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JP3444629B2 - 氷温改善剤とその用途 - Google Patents

氷温改善剤とその用途

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JP3444629B2
JP3444629B2 JP21109393A JP21109393A JP3444629B2 JP 3444629 B2 JP3444629 B2 JP 3444629B2 JP 21109393 A JP21109393 A JP 21109393A JP 21109393 A JP21109393 A JP 21109393A JP 3444629 B2 JP3444629 B2 JP 3444629B2
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裕美 土屋
直人 扇本
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Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
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  • Thermotherapy And Cooling Therapy Devices (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、氷温改善剤とその用
途、とりわけ、保冷材に含有せしめることによって、そ
の氷温帯における保冷能を改善する氷温改善剤と、これ
を含有せしめた保冷材に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、生鮮食品や半調理食品の貯蔵、輸
送、配送に、所謂、氷温(略−5乃至0℃)の有効なこ
とが広く認識されてきたのに伴い、氷温を手軽に実現で
きる簡易保冷材の需要が高まっている。斯かる保冷材に
要求されることは、何よりも、食品衛生上安全であるこ
と、そして、取扱い容易で、被保冷物を氷温に長時間維
持できることである。加えて、望ましくは、環境に優し
く、環境汚染の懸念なく廃棄できることである。
【0003】簡易保冷材は医療においても有用であり、
氷枕や氷嚢に代わるものとして、感染症、炎症、筋肉
痛、打撲、捻挫、骨折、外傷、火傷、床ズレ、さらに
は、薬物投与に伴う発熱、疼痛、不眠の緩解・解消に頻
用されている。斯かる用途においては、局部を所期の温
度に長時間維持し得ることに加え、局部全体に異和感無
く当接し得ることが望まれる。
【0004】このようなことから、これまで多種多様の
保冷材が提案されてきたものの、何れも前記諸要件を満
たしきるものは無かった。すなわち、従来の保冷材は、
例えば、特公昭61−54075号公報、特開昭64−
40591号公報、特開平3−188149号公報など
にも見られるように、含水ゲル状乃至油性ゲル状のもの
が大多数を占めていた。含水ゲル状の保冷材は、通常、
ポリビニルアルコール、アクリル酸重合体、メタクリル
酸重合体、ローカストビーンガム、カラギナン、キサン
タンガム、グアガム、ジュランガムなどの天然乃至合成
樹脂による水性ゲルをベースに、エチレングリコール、
プロピレングリコールなどの氷点降下剤を配合して調製
される。斯かる保冷材はゲル状であるが故に比較的取扱
い易く、万一、包装が壊れても、保冷材が被保冷物を汚
し難いという利点があるものの、肝心の氷温が長時間持
続しないという問題がある。また、アクリル酸重合体や
メタクリル酸重合体を含有するものは、離水したり劣化
し易いうえに、環境への影響から簡単には廃棄できない
という問題がある。一方、油性ゲル状の保冷材は、一般
に、良好な柔軟性を示すものの、被保冷物を氷温に維持
し得る時間が極端に短かいうえに、油性成分を含有して
いるので簡単には廃棄できないという問題がある。
【0005】特開昭62−200158号公報や特開昭
63−12684号公報などには、氷温の持続を意識し
て考案されたとみられる保冷材についての記載が認めら
れるが、前者の保冷材にはアクリル酸重合体やメタクリ
ル酸重合体が含まれているので、廃棄の問題が、依然、
未解決のままと言わざるを得ない。後者の保冷材は、蔗
糖乃至果糖に重曹水溶液を加えて調製されているので廃
棄の問題は無いものの、成分の混合比が僅かに変わるだ
けで、保冷温度が大幅に変動するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】斯かる状況に鑑み、こ
の発明の第一の目的は、保冷材に含有せしめることによ
って、その氷温帯における保冷能を改善する氷温改善剤
を提供することにある。
【0007】この発明のさらなる目的は、氷温帯におい
て改善された保冷能を発揮する、環境に優しい保冷材を
提供することにある。尚、斯界では、略−5乃至0℃の
氷点下・非冷凍温度帯を「パーシャルフリージング」と
呼称することもあるが、この発明では、特に区別するこ
となく、これら温度乃至温度帯をそれぞれ「氷温」乃至
「氷温帯」と表記する。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は斯かる課題の
解決を目的とするものであり、プルラン及び/又はその
水溶性誘導体を有効成分とする氷温改善剤を要旨とする
ものである。
【0009】さらに、この発明は、水100重量部と、
前記氷温改善剤約15乃至35重量部と、多価アルコー
ル約15乃至35重量部とを含んでなる保冷材を要旨と
するものである。
【0010】
【発明の作用】この発明による氷温改善剤は保冷材一
般、とりわけ、水と多価アルコールを含んでなる保冷材
に添加すると、有効成分たるプルラン及び/又はその水
溶性誘導体が水や多価アルコールと協働して、保冷材の
氷温帯における保冷能を改善する。
【0011】また、この発明の保冷材においては、前記
氷温改善剤と水や多価アルコールが協働して、氷温帯に
おいて改善された保冷能を発揮する。
【0012】以下、実施例、実験例などにより、この発
明をより具体的に説明するに、この発明で使用するプル
ランは、主として、三糖類の一種であるマルトトリオー
スがα−1,6結合により重合してなる水溶性多糖類で
ある。プルランは、例えば、オーレオバシディウム・プ
ルランスやオーレオバシディウム・ファーメンタンスな
どのプルラン産生能を有する微生物を葡萄糖、果糖、蔗
糖、麦芽糖、澱粉部分分解物などの糖質を炭素源とする
栄養培地で培養し、その培養物から濾過などにより菌体
を除去し、必要に応じて、濃縮、分別沈澱などにより精
製した後、乾燥、粉末化して調製することができる。プ
ルランの調製方法は、例えば、特公昭51−36360
号公報、特公昭51−42199号公報、特公昭54−
14678号公報、特願平4−265285号明細書な
どに詳述されており、そこに記載された方法により得ら
れるプルランは、何れもこの発明において有利に使用す
ることができる。とりわけ、特願平4−265285号
明細書に記載された方法により得られるプルラン高含有
物は、この発明の氷温改善剤や保冷材を低廉に製造する
のに好適である。また、株式会社林原商事が販売する
『PI20』、『PF20』、『トリグルコ−A』など
の精製乃至部分精製プルラン品は、そのまま、この発明
で使用し得る。
【0013】この発明でいうプルランの水溶性誘導体と
は、通常、プルランを適宜試薬と化学反応させて水溶性
誘導体としたものであり、例えば、エステル化物、エー
テル化物などが挙げられる。個々のエステル化物、エー
テル化物としては、カルボン酸エステル、燐酸エステ
ル、アルキルエーテル、カルボキシメチルエーテル、ア
ミノアルキルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテルな
どがある。これら誘導体においては、一般に、置換度が
増すと水溶性が低下することがあるので、プルラン本来
の水溶性が実質的に損なわれない程度に置換基を導入す
る必要がある。これら誘導体の調製法は特公昭52−2
2029号公報、特開昭52−78286号公報、特開
昭53−58589号公報などに詳述されており、これ
ら公報に記載された方法により調製される水溶性誘導体
は、未反応のプルランと同様、何れもこの発明において
有利に使用することができる。プルランも斯かる水溶性
誘導体も、それら自体は従来公知であるが、氷温改善剤
としての用途はこの発明をもって嚆矢とするものであ
る。
【0014】この発明で使用するプルランとその水溶性
誘導体は、通常、約1万乃至100万ダルトン、望まし
くは、約5万乃至50万ダルトンの平均分子量のものが
好適である。添加量にも依るが、分子量がこの範囲を下
回ると保冷材の凝固点が低下し過ぎ、それとともに、粘
性が低下し、流動性が増して取扱い難くなることがあ
る。一方、分子量がこの範囲を上回ると、反対に、保冷
材の粘性が増して柔軟性に乏しくなることがある。これ
らのことから、分子量については上記範囲をもって最良
とした。
【0015】この発明による氷温改善剤の用途について
説明するに、この発明の氷温改善剤は、保冷材一般、と
りわけ、水と多価アルコールを含んでなる保冷材に含有
せしめることによって、その氷温帯における保冷能を顕
著に改善する。この発明の氷温改善剤を最も有利に使用
し得る保冷材は、水100重量部に対して多価アルコー
ルを約15乃至35重量部含んでなるものである。斯か
る保冷材は、この発明の氷温改善剤を約15乃至35重
量部含有せしめると、氷温帯を著しく長時間持続するよ
うになるとともに、使用に際して良好な柔軟性を発揮す
る。加えて、この発明の氷温改善剤を配合するときに
は、保冷材の予冷に要する時間が有意に短縮される。す
なわち、従来公知の保冷材の場合、使用に先立って保冷
材を−20℃前後で10時間前後予冷しなければならな
かったところ、この発明の氷温改善剤を含有せしめた保
冷材では、同じ温度で5時間程度予冷しても事足りるこ
とが判明した。
【0016】この発明の保冷材で使用する多価アルコー
ルの例としては、グリセリン、ポリエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトー
ルなどが挙げられ、これらは、必要に応じて、二種以上
を混合して使用される。このうち、グリセリンは最上の
氷点降下能を発揮するうえ、食品衛生上安全であり、廃
棄に際しても深刻な問題を引き起こすことがないので極
めて好都合である。
【0017】この発明の保冷材は、用途に応じた適宜の
防腐剤、柔軟性調節剤、脱酸素剤、消臭剤、着色剤、感
温色素などを添加することを妨げない。本発明者がこの
発明の保冷材に好適な防腐剤につき種々研究したとこ
ろ、炭素数4以下のアルコール類、とりわけ、エチルア
ルコールが最適であることが判明した。エチルアルコー
ルは、従来、防腐剤として種々の飲食物に使われてきた
ことからも明らかなように、食品衛生上安全であり、廃
棄の際の問題も少ない。しかも、エチルアルコールは、
配合量にも依るが、この発明の保冷材に含有せしめて
も、氷温の持続を実質的に妨げることがない。斯かるエ
チルアルコールの配合量は、通常、水100重量部に対
して約3乃至6重量部、望ましくは、約4乃至5重量部
であった。柔軟性調節剤としては硼砂が最適であり、水
100重量部に対して約1乃至5重量部添加すると、保
冷材の柔軟性が一定の幅をもって変化するので、用途に
応じた柔軟性の保冷材を得ることができる。
【0018】この発明による保冷材の調製の仕方につい
ては特に限定がなく、通常一般の保冷材と同様に調製す
ればよい。例えば、この発明の氷温改善剤を適量とり、
これに所定量の多価アルコールを均一に浸透させる。次
いで、その混合物に所定量の水を加え、必要に応じて加
熱しながら、撹拌などにより均一に混合・溶解して流動
性の保冷材を得る。あるいは、所定量の水にこの発明の
氷温改善剤を均一に混合・溶解し、これに所定量の多価
アルコールを加えて均一に溶解させる。斯くして得られ
た保冷材は、通常、用途に応じて、例えば、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アルミニウム、
不織布などの適宜材料を適宜内容量の、例えば、シート
状、帯状、袋状、筒状、箱状、罐状などに成形した包装
容器内に収容される。この発明でいう保冷材とは、調製
されたままのバルクとしての形態のものはもとより、斯
かる包装容器内に一定量ずつ分包された形態のものをも
包含するものとする。
【0019】使用方法について説明すると、この発明の
保冷材は、従来公知の保冷材と同様に使用することがで
きる。すなわち、この発明の保冷材をその凝固点より1
0℃以上低い温度、すなわち、通常、−20℃前後に保
った冷凍庫内で約5時間以上、望ましくは、約24時間
以上予冷した後、庫外に取出し、被保冷物に直接接触さ
せるか、被保冷物とともに適宜の断熱空間内に収容すれ
ばよい。後者の場合、保冷材を被保冷物の上部若しくは
周囲に位置せしめると、冷却効率が良い。保冷材の組成
や予冷却温度などにも依るが、この発明の保冷材は、平
均外気温25℃においては約30分間以上、また、それ
より低温の断熱容器内においては一段と長時間氷温を持
続する。しかも、この発明の保冷材は、氷温帯のみなら
ず、物品の貯蔵、輸送、配送に有用な−20乃至−5℃
の温度帯や0乃至10℃の温度帯をも長時間持続する。
そして、使用により、保冷能が一旦消失した保冷材であ
っても、前記のようにして再度予冷すれば、物品の保冷
に繰返し使用することができる。ギフト用品やテイクア
ウト食品など、所謂、「使い捨てタイプ」の保冷材を必
要とする物品を保冷するには、この発明の保冷材の適当
量を環境に優しい、適宜材質の包装容器内に収容してお
けばよく、斯かる保冷材は、使用後、環境汚染を懸念す
ることなく廃棄することができる。したがって、この発
明の保冷材は、農産品、畜産品、海産品、惣菜類、冷食
類、菓子ケーキ類、化粧品、医薬品、化学品、電子材
料、電子部品など、貯蔵、輸送、配送に保冷を必要とす
る殆どの分野において有利に使用できる。とりわけ、生
鮮野菜、生鮮果実、生鮮魚類、生鮮魚肉、生鮮畜肉など
の生鮮食品を貯蔵、輸送、配送に使用するときには、こ
れら生鮮食品の組織が壊れ難く、貯蔵、輸送、配送によ
り味質や食感が損なわれ難い。また、氷枕、氷嚢、湿布
材の代替物として使用するときには、感染症、炎症、筋
肉痛、打撲、捻挫、骨折、外傷、火傷、床ズレ、さらに
は、薬物投与に伴う発熱、疼痛、不眠の緩解・解消に著
効を発揮する。持ち運び容易な包装容器に収容したこの
発明の保冷材は、レジャー、スポーツ等において、携帯
用保冷具としても有用である。
【0020】因に、この発明による保冷材は、氷温改善
剤や氷点降下剤の種類・配合量、実際に使用する条件な
どに依っても変わるが、通常、氷温帯において取扱い容
易な軟質ゲル様を呈する。斯かる性状にも拘らず、この
発明の保冷材は熱対流性に優れ、且つ、氷温改善剤が水
や多価アルコールと協働して、保冷材における熱伝搬速
度を適当レベルに調製するので、比較的少量で被保冷物
を効率的且つ長時間氷温帯に維持することが容易とな
り、離水することもない。これに対して、従来主流の含
水ゲル状保冷材は、一般に、熱対流性が悪く、保冷効率
に劣ることから、所期の保冷成績を達成するには、より
多くの保冷材を使わなければならない。
【0021】次に、実施例により、この発明による氷温
改善剤を具体的に説明する。
【0022】
【実施例A−1 氷温改善剤】ジャーファーメンターに
株式会社林原商事が販売する高DE水飴『サンローゼ』
12%(w/v)、ペプトン 0.2%(w/v)、K
2HPO4 0.2%(w/v)、塩化ナトリウム 0.
2%(w/v)、MgSO4・7H2O 0.04%(w
/v)、FeSO4・7H2O 0.001%(w/v)
及び水からなる栄養培地をとり、通常の方法により12
0℃で20分間加圧滅菌した。次いで、栄養培地を約2
7℃に冷却し、オーレオバシディウム・プルランスIF
O 6353を無菌的に植菌した後、培地のpHを約
3.6乃至3.8に保ちながら約27℃で80時間に亙
って通気撹拌培養した。
【0023】培養終了後、培養物を遠心分離して菌体を
除去し、培養上清を通常の方法により脱色・濾過して精
製し、濃縮した後、ドラムドライヤーにより乾燥して精
製プルランの白色粉末を得た。収量は、栄養培地に添加
した水飴固形分に換算して約80%であった。
【0024】平均分子量約20万ダルトンのプルランを
固形物当たり約90%含有する本粉末は、氷温改善剤と
して有用である。
【0025】
【実施例A−2 氷温改善剤】実施例A−1において、
栄養培地における水飴濃度を約16%(w/v)、培養
時間を100時間に変更した以外は全く同様にして、プ
ルランを含有する培養物を得た。この培養物を遠心分離
して菌体を除去した後、通常の方法により濃縮し、ドラ
ムドライヤーにより乾燥して、固形物当たりプルランを
約74%含有する淡黄色粉末を得た。収量は、栄養培地
中の水飴固形分に換算して約90%であった。
【0026】平均分子量約15万ダルトンのプルランを
固形分当たり約74%含有する本粉末は、氷温改善剤と
して有用である。
【0027】
【実施例A−3 氷温改善剤】フラスコ内に株式会社林
原商事が販売する精製プルラン『PF20』100g、
苛性ソーダ20g、水10g及びイソプロピルアルコー
ル400gをとり、室温下で撹拌して均一に溶解させ
た。フラスコ内を1時間脱気したのち、窒素ガス気流
下、酸化プロピレン25gを5分間に亙って加え、約4
0℃で3時間反応させた。反応終了後、反応物に水と酢
酸をこの順序で加えて中和した後、反応物を透析チュー
ブに収容し、流水中で2日間透析した。透析チューブか
ら透析内液を取り出し、通常の方法により濃縮、乾燥し
てヒドロキシプロピルプルランの白色粉末を約120g
得た。
【0028】平均分子量約20万ダルトン、ヒドロキシ
プロピル基含量約3.7%の本ヒドロキシプロピルプル
ランは、氷温改善剤として有用である。
【0029】次に、前記実施例A−1乃至A−3の方法
で調製した氷温改善剤を使用する保冷材を中心に、この
発明の実施態様について説明する。
【0030】
【実施例B−1 保冷材】実施例A−1の方法で得られ
た氷温改善剤20重量部とグリセリン30重量部を均一
に混合した。これに水100重量部を加え、撹拌により
均一に溶解させた後、エチルアルコール3重量部を混合
し、常温で静置して泡抜きした。斯くして得られた流動
物を一端に開口部を有するポリプロピレン製バッグに3
00gずつとり、次いで、袋の開口部を加熱融着して製
品とした。
【0031】本品は、−20℃前後で少なくとも5時間
予冷した後、常温下に取り出すと、氷温が約30分間以
上持続し、使用時の柔軟性も良好である。しかも、本品
は防腐剤としてエチルアルコールを含有しているので、
常温下で長期間保存しても、黴が生えたり腐敗すること
がない。これらのことから、本品は、比較的少量の高級
食品、高級食品材料、化粧品、医薬品、化学品、電子部
品、電子材料の貯蔵、輸送、配送は勿論のこと、氷嚢、
湿布材の代替物や携帯用保冷具としても有用である。
【0032】
【実施例B−2 保冷材】実施例A−2の氷温改善剤3
0重量部とプロピレングリコール20重量部を均一に混
合し、これに水100重量部を加え、撹拌により均一に
溶解した。得られた流動物を一端に開口部を有する不織
布製バッグに1kgずつとり、沸騰水浴中で約10分間
加熱した後、冷却し、バッグの開口部を密封して製品と
した。
【0033】本品は、−20℃前後に少なくとも5時間
予冷した後、常温下に取り出すと、氷温が約30分間以
上持続し、使用時の柔軟性も良好である。しかも、本品
は、密封前に加熱滅菌しているので、常温下で長期間保
存しても、黴が生えたり腐敗し難い。これらのことか
ら、本品は、大量若しくは大型の一般食品、一般食品材
料、化粧品、医薬品、化学品、電子部品、電子材料の貯
蔵、輸送、配送は勿論のこと、氷枕、湿布材の代替物と
しても有用である。
【0034】
【実施例B−3 保冷材】実施例B−2と同様にして、
実施例A−3の氷温改善剤35重量部とグリセリン15
重量部を均一に混合し、これに水100重量部を加えた
後、撹拌により均一に溶解した。得られた流動物を一端
に開口部を有する筒状のポリエチレン製バッグに100
gずつとり、沸騰水浴中で約10分間加熱した後、冷却
し、バッグの開口部を加熱融着して製品とした。
【0035】本品は、−20℃前後に少なくとも5時間
予冷した後、常温下に取り出すと、氷温が約30分間以
上持続する。使用時の柔軟性も良好な本品は、化粧品、
医薬品、化学品、電子部品、電子材料の貯蔵、輸送、配
送に有用である。
【0036】
【実施例B−4 保冷材】株式会社林原商事が販売する
平均分子量約17万ダルトンの部分精製プルラン『トリ
グルコ−A』15重量部、実施例A−3の方法により調
製した氷温改善剤10重量部及びグリセリン25重量部
を均一に混合し、水100重量部を加えた後、撹拌によ
り均一に溶解した。得られた流動物にエチルアルコール
3重量部と0.2%(w/v)水性カラギナンゲルの小
片(約2乃至3mm)5重量部を混合し、常温で静置し
て泡抜きした後、一端に開口部を有するポリエチレン製
バッグに1kgずつとり、バッグの開口部を加熱融着し
て製品とした。
【0037】本品は、−20℃前後で少なくとも5時間
予冷した後、常温下に取り出すと、氷温が約30分間以
上持続し、使用時の柔軟性も良好である。しかも、本品
は、防腐剤としてエチルアルコールを含有しているの
で、常温下で長期間保存しても、黴が生えたり腐敗する
ことがないうえに、水性カラギナンゲルの小片を配合し
ているので保冷時間が一段と長い。これらのことから、
本品は、大量若しくは大型の一般食品、一般食品材料、
化粧品、医薬品、化学品、電子部品、電子材料の貯蔵、
輸送及び配送は勿論のこと、氷枕、湿布材の代替物とし
ても有用である。
【0038】
【実施例B−5 保冷材】株式会社林原商事が販売する
平均分子量約20万ダルトンの精製プルラン『PF2
0』15重量部とグリセリン35重量部を均一に混合
し、水100重量部を加えた後、撹拌により均一に溶解
した。得られた流動物にエチルアルコール3重量部と
0.2%(w/v)水性寒天ゲルの小片(約2乃至3m
m)5重量部を混合し、常温で静置して泡抜きした後、
一端に開口部を有するアルミウム蒸着ポリエチレンフィ
ルム製バッグに300gずつとり、次いで、バッグの開
口部を密封して製品とした。
【0039】本品は、−20℃前後で少なくとも5時間
予冷した後、常温下に取り出すと、氷温が約30分間以
上持続し、使用時の柔軟性も良好である。しかも、本品
は、防腐剤としてエチルアルコールを含有しているの
で、常温下で長期間保存しても、黴が生えたり腐敗する
ことがないうえに、水性寒天ゲル片を配合しているので
保冷時間が一段と長い。これらのことから、本品は、比
較的少量の高級食品、高級食品材料、化粧品、医薬品、
化学品、電子部品、電子材料の貯蔵、輸送及び配送は勿
論のこと、氷嚢、湿布材の代替物や携帯用保冷具として
も有用である。
【0040】次に、この発明の奏する効果につき、実験
例に基づいて説明する。
【0041】
【実験例】実施例B−2の方法にしたがって、実施例A
−1の方法で調製した氷温改善剤と、グリセリンと水と
を表1の割合で含んでなる保冷材のバルクを調製した。
そして、各保冷材を200gずつ一端に開口部を有する
ポリエチレン製バッグ(12cm×11cm)に小分け
し、バッグ内を脱気した後、開口部を加熱融着して密封
した。斯くして調製した保冷材につき、常温下における
氷温の持続時間と柔軟性を試験した。
【0042】すなわち、前記で調製した保冷材各3体を
−20℃の冷凍庫内で3日間予冷した後、庫外に取り出
し、温度25±2℃、相対湿度60±5%の雰囲気中に
2時間放置した。放置期間中、デジタル温度計を使って
一定時間毎に保冷材略中央部における表面温度を測定す
ることにより、常温下における氷温の持続時間を調べ
た。結果を表1に示す。尚、表1に示す「氷温持続時
間」は、被検サンプル3体の平均値である。
【0043】さらに、前記で調製した保冷材各3体を−
20℃の冷凍庫内で3日間予冷した後、庫外に取り出
し、30分後に外観と表面を指で押圧したときの感触等
を観察した。そして、それら観察結果を総合的に判断し
て、各保冷材の柔軟性を「シャーベット様」、「軟質ゲ
ル様」及び「硬質ゲル様」の3種類に分類した。結果を
表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】表1の結果から明らかなように、実施例A
−1の氷温改善剤は、多価アルコールと水を含んでなる
保冷材に添加すると、その氷温帯における保冷能を顕著
に改善する。すなわち、100重量部の水と、35重量
部以下のグリセリンと、15重量部以上の氷温改善剤を
含んでなる保冷材は、常温下において−5乃至0℃の氷
温を実用上受容れられる時間、すなわち、30分間以上
持続した。氷温改善剤の量が増えると氷温がより長時間
持続するようになり、水100重量部に対して約25乃
至45重量部配合したときに最大に達した。柔軟性につ
いて見ると、氷温改善剤の量が増えるにつれて柔軟性が
低下する傾向が見られ、氷温改善剤が35重量部を上回
ると、固状に近い性状を呈するようになり、所期の柔軟
性が得られ難くなった。データは省略するが、グリセリ
ンに代えて、ポリエチレングリコール、プロピレングリ
コール、ソルビトール、マルチトールなどの多価アルコ
ールについても同様に試験したところ、グリセリンに比
べるとやや劣りはするものの、ほぼ同等の成績が得られ
た。
【0046】このように、本実験例により、氷温を少な
くとも30分間持続させるには、氷温改善剤を15重量
部以上配合する必要があるところ、氷温改善剤の量が3
5重量部を上回ると所期の柔軟性が得られ難くなること
が判明した。所期の氷温持続時間と柔軟性を合わせ達成
するという観点から、水100重量部に対して、氷温改
善剤を約15乃至35重量部と、多価アルコールを約1
5乃至35重量部含んでなる組成をもって最良とした。
【0047】因に、実施例A−2及びA−3の方法によ
り調製した氷温改善剤についても前記と同様に試験した
ところ、ほぼ同じ傾向が見られた。また、実施例B−1
乃至B−5の方法により調製した保冷材についても、前
記と同様にして、常温下における氷温帯の持続時間及び
柔軟性について試験したところ、前記と同等若しくはそ
れ以上の成績が得られた。
【0048】
【発明の効果】以上詳述の如く、この発明の氷温改善剤
は、保冷材一般、とりわけ、水と多価アルコールを含ん
でなる保冷材に配合すると、その氷温帯における保冷能
を顕著に改善する。また、この発明の保冷材は、使用に
際して、氷温帯において改善された保冷能と良好な柔軟
性を発揮する。
【0049】したがって、この発明の氷温改善剤は氷温
の持続を必要とする保冷材一般、とりわけ、水と多価ア
ルコールを含んでなる保冷材に極めて有利に使用し得
る。また、この発明の保冷材は、貯蔵、輸送、配送に氷
温を必要とする物品全般に有利に適用でき、また、医療
やレジャー、スポーツの分野においては氷枕、氷嚢、湿
布材の代替物や携帯用保冷具としても有用である。そし
て、何よりも、この発明の氷温改善剤や保冷材に含有せ
しめたプルランとその水溶性誘導体は微生物等により容
易に分解され、自然環境にリサイクルされる特徴があ
る。したがって、この発明は環境に優しい、時代の要請
に適合した保冷材を提供するものと言える。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−178156(JP,A) 特開 昭59−25873(JP,A) 特開 昭52−78286(JP,A) プルランの生産と応用,発酵と工業, 1978年,Vol.36,No.2,p98− 108 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 5/00 101 A23L 3/36 - 3/375 A61F 7/10 312

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水100重量部と、プルラン及びその水
    溶性誘導体から選ばれる一種以上を有効成分とする氷温
    改善剤15乃至35重量部と、多価アルコール15乃至
    35重量部とを含んでなる保冷材。
  2. 【請求項2】 氷温改善剤におけるプルラン及び/又は
    その水溶性誘導体の平均分子量が1万乃至100万ダル
    トンである請求項に記載の保冷材。
  3. 【請求項3】 多価アルコールがグリセリンである請求
    1又は2に記載の保冷材。
  4. 【請求項4】 水100重量部に対してエチルアルコー
    を3乃至6重量部含んでなる請求項1、2又は3に記
    載の保冷材。
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プルランの生産と応用,発酵と工業,1978年,Vol.36,No.2,p98−108

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