JP3343747B2 - 粉末ハイス鋼 - Google Patents
粉末ハイス鋼Info
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Description
に詳しくは、その粉末ハイス鋼を用いて製造した切削工
具や金型などは、耐摩耗生が優れていると同時に被研削
性も優れている粉末ハイス鋼に関する。
法で製造される場合が多い。その場合、例えば、切削工
具は次のようにして製造されている。すなわち、まず、
所定粒径の例えば粉末ハイス鋼を所定形状のモールド内
に充填したのち粉末ハイス鋼を焼結して目的形状に近似
した形状の素材を製造する。ついで、焼なまし状態で荒
加工したのち、例えば真空焼入炉を用いて熱入れし、そ
の後、雰囲気炉によって焼戻しを行い硬度を高める。そ
して最後に、研削砥石で研削して目的形状にする。
からすれば、被切削材との関係では耐摩耗性に優れてい
ることが要求される。そのことと同時に、上記製造工程
からも明らかなように、焼結品である素材それ自体は最
終工程で研削されるので被研削性に優れる材料であり、
また焼入れ性に優れる材料であることが要求される。こ
のような要求に対しては、原料である粉末ハイス鋼にお
ける炭化物総量を増加させることにより、高合金化を進
めるという処置が採られている。
得られた粉末ハイス鋼の素材は確かに耐摩耗性は向上す
るが、他方では、硬度が高くなりすぎて、被研削性の劣
化という問題が派生する。そのため、目的形状の切削工
具を研削するに要する時間は長くなって生産性の低下を
招き、最終製品のコスト上昇が引き起こされる。
ハイス鋼における上記した問題を解決し、それを用いて
製造した製品の耐摩耗性が優れていると同時に被研削性
も優れていて、例えば、切削工具や金型などを粉末冶金
法で製造するときの原料として有用な粉末ハイス鋼の提
供を目的とする。
においては、その組織内に各種の炭化物が析出してい
る。それら炭化物のうち、VCのようなMC型炭化物と
(Fe,W,Mo)6CのようなM6 C型炭化物の大きさ
と硬さが、そのハイス鋼の被研削性に影響を与えること
が知られている。
からの粉末ハイス鋼と同等である鋼種において、炭化物
の種類と量がその鋼種の耐摩耗性と被研削性に及ぼす影
響を調査した。その結果、MC型炭化物とM6 C型炭化
物の総量と相互の存在比率が所定の範囲にある粉末ハイ
ス鋼は、焼入れ性はJIS SKH51とほぼ同等であ
り、硬度や抗折力も従来の粉末ハイス鋼と同等である
が、耐摩耗性と被研削性はいずれも従来の粉末ハイス鋼
に比べて優れているとの事実を見出し、本発明の粉末ハ
イス鋼を開発するに至った。
1.5〜2.5重量%,Si:0.1〜1.0重量%,Mn:1.
0重量%以下,Cr:3.0〜6.0重量%,Mo:2.0〜
8.0重量%,W:5.0〜20.0重量%,V:6.0〜10.
0重量%,Co:2.0重量%以下,残部がFeから成
り、MC型炭化物とM6 C型炭化物の炭化物体積率をそ
れぞれa体積%,b体積%としたとき、a,bの間で
は、次式:15≦a+b≦30,0.7≦a/(a+b)
≦1.0の関係が成立していることを特徴とする。
している炭化物は、VCを主体とするMC型炭化物とM
6 Cや(Fe,W,Mo)6Cを主体とするM6 C型炭化
物になっている。これら炭化物のうち、MC型炭化物は
材料の耐摩耗性を向上させる働きをする。組織内で占有
するこれらMC型炭化物とM6 C型炭化物の体積の割合
(炭化物体積率:体積%)をそれぞれa,bとしたと
き、本発明の粉末ハイス鋼においては、a,b間で、1
5≦a+b≦30,0.7≦a/(a+b)≦1.0の関係
が成立している。
の総量を示す指標であり、この値が15より小さい値と
なるような場合、すなわち、MC型炭化物とM6 C型炭
化物の総量が15体積%より少ない場合には、従来の粉
末ハイス鋼に期待されるような耐摩耗性と被研削性の均
衡した性能向上が得られない。(a+b)が30より大
きい値になるような場合、すなわち、炭化物総量が30
体積%より多い場合には、そのような組織のハイス鋼を
工業的な規模で量産することがかなり困難になり、製造
コストの上昇が引き起こされる。
(a+b)は、15〜30体積%の範囲内に設定され
る。好ましくは、15〜25体積%にする。一方、a/
(a+b)は、組織内に析出している炭化物のうち、耐
摩耗性の向上に寄与するMC型炭化物の存在割合を示す
指標であり、この値が大きくなるほど、ハイス鋼の耐摩
耗性は向上する。炭化物を全てMC型炭化物にすること
は、耐摩耗性の向上という点で好ましいので、a/(a
+b)の値は、1.0を上限とする。
ると、MC型炭化物の耐摩耗性の向上効果が充分に発揮
されなくなり、得られたハイス鋼の耐摩耗性は不充分で
ある。a/(a+b)の好ましい値は、0.8〜1.0であ
る。また、上記したMC型炭化物,M6 C型炭化物は、
その円相当粒径が、平均値で0.8μm以上であり、かつ
最大値が2〜8μmになっていることが好ましい。
その平均値が0.8μmより小さいと、鋼の被研削性は向
上するが、しかし耐摩耗性が低下する傾向を示す。他
方、最大炭化物の粒径が大きいほど耐摩耗性は向上する
が、8μmを超える大きさになると、粉末ハイス鋼の特
徴である被研削性の良さが損なわれる。したがって、粉
末ハイス鋼としての特徴を損なわず、かつ耐摩耗性の低
下を防ぐために、最大炭化物の粒径としては2〜8μm
に調整することが好ましい。
て、溶鋼のソーキング温度やソーキング時間を適切に選
定することによって行うことができる。本発明の粉末ハ
イス鋼において、まず、Cは、主要にはVと反応してV
Cを主体とするMC型炭化物を生成させ、また、WやM
oと反応してW6 CやMo6 Cを主体とするM6 C型炭
化物を生成させるための必須成分である。
ば、G.STEVENらによって報告されている次式: ΔC=C−(0.06Cr+0.063Mo+0.033W+
0.2V) におけるΔC値が−0.3〜0.1の範囲内になるような値
として設定される。具体的には、1.5〜2.5重量%に設
定される。
と、所定量のMC型炭化物とM6 C型炭化物が生成され
ず、また2.5重量%より多くなると、マトリックス中の
C量が過剰となり靱性が損なわれる。Siは、溶製時に
おける脱酸剤として機能する成分であり、その含有量
は、通常のハイス鋼と同じように、0.1〜1.0重量%に
設定される。
能する成分であり、その含有量は1.0重量%以下に設定
される。この含有量が1.0重量%より多い場合は、組織
内に残留オーステナイトが生成して全体は脆性となり、
切削工具などの材料として不適当になる。Crは焼入れ
性の向上に資する成分であり、その含有量は3.0〜6.0
重量%に設定される。
は、材料への焼入れが不充分になって硬度の向上が期待
できなくなる。また、6.0重量%よりも多くすると、C
r2 C 3 のようなCr系炭化物も生成して、目的とする
MC型炭化物とM6 C型炭化物の適正な生成が阻害され
るようになる。MoはM6 C型炭化物を生成させるため
の必須成分であると同時に、そのMo 6 Cが焼入れ時に
マトリックスに固溶することにより材料の2次硬化に資
する成分であり、その含有量は2.0〜8.0重量%に設定
される。
と、上記した働きのうち、2次硬化作用が充分に発揮さ
れなくなり、また、8.0重量%よりも多くすると、Mo
6 Cの生成量が増加して、耐摩耗性の向上に寄与するM
C型炭化物の生成量の減少を招くようになる。Wは、上
記したMoの2倍量をもってMoと同じような働きをす
る成分であり、その含有量は5.0〜20重量%に設定さ
れる。
は、Moの場合と同じように、2次硬化作用が充分に発
揮されず、また20.0重量%よりも多くすると、初期に
形成されるM6 C型炭化物の量が多くなり、総炭化物量
(MC+M6 C)の増加により加工性が劣化する。Vは
VCを主体とするMC型炭化物を生成させるための必須
成分であり、その含有量は5.0〜10.0重量%に設定さ
れる。
と、前記したa/(a+b)値は0.7にならない。ま
た、含有量を10.0重量%にすると、a/(a+b)値
が1.0になる、すなわち、生成する炭化物が全てMC型
炭化物になるので、Vの含有量は上記した範囲にする。
好ましくは、6.0〜10.0重量%にする。Coは、材料
の硬度を高めたり、マトリクスの強度を高めたりする働
きをするが、他方では、ベーナイト変態開始時間を短時
間側にシフトさせて焼入れ性に大きな影響を与える成分
である。
1と同等にすることを目的とする場合には、材料にCo
を含有させないことが好ましいことになる。しかしなが
ら、鋼の溶製時に、使用スクラップなど系外から混入す
ることはさけられないが、そのことを前提とした場合で
あっても、ハイス鋼の耐摩耗性と被研削性を確保するた
めには、Coの含有量は2.0重量%を上限とする。
の所定量から成る合金を溶製し、ガス噴霧後、HIP缶
充填,HIP処理を行い、炭化物の粒径を大きくするた
めの拡散処理を行ったのち、熱間鍛造して所定の素材に
する。
率50%以上の熱間鍛造を行い、焼鈍して供試材にし
た。これら各供試材については、焼鈍後の状態における
硬度(HRC)を測定した。その結果を表2,3に示し
た。その後、各鋼に、1160〜1200℃の温度域で
真空焼入れを行い、520〜560℃の温度域で1hr×
3回の焼戻しを行い、そのときの硬度(HRC),抗折
力,耐摩耗性,研削性,炭化物分布を測定した。その結
果も表2,3に示した。
Cr3 O3 電解腐食した試料を使用し、倍率2000倍
でSEM写真を撮影したのち、ルーゼックスイメージア
ナライザーで面積率(a)(=体積率)として測定。な
お、円相当粒径は、異形形状の炭化物を円相当粒径に
し、その平均値を求めた。
腐食液としてKMnO4 を用いて腐食したことを除いて
は、炭化物体積率(a)と円相当粒径の測定と同じ。ま
た、上記各鋼につき、下記の仕様で耐摩耗性指数と研削
性指数を算出した。 耐摩耗性指数:大越式摩耗試験法を適用し、比較例1の
結果を100としたときの相対値として表示。この値が
大きい材料ほど耐摩耗性が優れていることを表す。 研削性指数:研磨砥石としてレジンボンド砥石を用い、
比較例1の結果を100としたときの相対値として表
示。この値が大きい材料ほど被研削性が優れていること
を表す。 以上の結果を一括して表2,3に示した。なお、表2,
3では、各鋼について算出されるΔC値も併記した。
比較例1と本発明のハイス鋼である実施例10を比較す
れば明らかなように、両者の炭化物総量(a+b)と焼
入れ後の硬さはほぼ同等であるが、MC型炭化物の体積
率(a)が約2倍値になっている実施例1は、比較例1
に対し、その耐摩耗性指数が20%上昇し、かつ研削性
指数が90%以上大きい値になっていて、耐摩耗性と被
研削性のいずれもが優れている。
粉末ハイス鋼は、耐摩耗性が優れていると同時に被研削
性も優れている。しかも、焼入れ後の硬度は、従来のハ
イス鋼とほぼ同等である。これは、炭化物総量を増加さ
せ、その炭化物総量におけるMC型炭化物の割合を高め
たことがもたらす効果である。
末冶金法で製造する切削工具や金型の原料素材としてそ
の工業的価値は大である。
Claims (3)
- 【請求項1】 C:1.5〜2.5重量%,Si:0.1〜1.
0重量%,Mn:1.0重量%以下,Cr:3.0〜6.0重
量%,Mo:2.0〜8.0重量%,W:5.0〜20.0重量
%,V:5.0〜10.0重量%,Co:2.0重量%以下,
残部がFeから成り、MC型炭化物とM6 C型炭化物の
炭化物体積率をそれぞれa体積%,b体積%としたと
き、a,bの間では、次式:15≦a+b≦30,0.7
≦a/(a+b)≦1.0の関係が成立していることを特
徴とする粉末ハイス鋼。 - 【請求項2】 MC型炭化物およびM6 C型炭化物の円
相当平均粒径が0.8μm以上であり、かつ円相当最大粒
径が2〜8μmである請求項1の粉末ハイス鋼。 - 【請求項3】 C:1.5〜2.5重量%,Si:0.1〜1.
0重量%,Mn:1.0重量%以下,Cr:3.0〜6.0重
量%,Mo:2.0〜8.0重量%,W:5.0〜15.0重量
%,V:6.0〜10.0重量%,Co:2.0重量%,残部
がFeから成り、MC型炭化物の体積率a(%)とM6
C型炭化物の体積率b(%)の間では、15≦a+b≦
25,0.8≦a/(a+b)≦1.0の関係が成立してお
り、前記MC型炭化物と前記M6 C型炭化物の円相当平
均粒径が0.8μm以上で、かつ、円相当最大粒径が2〜
8μmである請求項1の粉末ハイス鋼。
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JP33808893A JP3343747B2 (ja) | 1993-12-28 | 1993-12-28 | 粉末ハイス鋼 |
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JP33808893A Expired - Fee Related JP3343747B2 (ja) | 1993-12-28 | 1993-12-28 | 粉末ハイス鋼 |
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