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JP3365993B2 - セリウム系研摩材およびそのための原料、ならびにそれらの製造方法 - Google Patents

セリウム系研摩材およびそのための原料、ならびにそれらの製造方法

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JP3365993B2
JP3365993B2 JP2000222802A JP2000222802A JP3365993B2 JP 3365993 B2 JP3365993 B2 JP 3365993B2 JP 2000222802 A JP2000222802 A JP 2000222802A JP 2000222802 A JP2000222802 A JP 2000222802A JP 3365993 B2 JP3365993 B2 JP 3365993B2
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藤 昭 文 伊
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Mitsui Mining and Smelting Co Ltd
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Mitsui Mining and Smelting Co Ltd
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  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)
  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セリウム系研摩材
およびそのための原料、ならびにそれらの製造方法に関
するものである。詳しくは、本発明は、研摩力および研
摩精度に優れたセリウム系研摩材およびその原料を、高
い生産性かつ低コストで製造する技術に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、様々な用途にガラス材料が用いら
れている。この中でも特に光ディスクや磁気ディスク用
ガラス基板、アクティブマトリックス型LCD、液晶T
V用カラーフィルター、時計、電卓、カメラ用LCD、
太陽電池等のディスプレイ用ガラス基板、LSIフォト
マスク用ガラス基板、あるいは光学用レンズ等のガラス
基板や光学用レンズ等においては、高精度に表面研摩す
ることが要求されている。
【0003】従来、これらのガラス基板の表面研摩に用
いられる研摩材としては、希土類酸化物、特に酸化セリ
ウムを主成分とする研摩材が用いられている。その理由
は、ガラスの研摩において酸化ジルコニウムや二酸化ケ
イ素に比べて、酸化セリウムの研摩効率が数倍優れてい
るからである。
【0004】セリウム系研摩材に用いられる原料として
は、炭酸希土、水酸化希土、シュウ酸希土等の希土原
料、あるいはそれらを焼成することによって得られる酸
化希土原料が一般的に用いられる。これらの希土原料
は、一般にバストネサイト系希土原料あるいはセリウム
含有希土類原料から、一部の希土(Nd,Pr)および
放射性物質等を公知の化学的処理よって除去することに
より製造されている。
【0005】ところで、炭酸希土や酸化希土を原料とす
るセリウム系研摩材の製造は次のようにして行われてい
る。まず、原料をスラリー化あるいは湿式粉砕し、鉱酸
で処理し、次いで必要に応じてフッ酸あるいはフッ化ア
ンモニウム等で処理する。得られたスラリーを濾過し
て、乾燥した後、焙焼する。最後に、粉砕および分級
し、所定の粒径の研摩材を得る。
【0006】しかしながら、炭酸希土原料は強熱減量が
約30%と非常に高い原料である。このため、炭酸希土
原料を用いる場合、研摩材の製造に際して、最終製品の
重量に対してかなり多めの原料を使用する必要があり、
原料コストが高くなる。また、焙焼効率が上がらず、粉
砕品の嵩密度も低くなることから、分級能力も低下す
る。これらの理由から、製造コストが非常に高くなる。
【0007】このような問題に対し、炭酸希土等を焼成
して得られた酸化希土を原料として製造する方法も知ら
れている。この方法では、強熱減量が少なく、原料コス
トを低く抑えることができるとともに、嵩密度を炭酸希
土よりも高くすることができる。したがって、生産性を
高めることができる。しかしながら、酸化希土を原料と
する場合、焙焼工程において不均一に焼結が進行してし
まい、嵩密度が高くなりすぎるおそれがある。このた
め、得られた研摩材は、研摩力においては優れているも
のの、ガラス面等に微細な傷を付けるおそれがあった。
したがって、高い研摩精度が要求される用途(例えば、
前述した高機能性ガラス)においては、さらに高い研摩
精度が要求されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に
鑑みてなされたものであり、研摩力および研摩精度に優
れたセリウム系研摩材およびその原料を、高い生産性か
つ低コストで製造することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明のセリ
ウム系研摩材用原料は、セリウム系研摩材の製造に用い
られる原料であって、セリウム系希土類炭酸塩およびセ
リウム系希土類酸化物を主成分として含んでなり、10
00℃で1時間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量基準
で0.5〜25%でなるものである。
【0010】また、本発明のセリウム系研摩材用原料の
第一の製造方法は、セリウム系希土類炭酸塩およびセリ
ウム系希土類酸化物を用意し、前記原料を、1000℃
で1時間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量基準で0.
5〜25%となるような重量比で混合して複合原料を得
るというものである。
【0011】また、本発明のセリウム系研摩材用原料の
第二の製造方法は、セリウム系希土類炭酸塩を用意し、
該原料を仮焼して、その一部をセリウム系希土類酸化物
に変化させることにより、セリウム系希土類炭酸塩およ
びセリウム系希土類酸化物を含んでなる複合原料を得る
方法であって、前記仮焼時における仮焼温度および仮焼
時間を、前記仮焼後の該原料を1000℃で1時間加熱
した場合の強熱減量が乾燥重量基準で0.5〜25%と
なるように、調整するというものである。
【0012】さらに、本発明のセリウム系研摩材の製造
方法は、上記原料、または上記方法により製造された原
料を用意し、該原料をスラリー化および/または湿式粉
砕し、鉱酸で処理した後、濾過して乾燥し、焙焼すると
いうものである。ここで、前記鉱酸処理後であって前記
濾過前に、前記原料をフッ化アンモニウムおよび/また
はフッ酸で処理してもよい。また、本発明は、上記方法
により製造されたセリウム系研摩材、あるいは上記原料
を用いて製造されたセリウム系研摩材を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】セリウム系研摩材用原料 本発明におけるセリウム系研摩材用原料は、セリウム系
研摩材の製造に用いられる原料であって、セリウム系希
土類炭酸塩およびセリウム系希土類酸化物を主成分とし
て含んでなるものである。そして、本発明の原料は、強
熱減量を所定範囲内になるようにしたものである。
【0014】ここで、強熱減量は、材料を規定の温度条
件に加熱したときの重量減少百分率をいうものとして一
般的に知られている。本発明における強熱減量は、10
00℃で1時間加熱した場合の強熱減量をいうものと
し、JIS−K−0067(1992年)に準拠して測
定される。なお、このJIS基準は日本工業規格(日本
国東京都港区赤坂4−1−24)から、その英訳ととも
に容易に入手可能である。ここで、1000℃という温
度条件に設定したのは、500℃を超えたあたりから減
量が少なくなり、900℃を超えるとほとんど減量しな
くなるという、炭酸希土のTG(熱重量分析)結果を考
慮して、1000℃であれば安定な値が得られると考え
たためである。
【0015】強熱減量は具体的には次のようにして測定
される。まず、重量を恒量にしたるつぼの重量を測定す
る。そして、乾燥した原料試料をるつぼに入れて重量を
測定した後、1000℃に保持した電気炉中で1時間強
熱する。強熱後、るつぼを速やかにデシケーターに移し
て放冷する。放冷後、デシケータから取り出し、その重
量を測定する。この測定結果に基いて、強熱減量を次式
に基いて算出する。 B=(W−W)/(W−W)×100 [ここで、B:強熱減量(%)、W:強熱前の試料と
るつぼの重量(g)、W :強熱後の試料とるつぼの重
量(g)、W:るつぼの重量] なお、JIS−K−0067には、るつぼおよび試料の
強熱・放冷・重量測定を恒量になるまで繰り返すことが
規定されているが、1回目と2回目の重量差がほどんど
無く精度上問題が無いと考えられる場合、強熱・放冷・
重量測定を各1回のみ行えば足りるであろう。また、乾
燥重量基準の強熱減量の測定に際しては、試料が十分に
乾燥されていることが必要である。この乾燥は、例えば
JIS−K−0067(1992年)に記載の「4.1
乾燥減量試験」に準じて得られた試料を用いることが
できる。具体的には、大気圧下において乾燥温度105
℃に設定した乾燥機を用い、恒量となるまで乾燥を行っ
た試料を用いることができる。ここで、強熱減量を乾燥
重量基準に設定したのは、通常、セリウム系希土類炭酸
塩は多量の水分を含有し、しかも水分含有量が一定でな
いため、乾燥せずに直接測定した強熱減量では、水分の
影響により有用な指標となり得ないためである。
【0016】本発明における原料は、1000℃で1時
間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量基準で0.5〜2
5%、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25
%、最も好ましくは7〜20%になるようにしたもので
ある。強熱減量を上記範囲内にすることで、当該原料を
セリウム系研摩材の製造に用いた場合に、過剰の原料を
必要としないので原料コストが低くなる。しかも、焙焼
効率が向上すると同時に、焼結を均一に進行させること
ができ、適切な嵩密度を得ることができる。このため、
分級能力が向上して生産性が向上するとともに、研摩力
および研摩精度の両方に優れたセリウム系研摩材を得る
ことができる。特に、強熱減量が5〜25%(最も好ま
しくは7〜20%)の場合に得られる研摩材は、研摩精
度に格段に優れ、被研摩面に傷が非常に付きにくいとい
う利点があるため、光ディスクや磁気ディスク用ガラス
基板等の高機能性ガラスの二次研摩(最終仕上げの研
摩)に適している。一方、強熱減量が0.5〜5%(好
ましくは1〜5%)の場合に得られる研摩材は、研摩精
度は若干劣るものの、研摩力に優れることから、上記高
機能性ガラスの一次研摩等の研摩精度がそれ程要求され
ない用途に適している。
【0017】本発明におけるセリウム系希土類炭酸塩
(以下、炭酸希土ともいう)は、一般式R(CO3) 3
・nH2Oで表される化合物であって、通常、バストネ
サイト精鉱等のセリウム系希土類鉱石を化学処理してフ
ッ素等の不純物を低減した希土類含有溶液となし、炭酸
水素アンモニウム等の炭酸化剤を添加して濾過すること
により得られる。また、炭酸化の前に希土類含有溶液か
ら溶媒抽出により磁石原料となるネオジム等を回収して
もよい。なお、炭酸希土の存在は、例えば、X線回折、
TG/DTA(Thermogravimetry/Differential Therm
al Analysis)、または酸添加時の気体(泡)発生によ
って確認することができる。また、さらに酸添加時に発
生した気体を赤外分光分析等によって二酸化炭素である
と同定することも可能である。
【0018】また、本発明におけるセリウム系希土類酸
化物(以下、酸化希土ともいう)は、希土類のシュウ酸
塩、水酸化物、炭酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性硝酸塩等
を焼成することによって、混合希土類酸化物として得る
ことができるものである。ここで、本発明におけるセリ
ウム系希土類酸化物には、上記各種塩の焼成の際に生じ
得る中間生成物、例えばセリウム系希土類炭酸塩を仮焼
した際に生じ得る、完全にはセリウム系希土類酸化物に
はなっていない中間生成物、も含まれる。
【0019】これらの炭酸希土および酸化希土はいずれ
も、セリウムを主成分として含んでなるものである。こ
れにより、優れた研摩力を得ることができる。本発明の
複合原料において、上記所定の強熱減量の範囲内であれ
ば、炭酸希土および酸化希土の各含有量は特に限定され
ない。また、本発明の炭酸希土および酸化希土はいずれ
も、セリウム以外の他の希土類(La、Pr、Nd等)
を含有することができるが、これらの希土類成分量はセ
リウムより少ないことが望ましい。また、これらの希土
類化合物は、上記希土類以外にもF、Ca、Ba、P、
Si、Fe等の不可避不純物を微量含有していてもよ
い。
【0020】本発明の好ましい態様によれば、全酸化希
土換算総量(TREO)中に占めるCeO2の割合が40
重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは50重
量%以上である。このような範囲内にすることにより、
より優れた研摩力を実現することができる。
【0021】セリウム系研摩材用原料の製造方法 本発明のセリウム系研摩材用原料の製造方法、特に強熱
減量を上記範囲に制御する方法、は特に限定されない
が、好ましい製造方法としては以下の二つの方法を挙げ
ることができる。
【0022】本発明の第一の製造方法にあっては、ま
ず、セリウム系希土類炭酸塩と、セリウム系希土類酸化
物とを用意する。これらの炭酸希土および酸化希土につ
いては上述した通りである。ここで、使用に際して、こ
れらの原料の強熱減量が判明していることが望ましい。
それによって、強熱減量を所望の値に細かく制御するこ
とが可能になるからである。なお、この強熱減量が不明
の場合であっても、上述した測定方法を行うにより容易
に知ることができる。また、1000℃で1時間強熱し
た場合の強熱減量の代表的な値として、セリウム系希土
類炭酸塩について約30%、セリウム系希土類酸化物に
ついて約0.5%という値を挙げることができるが、こ
れに限定されない。これらの代表値を参照することで、
厳密な強熱減量を測定しなくても、上記炭酸希土および
酸化希土を原料として用いることができる。
【0023】次に、この二種類の原料を、1000℃で
1時間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量基準で0.5
〜25%、好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜
25%、最も好ましくは7〜20%、となるような重量
比で混合して複合原料を得る。具体的には、下記式を満
たすような重量比になるように酸化希土原料と炭酸希土
原料とを秤量し、混合すればよい。混合方法は、特に限
定されず、種々の方法を採用することができ特に限定さ
れないが、例えば湿式または乾式ボールミル、V型混合
機等が、均一に混合できる点で好ましい。こうして得ら
れた複合原料が本発明の目的とする原料である。 B = BA × WA/(WA+WB) + BB × WB
/(WA+WB) [B;目的とする強熱減量(0.5〜25%)、BA
酸化希土原料の強熱減量、BB;炭酸希土原料の強熱減
量、WA;酸化希土原料の乾燥重量、WB;炭酸希土原料
の乾燥重量]
【0024】この第一の製造方法の利点は、酸化希土原
料および炭酸希土原料の両方を入手可能な場合に、特定
の重量比率で混合するという、極めて簡便な方法で所望
の強熱減量の原料に調整することができることにある。
【0025】本発明の第二の製造方法にあっては、ま
ず、セリウム系希土類炭酸塩を用意する。このセリウム
系希土類炭酸塩については、上述した通りである。次
に、該原料を仮焼して、その一部をセリウム系希土類酸
化物に変化させることにより、セリウム系希土類炭酸塩
およびセリウム系希土類酸化物を含んでなる複合原料を
得る。すなわち、仮焼によって、炭酸塩が分解して酸化
物となる。ここで、仮焼時における仮焼温度および仮焼
時間を、前記仮焼後の該原料を1000℃で1時間加熱
した場合の強熱減量が乾燥重量基準で0.5〜25%、
好ましくは1〜25%、より好ましくは5〜25%、最
も好ましくは7〜20%、となるように、調整する。こ
の仮焼温度および仮焼時間は、所望の強熱減量になるよ
うに適宜決定すればよく、特に限定されるものではな
い。好ましい仮焼温度は、150〜800℃であり、よ
り好ましくは300〜600℃、さらに好ましくは30
0〜500℃である。また、上記好適温度における好ま
しい仮焼時間は、60時間以内であり、より好ましくは
10分〜24時間、さらに好ましくは20分〜10時
間、最も好ましくは30分〜1時間である。
【0026】この第二の製造方法の利点は、出発原料が
炭酸希土原料の一種類で済む点にあり、二種以上の原料
を混合する必要がなく経済的であり生産性が高い。しか
も、仮焼を行い、その温度および時間を制御するとい
う、極めて簡便な方法で所望の強熱減量の原料に調整す
ることができる。
【0027】セリウム系研摩材の製造方法 本発明におけるセリウム系研摩材の製造方法は、上述し
たセリウム系研摩材用原料を用意し、この原料をスラリ
ー化および/または湿式粉砕し、必要に応じて鉱酸で処
理して、また必要に応じてフッ化アンモニウムおよび/
またはフッ酸で処理した後、濾過して乾燥し、焙焼する
ことにより行われる。これらの工程は、セリウム系研摩
材の製造工程として一般的なものであり、その詳細は特
に限定されない。
【0028】まず、本発明のセリウム系研摩材用原料を
スラリー化および/または湿式粉砕して、所定粒径にす
る。湿式粉砕は湿式ボールミル等で行うことができる。
なお、好ましい平均粒径は0.05〜3μmである。
【0029】本発明の好ましい態様によれば、このスラ
リー化および/または湿式粉砕された原料粉末を鉱酸で
処理する。鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げら
れ、その濃度は0.1〜2Nとするのが好ましい。この
ように希土類原料を鉱酸処理することによって、焙焼工
程において粒成長の原因となるカルシウム、ナトリウム
等のアルカリ金属やアルカリ土類金属等の不純物を溶解
除去し、異常粒成長を起こりにくくすることができる。
【0030】本発明の好ましい態様によれば、さらに、
この鉱酸処理されたセリウム含有希土類原料スラリーを
フッ化アンモニウムおよび/またはフッ酸で処理するこ
とができる。このフッ化アンモニウムおよび/またはフ
ッ酸には、例えば、フッ化水素アンモニウム(NH
・HF)のような化合物も含めることができる。このと
き、フッ素の量を調整することで、後工程で行われる焙
焼工程において、研摩材粒子の粒成長の度合いを制御で
き、切削性を調整できるので、荒仕上げから最終仕上げ
に至るまでの広範囲の用途にわたって、高精度研摩材を
製造することができる。なお、添加するフッ素濃度は5
〜60g/Lであることが好ましい。また、本発明の別
の好ましい態様によれば、スラリー化および/または湿
式粉砕の後に、鉱酸処理を施すことなく、原料をフッ化
アンモニウムおよび/またはフッ酸で処理する構成とす
ることもできる。
【0031】本発明の好ましい態様によれば、フッ化ア
ンモニウムで処理するのが好ましい。フッ化アンモニウ
ムはフッ化反応がゆるやかに進行するので、原料中にフ
ッ素源を均一に分布させることができ、より低温度の焙
焼温度で均一な粒成長を促進することができるからであ
る。これにより、研摩材中に異常な粗大粒子をもつこと
がなく、高精度の表面仕上がりが可能で、しかも高切削
性の研摩材を得ることができる。
【0032】鉱酸処理あるいはさらにフッ化アンモニウ
ムおよび/またはフッ酸で処理されたセリウム含有希土
類原料は、濾過、乾燥された後、焙焼される。焙焼温度
は600〜1100℃であるのが好ましく、より好まし
くは700〜1000℃である。また、焙焼時間は1〜
10時間が好ましく、例えば電気炉等が使用される。
【0033】焙焼された原料は、続いて、放冷、粉砕、
分級を経ることにより、本発明のセリウム系研摩材とな
る。この研摩材の平均粒径は0.05〜3.0μmが好
ましい。さらに、この研摩材中には、フッ化アンモニウ
ムおよび/またはフッ酸で処理した場合、フッ素が0.
5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%含有され
る。上記焙焼温度およびフッ素含有量を制御することに
よって、研摩材の粒径を制御することができる。
【0034】セリウム系研摩材 本発明のセリウム系研摩材は、通常、水等の分散媒に分
散させて5〜30重量%程度のスラリーの状態で使用さ
れる。このような分散媒としては、水や水溶性有機溶媒
が使用される。有機溶媒としては、アルコール、多価ア
ルコール、アセトン、テトラヒドロフラン等が例示され
るが、水が通常使用される。
【0035】本発明のセリウム系研摩材においては、高
分子の有機分散剤を含有することが望ましい。このよう
な有機分散剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム等の
ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、ポリ
エチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等が例示さ
れる。このような有機分散剤を含有させることにより、
研摩中の発泡を防止することができる。この有機分散剤
の含有量は研摩材中に0.1〜0.8重量%であり、こ
れを超えて含有させても使用効果がない。
【0036】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】実施例1 原料Aとしてセリウム系希土類酸化物(中国産)を、原
料Bとしてセリウム系希土類炭酸塩(中国産)を用意し
た。表1にこれらの原料の強熱減量と、酸化物基準の組
成を示す。なお、原料Aおよび原料Bはいずれも商業的
に容易に入手可能な原料である。
【0038】 表 1 原料A(酸化希土) 原料B(炭酸希土) 強熱減量(%) 0.6 30 希土類酸化物の合計 99.1 69.5 (TREO;全酸化希土換算総量) CeO2/TREO 60.0 58.0 La23/TREO 34.5 27.9 Pr611/TREO 4.5 7.6 Nd 2 3 /TREO 1.0 6.7 F 0.2 <0.1 CaO 0.1 0.05※ BaO 0.2 0.01※ 2 5 0.02 0.03※ SiO 2 0.01 Fe 0.01 ※Ca,Ba、Pの値を示す。 (単位:重量%)
【0039】ここで、上記表1における強熱減量は、十
分に乾燥した原料を1000℃で1時間加熱した場合に
おける、重量減少百分率であり、次のようにして測定し
た。まず、重量を恒量にしたるつぼの重量を0.1mg
のけたまで測定した。また、それぞれの原料を105℃
で1時間加熱して十分に乾燥させ、原料試料とした。そ
して、それぞれの原料試料をるつぼに入れて、その重量
を0.1mgのけたまで測定した。このるつぼを電気炉
に入れ、徐々に温度を上げて強熱した。1000℃で1
時間強熱した後、るつぼを速やかにデシケーターに移し
て放冷した。放冷後、デシケータから取り出し、その重
量を0.1mgのけたまで測定した。この測定結果に基
いて、それぞれの原料試料における強熱減量を次式によ
り算出した。 B=(W−W)/(W−W)×100 [ここで、B:強熱減量(%)、W:強熱前の試料と
るつぼの重量(g)、W :強熱後の試料とるつぼの重
量(g)、W:るつぼの重量]
【0040】次に、上記原料Aおよび原料Bを適宜混合
して、表2に示されるような強熱減量となるように調整
し、各強熱減量に対応する複合原料を得た。具体的に
は、下記式を満たすような重量比になるように原料Aと
原料Bとを秤量し、混合した。こうして得られた複合原
料が本発明の目的とする原料である。 B = BA × WA/(WA+WB) + BB × WB
/(WA+WB) [B;目的とする強熱減量、BA;原料Aの強熱減量、
B;原料Bの強熱減量、WA;原料Aの乾燥重量、
B;原料Bの乾燥重量]
【0041】得られた複合原料を用いてセリウム系研摩
材の製造を行った。まず、複合原料を湿式ボールミルで
粉砕して、平均粒径1.0μmの粉体を得た。この粉体
を鉱酸(濃度1Nの塩酸)で処理した後、15g/Lの
フッ化アンモニウム水溶液で処理してスラリーを得た。
このスラリーを、濾過、乾燥して乾燥ケーキを得た。得
られたケーキを920℃、2時間電気炉で焙焼した後、
放冷した。さらに、これを粉砕し、分級して本発明のセ
リウム系研摩材を得た。
【0042】次に、得られた研摩材を水に分散させて濃
度10重量%のスラリーとした。このスラリー状研摩液
を用いて、高速研摩機で65mmφの平面パネル用ガラ
スを研摩圧力15.7kg/cm2で研摩した。研摩後
のガラス表面について、研摩値の測定と、傷の評価を行
った。
【0043】また、比較のために、原料Aのみを原料と
して使用した場合、および原料Bのみを原料として使用
した場合についても、上記同様にして研摩材の製造およ
び評価試験を行った。
【0044】研摩値の測定 研摩前の平面パネル用ガラスの重量を予め測定してお
き、上記研摩後の平面パネル用ガラスの重量を測定する
ことにより、研摩による重量の減少量を算出した。そし
て、強熱減量30%の場合の研摩による重量減少量を1
00とし、各強熱減量における研摩による重量減少量を
相対値に換算し、研摩値とした。結果を表2に示す。
【0045】傷の評価 上記研摩後の平面パネル用ガラスの表面に、光源30万
ルクスのハロゲンランプを照射して、反射法にて評価し
た。具体的には、100点を満点とし、傷の程度および
数により所定の点数を減ずる減点方式にて評価した。そ
の結果を表2に示す。
【0046】総合評価 上記研摩値、および傷の評価の結果に基いて、総合的な
評価をA、B、Cの3段階で以下のような基準で行っ
た。その結果を表2に示す。 評価A:研摩値107以上、かつ傷の評価が95以上 評価B:研摩値102以上、かつ傷の評価が90以上で
あって、評価Aに該当しないもの 評価C:研摩値102未満、または傷の評価が90未満 なお、本発明はこの評価基準に限定されるものではな
い。
【0047】 表 2 強熱減量 研摩値 傷の評価 総合評価 (%) 0.6 115 90 B 2 114 91 B 3 113 91 B 5 110 96 A 7 110 98 A 10 110 95 A 20 110 98 A 25 110 97 A 30 100 97 C
【0048】実施例2 原料として表1に示されるセリウム系希土類炭酸塩(原
料B)を用意した。この原料Bを表3に示される所定の
温度および時間で仮焼した。この仮焼により、原料B中
の炭酸セリウムの一部または全部を酸化セリウムに変化
させることで、仮焼物の強熱減量を調整した。こうして
得られた複合原料が本発明の目的とする原料である。こ
こで、得られた原料粉末の一部を1000℃で1時間加
熱して、JIS−K−0067(1992年)に準拠し
て重量減少量を測定して、強熱減量を測定した。こうし
て得られた各原料を用いて、実施例1と同様にしてセリ
ウム系研摩材の製造を行い、研摩値の測定、傷の評価、
ならびに総合評価を行った。結果を表3に示す。
【0049】 表 3 強熱減量 仮焼温度 仮焼時間 研摩値 傷の評価 総合評価 (%) (℃) (時間) 0.1 1000 2 120 88 C 0.6 1000 1 115 90 B 2 1000 0.7 114 91 B 3 1000 0.5 114 91 B 5 400 10 111 95 A 7 400 4 111 96 A 9 400 2 109 98 A 19 400 1 111 99 A 30 0 0 100 98 C
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
研摩力および研摩精度に優れたセリウム系研摩材および
その原料を、高い生産性かつ低コストで製造することが
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−134435(JP,A) 特開 平10−106991(JP,A) 特開 平10−106989(JP,A) 特開 平9−183966(JP,A) 特公 平6−60014(JP,B2) 国際公開01/88056(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 3/14 C01F 17/00 B24B 37/00 - 37/04 H01L 21/304

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セリウム系研摩材の製造に用いられる原料
    であって、 セリウム系希土類炭酸塩およびセリウム系希土類酸化物
    を主成分として含んでなり、 1000℃で1時間加熱した場合の強熱減量が乾燥重量
    基準で0.5〜25%であることを特徴とする、セリウ
    ム系研摩材用原料。
  2. 【請求項2】前記強熱減量が5〜25%である、請求項
    1に記載のセリウム系研摩材用原料。
  3. 【請求項3】セリウム系希土類炭酸塩およびセリウム系
    希土類酸化物を用意し、 前記原料を、1000℃で1時間加熱した場合の強熱減
    量が乾燥重量基準で0.5〜25%となるような重量比
    で混合して複合原料を得ることを特徴とする、セリウム
    系研摩材用原料の製造方法。
  4. 【請求項4】セリウム系希土類炭酸塩を用意し、 該原料を仮焼して、その一部をセリウム系希土類酸化物
    に変化させることにより、セリウム系希土類炭酸塩およ
    びセリウム系希土類酸化物を含んでなる複合原料を得る
    方法であって、 前記仮焼時における仮焼温度および仮焼時間を、前記仮
    焼後の該原料を1000℃で1時間加熱した場合の強熱
    減量が乾燥重量基準で0.5〜25%となるように、調
    整することを特徴とする、セリウム系研摩材用原料の製
    造方法。
  5. 【請求項5】前記強熱減量が5〜25%である、請求項
    3または4に記載のセリウム系研摩材用原料の製造方
    法。
  6. 【請求項6】請求項1または2に記載の原料、または請
    求項3〜5のいずれか一項に記載の方法により製造され
    た原料を用意し、 該原料をスラリー化および/または湿式粉砕し、濾過し
    て乾燥し、焙焼することを特徴とする、セリウム系研摩
    材の製造方法。
  7. 【請求項7】前記スラリー化および/または湿式粉砕の
    後であって、前記濾過の前に、前記原料を鉱酸で処理す
    る、請求項6に記載のセリウム系研摩材の製造方法。
  8. 【請求項8】前記スラリー化および/または湿式粉砕の
    後であって、前記濾過の前に、前記原料をフッ化アンモ
    ニウムおよび/またはフッ酸で処理する、請求項6に記
    載のセリウム系研摩材の製造方法。
  9. 【請求項9】前記鉱酸処理後であって前記濾過前に、前
    記原料をフッ化アンモニウムおよび/またはフッ酸で処
    理する、請求項7に記載のセリウム系研摩材の製造方
    法。
  10. 【請求項10】請求項6〜9のいずれか一項に記載の方
    法により製造された、セリウム系研摩材。
  11. 【請求項11】請求項1または2に記載の原料を用いて
    製造された、セリウム系研摩材。
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