JP3545888B2 - 脱臭フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱臭フィルターに係り、特にアセトアルデヒドと他の悪臭成分とを同時に除去可能な脱臭フィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
室内や車内などの居住空間においては、様々な種類の悪臭が発生するが、中でも、近年焦点になっている煙害問題などにより、たばこ臭の除去に対する要求が高まってきている。
たばこ臭の主成分は、アセトアルデヒド、アンモニア、酢酸などであるが、この中では、アセトアルデヒドの臭気が最も強く、また、アセトアルデヒドは、他の臭気成分に比して、除去が難しい物質である。
【0003】
その理由は、アセトアルデヒドなどの低級脂肪族アルデヒドが、脱臭剤として代表的な活性炭やゼオライトなどへの吸着性が低いという特異な特性を持っているからである。
更に低級脂肪族アルデヒドは、これら活性炭やゼオライトの吸着力改善のために、表面に添着される酸や塩基性物質などとの反応性も低いという問題もある。この課題に対して、特に低級脂肪族アルデヒドの除去性能を強調した脱臭剤もしくは空気浄化剤が、従来より種々提案されてきた。
【0004】
例えば、特公昭60−54095号や特開平3−98642号では、活性炭にアニリンやリン酸アニリンを添着したものが提案されている。
また、特開平4−2350号や特開平5−23588号では、活性炭にアミノ酸やアミノ安息香酸を添着したものが提案されている。
活性炭以外には、特公平5−16299号でゼオライトなどのアルミノシリケートが、特公平6−22673号でセピオライトが、特開平7−136502号で活性炭素繊維にアミノベンゼンスルフォン酸(スルファニル酸)を添着したものが、各々提案されている。
【0005】
しかしながら、これら従来の脱臭剤もしくは空気浄化剤は、低級脂肪族アルデヒドの除去に対して実用的では無いという問題がある。
例えば、アニリンやリン酸アニリンは、低級脂肪族アルデヒドの除去性能は優れるものの、臭気が強く、一般向けの脱臭剤もしくは空気浄化剤として使用しにくい問題がある。
また、ゼオライトやセピオライトなどの金属酸化物や、アミノ酸やアミノ安息香酸などの有機物質は、活性炭と組み合わせても、低級脂肪族アルデヒドの除去性能が、アニリンよりも劣る問題がある。
更に、アミノベンゼンスルフォン酸(スルファニル酸)も、前記金属酸化物やアミノ酸類などよりは、低級脂肪族アルデヒドの除去性能に優れるものの、アニリンよりは劣るという問題がある。
【0006】
したがって、低級脂肪族アルデヒドの除去効率が高く、望ましくは、他のアンモニア、酢酸などの臭気成分の除去を同時に行えることが、この種の脱臭剤もしくは空気浄化剤に求められている技術的課題である。
【0007】
かかる事情に鑑み、特に、低級脂肪族アルデヒドの除去性能に優れるとともに、他の臭気成分も同時に除去可能な空気浄化剤を提供するため、本発明者等は、先に、特願平8−167579号として、活性炭などの多孔質体に加えて、芳香族アミン類および選択的に亜鉛化合物を含有する空気浄化剤を提案した。
この空気浄化剤は、特に、スルファニル酸などのアミノ基とスルフォン基を有する芳香族アミン類を選択した場合に、良好な脱臭性能を得ている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この空気浄化剤に有機バインダーを加え、押出法などにより、ハニカムなどのモノリス状の脱臭フィルターに成型した場合、成型体が乾燥後に崩壊してしまうという問題が生じる。
これは、成型のために必須の有機バインダーが、スルファニル酸などの酸性の強い芳香族アミン類により劣化し、成型体の強度確保に必要なバインダー量が不足することからくる。
そして、この問題は、▲1▼脱臭フィルター=成型体としての必要強度が得られない、▲2▼成型体必要強度を得るためにはスルファニル酸の含有量を制限する必要がある、▲3▼スルファニル酸の含有量を制限すれば、脱臭性能が落ちる、という実用上の問題につながる。
【0009】
したがって、本発明は、活性炭などの多孔質体に加えて、アミノ基とスルフォン基を有する芳香族アミン類および亜鉛化合物の両者を含有する空気浄化剤混合物の脱臭性能を落とさずに、必要強度や形状に成型可能とした脱臭フィルターを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このための、本発明の手段は、アミノ基とスルフォン基とを有する芳香族アミン類と、多孔質体とを含む空気浄化剤混合物を、有機バインダーによりモノリス状(柱状)に成型した脱臭フィルターであって、前記空気浄化剤混合物中に塩基性化合物(但し、アニリンおよびリン酸アニリンを除く)を含むことである。
【0011】
塩基性化合物を含むことで、スルファニル酸などの芳香族アミン類の一部を塩にし、酸性度を低下させて、有機バインダーの劣化を防止する。これにより、空気浄化剤に有機バインダーを加え、押出法などにより、ハニカムなどのモノリス状の脱臭フィルターに成型する場合の、成型体の強度低下を防止できる。
【0012】
この際、一方で空気浄化剤混合物の脱臭性能を落とさないよう、前記空気浄化剤混合物中の芳香族アミン類と塩基性化合物との量を調節することが好ましい。なぜなら、塩基性化合物を含ませ、スルファニル酸の一部を塩にすることで、スルファニル酸自体の脱臭性能は低下するからである。
通常、芳香族アミン類の中のアミノ基とスルフォン基が、脱臭性能に寄与しており、アセトアルデヒドに対してはアミノ基が、アンモニアに対してはスルフォン基が各々作用する。
したがって、塩基性化合物によりスルフォン基が中和されれば、スルフォン基によるアンモニア除去性能が落ちることになる。
【0013】
本発明者らの知見によれば、粉砕した成型体懸濁液(但し、水100ccに対し粉砕成型体を1gの割合で懸濁させる)のPHが3以上になるよう、空気浄化剤混合物中の芳香族アミン類と塩基性化合物との量を調節することが好ましく、この範囲に芳香族アミン類と塩基性化合物との量を調節すれば、脱臭性能を落とさずに、有機バインダーの劣化を防止できる。
【0014】
これは、PHが3以上になる領域では、有機バインダーの劣化を防止できるだけの塩基性化合物による芳香族アミン類の中和が行われており、一方、中和により減少はするものの、芳香族アミン類の絶対量も確保されているため、脱臭性能の低下が少ないものと推考される。
【0015】
【発明の実施の形態】
低級脂肪族アルデヒドの除去用に従来から提案されている芳香族アミン類は、ある程度の低級脂肪族アルデヒドの除去性能を有するが、この芳香族アミン類に、亜鉛化合物を併用すると、低級脂肪族アルデヒドの除去性能を飛躍的に向上させるとともに、他の臭気成分の除去性能も落とさず、除去可能である。
このメカニズムは定かではないが、亜鉛化合物は、芳香族アミン類とアルデヒドとの反応における触媒としての機能を発揮するためと推考される。
【0016】
本発明において、アミノ基とスルフォン基を有する芳香族アミン類としては、特にスルファニル酸などが、脱臭性能上から好ましい。
芳香族アミン類に、低級脂肪族アルデヒドの除去性能を発揮させるためには、多孔質体100重量部に対し、芳香族アミン類を3重量部以上とすることが望ましい。これ未満では、空気浄化剤としての効果の持続時間が短くなり実用的ではない。また、逆に、芳香族アミン類の添着量が50重量部を超えると、多孔質体の単体としての効果が低くなるので、これ以下の添着量とすることが好ましい。
【0017】
なお、脱臭剤の機能向上のために金属や金属化合物触媒を併用することは公知であり、例えば、特公平5−16299号にはアルミノシリケートに、鉄や銅などの遷移金属成分を保持させることが開示されている。
しかしながら、本発明者らの知見によれば、亜鉛化合物以外の、鉄や銅などの遷移金属金属化合物を用いても、芳香族アミン類とアルデヒドとの反応における触媒としての機能は無かった。
亜鉛化合物に、触媒機能を発揮させるためには、芳香族アミン類100重量部に対して、3重量部以上とすることが望ましい。これ未満では、触媒機能が小さく、反応時間が長くなり実用的ではない。
また、50重量部を超えて含有しても、触媒機能は飽和し、実用的でないので、これ以下の添着量とすることが好ましい。
【0018】
本発明において塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムの他、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属化合物、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、などが適宜使用可能である。
【0019】
次に、亜鉛化合物について、本発明においては、亜鉛化合物として塩化亜鉛を用いることが望ましいが、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛アンモニウムなども適用可能である。
【0020】
更に、本発明における多孔質体について、以下説明する。
多孔質体としては、活性炭、ゼオライト、活性アルミナ、シリカ、シリカゲル、ケイソウ土、炭素繊維などが適宜使用できる。これらの多孔質体は、それ自身脱臭性能を有するものが多い。
本発明において、低級脂肪族アルデヒド以外の臭気成分の除去も考慮すると、多孔質体それ自身に脱臭性能を有するものが好ましい。特に、活性炭は、低級脂肪族アルデヒド以外の他の多くの臭気成分の除去性能を有するものとして本発明における多孔質体として、特に好ましい。
【0021】
本発明における脱臭フィルターは、この多孔質体を含んでハニカムなどのモノリス状に成型されているので、室内や車内の空気清浄器内や通気口に適宜簡便に配置でき、取り替えや保守が簡単であるなどの使用上の利点が多い。
【0022】
【実施例】
まず、空気浄化剤をハニカム状モノリスに成型した脱臭フィルターを、以下の通り製作し、空気浄化剤組成の成型性に対する影響をテストした。
空気浄化剤は、多孔質体としては粉末状の活性炭、芳香族アミン類としてスルファニル酸、亜鉛化合物として塩化亜鉛、塩基性化合物として水酸化ナトリウムを各々選択した。
これらの空気浄化剤成分のうち、特に、スルファニル酸と水酸化ナトリウムとの配合比を変えたものを各々混合し、さらに、有機バインダーを加えて水で希釈し、よく混練したものを、押出成型したのち、乾燥させて、ハニカム状モノリスを得た。
【0023】
そして、得られたハニカム状モノリスを観察し、押出乾燥後にハニカムが崩壊したものを×とし、若干の亀裂が生じたが形状を保ったものを○、亀裂も無く形状も良好なものを◎として、成型性を評価した。
このハニカム状モノリスの、空気浄化剤配合条件と成型性評価結果を、表1に示す。なお、配合量は重量部で表している。また、スルファニル酸と水酸化ナトリウムとのモル比と、成型後の各ハニカム状モノリスを粉砕し、水100ccに対し粉砕成型体を1gの割合で懸濁させた成型体懸濁液のPHとの測定結果も、合わせて示す。
【0024】
表1のNo.1、2に示す、水酸化ナトリウムを含まない比較例は、成型体への成型ができなかった。
【0025】
また、No.3、7、10、14は本発明例ではあるものの、スルファニル酸に対する水酸化ナトリウムの量が少ないため、有機バインダーの劣化が若干生じており、他の本発明例に比して、成型性が若干劣っている。
【0026】
一方、No.4〜6、8〜9、11〜13、15〜16の本発明例は、スルファニル酸に対する水酸化ナトリウムの量が適正であり(成型体懸濁液のPHが3以上)スルファニル酸は、有機バインダーを劣化させない程度に、水酸化ナトリウムにより中和されており、成型性が特に良好である。また、後述する通り脱臭に必要なスルファニル酸量も確保されており、脱臭性能も十分確保されている。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、前記表1のうち、No.4〜6、8〜9、11〜13、15〜16の本発明例であるハニカム状モノリスに成型した脱臭フィルターの、アセトアルデヒド、アンモニアの2成分に対する脱臭率の測定を行った。なお、比較例のNo.1、2、は、前記した通り、ハニカム状モノリス脱臭フィルターに成型できなかったので、脱臭率の測定は出来なかった。また、本発明例であるNo.3、7、10、14のものは、成型体に若干の亀裂が生じており、脱臭フィルターとして使用できないことはないが、脱臭率の測定対象からは除外した。
【0029】
脱臭率測定のための流通試験は、所定濃度の前記悪臭成分ガスを混合した空気を、0.2m/sの流速で脱臭フィルター内に流し、入口および出口の悪臭ガス濃度を各々測定して行い、次式を用いて脱臭率を算出した。
脱臭率(%)=〔(Ci−Co)/Ci〕×100、(但し、Ci:悪臭成分ガス入口濃度、Co:悪臭成分ガス出口濃度)、
なお、悪臭成分ガス2成分の濃度は、アセトアルデヒド、アンモニアとも15ppmとした。
【0030】
各々のフィルターの悪臭成分ガスに対する脱臭性能(除去率)と、スルファニル酸に対する水酸化ナトリウムの量(水酸化ナトリウム/スルファニル酸のモル比)との関係を、図1〜4に示す。図中の横軸に記入した番号は、各々表1の試料番号に対応している。
また、アセトアルデヒドの除去率が35%以上で、且つアンモニアの除去率が55%以上のものを○、その中でも特に除去率が高いものを◎として表1にも示した。
【0031】
図1〜4の通り、スルファニル酸に対する水酸化ナトリウムの量が増加するほど、アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭性能は低下する傾向にある。
これに対して、スルファニル酸に対する水酸化ナトリウムの量が少ないほど、アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭性能は優れる。
本発明ではハニカム状などのモノリス脱臭フィルターへの成型性を重視しているが、アセトアルデヒドの除去率が35%以上で、且つアンモニアの除去率が55%以上の、脱臭フィルターとしての実用的な脱臭性能を確実に確保するためには、スルファニル酸に対する水酸化ナトリウムの量、即ち、水酸化ナトリウム/スルファニル酸のモル比が0.9以下、より好ましくは0.7以下であることが好ましい。
【0032】
また、同じスルファニル酸量であっても、塩化亜鉛を含む方が(図1のスルファニル酸20重量部と、図2のスルファニル酸20重量部+塩化亜鉛0.75重量部との対比、図2のスルファニル酸30重量部と、図4のスルファニル酸30重量部+塩化亜鉛1.1重量部との対比)アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭性能は優れる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明脱臭フィルターによれば、活性炭などの多孔質体に加えて、アミノ基とスルフォン基を有する芳香族アミン類を含有する空気浄化剤の脱臭性能を落とさずに、必要強度に成型した脱臭フィルターを得ることが可能である。
したがって、用途に応じて所望の形状の脱臭フィルターを得ることが可能となり、脱臭フィルターの種々の用途での実用化に道を開いた点で、その工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るハニカム状脱臭フィルター(表1のNo.4〜6)の、空気浄化剤組成と、アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭率との関係を示す説明図である。
【図2】本発明に係るハニカム状脱臭フィルター(表1のNo.8〜9)の、空気浄化剤組成組成と、アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭率との関係を示す説明図である。
【図3】本発明に係るハニカム状脱臭フィルター(表1のNo.11〜13)の、空気浄化剤組成と、アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭率との関係を示す説明図である。
【図4】本発明に係るハニカム状脱臭フィルター(表1のNo.15〜16)の、空気浄化剤組成と、アセトアルデヒドやアンモニアに対する脱臭率との関係を示す説明図である。
Claims (6)
- アミノ基とスルフォン基を有する芳香族アミン類と、多孔質体とを含む空気浄化剤混合物を、有機バインダーによりモノリス状に成型した脱臭フィルターであって、前記空気浄化剤混合物中に塩基性化合物(但し、アニリンおよびリン酸アニリンを除く)を含むことを特徴とする脱臭フィルター。
- 前記空気浄化剤混合物中に、更に亜鉛化合物を含む請求項1に記載の脱臭フィルター。
- 前記空気浄化剤混合物中の芳香族アミン類と塩基性化合物との量を、粉砕した成型体懸濁液(但し、水100ccに対し粉砕成型体を1gの割合で懸濁させる)のPHが3以上になるよう調整した請求項1又は2に記載の脱臭フィルター。
- 前記芳香族アミン類がスルファニル酸である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の脱臭フィルター。
- 前記亜鉛化合物が塩化亜鉛である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の脱臭フィルター。
- 前記多孔質体が活性炭である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の脱臭フィルター。
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