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JP2885687B2 - 同位体ガス分光測定方法 - Google Patents

同位体ガス分光測定方法

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JP2885687B2
JP2885687B2 JP5805296A JP5805296A JP2885687B2 JP 2885687 B2 JP2885687 B2 JP 2885687B2 JP 5805296 A JP5805296 A JP 5805296A JP 5805296 A JP5805296 A JP 5805296A JP 2885687 B2 JP2885687 B2 JP 2885687B2
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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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  • Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By Optical Means (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】同位体の入った薬物を生体に
投与した後、同位体の濃度変化、又は濃度比の変化を測
定することにより、生体の代謝機能を測定することがで
きるので、同位体の分析は、医療の分野での病気の診断
に利用されている。また、医療の分野以外でも、同位体
の分析は、光合成の研究、植物の代謝作用の研究に利用
され、地球化学分野では生態系のトレースに利用されて
いる。
【0002】本発明は、同位体の光吸収特性の相違に着
目して、同位体ガスの濃度を測定する同位体ガス分光測
定方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】一般に、胃潰瘍、胃炎の原因として、ス
トレスの他に、ヘリコバクタピロリー(HP)と言われ
ているバクテリアが存在することが知られている。患者
の胃の中にHPが存在すれば、抗生物質の投与等による
除菌治療を行う必要がある。したがって、患者にHPが
存在するか否かを確認することが重要である。HPは、
強いウレアーゼ活性を持っていて、尿素を二酸化炭素と
アンモニアに分解する。
【0004】一方、炭素には、質量数が12のものの
他、質量数が13や14の同位体が存在するが、これら
の中で質量数が13の同位体13Cは、放射性がなく、安
定して存在するため取扱いが容易である。そこで、同位
13Cでマーキングした尿素を生体に投与した後、最終
代謝産物である患者の呼気中の13CO2 の濃度、具体的
には13CO2 12CO2 との濃度比を測定することがで
きれば、HPの存在を確認することができる。
【0005】ところが、13CO2 12CO2 との濃度比
は、自然界では1:100と大きく、このため患者の呼
気中の濃度比を精度よく測定することは難しい。従来、
13CO2 12CO2 との濃度比を求める方法として、赤
外分光を用いる方法が知られている(特公昭61−42
219号、特公昭61−42220号公報参照)。
【0006】特公昭61−42220号記載の方法は、
長短2本のセルを用意し、一方のセルでの13CO2 の吸
収と、一方のセルでの12CO2 の吸収とが等しくなるよ
うなセルの長さにし、2本のセルを透過した光を両方の
セルに導いて、それぞれ最大感度を実現する波長での光
強度を測定する方法である。この方法によれば、自然界
の濃度比での光吸収比を1にすることができ、これから
濃度比がずれると、ずれた分だけ光吸収比がずれるの
で、光吸収比の変化を知って濃度比の変化を知ることが
できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】CO2 の濃度、特に13
CO2 の濃度は非常に薄いので、高感度の測定をしなけ
ればならない。しかし、測定の感度を高めると、光源の
強度の変動、ガス自体の温度変動、ガスを導入するセル
の温度変動、光検出装置の感度の変動など、測定系の諸
定数の変動があれば、測定した光量も敏感に反応して、
実際の被測定ガス以外の要因で測定値に誤差が生ずると
いう問題がある。
【0008】前記の問題を解決するには、測定系が落ち
つくまで十分時間をかけてから測定を開始するというこ
とが考えられるが、こうすると処理能力が低下して、短
時間に大量のサンプルを測定したいという、ユーザの要
請に応えられなくなる。また、測定においては、1種類
の呼気について、12CO2 の吸光度を測定して、12CO
2 用の検量線を使って12CO2 濃度を算出し、13CO2
の吸光度を測定して、13CO2 用の検量線を使って13
2 濃度を算出する。他の種類の呼気についても同様の
測定をしている。
【0009】このとき、CO2 濃度が2種類の呼気につ
いてほぼ同じならば、12CO2 の検量線や13CO2 の検
量線を使う範囲を狭くすることができる。したがって、
検量線を使う範囲を限定することによって、測定精度を
上げることができる。
【0010】本発明は、複数の成分ガスを含む被測定ガ
スをセルに導き、分光測定をする場合に、検量線を使う
範囲を限定することにより、成分ガスの濃度を精密に測
定することができる同位体ガス分光測定方法を実現する
ことを目的とする。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
めの請求項記載の同位体ガス分光測定方法は、1つの
検体から収集された2種類の被測定ガスについて、一方
の被測定ガスのCO2濃度が他方の被測定ガスのCO2
濃度よりも高ければ、この一方の被測定ガスのCO2
度が他方の被測定ガスのCO2 濃度に等しくなるまで一
方の被測定ガスを希釈して、各被測定ガスの濃度比13
2 12CO2 を測定する方法である。
【0017】この方法によれば、CO2 濃度が等しいと
いう条件で、2種類の呼気をそれぞれ測定することがで
きるので、使う検量線の範囲を限定することができる。
この結果、測定精度を上げることができる。請求項
記載の方法は、いずれも単一のセルに、第1種類の
被測定ガスを満たして光量を測定し、排出した後、第2
種類の被測定ガスを満たして光量を測定することを前提
にした、請求項記載の同位体ガス分光測定方法の具体
的手順を示している。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、同位体13Cでマーキングし
たウレア診断薬を人間に投与した後、呼気中の13CO2
の濃度を分光測定する場合の、本発明の実施の形態を、
添付図面を参照しながら詳細に説明する。 I.呼気テスト まず、ウレア診断薬を投与する前の患者の呼気を呼気バ
ッグに採集する。呼気バッグの容量は、250ml程度
でよい。その後、ウレア診断薬を経口投与し、10−1
5分後、投与前と同様の方法で呼気バッグに呼気を採集
する。
【0019】投与前に投与後の呼気バッグをそれぞれ同
位体ガス分光測定装置の所定のノズルにセットし、以下
の自動制御を行う。 II.同位体ガス分光測定装置 図1は、同位体ガス分光測定装置の全体構成を示すブロ
ック図である。投与後の呼気(以下「サンプルガス」と
いう)を採集した呼気バッグと投与前の呼気(以下「ベ
ースガス」という)を採集した呼気バッグとはそれぞれ
ノズルN1 ,N2 にセットされる。ノズルN1 は、透明
樹脂パイプ(以下単に「パイプ」という)を通して三方
バルブにV1 につながり、ノズルN2 は、パイプを通し
て三方バルブV2 につながっている。
【0020】一方、ガスボンベからリファレンスガス
(測定対象波長域に吸収のないガスであれば何でもよ
い。例えば窒素ガス)が供給されている。リファレンス
ガスは二方に分かれ、一方は流量計M1 を通してリファ
レンスセル11cに入り、他方は流量計M2 を通して三
方バルブV3 に通じている。リファレンスセル11cに
入ったリファレンスガスはリファレンスセル11cから
出てそのまま排出される。
【0021】三方バルブV3 から分かれた一方は、三方
バルブV1 につながり、他方は、12CO2 の吸収を測定
するための第1サンプルセル11aにつながっている。
また、三方バルブV2 から分かれた一方は、二方バルブ
4 を通して第1サンプルセル11aにつながり、他方
は三方バルブV1 につながっている。さらに、三方ハル
ブV3 と第1サンプルセル11aとの間には、サンプル
ガス又はベースガスを定量的に注入するためのガス注入
器21(容量60cc)か介在している。このガス注入
器21は、ピストンとシリンダーを有する注射器のよう
な形状のもので、ピストンの駆動は、図示しないモータ
と、モータに連結された送りネジと、ピストンに固定さ
れたナットとの共働によって行われる。
【0022】セル室11は、図1に示すように、12CO
2 の吸収を測定するための短い第1サンプルセル11
a、13CO2 の吸収を測定するための長い第2サンプル
セル11b及びリファレンスガスを流すリファレンスセ
ル11cからなり、第1サンプルセル11aと第2サン
プルセル11bとは連通しており、第1サンプルセル1
1aに導かれたガスは、そのまま第2サンプルセル11
bに入り、排気されるようになっている。また、リファ
レンスセル11cにはリファレンスガスが導かれ、排気
されるようになっている。第1サンプルセル11aの長
さは具体的には13mmであり、第2サンプルセル11
bの長さは具体的には250mmであり、リファレンス
セル11cの長さは具体的には236mmである。
【0023】符号Lは、赤外線光源装置を示す。赤外線
光源装置Lは赤外線を照射するための2つの導波管23
a,23bを備えている。赤外線発生の方式は、任意の
ものでよく、例えばセラミックスヒータ(表面温度45
0℃)等が使用可能である。また、赤外線を一定周期で
しゃ断し通過させる回転するチョッパ22が設けられて
いる。赤外線光源装置Lから照射された赤外線のうち、
第1サンプルセル11a及びリファレンスセル11cを
通るものが形成する光路を「第1の光路」といい、第2
サンプルセル11bを通るものが形成する光路を「第2
の光路」という(図2参照)。
【0024】符号Dは、セルを通過した赤外線を検出す
る赤外線検出装置を示している。赤外線検出装置Dは、
第1の光路に置かれた第1の波長フィルタ24aと第1
の検出素子25a、第2の光路に置かれた第2の波長フ
ィルタ24bと第2の検出素子25bを備えている。第
1の波長フィルタ24aは、12CO2 の吸収を測定する
ため約4280nmの波長の赤外線を通し(バンド幅約
20nm)、第2の波長フィルタ24bは、 13CO2
吸収を測定するため約4412nmの波長の赤外線を通
すように設計されている(バンド幅約50nm)。第1
の検出素子25a、第2の検出素子25bは赤外線を検
出する素子であれば任意のものでよく、例えばPbSe
といった半導体赤外センサが使用される。
【0025】第1の波長フィルタ24a、第1の検出素
子25aは、Ar等の不活性ガスで満たされたパッケー
ジ26aの中に入っており、第2の波長フィルタ24
b、第2の検出素子25bも、同じく不活性ガスで満た
されたパッケージ26bの中に入っている。赤外線検出
装置Dの全体はヒータ及びペルチェ素子により一定温度
(25°C)に保たれ、パッケージ26a,26bの中
の検出素子の部分はペルチェ素子により0°Cに保たれ
ている。
【0026】図2は、前記セル室11の詳細な構造を示
す断面図である。セル室11は、それ自体ステンレス製
であり、上下左右が金属板(例えば真鍮板)12で挟ま
れ、上下又は左右に設置されたヒータ13を介して、断
熱材14で密閉されている。セル室11の中は、2段に
分かれ、一方の段には第1サンプルセル11aと、リフ
ァレンスセル11cとが配置され、他方の段には第2サ
ンプルセル11bが配置されている。
【0027】第1サンプルセル11a及びリファレンス
セル11cには第1の光路が直列に通り、第2サンプル
セル11bには第2の光路が通っている。符号15,1
6,17は、赤外線を透過させるサファイヤ透過窓であ
る。前記セル室11は、ヒータ13により一定温度(4
0℃)に保たれるよう制御されている。 IIIa.測定手順1 測定は、リファレンスガス測定→ベースガス測定→リフ
ァレンスガス測定→サンプルガス測定→リファレンスガ
ス測定→‥‥という手順で行う。しかし、この手順の他
に、ベースガス測定→リファレンスガス測定→ベースガ
ス測定,サンプルガス測定→リファレンスガス測定→サ
ンプルガス測定,‥‥という手順でもよいが、同じベー
スガス、サンプルガスを2回測定しなければならないの
で効率は落ちる。以下、効率の良い前者の手順を説明す
る。
【0028】測定の間、リファレンスセル11cにはリ
ファレンスガスが常時流れている。 IIIa−1.リファレンス測定 図3に示すように、同位体ガス分光測定装置のガス流路
及びセル室11に、清浄なリファレンスガスを約15秒
間、毎分200ml流してガス流路及びセル室11の洗
浄をする。
【0029】次に、図4に示すように、ガス流路を変え
てリファレンスガスを流し、ガス流路及びセル室11の
洗浄をする。約30秒経過後、それぞれの検出素子25
a,25bにより、光量測定をする。このようにリファ
レンス測定をするのは、吸光度の算出をするためであ
る。このようにして、第1の検出素子25aで得られた
光量を121 、第2の検出素子25bで得られた光量を
131 と書く。 IIIa−2.ベースガス測定 次に、リファレンスガスが第1サンプルセル11a、第
2サンプルセル11bを流れないようにして、呼気バッ
グより、ベースガスをガス注入器21で吸い込む(図5
参照)。
【0030】ベースガスを吸い込んだ後、図6に示すよ
うに、ガス注入器21を用いてベースガスを一定流量で
機械的に押し出す。この間、それぞれの検出素子25
a,25bにより、光量測定をする。このようにして、
第1の検出素子25aで得られた光量を12B、第2の検
出素子25bで得られた光量を13Bと書く。 IIIa−3.リファレンス測定 再び、ガス流路及びセルの洗浄と、リファレンスガスの
光量測定をする(図3、図4参照)。
【0031】このようにして、第1の検出素子25aで
得られた光量122 、第2の検出素子25bで得られた
光量132 と書く。 IIIa−4.サンプルガス測定 リファレンスガスが第1サンプルセル11a、第2サン
プルセル11bを流れないようにして、呼気バッグよ
り、サンプルガスをガス注入器21で吸い込む(図7参
照)。
【0032】サンプルガスを吸い込んだ後、図8に示す
ように、ガス注入器21を用いてサンプルガスを一定速
度で機械的に押し出す。この間、それぞれの検出素子2
5a,25bにより、光量測定をする。このようにし
て、第1の検出素子25aで得られた光量を12S、第2
の検出素子25bで得られた光量を13Sと書く。 IIIa−5.リファレンス測定 再び、ガス流路及びセルの洗浄と、リファレンスガスの
光量測定をする(図3、図4参照)。
【0033】このようにして、第1の検出素子25aで
得られた光量を123 、第2の検出素子25bで得られ
た光量を133 と書く。 IIIb.測定手順2 前記測定手順1では、ベースガスのCO2 濃度とサンプ
ルガスのCO2 濃度とを一致させることはしていなかっ
た。
【0034】しかし、CO2 濃度がベースガス及びサン
プルガスについて同じならば、12CO2 の検量線や13
2 の検量線を使う範囲を狭くすることができる。した
がって、検量線を使う範囲を限定することによって、測
定精度を上げることができる。この測定手順2では、ベ
ースガスのCO2 濃度とサンプルガスのCO2 濃度とを
ほぼ一致させるため、まず予備測定において、ベースガ
スのCO2 濃度と、サンプルガスのCO2 濃度をそれぞ
れ測定し、本測定において、予備測定されたベースガス
のCO2 濃度が予備測定されたサンプルガスのCO2
度よりも高ければ、このベースガスのCO2 濃度がサン
プルガスのCO2 濃度に等しくなるまでベースガスを希
釈した後、ベースガスの濃度を測定し、その後サンプル
ガスの濃度を測定する。
【0035】もし本測定において、予備測定されたベー
スガスのCO2 濃度が予備測定されたサンプルガスのC
2 濃度よりも低ければ、ベースガスの濃度をこのまま
測定し、サンプルガスのCO2 濃度がベースガスのCO
2 濃度に等しくなるまでサンプルガスを希釈した後、サ
ンプルガスのCO2 濃度を測定する。測定は、ベースガ
ス予備測定→サンプルガス予備測定→リファレンスガス
測定→ベースガス測定→リファレンスガス測定→サンプ
ルガス測定→リファレンスガス測定→‥‥という手順で
行う。 IIIb−1.ベースガス予備測定 同位体ガス分光測定装置のガス流路及びセル室11に、
清浄なリファレンスガスを流してガス流路及びセル室1
1の洗浄をするとともに、リファレンス光量の測定をす
る。
【0036】次に呼気バッグより、ベースガスをガス注
入器21で吸い込み、ガス注入器21を用いてベースガ
スを一定流量で機械的に押し出す。この間、検出素子2
5aにより、ベースガスの光量測定をし、その吸光度に
より検量線を用いてCO2 濃度を求めておく。 IIIb−2.サンプルガス予備測定 同位体ガス分光測定装置のガス流路及びセル室11に、
清浄なリファレンスガスを流してガス流路及びセル室1
1の洗浄をするとともに、リファレンス光量の測定をす
る。
【0037】次に呼気バッグより、サンプルガスをガス
注入器21で吸い込み、ガス注入器21を用いてサンプ
ルガスを一定速度で機械的に押し出す。この間、検出素
子25aにより、サンプルガスの光量測定をし、その吸
光度により検量線を用いてCO2 濃度を求めておく。 IIIb−3.リファレンス測定 次に、ガス流路を変えてリファレンスガスを流し、ガス
流路及びセル室11の洗浄をする。約30秒経過後、そ
れぞれの検出素子25a,25bにより、光量測定をす
る。
【0038】このようにして、第1の検出素子25aで
得られた光量を121 、第2の検出素子25bで得られ
た光量を131 と書く。 IIIb−4.ベースガス測定 「IIIb−1.ベースガス予備測定」において第1の検出
素子25aで得られたベースガスのCO2 濃度と、「II
Ib−2.サンプルガス予備測定」において第1の検出素
子25aで得られたサンプルガスのCO2 濃度とを比較
し、ベースガスのCO2 濃度がサンプルガスのCO2
度より濃い場合、ガス注入器21の中でベースガスのC
2 濃度とサンプルガスのCO2 濃度とが等しい割合に
なるまでベースガスをリファレンスガスで希釈した後、
ベースガスの光量測定をする。
【0039】このように希釈するので、2種類の呼気に
ついてCO2 濃度をほぼ同じにできるから、12CO2
検量線や13CO2 の検量線を使う範囲を狭くすることが
できる。なお、本実施形態の測定手順2では、2種類の
呼気についてCO2 濃度をほぼ同じにするところに意味
があり、特公平4−12414号公報に記載されている
ようなCO2 濃度を常時一定に保つ手順は必ずしも採用
する必要はないことに注意すべきである。ベースガスと
サンプルガスとのCO2 濃度を同じにできれば、検量線
を使う範囲を狭くするという目的を十分達成することが
できるからである。実際の測定によればベースガスやサ
ンプルガスのCO2 濃度は、1%から5%とバラツキが
あるので、CO2 濃度を常時一定に保つことは非常に手
間がかかる。
【0040】もしベースガスのCO2 濃度がサンプルガ
スのCO2 濃度より薄い場合は、ベースガスを希釈しな
いでこのベースガスをそのまま測定する。測定は、ガス
注入器21を用いてベースガスを一定流量で機械的に押
し出し、この間、それぞれの検出素子25a,25bに
より行う。このようにして、第1の検出素子25aで得
られた光量を12B、第2の検出素子25bで得られた光
量を13Bと書く。 IIIb−5.リファレンス測定 再び、ガス流路及びセルの洗浄と、リファレンスガスの
光量測定をする。
【0041】このようにして、第1の検出素子25aで
得られた光量122 、第2の検出素子25bで得られた
光量132 と書く。 IIIb−6.サンプルガス測定 「IIIb−4.ベースガス測定」でベースガスを希釈した
場合は、呼気バッグよりサンプルガスを吸い込んだ後、
ガス注入器21を用いてサンプルガスを一定流量で機械
的に押し出し、この間、それぞれの検出素子25a,2
5bにより、光量測定をする。
【0042】「IIIb−4.ベースガス測定」でベースガ
スを希釈していない場合は、ガス注入器21の中でサン
プルガスのCO2 濃度とベースガスのCO2 濃度とが等
しい割合になるまでサンプルガスをリファレンスガスで
希釈した後、それぞれの検出素子25a,25bによ
り、サンプルガスの光量測定をする。このようにして、
第1の検出素子25aで得られた光量を12S、第2の検
出素子25bで得られた光量を13Sと書く。 IIIb−7.リファレンスガス測定 再び、ガス流路及びセルの洗浄と、リファレンスガスの
光量測定をする。
【0043】このようにして、第1の検出素子25aで
得られた光量123 、第2の検出素子25bで得られた
光量133 と書く。 IV.データ処理 IV−1.ベースガスの吸光度の算出 まず、前記測定手順1又は測定手順2で得られたリファ
レンスガスの透過光量 121 131 、ベースガスの透
過光量12B、13B、リファレンスガスの透過光量
122 132 を使って、ベースガスにおける12CO2
の吸光度12Abs(B) と、13CO2 の吸光度13Abs(B) と
を求める。
【0044】ここで12CO2 の吸光度12Abs(B) は、12 Abs(B) =− log〔212B/(121 122 )〕 で求められ、13CO2 の吸光度13Abs(B) 、13 Abs(B) =− log〔213B/(131132 )〕 で求められる。
【0045】このように、吸光度を算出するときに、前
後で行ったリファレンス測定の光量の平均値(R1 +R
2 )/2をとり、その平均値と、ベースガス測定で得ら
れた光量とを用いて吸光度を算出しているので、ドリフ
ト( 時間変化が測定に影響を及ぼすこと) の影響を相殺
することができる。したがって、装置の立ち上げ時に完
全に熱平衡になるまで( 通常数時間かかる) 待たなくて
も、速やかに測定を始めることができる。
【0046】なお、IIIa.の冒頭で述べたようにべース
ガス測定→リファレンスガス測定→ベースガス測定→サ
ンプルガス測定→リファレンスガス測定→サンプルガス
測定,……という手順を採用した場合は、ベースガスの
12CO2 の吸光度12Abs(B)は、12 Abs(B) =− log〔(121 122 )/212R〕 で求められ、13CO2 の吸光度13Abs(B) は、13 Abs(B) =− log〔(131132 )/213R〕 で求められる。ここで、Rは、リファレンスガスの透過
光量、B1 ,B2 は、それぞれリファレンスガスの測定
前後のベースガスの透過光量である。 IV−2. サンプルガスの吸光度の算出 次に、前記測定手順1又は測定手順2で得られたリファ
レンスガスの透過光量 122 132 、サンプルガスの
透過光量12S、13S、リファレンスガスの透過光量12
3 133 を使って、サンプルガスにおける12CO2
吸光度12Abs(S) と、13CO2 の吸光度13Abs(S) とを
求める。
【0047】ここで12CO2 の吸光度12Abs(S) は、12 Abs(S) =− log〔212S/(122 123 )〕 で求められ、13CO2 の吸光度13Abs(S) は、13 Abs(S) =− log〔213S(132 133 )〕 で求められる。
【0048】このように、吸光度を算出するときに、前
後で行ったリファレンス測定の光量平均値をとり、その
平均値と、サンプルガス測定で得られた光量とを用いて
吸光度を算出しているので、ドリフトの影響を相殺する
ことができる。なお、IIIa.の冒頭で述べたようにべー
スガス測定→リファレンスガス測定→ベースガス測定,
サンプルガス測定→リファレンスガス測定→サンプルガ
ス測定,……という手順を採用した場合は、サンプルガ
スの12CO2 の吸光度12Abs(S) は、12 Abs(S) =− log〔(121 122 )/212R〕 で求められ、13CO2 の吸光度13Abs(S) は、13 Abs(S) =− log〔(131 132 )/213R〕 で求められる。ここで、Rは、リファレンスガスの透過
光量、S1 ,S2 は、それぞれリファレンスガスの測定
前後のサンプルガスの透過光量である。 IV−3.濃度の算出 検量線を使って、12CO2 の濃度と13CO2 の濃度を求
める。
【0049】検量線は、12CO2 濃度の分かっている被
測定ガスと、13CO2 濃度の分かっている被測定ガスを
用いて、作成する。検量線を求めるには、12CO2 濃度
を0%〜6%程度の範囲で変えてみて、13CO2 の吸光
度を測定する。横軸を12CO2 濃度にとり、縦軸を12
2 吸光度にとり、プロットし、最小自乗法を用いて曲
線を決定する。2次式で近似したものが、比較的誤差の
少ない曲線となったので、本実施形態では、2次式で近
似した検量線を採用している。
【0050】また、13CO2 濃度を0.00%〜0.0
7%程度の範囲で変えてみて、13CO2 の吸光度を測定
する。横軸を13CO2 濃度にとり、縦軸を13CO2 吸光
度にとり、プロットし、最小自乗法を用いて曲線を決定
する。2次式で近似したものが、比較的誤差の少ない曲
線となったので、本実施形態では、2次式で近似した検
量線を採用している。
【0051】なお厳密にいうと、12CO2 の入っている
ガスと、13CO2 の入っているガスをそれぞれ単独で測
定するのと、12CO2 13CO2 とが混合しているガス
を測定するのでは、13CO2 の吸光度が違ってくる。こ
れは、使用する波長フィルタがバンド幅を持っているこ
とと、12CO2 の吸収スペクトルと13CO2 の吸収スペ
クトルとが一部重なっていることによる。本測定では、
12CO2 13CO2 とが混合しているガスを測定対象と
するので、検量線を決定するときに前記重なり分を補正
しておく必要がある。本測定では実際、吸収スペクトル
の一部重なりを補正した検量線を採用している。
【0052】前記検量線を用いて求められた、ベースガ
スにおける12CO2 の濃度を12Conc(B) 、ベースガスに
おける13CO2 の濃度を13Conc(B) 、サンプルガスにお
ける 12CO2 の濃度を12Conc(S) 、サンプルガスにおけ
13CO2 の濃度を13Conc(S) と書く。 IV−4.濃度比の算出13 CO212CO2 との濃度比を求める。ベースガスに
おける濃度比は、13 Conc(B) /12Conc(B) サンプルガスにおける濃度比は、13 Conc(S) /12Conc(S) で求められる。
【0053】なお、濃度比は、13Conc(B) / 12Conc(B)
13Conc(B), 13Conc(S)/12Conc(S) +13Conc(S) と
定義してもよい。12CO2 の濃度のほうが13CO2 の濃
度よりはるかに大きいので、いずれもほぼ同じ値となる
からである。 IV−5.13Cの変化分の決定 サンプルガスとベースガスとを比較した13Cの変化分は
次の式で求められる。
【0054】Δ13C=〔サンプルガスの濃度比−ベース
ガスの濃度比〕×103 /〔ベースガスの濃度比〕
(単位: パーミル(千分率))
【0055】
【実施例】炭酸ガスを含む同一の被測定ガス(CO2
濃度も当然同一)に対して、本同位体ガス分光測定装置
により12CO2 濃度を複数回測定した。装置立ち上げ1
時間後、リファレンスガス測定→サンプルガス測定→リ
ファレンスガス測定→サンプルガス測定→リファレンス
ガス測定→‥‥という手順でサンプルガス測定を10回
行った。サンプルガスの測定前後のリファレンスガスの
測定値の平均値に基づきサンプルガスの吸光度を求める
本発明の方法Aと、サンプルガスの測定前のみのリファ
レンスガスの測定値に基づきサンプルガスの吸光度を求
める方法Bとによりそれぞれ濃度を求めた。
【0056】方法Aにより濃度を算出した結果を、表1
に示す。表1では、1回目の測定濃度を1として、2回
目以後得られた濃度を規格化している。方法Aでは算出
された濃度データの標準偏差は、0.0009となっ
た。
【0057】
【表1】
【0058】方法Bにより濃度を算出した結果を、表2
に示す。表2でも、1回目の測定濃度を1として、2回
目以後得られた濃度を規格化している。方法Bでは濃度
データの標準偏差は、0.0013となった。
【0059】
【表2】
【0060】以上のことから、サンプルガスを満たして
得られる光の光量と、その前後の、リファレンスガスを
満たして得られる光の光量の平均値とから吸光度を求め
る本発明の方法のほうが、さらにばらつきの少ない濃度
データが得られることが分かった。
【0061】
【0062】
【0063】
【発明の効果】請求項1,2又は3記載の本発明によれ
ば、2種類の被測定ガスについてCO2 濃度をほぼ同じ
にできるから、12CO2 の検量線や13CO2 の検量線を
使う範囲を狭くすることができる。検量線は、使う範囲
が狭いほど、精度のよいものが得られるので、検量線を
使う範囲を限定することによって、測定精度を向上させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】同位体ガス分光測定装置の全体構成を示すブロ
ック図である。
【図2】セル室11の構造を示す断面図である。
【図3】同位体ガス分光測定装置のガス流路及びセル室
に、清浄なリファレンスガスを流して洗浄するときのガ
ス流路を示す図である。
【図4】同位体ガス分光測定装置のガス流路及びセル室
に、清浄なリファレンスガスを流して洗浄し、かつリフ
ァレンス測定をするときのガス流路を示す図である。
【図5】リファレンスガスが第1サンプルセル11a、
第2サンプルセル11bを流れないようにして、呼気バ
ッグより、ベースガスをガス注入器21で吸い込む途中
の状態を示す図である。
【図6】ベースガスを吸い込んだ後、ガス注入器21を
用いてべースガスをー定速度で機械的に押し出し、この
間、それぞれの検出素子25a,25bにより、光量測
定をするときのガス流路を示す図である。
【図7】リファレンスガスが第1サンプルセル11a、
第2サンプルセル11bを流れないようにして、呼気バ
ッグより、サンプルガスをガス注入器21で吸い込む途
中の状態を示す図である。
【図8】サンプルガスを吸い込んだ後、ガス注入器21
を用いてサンプルガスをー定速度で機械的に押し出し、
この間、それぞれの検出素子25a,25bにより、光
量測定をするときのガス流路を示す図である。
【符号の説明】
D 赤外線検出装置 L 赤外線光源装置 M1 ,M2 流量計 N1 ,N2 ノズル V1 〜V4 バルブ 11a 第1サンプルセル 11b 第2サンプルセル 11c リファレンスセル 21 ガス注入器 24a 第1の波長フィルタ 25a 第1の検出素子 24b 第2の波長フィルタ 25b 第2の検出素子
フロントページの続き (72)発明者 池上 英司 滋賀県甲賀郡水口町東名坂112番地 (72)発明者 筒井 和典 滋賀県甲賀郡水口町水口670番地の38 (56)参考文献 特開 平2−42338(JP,A) 特開 昭55−112546(JP,A) 特開 昭53−42890(JP,A) 特開 平4−42041(JP,A) 特公 平4−12414(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 21/00 - 21/01 G01N 21/17 - 21/61

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二酸化炭素12CO2 と二酸化炭素13CO2
    とを成分ガスとして含む被測定ガスをセルに導き、各成
    分ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、既知の濃
    度の成分ガスを含むガスを測定することによって作成さ
    れた検量線を用いて、各成分ガスの濃度を測定する同位
    体ガス分光測定方法において、 1つの検体から収集された2種類の被測定ガスについ
    て、一方の被測定ガスのCO2 濃度が他方の被測定ガス
    のCO2 濃度よりも高ければ、この一方の被測定ガスの
    CO2 濃度が他方の被測定ガスのCO2 濃度に等しくな
    るまで一方の被測定ガスを希釈して、各被測定ガスの濃
    度比13CO2 12CO2 を測定する同位体ガス分光測定
    方法。
  2. 【請求項2】二酸化炭素12CO2 と二酸化炭素13CO2
    とを成分ガスとして含む被測定ガスをセルに導き、各成
    分ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、既知の濃
    度の成分ガスを含むガスを測定することによって作成さ
    れた検量線を用いて、各成分ガスの濃度を測定する同位
    体ガス分光測定方法において、 予備測定において、 (a) 1つの検体から収集された2種類の被測定ガスにつ
    いて、第1種類の被測定ガスのCO2 濃度と、第2種類
    の被測定ガスのCO2 濃度をそれぞれ測定し、 本測定において、 (b) 測定された第1種類の被測定ガスのCO2 濃度が測
    定された第2種類の被測定ガスのCO2 濃度よりも高け
    れば、この第1種類の被測定ガスのCO2 濃度が第2種
    類の被測定ガスのCO2 濃度に等しくなるまで第1種類
    の被測定ガスを希釈した後、第1種類の被測定ガスの濃
    度比13CO2 12CO2 を測定し、 (c) 第2種類の被測定ガスの濃度比13CO2 12CO2
    を測定する同位体ガス分光測定方法。
  3. 【請求項3】二酸化炭素12CO2 と二酸化炭素13CO2
    とを成分ガスとして含む被測定ガスをセルに導き、各成
    分ガスに適した波長の透過光の吸光度を求め、既知の濃
    度の成分ガスを含むガスを測定することによって作成さ
    れた検量線を用いて、各成分ガスの濃度を測定する同位
    体ガス分光測定方法において、 予備測定において、 (a) 1つの検体から収集された2種類の被測定ガスにつ
    いて、第1種類の被測定ガスのCO2 濃度と、第2種類
    の被測定ガスのCO2 濃度をそれぞれ測定し、 本測定において、 (b) 測定された第1種類の被測定ガスのCO2 濃度が測
    定された第2種類の被測定ガスのCO2 濃度よりも低け
    れば、第1種類の被測定ガスの濃度比13CO2 12CO
    2 をこのまま測定し、 (c) 第2種類の被測定ガスのCO2 濃度が第1種類の被
    測定ガスのCO2 濃度に等しくなるまで第2種類の被測
    定ガスを希釈した後、第2種類の被測定ガスの濃度比13
    CO2 12CO2 を測定する同位体ガス分光測定方法。
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