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JP2023151497A - ガラス短繊維集合体 - Google Patents

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JP2023151497A JP2022061123A JP2022061123A JP2023151497A JP 2023151497 A JP2023151497 A JP 2023151497A JP 2022061123 A JP2022061123 A JP 2022061123A JP 2022061123 A JP2022061123 A JP 2022061123A JP 2023151497 A JP2023151497 A JP 2023151497A
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JP2022061123A
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和馬 岡村
Kazuma Okamura
透 板谷
Toru Itaya
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Asahi Fiber Glass Co Ltd
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Asahi Fiber Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明は、断熱性、吸音性、及び厚み復元性に優れ、皮膚刺激性が低く、低コストであるガラス短繊維集合体を提供することを目的とする。【解決手段】平均繊維径が1.0~4.0μmのガラス短繊維とバインダーとを含み、ガラス短繊維のうちバインダーが付着しているガラス短繊維の割合(バインダーの付着率)は10本数%以上であり、バインダーは、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、ガラス短繊維集合体。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス短繊維集合体に関する。
従来から、建造物の床面や壁面、天井面等に設置される断熱吸音材として、ガラス短繊維(グラスウール等)と、ガラス短繊維同士を接着するバインダーとにより構成された板状のガラス短繊維集合体が用いられている。
このようなガラス短繊維集合体として、嵩高いもの(密度40kg/m以下等)が多く使用されているが、このような嵩高いガラス短繊維集合体は、輸送や保管の際に収容効率を高め、輸送・保管コストを削減するために、製造時の体積の1/3~1/8の体積に圧縮梱包し、使用時に開封して規格の厚みまで復元させるのが一般的である。一方で、ガラス短繊維は細いほど断熱吸音性に優れるが、細いほど折れやすくもなるため、高圧縮率で梱包すると、長期保管や輸送時の振動等の影響で繊維が折れ、開封後の厚み復元力が不足することがある。
ガラス短繊維集合体の厚み復元力を高めるために、従来、(1)太い繊維を使用する、(2)バインダーの付着量を増加させる、(3)梱包圧縮率を下げる、といった対策が講じられてきた。しかしながら、以下のように、高断熱吸音性、高厚み復元性、低皮膚刺激性、及び低コストの全てを満足するには至っていない。
(1)太い繊維を使用する場合、平均繊維径が大きくなると断熱吸音性が低下するため、これを改善するために太い繊維と細い繊維とを混合して平均繊維径を小さくするのが一般的であるが、太いガラス短繊維(繊維径15μm以上等)は、微量に含まれるだけでも皮膚刺激性がある。
(2)バインダーの付着量を増加させると、圧縮梱包により繊維が多少折れても厚み復元性を保持できるが、製造コストが高くなる。また、バインダー付着量を増加させるとその分だけ繊維が太くなるため、断熱吸音性が低下する場合がある。また、特に、ガラス短繊維の交点にだけバインダーが偏在する場合には、ガラスがむき出しとなっている部分で繊維が折れやすく、厚み復元性の改善が十分に得られず、また、折れた繊維により皮膚刺激性が高まることがある。
(3)梱包圧縮率を下げることによりガラス短繊維の折れを低減することができるが、輸送・保管コストが高くなる。
すなわち、例えば、ガラス短繊維を細繊維化することにより断熱吸音性や皮膚刺激性を改善しようとすると、厚み復元性を一定水準以上に保持するためにバインダー付着量を増加させる必要が生じ、その結果、繊維が太くなったり、単位体積当たりに含まれる繊維の本数が少なくなったりすることで、断熱吸音性が十分に改善されず、製造コストも高くなる、という問題が生じる。
この問題を解決する方法として、(4)捲縮性の繊維を使用する方法がある。これは、バインダーの付着量が少なく、繊維が細い状態であっても、捲縮繊維のスプリングバックを利用して厚み復元性を高めることができる、というものである。
例えば、特許文献1には、2.0ppm/℃以上の熱膨張係数の差を有する2種類のガラス組成物が複合された、不規則形グラスファイバ製造用のガラス組成物が開示されている。ガラス組成物の熱膨張係数に差をつけることで、ガラス繊維は直線状ではなく、カールやうねりのある不規則な形状になる。これにより、繊維同士の絡みが増え、圧縮を解いた後の厚み復元性を改善することができる。
また、特許文献2には、組成の異なる2種類のガラスを特定のガラス比率で複合することにより、綺麗なカール状(らせん状)に繊維化された不規則形複合ガラスファイバが開示されている。綺麗なカール形状であるため、不定形の捲縮繊維よりも繊維の反発性が強まり、厚み復元性が改善されるとともに、熱伝導率が低くなり、断熱性が改善される。
また、特許文献3には、グラスウール等の無機繊維に捲縮繊維を混合することにより、厚み復元性を高めた繊維集合体が開示されている。有機系の捲縮繊維には比較的繊維径の細い繊維が存在するため、繊維集合体の断熱吸音性を向上させることができる。また、有機系捲縮繊維は安価であり、有機系捲縮繊維として熱可塑性樹脂繊維を用いることで、これをバインダー替わりにしてコストを低減することができる。
特許第2851705号公報 特許第2999264号公報 特開平9-11374号公報
しかしながら、特許文献1の不規則形グラスファイバは、2種類の溶融ガラスを1本の繊維に繊維化して製造するため、非常に特殊な設備が必要であり、生産性も低く、コストが高くなるという課題がある。また、グラスファイバの形状が不定形であるため、厚み復元性を大きく改善するにはさらなる改良の余地がある。さらに、2成分系のガラス繊維は、単一成分のガラス繊維と比較して平均繊維径を5μm以下とするような細繊維化が難しいため、断熱吸音性と皮膚刺激性の面でさらなる改善が望まれる。
特許文献2の不規則形複合ガラスファイバも、特許文献1と同様に2種類の溶融ガラスを1本の繊維に繊維化して製造するところ、形状をコントロールするために特許文献1にもまして特殊かつ緻密な繊維化設備が必要となり、2種類の溶融ガラスの流量調整を緻密にするなどオペレーションが難しく、生産性が低くなり、コストが高くなる。
また、特許文献3の繊維集合体では、捲縮繊維をグラスウールに混合し、繊維同士を交絡する際にグラスウールが折れる場合があり、折れたグラスウールが飛散することにより皮膚刺激性が悪化したり、厚み復元性や断熱吸音性が低下したりするおそれがある。
したがって、断熱吸音性を高め、皮膚刺激性を低減するために細繊維化したガラス繊維でありながら、高圧縮率で圧縮梱包しても折れにくく、良好な厚み復元性を有するとともに、低コストであるガラス繊維が望まれている。
そこで、本発明は、断熱性、吸音性、及び厚み復元性に優れ、皮膚刺激性が低く、低コストであるガラス短繊維集合体を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の平均繊維径を有する細いガラス短繊維に対して特定の付着率でバインダーを付着させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
平均繊維径が1.0~4.0μmのガラス短繊維とバインダーとを含み、
前記ガラス短繊維のうち前記バインダーが付着しているガラス短繊維の割合(バインダーの付着率)は10本数%以上であり、
前記バインダーは、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む
ことを特徴とする、ガラス短繊維集合体。
[2]
前記ガラス短繊維のガラス組成がAガラスである、[1]に記載のガラス短繊維集合体。
[3]
前記バインダーの付着量が、前記ガラス短繊維と前記バインダーとの合計100質量%に対して1.0~8.0質量%である、[1]又は[2]に記載のガラス短繊維集合体。
[4]
密度が8~40kg/mである、[1]~[3]のいずれかに記載のガラス短繊維集合体。
本発明によれば、断熱性、吸音性、及び厚み復元性に優れ、皮膚刺激性が低く、低コストであるガラス短繊維集合体を提供することができる。
本実施形態のガラス短繊維集合体の一例について、走査電子顕微鏡(SEM)(Carl Zeiss社製「Auriga」)により得たSEM写真である。(a)は倍率1000倍、(b)は倍率2000倍である。 本実施形態のガラス短繊維集合体の一例について、FE-SEM(日本電子製「JSM-7800F Prime」)(観察条件:加速電圧5kV、LED(凹凸像)、UED(反射電子組成像))により得たSEM断面写真である。 実施例のガラス短繊維集合体について、バインダーの付着率を算出するために用いたSEM断面写真である。(a)は実施例1のガラス短繊維集合体、(b)は実施例2のガラス短繊維集合体のSEM断面写真である。 比較例のガラス短繊維集合体について、バインダーの付着率を算出するために用いたSEM断面写真である。(a)は比較例1のガラス短繊維集合体、(b)は比較例2のガラス短繊維集合体のSEM断面写真である。 比較例3のガラス短繊維集合体について、バインダーの付着率を算出するために用いたSEM断面写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〈ガラス短繊維集合体〉
本実施形態のガラス短繊維集合体は、平均繊維径が1.0~4.0μmのガラス短繊維とバインダーとを含み、ガラス短繊維のうちバインダーが付着しているガラス短繊維の割合(バインダーの付着率)は10本数%以上であり、バインダーは、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
ガラス短繊維集合体の形状は、特に限定されないが、圧縮梱包して輸送・保管することにより輸送・保管コストの削減に繋がるという観点から、板状等の圧縮梱包しやすい形状であることが好ましい。また、ガラス短繊維集合体のサイズも特に限定されないが、同様の観点から、厚みは50~300mmであることが好ましい。
図1は、本実施形態のガラス短繊維集合体の一例のSEM写真である。図1(a)において、丸枠内のこぶ状の部分は、ガラス短繊維のうち、バインダーが付着しておらず、ガラス組成中の特定成分が溶出してこぶ状になっている部分であり、その他の部分にはバインダーが付着している。また、図1(b)では、バインダーの付着状態(ガラス短繊維1本ずつにバインダーが付着している状態や、複数本のまとまったガラス短繊維の束の周囲にバインダーが付着している状態等)が観察される。
ガラス短繊維集合体において、ガラス短繊維のうちバインダーが付着しているガラス短繊維の割合(バインダーの付着率)は、10本数%以上であり、好ましくは13本数%以上、より好ましくは15本数%以上である。バインダーの付着率が10本数%以上であると、繊維が折れにくくなり、厚み復元性に優れるとともに皮膚刺激性の低いガラス短繊維集合体を得ることができる。また、バインダーの付着率の上限は特にないが、熱伝導率性能の観点からは、40本数%以下であることが好ましく、より好ましくは35本数%以下、さらに好ましくは30本数%以下である。
バインダーの付着率を10本数%以上に制御する方法としては、例えば、バインダーの粘性を下げる方法、バインダーの濡れ性を上げる方法等が挙げられる。
なお、バインダーの付着率は、ガラス短繊維集合体のSEM断面写真において、バインダーが付着しているガラス短繊維の本数(Na)とバインダーが付着していないガラス短繊維の本数(Nb)とを数え、下記式により算出することができる。より具体的には、後述の実施例に記載される方法により求めることができる。
バインダーの付着率(本数%)={Na/(Na+Nb)}×100
図2に、本実施形態のガラス短繊維集合体の一例のSEM断面写真を示す。SEM断面写真において、ガラス短繊維は白色~灰色に、バインダーは半透明の白色~灰色に観察される。
ガラス短繊維集合体において、ガラス短繊維とバインダーとの合計100質量%に対するバインダーの付着量は、1.0~8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは2.0~6.0質量%であり、さらに好ましくは3.0~6.0質量%である。バインダーの付着量が、1.0質量%以上であると、ガラス短繊維が折れにくくなり、厚み復元性に優れるとともに皮膚刺激性が低くなる傾向にある。また、8.0質量%以下であると、繊維の繊維径増加による断熱性及び吸音性の悪化が低減されるとともに、製造コストが抑えられる傾向にある。
なお、バインダーの付着量は、後述の実施例に記載される方法により求めることができる。
ガラス短繊維集合体の密度は、8~40kg/mであることが好ましく、より好ましくは10~36kg/mであり、さらに好ましくは14~28kg/mである。ガラス短繊維集合体の密度が8kg/m以上であると、厚み復元性に優れ、製造しやすいため製造コストが抑えられる傾向にある。また、40kg/m以下であると、圧縮梱包しやすく、輸送・保管コストが抑えられる傾向にある。
なお、ガラス短繊維集合体の密度は、JIS A 9521に準拠して測定することができる。
〈〈ガラス短繊維〉〉
本実施形態のガラス短繊維集合体に含まれるガラス短繊維としては、特に制限されず、断熱材、吸音材の分野で通常用いられているものを用いることができる。例えば、JIS A 9521建築用断熱材に規定されている人造鉱物繊維断熱材のうち、基材としてグラスウールに区分されるもの等が挙げられる。
ガラス短繊維は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
ガラス短繊維の平均繊維径は、1.0~4.0μmである。ガラス短繊維の平均繊維径が1.0μm以上であると、製造コストを抑えることができ、また、適度な剛性が得られる傾向にあり、4.0μm以下であると、断熱性、吸音性、及び厚み復元性に優れるとともに、皮膚刺激性の低いガラス短繊維集合体を得ることができる。ガラス短繊維の平均繊維径は、1.0~4.0μmであれば特に限定されず、例えば、2.0μm以上であってもよく、3.0μm以上であってもよく、また、3.5μm以下であってもよい。
ガラス短繊維の平均繊維径を1.0~4.0μmに制御する方法としては、例えば、遠心法(ロータリー法)を用いて繊維化を行うこと、繊維化装置における溶融したガラスの出口を小さくすること等が挙げられる。
なお、ガラス短繊維の平均繊維径は、後述の実施例に記載される方法により測定することができる。
ガラス短繊維の繊維長は、特に限定されないが、0.3~35mmであることが好ましく、より好ましくは0.4~30mmであり、さらに好ましくは0.5~25mmである。
なお、ガラス短繊維の平均繊維長は、100本以上の繊維を採取してその長さを定規で測定し、平均することにより求めることができる。
ガラス短繊維のガラス組成は、特に制限されないが、細繊維化や低温での繊維化が容易であることや、低コスト、生体溶解性の観点から、Aガラスが好ましい。ここで、Aガラスとは、アルカリ(NaO、KO)含有率が0.8~20質量%のガラスを指し、含アルカリガラス又はソーダ石灰ガラスとも呼ばれる。
ガラス短繊維の含有量は、ガラス短繊維集合体100質量%に対し、92~99質量%であることが好ましく、より好ましくは94~98質量%であり、さらに好ましくは94~97質量%である。ガラス短繊維の含有量が94質量%以上であると、断熱性、吸音性、及び厚み復元性に優れるとともに、皮膚刺激性の低いガラス短繊維集合体が得られる傾向にあり、98質量%以下であると、製造コストを抑えられる傾向にある。
本実施形態のガラス短繊維は、例えば、ガラス溶融炉等にてガラスを融液化させた後、繊維化装置にてガス及び空気燃焼による加熱及び圧縮エアーにて繊維を延伸させることで製造することができる。繊維化の方法としては、従来公知の遠心法(ロータリー法)や火焔法、吹き飛ばし法等が挙げられる。中でも、細繊維化が容易であることから遠心法が好ましい。遠心法による繊維化装置の例としては、スピナー等が挙げられる。
〈〈バインダー〉〉
本実施形態のガラス短繊維集合体に含まれるバインダーは、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、流動性が高く、ガラス短繊維全体に均一に付着させやすいことから、フェノール系樹脂が好ましい。また、特に、ホルムアルデヒドを含まない熱硬化性樹脂であることが、有害物質であるホルムアルデヒドが発生することがなく、安全に使用することができるため、好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。中でも、流動性が高く、ガラス短繊維全体に均一に付着させやすいことから、アクリル系樹脂が好ましい。
これらの熱可塑性樹脂は、通常、水又は水とアルコール等の水性溶剤に分散させた、水系エマルションとして用いられる。
バインダーは、本発明の効果を損なわない範囲の含有量で、必要により、架橋剤、防塵剤、発色剤、着色剤、pH調整剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、ガラス短繊維から溶出するアルカリ成分を中和するための中和剤等の添加剤を含有していてもよい。
熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計含有量は、ガラス繊維に通常用いられる有機バインダーにおける樹脂の含有量と同等であってよく、バインダーの固形分の質量を100質量%として、例えば、60.0~99.9質量%であってよい。
なお、固形分とは、バインダーを、1気圧且つ室温(23℃程度)以上100℃以下の温度で加熱して、揮発しない成分をいう。なお、固形分以外の成分(揮発成分)は水であることが好ましい。
バインダーは、上記の各成分を常法に従って混合し、水を加えて所定濃度に調整することができる。
〈ガラス短繊維集合体の製造方法〉
本実施形態のガラス短繊維集合体は、例えば、スプレー装置等を用いてガラス短繊維にバインダーを塗布又は噴霧し、積層コンベア等を用いて集綿した後、オーブン等で加熱してバインダーを硬化させることにより、製造することができる。
バインダーをガラス短繊維全体に効率的に均一に付着させるためには、ガラスの繊維化直後に付与することが好ましい。
加熱硬化温度は、200~350℃とすることが好ましい。加熱硬化時間は、ガラス短繊維集合体の密度及び厚さに応じて、30秒~10分の間で適宜調整することが好ましい。
本実施形態のガラス短繊維集合体は、建造物(住宅、ビル等)、自動車等における断熱材、吸音材等として好適に用いることができる。
ガラス短繊維集合体は、そのままの形態で用いてもよく、表皮材で被覆して用いてもよい。表皮材としては、例えば、紙、合成樹脂フィルム、金属箔フィルム、不織布、織布、又はこれらの組み合わせ等を用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は、以下のとおりである。
[ガラス短繊維の平均繊維径]
電子顕微鏡を用いてガラス短繊維の拡大映像(倍率150倍)を取得し、無作為に選んだ100本のガラス短繊維の繊維径を定規で測定し、その平均値(μm)を求めた。
[バインダーの付着率]
ガラス短繊維集合体から30mm×30mm×厚み20mmの試験片を切り出した。試験片の表面に、包埋樹脂との境界を明瞭にするために、オスミウムコーター(株式会社真空デバイス製「HPC-1SW」)を用いてオスミウムをコーティングした。試験片をエポキシ樹脂に包埋し、クロスセクションポリッシャ(日本電子株式会社製「IB-19520CCP」)を用いて研磨により断面加工した。加工条件は、加速電圧:6kV,試験片の冷却温度:-120℃(表示値),加工時間:約12時間とした。加工面に対し、上記クロスセクションポリッシャに備えられたイオンビームスパッタによりカーボンをコーティングした後、該加工面をFIB-SEM(FEI社製「Scios」、SEM機能のみを使用)により観察した。観察条件は、加速電圧5kV、ETD(凹凸像)、T1(反射電子組成像)とした。
倍率150倍のSEM断面写真において、バインダーが付着しているガラス短繊維の本数(Na)とバインダーが付着していないガラス短繊維の本数(Nb)とを数え、下記式によりバインダー付着率(本数%)を算出した。
バインダーの付着率(本数%)={Na/(Na+Nb)}×100
なお、SEM断面写真において、ガラス短繊維は白色~灰色に、バインダーは半透明の白色~灰色に観察される。
[バインダーの付着量]
ガラス短繊維集合体から100mm×100mm×厚み50mmの試験片を切り出し、その質量(Wa)を測定した。次に、切り出した試験片を530℃に設定した電気炉に投入してバインダーを分解除去した。電気炉から試験片を取り出し、バインダーを分解除去した後の試験片の質量(Wb)を測定し、下記式によりバインダーの付着量(質量%)を求めた。
バインダーの付着量(質量%)={(Wa-Wb)/Wa}×100
[ガラス短繊維集合体の密度]
ガラス短繊維集合体について、JIS A 9521に準拠して密度(kg/m)を測定した。
[ガラス短繊維集合体の断熱性]
ガラス短繊維集合体から(200mm×200mm×厚み50mm)の試験片を切り出し、ISO22007-6に準拠して熱伝導率測定装置により試験片の厚み方向の熱伝導率(W/m・K)を測定した。
断熱性について、熱伝導率が0.330W/m・K以下である場合を「〇(良好)」、0.330W/m・K超である場合を「×(劣る)」と評価した。
[ガラス短繊維集合体の吸音性]
ガラス短繊維集合体について、厚み50mmの平板状サンプルを作製して直径41mmの円盤状の試験片を切り出し、JIS A 1405-2:2007(ISO 10534-2:1998)に準拠して、吸音率を測定した。測定装置として日本音響エンジニアリング社製「垂直入射吸音率測定システムWinZac」を用い、20℃において、100~4000Hzにおける吸音率を測定した。その中でも、1000Hzでの吸音率の測定結果を表1に示す。
吸音性について、800Hz、1000Hz、1250Hz、1600Hzの4点の平均吸音率のうち、吸音率が0.20以上の周波数が4点ある場合を「◎(優れる)」、3点の場合を「〇(良好)」、2点の場合を「△(不良)」、1点以下の場合を「×(劣る)」と評価した。
[ガラス短繊維集合体の皮膚刺激性]
ガラス短繊維集合体の表面に触れることにより、SD法の評価尺度1~5の5段階で皮膚刺激性を評価する感性試験を、10名のモニターに対して行った。モニター10名の平均値が2.0未満の場合は「◎(優れる)」、2.0以上3.0未満の場合は「〇(良好)」、3.0以上4.0未満の場合は「△(不良)」、4.0以上の場合は「×(劣る)」と評価した。
実施例及び比較例において使用した原材料は、以下のとおりである。
[ガラス]
・ガラス(ガラス組成:Aガラス)
[バインダー]
・水性フェノール系樹脂バインダー(フェノール系樹脂、架橋剤、防塵剤(99質量%の鉱物油と1質量%の界面活性剤との混合物)、他添加剤を含む。)
・水性アクリル系樹脂バインダー(特許第6850380号公報の実施例1に従って製造した。上記フェノール系樹脂バインダーよりも高粘度。)
[実施例1]
ガラス溶融炉にてガラスを融液化させ、ガラス融液を得た。ガラス融液を用いて、繊維化装置により繊維化を行い、ガラス短繊維(平均繊維径3.2μm)を得た。繊維化直後に、ガラス短繊維に対してフェノール系樹脂バインダーを吹き付けた。バインダー量は、硬化後にガラス短繊維とバインダーとの合計100質量%に対して6質量%となる量を想定し、使用した。次いで、積層コンベア上に目付が450g/mとなるように集綿し、厚さが50mmとなるように圧縮しながら210℃の熱プレス成形機にてバインダーを硬化させた。その後、スリッティング、トリムカット、製品短辺方向の切断等を施して、板状のガラス繊維集合体(厚み50m)を得た。
測定・評価結果を表1に示す。また、バインダーの付着率の算出に用いたSEM断面写真を図3(a)に示す。
[実施例2]
ガラス短繊維集合体の目付を900g/mとしたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス短繊維集合体を製造した。
測定・評価結果を表1に示す。また、バインダーの付着率の算出に用いたSEM断面写真を図3(b)に示す。
[比較例1]
フェノール系樹脂バインダーを一定時間(約1週間)放置して水分を飛ばすことによりバインダーの粘度を上げたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス短繊維集合体を製造した。
測定・評価結果を表1に示す。また、バインダーの付着率の算出に用いたSEM断面写真を図4(a)に示す。
[比較例2]
バインダーとしてアクリル系樹脂バインダーを用いたこと以外は実施例1と同様にして、ガラス短繊維集合体を製造した。
測定・評価結果を表1に示す。また、バインダーの付着率の算出に用いたSEM断面写真を図4(b)に示す。
[比較例3]
アクリル系樹脂バインダーを一定時間(約1週間)放置して水分を飛ばすことにより、バインダーの粘度を上げたこと以外は比較例2と同様にして、ガラス短繊維集合体を製造した。
測定・評価結果を表1に示す。また、バインダーの付着率の算出に用いたSEM断面写真を図5に示す。
Figure 2023151497000001
実施例のガラス短繊維集合体は、ガラス短繊維の平均繊維径が1.0~4.0μmであるため、厚み復元性に優れるものであった。また、比較例と比較して、断熱性、吸音性、及び厚み復元性のバランスに優れ、皮膚刺激性が低いガラス短繊維集合体となった。また、実施例のガラス短繊維集合体は、断熱性、吸音性に優れることから、断熱材、吸音材等として用いる際により少ないガラス量で高い断熱性、吸音性を発揮することができるため、製造コストを低減することができる。また、厚み復元性に優れることから、輸送・保管時に梱包密度を高めることができ、輸送・保管コストを低減することができる。
本発明のガラス短繊維集合体は、断熱性、吸音性、及び厚み復元性に優れ、皮膚刺激性が低く、低コストであるため、建造物(住宅、ビル等)、自動車等における断熱材、吸音材等として好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 平均繊維径が1.0~4.0μmのガラス短繊維とバインダーとを含み、
    前記ガラス短繊維のうち前記バインダーが付着しているガラス短繊維の割合(バインダーの付着率)は10本数%以上であり、
    前記バインダーは、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む
    ことを特徴とする、ガラス短繊維集合体。
  2. 前記ガラス短繊維のガラス組成がAガラスである、請求項1に記載のガラス短繊維集合体。
  3. 前記バインダーの付着量が、前記ガラス短繊維と前記バインダーとの合計100質量%に対して1.0~8.0質量%である、請求項1又は2に記載のガラス短繊維集合体。
  4. 密度が8~40kg/mである、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラス短繊維集合体。
JP2022061123A 2022-03-31 2022-03-31 ガラス短繊維集合体 Pending JP2023151497A (ja)

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