(作業車両の概要)
まず、図1および図2を参照して実施形態に係る作業車両1の概要について説明する。図1は、作業車両1を示す側面図である。図2は、作業車両1を示す平面図である。
なお、以下の説明では、前後方向とは、作業車両1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。作業車両1の進行方向とは、直進時において、操縦席41からハンドル35(ステアリング装置)に向かう方向である(図1および図2参照)。
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、操縦者(作業者ともいう。)が操縦席41に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。
実施形態では、作業車両1を、圃場作業装置として苗植付部4を備え、圃場に苗を受け付ける乗用型の苗移植機1として説明する。図1および図2に示すように、苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク機構3を介して、圃場に苗を植え付ける昇降可能な苗植付部4を備える。
走行車体2の後部上側には施肥装置5の本体部分が配置される。なお、作業車両1が苗移植機1ではない場合、種子を供給する播種装置などを作業装置として備える場合がある。
走行車体2は、車輪であり駆動輪である、左右の前輪10および後輪11を備える四輪駆動車両である。走行車体2の車体骨格を構成するメインフレーム15の前側には、苗植付部4などに駆動力を伝達するミッションケース13と、エンジン30から供給される駆動力、すなわち、エンジン30で発生した回転をミッションケース13に出力する油圧式の無段変速装置14とが設けられる。
無段変速装置14は、いわゆるHST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機である。以下では、無段変速装置がHST14である場合を説明する。
ミッションケース13内には、高速モードでの路上走行時や、低速モードでの苗の植え付け時などにおける走行車体2の走行モードを切り替える副変速機構16が設けられる。ミッションケース13の左右側方には、前輪ファイナルケース10aが設けられ、左右の前輪ファイナルケース10aの操向方向を変更可能な前輪支持部からそれぞれ外向きに突出する左右の前車軸10bに前輪10が取り付けられる。
また、メインフレーム15の後部側には、横方向に設けられた後部フレーム22(図2参照)の左右両側に後輪ギヤケース11aが取付けられ、後輪ギヤケース11aからそれぞれ外向きに突出する左右の後車軸11bに後輪11がそれぞれ取り付けられる。
また、後部フレーム22の上部には、昇降リンク機構3を支持する左右のリンク支持フレーム23が上方に向けて突設される。左右のリンク支持フレーム23の下部側で、かつ、左右の間には、左右一対のロワリンクアーム24が設けられる。左右のロワリンクアーム24の左右の間に、油圧により作動する昇降シリンダ25が設けられる。
昇降シリンダ25の上方には、アッパリンクアーム26が設けられ、平行リンク機構である昇降リンク機構3が構成される。なお、それぞれ一端が走行車体2側に連結された、左右のロワリンクアーム24と、昇降シリンダ25と、アッパリンクアーム26の他端側とは、苗植付部4の前部に装着される。
また、メインフレーム15上には、エンジン30が搭載される。エンジン30の回転動力が、ベルト伝動装置21およびHST14を介してミッションケース13に伝達される。ミッションケース13に伝達された回転動力は、ミッションケース13内の副変速機構16により変速された後、走行動力と外部取り出し動力に分けられる。
また、エンジン30の回転動力は、図示しない油圧ポンプに伝達される。油圧ポンプで発生した油圧は、HST14や、ハンドル35のパワーステアリング機構88(図3参照)や、昇降シリンダ25などに供給される。
ミッションケース13に伝達された回転動力から取り出される外部取り出し動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチケース27に伝達され、植付クラッチケース27から植付伝動軸67によって苗植付部4に伝達される。
一方、ミッションケース13の後部には、左右のドライブシャフト42が設けられる。エンジン30からの回転動力は、ミッションケース13およびドライブシャフト42を介して左右の後輪ギヤケース11aに伝動される。
なお、左右のドライブシャフト42よりも伝動方向上手側には、左右のドライブシャフト42に対する動力伝達を入切するサイドクラッチ44(図3参照)が配置される。図1に示すように、操縦席41の前側下部であり、かつ、左右一側には、左右のサイドクラッチ44を入切操作するサイドクラッチペダル43aが設けられる。
左右のサイドクラッチペダル43aのうち、旋回内側のサイドクラッチペダル43aを踏み込んでサイドクラッチ44を切状態にしてからハンドル35を操作して旋回走行すると、旋回内側の後輪11の駆動回転を完全に遮断することができる。
走行車体2の前側上部には、各部の操作を行う操縦パネル38を上部に配置されたボンネット39が設けられる。操縦パネル38には、モニタ86(図3参照)などが設けられる。
また、ボンネット39には、走行車体2を操舵するハンドル35、HST14や苗植付部4を操作する変速操作レバー36、副変速機構16を操作する副変速操作レバー37などが設けられる。
また、ボンネット39の前側には、開閉可能なフロントカバー40が設けられる。フロントカバー40の内部には、燃料タンクやバッテリ、ハンドル35の操舵に左右の前輪10および左右の前輪ファイナルケース10aの下部側を回動させる連動機構が設けられる。前輪10は、例えば、ハンドル35の操舵に応じて転舵する操舵輪である。
ボンネット39よりも後側で、かつ、エンジン30の上方位置には、エンジン30の上部および側部を覆うエンジンカバー30aが設けられ、エンジンカバー30aの上部には操縦者が着席する操縦席41が設けられる。
操縦席41の後側であって、メインフレーム15の後端側には、施肥装置5が設けられる。施肥装置5の駆動力は、左右の後輪ギヤケース11aの左右一側から施肥装置5に臨むように設けられる、施肥伝動機構によって伝達される。
エンジンカバー30aおよびボンネット39の下部における左右両側は、略水平なフロアステップ33が形成される。フロアステップ33は、図2に示すように、一部格子状であり、たとえば、フロアステップ33を歩く操縦者の靴などについた泥が落ちても、落ちた泥などが圃場に落下する。
また、フロアステップ33の後方には、図2に示すように、リヤステップ330が連接される。リヤステップ330の表面には、作業時に足が滑りにくくなるように、たとえば、複数の突起パターンが形成された滑り止め加工が施されることが好ましい。
また、走行車体2の前側であり、かつ、左右両側には、苗枠支柱51に複数の予備苗載せ台52を上下方向に間隔を空けて配置する予備苗枠50がそれぞれ設けられ、苗植付部4に補充される苗や肥料袋などの作業資材が載置可能となっている。
また、昇降リンク機構3の後端部には、圃場に植え付ける苗を積載する苗タンク53が、左右方向に摺動させる摺動機構と共に装着されている。苗タンク53には、上下方向に長い苗仕切フェンス54が左右方向に所定間隔を空けてそれぞれ配置される。苗タンク53の下方には、積載された苗を掻き取って圃場に植え付ける苗植付装置55が配置される。
苗植付装置55は、苗仕切フェンス54により区切られた植付作業条数と同数、すなわち、8条同時に植え付けるものであり、植付伝動ケース56が苗タンク53の下方に間隔を空けて4つ配置され、植付伝動ケース56の左右両側に回転しながら植込杆58により苗を取って圃場に植え付ける植付ロータリ57がそれぞれ装着される。
施肥装置5は、肥料が貯留される施肥ホッパ70が、苗植付部4の作業条数と同数(図2に示す例では、8条分)に仕切られている。なお、8条分の施肥ホッパ70は、左右方向に長いため肥料の投入や着脱の利便性が低下するので、4条ずつに仕切られたものを左右にそれぞれ並べる、いわゆるサイド施肥構造であってもよい。
施肥ホッパ70の下部には、肥料を設定量ずつ供給する繰出装置71が1条ごとに設けられる。繰出装置71の下方には、肥料を移動させる搬送風が通過する通風ダクト72が左右方向に設けられる。繰出装置71の下方には、苗植付部4の苗植付位置の近傍に肥料を案内する施肥ホース73が設けられる。また、通風ダクト72の一側端部には、ブロア用電動モータ76により作動して搬送風を発生するブロア74が設けられる。
図1および図2に示すように、苗植付部4の下方には、圃場面に接地して滑走するセンターフロート62Cと、左右2つずつのサイドフロート62L、62Rとが、軸まわりに回動自在に設けられる。なお、センターフロート62Cおよび左右のサイドフロート62L、62Rを総称してフロート62という場合がある。
また、苗植付部4の下方において、フロート62よりも前側には、圃場面の凹凸を整地する整地ロータ63が設けられる。など、整地ロータ63には、左右他側の後輪ギヤケース11aからロータ伝動シャフト63aを介して駆動力が伝達される。
また、図1に示すように、苗植付部4の左右両側には、左右いずれか一方が圃場面に接地して、次の作業条(次工程)における走行の目安とする溝を形成する線引きマーカ65がそれぞれ設けられる。左右の線引きマーカ65は、左右一側が接地すると他側が上方に離間し、旋回時に苗植付部4を上昇させたときには左右両側共に上方に離間し、旋回後に苗植付部4が下降すると、左右一側が上方に離間して他側が接地する。
また、図1および図2に示すように、走行車体2の左右中央部であり、かつ、ボンネット39の前方には、上下方向に長いセンターマスコット66が設けられる。センターマスコット66を左右の線引きマーカ65により圃場に形成された溝に合わせることにより、直前の作業条の作業位置に合わせた走行が可能になり、作業精度の向上や、非作業の発生防止を図ることができる。
なお、圃場の土質によっては、左右の線引きマーカ65により形成されたガイド線がすぐに埋もれてしまい、直進の目安が消えてしまうことがある。このような場合には、左右の線引きマーカ65よりも前側に設けられた左右のサイドマーカ19を用いるとよい。すなわち、左右のサイドマーカ19を外側方向に移動させ、植え付けられた苗の上方にサイドマーカ19を位置させることで、前の作業条の苗の植え付けに合わせた植付作業が可能になる。
また、図1に示すように、苗移植機1は、位置検出装置150を備える。位置検出装置150は、苗移植機1の現在の位置、および方位を検出する。位置検出装置150は、例えば、方位センサや、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位手段を含む。位置検出装置150は、複数の装置によって構成されてもよい。位置検出装置150は、カメラや、超音波センサを含んでもよく、圃場における旋回位置を取得し、旋回位置までの距離を検出してもよい。
例えば、位置検出装置150は、測位手段から測位情報を受け取り、受け取った測位情報に基づいて走行車体2の現在の位置情報、および方位情報を作成し、現在の位置、および方位を検出する。位置検出装置150は、たとえば、取付ステー59に取り付けられ、走行車体2の上方に配置される。
位置検出装置150による位置情報に基づいて作成される、直進制御用プログラムと、旋回制御用プログラムとは、互いに別の場所に格納される。直進制御用プログラムは、たとえば、位置検出装置150内の直進制御用ECU(Electronic Control Unit)100aに格納され、旋回制御用プログラムは、たとえば、ボンネット39に収容された旋回制御用ECU100bに格納される。なお、直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、後述する制御装置100(図3参照)に含まれる。直進制御用ECU100aおよび旋回制御用ECU100bは、同一のECUに格納されてもよい。
(苗移植機の制御系)
次に、図3を参照して苗移植機1の制御系について説明する。図3は、苗移植機1の制御装置100を中心とした制御系を示すブロック図である。苗移植機1は、電子制御によって各部を制御することが可能なものであり、各部を制御する制御装置(以下、コントローラという。)100を備える。
コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶部、さらには入出力部が設けられ、これらは、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。記憶部には、苗移植機1を制御するコンピュータプログラムなどが格納される。コントローラ100は、記憶部に格納されたコンピュータプログラムなどを読み出すことで、各機能を発揮させる。
コントローラ100には、たとえば、アクチュエータ類として、スロットルモータ80、油圧制御弁81、82、植付クラッチ作動ソレノイド83、サイドクラッチ作動ソレノイド84、HSTモータ85、線引きマーカ昇降モータ87、ステアリングモータ95、デフロック切替モータ96などが接続される。
スロットルモータ80は、エンジン30の吸気量を調節するスロットルを作動させることにより、エンジン30の出力軸の回転数を増減させる。油圧制御弁81は、昇降シリンダ25の伸縮動作を制御する。油圧制御弁82は、パワーステアリング機構88を制御する。植付クラッチ作動ソレノイド83は、植付クラッチ27aを作動させる。
サイドクラッチ作動ソレノイド84は、後輪11(図1参照)への動力伝達状態を切り替えるサイドクラッチ44を作動させる。なお、サイドクラッチ44は、左右の後輪11にそれぞれ設けられ、サイドクラッチ作動ソレノイド84は、各サイドクラッチ44に対応して2つ設けられる。
HSTモータ85は、HST14のトラニオンの回動角度を変更することで、HST14の斜板の傾斜角を変更する。ステアリングモータ95は、自動旋回制御が行われる場合に、前輪10(図1参照)の操舵量(舵角)を調整するステアリング装置であるハンドル35を駆動するモータである。ステアリングモータ95は、ハンドル35を回動させる。線引きマーカ昇降モータ87は、線引きマーカ65を昇降させる。
デフロック切替モータ96は、左右の走行車輪、具体的には、左右の前輪10を同じ回転速度で回転させるデファレンシャルロック機構97(以下、デフロック機構と称する。)の作動、および作動停止を切り替えるモータである。デフロック機構97が入り状態になることで、左右の走行車輪が同じ回転速度で回転する。
コントローラ100には、検出装置である、回転数センサ90、操舵量センサ91、傾斜センサ92などが接続される。回転数センサ90は、左右の後輪11に対応して2つ設けられ、左右の後輪11の回転数をそれぞれ検出する。なお、回転数センサ90は、左右の前輪10の回転数を検出してもよい。
操舵量センサ91は、ステアリング装置であるハンドル35の操作量、すなわち、前輪10の操舵量(舵角)を検出する。操舵量センサ91は、例えば、ピットマンアームに連結する軸上に設けられる。なお、操舵量は、ハンドル35が予め設定された直進位置になった場合の値を基準値として、左右方向それぞれに検出される。傾斜センサ92は、走行車体2の傾きである傾斜角を検出する。
また、コントローラ100には、操作信号として、変速操作レバー36、副変速操作レバー37、自律走行切替スイッチ46、植付部昇降スイッチ47、自動直進切替スイッチ45、自動旋回切替スイッチ48、圃場状態入力部49などから信号が入力される。
自律走行切替スイッチ46は、自律走行を実行するか否かを切り替えるスイッチである。具体的には、自律走行切替スイッチ46は、走行モードを、手動走行モード、または自律走行モード(自動走行モード)に切り替えるスイッチである。手動走行モードは、作業者の手動操作によって走行するモードである。自律走行モードは、作業者の手動操作によらずに自動走行するモードである。
例えば、自律走行切替スイッチ46が「ON」である場合、走行モードが自律走行モードに設定される。自律走行切替スイッチ46が「OFF」である場合、走行モードが手動走行モードに設定される。自律走行切替スイッチ46が「ON」にされると、自動直進切替スイッチ45、および自動旋回切替スイッチ48が「ON」になる。すなわち、走行モードが自律走行モードになると、なお、自動直進切替スイッチ45、および自動旋回切替スイッチ48は、いったん「ON」になった場合であっても、操縦者の操作によって「OFF」に変更可能である。
植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4を昇降させるか否かを切り替えるスイッチである。植付部昇降スイッチ47は、「上昇」、および「降下」位置に変更される。
植付部昇降スイッチ47が「上昇」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の非作業位置まで上昇し、苗植付装置55が停止する非作業状態となる。植付部昇降スイッチ47が「降下」位置にある場合には、苗植付部4は、所定の作業位置まで降下し、苗植付装置55が作動する作業状態となる。すなわち、植付部昇降スイッチ47は、苗植付部4の作業状態を検知するスイッチである。なお、苗植付部4の作業状態を検知するスイッチが別途設けられてもよい。
圃場状態入力部49は、複数のダイヤル、複数のスイッチ、および、複数のボタンなどを含む。圃場状態入力部49は、圃場の状態が入力される。圃場状態入力部49は、圃場の状態を示す入力操作を受け付ける。圃場の状態は、圃場のぬかるみ、圃場の深さ、および、圃場の形状の少なくとも1つの状態を含む。圃場の状態は、圃場状態入力部49を介して、作業者などの操作によって入力される。圃場状態入力部49は、たとえば、操縦パネル38に設けられる。
自動直進切替スイッチ45は、自動直進の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動直進切替スイッチ45が「ON」にされている場合には、後述する走行アシスト機能が有効となり、自動直進を実行可能となる。自動直進切替スイッチ45が「OFF」にされている場合には、走行アシスト機能が無効となり、自動直進を実行不能となる。
自動旋回切替スイッチ48は、自動旋回の実行を可能とするか否かを切り替えるスイッチである。自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされている場合には、後述する旋回アシスト機能が有効となり、自動旋回を実行可能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、旋回アシスト機能が無効となり、自動旋回を実行不能となる。自動旋回切替スイッチ48が「OFF」にされている場合には、自動旋回を実行する条件が成立している場合であっても、自動旋回は実行されない。
コントローラ100は、自律走行切替スイッチ46、自動直進切替スイッチ45、および、自動旋回切替スイッチ48の操作に応じて、走行モードを手動走行モードと、自律走行モードとに切り替える。
また、コントローラ100には、位置検出装置150から走行車体2の現在の位置情報などが入力される。コントローラ100は、走行車体2が自動で走行しながら作業を行う自律走行モードを実行する。
また、コントローラ100には、遠隔操作装置170(以下、「リモコン」と称する。)から各種情報が入力される。例えば、コントローラ100は、受信機180(図1参照)を介して、リモコン170から各種情報が入力される。受信機180は、例えば、取付ステー59(図1参照)に取り付けられ、走行車体2の前方側の上方に配置される。なお、受信機180は、複数設けられてもよい。取付ステー59は、走行車体2に取り付けられる。
リモコン170は、苗移植機1を遠隔操作可能である。リモコン170は、スマートフォンなどの端末装置であってもよい。リモコン170は、作業者の操作に応じた制御信号を送信する。リモコン170は、Wi-fi(登録商標)や、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)などの近距離無線通信によってコントローラ100と通信可能に接続されるが、これに限られず、近距離無線通信に加えて、あるいは代えて通信ネットワークなどを介して通信可能に接続されてもよい。
リモコン170は、複数設けられてもよい。すなわち、コントローラ100は、複数のリモコン170から、各リモコン170の位置情報を取得可能であってもよい。
(自律走行モード)
ここで、苗移植機1による、圃場における自律走行(自動走行)について説明する。コントローラ100は、前輪10(図1参照)の操舵量をフィードバックしながらステアリングモータ95(図3参照)を制御してハンドル35(図3参照)を操作する自律走行モード(自動走行モード)を有する。自律走行モードは、自動直進モードと、自動旋回モードとを含む。
自動直進モードは、走行車体2が予め設定された直進経路に沿うように、ステアリングモータ95が制御され、直進するモードである。自動直進モードでは、苗植付部4によって圃場に苗を植え付けつつ、走行車体2が操縦者の操作によらず直進する。すなわち、走行車体2を自動直進させつつ、圃場に苗を移植する走行アシスト機能が有効となり、走行アシスト機能が実行される。
自動旋回モードは、走行車体2が所定の植付終了位置に到達すると、苗植付部4による苗の植え付けを停止し、走行車体2が予め設定された旋回経路に沿うように、ステアリングモータ95が制御され、旋回するモードである。所定の植付終了位置は、例えば、作業を行った工程の走行距離や、作業を行った工程に関する位置情報などによって設定される。
自動旋回モードでは、例えば、苗植付部4が上昇し、非作業状態にされ、走行車体2が操縦者の操作によらず旋回する。すなわち、苗植付部4による苗の植え付けを行わずに、走行車体2を旋回させる旋回アシスト機能が有効となり、旋回アシスト機能が実行される。
なお、図4に示すように、圃場の3辺La~Lcを操縦者の操作によって走行するティーチング走行がされることで、自律走行モードが実行される作業領域が設定される。図4は、実施形態に係るティーチング走行による作業領域の設定方法を示す図である。
例えば、作業領域設定ボタン(不図示)が操作されて、走行を開始すると、走行車体2の位置情報が辺Laの始点として記録され、走行中における走行車体2の位置情報が記録される。そして、ハンドル35が操縦者によって所定旋回角度以上回動されると、辺Laの終点が記録され、辺Laが設定される。また、辺Lbの始点における走行車体2の位置情報が記録される。所定旋回角度は、予め設定された値であり、走行車体2が畔に沿って旋回したと判定可能な角度である。
さらに、走行車体2が直進した後、ハンドル35が操縦者によって所定旋回角度以上回動されると、辺Lbの終点が記録され、辺Lbが設定される。また、辺Lcの始点における走行車体2の位置情報が記録される。
走行車体2が直進した後に、作業領域設定ボタンが操作されると、走行車体2の位置情報が、辺Lcの終点として記録され、辺Lcが設定される。3つの辺La~Lcが設定されることで、作業領域が設定される。なお、ティーチング走行では、走行車体2の直進走行時に、苗植付部4によって苗が圃場に植え付けられる。ティーチング走行は、圃場の外周に沿って植え付け作業が行われる外周工程である。作業領域は、走行車体2が往復する往復工程によって、圃場に苗が植え付けられる領域である。
作業領域が設定された圃場では、自律走行モードが実行可能となる。例えば、圃場において、辺La、または辺Lcに平行な直進走行経路に沿って自動直進が可能となる。また、辺Lb側の畔付近における旋回時に、自動旋回が可能となる。ティーチング走行において走行されなかった、圃場の辺、すなわち辺Lbと向かい合う側の畔付近における旋回時には、リモコン操作による旋回が可能である。なお、ティーチング走行において走行されなかった、圃場の辺の畦付近における旋回時に、自動旋回が実行されてもよい。
また、ティーチング走行が終了し、作業領域が設定された場合であっても、走行モードが手動走行モードである場合には、苗移植機1は、操縦者の操作によって走行し、圃場に苗を移植することができる。
走行モードが手動走行モードであり、操縦者の操作によって苗移植機1が走行している場合に、自動直進切替スイッチ45が「ON」にされると、苗移植機1は、自動直進を実行する。すなわち、苗移植機1は、走行モードが手動走行モードであっても、走行アシスト機能を実行可能となる。
また、走行モードが手動走行モードであり、操縦者の操作によって苗移植機1が走行している場合に、自動旋回切替スイッチ48が「ON」にされると、苗移植機1は、自動旋回を実行可能となる。すなわち、苗移植機1は、走行モードが手動走行モードであっても、旋回アシスト機能を実行可能となる。
コントローラ100は、旋回アシスト機能を実行し、走行車体2を自動旋回させる場合には、以下の手順で自動旋回を実行する。例えば、コントローラ100は、自動旋回において、バックターンを実行する。バックターンとは、旋回を行う場合に、走行車体2を一旦後進させて、旋回を開始するターンである。
コントローラ100は、作業領域の端、すなわち往復工程の端まで走行車体2が走行すると、走行車体2を停止させる。
例えば、コントローラ100は、自動直進によって往復工程に沿って走行し、圃場に苗を植え付けている場合に、所定の植付終了位置である往復工程の端まで走行すると、走行車体2を停止させる。
コントローラ100は、停止位置から走行車体2を後進させる。具体的には、コントローラ100は、走行車体2が直進状態となるように、ハンドル35の操作量を制御し、走行車体2を後進させる。コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される走行車体2の方位に基づいて、走行車体2を後進させる。コントローラ100は、往復工程における走行車体2の方位と、後進時の走行車体2の方位とが一致するように、ハンドル35の操作量を制御し、走行車体2を後進させる。
そして、走行車体2が、停止位置から第1所定距離(所定後進距離)後進すると、走行車体2を停止させる。コントローラ100は、回転数センサ90によって検出される後輪11の回転数に基づいて、走行車体2の後進距離を検出する。第1所定距離は、苗移植機1に応じて設定される。たとえば、第1所定距離は、苗移植機1の植え付け条数に応じて設定される。コントローラ100は、後進距離が第1所定距離になると、走行車体2を停止させる。すなわち、コントローラ100は、回転数センサ90によって検出される後輪11の回転数に基づいて、後進を開始してから停止するまでの後進距離を検出する。
第1所定距離は、圃場の状態に応じて変更可能である。具体的には、第1所定距離は、圃場状態入力部49の操作によって変更可能である。第1所定距離は、初期状態として、基準距離が設定される。たとえば、圃場状態入力部49は、圃場の状態に応じて、「-10」~「+10」に設定可能である。圃場状態入力部49が「-10」~「-1」に設定されている場合、第1所定距離は、基準距離よりも長くなる。第1所定距離は、「-10」側ほど長くなる。圃場状態入力部49が「+1」~「+10」に設定されている場合、第1所定距離は、基準距離よりも短くなる。第1所定距離は、「+10」側ほど短くなる。
たとえば、圃場の形状が、往復工程における進行方向に対して傾いており、かつ、走行車体2の旋回方向において畦が近くなる場合、圃場状態入力部49は、第1所定距離が長くなるように設定される。また、圃場の形状が、往復工程における進行方向に対して傾いており、かつ、走行車体2の旋回方向において畦が近くなる場合、圃場状態入力部49は、第1所定距離が短くなるように設定される。
また、圃場がぬかるんでいる場合、圃場状態入力部49は、第1所定距離が長くなるように設定される。また、圃場の深さが深い場合、圃場状態入力部49は、第1所定距離が長くなるように設定される。
このように、コントローラ100は、圃場の状態を示す入力操作に応じて、自動旋回における自律走行制御(自動走行制御)を調整可能である。
コントローラ100は、走行車体2を第1所定距離後進させて、停止させた後に、走行車体2を前進させて旋回を開始させる。コントローラ100は、バックターンにおける後進後に、走行車体2を前進させる場合、第2所定距離まで走行車体2を前進させた後に、旋回を開始する。第2所定距離は、第1所定距離よりも短い。第2所定距離は、第1所定距離に対して設定される距離である。コントローラ100は、第2所定距離まで走行車体2を前進させる場合、位置検出装置150によって検出される走行車体2の位置、および、走行車体2の方位に基づいて、走行車体2が直進走行経路(所定走行経路)に沿って前進するように、ハンドル35の操作量を制御する。
コントローラ100は、第2所定距離に応じた距離を走行車体2が走行した後に、ハンドル35の操作量を所定量(所定舵角)として走行車体2の旋回を開始させる。所定量は、予め設定された値である。
コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される方位に基づいて、走行車体2を旋回させる。
(バックターン処理)
次に、実施形態に係る自動旋回におけるバックターン処理について図5を参照し説明する。図5は、実施形態に係る自動旋回におけるバックターン処理を説明するフローチャートである。ここでは、自動直進モードによって走行車体2が走行しているものとする。
コントローラ100は、走行車体2が植付終了位置まで走行したか否かを判定する(S100)。コントローラ100は、走行車体2が植付終了位置まで走行していない場合(S100:No)、今回の処理を終了する。
コントローラ100は、走行車体2が植付終了位置まで走行した場合(S100:Yes)、走行車体2を停止させる(S101)。
コントローラ100は、走行車体2を後進させる(S102)。コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される走行車体2の方位に基づいてハンドル35の操舵量を制御し、走行車体2を後進させる。
コントローラ100は、走行車体2の後進距離が第1所定距離となったか否かを判定する(S103)。第1所定距離は、圃場状態入力部49における作業者などの操作によって設定される。コントローラ100は、走行車体2の後進距離が第1所定距離となっていない場合(S103:No)、走行車体2の後進距離が第1所定距離となるまで、後進を継続する(S102)。
コントローラ100は、走行車体2の後進距離が第1所定距離になると(S103:Yes)、走行車体2を停止させる(S104)。
コントローラ100は、走行車体2を前進させる(S105)。コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される走行車体2の位置、および、走行車体2の方位に基づいて、走行車体2を所定走行経路に沿って前進するように、ハンドル35の操作量を制御する。
コントローラ100は、走行車体2の前進距離が第2所定距離となったか否かを判定する(S106)。コントローラ100は、走行車体2の前進距離が第2所定距離となっていない場合(S106:No)、走行車体2の前進距離が第2所定距離となるまで、前進を継続する(S105)。
コントローラ100は、走行車体2の前進距離が第2所定距離になると(S105:Yes)、旋回を開始する(S106)。コントローラは、たとえば、走行車体2の方位、および、走行車体2の角速度に基づいて、ハンドル35の操作量を制御し、走行車体2を旋回させる。
苗移植機1は、走行車体2と、苗植付部4と、コントローラ100とを備える。苗植付部4は、走行車体2に設けられる。コントローラ100は、走行モードを、作業者の手動操作によって走行する手動走行モードと、手動操作によらずに自律走行する自律走行モードとに切り替える。コントローラ100は、圃場の状態を示す入力操作に応じて、自律走行モードにおける自動走行制御を調整可能である。
これにより、苗移植機1は、圃場に合った自律走行モードによる走行を実行することができる。
コントローラ100は、旋回時に、走行車体2を後進させた後に旋回を開始するバックターンを実行可能である。コントローラ100は、自律走行モードにおいてバックターンを実行する場合、走行車体2が後進を開始してから停止するまでの第1所定距離を、圃場の状態を示す入力操作に応じて、変更可能である。
これにより、苗移植機1は、自動旋回によるバックターンを実行する場合、圃場に合ったバックターンを実行することができる。苗移植機1は、たとえば、圃場のぬかるみ、圃場の深さ、および、圃場の形状に合わせたバックターンを実行することができる。苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを実行する場合に、苗移植機1が畦にぶつかることを抑制することができる。苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを実行する場合に、苗移植機1が畦から離れすぎることを抑制することができる。苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを実行する場合に、旋回後の次工程における植え付け開始位置からずれることを抑制することができる。
苗移植機1は、位置検出装置150を備える。位置検出装置150は、走行車体2の位置、および、走行車体2の方位を検出する。コントローラ100は、自律走行モードにおいて走行車体2を前進させる場合、位置検出装置150によって検出された走行車体2の位置に基づいて自律走行を実行する。コントローラ100は、自律走行モードにおいてバックターンを実行する場合、後進時には位置検出装置150によって検出される走行車体2の方位に基づいて、走行車体2を後進させ、かつ、後輪11の回転数に基づいて、走行車体2の後進距離を検出する。
これにより、苗移植機1は、自律走行モードによって圃場に苗を植え付ける場合、スリップなどを考慮し、苗の間隔が密になることや、肥料の過剰散布を抑制できる。自動旋回におけるバックターンでは、走行車体2の車速が低速であるため、位置検出装置150における位置検出精度が低下するおそれがある。苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンでは、位置検出装置150によって検出される方位に基づいて走行車体2を後進させ、後輪11の回転数に基づいて、走行車体2の後進距離を検出する。また、バックターンにおける後進時の距離である第1所定距離が圃場の状態に応じて設定される。これにより、苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンの後進を圃場に合わせて正確に行うことができる。従って、苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを正確に行うことができる。また、苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを、安価な方法によって正確に行うことができる。
コントローラ100は、自動旋回におけるバックターンによって、後進後に走行車体2を前進させる場合、位置検出装置150によって検出される走行車体2の位置、および、走行車体2の方位に基づいて、走行車体2が直進走行経路に沿って前進するように、ハンドル35の操舵量を制御する。
これにより、苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを実行し、走行車体2を前進させる場合、直進走行経路に対する走行車体2のずれを抑制することができる。そのため、苗移植機1は、自動旋回におけるバックターンを正確に行うことができる。
変形例に係る苗移植機1は、自動旋回モードにおいてバックターンを実行し、走行車体2を後進させる場合、ハンドル35の操舵量を、走行車体2が直進するハンドル35の操舵量に固定してもよい。これにより、変形例に係る苗移植機1は、走行車体2が後進する場合に、圃場が荒れることを抑制することができる。
変形例に係る苗移植機1は、圃場の状態を検出してもよい。たとえば、圃場の形状は、地図などの地形図から検出される。圃場の形状は、カメラによって撮影された画像から検出されてもよい。コントローラ100は、圃場の状態が、走行車体2の旋回方向において畦が遠くなる圃場の形状であり、自動走行モードにおいてバックターンを実行する場合、第1所定距離を基準距離から変更せずに、旋回後に、走行車体2を停止させる。また、コントローラ100は、旋回後に走行車体2を停止させた後に、走行車体2を後進させて、走行車体2を停止させてもよい。旋回後に走行車体2が停止した後に、走行車体2が後進する距離は、たとえば、圃場状態入力部49の設定値(たとえば、「+1」~「+10」)に基づいて設定される。
変形例に係る苗移植機1においてコントローラ100は、自動走行モードにおいてバックターンを実行し、走行車体2を第2所定距離前進させる際に走行車体2が直進走行経路から所定量以上ずれた場合、走行車体2を停止させる。コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される走行車体2の位置、および走行車体2の方位の少なくとも1つに基づいて、走行車体2が直進走行経路から所定量以上ずれたか否かを判定する。そして、コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される走行車体2の方位に基づいて走行車体2を再び後進させる。コントローラ100は、直進走行経路における走行車体2の方位と、後進時の走行車体2の方位とが一致するように、ハンドル35の操作量を制御し、走行車体2を後進させる。コントローラ100は、たとえば、走行車体2が前進した距離の分、走行車体2を後進させる。走行車体2の走行距離は、たとえば、回転数センサ90によって検出される後輪11の回転数に基づいて検出される。コントローラ100は、走行車体2を後進させた後、走行車体2を停止させ、再び、走行車体2を前進させる。コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される走行車体2の位置、および、走行車体2の方位に基づいて、走行車体2が直進走行経路に沿って再度前進するようにハンドル35の操作量を制御する。すなわち、コントローラ100は、走行車体2を第2所定距離前進させる際に走行車体2が直進走行経路から所定量以上ずれた場合、バックターンをやり直す。
これにより、変形例に係る苗移植機1は、バックターンにおいて直進走行経路から走行車体2が外れた状態で旋回することを抑制できる。そのため、変形例に係る苗移植機1は、自動旋回を正確に実行することができる。
変形例に係る苗移植機1において、コントローラ100は、上記するようにバックターンをやり直しても、走行車体2が直進走行経路から所定量以上ずれる場合、走行車体2を停止し、自動旋回を中止する。たとえば、コントローラ100は、バックターンを予め設定された所定回数(たとえば、2回)やり直しても、走行車体2が直進走行経路から所定量以上ずれる場合、走行車体2を停止し、自動旋回を中止する。
これにより、変形例に係る苗移植機1は、たとえば、圃場のぬかるみなどによって、直進走行経路に沿った直進しつつ、自動旋回を行うことができない場合、自動旋回を中止し、手動操作による旋回を作業者に促すことができる。
変形例に係る苗移植機1において、コントローラ100は、走行車体2が直進走行経路から所定量以上ずれることによって、走行車体2を停止し、自動旋回を中止する場合、図6に示す表示装置110に、自動旋回による旋回の中止を表示する。図6は、変形例に係る苗移植機1における表示装置110の取り付け例を示す図である。表示装置110は、たとえば、走行車体2に連結される取付ステー59(フレーム)に取り付けられる。表示装置110は、表示装置110の前方側が上方に位置するように傾斜姿勢によって取付ステー59に取り付けられる。表示装置110の下方には、前後方向に連通する空間が形成される。空間には、ボンネット39が配置される。取付ステー59は、ボンネット39を開閉できるように設けられる。なお、コントローラ100は、ブザーなどによって、自動旋回の中止を作業者に知らせてもよい。
これにより、変形例に係る苗移植機1は、直進走行経路に沿って直進しつつ、自動旋回を行うことができないことを作業者に知らせることができる。
表示装置110は、走行モードが自動走行モードである場合、走行車体2の走行方向に対するずれを表示してもよい。
変形例に係る苗移植機1は、自動直進モードにおいて設定された車速を記憶し、走行車体2が旋回した後、記憶した車速まで徐々に車速を大きくしてもよい。たとえば、コントローラ100は、植え付けを開始してから5m間隔で車速を徐々に大きくする。
これにより、変形例に係る苗移植機1は、走行車体2の急加速を抑制し、植え付けを安定させることができる。
変形例に係る苗移植機1は、資材が補給される場合、前工程の作業が終了したタイミングで、次工程(次の補給地点まで)の経路の長さに基づいて計算された必要な資材量を表示装置110に表示する。これにより、変形例に係る苗移植機1は、資材の入れすぎを抑制できる。
また、変形例に係る苗移植機1は、資材量が積載可能量よりも少ない場合、警告を表示装置110に表示する。また、変形例に係る苗移植機1は、資材量が必要な資材量よりも多い場合、連続作業を可能であることを表示装置110に表示する。
また、変形例に係る苗移植機1は、資材が肥料である場合、施肥装置5の繰り出し開度ではなく、入力される目標値に基づいて計算を行う。変形例に係る苗移植機1は、試し繰り出しの実施を前提として、目標値が入力された時点で、同時に計算される肥料比重を考慮した計算を行う。
変形例に係る苗移植機1は、積載量が満タン状態を前提として、工程内の補給の可否を判定する。変形例に係る苗移植機1は、検出用センサが反応すると、資材の減少を検出する。変形例に係る苗移植機1は、センサが反応する手前までの量を積載可能量とする。
これにより、変形例に係る苗移植機1は、資材の減少が検出されるか否かによって必要な資材量を計算できる。資材の補給段階で警告が出ない場合、工程内での資材減少は報知されない。計算誤差や、スリップなどによって資材の減少が検出される場合であっても、畦近くで報知があった場合であっても、変形例に係る苗移植機1は、作業を止めずに作業を行うことができる。
変形例に係る苗移植機1は、必要な資材量が、検出される資材量以下の場合、自動運転を継続し、必要な資材量が、検出される資材量よりも多い場合、自律走行を停止し、畦寄せ後の補給操作を促す。
変形例に係る苗移植機1は、自動直進モードにおいて、走行経路を苗植付部4が複数回通過する場合、最後に通過する場合を除いて、苗植付部4が通過する面積に応じて、植付クラッチ27a、および、施肥クラッチを切り状態にする。なお、各クラッチを入り状態、および、切り状態に切り替える場合、走行車体2は一時停止する。これにより、変形例に係る苗移植機1は、正確な植え付けを行うことができる。
変形例に係る苗移植機1は、植付クラッチ27aが入り状態であっても、植え付けた苗を潰してしまう条に対応する施肥クラッチを切り状態にする。変形例に係る苗移植機1は、施肥クラッチを自動で切り替える。変形例に係る苗移植機1は、除草剤散布機や、殺虫剤散布機などにおいても条切りクラッチの入り状態、および、切り状態を切り替える。これにより、変形例に係る苗移植機1は、資材の無駄を抑制することができる。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付装置55において、植込杆58によって苗を取る量を電動によって調整可能であってもよい。変形例に係る苗移植機1は、図7に示すように、電動苗取量調整機構200を備える。図7は、変形例に係る苗移植機1の電動苗取量調整機構200を説明する図である。電動苗取量調整機構200は、アクチュエータによる駆動力を前板201まで伝え、植付フレーム202と前板201との相対位置を変更することで、苗取量を調整する。電動苗取量調整機構200は、駆動部203と、伝動部204と、駆動検出部205と、作動検出部206とを含む。
駆動部203は、モータ208と、ギヤ209とを含む。ギヤ209は、モータ208の駆動軸と噛み合い、駆動軸の回動によって回動する。
伝動部204は、伝動アーム210と、回動軸211とを含む。伝動アーム210の一方の端部は、駆動部203のギヤ209に取り付けられ、ギヤ209の回動によって回動軸211を中心に回動する。回動軸211は、植付フレーム202に回動自在に支持される。伝動アーム210の他方の端部は、前板201に連結される。前板201は、伝動アーム210が回動することで、位置が変更される。
伝動部204は、過負荷防止機能を有してもよい。伝動部204は、伝動アーム210の一部をバネ材で構成する。伝動部204は、伝動アーム210の中間部に曲げ部を設ける。曲げ部は、たとえば、伝動アーム210の一部を左右方向に屈曲させることで形成され、回動軸211側の部材に、ボルト、および、ナットによって取り付けられる。これにより、伝動アーム210は、過負荷時の機構の保護、および、復帰を行うことができる。
駆動検出部205は、作動エラー時の保障、電動苗取量調整機構200の保護のため、駆動部203のギヤ209の位置を検出する。駆動検出部205は、たとえば、ポテンショメータである。駆動検出部205は、リミットセンサであってもよい。
作動検出部206は、植付フレーム202と前板201との相対位置を検出する。作動検出部206は、リンク機構を有する。リンク機構は、植付フレーム202と前板201との小さい相対位置の変化を拡大するために設けられる。
コントローラ100は、作動検出部206によって苗取量を検出し、目標値となるまでモータ208を作動させる。コントローラ100は、苗取量が増加する場合、目標値に達したか否かの判定を厳しくする。苗取量が増加する場合、苗タンク53が下降しきらずに、苗取量の調整が不安定なることがあった。変形例に係る苗移植機1は、苗取量が増加する場合、正確な苗取り調整を行うことができる。
コントローラ100は、作動量が小さい場合、目標値に達したか否かの判定を標準状態よりも厳しくする。作動量が小さい場合、前板201が動き難いため、目標値に到達し難いことがあった。また、目標値に達した後に、ガタつきによって、作動前の状態に戻ることがあった。変形例に係る苗移植機1は、作動量が小さい場合であっても、正確な苗取り調整を行うことができる。
コントローラ100は、目標値に到達しない場合、目標値に到達しない時点における前板201の位置(段数)を設定値に置き換えて表示する。
駆動検出部205としてリミットセンサが設けられ、リミットセンサが押された場合、コントローラ100は、苗取量を0.5段分戻す。
駆動検出部205において、出力量は、オーバーストローク分を考慮し、設定値よりも大きく設定される。これにより、変形例に係る苗移植機1は、オーバーストローク分が考慮された正確な制御を実行できる。
コントローラ100は、モータ208の出力制限を作動量の管理、出力量の管理、作動限界位置での管理により行う。出力量は、作動量(目標値と現在値との差)に比例するように設定される。これにより、変形異例に係る苗移植機1は、作動量管理のために、たとえば、ポテンショメータのみで、出力量の管理を行うことができ、システムの負荷を軽減できる。
コントローラ100は、モータ208の出力制限を、作動量の管理、出力量の管理、作動限界位置での管理により行う出力量管理と、作動限界位置での管理とを別々に行ってもよい。これにより、変形例に係る苗移植機1は、機構の保護を確実に行うことができ、機能損失を防ぐことができる。
コントローラ100は、モータ208の出力制限を、作動量の管理、出力量の管理、および、作動限界位置での管理によって行ってもよい。これにより、変形例に係る苗移植機1は、複数の管理項目によって、正確な作動量制御を機構に負担をかけずに行うことができる。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付部4、および、整地ロータ63などの駆動にモータ230を用いてもよい。この場合、図8に示すように、モータ230が取り付けられるモータステー部231で伝動軸232を保持する保持機構233を設けることで、軸方向における突き上げを逃がし、モータ230の破損を防止する。図8は、変形例に係る苗移植機1の保持機構233を説明する図である。保持機構233は、たとえば、ホルダー234を設け、ベアリング235によって軸を押さえる。また、伝動軸232は、スライダー構成であってもよい。スライダー構成の箇所は、樹脂製部品によって構成される。伝動軸232は、キー、あるいは、シャーピンを有してもよい。キー、あるいは、シャーピンは、樹脂製である。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付部4の駆動にモータが用いられ、モータの出力電流を検出し、出力電流が上限電流以上となった場合、モータへの給電を停止する。これにより、変形例に係る苗移植機1は、たとえば、安全クラッチを無くすことができ、軽量化を図ることができる。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付部4の駆動にモータが用いられ、植え付け走行を行う前に苗を圃場に植え付ける場合、植付ロータリ57を1回転だけ行い、植え付けを停止する。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付部4の駆動にモータが用いられる場合、畦際側の株間を所定幅(たとえば、30cm)とする。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付部4の駆動にモータが用いられる場合、走行車体2の車速に合わせた株間制御を行う。コントローラ100は、設定車速と、実際の走行車体2の車速との差から得られた補正値によってモータの回転を補正する。コントローラ100は、位置検出装置150によって検出される位置情報を用いずに、走行車体2の車速を検出してもよい。コントローラ100は、設定車速と、実際の車速との差が所定差以上である場合、スリップ率によってモータの回転を補正する。コントローラ100は、設定車速と、実際の車速との差が所定差未満である場合、デフォルトのモータの回転となるように制御する。
変形例に係る苗移植機1は、苗植付部4の駆動にモータが用いられる場合、モータは、リンク側面に設けられる。これにより、変形例に係る苗移植機1は、植え付け性に悪影響を与えずに、伝動部品を小さくすることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。