線配列の端部接続方法。
  4. 請求項記載の対導線配列の端部接合方法において、
    前記導体線群の先端部を前記先細形状に形成する工程は、
    前記延線方向へ伸長するように、若しくは、前記延線方向及び前記導体線群配列方向と直角な方向へ伸長するように、前記導体線の前記先端部を塑性変形することにより実施されることを特徴とする対導線配列の端部接合方法。
  5. 請求項又は記載の対導線配列の端部接合方法において、
    前記導体線群の先端部を前記先細形状に形成する工程は、
    前記導体線の先端部を切断して実施されることを特徴とする対導線配列の端部接合方法。
  6. 請求項5記載の対導線配列の端部接合方法を用いた回転電機の巻線製造方法において、
    長尺ワイヤから所定長さの前記導体線を切り出す際に、前記導体線の前記先端部を前記先細形状とすることを特徴とする回転電機の巻線製造方法。
  7. 前記各導体線の前記先端部同士の前記接合により回転電機のコイルを構成することを特徴とする請求項乃至6のいずれか記載の対導線配列の端部接合方法を用いた回転電機の巻線製造方法。
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