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JP2024075534A - レギュレータ - Google Patents

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JP2024075534A JP2022186980A JP2022186980A JP2024075534A JP 2024075534 A JP2024075534 A JP 2024075534A JP 2022186980 A JP2022186980 A JP 2022186980A JP 2022186980 A JP2022186980 A JP 2022186980A JP 2024075534 A JP2024075534 A JP 2024075534A
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Tatsumi Nabei
教巨 山田
Norinao Yamada
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    • F16K31/00Actuating devices; Operating means; Releasing devices
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    • GPHYSICS
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Abstract

【課題】弁体とダイアフラム部材の接触部における発塵の発生を防止することが可能なレギュレータを提供すること。【解決手段】ダイアフラム部材15の、弁体14の軸部145の先端面を受ける受け部151aは、先端面に対向する部分に、軸部145の中心軸CL11上に中心が位置する第1半径により形成された凹球面151bを備えること、第1半径は、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であること、先端面の、凹球面151bに対向する部分は、第1半径の値から、第1半径の値の2-5%の値を引いた値である第2半径により形成される凸球面144であること、を特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、レギュレータに関するものである。
従来、半導体製造工程では、例えば、ウエハの成膜処理に用いられる純水や薬液等の制御流体の圧力制御を行うために、例えば、特許文献1に開示されるようなレギュレータが用いられている。従来技術に係るレギュレータについて、図28を用いて説明する。図28は、従来技術に係るレギュレータ50の断面図である。
レギュレータ50には、上流側から順に、入力ポート59と、上流側流体室52と、弁孔54と、下流側流体室53と、出力ポート60と、が連通されて、一連の流路が形成されている。
上流側流体室52には、弁体51が収容されている。この弁体51は、図中の上下方向に沿って移動可能であり、弁孔54の外周に沿って設けられた環状弁座55と当接離間を行う。
弁体51の図中の下端側には、圧縮コイルばね58が配設されており、この圧縮コイルばね58の付勢力により、弁体51は、環状弁座55に当接する方向(閉方向)に付勢されている。また、弁体51は、当接離間の方向に沿って、上流側流体室52から、弁孔54を通じて、下流側流体室53まで延在する、円柱状の軸部511を備えている。この軸部511の先端面512は、軸部511の直径と略同一の直径を備える凸球面とされている。そして、この軸部511は、下流側流体室53に収容されているダイアフラム部材57の受け部571に分離可能に遊嵌されている。ダイアフラム部材57の受け部571は、軸部511の直径と略同一の直径を備える凹球面とされている。
ダイアフラム部材57は、圧力作用室56に供給される操作エアの圧力に応じて、当接離間の方向に沿って位置を変えることが可能である。
以上のような構成のレギュレータ50は、圧力作用室56に供給される操作エアの圧力と、圧縮コイルばね58の付勢力のバランスにより、弁体51の環状弁座55に対する距離(すなわち開度)の調整を行うことが可能である。
ここで、弁体51が、ダイアフラム部材57に分離可能に遊嵌されている点について詳しく説明する。例えば、出力ポート60側からの背圧を受け、下流側流体室53の圧力が急激に高まると、ダイアフラム部材57が、図中の上方(すなわち閉方向)に押し上げられる。この時、弁体51とダイアフラム部材57とが分離できないように連結されていると、ダイアフラム部材57が閉方向に押し上げられるに伴い、弁体51が閉方向に移動し、環状弁座55に過干渉するおそれがある。弁体51と環状弁座55の過干渉は、摩耗等によるパーティクル発生の原因となるため、好ましくない。
そこで、弁体51とダイアフラム部材57とを分離可能としておけば、下流側流体室53の圧力が急激に高まり、ダイアフラム部材57が閉方向に押し上げられたとしても、ダイアフラム部材57は、弁体51から分離して単独で閉方向に移動する。これにより、弁体51は閉方向に移動されることがないため、環状弁座55との過干渉を防止することが可能である。なお、弁体51とダイアフラム部材57は、制御流体が接触する接液部材であるため、耐腐食性の高いフッ素系合成樹脂(例えば、PTFEやPFA等)を材質としている。
特開2021-89070号公報
しかしながら、上記したレギュレータには、以下のような問題があった。上記のように、弁体51が、ダイアフラム部材57に分離可能に遊嵌されていると、軸部511の先端面512とダイアフラム部材57の受け部571とが当接離間を繰り返し、発塵するおそれがある。
この発塵の原因は、先端面512と受け部571とが接触したときに、接触面において過大な応力が発生することや、先端面512に滑りが発生することであると考えられる。
まず、先端面512と受け部571とが接触したときの接触面に発生する応力について説明する。図29は、従来技術において、弁体51とダイアフラム部材57との接触面(先端面512と受け部571との接触面)に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。この解析は、弁体51およびダイアフラム部材57ともに、材質をPTFEとし、圧縮コイルばね58の付勢力により、先端面512が受け部571に押し付けられている状態を想定したものである。そして、カラーバーの長さおよび色の濃淡により発生している応力の値を表している。つまり、カラーバーの長さが長いほど発生している応力が大きく、カラーバーの色が濃いほど発生している応力が大きい。
発生している応力は、軸部511の中心軸CL51に向かうほど高くなっており、軸部511の中心付近で最大となっている。この最大の応力の値は、10.92MPaである。PTFEの圧縮強さは約10MPaであり、高温雰囲気下(例えば、制御流体の温度である90℃)では約5MPaであると考えられているところ、この解析結果は、弁体51の先端面512とダイアフラム部材57の受け部571とが接触した状態では、材料の圧縮強さと同等かそれ以上の応力が働いていることを示している。このため、先端面512と受け部571とが当接離間を繰り返すと、軸部511や受け部571に塑性変形が発生するおそれがある。塑性変形の発生は、弁体51とダイアフラム部材57との接触面の破壊、そして発塵の原因となり得る。
次に、先端面512と受け部571とが接触したときに発生する先端面512の滑りについて説明する。図30は、従来技術において、軸部511の先端面512の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。弁体51およびダイアフラム部材57ともに、材質をPTFEとし、圧縮コイルばね58の付勢力により、先端面512が受け部571に押し付けられている状態を想定したものである点は、上記の応力解析と同様である。そして、カラーバーの長さおよび色の濃淡により、滑り量の大きさを表している。つまり、カラーバーの長さが長いほど滑り量が大きく、カラーバーの色が濃いほど滑り量が大きい。また、カラーバーの延伸する向きが滑りの方向を表しており、カラーバーが軸部145の側に延伸しているのは、中心軸CL51側への滑り(内向きの滑り)が発生していることを表している。
発生している滑りは、図30に示すように、全体として内向きの滑りとなっている。滑り量は、中心軸CL51から離れるにつれ大きくなり、中心軸CL51と軸部511外周との中間位置の近傍で最大値となっている。そして、その最大値の部分を超えると、外周に向かうにつれ滑り量が小さくなっている。発生している滑り量の範囲は、0~2.9μmである。
このように滑りが発生していると、先端面512と受け部571とが当接離間を繰り返すことで、先端面512と受け部571との摺動が繰り返されるおそれがある。摺動の繰り返しは、弁体51とダイアフラム部材57との接触面における発塵の原因となり得る。
弁体51とダイアフラム部材57との接触面における発塵は、制御流体へのパーティクル混入の原因となる。制御流体にパーティクルが混入すると、ウエハの製造不良が発生する等、半導体の製造効率が低下するおそれがある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、弁体とダイアフラム部材の接触部における発塵の発生を防止することが可能なレギュレータを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様におけるレギュレータは、次のような構成を有している。
(1)弁体が収容される上流側流体室と、前記上流側流体室の下流側に位置する下流側流体室と、前記上流側流体室と前記下流側流体室とを連通させる弁孔と、前記弁孔の外周に沿って設けられ、前記弁体が当接離間する環状弁座と、前記下流側流体室に収容され、操作エアの圧力に応じて、当接離間方向に沿って位置を変えるダイアフラム部材と、を備え、前記弁体は、前記当接離間の方向に沿って、前記上流側流体室から、前記弁孔を通じて、前記下流側流体室まで延在する、円柱状の軸部を備え、前記軸部は、前記ダイアフラム部材の、前記軸部の先端面を受ける受け部に分離可能に遊嵌され、前記弁体の、前記ダイアフラム部材の側の反対側に、前記弁体に対して前記環状弁座に当接する方向に付勢力を与える付勢手段が配設され、前記操作エアの圧力と、前記付勢力のバランスにより、前記弁体の開度調整を行うレギュレータにおいて、前記受け部は、前記先端面に対向する部分に、前記軸部の中心軸上に中心が位置する第1半径により形成された凹球面を備えること、前記第1半径は、前記軸部の直径の値から、前記直径の値の20%の値を引いた値以上であること、前記先端面の、前記凹球面に対向する部分は、前記第1半径の値から、前記第1半径の値の2-5%の値を引いた値である第2半径により形成される凸球面であること、を特徴とする。
上記レギュレータによれば、第1半径が、軸部の直径の値から、前記直径の値の20%の値を引いた値以上であるため、弁体とダイアフラム部材とが接触したときの接触面に発生する応力を10MPa以下に抑えることができる。
例えば、弁体やダイアフラム部材には、耐腐食性の高いPTFEやPFA等が選定されるところ、PTFEの圧縮強さは約10MPa、PFAの圧縮強さは約15MPaである。このうち、圧縮強さが低いPTFEを選定したとしても、上記の通り、接触面に発生する応力を10MPa以下に抑えることができるため、弁体およびダイアフラム部材の塑性変形、ひいては破壊や発塵を防止することが可能である。
また、上記レギュレータによれば、第1半径が、軸部の直径の値から、前記直径の値の20%の値を引いた値以上であるため、弁体とダイアフラム部材との接触面における、軸部の滑り量を、最大値で比較したときに、従来の30%以下に抑えることができる。軸部の滑り量を従来よりも抑えることで、発塵を抑えることが可能である。
以上のように、上記接触面に発生する応力、滑り量を抑えることができれば、接触面において発塵するおそれを低減することができる。これにより、制御流体へのパーティクル混入の防止、ひいては半導体の製造効率の低下を防止することができる。
(2)(1)に記載のレギュレータにおいて、前記第1半径は、前記軸部の直径の値に、前記直径の値の20%の値を足した値以下、であること、が好ましい。これにより、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力を確実に10MPa以下に抑えることができ、弁体およびダイアフラム部材の塑性変形、ひいては破壊や発塵を防止することが可能である。
(3)(2)に記載のレギュレータにおいて、前記第1半径は、前記軸部の直径の値から、前記直径の値の10%の値を引いた値以上、前記軸部の直径の値に、前記直径の値の10%の値を足した値以下、であること、が好ましい。これにより、弁体とダイアフラム部材とが接触したときの接触面に発生する応力を5MPa以下に抑えることが可能である。PTFEの圧縮強さは、高温雰囲気下(例えば、制御流体の温度である90℃)では約5MPaであると考えられているところ、弁体とダイアフラム部材とが接触したときの接触面に発生する応力を5MPa以下に抑えることで、高温雰囲気下でも、弁体およびダイアフラム部材の塑性変形、ひいては破壊や発塵を防止することが可能である。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のレギュレータにおいて、前記第2半径は、前記第1半径の値から、前記第1半径の値の3-4%の値を引いた値であること、が好ましい。これにより、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力を確実に低減することができる。例えば、第2半径を、第1半径の値から、第1半径の値の2%の値を引いた値よりも大きい値とすると、弁体の軸部の、ダイアフラム部材の受け部の中での自由度が小さくなり、仮に弁体が、開閉動作中に傾いた場合に、その傾きを吸収できず、上記接触面に過剰な応力が発生するおそれがある。一方で、第2半径を、第1半径の値から、第1半径の値の4%の値を引いた値よりも小さい値とすると、弁体の軸部がダイアフラム部材の受け部に十分に当接せず、軸部の中心軸がぶれてしまうおそれがある。よって、上記の通り、第2半径は、第1半径の値から、第1半径の値の3-4%の値を引いた値であること、が好ましい。
なお、上記のレギュレータにおいては、軸部の先端面の全体を凸球面としても良いが、
(5)(1)に記載のレギュレータにおいて、前記受け部は、前記凹球面の外周に、前記第1半径よりも小さい半径により形成される、前記凹球面と接線連続の凹曲面を備えること、前記先端面は、前記凸球面の外周、かつ、前記凹曲面に対向する部分に、前記第2半径よりも小さい半径により形成される、前記凸球面と接線連続の凸曲面を備えること、しても良い。
さらには、(6)(1)に記載のレギュレータにおいて、前記受け部は、前記凹球面の外周に、前記凹球面の接線上の第1フラット面を備えること、前記先端面は、前記凸球面の外周、かつ、前記第1フラット面に対向する部分に、前記凸球面の接線上の第2フラット面を備えること、としても良い。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のレギュレータにおいて、前記受け部は、前記軸部の外周面に対向する筒状壁を備えること、前記筒状壁と前記軸部の外周面との間に間隙を備えること、前記間隙の大きさは、前記軸部の直径の値の3-5%であること、が好ましい。
(7)に記載のレギュレータによれば、前記受け部は、前記軸部の外周面に対向する筒状壁を備えるため、筒状壁によって、軸部の軸心がぶれてしまうことを確実に防止することができる。
また、付勢手段の付勢力により、軸部が受け部に押し付けられると、軸部は、圧縮され、軸部の径が太る方向に変形するおそれがあるが、(7)に記載のレギュレータによれば、前記筒状壁と前記軸部の外周面との間に間隙を備えるため、軸部の径が圧縮されて太った場合でも、筒状壁と軸部との干渉を防止することができる。干渉を防止することで、軸部と筒状壁とが摩擦して発塵することを防止することができる。ここで、上記の間隙の大きさは、軸部の直径の値の3-5%であることが望ましい。間隙の大きさが、軸部の直径の5%よりも大きいと軸部の中心軸のぶれを確実に防止することができなくなり、軸部の直径の3%よりも小さいと軸部が圧縮されて太った場合に、筒状壁と干渉するおそれがあるためである。なお、ここでいう間隙とは、軸部と筒状壁とが同軸上に位置していると仮定し、筒状壁の直径から軸部の直径を引いた値を2で割ったものである。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載のレギュレータにおいて、前記凸球面の頂点部には、前記軸部と同軸上に、前記凹球面に接触しない非接触部が設けられていること、前記非接触部の直径は、前記軸部の直径の値の1/20を超えないこと、を特徴とする。
凸球面は、切削加工または射出成形等により形成されることが想定される。切削加工によるものである場合、凸球面の頂点部分は、加工速度がゼロになり、バリが発生するおそれがある。バリが発生した状態で凹球面に接触すると、発塵の原因となるおそれがあるため、(7)に記載のレギュレータのように、予め凸球面の頂点部分を非接触部としておくことで、発塵を防止することが可能である。また、凸球面を射出成形により形成する場合には、凸球面の表面上にゲートが位置してしまうと、弁体とダイアフラム部材とが接触したときの接触面に発生する応力および滑り量を抑えるという効果を、十分に得られなくなるおそれがある。そこで、(7)に記載のレギュレータのように、凸球面の頂点部分を非接触部としておくことで、上記効果に影響のない非接触部にゲートを設けることができるようになる。ただし、非接触部の直径は、軸部の直径の1/20を超えないことが望ましい。非接触部の直径が、軸部の直径の1/20を超えると、凸球面の表面積がその分狭くなり、却って、上記の応力および滑り量を抑えるという効果が十分に得られなくなるためである。
本発明のレギュレータによれば、弁体とダイアフラム部材の接触部における発塵の発生を防止することが可能である。
レギュレータの断面図である。 図1の部分Aの部分拡大図である。 図2の部分Bの部分拡大図である。 第1の実施形態において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第1の実施形態において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第1の比較対象において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第1の比較対象において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第2の比較対象において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第2の比較対象において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第3の比較対象において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第3の比較対象において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第4の比較対象において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第4の比較対象において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 有限要素法解析による最大応力値を比較するグラフである。 有限要素法解析による滑り量の範囲を比較するグラフである。 第2の実施形態における弁体とダイアフラム部材との接触部を拡大した図であり、図2に対応した図である。 図16の部分Cの部分拡大図である。 第2の実施形態において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について、有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第2の実施形態において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第3の実施形態における弁体とダイアフラム部材との接触部を拡大した図であり、図2に対応した図である。 第3の実施形態において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について、有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第3の実施形態において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第3の実施形態における弁体とダイアフラム部材との接触部を拡大した図であり、図2に対応した図である。 第4の実施形態において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第4の実施形態において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 各形態における有限要素法解析による最大応力値を比較するグラフである。 各形態における有限要素法解析による滑り量の範囲を比較するグラフである。 従来技術に係るレギュレータの断面図である。 従来技術において、弁体とダイアフラム部材との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。 従来技術において、軸部の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。 第1の実施形態において、弁体とダイアフラム部材とが接触したときに、弁体とダイアフラム部材に働く力について説明する図である。 従来技術において、弁体とダイアフラム部材とが接触したときに、弁体とダイアフラム部材に働く力について説明する図である。
本発明に係るレギュレータの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、レギュレータ1の断面図である。なお、図1中の上下方向が、後述する弁体14の開閉方向である。また、参照する図面は、分かり易さのためにデフォルメされたものであり、各部材の形状や寸法等を正確に表したものではない。
(レギュレータの構成について)
本実施形態に係るレギュレータ1は、半導体製造工程(例えばウエハの成膜処理)に用いられる薬液や純水等(以下、制御流体という)の圧力制御を行う圧力制御機器である。
レギュレータ1は、図1に示すように、弁本体11と、上カバー12と、下カバー13とを備えている。上カバー12と下カバー13とは、図中の上下方向(後述する弁体14の開閉方向と同一の方向)から弁本体11を挟むようにして、弁本体11に組付けられている。なお、弁本体11は、内部を制御流体が流れる接液部材であるため、耐腐食性の高いフッ素系合成樹脂により成形されている。一方、接液部材ではない上カバー12と下カバー13は、例えばポリプロピレン樹脂により成形されている。
弁本体11は、制御流体が入力される入力ポート111と、制御流体が出力される出力ポート112とが形成されている。入力ポート111には、制御流体の供給源(不図示)が接続されており、当該供給源からレギュレータ1に制御流体が入力される。出力ポート112には、例えばノズル(不図示)が接続されており、レギュレータ1から出力される制御流体をウエハ等に滴下する。
弁本体11には、弁本体11の下カバー13の側の端面(図1中の下端面)から上カバー12の側に向かって、上流側流体室113が穿設されている。この上流側流体室113は、略円錐台状の空間として形成されている。上流側流体室113は、入力流路111aによって入力ポート111と連通している。さらに、上流側流体室113の上カバー12側の内面113aには、弁孔114が穿設されている。この弁孔114は、上流側流体室113と同軸上に位置している。上流側流体室113の内面113aには、弁孔114の外周に沿って環状弁座115が突設されている。環状弁座115の先端は平坦にされており、後述する弁体14が当接する当接面である。
さらに、弁本体11には、弁本体11の上カバー12の側の端面(図1中の上端面)から下カバー13の側に向かって、略円柱状の空間として開口部116が穿設されている。この開口部116は、上流側流体室113および弁孔114と同軸上に設けられている。また、開口部116は、後述するダイアフラム部材15によって、開閉方向において、2室に区画されている。すなわち、下流側流体室116aと、圧力作用室116bと、に区画されている。下流側流体室116aは、弁孔114により上流側流体室113に連通している。さらに、下流側流体室116aは、出力流路112aにより出力ポート112に連通している。したがって、弁本体11には、入力流路111aと、上流側流体室113と、弁孔114と、下流側流体室116aと、出力流路112aとによって、入力ポート111から出力ポート112までの一連の流路が形成されている。
上流側流体室113には、開閉方向に往復動可能な略円柱形状の弁体14が収容されている。この弁体14は、接液部材であるため、耐腐食性の高い、例えばフッ素系合成樹脂(PTFEやPFA)により成形されている。
弁体14には、その軸線方向の中央部に、他の部分よりも径の大きい拡径部141が形成されている。拡径部141の、弁座115aに対向する端面は、環状弁座115に当接する当接面である。よって、レギュレータ1が閉弁状態にあるとき、弁体14と環状弁座115は平面同士で当接する。このように、弁体14の当接面が環状弁座115に当接した状態では、入力ポート111から出力ポート112までの流路が遮断された状態になる。一方、当接面が弁座115aから離間した状態では、入力ポート111から出力ポート112までの流路が連通された状態になる。
さらに弁体14は、下カバー13側の端部に、弁体14と一体に成形された薄膜部142と、薄膜部142の外周に形成された固定部143と、を備えている。固定部143は弁本体11と下カバー13とに挟持されており、これにより、弁体14は、上流側流体室113と同軸上に位置するように固定されている。そして、薄膜部142は、弁体14が開閉方向に往復運動するに伴って弾性変形可能なように形成されている。
弁体14は、拡径部141から上カバー12側に向かって突設される軸部145を備えている。この軸部145は、弁孔114を通じて下流側流体室116aまで延在している。軸部145の先端部は、ダイアフラム部材15に対して分離可能に遊嵌されている。このダイアフラム部材15は、略円盤状に形成されている。また、ダイアフラム部材15は、接液部材であるため、耐腐食性の高い、例えばフッ素系合成樹脂により成形されている。
ダイアフラム部材15は、中央部151と、中央部151の外周に形成される薄膜部152と、薄膜部152の外周に形成される環状の固定部153と、からなる。中央部151には、弁体14側の端面の中央に、受け部151aが穿設されている。この受け部151aは、弁体14の軸部145と同軸上に位置するように設計されており、軸部145の先端部が遊嵌されている。この遊嵌とは、弁体14が閉方向(図中の上方向)に移動する際に中心軸位置がブレないように位置決めするためのものである一方、ダイアフラム部材15と弁体14とが離れる方向に力が働いた時には離間可能なものである。
ダイアフラム部材15の固定部153は、上カバー12と弁本体11とにより挟持されており、これにより、ダイアフラム部材15が固定されている。このように固定されることで、中央部151が、薄膜部152を弾性変形させながら、弁体14とともに開閉方向に往復運動可能になっている。固定部153と、上カバー12の間には、Oリング19が配設されており、圧力作用室116bの気密を保っている。
上カバー12には、圧力作用室116bに連通する導入ポート121が形成されており、導入ポート121を通じて圧力作用室116bに操作エアを供給することができる。そして、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力に応じて、ダイアフラム部材15の中央部151が、開閉方向の位置を変動させる。中央部151が開方向(図1中の下方向)に移動する場合には、中央部151の移動に伴い、弁体14が開方向に押し下げられ、弁開状態となる。
下カバー13には、弁体14と同軸上に、略円柱状の空間として、ばね収容室131が形成されている。ばね収容室131は、弁体14の薄膜部142を挟んで上流側流体室113と反対側に位置している。ばね収容室131には、圧縮コイルばね16が収容されている。
さらに、ばね収容室131には、弁体14と同軸上に凹状のガイド部132が設けられている。ガイド部132には、弁体14を下カバー13側から支持する支持部材17が挿入されている。支持部材17の外周面から突出して設けられているフランジ部171には、圧縮コイルばね16が当接している。これにより、支持部材17は、弁本体11側(図中の上方)に向かって付勢されている。
また、支持部材17は、弁体14側の上端面に穿設された溝172に弁体14の下端部が差し込まれており、これにより弁体14を支持している。支持部材17は圧縮コイルばね16により上方に付勢されているため、支持部材17に支持される弁体14も上方に付勢されている。つまり、弁体14は、環状弁座115に当接しようとする閉方向へ付勢されている。そして、弁体14が開方向に移動する際には、圧縮コイルばね16の付勢力に抗して移動することになる。つまり、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力と圧縮コイルばね16の付勢力のバランスにより、弁体14の位置の調整が行われる。弁体14の位置の調整とは、すなわち、弁体14と環状弁座115との距離の調整(開度調整)を意味する。
また、支持部材17は、弁体14とは反対側の端部(図中の下端部)に、ガイド部132に挿入される摺動部173を備えている。弁体14の環状弁座115に対する当接離間の動作は、摺動部173がガイド部132に挿入されていることで、ガイド部132によって案内される。
次に、弁体14の軸部145とダイアフラム部材15とが遊嵌されている部分について、図2および図3を用いてさらに詳細に説明する。図2は、図1の部分Aの部分拡大図である。図3は、図2の部分Bの部分拡大図である。
既に述べた通り、ダイアフラム部材15(中央部151)は、弁体14の軸部145の先端面を受ける受け部151aを備えている。この受け部151aは、止め穴形状となっており、軸部145の先端面が突き当たるようにされている。そして、受け部151aの、軸部145の先端面が突き当たる部分が凹球面151bとされている。この凹球面151bの中心位置CP11は、軸部145の中心軸CL11上に位置するように設計されている。また、凹球面151bの半径SR11(第1半径)は、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の20%の値を足した値以下、であることが望ましく、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の10%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の10%の値を足した値以下、であることが更に望ましい。本実施形態においては、軸部145の直径D11が4mmに設定されており、半径SR11は、当該直径の値と同一の4mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。
また、受け部151aには、凹球面151bの外周に、軸部145の外周面に対向する筒状壁151cが形成されている。筒状壁151cの直径D12は、筒状壁151cと軸部145の外周面との間に間隙C11が、所定の大きさとなるように設定される。すなわち、間隙C11の大きさが、軸部145の直径D11の値の3-5%となるように設定される。本実施形態においては、軸部145の直径が4mmに設定されているため、間隙C11を0.12-0.2mmとするのが望ましい。なお、ここでいう間隙C11とは、軸部145と筒状壁151cとが同軸上に位置していると仮定し、筒状壁151cの直径D12から軸部145の直径D11を引いた値を2で割ったものである。
上記のような受け部151aに遊嵌される軸部14の、凹球面151bに対向する先端面は、凸球面144とされている。この凸球面144の中心位置は、凸球面144と凹球面151bとが接触した状態において、凹球面151bの中心位置CP11と同一になるように設計されている。また、凸球面144の半径SR12(第2半径)は、凹球面151bの半径SR11の値から、半径SR11の値の2-5%の値を引いた値であることが望ましく、半径SR11の値から、半径SR11の値の3-4%の値を引いた値であることが更に望ましい。本実施形態においては、凹球面151bの半径SR11が4mmに設定されており、凸球面144の半径SR12は、3.85mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。
さらに、図3に示すように、軸部145の先端面には、軸部145と同軸上に、もみ穴146が穿設されている。もみ穴146が穿設されることにより、凸球面144の頂点部は、もみ穴146の直径D13の分だけ、凹球面151bに接触しない非接触部147となっている。このもみ穴146の直径D13(すなわち、非接触部147の直径)は、軸部145の直径D11の値の1/20を超えないことが望ましい。本実施形態においては、軸部145の直径D11が4mmに設定されており、直径D13は0.2mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。また、図3中のもみ穴146の直径D13の大きさは、説明を容易とするためにデフォルメしたものであり、寸法を正確に表すものではない。
(レギュレータの作用および効果について)
レギュレータ1は、圧力作用室116bに供給する操作エアの圧力調整を行うことで、出力ポート112から出力される制御流体の圧力を安定化させることができる。
任意の圧力の操作エアをレギュレータ1に供給し、圧力作用室116b内を正圧の状態にすることで、レギュレータ1を開弁状態にする。すると、レギュレータ1から制御流体が出力される。この場合に、例えば、レギュレータ1の下流側のノズルで制御流体の使用量が増えれば、下流側流体室116aの圧力が低下する。下流側流体室116aの圧力が、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力よりも小さくなると、ダイアフラム部材15の薄膜部152は下流側流体室116aの側に変形し、ダイアフラム部材15は、下流側流体室116aの圧力および圧縮コイルばね16の付勢力と圧力作用室116bの圧力とのバランスが取れる位置まで移動する。これに伴い、弁体14の開度が大きくなる。また、一方で、レギュレータ1の下流側のノズルで制御流体の使用量が減少すれば、下流側流体室116aの圧力が上昇する。下流側流体室116aの圧力が、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力よりも大きくなると、ダイアフラム部材15の薄膜部152は圧力作用室116bの側に変形し、ダイアフラム部材15は、下流側流体室116aの圧力および圧縮コイルばね16の付勢力と圧力作用室116bの圧力とのバランスが取れる位置まで移動する。これに伴い、弁体14の開度が小さくなる。
このように、圧力作用室116bに供給される操作エアの圧力と下流側流体室116aおよび圧縮コイルばね16の付勢力との圧力バランスに応じて、ダイアフラム部材15は、薄膜部152を弾性変形させながら、開閉方向における位置を変動させる。これにより、弁体14の開閉方向における位置が調節され、出力ポート112から出力される制御流体の圧力を安定化させることができる。なお、圧力作用室116bへの操作エアの供給を停止すれば、圧縮コイルばね16の付勢力により、弁体14は、環状弁座115に当接する位置まで移動し、制御流体の流れが遮断されるようになっている。
さらに、弁体14の軸部145は、ダイアフラム部材15の受け部151aに分離可能に遊嵌されているため、弁体14と環状弁座115との過干渉を防止することができる。
詳しく説明すると、例えば、出力ポート112側からの背圧を受け、下流側流体室116aの圧力が急激に高まると、ダイアフラム部材15が、図1中の上方(すなわち閉方向)に押し上げられる。この時、弁体14とダイアフラム部材15とが分離できないように連結されていたとすると、ダイアフラム部材15が閉方向に押し上げられるに伴い、弁体14が閉方向に移動し、環状弁座115に過干渉するおそれがある。弁体14と環状弁座115の過干渉は、摩耗等によるパーティクル発生の原因となるため、好ましくない。
しかし、本実施形態に係るレギュレータ1は、弁体14の軸部145が、ダイアフラム部材15の受け部151aに分離可能に遊嵌されているため、下流側流体室116aの圧力が急激に高まり、ダイアフラム部材15が閉方向に押し上げられたとしても、ダイアフラム部材15は、弁体14から分離して単独で閉方向に移動する。したがって、弁体14は閉方向に移動されることがないため、環状弁座115との過干渉を防止することが可能である。
弁体14の軸部145が、ダイアフラム部材15の受け部151aに分離可能に遊嵌されていると、軸部145の先端面と受け部151aとが当接離間を繰り返しおそれがある。しかし、軸部145の先端面には凸球面144が設けられ、受け部151aには凹球面151bが設けられているため、凸球面144と凹球面151bとの接触面において、過大な応力が発生することや、軸部145の先端面に滑りが発生することを防止することができる。これにより、軸部145の先端面と受け部151aとが当接離間を繰り返しても、発塵の発生を防止することができる。
まず、弁体14とダイアフラム部材15との接触面(凸球面144と凹球面151bとの接触面)に発生する応力について、有限要素法解析を行った結果を説明する。図4は、第1の実施形態において、弁体14とダイアフラム部材15との接触面(凸球面144と凹球面151bとの接触面)に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。
さらに、上記有限要素法解析の結果と比較のために、凹球面151bの半径SR11の大きさ、凸球面144の半径SR12の大きさを変えて有限要素法解析を行った。
第1の比較対象として、凹球面151bの半径SR11を3mmとし、凸球面144の半径SR12を2.9mmとして有限要素法解析を行った。図6は、第1の比較対象において、弁体14とダイアフラム部材15との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。
また、第2の比較対象として、凹球面151bの半径SR11を5mmとし、凸球面144の半径SR12 を4.82mmとして有限要素法解析を行った。図8は、第2の比較対象において、弁体14とダイアフラム部材15との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。
また、第3の比較対象として、凹球面151bの半径SR11を6mmとし、凸球面144の半径SR12 を5.80mmとして有限要素法解析を行った。図10は、第3の比較対象において、弁体14とダイアフラム部材15との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。
また、第4の比較対象として、弁体14とダイアフラム部材15とが、フラットな面同士で接触するものとして有限要素法解析を行った。図12は、第4の比較対象において、弁体14とダイアフラム部材15との接触面に発生する応力について有限要素法解析を行った結果を示す図である。
これらの解析は、弁体14およびダイアフラム部材15ともに、材質をPTFEとし、圧縮コイルばね16の付勢力により、凸球面144が凹球面151bに押し付けられている状態を想定したものである。そして、カラーバーの長さおよび色の濃淡により発生している応力の値を表している。つまり、カラーバーの長さが長いほど発生している応力が大きく、カラーバーの色が濃いほど発生している応力が大きい。
以下に、解析の結果について説明する。本実施形態においては、図4に示すように、中心軸CL11近傍および凸球面144の外周近傍で応力が高くなっている。この内、凸球面の外周近傍で最大の応力が発生しており、その値は、4.48Mpaであった。
第1の比較対象においては、図6に示すように、中心軸CL11近傍で最大の応力が発生しており、中心軸CL11から離れるにつれ、応力が低下している。最大の応力値は、7.28Mpaであった。
第2の比較対象においては、図8に示すように、中心軸CL11近傍および凸球面144の外周近傍で応力が高くなっている。このうち、凸球面の外周近傍で最大の応力が発生しており、その値は、7.64Mpaであった。
第3の比較対象においては、図10に示すように、中心軸CL11近傍および凸球面144の外周近傍で応力が高くなっている。このうち、凸球面の外周近傍で最大の応力が発生しており、その値は、8.27Mpaであった。
第4の比較対象においては、図12に示すように、中心軸CL11から離れるにつれ応力が上昇していき、凸球面144の外周部で最大の応力が発生している。最大の応力値は、12.12Mpaであった。
次に、弁体14とダイアフラム部材15とが接触(凸球面144と凹球面151bとが接触)したときに発生する軸部145の先端面の滑りについて、有限要素法解析を行った結果を説明する。この解析は、上記の応力解析と同様に、弁体14およびダイアフラム部材15ともに、材質をPTFEとし、圧縮コイルばね16の付勢力により、軸部145の先端面がダイアフラム部材15の受け部151aに押し付けられている状態を想定したものである。
図5は、第1の実施形態において、軸部145の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。さらに、上記した第1-第4の比較対象でも、同様に有限要素法解析を行っている。図7は、第1の比較対象において、軸部145の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。図9は、第2の比較対象において、軸部145の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。図11は、第3の比較対象において、軸部145の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。図13は、第4の比較対象において、軸部145の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。これらの解析結果は、カラーバーの長さおよび色の濃淡により発生している滑り量を表している。つまり、カラーバーの長さが長いほど滑り量が大きく、カラーバーの色が濃いほど滑り量が大きい。また、カラーバーの延伸する向きが滑りの方向を表しており、カラーバーが軸部145の側に延伸している箇所は、中心軸CL11側への滑り(内向きの滑り)が発生していることを表し、カラーバーが中央部151の側に延伸している箇所は、中心軸CL11側とは反対側への滑り(外向きの滑り)が発生していることを表している。なお、以下、内向きの滑り量は正の値、外向きの滑り量は負の値として説明するが、滑り量の大小は絶対値により判断する。つまり、例えば、滑り量0.3μmと滑り量-0.5μmを比較する場合、-0.5μmの方が滑り量が大きいと判断される。
以下に、解析の結果について説明する。本実施形態においては、図5に示すように、中心軸CL11側から、外向きの滑り、内向きの滑り、外向きの滑り、内向きの滑りが交互に分布しており、中心軸CL11から離れるにつれ、滑り量は大きくなっている。発生している滑り量の範囲は、-0.052~0.094μmであり、平均的には内向きの滑りが発生している。
第1の比較対象においては、図7に示すように、全体として内向きの滑りが発生している。滑り量は、中心軸CL11から離れるにつれ大きくなり、中心軸CL11と外周との中間位置よりも外周寄りの部分で最大値となっている。そして、その最大値の部分を超えると、外周に向かうにつれ滑り量が小さくなっている。発生している滑り量の範囲は、0~0.7μmである。
第2の比較対象においては、図9に示すように、全体として外向きの滑りが発生している。滑り量は、中心軸CL11から離れるにつれ大きくなり、中心軸CL11と軸部145外周との中間位置の近傍で最大値となっている。そして、その最大値の部分を超えると、外周に向かうにつれ滑り量が小さくなっている。発生している滑り量の範囲は、-0.33~0μmである。
第3の比較対象においては、図11に示すように、全体として外向きの滑りが発生している。滑り量は、中心軸CL11から離れるにつれ大きくなり、中心軸CL11と外周との中間位置よりも外周寄りの部分で最大値となっている。そして、その最大値の部分を超えると、外周に向かうにつれ滑り量が小さくなっている。発生している滑り量の範囲は、-0.86~0μmである。
第4の比較対象においては、図13に示すように、全体として外向きの滑りが発生している。滑り量は、中心軸CL11から離れるにつれ大きくなり、外周部の近傍で最大値となっている。発生している滑り量の範囲は、-5.76~0μmである。
以上の解析の結果をまとめたのが、図14および図15に示すグラフである。図14は、有限要素法解析による最大応力値を比較するグラフである。縦軸は最大応力値を示しており、横軸は凹球面151bの半径SR11の値を示している。
凹球面SRの値が2mmというのは、従来技術に係るレギュレータ50(図28参照)による解析結果を示している。レギュレータ50の、軸部511の先端面512(凸球面)と、ダイアフラム部材57の受け部571(凹球面)の接触している箇所に発生している最大応力値は、10.92MPaである。
凹球面SRの値が3mmというのは、第1の比較対象による解析結果を示している。最大応力値は7.28Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、67%程度の値である。
凹球面SRの値が4mmというのは、本実施形態による解析結果を示している。最大応力値は4.48Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、半分以下の値である。
凹球面SRの値が5mmというのは、第2の比較対象による解析結果を示している。最大応力値は7.64Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、70%程度の値である。
凹球面SRの値が6mmというのは、第3の比較対象による解析結果を示している。最大応力値は8.27Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、76%程度の値である。
凹球面SRの値が∞というのは、フラットであることを意味しており、第4の比較対象による解析結果を示している。最大応力値は12.12Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50よりも高い値となっている。
図15は、有限要素法解析による滑り量の範囲を比較するグラフである。縦軸は滑り量を示しており、横軸は凹球面151bの半径SR11の値を示している。
凹球面SRの値が2mmというのは、従来技術に係るレギュレータ50(図28参照)による解析結果を示している。軸部511の先端面に生じる滑り量の範囲は、0~2.9μmであり、内向きの滑りが発生している。
凹球面SRの値が3mmというのは、第1の比較対象による解析結果を示している。軸部145の先端面に生じる滑り量の範囲は、0~0.7μmであり、内向きの滑りが発生している。また、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の24%程度になっている。
凹球面SRの値が4mmというのは、本実施形態による解析結果を示している。軸部145の先端面に生じる滑り量の範囲は、-0.052~0.094μmであり、平均的には内向きの滑りが発生している。また、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の3%程度になっている。
凹球面SRの値が5mmというのは、第2の比較対象による解析結果を示している。軸部145の先端面に生じる滑り量の範囲は、-0.33~0μmであり、外向きの滑りが発生している。また、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の11%程度になっている。
凹球面SRの値が6mmというのは、第3の比較対象による解析結果を示している。軸部145の先端面に生じる滑り量の範囲は、-0.86~0μmであり、外向きの滑りが発生している。また、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の30%程度になっている。
凹球面SRの値が∞というのは、フラットであることを意味しており、第4の比較対象による解析結果を示している。軸部145の先端面に生じる滑り量の範囲は、-5.76~0μmであり、外向きの滑りが発生している。また、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来よりも大きくなっている。
以上の解析結果を基に、弁体14およびダイアフラム部材15の材質であるPTFEの圧縮強さが約10MPaであることを考慮すれば、凹球面151bの半径SR11が3-5mmであることが、最大応力値が10Mpaよりも小さくなるために望ましく、公差を考慮すれば、半径SR11は、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の20%の値を足した値以下、であることが望ましい。なお、凹球面151bの半径SR11が6mmである場合、最大応力値のみ比較すれば、半径SR11が3mmの場合および5mmの場合と大差がないが、軸部145の先端面に生じる外向きの滑り量が大きい点が好ましくない。なぜならば、内向きの滑りは、軸部145の軸心の調心効果があるのに対し、外向きの滑りは、軸部145の軸心がぶれる原因になるおそれがあるからである。
また、PTFEの圧縮強さは、高温雰囲気下(例えば、制御流体の温度である90℃)では約5MPaであると考えられているため、このことを考慮すれば、凹球面151bの半径SR11が、軸部145の直径D11の値と同一である4mmであることが最も望ましく、公差を考慮すれば、半径SR11は、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の10%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の10%の値を足した値以下、であることが望ましい。
滑り量低減のメカニズムは、以下の通りであると考えられる。図31は、第1の実施形態において、弁体14とダイアフラム部材15とが接触したときに、弁体14とダイアフラム部材15に働く力について説明する図である。図32は、従来技術において、弁体51とダイアフラム部材57とが接触したときに、弁体51とダイアフラム部材57に働く力について説明する図である。なお、図31、図32ともに、説明を分かりやすくするため、弁体14,51と、ダイアフラム部材15,57とを分離して図示している。
互いに接触するダイアフラム部材57と弁体51とには、圧縮コイルばね58(図28参照)の付勢力F31および付勢力F31に対する反力F32が働く。
ダイアフラム部材57には、圧縮コイルばね58の付勢力F31およびその反力F32により、上下方向の圧縮力F33が働く。この圧縮力F33により、ダイアフラム部材57には、中心軸CL51を中心として、半径方向外側に広がろうとする力F34が発生する。さらに、受け部571の表面(中心軸CL51から距離Xの箇所)では、軸部511が接触することによる反力F35が発生しており、この反力F35が分解され、接線方向の力F36が発生する。この力F36は、受け部571が、中心軸CL51を中心として半径方向外側に広がろうとする力になる。
また、弁体51の軸部511には、圧縮コイルばね58の付勢力F31およびその反力F32により、上下方向の圧縮力F37が働く。この圧縮力F37により、軸部511には、中心軸CL51を中心として、半径方向外側に広がろうとする力F38が発生する。さらに、軸部511の先端面512(中心軸CL51から距離Xの箇所)では、受け部571に対する接触力F39が発生しており、この接触力F39が分解され、接線方向の力F40が発生する。この力F40は、軸部511の先端面512が、中心軸CL51を中心として半径方向内側に収縮しようとする力になる。
軸部511の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果では、内向きの滑りが発生している(図30参照)。これは、半径方向外側に広がろうとする力による、受け部571および軸部511の半径方向外側への変形量よりも、半径方向内側に収縮しようとする力による、軸部511の半径方向内側への変形量の方が大きいためであると考えられる。
一方、本実施形態おけるレギュレータ1について説明すると、互いに接触するダイアフラム部材15と弁体14とには、圧縮コイルばね16(図1参照)の付勢力F11および付勢力F11に対する反力F12が働く。
ダイアフラム部材15には、圧縮コイルばね16の付勢力F11およびその反力F12により、上下方向の圧縮力F13が働く。この圧縮力F13により、ダイアフラム部材15には、中心軸CL11を中心として、半径方向外側に広がろうとする力F14が発生する。さらに、受け部151aの凹球面151b(中心軸CL51から距離Xの箇所)では、軸部145が接触することによる反力F15が発生しており、この反力F15が分解され、接線方向の力F16が発生する。この力F16は、受け部151aが、中心軸CL11を中心として半径方向外側に広がろうとする力になる。
また、弁体14の軸部145には、圧縮コイルばね16の付勢力F11およびその反力F12により、上下方向の圧縮力F17が働く。この圧縮力F17により、軸部145には、中心軸CL11を中心として、半径方向外側に広がろうとする力F18が発生する。さらに、軸部145の先端面である凸球面144(中心軸CL11から距離Xの箇所)では、受け部151aに対する接触力F19が発生しており、この接触力F19が分解され、接線方向の力F20が発生する。この力F20は、軸部145の凸球面144が、中心軸CL11を中心として半径方向内側に収縮しようとする力になる。
軸部145の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果では、平均的には内向きの滑りが発生している(図5参照)。これは、半径方向外側に広がろうとする力による、受け部151aおよび軸部145の半径方向外側への変形量よりも、半径方向内側に収縮しようとする力による、軸部145の半径方向内側への変形量の方が大きいためであると考えられる。
しかし、その滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の3%程度になっている。滑り量の大きさが大きく低減されている。これは、凹球面151bの半径SR11を軸部145の直径D11を、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の20%の値を足した値以下、もしくは、軸部145の直径d11の値から、直径D11の値の10%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の10%の値を足した値以下、とすることで、凹球面151bに生じる反力F15が、凹球面151bに対して垂直に近い角度になったために、半径方向外側に広がろうとする力が低減され、かつ、凸球面144に生じる接触力F19が、凸球面144に対して垂直に近い角度になったために、半径方向内側に縮小しようとする力が低減されたためである。半径方向の力が低減されることで、半径方向の変形量が低減され、これが滑り量の低減につながっている。
以上説明したように、本実施形態に係るレギュレータ1は、
(1)弁体14が収容される上流側流体室113と、上流側流体室113の下流側に位置する下流側流体室116aと、上流側流体室113と下流側流体室116aとを連通させる弁孔114と、弁孔114の外周に沿って設けられ、弁体14が当接離間する環状弁座115と、下流側流体室116aに収容され、操作エアの圧力に応じて、当接離間方向に沿って位置を変えるダイアフラム部材15と、を備え、弁体14は、当接離間の方向に沿って、上流側流体室113から、弁孔114を通じて、下流側流体室116aまで延在する、円柱状の軸部145を備え、軸部145は、ダイアフラム部材15の、軸部145の先端面を受ける受け部151aに分離可能に遊嵌され、弁体14の、ダイアフラム部材15の側の反対側に、弁体14に対して環状弁座115に当接する方向に付勢力を与える付勢手段(例えば圧縮コイルばね16)が配設され、操作エアの圧力と、付勢力のバランスにより、弁体14の開度調整を行うレギュレータ1において、受け部151aは、先端面に対向する部分に、軸部145の中心軸CL11上に中心が位置する第1半径(半径SR11)により形成された凹球面151bを備えること、第1半径(半径SR11)は、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であること、先端面の、凹球面151bに対向する部分は、第1半径(半径SR11)の値から、第1半径(半径SR11)の値の2-5%の値を引いた値である第2半径(半径SR12)により形成される凸球面144であること、を特徴とする。
上記レギュレータ1によれば、第1半径(半径SR11)が、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であるため、弁体14とダイアフラム部材15とが接触したときの接触面に発生する応力を10MPa以下に抑えることができる。
例えば、弁体14やダイアフラム部材15には、耐腐食性の高いPTFEやPFA等が選定されるところ、PTFEの圧縮強さは約10MPa、PFAの圧縮強さは約15MPaである。このうち、圧縮強さが低いPTFEを選定したとしても、上記の通り、接触面に発生する応力を10MPa以下に抑えることができるため、弁体14およびダイアフラム部材15の塑性変形、ひいては破壊や発塵を防止することが可能である。
また、上記レギュレータ1によれば、第1半径(半径SR11)が、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の20%の値を引いた値以上であるため、弁体14とダイアフラム部材15との接触面における、軸部145の滑り量を、最大値で比較したときに、従来の30%以下に抑えることができる。軸部145の滑り量を抑えることで、発塵を抑えることが可能である。
以上のように、上記接触面に発生する応力、滑り量を抑えることができれば、接触面において発塵するおそれを低減することができる。これにより、制御流体へのパーティクル混入の防止、ひいては半導体の製造効率の低下を防止することができる。
(2)(1)に記載のレギュレータ1において、第1半径(半径SR11)は、軸部145の直径D11の値に、直径D11の値の20%の値を足した値以下、であること、が好ましい。これにより、弁体14とダイアフラム部材15との接触面に発生する応力を確実に10MPa以下に抑えることができ、弁体14およびダイアフラム部材15の塑性変形、ひいては破壊や発塵を防止することが可能である。
(3)(2)に記載のレギュレータ1において、第1半径(半径SR11)は、軸部145の直径D11の値から、直径D11の値の10%の値を引いた値以上、軸部145の直径の値に、直径D11の値の10%の値を足した値以下、であること、が好ましい。これにより、弁体14とダイアフラム部材15とが接触したときの接触面に発生する応力を5MPa以下に抑えることが可能である。PTFEの圧縮強さは、高温雰囲気下(例えば、制御流体の温度である90℃)では約5MPaであると考えられているところ、弁体14とダイアフラム部材15とが接触したときの接触面に発生する応力を5MPa以下に抑えることで、高温雰囲気下でも、弁体14およびダイアフラム部材15の塑性変形、ひいては破壊や発塵を防止することが可能である。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のレギュレータ1において、第2半径(半径SR12)は、第1半径(半径SR11)の値から、第1半径(半径SR11)の値の3-4%の値を引いた値であること、が好ましい。これにより、弁体14とダイアフラム部材15との接触面に発生する応力を確実に低減することができる。例えば、第2半径(半径SR12)を、第1半径(半径SR11)の値から、第1半径(半径SR11)の値の2%の値を引いた値よりも大きい値とすると、弁体14の軸部145の、ダイアフラム部材15の受け部151aの中での自由度が小さくなり、仮に弁体14が、開閉動作中に傾いた場合に、その傾きを吸収できず、上記接触面に過剰な応力が発生するおそれがある。一方で、第2半径(半径SR12)を、第1半径(半径SR11)の値から、第1半径(半径SR11)の値の4%の値を引いた値よりも小さい値とすると、弁体14の軸部145がダイアフラム部材15の受け部151aに十分に当接せず、軸部145の中心軸CL11がぶれてしまうおそれがある。よって、上記の通り、第2半径(半径SR12)は、第1半径(半径SR11)の値から、第1半径の値の3-4%の値を引いた値であること、が好ましい。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載のレギュレータ1において、受け部151aは、軸部145の外周面に対向する筒状壁151cを備えること、筒状壁151cと軸部145の外周面との間に間隙C11を備えること、間隙C11の大きさは、軸部145の直径D11の値の3-5%であること、が好ましい。
(7)に記載のレギュレータ1によれば、受け部151aは、軸部145の外周面に対向する筒状壁151cを備えるため、筒状壁151cによって、軸部145の中心軸CL11がぶれてしまうことを確実に防止することができる。
また、付勢手段(圧縮コイルばね16)の付勢力により、軸部145が受け部151aに押し付けられると、軸部145は、圧縮され、軸部145の径が太る方向に変形するおそれがあるが、(7)に記載のレギュレータ1によれば、筒状壁151cと軸部145の外周面との間に間隙C11を備えるため、軸部145の径が圧縮されて太った場合でも、筒状壁151cと軸部145との干渉を防止することができる。干渉を防止することで、軸部145と筒状壁151cとが摩擦して発塵することを防止することができる。ここで、上記の間隙C11の大きさは、軸部145の直径D11の値の3-5%であることが望ましい。間隙C11の大きさが、軸部145の直径D11の5%よりも大きいと軸部145の中心軸CL11のぶれを確実に防止することができなくなり、軸部145の直径D11の3%よりも小さいと軸部145が圧縮されて太った場合に、筒状壁151cと干渉するおそれがあるためである。なお、ここでいう間隙C11とは、軸部145と筒状壁151cとが同軸上に位置していると仮定し、筒状壁151cの直径D12から軸部145の直径D11を引いた値を2で割ったものである。
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載のレギュレータ1において、凸球面144の頂点部には、軸部145と同軸上に、凹球面151bに接触しない非接触部147が設けられていること、非接触部147の直径D13は、軸部145の直径D11の値の1/20を超えないこと、を特徴とする。
凸球面144は、切削加工または射出成形等により形成されることが想定される。切削加工によるものである場合、凸球面144の頂点部分は、加工速度がゼロになり、バリが発生するおそれがある。バリが発生した状態で凹球面151bに接触すると、発塵の原因となるおそれがあるため、(7)に記載のレギュレータ1のように、予め凸球面144の頂点部分を非接触部147としておくことで、発塵を防止することが可能である。また、凸球面144を射出成形により形成する場合には、凸球面144の表面上にゲートが位置してしまうと、弁体14とダイアフラム部材15とが接触したときの接触面に発生する応力および滑り量を抑えるという効果を、十分に得られなくなるおそれがある。そこで、(7)に記載のレギュレータ1のように、凸球面144の頂点部分を非接触部147としておくことで、上記効果に影響のない非接触部147にゲートを設けることができるようになる。ただし、非接触部147の直径D13は、軸部145の直径D11の1/20を超えないことが望ましい。非接触部147の直径D13が、軸部145の直径D11の1/20を超えると、凸球面144の表面積がその分狭くなり、却って、上記の応力および滑り量を抑えるという効果が十分に得られなくなるためである。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るレギュレータについて、第1の実施形態に係るレギュレータと異なる点のみ、図16を用いて説明する。図16は、第2の実施形態における弁体24とダイアフラム部材25との接触部を拡大した図であり、図2に対応した図である。
第2の実施形態に係るレギュレータは、第1の実施形態に係るレギュレータと、受け部および軸部の先端面の形状のみ異なっている。ダイアフラム部材25の受け部251aは、図16に示すように、凹球面251bと、凹球面251bの外周に設けられる凹曲面251cと、を備えている。
凹球面251bは、弁体24の軸部245の中心軸CL21上の中心位置CP21を中心とした角度A11に示される範囲に設けられている。角度A11は、中心位置CP21を中心として、24度±1度の範囲であることが望ましい。また、凹球面151bの半径SR21(第1半径)は、軸部245の直径D21の値から、直径D21の値の20%の値を引いた値以上であることが望ましい。そして、半径SR21の上限値は、上記角度A11と、凹球面151bと接線連続に設けられる凹曲面251cの半径SR22と、から定まる。本実施形態においては、軸部145の直径D21が4mmに設定されており、半径SR21は、6mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。また、凹球面251bの範囲は、角度A11に示される範囲である。
凹曲面251cは、凹球面251bと接線連続に設けられており、その半径R22は、凹球面251bの半径SR21よりも小さい半径に設定されている。具体的には、半径SR21の値から、半径SR21の値の60-65%の値を引いた値であることが望ましい。本実施形態においては、半径R22は、2.2mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。
上記のような受け部251aに遊嵌される、弁体24の軸部245の先端面は、凹球面251bに対向する部分に設けられる凸球面244と、凸球面244の外周かつ凹曲面251cに対向する部分に設けられる凸曲面246と、により形成されている。
この凸球面244の中心位置は、凸球面244と凹球面251bとが接触した状態において、凹球面251bの中心位置CP21と同一になるように設計されている。また、凸球面244の半径SR23(第2半径)は、凹球面251bの半径SR21の値から、半径SR21の値の2-5%の値を引いた値であることが望ましく、半径SR21の値から、半径SR21の値の3-4%の値を引いた値であることが更に望ましい。本実施形態においては、凹球面251bの半径SR21が6mmに設定されており、凸球面244の半径SR23は、5.6mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。
凸曲面246は、凸球面244と接線連続に設けられており、その半径R24は、凸球面244の半径SR23よりも小さい半径に設定されている。具体的には、凸曲面246の外周縁における凹曲面251cとの間隙C21(図17参照)が、初期状態で0.02以上0.03以下になるようにすることが望ましい。本実施形態においては、半径R24は、2.05mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。
以上のような構成のレギュレータについて、第1の実施形態に係るレギュレータ1と同様に、有限要素法による解析を行った。図18は、第2の実施形態において、弁体24とダイアフラム部材25との接触面に発生する応力について、有限要素法解析を行った結果を示す図である。また、図19は、第2の実施形態において、軸部245の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。
まず、応力の解析結果について説明する。図18に示すように、中心軸CL21近傍で最大の応力が発生しており、中心軸CL21から離れるにつれ、応力が低下している。そして、凸曲面246と凸球面244とが接線連続に接続されている箇所の近傍で応力が最低値となり、その箇所を過ぎると外周部に向かって応力の値が大きくなっている。最大の応力値は、6.15Mpaであった。
次に、滑り量の解析結果について説明する。図19に示すように、中心軸CL21側では外向きの滑りが発生し、軸部245の外周部では内向きの滑りが発生している。発生している滑り量の範囲は、-0.235~0.122μmであり、平均的にはやや外向きの滑りとなっている。
以上の解析の結果を、従来技術に係るレギュレータ50および第1の実施形態に係るレギュレータ1の解析結果と比較する。図26は、各形態における有限要素法解析による最大応力値を比較するグラフである。図27は、各形態における有限要素法解析による滑り量の範囲を比較するグラフである。
図26に示すように、第2の実施形態における最大応力値は6.15Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、56%程度の値である。また、図27に示すように、第2の実施形態において軸部245の先端面に生じる滑り量の範囲は、-0.235~0.122μmであり、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の8%程度になっている。以上の結果は、第1の実施形態に係るレギュレータ1に比べると、応力値、滑り量ともに、やや大きくなっているが、従来技術に係るレギュレータ50に比すれば、応力値の緩和、滑り量の緩和が大きく低減されているため、発塵の防止に効果があると言える。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るレギュレータについて、第1の実施形態に係るレギュレータと異なる点のみ、図20を用いて説明する。図20は、第3の実施形態における弁体34とダイアフラム部材35との接触部を拡大した図であり、図2に対応した図である。
第3の実施形態に係るレギュレータは、第1の実施形態に係るレギュレータと、受け部および軸部の先端面の形状のみ異なっている。ダイアフラム部材35の受け部351aは、図20に示すように、凹球面351bと、凹球面351bの外周に設けられる第1フラット面351cと、を備えている。
凹球面351bの中心位置CP31は、弁体34の軸部345の中心軸CL31上に位置するように設計されている。また、凹球面351bの半径SR31(第1半径)は、軸部345の直径D31の値から、直径D31の値の20%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部345の直径D31の値に、直径D31の値の20%の値を足した値以下、であることが望ましく、軸部345の直径D31の値から、直径D31の値の10%の値を引いた値以上であり、かつ、軸部345の直径D31の値に、直径D31の値の10%の値を足した値以下、であることが更に望ましい。本実施形態においては、軸部345の直径D31が4mmに設定されており、半径SR31は、4mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。また、凹球面351bの範囲は、角度A21に示される範囲である。角度A21は、中心位置CP31を中心として、40度±1度であることが望ましい。
第1フラット面351cは、凹球面351bの接線上に設けられており、軸部345の中心軸CL31に対する角度A31が、70度とされている。なお、この角度A31は、半径SR31の大きさが、上記した範囲に入るよう、適宜設定される。
上記のような受け部351aに遊嵌される、弁体34の軸部345の先端面は、凹球面351bに対向する部分に設けられる凸球面344と、凸球面344の外周かつ第1フラット面351cに対向する部分に設けられる第2フラット面346と、により形成されている。
この凸球面344の中心位置は、凸球面344と凹球面351bとが接触した状態において、凹球面351bの中心位置CP31と同一になるように設計されている。また、凸球面344の半径SR33(第2半径)は、凹球面351bの半径SR31の値から、半径SR31の値の2-5%の値を引いた値であることが望ましく、半径SR31の値から、半径SR31の値の3-4%の値を引いた値であることが更に望ましい。本実施形態においては、凹球面351bの半径SR31が4mmに設定されており、凸球面344の半径SR33は、3.85mmに設定されている。なお、ここに挙げている数値はあくまでも一例である。
第2フラット面346は、凸球面344の接線上に設けられており、軸部345の中心軸CL31に対する角度A32が、69.25度とされている。なお、この角度A32は、角度A31よりも小さくなるよう、かつ、半径SR33の大きさが、上記した範囲に入るよう、適宜設定される。
以上のような構成のレギュレータについて、第1の実施形態に係るレギュレータ1と同様に、有限要素法による解析を行った。図21は、第3の実施形態において、弁体34とダイアフラム部材35との接触面に発生する応力について、有限要素法解析を行った結果を示す図である。また、図22は、第3の実施形態において、軸部345の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。
まず、応力の解析結果について説明する。図21に示すように、中心軸CL31近傍および軸部345の外周近傍で応力が高くなっている。このうち、軸部345の外周近傍で最大の応力が発生しており、その値は、6.82Mpaであった。
次に、滑り量の解析結果について説明する。図22に示すように、全体的に外向きの滑りが発生しており、中心軸CL31から離れるにつれ、滑り量が大きくなっている。発生している滑り量の範囲は、-0.311~0.045μmである。
以上の解析の結果を、従来技術に係るレギュレータ50および第1の実施形態に係るレギュレータ1の解析結果と比較する。
図26に示すように、第3の実施形態における最大応力値は6.82Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、63%程度の値である。また、図27に示すように、第2の実施形態において軸部345の先端面に生じる滑り量の範囲は、-0.311~0.045μmであり、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の11%程度になっている。以上の結果は、第1の実施形態に係るレギュレータ1に比べると、応力値、滑り量ともに、やや大きくなっているが、従来技術に係るレギュレータ50に比すれば、応力値の緩和、滑り量の緩和が大きく低減されているため、発塵の防止に効果があると言える。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るレギュレータについて、第1の実施形態に係るレギュレータと異なる点のみ、図23を用いて説明する。図23は、第3の実施形態における弁体44とダイアフラム部材45との接触部を拡大した図であり、図2に対応した図である。
第1の実施形態に係るレギュレータ1は、受け部151aが軸部145の外周面に対向した筒状壁151cを備えており、軸部145の軸心がぶれてしまうことを確実に防止可能となっている。しかし、必ずしも筒状壁151cを設ける必要はなく、例えば図23に示すように、筒状壁151cは設けずに、弁体44の軸部445の先端面の凸球面444と、ダイアフラム部材45受け部451aの凹球面451bとを当接させる構成としても良い。この場合、軸部445の先端部には、その他の部分よりも径を太くした太径部446が設けられている。太径部446が設けられることで、凸球面444の幅W11が、凹球面451bの幅W12よりも大きくなっており、これにより、軸部の軸心のぶれを吸収可能なようにしている。なお、凸球面444の半径SR42および凹球面451bの半径SR41は、第1の実施形態と同様である。
以上のような構成のレギュレータについて、第1の実施形態に係るレギュレータ1と同様に、有限要素法による解析を行った。図24は、第4の実施形態において、弁体44とダイアフラム部材45との接触面に発生する応力について、有限要素法解析を行った結果を示す図である。また、図25は、第4の実施形態において、軸部445の先端面の滑りについて有限要素法解析を行った結果を示す図である。
まず、応力の解析結果について説明する。図24に示すように、中心軸CL31近傍で最大の応力が発生しており、中心軸CL41から離れるにつれ、応力が低下している。そして、凸球面444と凹球面451bとが接触している部分の最外周部で、応力の上昇がみられる。最大の応力値は、4.47Mpaであった。
次に、滑り量の解析結果について説明する。図25に示すように、中心軸CL41近傍では、内向きの滑りが発生しており、凹球面451bの外周側では、外向きの滑り量が大きくなっている。発生している滑り量の範囲は、-0.160~0.128μmである。
以上の解析の結果を、従来技術に係るレギュレータ50および第1の実施形態に係るレギュレータ1の解析結果と比較する。
図26に示すように、第4の実施形態における最大応力値は4.47Mpaであり、従来技術に係るレギュレータ50に比して、41%程度の値である。また、図27に示すように、第2の実施形態において軸部445の先端面に生じる滑り量の範囲は、-0.160~0.128μmであり、滑り量の大きさは、最大値で比較した場合に、従来の5%程度になっている。以上の結果は、第1の実施形態に係るレギュレータ1に比べると、応力値、滑り量ともに同等であり、発塵の防止に効果があると言える。
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、軸部145の先端面の非接触部147は、もみ穴146により形成されるものとしているが、凸球面144の頂点部をフラット面にすることで、非接触部147を設けても良い。また、上記の実施形態においては、弁体14およびダイアフラム部材15の材質をPTFEとして説明しているが、これに限定されるものでなく、その他のフッ素系合成樹脂(例えばPFA)であっても、同様に発塵を抑えることが可能である。
1 レギュレータ
14 弁体
15 ダイアフラム部材
16 圧縮コイルばね(付勢手段の一例)
113 上流側流体室
114 弁孔
115 環状弁座
116a 下流側流体室
144 凸球面
145 軸部
151a 受け部
151b 凹球面

Claims (8)

  1. 弁体が収容される上流側流体室と、
    前記上流側流体室の下流側に位置する下流側流体室と、
    前記上流側流体室と前記下流側流体室とを連通させる弁孔と、
    前記弁孔の外周に沿って設けられ、前記弁体が当接離間する環状弁座と、
    前記下流側流体室に収容され、操作エアの圧力に応じて、当接離間方向に沿って位置を変えるダイアフラム部材と、
    を備え、
    前記弁体は、前記当接離間の方向に沿って、前記上流側流体室から、前記弁孔を通じて、前記下流側流体室まで延在する、円柱状の軸部を備え、
    前記軸部は、前記ダイアフラム部材の、前記軸部の先端面を受ける受け部に分離可能に遊嵌され、
    前記弁体の、前記ダイアフラム部材の側の反対側に、前記弁体に対して前記環状弁座に当接する方向に付勢力を与える付勢手段が配設され、
    前記操作エアの圧力と、前記付勢力のバランスにより、前記弁体の開度調整を行うレギュレータにおいて、
    前記受け部は、前記先端面に対向する部分に、前記軸部の中心軸上に中心が位置する第1半径により形成された凹球面を備えること、
    前記第1半径は、前記軸部の直径の値から、前記直径の値の20%の値を引いた値以上であること、
    前記先端面の、前記凹球面に対向する部分は、前記第1半径の値から、前記第1半径の値の2-5%の値を引いた値である第2半径により形成される凸球面であること、
    を特徴とするレギュレータ。
  2. 請求項1に記載のレギュレータにおいて、
    前記第1半径は、前記軸部の直径の値に、前記直径の値の20%の値を足した値以下、であること、
    を特徴とするレギュレータ。
  3. 請求項2に記載のレギュレータにおいて、
    前記第1半径は、前記軸部の直径の値から、前記直径の値の10%の値を引いた値以上、前記軸部の直径の値に、前記直径の値の10%の値を足した値以下、であること、
    を特徴とするレギュレータ。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1つに記載のレギュレータにおいて、
    前記第2半径は、前記第1半径の値から、前記第1半径の値の3-4%の値を引いた値であること、
    を特徴とするレギュレータ。
  5. 請求項1に記載のレギュレータにおいて、
    前記受け部は、前記凹球面の外周に、前記第1半径よりも小さい半径により形成される、前記凹球面と接線連続の凹曲面を備えること、
    前記先端面は、前記凸球面の外周、かつ、前記凹曲面に対向する部分に、前記第2半径よりも小さい半径により形成される、前記凸球面と接線連続の凸曲面を備えること、
    を特徴とするレギュレータ。
  6. 請求項1に記載のレギュレータにおいて、
    前記受け部は、前記凹球面の外周に、前記凹球面の接線上の第1フラット面を備えること、
    前記先端面は、前記凸球面の外周、かつ、前記第1フラット面に対向する部分に、前記凸球面の接線上の第2フラット面を備えること、
    を特徴とするレギュレータ。
  7. 請求項1に記載のレギュレータにおいて、
    前記受け部は、軸部の外周面に対向する筒状壁を備えること、
    前記筒状壁と前記軸部の外周面との間に間隙を備えること、
    前記間隙の大きさは、前記軸部の直径の値の3-5%であること、
    を特徴とするレギュレータ。
  8. 請求項1に記載のレギュレータにおいて、
    前記凸球面の頂点部には、前記軸部と同軸上に、前記凹球面に接触しない非接触部が設けられていること、
    前記非接触部の直径は、前記軸部の直径の値の1/20を超えないこと、
    を特徴とするレギュレータ。
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