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JP3478279B2 - 電界放射型電子源の製造方法 - Google Patents

電界放射型電子源の製造方法

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Publication number
JP3478279B2
JP3478279B2 JP2001145526A JP2001145526A JP3478279B2 JP 3478279 B2 JP3478279 B2 JP 3478279B2 JP 2001145526 A JP2001145526 A JP 2001145526A JP 2001145526 A JP2001145526 A JP 2001145526A JP 3478279 B2 JP3478279 B2 JP 3478279B2
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electric field
electron source
strong electric
layer
hydrogen
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JP2001145526A
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由明 本多
浩一 相澤
卓哉 菰田
勉 櫟原
祥文 渡部
崇 幡井
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Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
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Publication date
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体材料を用い
て電界放射により電子線を放射するようにした電界放射
型電子源の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、電界放射型電子源として、例
えば米国特許3665241号などに開示されているい
わゆるスピント(Spindt)型電極と呼ばれるものがあ
る。このスピント型電極は、微小な三角錐状のエミッタ
チップを多数配置した基板と、エミッタチップの先端部
を露出させる放射孔を有するとともにエミッタチップに
対して絶縁された形で配置されたゲート層とを備え、真
空中にてエミッタチップをゲート層に対して負極として
高電圧を印加することにより、エミッタチップの先端か
ら放射孔を通して電子線を放射するものである。
【0003】しかしながら、スピント型電極は、製造プ
ロセスが複雑であるとともに、多数の三角錐状のエミッ
タチップを精度良く構成することが難しく、例えば平面
発光装置やディスプレイなどへ応用する場合に大面積化
が難しいという問題があった。また、スピント型電極
は、電界がエミッタチップの先端に集中するので、エミ
ッタチップの先端の周りの真空度が低くて残留ガスが存
在するような場合、放射された電子によって残留ガスが
プラスイオンにイオン化され、プラスイオンがエミッタ
チップの先端に衝突するから、エミッタチップの先端が
ダメージ(例えば、イオン衝撃による損傷)を受け、放
射される電子の電流密度や効率などが不安定になった
り、エミッタチップの寿命が短くなってしまうという問
題が生じる。したがって、スピント型電極では、この種
の問題の発生を防ぐために、高真空(約10-5Pa〜約
10-6Pa)で使用する必要があり、コストが高くなる
とともに、取扱いが面倒になるという不具合があった。
【0004】この種の不具合を改善するために、MIM
(Metal Insulator Metal)方式やMOS(Metal Oxid
e Semiconductor)型の電界放射型電子源が提案されて
いる。前者は金属−絶縁膜−金属、後者は金属−酸化膜
−半導体の積層構造を有する平面型の電界放射型電子源
である。しかしながら、このタイプの電界放射型電子源
において電子の放出効率を高めるためには(多くの電子
を放射させるためには)、上記絶縁膜や上記酸化膜の膜
厚を薄くする必要があるが、上記絶縁膜や上記酸化膜の
膜厚を薄くしすぎると、上記積層構造の上下の電極間に
電圧を印加した時に絶縁破壊を起こす恐れがあり、この
ような絶縁破壊を防止するためには上記絶縁膜や上記酸
化膜の膜厚の薄膜化に制約があるので、電子の放出効率
(引き出し効率)をあまり高くできないという不具合が
あった。
【0005】これらに対し、電子の放出効率を高めるこ
とができる電界放射型電子源として、近年では、例えば
特開平8−250766号公報に開示されているよう
に、シリコン基板などの単結晶の半導体基板を用い、そ
の半導体基板の一表面を陽極酸化することにより多孔質
半導体層(ポーラスシリコン層)を形成して、その多孔
質半導体層上に金属薄膜(導電性薄膜)よりなる表面電
極を形成し、半導体基板と表面電極との間に電圧を印加
して電子を放射させるように構成した電界放射型電子源
(半導体冷電子放出素子)が提案されている。
【0006】しかしながら、上述の特開平8−2507
66号公報に記載の電界放射型電子源では、電子放出時
にいわゆるポッピング現象が生じやすく、放出電子量に
むらが起こりやすいので、平面発光装置やディスプレイ
装置などに応用すると、発光むらができてしまうという
不具合がある。
【0007】そこで、本願発明者らは、特願平10−2
72340号、特願平10−272342号において、
導電性基板と金属薄膜(表面電極)との間に介在し導電
性基板から注入された電子がドリフトする強電界ドリフ
ト層を酸化した多孔質多結晶シリコン層により構成した
電界放射型電子源を提案した。この電界放射型電子源1
0’は、例えば、図3に示すように、導電性基板たるn
形シリコン基板1の主表面側に酸化した多孔質多結晶シ
リコン層よりなる強電界ドリフト層6”が形成され、強
電界ドリフト層6”上に金属薄膜よりなる表面電極7が
形成され、n形シリコン基板1の裏面にオーミック電極
2が形成されている。なお、図3に示す例では、n形シ
リコン基板1と強電界ドリフト層6”との間にノンドー
プの多結晶シリコン層3を介在させてあるが、多結晶シ
リコン層3を介在させずにn形シリコン基板上に強電界
ドリフト層6”を形成した構成も提案されている。
【0008】図3に示す構成の電界放射型電子源10’
から電子を放出させるには、表面電極7に対向配置され
たコレクタ電極21を設け、表面電極7とコレクタ電極
21との間を真空とした状態で、表面電極7をn形シリ
コン基板1(オーミック電極2)に対して高電位側(正
極)となるように表面電極7とn形シリコン基板1との
間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コレクタ電極2
1が表面電極7に対して高電位側となるようにコレクタ
電極21と表面電極7との間に直流電圧Vcを印加す
る。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設定すれば、n形シ
リコン基板1から注入された電子が強電界ドリフト層
6”をドリフトし表面電極7を通して放出される(な
お、図3中の一点鎖線は表面電極7を通して放出された
電子e-の流れを示す)。表面電極7には仕事関数の小
さな材料(例えば、金)が採用され、表面電極7の膜厚
は10nm〜15nm程度に設定されている。
【0009】上述の構成を有する電界放射型電子源1
0’では、表面電極7とオーミック電極2との間に流れ
る電流をダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極21
と表面電極7との間に流れる電流をエミッション電流
(放出電子電流)Ieと呼ぶことにすれば(図3参
照)、ダイオード電流Ipsに対するエミッション電流I
eの比率(=Ie/Ips)が大きいほど電子放出効率が高
くなる。なお、この電界放射型電子源10’では、表面
電極7とオーミック電極2との間に印加する直流電圧V
psを10〜20V程度の低電圧としても電子を放出させ
ることができる。
【0010】この電界放射型電子源10’では、電子放
出特性の真空度依存性が小さく且つ電子放出時にポッピ
ング現象が発生せず安定して電子を高い電子放出効率で
放出することができる。
【0011】上述の電界放射型電子源10’では、強電
界ドリフト層6”が、導電性基板たるn形シリコン基板
1上にノンドープの多結晶シリコン層を堆積させた後
に、該多結晶シリコン層を陽極酸化処理にて多孔質化
し、多孔質化された多結晶シリコン層(多孔質多結晶シ
リコン層)を急速加熱法によって例えば900℃の温度
で酸化することにより形成されている。ここにおいて、
陽極酸化処理に用いる電解液としては、フッ化水素水溶
液とエタノールとを略1:1で混合した液を用いてい
る。また、急速加熱法によって酸化する工程では、ラン
プアニール装置を用い、基板温度を乾燥酸素中で室温か
ら900℃まで上昇させた後、基板温度を900℃で1
時間維持することで酸化し、その後、基板温度を室温ま
で下降させている。
【0012】上述のようにして形成された強電界ドリフ
ト層6”は、図4に示すように、少なくとも、柱状の多
結晶シリコンのグレイン51と、グレイン51の表面に
形成された薄いシリコン酸化膜52と、グレイン51間
に介在するナノメータオーダのシリコン微結晶63と、
シリコン微結晶63の表面に形成され当該シリコン微結
晶63の結晶粒径よりも小さな膜厚の酸化膜であるシリ
コン酸化膜64とから構成されると考えられる。すなわ
ち、強電界ドリフト層6”は、陽極酸化処理を行う前の
多結晶シリコン層に含まれていた各グレインの表面が多
孔質化し各グレインの中心部分では結晶状態が維持され
ているものと考えられる。したがって、強電界ドリフト
層6”に印加された電界の大部分はシリコン酸化膜64
を集中的に通り、注入された電子はシリコン酸化膜64
を通る強電界により加速されグレイン51間を表面に向
かって図4中の矢印Aの向きへ(図4中の上方向へ向か
って)ドリフトするので、電子放出効率を向上させるこ
とができる。なお、強電界ドリフト層6’の表面に到達
した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表面
電極7を容易にトンネルし真空中に放出される。
【0013】上述の電界放射型電子源10’では、導電
性基板としてn形シリコン基板を用いているが、図5に
示すように、ガラス基板からなる絶縁性基板11の一表
面に導電性層12を形成したものを用いた電界放射型電
子源10”も提案されている。ここに、上述の電界放射
型電子源10’と同様の構成要素には同一の符号を付し
て説明を省略する。
【0014】図5に示す構成の電界放射型電子源10”
から電子を放出させるには、表面電極7に対向配置され
たコレクタ電極21を設け、表面電極7とコレクタ電極
21との間を真空とした状態で、表面電極7が導電性層
12に対して高電位側(正極)となるように表面電極7
と導電性層12との間に直流電圧Vpsを印加するととも
に、コレクタ電極21が表面電極7に対して高電位側と
なるようにコレクタ電極21と表面電極7との間に直流
電圧Vcを印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設
定すれば、導電性層12から注入された電子が強電界ド
リフト層6”をドリフトし表面電極7を通して放出され
る(なお、図5中の一点鎖線は表面電極7を通して放出
された電子e-の流れを示す。) 上述の構成を有する電界放射型電子源10”では、表面
電極7と導電性層12との間に流れる電流をダイオード
電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電極7との間
に流れる電流をエミッション電流(放出電子電流)Ie
と呼ぶことにすれば(図5参照)、ダイオード電流Ips
に対するエミッション電流Ieの比率(=Ie/Ips)が
大きいほど電子放出効率が高くなる。なお、この電界放
射型電子源10”では、表面電極7と導電性層12との
間に印加する直流電圧Vpsを10〜20V程度の低電圧
としても電子を放出させることができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来構
成の電界放射型電子源10’,10”では、電子を安定
して高効率で放出することができるものの、電子放出効
率などの電子放出特性や絶縁耐圧などの信頼性のより一
層の向上が望まれている。ここにおいて、上述の電界放
射型電子源10’,10”では、強電界ドリフト層6”
中に製造プロセスに起因した欠陥が存在するものと考え
られ、例えば、上記シリコン微結晶63、上記シリコン
酸化膜52,64などに欠陥が存在する場合には、電子
散乱による電子放出効率の低下、絶縁耐圧の低下などが
引き起こされるものと考えられる。
【0016】本発明は上記事由に鑑みて為されたもので
あり、その目的は、電子放出特性および信頼性を向上で
きる電界放射型電子源の製造方法を提供することにあ
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記
目的を達成するために、導電性基板と、導電性基板の一
表面側に形成された酸化若しくは窒化若しくは酸窒化し
た多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層と、該強電
界ドリフト層上に形成された表面電極とを備え、表面電
極を導電性基板に対して正極として電圧を印加すること
により導電性基板から注入された電子が強電界ドリフト
層をドリフトし表面電極を通して放出される電界放射型
電子源の製造方法であって、導電性基板の一表面側に多
結晶半導体層を形成する第1の工程と、陽極酸化処理に
前記多結晶半導体層の少なくとも一部を多孔質化する
ことにより多孔質半導体層を形成する第2の工程と、多
孔質半導体層を酸化若しくは窒化若しくは酸窒化するこ
とにより強電界ドリフト層を形成する第3の工程とを有
し、さらに、第2の工程と第3の工程との間、第3の工
程の後の少なくとも1段階で導電性基板の一表面側の最
表面へ水素ラジカルを照射する水素ラジカル照射工程と
を有することを特徴とし、陽極酸化処理後、強電界ドリ
フト層の形成後の少なくとも1段階で導電性基板の一表
面側の最表面へ水素ラジカルが照射されるので、結果的
に強電界ドリフト層中に存在する欠陥をパッシベーショ
ン(不動態化)したり低減することができ、電子放出特
性および信頼性を向上させた電界放射型電子源を提供す
ることができる。
【0018】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記水素ラジカル照射工程では、水素プラズマ中の
水素ラジカルを前記最表面へ照射するので、水素ラジカ
ル照射工程のプロセス温度の低温化が図れるとともに、
電界放射型電子源の大面積化に容易に対応することがで
き、また、水素ガスに高周波やマイクロ波などを印加し
てプラズマ化することで水素プラズマを発生可能な一般
的な半導体製造装置を流用することにより、低コスト化
を図れる。
【0019】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、前記水素ラジカル照射工程では、水素ガスの熱分解
若しくは光分解若しくは触媒体を利用した分解によって
発生させた水素ラジカルを前記最表面へ照射するので、
水素ラジカル照射工程に起因したダメージが強電界ドリ
フト層に発生するのを防止することができ、請求項2の
発明に比べて電子放出特性および信頼性を向上させた電
界放射型電子源を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本実施形態では、図1(f)に示
すように導電性基板としてガラス基板からなる絶縁性基
板11の一表面上に導電性層(例えば、クロム膜などの
金属膜やITO膜など)12を設けたものを用いてい
る。このように絶縁性基板11の一表面側に導電性層1
2を形成した基板を用いる場合には、導電性基板として
半導体基板を用いる場合に比べて、電子源の大面積化お
よび低コスト化が可能になる。
【0021】本実施形態の電界放射型電子源10の基本
構成は、図5に示した従来構成と略同じであって、図1
(f)に示すように、絶縁性基板11上の導電性層12
上に多結晶半導体層としてノンドープの多結晶シリコン
層3が形成され、多結晶シリコン層3上に酸化した多孔
質多結晶シリコン層よりなる強電界ドリフト層6が形成
され、強電界ドリフト層6上に表面電極7が形成されて
いる。表面電極7には仕事関数の小さな材料(例えば、
金)が採用され、表面電極7の膜厚は10〜15nm程
度に設定されている。強電界ドリフト層6の構造につい
ては後述する。なお、図1(f)の例では、導電性層1
2と強電界ドリフト層6との間に多結晶シリコン層3の
一部を介在させてあるが、多結晶シリコン層3を介在さ
せずに導電性層12上に強電界ドリフト層6を形成した
構成を採用してもよい。
【0022】図1(f)に示す構成の電界放射型電子源
10から電子を放出させるには、図5に示した従来構成
と同様に、表面電極7に対向配置されたコレクタ電極2
1(図5参照)を設け、表面電極7とコレクタ電極21
との間を真空とした状態で、表面電極7が導電性層12
に対して高電位側(正極)となるように表面電極7と導
電性層12との間に直流電圧Vpsを印加するとともに、
コレクタ電極21が表面電極7に対して高電位側となる
ようにコレクタ電極21と表面電極7との間に直流電圧
Vcを印加する。各直流電圧Vps,Vcを適宜に設定す
れば、導電性層12から注入された電子が強電界ドリフ
ト層6をドリフトし表面電極7を通して放出される。
【0023】以下、本実施形態の電界放射型電子源10
の製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0024】まず、絶縁性基板11の一表面側にスパッ
タ法などによって導電性層12を形成して導電性基板を
構成することで図1(a)に示す構造が得られる。
【0025】その後、導電性基板の一表面側(つまり、
導電性層12上)に所定膜厚(例えば、1.5μm)の
半導体層として多結晶シリコン層3を形成(成膜)する
ことにより図1(b)に示す構造が得られる。なお、多
結晶シリコン層3の成膜方法としては、例えばCVD法
(例えばLPCVD法、プラズマCVD法、触媒CVD
法など)やスパッタ法やCGS(Continuous Grain S
ilicon)法などを採用すればよいが、成膜温度を600
℃以下とすることで絶縁性基板11として、例えば、無
アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、ソーダラ
イムガラス基板などの比較的安価なガラス基板を用いる
ことができて低コスト化を図ることができる。
【0026】次に、多結晶シリコン層3上に後述の多孔
質多結晶シリコン層4を所定領域にのみ形成するための
マスク材(図示せず)を設け、その後、55wt%のフ
ッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合した混
合液よりなる電解液の入った陽極酸化処理槽を利用し、
白金電極(図示せず)を負極、導電性層12を正極とし
て、多結晶シリコン層3に光照射を行いながら所定の条
件で陽極酸化処理を行うことによって、多孔質多結晶シ
リコン層4が形成され、上記マスク材を除去することに
より図1(c)に示す構造が得られる。ここにおいて、
本実施形態では、陽極酸化処理の条件として、陽極酸化
処理の期間、多結晶シリコン層3の表面に照射する光パ
ワーを一定、電流密度を一定としたが、この条件は適宜
変更してもよい(例えば、電流密度を変化させてもよ
い)。
【0027】上述の陽極酸化処理が終了した後、多孔質
多結晶シリコン層4を1モルの硫酸(H2SO4)水溶液
中で電気化学的に酸化して強電界ドリフト層6’を形成
することにより、図1(d)に示す構造が得られる。な
お、電気化学的な酸化の際に用いる水溶液および濃度は
特に限定するものではなく、例えば硝酸水溶液などを用
いてもよい。
【0028】強電界ドリフト層6’を形成した後、導電
性基板の一表面側の最表面(ここでは、強電界ドリフト
層6’の表面)に水素ラジカルを照射して強電界ドリフ
ト層6’中に存在する欠陥をパッシベーション(不動態
化)することにより、図1(e)に示す構造が得られ
る。図1(e)中の6は水素ラジカル照射後の強電界ド
リフト層6を示している。ここにおいて、強電界ドリフ
ト層6’の表面へ水素ラジカルを照射する水素ラジカル
照射工程では、水素プラズマ中の水素ラジカルを導電性
基板の一表面側の最表面へ照射しているので、水素ラジ
カル照射工程のプロセス温度の低温化が図れる(600
℃以下のプロセス温度にできる)とともに、電子源の大
面積化に容易に対応することができ、また、水素ガスに
高周波やマイクロ波などを印加してプラズマ化すること
で水素プラズマを発生可能な一般的な半導体製造装置を
流用することで、低コスト化を図れる。
【0029】水素プラズマ照射工程が終了した後は、強
電界ドリフト層6上に導電性薄膜(例えば、金薄膜)か
らなる表面電極7を例えば蒸着法により形成することに
よって、図1(f)に示す構造の電界放射型電子源10
が得られる。なお、表面電極7の形成方法は蒸着法に限
定されるものではなく、例えばスパッタ法を用いてもよ
い。
【0030】上述の製造方法によって製造された電界放
射型電子源10の強電界ドリフト層6は、従来構成にお
いて図4を用いて説明した強電界ドリフト層6”と同様
に、少なくとも、柱状の多結晶シリコンのグレイン51
と、グレイン51の表面に形成された薄いシリコン酸化
膜52と、グレイン51間に介在するナノメータオーダ
のシリコン微結晶63と、シリコン微結晶63の表面に
形成され当該シリコン微結晶63の結晶粒径よりも小さ
な膜厚の酸化膜であるシリコン酸化膜64とから構成さ
れると考えられる。ただし、本実施形態の電界放射型電
子源10では、多孔質多結晶シリコン層4を酸化して形
成した強電界ドリフト層6’の表面へ水素ラジカルを照
射することで強電界ドリフト層6を形成しているので、
強電界ドリフト層6’中に存在していた欠陥(例えば、
シリコン酸化膜52,64やシリコン微結晶63表面の
欠陥)をパッシベーション(不動態化)したり低減する
ことができ、電子放出特性および信頼性を向上させた電
界放射型電子源10を提供することができる。なお、上
述の製造方法で製造された電界放射型電子源10は、図
3に示した従来の電界放射型電子源10’と同様に、電
子放出特性の真空度依存性が小さく且つ電子放出時にポ
ッピング現象が発生せず安定して電子を放出することが
できる。
【0031】ところで、上述の製造方法では、多孔質多
結晶シリコン層4を酸化して強電界ドリフト層6’を形
成した後に水素プラズマ照射工程を行っているが、陽極
酸化処理前に水素プラズマ照射工程を行ってもよいし、
陽極酸化処理後に水素プラズマ照射工程を行ってもよ
い。
【0032】また、水素プラズマ照射工程において、水
素プラズマ中の水素ラジカルを導電性基板の一表面側の
最表面へ照射しているが、図2に示すように水素ガスと
タングステン製のワイヤからなる触媒体42との接触分
解反応を利用することで発生させた水素ラジカルを導電
性基板の一表面側の最表面(図2に示す例では、強電界
ドリフト層6’の表面)へ照射するようにしてもよい。
ここにおいて、触媒体42は、図示しない電流源から電
流を流すことで適宜温度に加熱する。また、導電性基板
は基板ホルダ41上に設置され、基板ホルダ41を図示
しないヒータにより100〜700℃に適宜加熱する
が、導電性基板としてガラス基板からなる絶縁性基板1
1の一表面に導電性層12を形成したものを用いている
場合には、絶縁性基板11の温度が当該絶縁性基板11
の耐熱温度に達しないように基板ホルダ41の温度を設
定する必要がある。ところで、水素ラジカル照射工程に
おいて水素プラズマ中の水素ラジカルを導電性基板の一
表面側の最表面へ照射した場合には結果的に強電界ドリ
フト層6にプラズマによるダメージが存在してしまう恐
れがあるが、水素ラジカル照射工程において、水素ガス
の触媒体42を利用した分解によって発生させた水素ラ
ジカルを導電性基板の一表面側の最表面へ照射すること
により、水素ラジカル照射工程に起因したダメージが強
電界ドリフト層6に発生するのを防止することができ、
水素プラズマ中の水素ラジカルを照射する場合に比べて
電子放出特性および信頼性を向上させた電界放射型電子
源10を提供することができる。また、水素ラジカル照
射工程では、水素ガスの熱分解若しくは光分解によって
発生させた水素ラジカルを導電性基板の一表面側へ照射
するようにしてもよく、これらの場合にも水素プラズマ
中の水素ラジカルを照射する場合に比べて電子放出特性
および信頼性を向上させた電界放射型電子源10を提供
することができる。
【0033】本実施形態では、導電性基板としてガラス
基板からなる絶縁性基板11の一表面に導電性層12を
形成したものを用いているが、導電性基板としては、ク
ロムなどの金属基板を用いてもよいし、半導体基板(例
えば、抵抗率が導体の抵抗率に比較的近いn形シリコン
基板や、一表面側に導電性層としてn形領域が形成され
たp形シリコン基板など)などを用いてもよい。絶縁性
基板11もガラス基板の他にセラミック基板などを用い
ることができる。
【0034】また、本実施形態では表面電極7の材料と
して金を採用しているが、表面電極7の材料は金に限定
されるものではなく、例えば、アルミニウム、クロム、
タングステン、ニッケル、白金などを採用してもよい。
【0035】また、表面電極7を厚み方向に積層された
少なくとも2層の薄膜層で構成してもよい。表面電極7
が2層の薄膜層で構成される場合には、上層の薄膜層の
材料として例えば金などを採用し、下層の薄膜層(強電
界ドリフト層6側の薄膜層)の材料として例えば、クロ
ム、ニッケル、白金、チタン、イリジウムなどを採用す
ればよい。
【0036】また、本実施形態では、強電界ドリフト層
6を酸化した多孔質多結晶シリコン層により構成してい
るが、強電界ドリフト層6を窒化した多孔質多結晶シリ
コン層や酸窒化した多孔質多結晶シリコン層により構成
してもよいし、あるいはその他の酸化若しくは窒化若し
くは酸窒化した多孔質半導体層により構成してもよい。
なお、強電界ドリフト層6を窒化した多孔質多結晶シリ
コン層とした場合には多孔質多結晶シリコン層4を酸化
する工程の代わりに窒化する工程を採用すればよく、図
4にて説明した各シリコン酸化膜52,64がいずれも
シリコン窒化膜となり、強電界ドリフト層6を酸窒化し
た多孔質多結晶シリコン層とした場合には多孔質多結晶
シリコン層4を酸化する工程の代わりに酸窒化する工程
を採用すればよく、図4にて説明した各シリコン酸化膜
52,64がいずれもシリコン酸窒化膜となる。
【0037】
【発明の効果】請求項1の発明は、導電性基板と、導電
性基板の一表面側に形成された酸化若しくは窒化若しく
は酸窒化した多孔質半導体層よりなる強電界ドリフト層
と、該強電界ドリフト層上に形成された表面電極とを備
え、表面電極を導電性基板に対して正極として電圧を印
加することにより導電性基板から注入された電子が強電
界ドリフト層をドリフトし表面電極を通して放出される
電界放射型電子源の製造方法であって、導電性基板の一
表面側に多結晶半導体層を形成する第1の工程と、陽極
酸化処理にて前記多結晶半導体層の少なくとも一部を多
孔質化することにより多孔質半導体層を形成する第2の
工程と、多孔質半導体層を酸化若しくは窒化若しくは酸
窒化することにより強電界ドリフト層を形成する第3の
工程とを有し、さらに、第2の工程と第3の工程との
間、第3の工程の後の少なくとも1段階で導電性基板の
一表面側の最表面へ水素ラジカルを照射する水素ラジカ
ル照射工程とを有するので、陽極酸化処理後、強電界ド
リフト層の形成後の少なくとも1段階で導電性基板の一
表面側の最表面へ水素ラジカルが照射されることにな
り、結果的に強電界ドリフト層中に存在する欠陥をパッ
シベーション(不動態化)したり低減することができ、
電子放出特性および信頼性を向上させた電界放射型電子
源を提供することができるという効果がある。
【0038】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、前記水素ラジカル照射工程では、水素プラズマ中の
水素ラジカルを前記最表面へ照射するので、水素ラジカ
ル照射工程のプロセス温度の低温化が図れるとともに、
電界放射型電子源の大面積化に容易に対応することがで
きるという効果があり、また、水素ガスに高周波やマイ
クロ波などを印加してプラズマ化することで水素プラズ
マを発生可能な一般的な半導体製造装置を流用すること
により、低コスト化を図れるという効果がある。
【0039】請求項3の発明は、請求項1の発明におい
て、前記水素ラジカル照射工程では、水素ガスの熱分解
若しくは光分解若しくは触媒体を利用した分解によって
発生させた水素ラジカルを前記最表面へ照射するので、
水素ラジカル照射工程に起因したダメージが強電界ドリ
フト層に発生するのを防止することができ、請求項2の
発明に比べて電子放出特性および信頼性を向上させた電
界放射型電子源を提供することができるという効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の製造方法を説明するための主要工程
断面図である。
【図2】同上における水素ラジカル照射工程の一例の工
程説明図である。
【図3】従来例を示す電界放射型電子源の動作説明図で
ある。
【図4】同上の電界放射型電子源の電子放出機構の説明
図である。
【図5】他の従来例を示す電界放射型電子源の動作説明
図である。
【符号の説明】
3 多結晶シリコン層 4 多孔質多結晶シリコン層 6’ 強電界ドリフト層 6 水素ラジカル照射後の強電界ドリフト層 7 表面電極 10 電界放射型電子源 11 絶縁性基板 12 導電性層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 櫟原 勉 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工 株式会社内 (72)発明者 渡部 祥文 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工 株式会社内 (72)発明者 幡井 崇 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工 株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−326557(JP,A) 特開 平8−78429(JP,A) 特開 平11−177096(JP,A) 特開2001−93405(JP,A) 特開2001−68015(JP,A) 特開2001−118498(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 9/02 H01J 1/30 H01J 31/12

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基板と、導電性基板の一表面側に
    形成された酸化若しくは窒化若しくは酸窒化した多孔質
    半導体層よりなる強電界ドリフト層と、該強電界ドリフ
    ト層上に形成された表面電極とを備え、表面電極を導電
    性基板に対して正極として電圧を印加することにより導
    電性基板から注入された電子が強電界ドリフト層をドリ
    フトし表面電極を通して放出される電界放射型電子源の
    製造方法であって、導電性基板の一表面側に多結晶半導
    体層を形成する第1の工程と、陽極酸化処理にて前記多
    結晶半導体層の少なくとも一部を多孔質化することによ
    り多孔質半導体層を形成する第2の工程と、多孔質半導
    体層を酸化若しくは窒化若しくは酸窒化することにより
    強電界ドリフト層を形成する第3の工程とを有し、さら
    、第2の工程と第3の工程との間、第3の工程の後の
    少なくとも1段階で導電性基板の一表面側の最表面へ水
    素ラジカルを照射する水素ラジカル照射工程とを有する
    ことを特徴とする電界放射型電子源の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記水素ラジカル照射工程では、水素プ
    ラズマ中の水素ラジカルを前記最表面へ照射することを
    特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記水素ラジカル照射工程では、水素ガ
    スの熱分解若しくは光分解若しくは触媒体を利用した分
    解によって発生させた水素ラジカルを前記最表面へ照射
    することを特徴とする請求項1記載の電界放射型電子源
    の製造方法。
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