JP2936235B2 - 靭性の優れた圧延形鋼およびその製造方法 - Google Patents
靭性の優れた圧延形鋼およびその製造方法Info
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優れた圧延形鋼およびその製造方法に係わるものであ
る。 (従来の技術) 建築物の超高層化、安全基準の厳格化などから、柱用
に用いられる鋼材、例えば特に板厚の大きなサイズのH
形鋼(以下、極厚H形鋼と言う)には、一層の高強度
化、高靭性化、低降伏比化が求められている。このよう
な要求特性を満たすために、従来は圧延終了後に焼準処
理などの熱処理を施すことが行われた。この熱処理方法
では熱処理コストの付加、生産効率の低下等大幅なコス
ト上昇を招き、経済性の観点から問題があった。この課
題を解決するため、圧延ままで高性能の材質特性が得ら
れるように、新しい合金設計、製造法の開発が必要とな
ってきた。 一般に、フランジを有する形鋼、例えばH形鋼をユニ
バーサル圧延により製造すると、圧延造形上の制約およ
びその形状の特異性からウェブ、フランジ、フィレット
の各部位で圧延仕上げ温度、圧下率、冷却速度に差を生
じる。この結果、強度・延性・靭性がバラつき、例えば
溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106)等の基準に満たない
部位が生じる。特に極厚H形鋼を連続鋳造スラブを素材
として圧延する場合には連続鋳造設備で製造可能なスラ
ブ最大厚に限界があるため、低圧下比となる。さらに圧
延造形上から厚みの厚いフランジ部は高温圧延となり、
圧延終了後の鋼材冷却は徐冷状態となってミクロ組成は
粗粒化してしまい、厚鋼板分野で行われている制御圧延
法によっても細粒化効果は殆ど期待できない。一方、厚
板分野ではVNの析出効果を利用し高強度・高靭性鋼を製
造する、例えば特公昭62−50548号公報、特公昭62−548
62号公報に開示された技術が提案されているが、この厚
板での従来技術では溶鋼をAl脱酸しているため、粒内フ
ェライト生成核として組織の微細化に効果を持つ微細な
Si酸化物などが生成せず、高強度・高靭性形鋼の製造は
困難である。 (発明の解決しようとする課題) 本発明は上述したような形鋼独特の圧延条件下におい
ても、オーステナイト粒内から粒内フェライト(以下IG
Fと言う)を生成させ、ミクロ組織の細粒化により降伏
強度が35kgf/mm2以上で引張強さ50kgf/mm2以上の高強度
で、且つ0℃における2mmVノッチシャルピー値が3.5kgf
−m以上の機械特性を有する靭性の優れた形鋼を圧延ま
まで製造可能な形鋼およびその製造方法を提供すること
を目的とするものである。 (課題を解決するための手段) 本発明は、前述の課題を解決するためになされたもの
であり、圧延冷却途上のオーステナイトからのフェライ
ト変態時にオーステナイト粒内に粒内フェライトを生成
させ、組織を細粒化する方法により、高能率で製造コス
トの安価な形鋼の製造が可能であると言う知見に基づき
課題を解決したもので、その要旨とするところは下記の
とおりである。 (1)重量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:
0.8〜1.8%、V:0.05〜0.20%、N:0.006〜0.015%、Al<
0.005%を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる
こと特徴とする靭性の優れた圧延形鋼。 (2)溶鉄を予備脱酸により溶存酸素を重量%で0.003
〜0.015%に溶製し、合金添加により、重量%でC:0.04
〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜1.8%、V:0.05〜
0.20%、N:0.006〜0.015%、Al<0.005%を含み、残部
がFeおよび不可避不純物からなる鋼片とし、該鋼片を11
00〜1300℃の温度域に再加熱後、熱間圧延を750〜1050
℃の温度範囲で終了することを特徴とする靭性の優れた
圧延形鋼の製造方法。 (作 用) 以下、本発明について詳細に説明する。 鋼の高強度化はフェライト結晶の細粒化、合金元
素による固溶体強化、硬化相による分散強化、微細
析出物による析出強化等によって達成される。また、高
靭性化は結晶の細粒化、母相(フェライト)の固溶
N,Cの低減、破壊の発生起点となる硬化相の高炭素マ
ルテンサイト(以下M*と称す)および粗大な酸化物、
析出物の低減と微細化等により達成される。 一般的には鋼の高強度化により靭性は低下し、高強度
化と高靭性化は相反する対処が必要である。両者を同時
に満たす冶金因子は唯一、結晶の細粒化である。 本発明は圧延形鋼の製造時の制約下の低圧下比、高温
圧延、徐冷条件のもとで、結晶の細粒化、即ち、フェラ
イトの細粒化を行うものである。その方法は鋳片に分散
させた酸化物、MnSなどを核に圧延中およびその後の冷
却時にVNを析出させ、これをフェライト変態核にオース
テナイト粒内から粒内フェライトを生成させ、細粒フェ
ライト組織を得ることである。 まず本発明形鋼の基本成分範囲の限定理由について述
べる。 まず、Cは鋼の強度を向上させる有効な成分として添
加するもので、0.04%未満では構造用鋼として必要な強
度が得られず、また0.20%を超える過剰の添加は、母材
靭性、耐溶接割れ性、溶接熱影響部(以下HAZと称す)
靭性などを著しく低下させるので、下限を0.04%、上限
を0.20%とした。 次に、Siは母材の強度確保、溶鋼の予備脱酸などに必
要であるが、0.50%を超えるとHAZ組織内に硬化組織の
M*を生成し、溶接継手部靭性を著しく低下させる。ま
た、0.05%未満では必要な溶鋼の予備脱酸ができないた
め、Si含有量を0.05〜0.50%の範囲に制限した。 Mnは母材の強度、靭性の確保には0.8%以上の添加が
必要であるが、溶接部の靭性、耐割れ性などの許容でき
る範囲で上限を1.8%とした。 Alは強力な脱酸元素であり、0.005%以上の添加は粒
内フェライト変態を促進するマンガン・シリコン酸化物
などが形成されず、靭性の低下がもたらされるのと、過
剰の固溶AlはNと化合しAlNを形成し本発明鋼の特徴で
あるVNの析出量を低減させるため0.005%未満に制限し
た。 NはVNの析出には極めて重要な元素であり、0.006%
未満ではVNの析出量が不足し、粒内フェライト組織の十
分な生成量が得られないための0.006%以上とした。含
有量が0.015%を超えると母材靭性を低下させ、連続鋳
造時の鋼片の表面割れを生じさせるため0.015%以下に
制限した。 VはVNとして粒内フェライト組織の生成による細粒
化、析出強化による高強度化のために極めて重要であ
り、0.05%未満ではVNの析出量が不十分であり、0.20%
を超えると析出量が過剰になり母材靭性が低下するため
0.05〜0.20%に制限した。 不可避不純物として含有するP,Sはその量について特
に限定しないが、凝固偏析による溶接割れ、靭性の低下
を生じるので極力低減すべきであり、望ましくはP,S量
はそれぞれ0.02%以下である。 溶鉄を予備脱酸により溶存酸素を重量%で0.003〜0.0
15%に溶製した後、合金添加により成分調整するのは、
脱酸前の
変態を促進するマンガン・シリコン酸化物などの粒内フ
ェライト生成核が減少し、細粒化できず靭性を向上でき
ない。0.015%を超える場合は、他の条件を満たしてい
ても酸化物が粗粒化し、脆性破壊の起点となり、靭性を
低下させるため、合金添加前の溶鉄の溶存酸素を重量%
で0.003〜0.015%に制限した。 再加熱温度を1100〜1300℃の温度域に規制したのは、
熱間加工による形鋼の製造には塑性変形を容易にするた
め1100℃以上の加熱が必要であり、且つV,Nbなどの元素
を十分に固溶させる必要があるため、再加熱温度の下限
を1100℃とした。その上限は加熱炉の性能、経済性から
1300℃とした。 熱間圧延終了温度を750〜1050℃としたのは、低温圧
延ほど靭性は向上するが、形鋼の造形上750℃未満の加
工は困難であり、また1050℃を超えての加工は粗粒組織
を形成し靭性が低下するためである。 以下に実施例によりさらに本発明の効果を示す。 (実施例) 試作形鋼は転炉溶製し、連続鋳造により250〜300mm厚
鋳片に鋳造した後、圧延造形によりフランジ厚み毎に第
1表に示す種々の寸法のH形鋼を製造した。機械特性は
第1図に示すフランジ2の板厚t2の中心部(1/2t2)で
フランジ幅全長(B)の1/4,1/2幅(1/4B,1/2B)から採
集し求めた。なお、これらの箇所の特性を求めたのはフ
ランジ1/4F部はH形鋼のほぼ平均的な機械特性を示し、
フランジ1/2F部はその特性が最も低下するため、この二
箇所によりH形鋼の機械試験特性を代表できるとしたた
めである。第2表は、試作鋼の化学成分、第3表は圧延
条件および機械試験特性を示す。なお、圧延加熱温度を
1280℃に揃えたのは、一般的に加熱温度の低下は機械特
性を向上させることは周知であり、高温加熱条件は機械
特性の最低値を示すと推定され、この値がそれ以下の加
熱温度での特性を代表できると判断したためである。 第3表に示すように、本発明による鋼1の形鋼は圧延
仕上げ温度、圧下率、フランジ板厚(冷却速度)、フラ
ンジの部位の変化に対して、目標の強度(前記JIS G310
6)と0℃でのシャルピー値3.5kgf−m以上を十分に満
たしている。一方、比較鋼の形鋼10〜12は強度特性は満
たすものの、フランジ1/2部の靭性が著しく低下し目標
値を達成できない。それはAl脱酸処理とV,Nの無添加及
び添加量不足から、IGF核生成サイトとして働く微細酸
化物+MnS+VNの個数が不足し、IGFが生成せず、細粒化
による靭性改善ができないためである。 即ち、本発明の要件が総て満たされた時に、第3表に
示される形鋼1のように、圧延形鋼の機械試験特性を最
も満たしにくいフランジ板厚1/2,幅1/2部においても十
分な強度を有し、優れた靭性を持つ圧延形鋼およびその
製造が可能になる。なお、本発明が対象とする圧延形鋼
は上記実施例のH形鋼に限らずI形鋼、山形鋼、溝形
鋼、不等辺不等厚山形鋼等のフランジを有する形鋼にも
適用できることは勿論である。 (発明の効果) 本発明により圧延形鋼は機械試験特性を最も保証しに
くいフランジ板厚1/2、幅1/2部においても十分な強度を
有し、優れた靭性を持つ圧延形鋼の製造が圧延ままで可
能になり、大型建造物の信頼性向上、安全性の確保、経
済性等の産業上の効果は極めて顕著なものがある。
試験片の採取位置を示す図である。 1;H形鋼、2;フランジ、3;ウェブ。
Claims (2)
- 【請求項1】重量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.50
%、Mn:0.8〜1.8%、V:0.05〜0.20%、N:0.006〜0.015
%、Al<0.005%を含み、残部がFeおよび不可避不純物
からなることを特徴とする靭性の優れた圧延形鋼。 - 【請求項2】溶鉄を予備脱酸により溶存酸素を重量%で
0.003〜0.015%に溶製し、合金添加により、重量%でC:
0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.8〜1.8%、V:0.
05〜0.20%、N:0.006〜0.015%、Al<0.005%を含み、
残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼片とし、該鋼片
を1100〜1300℃の温度域に再加熱後、熱間圧延を750〜1
050℃の温度範囲で終了することを特徴とする靭性の優
れた圧延形鋼その製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25294090A JP2936235B2 (ja) | 1990-09-22 | 1990-09-22 | 靭性の優れた圧延形鋼およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP25294090A JP2936235B2 (ja) | 1990-09-22 | 1990-09-22 | 靭性の優れた圧延形鋼およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04131356A JPH04131356A (ja) | 1992-05-06 |
JP2936235B2 true JP2936235B2 (ja) | 1999-08-23 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP25294090A Expired - Lifetime JP2936235B2 (ja) | 1990-09-22 | 1990-09-22 | 靭性の優れた圧延形鋼およびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4648843B2 (ja) * | 2006-01-27 | 2011-03-09 | 新日本製鐵株式会社 | 耐火性に優れたh形鋼およびその製造方法 |
-
1990
- 1990-09-22 JP JP25294090A patent/JP2936235B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JPH04131356A (ja) | 1992-05-06 |
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