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JP3551377B2 - インクジェットプリンタ - Google Patents

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JP3551377B2
JP3551377B2 JP2002029397A JP2002029397A JP3551377B2 JP 3551377 B2 JP3551377 B2 JP 3551377B2 JP 2002029397 A JP2002029397 A JP 2002029397A JP 2002029397 A JP2002029397 A JP 2002029397A JP 3551377 B2 JP3551377 B2 JP 3551377B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、印刷ヘッドから吐出したインク滴によって記録紙上に画像を印刷するインクジェットプリンタに関し、特に、記録紙の印刷面と印刷ヘッドとの間の間隔を記録紙の厚さに応じて調整するインクジェットプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、印刷ヘッドとプラテンとの間に記録紙を搬送するとともに、印刷ヘッドを搭載したキャリアをキャリアシャフトに沿って記録紙搬送方向に直交する方向に往復移動させ、この間に印刷ヘッドから吐出したインク滴によって記録紙の印刷面上に画像を印刷する。このようなインクジェットプリンタでは、記録紙の印刷面と印刷ヘッドとの間の間隔であるペーパーギャップが、記録紙上に印刷された画像の鮮明度に影響を与える。一方、インクジェットプリンタにおいて画像が印刷される記録紙としては普通紙だけでなく葉書や封筒等を含む様々な厚さのものがあり、画像が印刷される記録紙の厚さが変化するとペーパーギャップも変化して鮮明な画像を形成することができなくなる。
【0003】
このため、従来のインクジェットプリンタでは、画像が印刷される記録紙の厚さに応じて、印字ヘッド又はプラテンを記録紙の厚さ方向に移動させ、ペーパーギャップが一定になるように調整するギャップ調整機構が備えられている。このギャップ調整機構として、手動操作によるものでは、インクジェットプリンタの外部に露出したレバー等の操作部材に連動する偏心カムを介して、キャリアシャフトとともにキャリアを記録紙の厚さ方向に移動させることにより、ペーパーギャップを調整するようにしていた。
【0004】
一方、記録紙の厚さに応じて自動的に、又は、パーソナルコンピュータからの印刷要求に含まれる記録紙の設定データに基づいて、印字ヘッド又はプラテンを記録紙の厚さ方向に移動させるギャップ調整機構として、例えば、特開平7−137395号公報には、印字ヘッドを搭載したキャリアをキャリアシャフトとともにプラテンに対して接近及び離間する方向に往復移動自在に配置し、キャリアに備えられたラックギアと噛合するピニオンギアをモータによって正逆回転させることにより、印字ヘッドとプラテンとの間を通過する記録紙の厚さに応じたペーパーギャップを設けることができる位置にキャリアを位置させるようにした構成が開示されている。
【0005】
また、特開平9−323408号公報には、印刷ヘッドが位置する印刷領域を経由する記録紙搬送経路の全域にわたって下側面を構成するフレームを、記録紙の搬送方向における印刷領域の上流側下方において揺動自在に支持し、このフレームに記録紙の搬送方向における印刷領域の上流側及び下流側に配置された2つのローラのそれぞれに下方から圧接するローラを支持させ、印刷領域の下流側で上下のローラの間を通過する記録紙の厚さに応じてフレームを揺動することにより、印刷領域における記録紙上面の上下位置を記録紙の厚さに拘わらず常に一定に維持し、印刷領域におけるペーパーギャップを一定にするようにした構成が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、手動操作されるレバー等に連動した偏心カムを介してキャリアシャフトを移動させる構成や特開平7−137395号公報に開示された構成では、記録紙の搬送方向に直交する方向に往復移動するキャリアが摺動するキャリアシャフトを、記録紙の厚さに応じてキャリアとともにプラテンに接近又は離間する方向に移動させる必要があり、キャリアシャフトはその長手方向が記録紙の搬送方向に直交する状態を維持したままで所定範囲にわたって移動できるようにしなければならず、このための機構が複雑化する問題がある。
【0007】
また、特開平9−323408号公報に開示された構成では、記録紙の厚さに応じて記録紙搬送経路の下側面が揺動するため、記録紙の厚さによって記録紙の搬送状態が変化し、記録紙を常に安定して搬送することが困難になる問題がある。また、記録紙の搬送方向における印刷領域の下流側でフレームに支持された下側のローラから上側のローラに加わる圧接力が、弱過ぎる場合には下側のローラのみが下方に変位し、強過ぎる場合には記録紙が変形して下側のローラが変位せず、いずれの場合にもフレームが揺動しないため、下側のローラに作用させるべき適正な圧接力の設定が困難になる問題がある。さらに、記録紙の搬送方向における印刷領域の下流側に配置されたローラに記録紙が挟持されるまではフレームが揺動しないため、記録紙の前端から印刷領域の下流側に配置されたローラと印刷領域との間の距離までの範囲には鮮明な画像を形成することができない問題がある。
【0008】
この発明の目的は、キャリアシャフトや記録紙搬送経路の下側面を構成するフレームを移動させることなく、記録紙の厚さに応じて簡単な構成で印刷ヘッドを記録紙の厚さ方向に移動させることができ、印刷要求とともに入力される記録紙の厚さの設定データに基づいてペーパーギャップを常に適正に維持することができるインクジェットプリンタを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備えている。
【0010】
(1)記録紙の搬送方向に平行な一対のフレーム間に長手方向を記録紙の搬送方向に直交する方向にしてキャリアシャフトを配置し、このキャリアシャフトの長手方向に沿って印刷ヘッドを搭載したキャリアを往復移動させるインクジェットプリンタにおいて、
前記キャリアを、キャリアシャフトに外嵌するキャリア本体と、印刷ヘッドとの対向部における記録紙の厚さ方向の複数の位置に移動自在にしてキャリア本体に保持されるとともに印刷ヘッドを搭載した可動体と、から構成し、前記キャリアが一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動する毎にキャリア本体における前記記録紙の厚さ方向の可動体の位置を変化させる可動体移動機構を設け、記録紙の厚さに応じた回数だけ前記キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることを特徴とする。
【0011】
この構成においては、記録紙の厚さに応じた回数だけキャリアが一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動し、この移動回数に応じて印刷ヘッドとの対向部における記録紙の厚さ方向についてのキャリア本体に対する可動体の位置が変化する。可動体には印刷ヘッドが搭載されており、記録紙の厚さ方向における可動体の位置が変化すると、印刷ヘッドと記録紙の印刷面との間の間隔でペーパーギャップが変化する。このとき、キャリアシャフトに外嵌したキャリア本体は、変位しない。したがって、記録紙の厚さに応じた回数だけキャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることにより、印刷ヘッドを搭載した可動体のみが記録紙の厚さに対応して適正なペーパーギャップを実現する位置に移動し、キャリア本体及びキャリアシャフトは記録紙の厚さ方向に変位せず、キャリアシャフトを記録紙の厚さ方向に変位させるための構成が不要になる。
【0012】
上記の可動体移動機構は、可動体にキャリアの移動方向に連続して設けた記録紙の厚さ方向の凹部及び凸部と、
キャリア本体に設けた、キャリアの移動方向において前記凹部に嵌入する位置と前記凸部に当接する位置との間に移動自在にされるとともにキャリア本体から一方のフレーム側に突出した突出部が一体的に形成された前記記録紙の厚さ方向の突起と、突出部が一方のフレームに当接する毎に突起を前記凹部に嵌入する位置と前記凸部に当接する位置とに交互に変位させる変位機構と、
によって構成することができる。
【0013】
(2)前記可動体は、前記記録紙の厚さ方向における2位置の間に移動自在にして前記キャリア本体に保持され、前記可動体移動機構は、記録紙の厚さが変更される毎に前記キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることを特徴とする。
【0014】
この構成においては、記録紙の厚さが変更される毎にキャリアが一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動し、キャリア本体に対する可動体の位置が印刷ヘッドとの対向部における記録紙の厚さ方向についての2位置の一方から他方へ変化する。したがって、記録紙の厚さが薄手と厚手との間で変更される毎にキャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることにより、印刷ヘッドを搭載した可動体のみが記録紙の厚さに対応して適正なペーパーギャップを実現する2位置のいずれかに移動し、キャリア本体及びキャリアシャフトは記録紙の厚さ方向に変位せず、キャリアシャフトを記録紙の厚さ方向に変位させるための構成が不要になる。
【0015】
(3)前記可動体移動機構は、厚手の記録紙又は薄手の記録紙の何れか一方に対する印刷処理の開始時及び終了時に、前記キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることを特徴とする。
【0016】
この構成においては、厚手の記録紙又は薄手の記録紙の何れか一方に対する印刷処理の開始時及び終了時に、キャリアが一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動し、可動体が薄手の記録紙又は厚手の記録紙に対応する位置から厚手の記録紙又は薄手の記録紙に対応する位置に移動した状態で厚手の記録紙又は薄手の記録紙に対する印刷処理が行われ、この印刷処理の終了後には可動体が再び薄手の記録紙又は厚手の記録紙に対応した位置に移動する。したがって、薄手の記録紙又は厚手の記録紙の何れか一方に対応した位置を初期位置として記録紙の厚さに応じて可動体が変位し、可動体の位置の制御が簡略化される。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部の構成を示す外観図である。インクジェットプリンタ10は、内部において下側キャビネット12の上面に左右一対のフレーム13a,13bを平行に立設して備えており、このフレーム13a,13b間に円柱状のキャリアシャフト14が架設されている。下側キャビネット12の背面側には、給紙トレイ11が装着されており、この給紙トレイ11にセットされた記録紙が下側キャビネット12の前面側に向かって1枚ずつ給紙され、排紙ローラ15の回転によってインクジェットプリンタ10の外部に排出される。
【0018】
キャリアシャフト14は、記録紙の搬送経路の上方において、長手方向を記録紙搬送方向(矢印A方向)に直交する方向にして配置されている。このキャリアシャフト14には、底面に印刷ヘッドを露出したインクカートリッジ16が搭載されるキャリア1の一部が外嵌している。キャリア1の背面側の一部には、キャリアシャフト14に平行に配置されたタイミングベルト17の一部が固定されている。このタイミングベルト17には、駆動プーリ18を介して図示しないキャリアモータの正逆両方向の回転が伝達される。したがって、キャリア1は、キャリアモータの回転により、印刷ヘッドを記録紙の上面に対向させた状態で、矢印Aで示す記録紙搬送方向に直交する方向(矢印B及びC方向)に往復移動する。
【0019】
また、矢印Aで示す記録紙搬送方向における排紙ローラ15の上流側の位置には、平板状のプラテン19が配置されている。キャリア1に搭載された印刷ヘッドは、プラテン19の上面に対向しており、印刷位置を構成している。
【0020】
インクジェットプリンタ10においては、一例として、普通紙等の薄手の記録紙と葉書や封筒等の厚手の記録紙との厚さの異なる2種類の記録紙を印刷対象とすることができる。印刷対象となる記録紙の厚さが変化すると、キャリア1に搭載された印刷ヘッドとの対向部(印刷位置)において記録紙上面の上下位置が変化する。
【0021】
図2は、上記インクジェットプリンタにおけるキャリアの構成を示す分解図である。キャリア1は、キャリア本体2と可動体3とに大別される。キャリア本体2は、略平板状を呈し、背面側の下部に形成された軸受部21,22において前述のキャリアシャフト14に外嵌している。可動体3は、キャリア本体2に平行な垂直面3aとその下端に連続する水平面3bとからなる略L字形断面形状を呈し、一例として2個のインクカートリッジ16を水平面3bに載置した状態で保持する。このとき、インクカートリッジ16の底面に配置された印刷ヘッドが可動体3の水平面3bの下方に露出する。
【0022】
可動体3の垂直面3aの3箇所には長孔31〜33が長手方向を上下方向にして形成されており、キャリア本体2の前面の3箇所には可動体3の長孔31〜33のそれぞれに嵌入する円柱状の突起21〜23が形成されている。この突起21〜23が長孔31〜33内において上下方向に移動自在に嵌入した状態で、可動体3がキャリア本体2の前面側に装着される。したがって、可動体3はキャリア本体2に、長孔31〜33の長手方向の開口長さと突起21〜23の直径との差の範囲内で、上下方向に移動自在に保持される。この長孔31〜33の長手方向の開口長さと突起21〜23の直径との差は、普通紙等の薄手の記録紙の厚さと葉書や封筒等の厚手の記録紙の厚さとの差に等しくされている。
【0023】
一方、キャリア本体2は、前述のとおりインクジェットプリンタ10の下側キャビネット12から立設したフレーム13a,13bに支持されたキャリアシャフト14に外嵌しており、インクジェットプリンタ10において上下方向に変位することがない。このため、キャリア本体2における可動体3の上下位置が変化することにより、インクジェットプリンタ10における可動体3に搭載された印刷ヘッドの上下位置が変化する。したがって、薄手の記録紙が印刷対象とされている場合には可動体3をキャリア本体2に対する上下方向の移動範囲の下限に位置させ、厚手の記録紙が印刷対象とされている場合には可動体3をキャリア本体2に対する上下方向の移動範囲の上限に位置させることにより、印刷対象となる記録紙の厚さに拘わらず、印刷ヘッドと記録紙上面との間の間隔であるペーパーギャップを常に一定に維持することができる。
【0024】
このように、印刷対象となる記録紙の厚さの変化に応じてキャリア本体2における可動体3の上下位置を変位させることにより、ペーパーギャップを常に一定に維持するための構成として、この実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、以下に説明する可動体移動機構を備えている。
【0025】
即ち、可動体3の上端部における一方の側面側には、下向きの凹部4aと凸部4bとをキャリア1の往復移動方向であるキャリアシャフト14の長手方向に連続して形成した当接部材4が、支持部4cを介して上方に延出している。一方、キャリア本体2の上端部における一方の側面側には、ケース5が装着されるホルダ24が形成されている。このケース5には、上部に突起6aを備えるとともに一方の側面側に突出部6bを形成したラッチ6がラッチスプリング7を伴って収納される。ケース5は上面及び一方の側面において開放しており、ケース5内にラッチ6を収納した状態で、ラッチ6の突起6aを含む上面の一部がケース5の上方に露出し、ラッチ6の突出部6bがケース5の一方の側面から露出する。
【0026】
前述のように、長孔31〜33に突起21〜23を嵌入した状態で可動体3をキャリア本体2に保持させると、キャリア本体2においてケース5内に収納されたラッチ6の上面が当接部材4の凹部4a及び凸部4bの下方に対向する。キャリア1の往復移動方向において、ラッチ6に形成された突起6aの幅は、当接部材4に形成された凸部4bの幅に略等しくされている。ラッチ6は、ケース5内においてラッチスプリング7によって一方の側面側に付勢されつつ、キャリア1の往復移動方向に所定範囲内で移動自在にされている。したがって、ラッチ6をケース5内においてキャリア1の往復移動方向に移動させることにより、ラッチ6の突起6aが当接部材4の凹部4aに嵌入する位置又は凸部4bに当接する位置に選択的に移動する。
【0027】
図3は、上記インクジェットプリンタにおける変位機構の構成及び動作を説明する図である。なお、図3(A)〜(D)のそれぞれは、正面断面図及び上面断面図を上下に配置したものである。この実施形態に係るインクジェットプリンタ10における変位機構は、一例として、ラッチ6に形成された溝カム8と、ケース5において揺動自在に支持されたレバー9と、によって構成されている。レバー9は、一端の支点9bにおいてケース5に揺動自在に支持されているとともに、他端に溝カム8に嵌入する軸体9aが突出して形成されている。
【0028】
図3(A)に示すように、突起6aがケース5から一方の側面側に露出した状態から、図示しないラッチスプリング7の弾性力に抗してラッチ6を矢印B方向に移動させると、軸体9aが溝カム8内の傾斜部8aに沿って下端部8bまで下方に移動するのにともなってレバー9が図中反時計方向に揺動し、図3(B)に示す状態に変化する。なお、溝カム8内の傾斜部8aには、水平方向の段部が形成されており、軸体9aが下端部8bに達する間にレバー9は水平方向に弾性変形を生じる。また、この段部との当接により、軸体9aが傾斜部8aを上方に向かって移動しないようにされている。
【0029】
この後、ラッチ6に対する矢印B方向の作用力を解除すると、図示しないラッチスプリング7の弾性力によってラッチ6が矢印C方向に移動し、軸体9aが溝カム8内の傾斜部8cに沿って中間部8dまで上方に移動するのにともなってレバー9が図中時計方向に揺動し、図3(C)に示すように、突起6aがケース5内に位置した状態に変化する。
【0030】
このとき、ラッチ6はラッチスプリング7の弾性力によって矢印C方向に付勢されており、ラッチ9には軸体9aを介して溝カム8の傾斜部8cから図中時計方向の回転力が継続して作用する。しかし、溝カム8の中間部8dは軸体9aが斜め下方から嵌合する形状にされており、ラッチ6が矢印C方向に付勢されている限り、軸体9aが中間部8dから移動することはなく、レバー9が図中時計方向に揺動することもない。また、溝カム8の中間部8dに軸体9aが嵌合することにより、ラッチ6の矢印C方向の移動も規制されている。したがって、ラッチスプリング7の弾性力に抗した外力がラッチ6に作用しない限り、図3(C)に示す状態が維持される。
【0031】
図3(C)に示すように、突起6aがケース5内に位置した状態から、図示しないラッチスプリング7の弾性力に抗してラッチ6を矢印B方向に移動させると、軸体9aが溝カム8の中間部8dから外れて溝カム8の傾斜面8eに沿って水平部8fに露出するのにともなってレバー9が図中時計方向に揺動し、図3(D)に示す状態に変化する。
【0032】
この後、ラッチ6に対する矢印B方向の作用力を解除すると、図示しないラッチスプリング7の弾性力によってラッチ6が矢印C方向に移動し、軸体9aが溝カム8内の水平部8fを相対的に矢印B方向に移動し、図3(A)に示す状態に復帰する。なお、溝カム8内の水平部8fには、水平方向の段部が形成されており、軸体9aが水平部8fを移動する間にレバー9は水平方向に弾性変形を生じる。また、この段部との当接により、軸体9aが水平部8fを矢印C方向に移動しないようにされている。
【0033】
以上のようにして、この実施形態に係るインクジェットプリンタ10の変位機構によれば、ラッチ6に形成された溝カム8内をケース5に支持されたアーム9の軸体9aが移動することにより、ラッチ6に矢印B方向の外力を作用させる毎に、ラッチ6を図3(A)に示す突起6aがケース5から一方の側面側に露出した状態と、図3(C)に示す突起6aがケース5内に位置する状態と、に交互に変位される。
【0034】
以上のように構成された変位機構が、凹部4aと凸部4bとを備えた当接部材4、及び、突起6aと突出部6bを備えたラッチ6とともに、この発明の可動体移動機構を構成している。
【0035】
図4は、上記変位機構によるキャリア本体に対する可動体の移動状態を説明する図である。なお、図4(A)及び(B)は、何れも左側に部分破断側面図、右側に正面の部分断面図を配置したものである。図4(A)に示すように、ラッチ6が図3(A)に示した状態にあり、突起6aがケース5から一方の側面側に露出している状態では、突起6aは可動体3に形成された当接部材4の凸部4bに下側から当接する。これによって、可動体3はキャリア本体2において上方に移動し、可動体3に搭載された印刷ヘッド16aがプラテン19から離間する。
【0036】
これに対して、図4(B)に示すように、ラッチ6が図3(C)に示した状態にあり、突起6aがケース5内に位置している状態では、突起6aは可動体3に形成された当接部材4の凹部4aに下側から嵌入する。これによって、可動体3はキャリア本体2において下方に移動し、可動体3に搭載された印刷ヘッド16aがプラテン19に接近する。
【0037】
したがって、厚手の記録紙を印刷対象とする場合にはラッチ6を図3(A)に示す状態にし、薄手の記録紙を印刷対象とする場合にはラッチ6を図3(C)に示す状態にすることにより、印刷対象となる記録紙の厚さの変化に拘わらず、ペーパーギャップを常に一定に維持することができる。このとき、キャリア本体2の上下位置は変化しないため、キャリアシャフト14を上下方向に変位させる構成を備える必要がなく、インクジェットプリンタ10の構造を簡略化することができ、コストダウンを実現できる。
【0038】
この例では、ラッチ6を図3(A)に示した状態と図3(C)に示した状態との間に移動させるべくラッチ6に矢印B方向の外力を作用させるために、キャリア1を一方のフレーム13b側に通常移動範囲を超えて移動させ、ラッチ6の突出部6bをフレーム13bに当接させるようにしている。
【0039】
即ち、キャリア1は、通常の印刷処理時においては、印刷ヘッド16aが記録紙上面における印刷領域に対向する範囲で記録紙搬送方向に直交する矢印B及びC方向に往復移動され、フレーム13b側ではキャリア1は通常停止位置Paで矢印C方向の往動を停止して矢印B方向に復動する。これに対して、印刷対象の記録紙の厚さに応じて可動体3をキャリア本体2に対して上下方向に移動させる必要がある場合には、フレーム13b側において、キャリア1を通常停止位置Paを超えて変位時停止位置Pbまで矢印C方向にオーバーランさせる。これによって、ラッチ6の突出部6bがフレーム13bに矢印C方向に当接し、ラッチ6にはフレーム13bから矢印B方向の外力が作用し、ラッチ6の状態が図4(A)に示す状態又は図4(B)に示す状態から図4(B)に示す状態又は図4(A)に示す状態に変化する。
【0040】
図5は、上記インクジェットプリンタの制御部の構成を示すブロック図である。インクジェットプリンタ10の制御部20は、ROM22及びRAM23を備えたCPU21に、ヘッドドライバ24、キャリアモータドライバ25、搬送モータドライバ26、インタフェース27及び画像メモリ28を接続して構成されている。CPU21は、インタフェース27を介して画像データを含む印刷要求が図示しないパーソナルコンピュータ等の外部端末装置から入力されると、画像データを画像メモリ28に一旦格納した後、キャリアモータドライバ25及び搬送モータドライバ26に駆動データを出力しつつ、画像メモリ28から読み出した画像データに基づいてヘッドドライバ24に駆動データを出力する。
【0041】
ヘッドドライバ24は、CPU21から出力された駆動データに基づいて印刷ヘッド16aを駆動し、インクカートリッジ16内のインクを吐出させる。キャリアモータドライバ25は、CPU21から出力された駆動データに基づいてキャリアモータ29を駆動し、キャリア1を記録紙搬送方向に直交する方向に往復移動させる。搬送モータドライバ26は、CPU21から出力された駆動データに基づいて搬送モータ30を駆動し、図示しない給紙ローラ及び排紙ローラ15を回転させて給紙トレイ11にセットされた記録紙を搬送する。
【0042】
図6は、上記インクジェットプリンタの制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部20のCPU21は、外部端末装置から印刷要求が入力されると(s1)、印刷要求に含まれる紙厚の選択データにより印刷対象として厚手の記録紙が選択されているか否かの判別を行う(s2)。CPU21は、厚手の記録紙が印刷対象として選択されている場合にはキャリア1をフレーム13b側に通常停止位置Paから変位時停止位置Pbまでオーバーランさせた後(s3)、薄手の記録紙が印刷対象として選択されている場合にはそのまま、キャリア1を印刷開始時のホームポジションに位置させる(s4)。
【0043】
CPU21は、この状態で記録紙を搬送し、かつ、キャリア1を往復移動させつつ、印刷要求に含まれる画像データに基づいて印刷ヘッド16aを駆動し、記録紙に対する印刷処理を行う(s5)。印刷要求に係る印刷処理が終了すると、CPU21は、厚手の記録紙に対する印刷処理であったか否かの判別を行い(s6)、厚手の記録紙に対する印刷処理であった場合にはキャリア1をフレーム13b側に通常停止位置Paから変位時停止位置Pbまでオーバーランさせた後(s8)、薄手の記録紙に対する印刷処理であった場合にはそのまま、印刷要求の入力を待機する状態に戻る。
【0044】
以上の処理により、この例では、外部端末装置にインストールされているプリンタドライバによって外部端末装置のディスプレイに表示される設定画面内で、印刷対象として葉書や封筒等の厚手の記録紙を選択することにより、厚手の記録紙に対する印刷処理の開始時及び終了時に、キャリア1をフレーム13b側にオーバーランさせてラッチ6の突出部6bをフレーム13bに当接させ、可動体3をキャリア本体2に対して上下に変位させることができる。
【0045】
したがって、初期状態において可動体3を薄手の記録紙に対応したキャリア本体2における下方位置(図4(B)に示す位置)にしておき、厚手の記録紙に対する印刷処理中においてのみ可動体3を厚手の記録紙に対応したキャリア本体2における上方位置(図4(A)に示す位置)にし、印刷対象となる記録紙の厚さに応じてペーパーギャップを一定に維持すべく可動体3を変位させる制御を簡略化することができる。
【0046】
なお、印刷対象として厚手の記録紙が選択される頻度が薄手の記録紙が選択される頻度に比較して多い場合には、初期状態において可動体3を厚手の記録紙に対応したキャリア本体2における上方位置(図4(A)に示す位置)にしておき、薄手の記録紙が選択された場合に上記s3及びs7の処理を行うことにより、可動体を変位させる回数を減少させることができる。
【0047】
また、この発明のインクジェットプリンタに設けられる変位機構としては、図3に示したようにラッチ6に形成した溝カム8にケース5に支持したレバー9の軸体9aを係合させるものに限らず、ラッチ6に矢印B方向の外力が作用する毎に突起6aが当接部材4の凹部4aに嵌入する位置と凸部4bに当接する位置とにラッチ6を交互に変位させ得る任意の構成を用いることができる。
【0048】
さらに、通常移動範囲を超えてキャリア1が移動した際に、ラッチ6に矢印B方向の外力を作用させるためには、ラッチ6の突出部6bをフレーム13bに当接させること以外の方法も考えられるが、何らかの部材の追加が必要となり、装置の大型化やコストの上昇を招く可能性がある。また、キャリア1が通常移動範囲内にある状態で、ラッチ6に矢印B方向の外力を作用させることも考えられるが、この場合にも何らかの部材の追加が必要となり、装置の大型化やコストの上昇を招く可能性がある。したがって、通常移動範囲を超えてキャリア1が移動した際に、ラッチ6の突出部6bをフレーム13bに当接させてラッチ6に矢印B方向の外力を作用させることが、装置の小型化及びコストの低廉化に最善の構成である。
【0049】
加えて、上記の実施形態では、可動体3をキャリア本体2に対して厚手の記録紙に対応する上側の位置と薄手の記録紙に対応する下側の位置との2位置に交互に変位させるようにした構成について説明したが、厚さの異なる3種類以上の記録紙に対応して、ラッチ6に矢印B方向の外力が作用する毎に可動体3をキャリア本体2に対して上下方向の3箇所以上の位置のそれぞれに循環して変位させるようにすることもできる。
【0050】
【発明の効果】
この発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0051】
(1)記録紙の厚さに応じた回数だけキャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることにより、キャリア本体及びキャリアシャフトを記録紙の厚さ方向に変位させることなく、印刷ヘッドを搭載した可動体のみを記録紙の厚さに対応した適正なペーパーギャップを実現する位置に移動させることができ、キャリアシャフトを記録紙の厚さ方向に変位させるための構成を不要にして装置の小型化及びコストダウンを実現することができる。
【0052】
(2)記録紙の厚さが変更される毎にキャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させ、キャリア本体に対する可動体の位置を印刷ヘッドとの対向部における記録紙の厚さ方向についての2位置の一方から他方へ変化させることにより、キャリア本体及びキャリアシャフトを記録紙の厚さ方向に変位させることなく、印刷ヘッドを搭載した可動体のみを記録紙の厚さに対応して適正なペーパーギャップを実現する2位置のいずれかに移動させることができ、キャリアシャフトを記録紙の厚さ方向に変位させるための構成を不要にして装置の小型化及びコストダウンを実現することができる。
【0053】
(3)厚手の記録紙又は薄手の記録紙の何れか一方に対する印刷処理の開始時及び終了時に、キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させ、可動体を薄手の記録紙又は厚手の記録紙に対応する位置から厚手の記録紙又は薄手の記録紙に対応する位置に移動させた状態で厚手の記録紙又は薄手の記録紙に対する印刷処理を行い、この印刷処理の終了後に可動体を再び薄手の記録紙又は厚手の記録紙に対応した位置に移動させることにより、薄手の記録紙又は厚手の記録紙の何れか一方に対応した位置を初期位置として記録紙の厚さに応じて可動体を変位させることができ、可動体の位置の制御を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの要部の構成を示す外観図である。
【図2】上記インクジェットプリンタにおけるキャリアの構成を示す分解図である。
【図3】上記インクジェットプリンタにおける変位機構の構成及び動作を説明する図である。
【図4】上記変位機構によるキャリア本体に対する可動体の移動状態を説明する図である。
【図5】上記インクジェットプリンタの制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】上記インクジェットプリンタの制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1−キャリア
2−キャリア本体
3−可動体
4−当接部材
4a−凹部
4b−凸部
6−ラッチ
6a−突起
6b−突出部
7−ラッチスプリング
8−溝カム
9−レバー
9a−軸体
10−インクジェットプリンタ
13a,13b−フレーム
14−キャリアシャフト

Claims (4)

  1. 記録紙の搬送方向に平行な一対のフレーム間に長手方向を記録紙の搬送方向に直交する方向にしてキャリアシャフトを配置し、このキャリアシャフトの長手方向に沿って印刷ヘッドを搭載したキャリアを往復移動させるインクジェットプリンタにおいて、
    キャリアを、キャリアシャフトに外嵌するキャリア本体と、印刷ヘッドとの対向部における記録紙の厚さ方向の2位置の間に移動自在にしてキャリア本体に保持されるとともに印刷ヘッドを搭載した可動体と、から構成し、
    可動体に、前記記録紙の厚さ方向の凹部及び凸部をキャリアの移動方向に連続して設け、
    キャリア本体に、キャリアの移動方向において前記凹部に嵌入する位置と前記凸部に当接する位置との間に移動自在にされるとともにキャリア本体から一方のフレーム側に突出した突出部が一体的に形成された前記記録紙の厚さ方向の突起と、突出部が一方のフレームに当接する毎に突起を前記凹部に嵌入する位置と前記凸部に当接する位置とに交互に変位させる変位機構と、を設け、
    記録紙の厚さに応じた回数だけ前記突出部を前記一方のフレームに当接させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
  2. 記録紙の搬送方向に平行な一対のフレーム間に長手方向を記録紙の搬送方向に直交する方向にしてキャリアシャフトを配置し、このキャリアシャフトの長手方向に沿って印刷ヘッドを搭載したキャリアを往復移動させるインクジェットプリンタにおいて、
    前記キャリアを、キャリアシャフトに外嵌するキャリア本体と、印刷ヘッドとの対向部における記録紙の厚さ方向の複数の位置に移動自在にしてキャリア本体に保持されるとともに印刷ヘッドを搭載した可動体と、から構成し、前記キャリアが一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動する毎にキャリア本体における前記記録紙の厚さ方向の可動体の位置を変化させる可動体移動機構を設け、記録紙の厚さに応じた回数だけ前記キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることを特徴とするインクジェットプリンタ。
  3. 前記可動体は、前記記録紙の厚さ方向における2位置の間に移動自在にして前記キャリア本体に保持され、前記可動体移動機構は、記録紙の厚さが変更される毎に前記キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
  4. 前記可動体移動機構は、厚手の記録紙又は薄手の記録紙の何れか一方に対する印刷処理の開始時及び終了時に、前記キャリアを一方のフレーム側に通常移動範囲を超えて移動させることを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
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