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JP2024077197A - 筆記具用水中油滴型インク組成物 - Google Patents

筆記具用水中油滴型インク組成物 Download PDF

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JP2024077197A
JP2024077197A JP2022189121A JP2022189121A JP2024077197A JP 2024077197 A JP2024077197 A JP 2024077197A JP 2022189121 A JP2022189121 A JP 2022189121A JP 2022189121 A JP2022189121 A JP 2022189121A JP 2024077197 A JP2024077197 A JP 2024077197A
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oil
less
oil phase
mass
ink composition
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English (en)
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孝介 小椋
Kosuke Ogura
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Mitsubishi Pencil Co Ltd
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Mitsubishi Pencil Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明では、低温環境において長期間保存された後においても、良好な筆記性が維持できる、筆記具用水性インク組成物を提供する。【解決手段】本発明の筆記具用水性インク組成物は、水相、及び前記水相に対して水中油滴型エマルションの状態で分散している油相を有し、前記油相及び前記水相の少なくとも一方が着色材を含み、かつ前記油相が、分岐鎖を有する炭素数8以上の特定の第一級アルコール又は脂肪酸を含有している。【選択図】なし

Description

本発明は、筆記具用水性インク組成物に関する。
水性ボールペンの特徴として、筆記感が軽いことが挙げられるが、一方でガリツキを感じることも多い。また、着色剤として用いられる水溶性染料は、着色力や調色の自由度は高いという利点を有するが、耐候性が低く、描線に水が付着した場合には、描線がブリードしやすいという問題がある。
油性ボールペンは筆記時のガリツキ感がなく、描線にじみが少ないという利点を有するが、重い書き味になる場合が多い。また、着色剤として用いられる油溶性染料は、耐水性を有しており、上記のような描線に水が付着した場合のブリードが生じない。
近年、油性インクの粘度を低下させて書き味を向上させた油性ボールペンも開発されている。しかし、低粘度の油性インクは筆記流出量が多くなるので、描線乾燥性が悪化し、紙裏面へのインクの裏抜け、ボテの原因となる。
このような課題に対し、水相の書き味の良さと油溶性染料の耐水性を両立させることができる手段として、インク性状が水中油滴型のエマルション(O/Wエマルション)である水性ボールペン用インク組成物が開示されている。
特許文献1では、水相に対して油相が、水中油滴型エマルションの状態で含まれる水性ボールペン用インク組成物であって、前記油相又は前記水相の少なくとも一方が着色剤を含み、前記油相が、当該油相を構成する成分中、水酸基を有する脂肪酸同士が縮合もしくは水酸基を有する脂肪酸と水酸基を有しない脂肪酸とが縮合した脂肪酸オリゴマーであるエストリド、又は当該エストリドとアルコールとのエステルを含むことを特徴とする水性ボールペン用インク組成物が開示されている。
特許文献2では、水相に対して油相が、水中油滴型エマルションの状態で含まれる水性ボールペン用インク組成物であって、前記油相又は前記油相及び前記水相が着色剤を含み、前記油相が、当該油相を構成する成分中、炭素数6~22の脂肪酸を含むことを特徴とする水性ボールペン用インク組成物が開示されている。
特開2013-221051号公報 特開2013-203790号公報
特許文献1及び2の水中油滴型インクでは、水性インク及び油性インクの長所を兼ね備えたものであったが、低温環境において長期間保存された後において、筆記のカスレが生じやすくなることがあった。
そこで、本発明では、低温環境において長期間保存された後においても、良好な筆記性が維持できる、筆記具用水性インク組成物を提供する。
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉水相、及び前記水相に対して水中油滴型エマルションの状態で分散している油相を有し、
前記油相及び前記水相の少なくとも一方が着色材を含み、かつ
前記油相が、以下の(a)又は(b)の一般式を有する、分岐鎖を有する炭素数8以上の第一級アルコール又は脂肪酸を含有している、
筆記具用水性インク組成物:
Figure 2024077197000001
(式中、R及びRは、それぞれ直鎖又は分岐のアルキル基であり、Rは、水素又は直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R、R及びRの炭素数が、合計で6以上である。)
〈態様2〉前記油相におけるアルコール又は脂肪酸の炭素数が、22以下である、態様1に記載の筆記具用水性インク組成物。
〈態様3〉前記油相におけるアルコール又は脂肪酸の前記分岐鎖のうちの少なくとも2つが、炭素数4以上のアルキル基である、態様1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物。
〈態様4〉温度25℃、剪断速度38s-1の条件で測定した、前記油相の粘度が、100~5000mPa・sである、態様1~3のいずれか一項に記載の筆記具用水性インク組成物。
〈態様5〉態様1~4のいずれか一項に記載の筆記具用水性インク組成物を有するインク貯蔵部を含む、筆記具。
〈態様6〉ボールペンである、態様5に記載の筆記具。
本発明によれば、筆記感及び高荷重での筆記性に悪影響を生じさせることなく、低温環境において長期間保存された後においても、良好な筆記性が維持できる、筆記具用水性インク組成物を提供することができる。
《筆記具用水性インク組成物》
本発明の筆記具用水性インク組成物は、
水相、及び前記水相に対して水中油滴型エマルションの状態で分散している油相を有し、
前記油相又は前記水相の少なくとも一方が着色材を含み、かつ
前記油相が、以下の(a)又は(b)の一般式を有する、分岐鎖を有する炭素数8以上の第一級アルコール又は脂肪酸を含有している:
Figure 2024077197000002
(式中、R及びRは、それぞれ直鎖又は分岐のアルキル基であり、Rは、水素又は直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R、R及びRの炭素数が、合計で6以上である。)
従来の水中油滴型インクでは、水性インク及び油性インクの長所を兼ね備えたものであったが、低温環境において長期間保存された後において、筆記のカスレが生じやすくなることがあった。
本発明者らは、このカスレの原因が、この水中油滴型インクを低温環境において保存した際に、油相の粒子が凍結し、これらが融解した際に、油相の粒子同士が合一し、それによって、油相の粒子が粗大化し、ペン先で詰まることにあることを見出した。また、本発明者らは、この油相の粒子の凍結の際に、油相成分が結晶化することによって、粒子の合一が促進されており、したがってこの油相の粒子の凍結の際に、油相成分が結晶化しないようにすることによって、粒子の合一を抑制できることを見いだした。
上記のカスレは、油相の粘度を調節して抑制できることがあるが、その場合には、滑らかな筆記感及び/又は高荷重での筆記性が損なわれることがあった。
これに対し、本発明者らは、油相に特定のアルコール又は脂肪酸を含有させることにより、油相の粒子が凍結した場合にも、油相成分が結晶化するのを抑制し、それによって油相の粒子を融解した際にも、油相の粒子同士の合一抑制できることを見出した。その結果、カスレを抑制しつつ、滑らかな筆記感及び高荷重での良好な筆記性に悪影響を生じさせることなく、低温環境において長期間保存された後においても、良好な筆記性が維持できることとなる。
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
〈油相〉
油相は、水相に対して水中油滴型エマルションの状態で分散しており、かつ分岐鎖を有する炭素数8以上のアルコール又は脂肪酸を含有している。また、油相は、随意の酸素除去剤を含有していてよい。
油相は、油相成分を含有していてよい。油相成分としては、例えば水酸基を有する脂肪酸同士が縮合若しくは水酸基を有する脂肪酸と水酸基を有しない脂肪酸とが縮合した脂肪酸オリゴマーであるエストリド、又は当該エストリドとアルコールとのエステルが挙げられる。また、油相は、このエストリド又はエステルにおける水酸基を有しない脂肪酸そのものを含有していてもよい。
油相の粘度は、100mPa・s以上、150mPa・s以上、180mPa・s以上200mPa・s以上、230mPa・s以上、又は250mPa・s以上であってよく、また5000mPa・s以下、4800mPa・s以下、又は4500mPa・s以下であってよい。上記の範囲にある粘度は、滑らかな筆記感及び高荷重での良好な筆記性を得る観点から好ましい。
この粘度は、温度25℃、剪断速度38s-1の条件で測定したものであり、公知の粘度測定機、例えばTVE-20H(東機産業)で、Rレンジ相当のレギュラーコーンを用いて測定することができる。
この粘度は、油相に樹脂を含有させることにより増加させることができ、また、油相に有機溶剤を含有させることにより低減させることができる。
(アルコール又は脂肪酸)
本発明の油相におけるアルコール又は脂肪酸は、分岐鎖を有する炭素数8以上の第一級アルコール又は脂肪酸である。具体的には、以下の(a)又は(b)の一般式を有している。
Figure 2024077197000003
(式中、R及びRは、それぞれ直鎖又は分岐のアルキル基であり、Rは、水素又は直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R、R及びRの炭素数が、合計で6以上である。)
第一級アルコール又は脂肪酸の炭素数は、8以上、10以上、又は12以上であってよく、また22以下、20以下、又は18以下であってよい。すなわち、上記の式においては、R、R及びRの炭素数の合計が、6以上、8以上、又は10以上であってよく、また20以下、18以下、又は16以下であってよい。
中でも、分岐鎖のうちの少なくとも2つが、炭素数4以上のアルキル基であることが、すなわち、上記の一般式において、R、R及びRのうちの少なくとも2つの炭素数が4以上であることが、上記の作用を得る観点から好ましい。
このようなアルコールとしては、2-エチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、2-へキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-デカノール、2-へキシル-1-ドデカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、8-メチル-(4-メチルへキシル)-デカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクタノール等を用いることができる。
また、このような脂肪酸としては、例えば5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクタン酸、2-ヘキシルデカン酸、2-ヘキシルドデカン酸、2-オクチルデカン酸、8,9-ジメチル-2-(4,5-ジメチルへキシル)-デカン酸等を用いることができる。
(エストリド又はエステル)
油相において用いることができるエストリド又はエステルは、水酸基を有する脂肪酸同士が縮合若しくは水酸基を有する脂肪酸と水酸基を有しない脂肪酸とが縮合した脂肪酸オリゴマーであるエストリド、又は当該エストリドとアルコールとのエステルであってよい。
上記のエストリド又はエステルにおける水酸基を有する脂肪酸としては、従来用いられる種々の脂肪酸が使用可能であり、中でも、主成分がリシノール酸であるヒマシ油脂肪酸、主成分が12-ヒドロキシステアリン酸である水添ヒマシ油脂肪酸などを用いることが好ましい。これらの脂肪酸は、単独で用いてもよく、又は混合して用いてもよい。
また、水酸基を有しない脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、更に、これらの成分を含むヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、水添牛脂脂肪酸等を用いることもできる。
本発明では、上述した水酸基を有する脂肪酸同士を縮合させた脂肪酸オリゴマー、又は水酸基を有する脂肪酸と水酸基を有しない脂肪酸とを縮合させた脂肪酸オリゴマー(エストリド)を用いる。ここで、「脂肪酸オリゴマー」とは、2量体以上の縮合体をいう。2量体~7量体のものが好ましい。脂肪酸オリゴマー中に単量体が混在していても構わないが、油相に対する溶解性の観点から、脂肪酸オリゴマー全体の平均で1.5量体以上、好ましくは2.0量体以上とすることが好ましい。
上記のエストリド又はエステルの含有率は、油相の質量に対して、50%以上、60%以上、又は70%以上であってよく、また90%以下、又は85%以下であってよい。
また、油相は、他の油相成分を更に含有していてもよい。他の油相成分としては、例えば上記のエストリド又はエステルにおける水酸基を有しない脂肪酸そのものを更に含有していてもよい。
(酸素除去剤)
本発明の油相における酸素除去剤は、随意のものであってよいが、水不溶性酸素除去剤であることが、油相の成分との親和性の観点から好ましい。また、酸素除去剤は、油相中に溶解した状態で存在していても、油相中に分散した状態で存在していてもよい。
水不溶性酸素除去剤は、概して、水に対する溶解性が5mg/L未満である酸素除去剤である。このような水不溶性酸素除去剤としては、有機系水不溶性酸素除去剤を用いることが、インクの色彩に影響を及ぼさない観点から好ましい。このような有機系水不溶性酸素除去剤としては、例えばトコフェロール、テルペンアルデヒド及びその誘導体等の有機系水不溶性酸素除去剤を用いることができる。誘導体としては、例えばギ酸エステル、酢酸エステル、及びプロピオン酸エステル等の脂肪酸エステルを用いることができる。
油相中の酸素除去剤の含有率は、油相の質量に対して、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%であってよく、また20質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
(樹脂)
樹脂としては、随意の樹脂、特に塗膜の固着のために用いられる樹脂を用いることができ、例えばスルホアミド樹脂、マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、エステルガム、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ロジン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、尿素樹脂等、及びこれらの誘導体を用いることができる。
樹脂の含有率は、油相の所望の粘度に応じて調節することができ、例えば、油相の質量に対して、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、また50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
(有機溶剤)
有機溶剤としては、例えば芳香族類、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、炭化水素類、エステル類等を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
芳香族類としては、例えばベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、フタル酸ブチル、フタル酸エチルヘキシル、フタル酸トリデシル、トリメリット酸エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート等を用いることができる。
アルコール類としては、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-デカノール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール等を用いることができる。
多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、3-メチル-1,3ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3プロパンジオール、1,3ブタンジオール、1,5ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等を用いることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテルジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等を用いることができる。
炭化水素類としては、例えばヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環状炭化水素類を用いることができる。
エステル類としては、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシブチルアセテート等を用いることができる。
有機溶剤の含有率は、油相の所望の粘度に応じて調節することができ、例えば、油相の質量に対して、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、また50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
(着色剤)
着色材としては、染料、顔料、又は染料と顔料との混合物等、従来のインクに用いることができる種々の着色材を使用することができる。これらの着色材は、単独で用いてもよく、又は混合して用いてもよい。
染料としては、水不溶性染料を用いることができる。水不溶性染料は、常温において水に不溶の染料、特に20℃での水に対する溶解性が1g/L以下の染料である。このような水不溶性染料としては、例えば造塩染料、分散染料、油溶性染料等を用いることができ、中でも、発色性の観点から、造塩染料を用いることが好ましい。
造塩染料としては、例えばアゾ系、金属錯塩アゾ系、アンスラキノン系及び金属フタロシアニン系の化学構造を有する染料が挙げられ、例えばオリエント化学工業株式会社のValifast(登録商標) Black 1807、Valifast(登録商標) Blue 2620、Valifast(登録商標) Brown 2402、Valifast(登録商標) Green 1501、Valifast(登録商標) Orange 2210、Valifast(登録商標) Pink 2310、Valifast(登録商標) Red 1355、Valifast(登録商標) VIOLET 1701、Valifast(登録商標) Yellow 1101等を用いることができる。
分散染料としては、例えばC.I.Disperse Yellow 198、C.I.Disperse Yellow 42、C.I.Disperse Red 92、C.I.Disperse Violet 26、C.I.Disperse Violet 35、C.I.Disperse Blue 60、及びC.I.Disperse Blue 87から選択される少なくとも1種の染料を用いることができる。
油溶性染料としては、例えばオリエント化学工業株式会社のOil Black 860、Oil Blue 613、Oil Brown BB、Oil Green 530、Oil Orange 201、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 318、Oil Yellow 105等を用いることができる。
顔料としては、酸化チタン等の従来公知の無機系及び有機系顔料、顔料又は染料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料又は顔料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、光輝性顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等を制限なく使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等を用いることができる。
有機系顔料としては、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。このような有機系顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
熱変色性顔料としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~6μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。この平均粒子径は、例えば0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は0.9μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
光変色性粒子としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などの光変色性物質から選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子を用いることができる。また、光変色性粒子としては、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などの光変色性物質から選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~6μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性粒子などを挙げることができる。
この光変色性粒子は、上記の光変色性物質を好適に用いることにより、例えば、室内照明環境(室内での白熱灯、蛍光灯、ランプ、白色LEDなどから選ばれる照明器具)において無色であり、紫外線照射環境(200~400nm波長の照射、紫外線を含む太陽光での照射環境)で発色する性質を有するものとすることができる。
本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、測定の対象となる粒子の大きさによって適宜選択され、概ね1μm未満の粒子の場合は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布において、体積基準により算出されたヒストグラム平均粒子径(D50)の値であり、1μm以上の粒子の場合は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)の値である。平均粒子径の測定は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社)〕を用いて行うことができる。
上記熱変色性顔料及び上記光変色性粒子のマイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、以下の工程を含む方法、特に以下の工程をこの順で行うことを含む方法により、熱変色性マイクロカプセル顔料を製造することができる:
(1)ロイコ色素、顕色剤、及び変色温度調整剤を加熱溶融すること、
(2)加熱溶融させたロイコ色素、顕色剤、及び変色温度調整剤を乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させて分散液を作製すること、
(3)カプセル膜剤として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂等の壁膜を形成できる樹脂原料、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などのアミノ樹脂溶液を、上記の分散液に徐々に投入し、この樹脂原料を反応させて、カプセル膜を生じさせることにより、熱変色性マイクロカプセル顔料を得ること、並びに
(4)熱変色性マイクロカプセル顔料を含むこの分散液を濾過すること。
この熱変色性顔料では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
これらの着色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの着色材のうち、水に分散する顔料や、樹脂粒子顔料、疑似顔料、白色系プラスチック顔料、多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等の平均粒子径は、ボール径、インク組成・粘度などにより変動するが、平均粒子径が0.02~6μmのものが望ましい。この平均粒子径は、例えば0.02μm以上、0.05μm以上、0.07μm以上、0.10μm以上、0.20μm以上、0.30μm以上、0.50μm以上、0.70μm以上、又は0.90μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
これらの着色材の含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、筆記具用水性インク組成物の質量に対して、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であることが好ましい。
〈乳化剤成分〉
乳化剤成分としては、随意の乳化剤を用いることができ、例えば分子骨格中に芳香環を1つ又は複数有する乳化剤を用いることができる。
本発明のインク組成物に用いることができる芳香族系乳化剤としては、芳香環を1つ以上有しているものであれば、特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の多環フェニル型非イオン界面活性剤で、及びその硫酸塩等のイオン性界面活性剤を用いることができる。
上記の乳化剤のエチレンオキサイド(EO)付加モル数は、40mol以上、45mol以上、又は50mol以上であることが、長鎖のエチレンオキサイド鎖により、油相f粒子の合一を抑制する観点から好ましい。
上記の乳化剤に加え、油相への配向が強いエチレンオキサイド付加モル数が低い乳化剤、具体的にはエチレンオキサイド付加モル数が3mol以上、4mol以上、又は5mol以上であり、かつ15mol以下、12mol以下、又は10mol以下の乳化剤を更に用いてもよい。油相へ配向の強いものと水相へ配向の強い乳化剤を組み合わせることは、界面のミセル濃度を高め、エマルションの安定性を良好にする観点から、好ましいことがある。
HLB値(親水親油バランス値)については、非イオン性界面活性剤については少なくともHLB値が15以上の乳化剤を1種以上用いることが、油相側への乳化剤の過度な混入を抑制する観点から好ましい。
乳化剤成分としては、分子内に芳香環を有する界面活性剤以外に、他の構造を有する任意の乳化剤を追加して用いてもよい。このような乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキル(C10~C18)エステル等の直鎖炭化水素型非イオン性界面活性剤、ソルビタン誘導体等が挙げられる。
乳化剤成分の含有量は、油相100質量部に対して、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上、又は45質量部以上であってよく、また150質量部以下、140質量部以下、130質量部以下、120質量部以下、110質量部以下、100質量部以下、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、65質量部以下、60質量部以下、又は55質量部以下であってよい。
〈水相〉
水相は、水を少なくとも含有している。水相は、着色剤を含有していてよい。
水相は、樹脂、有機溶剤等を更に含有していてよい。
(水)
水としては、精製水、イオン交換水等を用いることができる。
(着色材)
着色材としては、染料、顔料、又は染料と顔料との混合物等、従来のインクに用いることができる種々の着色材を使用することができる。これらの着色材は、単独で用いてもよく、又は混合して用いてもよい。
染料としては、水溶性染料を用いることができる。水溶性染料としては、水に溶解又は分散する全ての染料を用いることができ、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154,ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットBB等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
水不溶性染料は、常温において水に不溶の染料である。このような水不溶性染料としては、例えば造塩染料、分散染料、油溶性染料等を用いることができ、中でも、発色性の観点から、造塩染料を用いることが好ましい。
造塩染料としては、例えばアゾ系、金属錯塩アゾ系、アンスラキノン系及び金属フタロシアニン系の化学構造を有する染料が挙げられ、例えばオリエント化学工業株式会社のValifast(登録商標) Black 1807、Valifast(登録商標) Blue 2620、Valifast(登録商標) Brown 2402、Valifast(登録商標) Green 1501、Valifast(登録商標) Orange 2210、Valifast(登録商標) Pink 2310、Valifast(登録商標) Red 1355、Valifast(登録商標) VIOLET 1701、Valifast(登録商標) Yellow 1101等を用いることができる。
分散染料としては、例えばC.I.Disperse Yellow 198、C.I.Disperse Yellow 42、C.I.Disperse Red 92、C.I.Disperse Violet 26、C.I.Disperse Violet 35、C.I.Disperse Blue 60、及びC.I.Disperse Blue 87から選択される少なくとも1種の染料を用いることができる。
油溶性染料としては、例えばオリエント化学工業株式会社のOil Black 860、Oil Blue 613、Oil Brown BB、Oil Green 530、Oil Orange 201、Oil Pink 312、Oil Red 5B、Oil Scarlet 318、Oil Yellow 105等を用いることができる。
顔料としては、酸化チタン等の従来公知の無機系及び有機系顔料、顔料又は染料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料又は顔料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、光輝性顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等を制限なく使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等を用いることができる。
有機系顔料としては、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。このような有機系顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
熱変色性顔料としては、発色剤として機能するロイコ色素と、該ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となる顕色剤及び上記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールすることができる変色温度調整剤を少なくとも含む熱変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~6μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された熱変色性顔料などを挙げることができる。この平均粒子径は、例えば0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.7μm以上、又は0.9μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
光変色性粒子としては、例えば、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などの光変色性物質から選択される1種以上と、テルペンフェノール樹脂などの樹脂とにより構成される光変色性粒子を用いることができる。また、光変色性粒子としては、少なくともフォトクロミック色素(化合物)、蛍光色素などの光変色性物質から選択される1種以上と、有機溶媒と、酸化防止剤、光安定剤、増感剤などの添加剤とを含む光変色性組成物を、所定の平均粒子径(例えば、0.1~6μm)となるように、マイクロカプセル化することにより製造された光変色性粒子などを挙げることができる。
この光変色性粒子は、上記の光変色性物質を好適に用いることにより、例えば、室内照明環境(室内での白熱灯、蛍光灯、ランプ、白色LEDなどから選ばれる照明器具)において無色であり、紫外線照射環境(200~400nm波長の照射、紫外線を含む太陽光での照射環境)で発色する性質を有するものとすることができる。
本発明(実施例等含む)において、「平均粒子径」は、測定の対象となる粒子の大きさによって適宜選択され、概ね1μm未満の粒子の場合は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布において、体積基準により算出されたヒストグラム平均粒子径(D50)の値であり、1μm以上の粒子の場合は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)の値である。平均粒子径の測定は、粒度分析計〔マイクロトラックHRA9320-X100(日機装社)〕を用いて行うことができる。
上記熱変色性顔料及び上記光変色性粒子のマイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、以下の工程を含む方法、特に以下の工程をこの順で行うことを含む方法により、熱変色性マイクロカプセル顔料を製造することができる:
(1)ロイコ色素、顕色剤、及び変色温度調整剤を加熱溶融すること、
(2)加熱溶融させたロイコ色素、顕色剤、及び変色温度調整剤を乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させて分散液を作製すること、
(3)カプセル膜剤として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂等の壁膜を形成できる樹脂原料、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などのアミノ樹脂溶液を、上記の分散液に徐々に投入し、この樹脂原料を反応させて、カプセル膜を生じさせることにより、熱変色性マイクロカプセル顔料を得ること、並びに
(4)熱変色性マイクロカプセル顔料を含むこの分散液を濾過すること。
この熱変色性顔料では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各色の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの色材のうち、水に分散する顔料や、樹脂粒子顔料、疑似顔料、白色系プラスチック顔料、多層コーティングした顔料、熱変色性顔料、光変色性粒子等の平均粒子径は、ボール径、インク組成・粘度などにより変動するが、平均粒子径が0.02~6μmのものが望ましい。この平均粒子径は、例えば0.02μm以上、0.05μm以上、0.07μm以上、0.10μm以上、0.20μm以上、0.30μm以上、0.50μm以上、0.70μm以上、又は0.90μm以上であってよく、また6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってよい。
これらの色材の含有量は、インクの描線濃度に応じて適宜増減することが可能であるが、水性インク組成物全量に対して、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、0.9質量%以上、又は1.0質量%以上であってよく、また40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であることが好ましい。
〈他の成分〉
他の成分としては、例えば、分散剤、レべリング剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤、表面調整剤等が挙げられる。レべリング剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤等を用いることができる。表面調整剤としては、シリコン系表面調整剤等を用いることができる。
《筆記具》
筆記具は、上記の筆記具用水中油滴型インク組成物を含有している。筆記具は、インク貯蔵部、筆記部及び保持部を具備していてよく、この場合、インク貯蔵部には、水性インクが貯蔵されていてよい。筆記具は、ボールペンであってよい。
〈インク貯蔵部〉
インク貯蔵部には、上記の筆記具用水性インク組成物が貯蔵されている。
インク貯蔵部は、インクを貯蔵し、かつ筆記部にインクを供給することができる物であれば、任意の物を用いることができ、コレクター構造(インク保持機構)を備えた直液式であってもよく、又は中綿式のインク貯蔵部であってもよい。
また、インク貯蔵部は、筆記部と一体となっていてもよい。特に、筆記具がボールペンである場合には、インク貯蔵部は、筆記具用リフィールであってよい。
特に、インク貯蔵部がボールペン用リフィールである場合には、インク貯蔵部の外壁の厚さ、すなわちインク貯蔵部の(外径-内径)/2の値は、0.3mm以上、0.5mm以上、又は0.7mm以上であり、かつ2.0mm以下、1.8mm以下、1.5mm以下、又は1.2mm以下であることが、気泡の発生を抑制する観点から好ましい。
〈筆記部〉
筆記部は、ボールペンチップを先端部に有する筆記部であることができる。
ボールペンチップは、ボール、及びボールを回転自在に抱持しているホルダーで構成されていてよい。ボールは、ボールペンのボールに用いられる随意の材料で構成されていてよく、例えばステンレス鋼、超硬合金、セラミックス等で構成されていてよい。またボールペンチップの形状は特に限定されず、例えば砲弾形状、ニードル形状などであってよい。
更に、ボールの表面粗さRaは10nm未満であることが、書き味の観点から望ましく、特に好ましくは、該筆記ボールは、ボールの表面粗さRaが4nm以下であることが好ましい。
なお、本発明(後述する実施例を含む)における「表面粗さRa」は、非接触表面形状測定機(NewView7200、Zygo社)により、レンズ倍率50倍、評価長さ100μm、ガウシアンフィルタ25μmの条件で設定し、それ以外はJIS B0601(製品の幾何特性仕様-表面性状)に準拠して測定したものである。
〈保持部〉
保持部は、本発明の筆記具を手で保持することを可能とする部分であってよく、インク貯蔵部を収納できる中空構造を有していてよい。保持部は、例えば円筒状、多角筒状等の形状を有していてよい。
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
《凍結状態の評価》
油相を構成する各成分を混合し、これらを攪拌しながら50℃~60℃の温度に加温して、これらを完全に溶解させた油相溶液を得た。
油相を構成する成分は、表1に示す種類のアルコールを表1に示す含有率とし、酸素除去剤としてのdl-α-トコフェロール(トコフェロール、三菱ケミカル株式会社)を5質量%とし、縮合脂肪酸エステル(ミネラゾールLB-601、伊藤製油株式会社)を残部とした。
表1に示す各アルコールの詳細は以下のとおりである。
分岐アルコールA:5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクタノール
分岐アルコールB:2-エチル-1-ヘキサノール
分岐アルコールC:2-ブチル-1-オクタノール
分岐アルコールD:2-へキシル-1-デカノール
分岐アルコールE:C14-C15分岐アルコール(ISALCHEM145、SASOL社)
直鎖アルコール:1-デカノール
得られた各油相溶液を、表1に示す温度で1日放置し、油相の状態を目視により確認した。評価基準は以下のとおりである。
A:液状であった。
B:流動性があるが部分的に析出(凍結)していた。
C:流動性がなく凍結していたが、結晶はみられなかった。
D:凍結し、部分的に結晶化していた。
E:全体が明確に結晶化していた。
結果を表1に示す。
Figure 2024077197000004
表1から、分岐アルコールA~Eは、上記のいずれの条件においても、直鎖アルコールと比較して、油相の凍結を抑制できていることが理解できよう。
《筆記具用水中油滴型インク組成物の作製》
〈実施例1〉
7.5質量部の縮合脂肪酸エステル(ミネラゾールLB-601、伊藤製油株式会社、エステルA)、2質量部のオレイン酸(ルナックOV、花王株式会社)、及び0.5質量部の酸素除去剤としてのdl-α-トコフェロール(トコフェロール、三菱ケミカル株式会社、トコフェロールA)を混合し、これらを攪拌しながら50℃~60℃の温度に加温して、これらを完全に溶解させた油性溶液を得た。
別体で、乳化剤成分としてのポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(ニューコールN780、日本乳化剤株式会社)を精製水に攪拌しながら溶解させて乳化剤溶液を作製した。次いで、油性溶液に乳化剤溶液を徐々に添加して、油中水滴型(w/o)から水中油滴型(o/w)に転相させて水中油滴型のエマルションを得た。
その後、撹拌しながら、この水中油滴型のエマルションに、顔料分散体を添加し、実施例1の筆記具用インク組成物100質量部を得た。顔料分散体は、6.7質量部の顔料としてのカーボンブラック、1.3質量部の分散剤としてのスチレンアクリル樹脂、2質量部の有機溶剤としてのエチレングリコール、0.6質量部の潤滑剤としてのリン酸エステル、0.6質量部のpH調整剤としてのトリエタノールアミン、及び38.8質量部の水からなる。使用した乳化剤溶液、顔料分散体成分及び添加剤成分の詳細を表2に示す。
〈実施例2~6及び比較例1~4〉
使用した物質及び含有率を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~6及び比較例1~4の筆記具用水性インク組成物を作製した。
表2に示すアルコールは、表1と同じであり、表2に示す他の物質の詳細は以下のとおりである:
エステルA:ミネラゾールLB-601、伊藤製油株式会社
エステルB:ミネラゾールLB-702、伊藤製油株式会社
トコフェロール:dl-α-トコフェロール
カーボンブラック:MCF-88、三菱ケミカル株式会社
スチレンアクリル樹脂:Joncryl63J、BASF社
リン酸エステル:フォスファノールRB-410、東邦化学工業株式会社
得られた各筆記具用水性インク組成物の粘度を、温度25℃、剪断速度38s-1の条件で、TVE-20H Rレンジ相当レギュラーコーンを用いて測定した。
《評価》
作製した筆記具用水性インク組成物を、それぞれボールペンに充填して、水性ボールペンを作製した。具体的には、ボールペン(シグノUM-100、三菱鉛筆株式会社)の軸を使用し、外径60mm、内径3.8mm、長さ113mmのポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.38mm、表面粗さ10nm未満)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに、上記インク組成物及びインク後端にインク追従体を装填した。これらを用いて、以下の評価試験を行った。
〈低温保存前の筆記感〉
筆記を行い、筆記感を官能評価した。評価基準は以下のとおりである。
A:滑らかな筆記感であった。
B:少々ガリツキ感があった。
C:著しいガリツキ感があった。
〈低温保存前の高荷重での筆記性〉
200gfの荷重でボールペンの先端を筆記面に押し当て、筆記を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:カスレが全く生じなかった。
B:カスレが生じたものの、描線は十分に認識できた。
C:描線の認識に著しい影響を及ぼす程度にカスレが生じた。
〈低温保存後の筆記性〉
作製したボールペンを、-20℃の環境に2週間保存した。その後、25℃の環境で1日間保存し、筆記を行った。評価基準は以下のとおりである。
A:カスレが全く生じなかった。
B:カスレが生じたものの、描線は十分に認識できた。
C:描線の認識に著しい影響を及ぼす程度にカスレが生じた。
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表2に示す。
Figure 2024077197000005
表2から、油相が分岐鎖を有する炭素数8以上の第一級アルコール又は脂肪酸を含有している実施例の筆記具用水性インク組成物は、低温保存前の筆記感及び高荷重での筆記時の筆記性、並びに低温保存後の筆記性、がいずれも良好であったことが理解できよう。
一方、比較例1及び2の筆記具用水性インク組成物は、低温保存後の筆記性が良好ではなかった。
また、粘度が78mPa・sの比較例3、及び粘度が7200mPa・sの比較例4は、低温保存後の筆記性は良好であったものの、低温保存前の筆記感及び高荷重での筆記性に悪影響が生じていた。

Claims (6)

  1. 水相、及び前記水相に対して水中油滴型エマルションの状態で分散している油相を有し、
    前記油相及び前記水相の少なくとも一方が着色材を含み、かつ
    前記油相が、以下の(a)又は(b)の一般式を有する、分岐鎖を有する炭素数8以上の第一級アルコール又は脂肪酸を含有している、
    筆記具用水性インク組成物:
    Figure 2024077197000006
    (式中、R及びRは、それぞれ直鎖又は分岐のアルキル基であり、Rは、水素又は直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、R、R及びRの炭素数が、合計で6以上である。)
  2. 前記油相におけるアルコール又は脂肪酸の炭素数が、22以下である、請求項1に記載の筆記具用水性インク組成物。
  3. 前記油相におけるアルコール又は脂肪酸の前記分岐鎖のうちの少なくとも2つが、炭素数4以上のアルキル基である、請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物。
  4. 温度25℃、剪断速度38s-1の条件で測定した、前記油相の粘度が、100~5000mPa・sである、請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物。
  5. 請求項1又は2に記載の筆記具用水性インク組成物を有するインク貯蔵部を含む、筆記具。
  6. ボールペンである、請求項5に記載の筆記具。
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