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JP2578370B2 - 味覚センサ及びその製造方法 - Google Patents

味覚センサ及びその製造方法

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JP2578370B2
JP2578370B2 JP1190819A JP19081989A JP2578370B2 JP 2578370 B2 JP2578370 B2 JP 2578370B2 JP 1190819 A JP1190819 A JP 1190819A JP 19081989 A JP19081989 A JP 19081989A JP 2578370 B2 JP2578370 B2 JP 2578370B2
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taste
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馨 山藤
潔 都甲
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Publication date
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    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
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    • G01N33/0001Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00 by organoleptic means

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、人間の五感を代行できる人工的なセンサ
に係り、とくに味覚という、従来は人工的なセンサでは
代行できないとされた、ヒトの感覚に代るセンサあるい
はトランスジューサと呼ばれる電子素子に関する。
とくに、ここでとりあげる味覚センサは、塩味、酸
味、苦味、甘味といった味の基本とされてきている味の
一つを別個、単独に検知する味のセンサではなく、上記
四つの基本味のほか、これまで誰も提唱してこなかった
うま味をも味の基本に加えた、五元素でなる味覚をヒト
の感覚で検知できるようにした従来にない味覚センサに
関する。
〔従来の技術〕
科学技術の進歩に伴い、人間の五感を代行できる人工
のセンサ(トランスジューサ)が開発されている。現
在、視覚、聴覚、触覚などに対応する、光、音、温度、
圧力などの物理量を検知するセンサ(学術用語として
は、トランスジューサの方が正しい言い方と思うが慣用
されているセンサという語を以下に用いる)があり、中
にはヒトの感覚よりも優れた性能をもつものが実現され
ている。
また、嗅覚、味覚といった化学物質の種類や濃度とい
った化学量を検知するセンサについても、イオン選択性
をもった電界効果形トランジスタ(ISFET)や酵素セン
サといったものが知られている。しかし、これらの化学
量の感覚センサは、いずれも特定の化学物質についての
み応答を示す選択性に、その特徴があるものとされてい
る。ヒトが感ずる匂いとか味とかいう測定対象量は、単
一の物質に由来するものとは限らず、むしろ多種類の物
質が、結合あるいは混合されたものが測定の対象物であ
って、匂いや味を総合的に認識できるセンサを実現する
ことが、ヒトの五感に近づいたセンサを得ることにつな
がると思われる。恐らく、多種類の物質の結合又は混合
したものが作り出す測定対象量は、匂いや味を構成する
それぞれの物質間の相乗作用や、抑制作用といった複合
効果を経由して得られたものであろうと推察できるか
ら、単に、特定物質に選択性をもつセンサを複数種類の
物質ごとに用意して、それらのセンサの各々から得られ
る信号を、四則演算で処理するという手法だけで、匂い
や味のセンサに到達できるとも思えない。
とくに、味覚について考えると、それに対応する味の
センサは、人間の嗜好といった極めて人間性のある要素
が加味された量が測定の対象となっているので、生体に
近い構造をもつセンサを構成する必要があるのではない
かと思われる。
生体で行なわれている味のセンシング機構(味受容機
構)について少しく考察を加える。栗原堅三著『味覚』
東京大学出版会(1978)によれば、味物質による刺激
は、受容細胞を構成している生体膜によって味物質が捉
えられ、それによって生体膜の膜電位が変化し、この変
化が化学的シナプス(ニューロンと呼ばれる神経細胞の
相互間の結合部)を介して、味神経系統を伝搬するイン
パルスを発生する。生体膜は正しく外部情報を内部情報
へと変換するセンサである。
脊椎動物の味感覚器は、味蕾(ミライ)(taste bu
d)と呼ばれ、味細胞が数十個集った構造をしている。
1個の味細胞には、数本の味神経が接続し、味細胞の先
端にはミクロビリーと呼ばれる突起があり、この部分が
味を呈する物質(味物質)を受容する部位といわれてい
る。このミクロビリー膜は、一種の生体膜であり脂質お
よび蛋白質で構成され、生体膜の構造は、極性をもつ脂
質が、疎水性の部分を互に向い合わせた極性二分子の層
でできた膜(第1図)を作っていて、この極性二分子膜
に蛋白質が自由度を持って埋め込まれている。第1図に
おいて円で示した球状部は親水基を、親水基(球状部)
から延びる線は炭化水素の鎖の構造を示している。図で
は鎖が2本延びている脂質分子を示したが、この表現方
法は化学物の設計法として用いられているところであ
り、一般に脂質と呼ばれる分子群を模式図で示すと第25
図のような形で書くことができる。味を知る機構を第2
図に示す。味物質のうち甘味を呈する糖や、アミノ酸
は、埋め込まれた蛋白質が受容体となって、この受容蛋
白質を介して受容され、酸味、塩味などは知質の親水基
(図では○印で模式的に分子構造を示した)に吸着して
生体膜の界面電位を変化させるものと考えられている。
これに対して、苦味を呈する味物質は脂質の疎水性部位
(曲りながら細く延びる線分で模式的に分子構造を示し
てある)に吸着し、この部分の構成を変えること、ある
いは吸着による電荷密度の変化によって、生体膜の界面
電位を変化させると考えられている。
以上の説明の中で、四つの基本的な味として、生理学
者の分類に従って、塩味、酸味、甘味、苦味を挙げた。
ヘニング(Henning)氏によれば、これら四つを四面体
の頂点を極座標とし、四面体の形状によって、味を定量
的に(有形形状で)表現しており、Henning氏の四面体
として知られている。(第3図) しかし、この四つ以外に、五番目の基本的な味とし
て、うま味も評量されるべきであると、最近の知見に従
い発明者らは考えている。
ここで、従来知られている味覚センサに関する実験事
実を概観しておく。公知資料によれば、脂質性分子とし
てジオレイル・フォスフェートが用いられ、この脂質を
多孔質のフィルタとして知られるミリポア膜に固定した
試料が実験に供されていた。
代表的な脂質性分子として知られてきたジオレイル・
フォスフェート(dioleyl phosphate:DOPH)について説
明する。DOPHの構造式は とされている。リンP原子の右側の=0、−OH基は親水
基であって、水中では負に帯電するから、酸味、塩味の
原因である水素イオンH+、金属イオン(例Na+、第2
図)を引き寄せる。リンP原子の左側には親水基と対称
的に2本の炭素鎖が延びている。(第2図) このDOPH分子鎖は塩化カリウムKC1や塩化ナトリウムN
aClなどの塩の水溶液に入れると、塩濃度が低い場合に
は、DOPH分子は油滴状態であり(第4図左側)、塩濃度
を高くすると整列が次第に進み、二分子膜と(第4図右
側のように)なること(一種の相転移)が観察される。
発明者らがDOPHを高分子セルロース系支持材料に吸着
させて作ったDOPHミリポア膜を用いて、五つの基本的な
味が膜電位、膜抵抗、膜の自励発振へ及ぼす影響などに
ついて調査し、実験し、その成果の一部をたとえば次の
刊行物で発表してきた。
膜(MEMBRANE)、12(4)、pp.231〜237(198
7). Proc.of the 22nd Jap.Symp.on Taste and Smell
(1988)pp.213〜216. Agric.Biol.Chem.50(11),pp.2709〜2714(198
6). においては、4基本味〔塩・酸・苦・甘〕それぞれ
に対しDOPHミリポア膜の膜電位・膜抵抗が異なった応答
をすること、さらにDOPHミリポア膜の自励発振が、四つ
の基本的な味に対して各独立の応答をすることを見出し
た。
においては、基本的な味の第五番目としてうま味を
とりあげ、うま味物質としてL−グルタミン酸ナトリウ
ム(MSG)、イノシン5′−1リン酸2ナトリウム塩(I
MP)およびグアノミン5′−1リン酸2ナトリウム(GM
P)をとりあげた。その結果、うま味に対する応答およ
びうま味物質の混合物が相乗的に脂質膜に作用すること
が判明している。ここで相乗効果というのを表式にすれ
ば y=u+γuvと表わされることで、ここで、u:溶液中
のMSGの濃度、v:MSGに添加するIMP又はGMPの濃度、y:二
物質の混合溶液と同じ反応を示すMSG単独溶液の濃度、
γ:相乗作用の強さを定める定数で、ヒトの場合 γ=6.42×104(MSG+IMPの場合) γ=1.48×105(MSG+GMPの場合) と言われている。
DOPHミリポア膜においては γ=6.6×103(MSG+IMP) γ=1.0×104(MSG+GMP) という値が得られており、脂質膜によってヒトの味覚現
象である相乗効果が検出できることが示された。
においては、相乗効果の逆の現象である抑制効果が
塩味物質(KC1)と苦味物質(キニーネ)の混合につい
て、やはりDOPHミリポア膜の膜電位変化が減少すること
により確められた。
このように、初期の研究結果によれば、DOPHを孔の大
きさが5μmのミリポア膜に吸着させて、その膜の自励
発振が、味に対してヒトの味覚に近い応答を示すことを
発見できた。これらの事実はまた、脂質が塩・酸・苦の
3種の味物質だけでなく、甘味・うま味をも検出できる
可能性を示唆している。しかしDOPHミリポア膜は、残念
ながら、産業上の利用のためにはいくつかの解決すべき
問題点を蔵していた。その端的な例は、測定結果の再
現性が得られにくいことであり、長期間安定した状態
で使用できないことであり、単一種の脂質膜から得ら
れる測定量の数には限りがある、結局、測定によって
得られる情報が量も質も乏しいものとなることであっ
た。
〔発明が解決しようとする課題〕
この発明は、味覚という極めて人間的な嗜好と係りの
ある味の評定をするためのセンサを実現しようとするも
のであり、つぎに挙げるような目的をもって創作された
ものである。
(イ)できる限り、ヒトの五感の一つである味覚に近い
機能をもつ、味覚センサを実現する。
(ロ)味覚センサからの出力は電気信号(電流、電圧、
過渡現象、自励発振)としたい。
(ハ)出力は安定にとり出せるものとしたいし、再現性
あるデータの取得を可能としたい。
(ニ)味覚センサは被験体である食品に接触し易い構造
をもつものとしたい。
(ホ)生体では新陳代謝機能があって、繰り返し何回
も、生命ある限り使用できる感覚器官が備えられている
ように、味覚センサは繰り返し使用可能なものとしたい
し、長期間の使用に耐えるものとしたい。
(ヘ)基本的な味として、塩味、酸味、甘味、苦味が言
われるが、この四つの基本的な味に加えて、うま味も評
定できる味覚センサを実現したい。まさに、このところ
に従来技術では見られない本願発明の課題がある。
(ト)基本的な味についての出力の単純な加算ではな
く、基本的な味の相乗効果や抑制効果といった複合効果
を検出できる味覚センサを実現したい。
〔課題を解決するための手段〕
この発明では、前項に列挙した目的を達成するため
に、大略つぎのような手段を採用して、できるだけヒト
という生体に近い味覚センサを実現する。
(A)脂質といわれる素材の膜を形成し、膜のもつ電気
的特性(たとえば膜電位、導電率、過渡現象、自励発振
の振幅または周波数)を検出するようにする。
[対応する課題:(イ)(ロ)(ト) [対応する請求項:(1)(2)(3)(4)(5)
(6)(7) (B)脂質の膜は、その表面がマトリクス構造をもつ高
分子材料と混ぜて形成する。
[対応する課題:(イ)(ハ)(ニ)(ホ) [対応する請求項:(1)(2)(5)(7) (C)脂質性の分子は長く伸びる分子群で成る疎水性の
部位と、長く伸びた分子群の一端にある親水性部位とで
成るが、高分子材料の表面マトリクス中では、少なくと
も一部の親水基が表面に露出するような形で配列するよ
うな構造とする。
[対応する課題:(イ)(ハ)(ホ) [対応する請求項:(1)(2)(3)(4)(5)
(6)(7)(8) (D)脂質性分子の疎水基側に接触して電極を取り付け
る。電極と脂質性分子を含む膜との接触部分には、特殊
な緩衝材を置くとよい場合もある。
[対応する課題:(イ)(ロ)(ハ)(ニ) [対応する請求項:(3)(4)(5)(6) (E)脂質性分子の種類及び組成比を変えることによっ
て、基本的な味(うま味も含む)への対応を変えられる
構成とする。いくつかの実施例を後に説明する。
また、複数種類の脂質性分子を用いることにより、検
出する電気信号を多チャンネルとし、各信号間の相関演
算、多数決処理、相乗効果処理、抑制効果処理などを可
能にする。
[対応する課題:(イ)(ロ)(ヘ)(ト) [対応する請求項:(2)(3)(4)(5)(7) (F)電解質の水溶液を用いることにより、脂質性分子
のマトリクス内での配向を整頓し、味覚センサの感度を
増大できるようにする。
[対応する課題:(ハ)(ホ) [対応する請求項:(8) (G)塩の水溶液を用いて、脂質膜を再生し、あるいは
保存をすることができるようにする。
[対応する課題:(ハ)(ホ) [対応する請求項:(9) (H)脂質としては、リン酸基、アミノ基、アンモニウ
ム基、カルボキシル基、もしくは水酸基のような親水性
部位と飽和炭化水素基とでなる分子を採用する。
[対応する課題:(イ)(ハ)(ト) [対応する請求項:(1)(2)(3)(4)(5) 〔実施例(脂質膜について)〕 発明に用いられる脂質性物質の例を第1表にまとめ
た。表には11種類の脂質性分子を示してある。
これらの脂質性物質を単体で、あるいは他と混合して
脂質膜を形成し、実験した。
これらの脂質性物質の分子構造上の特徴は、第1図、
第2図の模式図に示したように、原子配列が長手方向に
延びる疎水性部位と、その長く延びた原子群の一端部又
はその近くに、親水性部位がある点を指摘できる。しか
も、親水性部位として、リン酸基、アミノ基、カルボキ
シル基、水酸基などが存在する。第1表の脂質は、生物
の生体膜中の主要な官能基を網羅している。
請求項第1に対応する脂質膜3の実施例の模式図を、
化学物の設計法で使われている表現方法で表したものが
第26図である。脂質性分子のうち円で示した球状部は親
水基aすなわち親水性部位aであり、それから原子配列
が長く延びる炭化水素の鎖構造b(たとえばアルキル
基)がある。図ではいずれの場合も2本の鎖が延びて一
つの分子を表しており、全体で分子群を構成している。
この炭化水素の鎖の部分は、疎水性部位bである。この
ような脂質性分子群31が、膜部材32の表面のマトリクス
33(表面の構造、平面的なひろがりをもったミクロな構
造)の中及びマトリクス内部に溶け込ませた形(たとえ
ば第26図の31′)で収容されている。その収容のされ方
は、親水性部位が表面に配列するようなものとなってお
り、その様子は第1図及び第2図に模式的に示したもの
に近くなっている。
これらをいくつかの割合で混合した実験では、第2表
に示すようにリン脂質であるジオクチルフォスフェート
に、別の成分αを加えた脂質を作った。最右欄には、こ
れらの試料の略称を示した。
脂質を支持するマトリクスを用意しなければならな
い。容易に入手でき、取扱いも簡単な、熱可塑性のポリ
塩化ビニル[CH2CHCl]n;PVCを用いることとした。PVC
は、テトラヒドロフラン(THF)、ニトロベンゼン、シ
クロヘキサノン等に溶け、可塑剤との混合比を変えるこ
とにより、軟質にも、硬質にもすることができるから、
用途に応じて使いわけができる便利さがある上に、品質
の安定性、成形の容易さも特徴とされる。
PVC、可塑剤、脂質を概ね2:3:1の重量比で混合する。
可塑剤を添加しないと出来上りの脂質膜が白濁していた
り、不均一になったりして好ましくない。また、脂質・
可塑剤の選び方、混合する比率、混合の仕方によって
も、出来上がった脂質膜に白濁や不均一を生ずることが
ある。可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)、ジオ
クチルフェニルフォスフォネート(DOPP)あるいは、リ
ン酸トリクレシル(TCP)を用い、第1表または第2表
の脂質とPVCとを混合したものを約400mgを、THF10ccに
溶解し、平底の容器(たとえば85mmφのシャーレ)に移
し、それを均一な加熱された板上で約30℃に保つこと約
2時間、THFを揮散させて、脂質膜を形成した。こうし
て得られた脂質膜の厚さはほぼ200μmであった。
THFを揮散させるには、室温で減圧しても目的を達成
することはできるが、多少の加熱をするほうが、良い膜
が得られるようである。
脂質と可塑剤は、PVCというプラスチックの表面マト
リクスの組織中に固定されていると考えられる。この脂
質膜の約10m mole/の食塩水、あるいは塩化カリウム
水溶液などの電解質溶液に1分間ほど浸すと、脂質のも
つ親水基が表面に整列した分子配列が安定した状態で得
られ、味覚センサとしての機能を果たすものとなる。ま
た、上記の電解質溶液は、味覚センサ用の脂質膜を保存
するのに適しており、空気中に放置したものでは日のオ
ーダーで劣化がみられるのに対し、この溶液につけてお
いた脂質膜は年のオーダーでも劣化が認められていな
い。
また、空気中に放置して劣化した脂質膜を再生させる
機能もこの溶液には認められた。
なお、脂質を固定するマトリクスを作る材料として、
前記PVCに代って、第3表に掲げる物質を試みたが、味
覚センサとしては類似の電気的特性を得ている。
こうして出来上がった脂質膜を約10m mole/の濃度
の塩化カリウムや塩化ナトリウムなどのイオンを形成し
易い水溶液に数分間浸すと、PVCなどのマトリクスに固
定された脂質性分子群の親水基が少なくとも一部は表面
に並ぶ(水溶液に向かって並ぶ)ようで、味覚センサと
しての機能、感度が向上することが発見された。
〔実施例(味覚センサ、電極)〕 脂質膜を用いて、実験用の味覚センサを構成する。第
5図は実験用に作った味覚センサ用電極の模式図(断面
図)である。基材1はアクリル樹脂の厚さ2mmの板であ
り、これに電極2をとりつける。
図示の例では、基材1に0.5mmφの孔を貫通し、それ
に銀の丸棒を差し込んだ。電極としては金、白金を用い
るのもよいが高価である。銀や銅を用いるときには、脂
質膜3と接触する部分に、不分極性の分子、イオン化す
る分子層など用途(自励振動を観察するか、あるいは膜
電位や導電率を測定するかの目的による)に応じて、一
種の緩衝層(buffer層)4を設けておくとよい。電極2
は基材1の平面上に印刷配線しておくのもよい。
脂質膜3を基材1上に装着する際は、電極2と図示の
例では緩衝層4を介して接触するように張りつけ、PVC
を10%溶解したTHFでアクリル板に接着した後、THFを揮
散させて、第5図のような構造を作った。
第6図には、別な実験用の味覚センサ用電極を示して
ある。第6図(a)は正面図で、この場合、多チャンネ
ルのアレイ電極のうち三つのセンサが示してある。第5
図及び第6図はいずれもアレイ電極のうちの一部であ
り、実際には異なる応答特性を持つ脂質膜を多数並列に
ならべることにより、膜から取り出せる信号を増やし、
人間の味覚を再現できるように味覚情報として十分な量
をセンサから得ることができるようにする必要がある。
なお、第6図(b)は味覚センサの断面図であり緩衝
層4′として、ここでは100m mole/の塩化カリウムKC
lを寒天の中に加えた層を採用している。この緩衝層
は、塩化銀の周囲のCl-濃度を一定に保ち、また膜に対
し塩濃度勾配をかけることができ、生体系により近い状
態に膜をおくことができる。この緩衝層は、被測定溶液
中のイオンが電極である金属に到達し、電極と膜間の電
位を変動させるのを抑制する。
〔実施例(測定系及び測定結果について)〕
第7図に、味覚センサから電気信号をとり出すための
測定系の基本構成10を示す。味覚物質の水溶液を作り、
それを被測定溶液11とし、ビーカーのような容器12に入
れる。味覚物質としては、塩味を代表する塩化ナトリウ
ムNaCl、酸味を代表する塩化水素HCl、苦味を代表する
塩酸キニーネ、甘味を代表するしょ糖の四つの基本的な
味と、うま味を代表するL−グルタミン酸ナトリウム
(モノ・ソジウム・グルタメート,MSG)を用いることと
した。また別にコーヒーや、酒類についても被測定物質
に加えた(後述する)。被測定溶液中に、前項で述べた
ような、アクリル板上に脂質膜と電極とを配置して作っ
た味覚センサアレイ13を入れた。使用前に、塩化カリウ
ム10m mole/水溶液で電極電位を安定化した。図中、1
4−1、……14−8は各々の脂質膜を黒点で示したもの
である。
測定の基準となる電位を発生する電極として参照電極
15を用意し、それを被測定溶液に入れる。味覚センサア
レイ13と参照電極15とは所定の距離を隔てて設置する。
参照電極15の表面には、緩衝層16として、塩化カリウム
100m mole/を寒天で固化したもので覆ってあるから、
結局、電極系は 銀2|塩化銀4|脂質膜3(14)|被測定溶液12|緩衝層
(塩化カリウム100m mole/)16|塩化銀4|銀2という
構成となっている。
脂質膜からの電気信号は、図では8チャンネルの信号
となり、リード線17−1、……17−8によって……それ
ぞれバッファ増幅器19−1、……、19−8に導かれる。
バッファ増幅器19の各出力は、アナログスイッチ(8チ
ャンネル)20で選択されてA/D変換器21に加えられる。
参照電極15からの電気信号もリード線18を介してA/D変
換器21に加えられ、膜からこの電位との差をディジタル
信号に変換する。このディジタル信号はマイクロコンピ
ュータ22で適当に処理され、またX−Yレコーダ23で表
示される。測定系は、膜電位を測定する系を示したか
ら、特に、電位の設定には配慮してあり、被測定溶液を
入れる部分は導電性材料で囲って接地電位24を得るよう
にしている。
脂質膜の導電率を測定する場合、自励発振を測定する
場合の測定系も、第7図に準じて構成できる。膜電位の
測定が最も基本的で、かつ、重要と思わるたので例示
し、他の測定系の記載は省略する。
〔測定結果(a) 静止膜電位〕
まず、脂質膜を用いたセンサの電位が定常的な値を示
すかどうか、静止膜電位の測定を行った。第7図に示し
た測定系において、被測定溶液を、10m mole/の塩化
ナトリウム水溶液とし、5分毎に2時間測定した。第1
表、第2表に示したいずれの脂質性分子を用いた脂質膜
についても10分のオーダーで、安定した電位が得られる
ことが判明した。従って、安定した信号が得られること
が実証された。
安定まで10分台の時間−長い場合でも30分で安定し、
早いものでは5分位−を要するのは、バッファ増幅器19
のバイアス電流がわずか流れていて、それが安定するま
での経過時間であったとみている。いずれにしても、脂
質膜に本質的に由来するものとは思われない。
〔測定結果(b)各種味物質に対する電位応答(I)〕
先に挙げた五つの基本味物質に対する、各種の脂質膜
の電位応答を調べた。
0.01m mole/の各種味物質の水溶液から始め、10分
後の電位差をまず測定し、その後は次第に高濃度の味物
質を滴下して、濃度を上昇させ、それぞれ、0.01、0.0
3、0.1、0.3、1.3、3、10、30、100m mole/毎に、滴
下後5分経過(安定後)において、参照電極との電位差
を測定した。ただし、苦味物質の塩酸キニーネについて
は、溶解度の関係から10m mole/を限度とした。結果
を第8図乃至第15図に示す。それぞれの図で味覚センサ
として使用した脂質性分子は次の通りである。
可塑剤はどれもリン酸トリクレシル(TCP)を用い
た。
第8図:オレイン酸 第9図:DOAB 第10図:デシルアルコール 第11図:n−オクタデシルクロライド 第12図:ジオクチルフォスフェート 第13図:コレステロール 第14図:TOMA 第15図:オレイルアミン 図中、線の相違は各種味物質の相違に対応する。縦軸
は膜電位をmV単位で、横軸は味物質の濃度を示す。
第8図乃至第15図の測定結果を別な形で表現したもの
が、第16図及び第17図である。両者は棒グラフか横方向
を線で結んだかの違いがあるだけで、縦軸は、膜電位を
mV単位で、横軸方向には、脂質性分子の種類を並べた。
棒グラフは図中に表示した各種味物質について、人が味
を容易に識別できる程度の濃度(濃度は図中に示す)の
ところの電位を、第8図乃至第15図からとって表したも
のである。この図により、脂質膜アレイの出力が5つの
基本味に対して示すパターンが基本味ごとに異なってい
ることがわかる。
この結果から判明する特徴を列挙すれば、 (イ)n−オクタデシルクロライドとデシルアルコール
は似た応答をする。
(ロ)DOABもデシルアルコールに近いようである。
(ハ)オレイン酸もデシルアルコールに似ている。
(ニ)結局、炭素原子につながっている極性基をもった
脂質の振舞が類似している。
(ホ)TOMAについてみると、酸味、塩味、苦味で同じ曲
線であり、これらの味物質がいずれもCl-をもっている
ことから、Cl-イオンのセンサとなっている。
(ヘ)オレイルアミンは、他の脂質膜とは異なり、苦味
と酸味が互いに逆の極性の応答をしている点に大きな特
徴がある。
(ト)ジオクチルフォスフェートは、リン酸基を含み、
かつ、不飽和炭素結合を含み、先行技術で説明したDOPH
と似た構造で、苦味に鋭敏であるなど、DOPHと似た応答
を示す。また酸味に対して、塩味よりも応答が大きいこ
とは、H+イオンとの作用を示唆していると思われる。
逆に、味物質の側から脂質膜をみると、 (イ)酸味と苦味は、各脂質に対する関係が似ている
(第17図の□印と◇印)。
酸味と苦味の区別は、オレイルアミンの極性の相違を
利用すると可能となる。
(ロ)うま味と甘味とは、ジオクチルフォスフェートを
除いた脂質膜で、同じ傾向の変化であり、ヒトの舌と似
た応答が観測される。
(ニ)甘味と、酸味もしくは塩味とは極性のパターンが
逆転している。甘いものがおいしいとヒトが感じる現象
を、脂質膜も備えていると見える。
〔測定結果(c) 各味物質に対する電位応答(II)〕
ここで第2表に示した脂質膜、すなわちジオクチルフ
ォスフェート+αなる混合脂質膜について行った実験に
ついて、その結果を要約しておく。
(イ)NaCl NaCl応答は、ジオクチルフォスフェート単独の膜が最
も強く、コレステロールの混入により抑制される。ま
た、DOAB、レシチンをそれぞれ単独に混入したものはほ
とんど変化しなかったが、両者を同時に混入したものは
応答が小さくなる。応答の最大値はD−100、最小値は1
0m mole/のときC−10、100m mole/のとC.L−20で
ある。
(ロ)HCl HCl応答は、レシチンを混入したものが最も強く、コ
レステロールの混入により抑制される。DOABの混入によ
る応答への影響はほとんど見られない。応答の最大値は
L−10、最小値はC−20である。
(ハ)キニーネ キニーネ応答は、コレステロールを混入したものが強
いが、これにDOABまたはレシチンが混入すると逆に抑制
される。特にレシチンの場合はレシチンのみを混入した
ものには変化がないのに、コレステロールと混合するこ
とによって顕著な抑制効果を示す。またDOABとレシチン
が含まれると同様に応答が抑制される。応答の最大値は
0.1m mole/のときにC−20、1m mole/のときD−10
0、最小値はN.L−15である。
(ニ)しょ糖 しょ糖応答は、DOABを混入すると(N−5)応答が強
くなり、特にコレステロールと混合すると(NC−15)こ
の効果が顕著に現われる。またレシチンを混入すると
(C.L−20)応答が抑制される。応答の最大値はN.C−1
5、最小値はC.L−20である。
以上のように、呈味物質によって脂質膜の応答に大き
な相違が存在することが判る。
ここで、各脂質膜ごとの味応答に対する類似性を調べ
るため、多変量解析の一手法であるクラスター分析によ
る解析を行う。8種類の脂質膜を個体と考え、各膜の呈
味物質応答が各個体の持つ特性と考える。使用したデー
タはNaCl・10m mole/、HCl・0.1m mole/、キニーネ
・0.1m mole/しょ糖・1m mole/の場合の各膜の電位
変化である。固体間の距離は標準化ユークリッド距離を
とり、クラスター間の距離としては最短距離法を用い
た。解析により得られたデンドログラムを第18図に示
す。
類似するものほど早い段階でまとまり、クラスターを
形成していく様子が判る。図から脂質膜は大きくAグル
ープとBグループとに分かれ、更にAグループがCグル
ープとDグループに分かれていることが判る。Bグルー
プはコレステロールを混入した脂質膜のうち、C.L−20
以外の膜により構成されており、Aグループにはその他
の脂質膜が含まれている。このことはコレステロールが
大きな疎水基を持っているため膜構造になんらかの変化
が起こり、そのため他の脂質膜とは違った特性を持って
いると考えられる。また同様の事がDグループについて
もいえ、レシチンによる影響を受けている。Cグループ
にはD−100とN−5が含まれており、この両者の特性
は味応答に対して類似していることが判る。つまり、DO
ABの影響は他の脂質成分の特性に吸収されている。この
ことはN.L−15、N.C−15についてもいえる。以上より、
脂質膜はレシチン、コレステロールによりその特性を大
きく変えることが判る。しかし、測定結果から考察する
と、DOABを混入した膜は甘味に応答しやすいなどD−10
0とN−5では味応答特性に違いが認められる。すなわ
ち、各々の脂質の混入により脂質膜の特性が十分変化
し、なおかつ混入された脂質により特性が一定してい
る。クラスター分析ではこの様な違いまでは表現されて
いない。
〔測定結果(d) 嗜好飲料に対する電位応答(I)〕
第19図に各種類のコーヒーに対する膜電位応答の結果
を示す。横軸は第2表に示した脂質膜を順に並べてあ
り、縦軸は10m mole/KCl溶液における電位を基準にし
てそこからの電位変化を規格化してとっている。N−
5、C−20、C−10では違いが見られるものの、全体的
な応答パターンを見てみると、キニーネの応答パターン
に似ているようである。
この図は、応答パターンの大きさを評価するよりパタ
ーンの違いそのものが味に対応するという考えの元に、
データを8次元ベクトルと考え、ベクトル長を1に規格
化した応答パターンについて考察をするために、規格化
した応答パターンである。また比較のため苦味を代表す
るキニーネについても規格化し、グラフ上に載せてい
る。
コーヒーとキニーネの応答パターンを比較してみる
と、N−5、C−10、C−20を除いてキニーネの応答パ
ターンに非常に良く似ており、これらの点ではコーヒー
は苦味が主な味であると判別することができる。コーヒ
ーの苦味は主にカフェインとタンニンによりもたらさ
れ、キニーネによるものではないにもかかわらず、苦味
物質であるキニーネと同じ応答パターンを示すことは非
常に興味深い。ここで、N−5、C−10、C−20に対す
る応答がキニーネとは異なっているのは、カフェイン、
タンニンといったキニーネとは違った苦味物質によるも
のであるか、あるいはコーヒーには苦味物質のみでなく
他の味物質が混在していることを示す。レギュラーコー
ヒー(ブルーマウンテン、モカ、ブラジル)とインスタ
ントコーヒーを比較してみると、インスタントコーヒー
はN−5、C.L−20で、レギュラーコーヒーよりも変化
が大きく、C−20、N.C−15では変化が小さい。この相
違によってまずレギュラーコーヒーとインスタントコー
ヒーを判別できそうである。次に、レギュラーコーヒー
の3種類について見てみると、ブルーマウンテンはD−
100では他の2種類と比べて大きく変化しているのに対
して、L−10では変化が小さいという特徴を持つ。この
特徴は、塩味に対するものと似ている。モカとブラジル
コーヒーは共にL−10に対して強く応答し、これは酸味
の特徴を示しているが、D−100に対してブラジルコー
ヒーのほうが変化が小さくこの点で両者を判別できる。
以上のようにレギュラーコーヒーについても応答パター
ンに相違が見られる。この相違が直接人間の味の相違に
つながるかどうかは不明であるが、少なくとも味に対し
てなんらかの意味を持つと考えられる。
〔測定結果(e) 嗜好飲料に対する電位応答(II)〕
第20図に酒類に対する膜電位応答の結果を示す。横軸
及び縦軸は第19図と同様にとってある。この膜応答につ
いてもコーヒーの時と同じように規格化してある。第20
図の応答パターンはDOABを含む脂質膜に対して強く応答
し、レシチンを含む脂質膜に対しては応答を抑えるとい
う点で、しょ糖の応答パターンと類似している。特に日
本酒においてその現象が顕著に現われている。これは、
今回使用した日本酒には醸造用糖類が含まれていたため
と考えられる。また、全般的に同一の応答パターンを示
しているのは、アルコールによる効果が強いためであろ
う。ビールについて見てみると、若干の応答パターンの
違い、特にC−10について違いが見られる。ワインの白
と赤の間の差は小さい。また、日本酒もワイン、ビール
とはパターンを異にしている。今回の測定ではワインと
ビールを室温にし、更にビールについては炭酸を抜いて
いるためそれぞれ本来の味とは異なるであろうが、ワイ
ン・日本酒・ビールについてそれぞれ応答パターンに相
違が見られることから、この相違を利用して味の識別及
び種類の弁別が可能となると思われる。
〔測定結果(f) 各味物質に対する過渡応答〕
第2表に掲げた脂質膜のうち、4つの試料(D−10
0、N−5、C−10、L−10)について、それぞれの過
渡応答を観測した。結果は第21図乃至第24図に示す。横
軸は時間を、縦軸は膜電位を示す。味物質及びその水溶
液濃度を各観測波形中に示してある。図の番号と試料と
の関係は、 第21図:D−100 第22図:N−5 第23図:C−10 第24図:L−10の各脂質膜(第2表参照)であり、図中、
a、b、c、dはそれぞれ、塩味、酸味、苦味、甘味に
対応している。
濃度が低濃度から高濃度へ変化すると膜電位は急激に
脱分極方向へ変化し、5分ほどで一定値に落ち着く。今
回の測定系では被測定溶液に高濃度の溶液を滴下するこ
とにより濃度を変化させたため、極初期の変化が呈味物
質のみに対する特有の過渡応答とは考えにくい。しかし
ながら、そのような極初期の応答を除けば、各種呈味物
質に対する応答パターンには明らかな相違がある。NaCl
は、いずれの膜においても同じ様な速い変化を示す。HC
lは、C−10、L−10においては初期の速い変化に続き
緩やかな変化が見られる。キニーネは、C−10を除けば
初期の立ち上がりに続く変化は緩やかである。しょ糖
も、D−100以外ではゆっくりとした変化を示してい
る。このような応答速度等のダイナミックな変化は、呈
味物質に関する情報を界面電位変化の時間軸に織り込ん
だものとも考えることが出来る。従って今回のアレイ電
極からは、チャンネルの数以上の情報を得ることが可能
である。
〔発明の効果〕
以上説明したように本願発明の人の感覚に近い五元の
基本味を検知できる味覚センサによれば、脂質といわれ
る味受容膜の主要構成成分を素材として膜を形成し、膜
のもつ電気的特性を検出するようにしたので、ヒトの味
覚に近い機能をもつことができる。
また、脂質の膜は、その表面がマトリックス構造をも
つ高分子材料と混ぜて形成するようにしたので、味覚セ
ンサは被験体である食品に接触し易い構造とすることが
できる上、味覚センサからの出力信号は安定で、再現性
あるデータを得ることができ、かつ、繰り返し使用可能
でしかも長時間の使用に耐えることができる。
更に、脂質性分子の種類が変えられるようにしたの
で、四つの基本的な味である塩味、酸味、甘味、苦味に
加えて、うま味も評定することができる。
更にまた、単一種類でも味の複合効果を検出可能であ
った脂質膜を、複数種類の脂質性分子を用いることによ
り、検出する電気信号を多チャンネルとしたので、基本
的な味についての出力の単純な加算ではなく、基本的な
味の相乗効果や抑制効果といった複合効果を加味した味
も検出することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図、第2図はミクロビリー膜の模式図、第3図はヘ
ニング氏の四面体の概念図、第4図はDOPHの相転移の模
式図、第5図は本発明の一実施例に係わる味覚センサの
模式図(断面図)、第6図(a)(b)はそれぞれ本発
明の他の実施例に係わる味覚センサの模式図の正面図と
断面図、第7図は膜電位の測定回路、第8図乃至第15図
は基本味物質に対する各種の脂質膜の電位応答特性図で
あり、第16図、第17図は上記第8図乃至第15図に示した
各種脂質膜の電位応答特性を別の表示形式で表現した基
本味応答特性図、第18図は解析により得られたデンドロ
グラム、第19図は各種コーヒーに対する膜電位応答パタ
ーンであり、第20図は酒類に対する膜電位応答パターン
であり、第21図(a)(b)(c)(d)乃至第24図
(a)(b)(c)(d)はそれぞれ各種脂質膜につい
ての塩味、酸味、苦味、甘味に対応する過渡応答特性図
である。 第25図は脂質性分子の記述のための模式図を、また、第
26図は本発明の味覚センサ用の脂質膜の構造の模式図を
示す。 1……基材、2……電極、3……脂質膜、4、4′……
緩衝層、5……リード線、10……膜電位の測定系の基本
構成、11……被測定溶液、12……容器、13……味覚セン
サアレイ、14−1〜14−8……各々の脂質膜(黒点で示
す)、15……参照電極、16……緩衝層、17−1〜17−8
……リード線、18……リード線、19−1〜19−8……バ
ッファ増幅器、20……アナログスイッチ、21……A/D変
換器、22……マイクロコンピュータ、23……X−Yレコ
ーダ、24……接地電位。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 都甲 潔 福岡県福岡市東区美和台1丁目25番2号 (72)発明者 林 健司 福岡県福岡市西区大字田尻2412番地 審査官 能美 知康 (56)参考文献 特開 昭63−222248(JP,A) 特開 昭62−251659(JP,A) 特開 平2−216445(JP,A) 特開 平2−221853(JP,A)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原子配列が長手方向に延在する疎水性部位
    と、該長手方向に延在する原子配列の一部分に存在する
    親水性部位とを有する脂質性分子群と、該脂質性分子群
    を収容し得るマトリクスを表面に有する膜とから構成さ
    れる味覚センサ用の脂質膜であって、 少くとも前記脂質性分子群の一部は前記膜のマトリクス
    内に、その親水性部位が表面に配列するように収容され
    ている構造を有して、塩味、酸味、苦味、甘味及びうま
    味のうち少くとも二つの味を検知可能とされたことを特
    徴とする味覚センサ用の脂質膜。
  2. 【請求項2】前記脂質性分子群が、リン酸基、アミノ
    基、アンモニウム基、水酸基、及びカルボキシル基のう
    ち少くとも一つと飽和炭化水素基とを含むことを特徴と
    する請求項1記載の味覚センサ用の脂質膜。
  3. 【請求項3】基材(1)と;該基材に設けられた電極
    と;その裏面の少くとも一部を該電極に接触し、その表
    面を外部に露出して、該基材に取り付けられた請求項1
    又は請求項2の味覚センサ用の脂質膜とから構成される
    味覚センサ。
  4. 【請求項4】基材(1)と;該基材に設けられた複数の
    導電性の電極(2,2)と;それぞれの該電極とその裏面
    の少くとも一部を接触し、その表面をそれぞれ外部に露
    出して、該基材に取り付けられた請求項1、又は請求項
    2記載の複数の味覚センサ用の脂質膜とから構成される
    味覚センサ。
  5. 【請求項5】前記複数の味覚センサ用の脂質膜のうち少
    くとも二つは種類と組成比が互に異なる脂質性分子群で
    成り、二以上の異なる味覚信号を出力する請求項4記載
    の味覚センサ。
  6. 【請求項6】請求項3、4または5において、前記電極
    の少くとも一つは前記味覚センサ用の脂質膜と接触する
    緩衝層を備えていることを特徴とする請求項3、4また
    は5記載の味覚センサ。
  7. 【請求項7】原子配列が長手方向に延在する疎水性部位
    と、該長手方向に延在する原子配列の一部分に存在する
    親水性部位とを有する脂質材と、マトリクスを表面に形
    成して膜状の固体に加工される高分子材料と、該高分子
    材料用の必要な可塑剤とを所定の割合に混合した素材を
    得る段階と、該所定の割合で混合した素材に、前記高分
    子材料の溶剤を加えて実質的に均質になるよう溶解して
    後、浅く広がった液面を形成する段階と、該浅く広がっ
    た液面から前記溶剤を揮発させる段階とから成る請求項
    1又は請求項2記載の味覚センサ用の脂質膜の製造方
    法。
  8. 【請求項8】請求項1又は請求項2の味覚センサ用の脂
    質膜を、少くとも1種類の電解質の水溶液中に浸すこと
    を特徴とする味覚センサ用の脂質膜の感度改善方法。
  9. 【請求項9】請求項1又は請求項2の味覚センサ用の脂
    質膜を、電解質の水溶液中に浸すことを特徴とする味覚
    センサ用の脂質膜の保存方法。
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