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JP3087065B1 - 単結晶SiCの液相育成方法 - Google Patents

単結晶SiCの液相育成方法

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JP3087065B1
JP3087065B1 JP11058254A JP5825499A JP3087065B1 JP 3087065 B1 JP3087065 B1 JP 3087065B1 JP 11058254 A JP11058254 A JP 11058254A JP 5825499 A JP5825499 A JP 5825499A JP 3087065 B1 JP3087065 B1 JP 3087065B1
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Abstract

【要約】 【課題】 マイクロパイプ欠陥や結晶欠陥等の発生が少
ないとともに、Si塊の封じ込みによる多結晶化もな
く、非常に高品質高性能で、かつ、バルク状の単結晶S
iCを効率よく育成できるようにする。 【解決手段】 C原子を含む坩堝1内の底部に種結晶と
なるα−SiC単結晶基板5を配置し、このα−SiC
単結晶基板5の上面を覆うようにSiO2 粉末6を充填
するとともに、さらにその上部にSiO2 粉末とSiC
粉末の混合粉末7を充填した状態で、底部側が低温とな
るように上下の温度差を保ちながら不活性雰囲気中で加
熱し両粉末を分解させて得られるC原子を過剰に含むS
i融液中にSiC単結晶基板5を所定時間に亘り浸漬保
持させることにより、SiC単結晶基板5の表面に単結
晶を育成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、単結晶SiCの液
晶育成方法に関するもので、詳しくは、発光ダイオード
やX線光学素子、高温半導体電子素子の基板ウエハなど
として用いられる単結晶SiCの液相育成方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】SiC(炭化珪素)は、耐熱性および機
械的強度に優れているだけでなく、放射線にも強く、さ
らに不純物の添加によって電子や正孔の価電子制御が容
易である上、広い禁制帯幅を持つ(因みに、6H型のS
iC単結晶で約3.0eV、4H型のSiC単結晶で
3.26eV)ために、Si(シリコン)やGaAs
(ガリウムヒ素)などの既存の半導体材料では実現する
ことができない高温、高周波、耐電圧、耐環境性を実現
することが可能で、次世代のパワーデバイス用半導体材
料として注目され、かつ期待されている。
【0003】この種の単結晶SiCの育成方法として、
従来、黒鉛坩堝内の低温側に種結晶を固定配置し、高温
側に原料となるSiC粉末を挿入配置して黒鉛坩堝内を
不活性雰囲気中で2100〜2400℃の高温に加熱す
ることによって、上記SiC粉末を昇華させて低温側の
種結晶の表面上で再結晶させて単結晶の育成を行なう昇
華再結晶法(改良レーリー法)が一般的に知られてい
る。
【0004】しかし、上記の昇華再結晶法により製造さ
れた単結晶SiCには多種の欠陥が存在し、性能的にも
品質的にも安定した単結晶が得られないという問題があ
る。その理由は次のとおりである。すなわち、昇華の
際、SiC粉末はいったんSi,SiC2 ,Si2 Cに
分解されて気化し、さらに坩堝の構成元素である黒鉛の
一部も昇華するために、温度変化によって種結晶の表面
に到達するガスの種類が異なり、これらの分圧を化学量
論的に正確に制御することは技術的に非常に困難であ
り、そのために不純物が混入しやすく、その混入した不
純物や熱に起因する歪みの影響で結晶欠陥やマイクロパ
イプ欠陥等を発生しやすい。また、昇華再結晶法では成
長条件の変化に伴い結晶の多形転移を生じやすいという
欠点もある。
【0005】このような昇華再結晶法による単結晶Si
Cの育成方法のもつ問題を解消するものとして、Si液
相エピタキシャルによる単結晶SiC育成方法(以下、
LPE法という)が提案されている。このLPE法は、
Cを含む坩堝内に収容されたシリコン(Si)融液中に
坩堝の構成元素であるCとの反応により生成したSiC
を溶解させ、ホルダで支持したSiC単結晶基板をSi
融液の低温域に浸漬させることにより、該SiC単結晶
基板の表面上にSiC単結晶を成長させる方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したLPE法によ
り製造された単結晶SiCは、昇華再結晶法でみられる
ようなマイクロパイプ欠陥や結晶欠陥などが少なく、か
つ、多形転移の発生もなく、昇華再結晶法で製造される
単結晶SiCに比べて品質的に優れている反面、育成速
度が10μ/hr.と遅くて単結晶SiCの生産性が低
く、生産コストが非常に高価なものになる。その上、バ
ルク状の単結晶SiCを得ようとして長時間に亘る単結
晶成長を行なうと、坩堝の低温部や、Si融液の低温域
に浸漬されたSiC単結晶基板を支持するためのホルダ
に多くの多結晶が成長し、この多結晶の成長によって単
結晶の成長が妨げられるために、バルク状の単結晶が得
られない。したがって、このLPE法はSiC単結晶基
板上に極く薄い単結晶SiCを形成する液相エピタキシ
ャル成長に適用できるに過ぎず、バルク状単結晶SiC
の育成には適用できない。
【0007】また、LPE法ではSiCの成長温度がS
iの融点よりも300℃程度高温であるために、Siの
気化によりSi融液中のSiC濃度が上がって過飽和に
なりやすく、その結果、Si塊が育成されるSiC単結
晶間に封じ込まれて多結晶化しやすいという問題があ
り、これらのことが既述のようにSiやGaAsなどの
既存の半導体材料に比べて多くの優れた特徴を有しなが
らも、その実用化を阻止する要因になっている。
【0008】本発明は上記実情に鑑みてなされたもの
で、マイクロパイプ欠陥や結晶欠陥等の発生が少ないと
ともに、Si塊の封じ込みによる多結晶化もなく、非常
に高品質高性能で、かつ、バルク状の単結晶SiCを効
率よく育成することができ、半導体材料としての実用化
を促進できる単結晶SiCの液相育成方法を提供するこ
とを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る単結晶SiCの液相育成方法は、少な
くともC原子を含む坩堝内の底部に種結晶となるSiC
単結晶基板を配置し、このSiC単結晶基板の上面を覆
うように坩堝内にSiO2 粉末を充填するとともに、さ
らにその上部にSiO2 粉末とSiC粉末の混合粉末を
充填した状態で、底部側が低温となるように上下の温度
差を保ちながら不活性雰囲気中で加熱して両粉末を溶解
させ、その融液中に上記SiC単結晶基板を所定時間に
亘り浸漬保持させることにより、SiC単結晶基板の表
面に単結晶を育成させることを特徴とするものである。
【0010】上記のような本発明によれば、加熱に伴い
下層のSiO2 粉末が酸化珪素(SiO)とO2 に分解
されるとともに、その上層の混合粉末がSi原子,C原
子,SiOおよびO2 にそれぞれ分解され、かつ、Si
溶融されてSi融液が形成される。このとき、SiO
2 粉末単独からなる下層とSiCを含む混合粉末からな
る上層とでは、SiO2 とSiCとの熱伝導率の差によ
り下層側の方が上層よりも低温になり、このような温度
勾配の形成に伴うSi融液の拡散、対流によってC原子
がSi融液中の低温域に輸送される。一方、坩堝内の底
部に配置されたSiC単結晶基板は融液中の低温域に浸
漬保持されているために、その表面の運動エネルギーは
比較的小さい状態に保たれており、輸送されてきたSi
原子とC原子は運動エネルギーの小さいSiC単結晶基
板の表面上で速やかに反応し、該表面にSiCエピタキ
シャル層が成長されることになる。
【0011】また、上記のようなSiCエピタキシャル
成長時において、高温域の融液により加熱された坩堝か
らもが分解されてSi融液中に溶け込み、上層の混合
粉末から分解されたC原子と相俟ってSi融液中のC原
子が過剰になり、その結果、SiC濃度が過飽和になっ
て、Si塊が育成され、これがSiC単結晶間に封じ込
まれて多結晶化しやすくなる。
【0012】ところが、その過剰C原子を含むSi融液
が上記の温度勾配に伴う拡散、対流によって低温域に輸
送される際、下層のSiO2 粉末から分解されたSiO
によりC原子がふるい(フィルター)にかけられること
になり、過剰なC原子と分解したO2 との反応によりC
OあるいはCO2 にガス化されて融液の上方(系外)へ
排出されるとともに、適正量のC原子が低温域に輸送さ
れてSiC単結晶基板の表面に供給される。したがっ
て、C原子の過剰に伴うSiC濃度の過飽和に起因して
Si塊が育成され、それがSiC単結晶間に封じ込まれ
ることによる多結晶化を生じることもなく、液相エピタ
キシャル成長であることによるマイクロパイプ欠陥など
の発生防止と相俟って、高品質高性能で、かつ、バルク
状の単結晶SiCを育成させることが可能である。
【0013】本発明に係る単結晶SiCの液相育成方法
において、上層の混合粉末におけるSiO2 粉末とSi
C粉末の混合割合としては、1:10〜10:1の範囲
であればよいが、最も好ましい混合割合は、後述の実施
例でも説明するように4:1である。
【0014】また、本発明に係る単結晶SiCの液相育
成方法における加熱温度としては、上下両粉末層の温度
差を10〜100℃の範囲に保ちながら、坩堝内の上部
温度が2000〜2200℃まで昇温される程度が好ま
しい。
【0015】また、本発明に係る単結晶SiCの液相育
成方法に使用する坩堝としては、構成元素としてC原子
を含むものであればよい。具体的には、黒鉛製の坩堝や
C,SiCまたはSiCと窒化アルミニウムとの混合物
の焼結体などからなる坩堝を用いればよい。また、坩堝
の内面にSiCもしくは焼結SiCのコーティングを施
したものを使用してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
にもとづいて説明する。図1は本発明に係る単結晶Si
Cの液相育成方法の実施に際し使用される育成装置の概
略断面図である。この育成装置は、底内径40mm、上
部口径60mm、深さ60mmのカーボン製坩堝1の内
面に熱化学的蒸着法(熱CVD法)によって約100μ
m厚さのSiCコーティング層2を施している。この坩
堝1の底部外周および上部外周にはそれぞれ高周波誘導
コイルからなる加熱ヒーター3および4が配設されてい
る。
【0017】そして、上記坩堝1内の底部に、昇華法に
より直径20mm、厚さ0.4mmの大きさに作製され
た種結晶、例えば6H型のα−SiC単結晶基板5をそ
のC軸方向の(0001)面が上面となるように配置
し、このα−SiC単結晶基板5の上面を覆うように粒
径が1μm以下のSiO2 粉末6を約1mm厚さで坩堝
1内に充填するとともに、さらにその上部に、SiO2
粉末とSiC粉末とが1:4の割合に混合された混合粉
末7を約40mmの厚さで坩堝1内に充填した上、坩堝
1の上部開口をカーボン製の蓋8で閉鎖する。
【0018】この状態で、加熱ヒーター3および4に高
周波電流を通して坩堝1をそれの上下で20〜50℃の
温度差が保たれ、かつ、不活性ガス雰囲気中で坩堝1の
上部が2200℃に昇温されるように誘導加熱すること
によって、図2のモデル図に示すたように、坩堝1内部
の上層に充填された混合粉末7のSiO2 がSiOとO
2 に、かつ、SiCがSi原子とC原子にそれぞれ分解
され、その分解されたSiが溶融されてSi融液が形成
されるとともに、坩堝1内部の下層に充填されたSiO
2 粉末6がSiOとO2 に分解される。
【0019】上記の加熱時において、SiO2 粉末6単
独からなる下層とSiCを含む混合粉末7からなる上層
とでは、SiO2 とSiCとの熱伝導率の差により下層
側の方が上層よりも低温となるような温度勾配が形成さ
れることになり、このような温度勾配の形成に伴うSi
融液の拡散、対流によってC原子がSi融液中の低温域
に輸送される。一方、α−SiC単結晶基板5はSi融
液中の低温域に浸漬保持されていることから、その表面
の運動エネルギーは比較的小さい状態に保たれており、
低温域に輸送されてきたC原子は運動エネルギーの小さ
いα−SiC単結晶基板5の表面上で速やかにSiと反
応し、該表面にSiCエピタキシャル層が成長されるこ
とになる。
【0020】上記のごときSiCエピタキシャル成長時
において、加熱ヒーター3および4ならびに高温域のS
i融液により加熱された坩堝1内面のSiCコーティン
グ層2からもが分解されてSi融液中に溶け込むため
に、混合粉末7から分解されたC原子と相俟ってSi融
液中のC原子は過剰になる。
【0021】ところで、その過剰C原子を含むSi融液
が上記の温度勾配に伴う拡散、対流によって低温域に輸
送される際、下層のSiO2 粉末6から分解されたSi
OによりC原子がフィルターにかけられることになり、
過剰なC原子と分解したO2との反応によりCOあるい
はCO2 にガス化されてSi融液の上方の空間に至り、
かつ、カーボン製蓋8に形成されているガス抜き孔(図
示省略する)から坩堝1外へ排出され、適正量のC原子
が低温域に輸送されてα−SiC単結晶基板5の表面に
供給されることになって、C原子の過剰に伴うSiC濃
度の過飽和に起因してSi塊が育成され、それがSiC
単結晶間に封じ込まれることによる多結晶化の発生が起
こらない。
【0022】このように多結晶化の発生がないことと、
液相エピタキシャル成長であることによるマイクロパイ
プ欠陥などの発生がないことが相俟って、α−SiC単
結晶基板5の表面に高品質高性能で、かつ、厚みの大き
い単結晶SiCを育成させることが可能である。
【0023】因みに、上述のように、坩堝1の上部を誘
導加熱によって2200℃に昇温させた状態を4時間保
持した後に冷却して坩堝1からα−SiC単結晶基板5
を取り出し、その表面のガラス層をダイヤモンド製のワ
イヤーカッターにより切除した後、弗酸でSiO2 層を
除去してみたところ、α−SiC単結晶基板5の表面に
約50μmの単結晶SiCが育成されていることが確認
された。
【0024】なお、上記実施の形態では、上記α−Si
C単結晶基板5として6H型のものを用いたが、4H型
のものを使用してもよい。
【0025】
【発明の効果】以上のように、請求項1及び請求項4に
記載の発明によれば、坩堝内の上下にSiO2 粉末及び
SiC粉末の混合粉末とSiO2 粉末単独とを層状に充
填した状態での加熱処理を採用することにより、種結晶
となるSiC単結晶基板の表面の運動エネルギーが小さ
い状態となるような温度勾配を形成することができると
ともに、液相成長では避けられない過剰なC原子の一部
をガス化(COあるいはCO2 )し系外へ排出させつ
つ、常に適正量のC原子をSi融液の低温域に配置され
たSiC単結晶基板の表面に供給させるようなフィルタ
ー作用を生起してC原子の過剰に伴うSiC濃度の過飽
和に起因してSi塊が育成され、これがSiC単結晶間
に封じ込まれることを防止することができる。したがっ
て、Si融液による液相エピタキシャル成長であること
によるマイクロパイプ欠陥や結晶欠陥等の発生が少ない
ことと、Si塊の封じ込みによる多結晶化がないことと
の相乗によって、非常に高品質高性能で、かつ、厚みの
あるバルク状の単結晶SiCを効率よく育成することが
でき、これによって、Si(シリコン)やGaAs(ガ
リウムヒ素)などの既存の半導体材料に比べて高温、高
周波、耐電圧、耐環境性に優れパワーデバイス用半導体
材料として期待されている単結晶SiCの実用化を促進
することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る単結晶SiCの液相育成方法の実
施に際し使用される育成装置の概略断面図である。
【図2】同上育成装置による単結晶SiCの育成モデル
図である。
【符号の説明】
1 坩堝 2 コーティング層 5 α−SiC単結晶基板(種結晶) 6 SiO2 粉末 7 混合粉末(SiO2 粉末+SiC粉末)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−156095(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 CA(STN) 特許ファイル(PATOLIS)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも炭素(C)原子を含む坩堝内
    の底部に種結晶となる炭化珪素(SiC)単結晶基板を
    配置し、このSiC単結晶基板の上面を覆うように坩堝
    内に二酸化珪素(SiO2 )粉末を充填するとともに、
    さらにその上部にSiO2 粉末とSiC粉末の混合粉末
    を充填した状態で、底部側が低温となるように上下の温
    度差を保ちながら不活性雰囲気中で加熱して両粉末を溶
    解させ、その融液中に上記SiC単結晶基板を所定時間
    に亘り浸漬保持させることにより、SiC単結晶基板の
    表面に単結晶を育成させることを特徴とする単結晶Si
    Cの液相育成方法。
  2. 【請求項2】 上記混合粉末におけるSiO2 粉末とS
    iC粉末の混合割合は、1:10〜10:1の範囲であ
    る請求項1に記載の単結晶SiCの液相育成方法。
  3. 【請求項3】 上記加熱時における両粉末の温度差を1
    0〜100℃の範囲に保ちながら坩堝内の上部を200
    0〜2200℃まで加熱昇温させる請求項1または2に
    記載の単結晶SiCの液相育成方法。
  4. 【請求項4】 上記坩堝として、黒鉛製坩堝あるいはそ
    の内面にSiCもしくは焼結SiCのコーティング層を
    施した坩堝を使用する請求項1ないし3のいずれかに記
    載の単結晶SiCの液相育成方法。
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