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JP2730571B2 - 摺動材料およびピストンリング - Google Patents

摺動材料およびピストンリング

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JP2730571B2
JP2730571B2 JP7141248A JP14124895A JP2730571B2 JP 2730571 B2 JP2730571 B2 JP 2730571B2 JP 7141248 A JP7141248 A JP 7141248A JP 14124895 A JP14124895 A JP 14124895A JP 2730571 B2 JP2730571 B2 JP 2730571B2
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layer
sliding
piston ring
thickness
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寿郎 小室
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Riken Corp
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Publication date
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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CrNを主成分とし耐
摩耗性および耐焼き付き性に優れたクロム−窒素系皮膜
を有する摺動材料及びピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えばピストンリングなどの
自動車のエンジン部品、各種機械部品などの摺動部には
摺動特性に優れた皮膜を表面処理により形成した摺動部
品が使用されている。従来より行われている表面処理方
法には、窒化処理、クロムめっき処理、モリブデン溶射
処理などの方法がある。
【0003】ピストンリングは、エンジンのシリンダラ
イナ内に往復自在に配置されたピストンのリング溝にそ
の外周面がシリンダライナ内周面に摺接関係となるよう
に組み込まれ、主に燃焼室の気密化、シリンダー表面に
形成される潤滑油膜の厚さ制御、及び燃焼熱をピストン
からシリンダライナへ伝達することによるピストンの冷
却等の働きをする。従って、ピストンリング特性として
耐摩耗性、耐焼付性、耐熱性、保油性及びシリンダ側の
摩耗抑制などが高い次元で要求される。これらの要求に
応えるため上記の表面処理が施されている。
【0004】ピストンリングのコーティングに関し、特
公平1−52471号及び特開昭62−120471号
は、PVD(Physical Vapor Deposition )法により、
摺動面に金属窒化物や金属炭化物等の皮膜を形成するこ
とを開示している。この金属窒化物や金属炭化物の皮膜
は、優れた耐摩耗性及び耐焼付性を示しており、特に窒
化チタンや窒化クロムなどがエンジンへの適合性が良い
ということで注目されている。
【0005】しかし、現在では摺動部材の使用条件がさ
らに過酷になり、これら窒化チタンや窒化クロムを用い
ても、摺動特性が充分とは言えない状況が生じている。
特に摺動運動に加え摺動面の法線方向の振動運動が相乗
し、摺動部材と相手材の接触面が離れ次に再び接触が起
こるときに打撃が生じる場合、または摺動運動において
法線方向の荷重が変動する場合など摺動条件が厳しい使
用条件下では、イオンプレーティングによる窒化クロム
皮膜をはじめとする硬質皮膜において欠け状剥離が発生
し、摺動材料の寿命を短くすることがある。また使用温
度が高かったり、接触荷重が大きく摺動部分に潤滑油膜
が形成されにくい場合など潤滑条件が厳しい使用条件下
でも同様な硬質皮膜の欠け状剥離が観察される。そこで
現状の表面処理皮膜よりも耐剥離性にすぐれたセラミッ
クスコーティング皮膜を被覆した摺動材料が望まれてい
る。
【0006】又、ピストンリングにコーティングされた
イオンプレーティング皮膜はピストンリングの外周皮膜
表面にピッチング疲労が原因と考えられる欠け状の剥離
が生じる問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑
みてなされたもので、厳しい使用条件下でも欠け状剥離
が発生せず、同時に充分な耐焼き付き性、耐摩耗性を有
するクロム窒化物皮膜を被覆した摺動材料及びピストン
リングを提供することを目的とする。
【0008】本発明者らは、従来のCrNを主成分とす
る皮膜の破断面組織と皮膜の欠け状剥離性の関係につき
研究し、その結果、従来の破断面組織は平滑状であり、
平滑状組織は上記性質に優れないことを見出した。さら
に、従来のCrNを主成分とする皮膜は真密度に形成す
ることを第一義に考えていたので、空孔率はほぼゼロで
あった。かかる皮膜は硬さや耐焼付性は優れているが、
欠け状剥離に対しては弱いことを見出した。
【0009】
【課題を解決するための手段とその作用】上記問題に鑑
み、鋭意研究の結果、本発明者は、PVD法によりクロ
ム及び窒素を混合した気相を基材に接触させ、基材の表
面上にCrNを主成分とした窒化クロム系皮膜を形成す
る際、皮膜破断面の結晶が基材表面から皮膜表面に向か
って柱状の形態とすることができ、この柱状形態の層と
破断面が柱状でなく平滑状形態を有する従来からの層を
交互に積層するか、あるいは空孔率を1.5〜20体積
%に限定した層と、ほぼ真密度を有する従来からの層と
を交互に積層することにより、耐摩耗性、耐焼き付き性
に優れさらに欠け状剥離が発生しにくい摺動材料及びピ
ストンリングが得られることを見出し、本発明を完成し
た。
【0010】すなわち、本発明の摺動材料は、少なくと
もCrNを含有する窒化クロム系皮膜を基材に被覆して
なる摺動材料であって、前記窒化クロム系皮膜が、皮膜
破断面の結晶が基材表面から皮膜表面の方向に向かう柱
状層と皮膜破断面の結晶が平滑状層を基材に交互に積層
させて被覆していることを特徴とする第1の摺動材料
と、少なくともCrNを含有する窒化クロム系皮膜を基
材に被覆してなる摺動材料であって、前記皮膜が、空孔
率0〜0.5体積%以下の層と、空孔率が1.5%から
20体積%の層を基材に交互に積層させて被覆している
ことを特徴とする第2の摺動材料に関する。
【0011】同じく、本発明は少なくとも外周摺動面
に、皮膜破断面結晶が柱状なる形態を有する窒化クロム
層と皮膜破断面が柱状形態でなく平滑状を有する窒化ク
ロム層を交互に積層して総厚さが1〜80μmの皮膜を
形成してなることを特徴とする第1のピストンリング、
及び空孔率1.5〜20体積%である窒化クロム層と皮
膜空孔率が0.5体積%以下のほぼ真密度を有する窒化
クロム皮膜を交互に積層して総厚さが1〜80μmの皮
膜を形成してなることを特徴とする第2のピストンリン
グに関する。
【0012】以下、先ず本発明に係る摺動材料の構成を
説明する。皮膜を被覆する基材は、鉄系材料、アルミ系
材料、及びチタン系材料等の中から用途により適宜選択
する。以下詳しく説明するPVD法は、CVD(Chemic
alVapor Deposition )法などに比べ低温処理に類する
が、蒸着現象による入熱は避けられないので、できれば
耐熱性のある鉄系材料及びチタン材料を基材として使用
することが好ましい。
【0013】本発明に係る第1の摺動材料における窒化
クロム系皮膜は、少なくともCrNを主成分としてお
り、その他にCr2 N、固溶Cr、N等の窒化クロム構
成化合物、原子を含むことがある。またCrN結晶構造
を保つ範囲において、酸素、炭素、水素等PVD雰囲気
から混入されることがある元素が窒素クロム系皮膜に含
まれていてもよい。また、この窒化クロム系皮膜は破断
面の結晶が基材表面から皮膜表面に向かう柱状を呈する
層と皮膜破断面が柱状でない平滑状を呈する層を交互に
積層させた形態を有する。ここで、結晶形態は摺動材料
皮膜の破断面を倍率が400〜10000倍程度の光学
顕微鏡もしくは電子顕微鏡で観察して得られる像により
識別するものとする。また、「平滑」とは柱状などの皮
膜成長上の異方性が認められないことであり、より大き
い倍率では粒状組織が観察されることを除外する意味で
はない。破断は皮膜の結晶形態に影響を与えないよう
に、基材側に刻み目、溝、切り欠き等を形成し、基材側
から溝等を拡大もしくは縮小するようにして皮膜を破壊
するものとする。本発明が特徴とする柱状破断面結晶形
態は、ピッチングによると考えられる欠け状剥離が発生
しにくく、また平滑状破断面結晶形態は、耐焼き付き性
が優れる。このように対照的性質をもつ層を組み合わせ
て積層することにより本材料は欠け状剥離が発生しにく
く、かつ耐スカッフ性に優れる。
【0014】この理由は次のように考えられる。柱状破
断面結晶は欠け剥離には耐えるが、スカッフによる摩耗
が起こると大きく摩耗して、その下の平滑破断面結晶層
が露出してスカッフによる焼付に耐える。逆に平滑破断
面結晶層がピッチングにより欠けると、欠けた部分で露
出した柱状破断面結晶層が欠け状剥離のさらなる進行を
阻止する。摺動条件はある摺動時点ではスカッフ摩耗も
しくはピッチンング摩耗のいずれか一方が支配的であ
り、この条件は長期に保たれることもありまた摺動材料
のなじみ、摩耗、潤滑条件の変化により一方から他方に
変化することもある。本発明によると、いずれかの層の
欠点を他の層が補うことにより優れた摺動特性が得られ
る。また、摺動条件がスカッフ摩耗が支配的であり、摺
動材料表面に露出した層が平滑破断面結晶層である場合
はこの層が安定して摩耗に耐えることは言うまでもな
い。
【0015】また窒化クロム系皮膜は、緻密性が高くな
ると耐スカッフ性及び耐摩耗性に優れる一方皮膜が脆く
なり、欠け状剥離が発生しやすくなる。CrNの理論密
度は6.14g/cm3 であるが、特に優れた耐スカッ
フ性及び耐摩耗性を維持するためには空孔率を0〜0.
5体積%にすることが必要である。一方欠け状剥離を防
止するためには、皮膜の緻密性を低下させ、空孔率を
1.5体積%(以下単に「%」と記す)以上とすること
が必要である。その際、皮膜空孔率をあまり高くする
と、硬さが低下し、耐摩耗性が劣化する。従って、皮膜
空孔率の上限を20%とすることが必要である。本発明
に係る第2の摺動材料に施された皮膜は、空孔率が0.
5体積%以下の皮膜と、空孔率が1.5体積%から20
体積%の皮膜を交互に積層させた形態を有しているこの
ように空孔率が異なる層を組合わせると欠け状剥離が発
生しにくくかつ耐スカッフ性に優れる。この理由は次の
ように考えられる。
【0016】摺動条件がスカッフィング及び摩耗が支配
的な条件(イ)から欠け状剥離が支配的な条件(ロ)へ
又は逆に時間的に変化する場合に、低空孔率層は条件
(イ)では摩耗が少ないが、条件(イ)→(ロ)の変化
の際に欠け状剥離により摩耗し、その下の高空孔率層が
露出するので、欠け状剥離はさらに進行しない。逆に低
空孔率層は条件(ロ)では容易に剥離して、条件(ロ)
に強い高空孔率層が露出して、剥離の進行が阻止され
る。このように条件(イ)又は(ロ)の何れかに対して
弱い層は容易に一部又は全部が相手材に摩耗せしめら
れ、当該条件に強い下層が露出されて相手材と摺接す
る。
【0017】本発明の第1及び第2摺動材料で積層させ
ている一層当りの厚さは、0.1〜10.0μmである
ことが好ましく、特に0.5〜5.0μmが好ましい。
一層当りの厚さが0.1μm以下では、各層が特長とす
る性質、例えば破断面が平滑な層の耐スカッフ性、が充
分発揮されないし、積層数が多くなり本材料を形成する
ことが煩雑になる。一方一層当りの厚さが10μmを超
える場合、積層数が少なく本材料の最外周層の効果しか
発揮できず、積層により互いの弱点を補う効果が望めな
い。
【0018】本発明の第1及び第2摺動材料における二
種類の皮膜の積層比すなわち、破断面形態が柱状でなく
平滑状である層または空孔率が0.5%以下の層厚さの
総計(B)に対する、破面形態が柱状である層または空
孔率が1.5〜20%の層の厚さの総計(A)の比(A
/B)は0.2〜10が好ましい。その積層比が0.2
以下では積層効果が少なく皮膜の欠け状剥離が生じやす
い。またその積層比が10以上では皮膜の緻密性が低く
耐スカッフ性、耐摩耗性に劣る。
【0019】本発明の第1及び第2摺動材料における皮
膜硬さは、それぞれの皮膜の空孔率、結晶形態及び積層
比等による影響を受ける。一般的に、空孔率がゼロであ
り真密度のCrN皮膜の硬さはHmV1500〜200
0程度であるのに対し、本発明の摺動材料における皮膜
の硬さは、表面から測定してHmVで約600から15
00程度である。
【0020】本発明の第1及び第2摺動材料における皮
膜の全体の厚みは1〜80μmであることが好ましい。
特に好ましくは20〜60μmである。皮膜の厚みが1
μm未満の場合、摩耗により皮膜の寿命が短く、一方、
皮膜全体の厚みが80μmを超える場合皮膜が剥離した
り、皮膜に亀裂が生じたりして、基材との密着力が低下
する。また必要以上に皮膜を厚くすることは経済上好ま
しくない。
【0021】本発明の皮膜においては、PVD法により
クロム及び窒素を混合した気相と基材とを接触させる。
PVD法は、皮膜を形成する技術の一種であり、基本的
には蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングの三
法に分類できる。特に、本発明においては、クロムの蒸
気物質を窒素と反応させて窒化クロムの皮膜を基材上に
堆積させる反応性イオンプレーティング法が最も好まし
い。
【0022】クロムの蒸気は、HCDガンや電子ビーム
などの高エネルギービームをクロムに照射し、蒸発させ
ることにより得る。また陰極アークプラズマ式イオンプ
レーティング法、及びスパッタリング法のように、陰極
からクロム粒子を飛出させることにより、クロム蒸気を
得てもよい。そのクロム蒸気に窒素を混合した気相中で
プラズマを発生させると、クロムはイオン化し、窒素イ
オンと化合し窒化クロムを生成する。その結果、基材表
面に窒化クロムの皮膜が形成される。
【0023】以下においては、イオンプレーティング法
を例にとって説明するが、本発明はこれに限定されな
い。まず、基材を洗浄し、表面に付着した汚れを取り、
充分清浄化してイオンプレーティング装置の真空チャン
バー内に装入する。チャンバー内圧力が、1.3×10
-3〜5×10-3Paになるまで真空引きを行ってから、
イオンプレーティング装置に内蔵されているヒーターに
より加熱して基材の内在ガスを放出させる。加熱温度は
300〜500℃とするのが好ましい。その後100〜
400℃まで冷却する。
【0024】チャンバー内圧力が4×10-3Pa以下に
なった時点でターゲットであるクロムを陰極として、そ
の表面でアーク放電を発生させクロムイオンを飛び出さ
せる。この際、基材にはバイアス電圧を印加しておき、
陰極より飛び出した金属イオンを基板表面に高エネルギ
ーで衝突させる方法、いわゆるボンバードクリーニング
により基材表面の酸化物除去と活性化処理を行う。その
ときのバイアス電圧は−700〜−900Vとするのが
好ましい。
【0025】その後バイアス電圧を低下させ、クロムイ
オンを基材表面に堆積させながら窒素ガスをチャンバー
内に導入し、プラズマ内を通過させて、窒素をイオン化
する。この際、窒素分圧を1.3×10-1〜13.3P
a程度にして、バイアス電圧を0〜−100V印加して
基材表面にイオンプレーティング皮膜を形成させる。皮
膜形成後、真空チャンバー内で200℃以下になるまで
冷却してから、摺動材料をチャンバーから取り出す。
【0026】本発明が特徴とする皮膜の空孔率及び破断
面結晶形態は、コーティング中の雰囲気圧力またはバイ
アス電圧を調整することにより制御でき、あらかじめ定
めた二種類のコーティング条件をそれぞれ所定時間毎に
繰り返すことにより、皮膜破断面結晶が柱状の形態を有
する柱状層もしくは所定の空孔率を有する層と、破断面
が柱状でなく平滑な層もしくは真密度に近い低空孔率層
とを交互に積層した窒化クロム系皮膜を摺動材料の摺動
面に形成することができる。
【0027】以上説明した本発明の工程中、窒素ガスの
導入前にイオンプレーティングを行うと基材にクロム金
属の下地層が形成される。このクロム金属の下地層は、
熱膨張率が基材に近く、熱応力の影響を受けにくいた
め、密着性は良好で柔軟性に富む。クロム金属の下地層
は0.1〜2μmの厚さに形成するのが好ましい。0.
1μm未満では密着性向上の効果が薄く、0.1〜2μ
mの厚さで充分な効果を示す。また2μmを超えてもそ
れ以上の効果を得ることはできず、また経済上も好まし
くない。このように皮膜と基材との間に、密着性及び柔
軟性に富む下地層を形成することは皮膜の剥離防止に効
果がある。
【0028】摺動材料の説明に続いてピストンリングの
説明を行う。本発明のピストンリングの構成は摺動材料
に関する上記説明とほとんど同じであるために、重複記
載を避けるためにピストンリングに特有な点のみを説明
する。
【0029】図1は本発明におけるピストンリング1
と、形成された皮膜2Aを示す断面図である。皮膜を形
成する面は、ピストンリングの外周摺動面2を必須とす
るが、他の部分である内周面3、あるいは上下面4など
のいずれに形成しても差し支えはない。図2は本発明に
よるピストンリング1を装着したピストン5がシリンダ
ライナ6に組み込まれた状態の一部分を示す断面図であ
る。ピストンリング本体は従来公知のいかなる形式でも
よく、その材料は13Cr及び17Crステンレス鋼、
バネ鋼、工具鋼、鋳鉄等の鉄系材料、及びこれらの材料
に窒化処理やクロムめっきを施したものを使用すること
ができる。ピストンリングの皮膜総厚さは、初期なじみ
における摩耗で表面が消失する可能性を考慮して1μm
以上とし、初期なじみ以降にも皮膜を残す必要がある。
一方、必要以上に膜厚を厚くすると経済上好ましくな
く、膜厚が60μmを超えると皮膜には亀裂が入りやす
く密着力が低下するので、60μm以下とすることが望
ましい。しかし、耐摩耗性、耐久性を特に必要とする用
途の場合には80μmまでの皮膜を形成することが可能
である。
【0030】
【実施例】以下、本発明を具体的実施例によりさらに詳
細に説明する。 (実施例1)本実施例では、材質がSUS440材の基
材に陰極アークプラズマ式イオンプレーティング装置を
用いてPVD処理を行い、皮膜の基礎的物性を調べた。
先ず、基材は炭化水素系溶剤で洗浄し、イオンプレーテ
ィング装置の真空チャンバー内に装入した。チャンバー
内圧力が1.3×10-3Paになるまで真空引きを行っ
てから、イオンプレーティング装置に内蔵されているヒ
ーターにより300〜500℃で加熱して基材の内在ガ
スを放出させ、その後200℃まで冷却した。
【0031】チャンバー内圧力が4×10-3Pa以下に
なった時点で基材にバイアス電圧を−800V印加して
おき、アーク放電を発生させクロム源からクロムイオン
を飛び出させる。その後チャンバー内に導入した窒素ガ
ス分圧を1.3×10-1〜6.7Pa、印加バイアス電
圧を−100Vとして基材表面に厚さ5μmのイオンプ
レーティング皮膜(平滑層)を形成させた。さらにその
後コーティング条件を窒素ガス分圧6.7〜13.3P
a、バイアス電圧−30Vに変更して厚さ5μmの皮膜
(柱状層)を形成した。この2条件を交互に各5回繰り
返し計50μmの皮膜を被覆した。皮膜形成後、真空チ
ャンバー内で200℃以下になるまで冷却して摺動材料
を得た。
【0032】得られた皮膜の破断面形態、組成、表面微
小硬さを調べた。皮膜の破断面を走査型電子顕微鏡によ
り二次電子像を観察した結果を図3(倍率1000)に
示す。この図のように母材から皮膜表面に向かって柱状
を呈する結晶層と破断面が柱状でなく平滑を呈する結晶
層が交互に積層されていることを確認できた。また、X
線回折により組成を分析した結果、CrNの単一相であ
ることも確認した。表面硬さはHmV(100) 1024で
あった。
【0033】実施例2、3、比較例1 この実施例では本発明材料の耐焼付性を評価した。縦5
mm×横5mm×高さ5mmのピン状突起20(図4,
5参照)を同心円上に等間隔に三個配置したSKD61
材を試験片15として用いて、5mm角の正方形端面に
本発明による皮膜を厚さ約50μm形成し、得られた試
験片につき超高圧摩耗試験機によって耐焼付性試験を行
った。実施例2に係る試験片の皮膜は、実施例1にて記
述した方法により形成し、破断面の結晶が基材表面から
皮膜表面に向かう柱状層と、破断面が柱状ではない平滑
層が各々5μmずつ交互に積層されている総厚さ50μ
mのCrN単一相皮膜であった。
【0034】この実施例3の皮膜は空孔率が0.1%で
厚さが5μmの層(a)と空孔率が3%で厚さが3μm
の層(b)をそれぞれ交互に6層ずつ計48μm積層さ
せた皮膜(実施例3)であった。それぞれの層(a)、
(b)の形成条件は次のとおりであった。 層(a):窒素ガス分圧−6.7Pa、バイアス電圧−
−100V 層(b):窒素ガス分圧−26.6Pa、バイアス電圧
−−50V 皮膜の表面微小硬さは実施例2の皮膜がHmV102
4、実施例3の皮膜がHmV1256であった。
【0035】比較例として、試験片の5mm角の端面に
厚さが100μmのクロムめっき皮膜(比較例1)を用
いて同様の試験を行った。
【0036】本試験に用いた超高圧摩耗試験機の装置と
試験条件は次の通りである。試験装置は図4及び図4の
A−A矢視断面図である図5に要部を図解的に示すもの
であって、ステータホルダ11に取外し可能に取り付け
られた直径80mm×厚さ10mmの研摩仕上げを施し
た円盤12(相手材)の中央には、裏側から注油口13
を通して潤滑油が注油される。ステータホルダ11には
図示しない油圧装置によって図において右方に向けて所
定圧力で押圧力Pが作用するようにしてある。円盤12
に相対向してロータ14があり、図示しない駆動装置に
よって所定速度で回転するようにしてある。ロータ14
には試験片15が表面処理層を形成した5mm角の正方
形の端面を摺動面として円盤12に対し摺動自在に取り
付けてある。
【0037】このような装置において、ステータホルダ
11に所定の押圧力Pをかけ、所定の面圧で円盤12と
試験片15のピン状突起20とが接触するようにしてお
いて、注油口13から摺動面に所定給油速度で給油しな
がらロータ14を回転させる。一定時間毎にステータホ
ルダ11に作用する圧力を段階的に増加していき、ロー
タ14の回転によって試験片15と相手の円盤12との
摩擦によってステータホルダ11に生ずるトルクTをス
テンレスファイバー16を介してロードセル17に作用
せしめ、その変化を動歪計18で読取り、記録計19に
記録させる。トルクTが急激に上昇したとき焼付が発生
したものとして、この時の接触面圧をもって耐焼付特性
の良否を判断する。試験条件は次の通りである。
【0038】摩擦速度:8m/秒 接触面圧:20kgf/cm2 でならした後、焼付発生
まで10kgf/cm2 ずつ増圧。各面圧に3分間保
持。 潤滑油 :モーターオイル#30 油温 80℃、 供
給量 250cc/分 表1に試験結果を示した。
【0039】
【表1】
【0040】FC250相手で本発明品は接触面圧28
5及び290kgf/cm2 で焼付が発生した。比較品
のクロムメッキの焼付面圧253kgf/cm2 以上で
あり、耐焼付性が優れている。
【0041】実施例4、比較例2 この実施例では科研式摩耗試験機により本発明材料の腐
食摩耗試験を実施した。形状が縦5mm×横5mm×長
さ20mm、長手方向の一方の先端をR6mmの曲面と
したSKD−61材を試験片として用い、実施例1で記
述した方法により、試験片の先端曲面に、破断面の結晶
が基材表面から皮膜表面に向かう柱状層と、破断面の結
晶が柱状でない平滑層が各々厚さが5μmとなるように
交互に積層され、かつCrN単一相である皮膜(実施例
4)を50μmの厚さで被覆した。皮膜の表面微小硬さ
はHmV1024であった。
【0042】比較例として試験片先端R部に厚さ100
μmのクロムめっき試験片(比較例2)を用いて同様な
試験を行った。
【0043】試験は、表面処理を施した試験片の先端R
部をドラム状に加工した相手材の外周部に曲面同士が線
接触するように合わせ、所定荷重を加え、所定速度で回
転させ、pH=2に調整した硫酸水溶液を接触部に一定
量適下した酸雰囲気の潤滑条件下で行った。
【0044】試験条件は次の通りである。 摺動相手材:FC250材 摩擦速度 :0.25m/秒 摩擦時間 :6時間 接触荷重 :4kgf 雰囲気 :摺動部にpH=2.0に調整した硫酸水溶
液を1.5cc/分滴下 皮膜摩耗量の測定値を表2に示した。結果はクロムめっ
き皮膜の摩擦量を100として相対値で示した。
【0045】
【表2】
【0046】比較品であるクロムめっき品に比べ、本発
明品は摩耗量が約1/25と大幅に減少している。
【0047】実施例5、6、7、比較例3、4 この実施例では、すべりを伴う転がり疲労試験機(ロー
ラーピッチング試験機)により本発明の被覆を施した材
料の耐剥離性を評価した。試験片の基材材質は浸炭処理
したSCM材420であり、形状はφ26mm×28m
mのローラー状であり、その外周表面に本発明皮膜を約
50μmの厚さで施した。試験片の皮膜は、実施例1に
記述した方法により形成し、破断面の結晶が基材表面か
ら皮膜表面に向かう柱状層と、破断面結晶が柱状でない
平滑な厚さ5μmの層を交互に積層した総厚さ50μm
でかつCrN単一相である皮膜(実施例5)、及び空孔
率が0.1%で厚さが5μmの皮膜と、空孔率が3%で
厚さが3μmの皮膜をそれぞれ交互に6層ずつ計48μ
m積層させた皮膜(実施例6)であった。皮膜の表面微
小硬さは実施例5なる皮膜がHmV1024、実施例6
なる皮膜がHmV1256であった。
【0048】実施例5、6と同材質の試験片本体外周
に、実施例1に記述した方法により形成し、破断面の結
晶が基材表面から皮膜表面に向かう柱状層が0.5μ
m、破断面の結晶が柱状でなく平滑な層を5μm、各々
が交互に計20層積層されている総厚さ55μmでかつ
CrN単一層である皮膜(比較例3−請求項4の比較
例)、及び破断面の形態がで平滑でありかつ空孔率が
0.2%程度と極めて低いCrN皮膜を42μm被覆し
(比較例4)、実施例5、6と同様に耐剥離性を測定し
た。
【0049】本試験に用いたピッチング試験機の装置と
試験条件は次の通りである。試験装置は、図6に要部を
図解的に示すものであって、φ26mm×28mmの試
験片23を取り付けたテストローラー21と相対向して
負荷ローラー22があり、所定圧力が作用するようにし
てある。テストローラー21は、図示しない駆動装置に
より所定速度で回転するようにしてあり、その試験片2
3の外周には表面処理層を形成する。負荷ローラー22
は、φ130×18mmの大きさで、外周はR300m
mの形状をして微視的には試験片23と点接触し、大き
な押圧力をかけられるようになっている。また負荷ロー
ラー22はテストローラー21に対し図示しない歯車を
介し従動し、相対的に滑りながら回転するようになって
いる。滑り率は試験片周速(U23)と負荷ローラー周速
(U22)により、(U23−U22)/U23で表され、任意
に選定できる。試験片21と負荷ローラー22の接触部
には、図示しない注油口を通して潤滑油が注がれる。こ
のような装置において、試験片23に所定の押圧力をか
け、所定の面圧で試験片23と負荷ローラー22とが接
触するようにしておいて、接触部に所定注油速度で注油
しながらテストローラーを所定速度で回転させるととも
に、所定滑り率で負荷ローラー22を回転させる。試験
中定期的に試験片表面を注意深く観察し、試験片の表面
に欠け状剥離が発生するまでの回転の累計により耐剥離
性の良否を判断する。相手材である負荷ローラーの材質
はFC250材を用いた。試験条件は次の通りである。
【0050】 面圧(ヘルツ応力) :160kgf/mm2 試験片周速 :82m/s 滑り率 :20% 使用オイル :#30(ベースオイル) オイル流量 :1200cc/分 オイル温度 :80℃ 表3に試験結果を示した。
【0051】
【表3】 耐剥離性試験結果 剥離発生までの回転累計数 実施例5 2×107 回以上でも剥離発生せず 実施例6 1.8×107 回で剥離発生 比較例3 3.7×106 回で剥離発生 比較例4 3.0×106 回で剥離発生
【0052】本発明品は比較例に対し耐剥離性が非常に
優れている。しかし比較例3のように積層比(柱状層の
厚さ計/平滑層の厚さ計)が0.1と小さいと剥離が生
じやすい。
【0053】実施例7、8、9、比較例5 実施例1と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚
さが50μmであり、皮膜の破断面の結晶が母材表面か
ら皮膜表面に向かう柱状の形態を有する層と、皮膜破断
面の結晶が平滑である層が各々5μmずつ交互に計10
層積層した組成がCrNなる皮膜(実施例7、積層比
1.0)と、ピストンリング外周表面に、空孔率が0.
1%で厚さが5μmの層と空孔率が3%で厚さが3μm
の層をそれぞれ交互に6層ずつ計48μm積層させた、
組成がCrNとCr2 Nの混合よりなる皮膜(実施例
8、積層比0.6)を被覆した。また実施例8なる皮膜
とピストンリング母材の間に1μmの厚さでクロムから
なる下地層を形成した皮膜を被覆した(実施例9、積層
比1.0)。得られたピストンリングの皮膜密着性を測
定した。密着性の測定はツィスト試験と呼ばれるもの
で、ピストンリングの合い口部の一方を固定し、他の一
方をねじって、皮膜の剥離が生ずるまでのねじり角を測
定するものである。
【0054】比較例5として、実施例7と同材質及び同
寸法のピストンリング本体に皮膜断面の結晶が柱状の形
態を有しない平滑層からなる窒化クロム単一相の皮膜を
42μm被覆したピストンリングについても実施例7,
8,9と同様に皮膜密着性を測定した。実施例7、8、
9及び比較例5の測定結果を表4に示す。なお、測定値
は比較例5のねじり角を1とした角度比で表4に示し
た。さらに表4には皮膜の表面微小硬さを付記した。
【0055】
【表4】 密着性試験結果 剥離が生じたねじり角の比 微小硬さ HmV 実施例7 1.28 1024 実施例8 1.23 1256 実施例9 1.31 1022 比較例5 1 1680
【0056】表4から明らかなように、本発明の皮膜は
比較例に比べて、剥離が生じるまでのねじり角が大き
く、密着性が優れている。
【0057】実施例10、11、比較例6,7 実施例1と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚
さが50μmであり、皮膜破断面の結晶が母材表面から
皮膜表面に向かう柱状層と破断面が柱状でなく平滑な層
が各々5μmずつ交互に計10層積層した組成がCrN
なる皮膜(実施例10、積層比1.0)と、ピストンリ
ング外周表面に、空孔率が0.1%で厚さが5μmの層
と空孔率が3%で厚さが3μmの層をそれぞれ交互に6
層ずつ計48μm積層させた組成がCrNとCr2 Nの
混合よりなる皮膜(実施例11、積層比0.6)を被覆
した。また、ピストンリングの外周摺動面にまず皮膜破
断面の結晶が柱状でなく平滑な厚さ0.8μmの層を形
成し、その後皮膜破断面の結晶が母材表面から皮膜表面
に向かう柱状の形態を有し、厚さが12μmの層を形成
し、さらに破断面の結晶が平滑状層を0.8μm、次に
破断面結晶が柱状の層を12μm形成する。このように
交互に計8回繰り返して厚さが51.2μmで組成がC
rNなる積層皮膜を被覆したピストンリング(比較例6
−請求項4の比較例−積層比15.0)を被覆した。
【0058】得られたピストンリングを4気筒4サイク
ルのディーゼルエンジン(インタークーラー付き過給器
を装備)のトップリングに組込み、台上実機試験を実施
した。試験条件は次に示す通りであった。 回転数 :4,000rpm 試験時間 :100時間 オイル温度:120℃ 水温 :40℃ 実機試験における外周摺動面摩耗量の測定を3回行っ
た。結果を表5に示す。
【0059】比較例としてピストンリングの外周摺動面
にクロムめっきを厚さ100μmに施したもの(比較例
7)について、実施例5及び6と同様に実機試験を行っ
た。
【0060】
【表5】
【0061】表5から明らかなように、本発明による皮
膜を被覆したピストンリングはクロムめっきしたピスト
ンリング(比較例7)に比べ、摩耗量が約1/4〜1/
5と大幅に減少している。しかし積層比が好ましい値以
上のCrN皮膜(比較例6)では摩耗量が増加してい
る。ディーゼルエンジンにおいては、燃料の燃焼によっ
て燃料中の硫黄分がエンジンオイル中に入り込み、オイ
ル酸化を増加させ、ピストンリングは単なる摩擦摩耗の
みでなく、腐食摩耗が促進される雰囲気にさらされる。
本発明による皮膜を被覆したピストンリングは、このよ
うな条件下において優れた耐摩擦摩耗性および耐腐食摩
耗性を有することが期待される。
【0062】実施例13、14、15、16、比較例8 実施例1と同様の方法で、ピストンリング外周表面に厚
さが50μmであり、皮膜破断面の結晶母材表面から皮
膜表面に向かう柱状層と、皮膜破断面の結晶が柱状でな
い平滑層が各々5μmずつ交互に計10層積層した組成
がCrNなる皮膜(実施例13、積層比1.0)、ピス
トンリング外周表面に空孔率が0.1%で厚さが5μm
の層と空孔率が3%で厚さが3μmの皮膜をそれぞれ交
互に6層ずつ計48μm積層させた組成がCrNとCr
2 Nが混合した皮膜(実施例14、積層比0.6)、さ
らに空孔率が0.2%で、かつ皮膜破断面の結晶が平滑
である厚さが0.6μmの層と空孔率が15%でかつ皮
膜破断面の結晶が柱状である厚さが4.5μmの皮膜
(実施例15、積層比7.5)、及びピストンリング外
周表面に空孔率が0.2%で厚さが5μmの層と空孔率
が10%で厚さが0.5μmの層をそれぞれ交互に9層
ずつ計49.5μm積層させた組成がCrNなる皮膜
(実施例16、積層比0.1)を被覆した。得られたピ
ストンリングを4気筒4サイクルのディーゼルエンジン
(インタークーラー付き過給器を装備)のトップリング
に組込み、台上実機試験を実施した。試験条件は次に示
す通りであった。
【0063】回転数 :4,000rpm 試験時間 :300時間 オイル温度:120℃ 水温 :100℃
【0064】実機試験におけるピストンリング外周摺動
面の欠け状剥離の状態を観察した。結果を表6に示す。
【0065】比較例として皮膜断面の結晶が柱状でなく
平滑状の形態のみよりなるCrN組成皮膜を42μm被
覆したもの(比較例8)を被覆したものについて、実施
例13〜16と同様に実機試験を行った。
【0066】
【表6】 欠け状剥離発生状況 第1気筒 第2気筒 第3気筒 第4気筒 実施例13 なし なし なし なし 実施例14 なし なし なし なし 実施例15 なし なし なし なし 実施例16 発生 発生 なし 発生 比較例8 発生 発生 発生 発生
【0067】表6から明らかなように、比較例8による
皮膜を被覆したピストンリングは全ての気筒で皮膜剥離
が生じているが、本発明実施例では比較例に較べ改善が
見られ、耐欠け状剥離性に優れている。
【0068】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
本発明は基材の表面上に形成されるCrNを主成分とす
る窒化クロム系皮膜において、皮膜の破断面結晶が基材
表面から皮膜表面に向かう柱状の形態とした層あるいは
空孔率を1.5〜20%に限定した層を、破断面が柱状
でなく平滑状形態を有する層あるいは真密度の層に交互
に積層することにより、従来から使用されている硬質皮
膜に比較して、耐摩耗性、耐焼き付き性に優れさらに欠
け状剥離が発生しにくい摺動材料を提供するものであ
る。本発明材料は、ピストンリング、カムフォロアなど
のエンジン部品さらにはシューディスクなどのコンプレ
ッサー部品をはじめとする摺動部品や切削工具などの好
適である。
【0069】同様に上記のように交互に積層させた窒化
クロム皮膜を形成されているピストンリングは、従来か
ら使用されているピストンリングと比較して、皮膜の密
着性、耐摩擦摩耗性、耐腐食摩耗性および耐剥離性に優
れており、ピストンリングの寿命を増大することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピストンリングの部分断面図である。
【図2】ピストンリングをピストンへの装着状態を示す
断面図である。
【図3】本発明の第1に係る摺動材料の皮膜破断面の金
属組織を電子顕微鏡で撮影した写真である。
【図4】超高圧摩擦試験機一部破砕説明図である。
【図5】第1図のA−A矢視断面図である。
【図6】転がり疲労試験機の概要断面図である。
【符号の説明】
1:ピストンリング本体 2:外周摺動面 2A:皮膜 3:内周面 4:上下面 5:ピストンリング 6:シリンダライナ 11:ステータホルダ 12:円盤(相手材) 13:注油口 14:ロータ 15:試験片 16:ステンレスファイバー 17:ロードセル 18:動歪計 19:記録計 20:試験片のピン状特記(5mm角) 21:テストローラー 22:負荷ローラー 23:試験片

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともCrNを含有する窒化クロム
    系皮膜を基材上に被覆してなる摺動材料であって、前記
    窒化クロム系皮膜が、皮膜破断面の結晶が基材表面から
    皮膜表面の方向に向かう柱状層と皮膜破断面の結晶が平
    滑状層を基材に交互に積層させて被覆していることを特
    徴とする摺動材料。
  2. 【請求項2】 少なくともCrNを含有する窒化クロム
    系皮膜を基材上に被覆してなる摺動材料であって、前記
    皮膜が、空孔率0〜0.5体積%の層と、空孔率が1.
    5%から20体積%の層を基材に交互に積層させて被覆
    していることを特徴とする摺動材料。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の摺動材料において、前記
    平滑層の厚さ総計(B)に対する前記柱状層の厚さの総
    計(A)の比(A/B)が0.2〜10であることを特
    徴とする摺動材料。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の摺動材料において、前記
    空孔率が1.5〜20体積%の層の厚さ総計(B)に対
    する前記空孔率が0〜0.5体積%の層の厚さの総計
    (A)の比(A/B)が0.2〜10であることを特徴
    とする摺動材料。
  5. 【請求項5】 各層の厚さが0.1〜10.0μmであ
    ることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項記
    載の摺動材料。
  6. 【請求項6】 請求項1から5までの何れか1項記載の
    摺動材料において,前記皮膜の微小硬さが表面から測定
    してHmV600〜1500の値であることを特徴とす
    る摺動材料。
  7. 【請求項7】 請求項1から6までの何れか1項記載の
    摺動材料において、前記皮膜と前記基材との間にクロム
    からなる下地層が介在することを特徴とする摺動材料。
  8. 【請求項8】 少なくとも外周摺動面に請求項1から7
    までの何れか1項記載の皮膜を1〜80μmの厚さに形
    成したことを特徴とするピストンリング。
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