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JP2023146345A - 炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法 Download PDF

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JP2023146345A JP2022053483A JP2022053483A JP2023146345A JP 2023146345 A JP2023146345 A JP 2023146345A JP 2022053483 A JP2022053483 A JP 2022053483A JP 2022053483 A JP2022053483 A JP 2022053483A JP 2023146345 A JP2023146345 A JP 2023146345A
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直正 松山
Naomasa Matsuyama
究 太田
Kiwamu Ota
益豊 濱田
Masutoyo Hamada
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Abstract

【課題】単繊維の直径を太くしたにもかかわらず、弾性率を低下させることなく、高い強度を発現できる炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法の提供。【解決手段】複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている炭素繊維束であって、前記単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下であり、ストランド強度が4.5GPa以上であり、ストランド弾性率が310GPa以上である炭素繊維束、又は、複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている炭素繊維束であって、前記単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下であり、ストランド強度が4.5GPa以上であり、前記単繊維の直径と前記ストランド強度の積が31以上である炭素繊維束。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法に関する。
樹脂系成形品の機械特性を向上させる目的で、繊維を強化材として樹脂と複合化することが一般的に行われている。その中でも炭素繊維は比強度、比弾性率に優れ、軽量であるため、高性能樹脂の強化繊維として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用されている。近年、炭素繊維を強化繊維とし、マトリクス樹脂と一体化させて得られる炭素繊維強化複合材料の優位性はますます高まり、特に自動車、航空・宇宙用途において、繊維強化複合材料の性能の向上に対する要求が高くなっている。
これらの炭素繊維強化複合材料は、例えば、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸された中間製品であるプリプレグから、加熱・加圧といった成形・加工工程を経て成形される。炭素繊維とマトリックス樹脂との複合化において、高性能化を追求するためには、炭素繊維そのものの強度や弾性率等の機械的物性の向上に加え、炭素繊維へのマトリックス樹脂の含侵性を高くし、炭素繊維強化複合材料中のボイド生成を抑制することが重要となる。また、炭素繊維目付(単位面積のプリプレグに含まれる炭素繊維の質量)の小さなプリグレグを用いることで機械特性が向上することが一般的に知られている。炭素繊維目付の小さなプリプレグを製造するためには炭素繊維束を開繊する必要があるが、総繊度の大きな炭素繊維束を用いることでプリプレグの生産性は高くなる。このため、総繊度の大きな炭素繊維束から炭素繊維目付の小さなプリプレグを製造可能な開繊性に優れる炭素繊維束が望まれている。
上述の背景から、これまでにも高い強度及び弾性率を有し、かつ樹脂の含侵性にも優れた炭素繊維束を得ようとする試みがなされている。
特許文献1には、炭素繊維束を製造する過程にて、炭素化工程にて繊維束に撚りを付与することで、優れた引張弾性率を持ちつつ、複合材料の生産性及び力学特性を向上させる技術が記載されている。
特許文献2には、炭素化工程にて高い延伸張力で炭素化処理することで優れた引張弾性率を持ちつつ、複合材料の生産性及び力学特性を向上させる技術が記載されている。
国際公開第2019/244830号 国際公開第2019/203088号
しかし、特許文献1に記載の炭素繊維束は撚りを加えて製造される必要があり、工程の増加による生産性の低下だけでなく、撚りを加えることによって繊維束に過度な集束が発生し、焼成後に解撚しても樹脂の含浸性が不十分になる場合があった。
また、特許文献2に記載の炭素繊維束は高い強度を有しているものの、高い延伸張力で炭素化処理するために繊維束に強い交絡処理を施している。強い交絡処理により、繊維束の束強度が向上するため、炭素化処理における延伸張力を高くしても毛羽の発生が少ない。しかし、得られる炭素繊維束には強く交絡がかかっているため、樹脂含浸性は不十分であった。
また、市場ではこれまで以上に高い強度及び弾性率をもつ炭素繊維束が求められているが、一般的にストランド強度を高めるとストランド弾性率が下がる傾向にある。
また、一般的に炭素繊維束を構成する単繊維の直径が太いほど、樹脂の含浸性が良好となるとされているが、単繊維の直径が太く、かつストランド強度及びストランド弾性率を十分に満足する炭素繊維束は知られていない。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、単繊維の直径を太くしたにもかかわらず、弾性率を低下させることなく、高い強度を発現できる炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法を提供することにある。
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている炭素繊維束であって、
前記単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下であり、ストランド強度が4.5GPa以上であり、ストランド弾性率が310GPa以上である、炭素繊維束。
[2] 複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている炭素繊維束であって、
前記単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下であり、ストランド強度が4.5GPa以上であり、前記単繊維の直径と前記ストランド強度の積が31以上である、炭素繊維束。
[3] ストランド弾性率が310GPa以上である、前記[2]の炭素繊維束。
[4] 前記ストランド強度が4.85GPa以上であり、前記ストランド弾性率が365GPa以上である、前記[1]又は[3]の炭素繊維束。
[5] 前記単繊維の直径が6.8μm以上であり、前記ストランド強度が4.65GPa以上であり、前記ストランド弾性率が365GPa以上403GPa以下である、前記[1]又は[3]の炭素繊維束。
[6] 前記単繊維の直径が7.5μm以上である前記[1]~[5]のいずれかの炭素繊維束。
[7] 結節強度が80N/mm以上である、前記[1]~[6]のいずれかの炭素繊維束。
[8] 密度が1.79g/cm以上である、前記[1]~[7]のいずれかの炭素繊維束。
[9] 実質上無撚りである、前記[1]~[8]のいずれかの炭素繊維束。
[10] 下記(1)~(6)の工程を含む、炭素繊維束の製造方法。
(1)アクリロニトリル系重合体溶液を、乾湿式紡糸法を用いて吐出孔から一旦空気中に吐出させた後、温度10℃以下、有機溶剤の濃度が80.0質量%以上81.0質量%以下の水溶液からなる凝固浴中で凝固させて前記有機溶剤を含む凝固糸束を得る工程。
(2)前記凝固糸束を温度75℃以上、有機溶剤の濃度が40質量%以上65質量%以下の温水溶液中で、延伸倍率2.0倍以上3.2倍以下に延伸して炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得る工程。
(3)前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、雰囲気温度が200℃以上260℃以下の範囲内で温度勾配を有する酸化性雰囲気中で、伸長率が3.0%以上8.0%以下で加熱し、密度が1.33g/cm以上1.36g/cm以下の耐炎化繊維束を得る耐炎化工程。
(4)前記耐炎化繊維束を、雰囲気温度が300℃以上900℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、伸長率が4.0%以上5.0%以下で加熱する第一炭素化工程。
(5)前記第一炭素化工程後に、雰囲気温度が1000℃以上1800℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.21cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第二炭素化工程。
(6)前記第二炭素化工程後に、雰囲気温度が1700℃以上2300℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.23cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第三炭素化工程。
[11] 前記(1)の工程と前記(2)の工程の間に、前記凝固糸束を空気中で延伸倍率1.00倍以上1.20倍以下に延伸する工程を有する、前記[10]の炭素繊維束の製造方法。
[12] 前記(2)の工程において、前記凝固糸束を延伸した後に、有機溶剤を除去し、温度90℃以上の温水中で倍率0.96倍以上1.30倍以下に収縮又は延伸し、加圧水蒸気雰囲気下で延伸倍率3.7倍以上4.2倍以下に延伸して前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得る、前記[10]又は[11]の炭素繊維束の製造方法。
[13] 前記(1)の工程で用いる前記水溶液の有機溶剤の濃度が80.2質量%以上80.6質量%以下である、前記[10]~[12]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
[14] 前記有機溶剤がジメチルホルムアミドである、前記[10]~[13]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
[15] 前記(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度が200℃/分以上500℃/分以下である、前記[10]~[14]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
[16] 前記(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度が210℃/分以上340℃/分以下である、前記[10]~[15]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
[17] 前記(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度が215℃/分以上300℃/分以下である、前記[10]~[16]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
[18] 前記(5)の工程での最高雰囲気温度と、前記(6)の工程での入口雰囲気温度の差が500℃以下である、前記[10]~[17]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
[19] 前記(5)の工程での最高雰囲気温度と、前記(6)の工程での入口雰囲気温度の差が300℃以下である、前記[10]~[18]のいずれかの炭素繊維束の製造方法。
本発明によれば、単繊維の直径を太くしたにもかかわらず、弾性率を低下させることなく、高い強度を発現できる炭素繊維束及び炭素繊維束の製造方法を提供できる。
[炭素繊維束]
本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束は、複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている繊維束である。
単繊維の直径、すなわち繊維径は6.5μm以上8.5μm以下である。繊維径を6.5μm以上とすることで、繊維間の隙間を大きくすることができ、樹脂を均一に含浸させやすくなり、本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束を用いて得られる繊維強化複合材料中のボイド生成を抑制することが可能となる。繊維径を8.5μm以下とすることで、後述する耐炎化工程((3)の工程)において断面二重構造が顕著となりにくく、ストランド弾性率を低下させることなく、高ストランド強度の炭素繊維束を得ることが可能となる。樹脂含侵の均一性と高いストランド強度を両立させるため、繊維径は6.8μm以上8.5μm以下とすることがより好ましく、7.5μm以上8.5μm以下とすることがさらに好ましい。
単繊維の直径の測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
本発明の第一の態様の炭素繊維束は、ストランド強度が4.5GPa以上であり、ストランド弾性率が310GPa以上である。
第一の態様の炭素繊維束のストランド強度を4.5GPa以上とし、かつストランド弾性率を310GPa以上とすることで、ストランド強度とストランド弾性率のバランスが取れた炭素繊維束になり、機械物性に優れる炭素繊維強化複合材料が得られやすくなる。
ストランド強度及びストランド弾性率の測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
本発明の第二の態様の炭素繊維束は、スストランド強度が4.5GPa以上であり、単繊維の直径とストランド強度の積が31以上である。
第二の態様の炭素繊維束のストランド強度を4.5GPa以上とし、かつ単繊維の直径とストランド強度の積を31以上とすることで、単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下の範囲での繊維径に対して、高いストランド強度が得られる。
この観点から、単繊維の直径とストランド強度の積は、33以上が好ましく、35以上がより好ましい。また、単繊維の直径とストランド強度の積は、50以下が好ましく、45以下がより好ましい。
本発明の第二の態様の炭素繊維束は、ストランド弾性率が310GPa以上であることが好ましい。第二の態様の炭素繊維束のストランド弾性率を310GPa以上とすることで、ストランド強度とストランド弾性率のバランスが取れた炭素繊維束になり、機械物性に優れる炭素繊維強化複合材料が得られやすくなる。
本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束は、ストランド強度が4.85GPa以上であり、ストランド弾性率が365GPa以上であることが好ましい。
ストランド強度が4.85GPa以上であり、ストランド弾性率が365GPa以上あれば、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。
本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束は、単繊維の直径が6.8μm以上であり、ストランド強度が4.65GPa以上であり、ストランド弾性率が365GPa以上403GPa以下であることが好ましい。
これらの物性を満たすことで、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。
特に、単繊維の直径が6.8μm以上とし、ストランド強度を4.65GPa以上とし、ストランド弾性率を365GPa以上とすることで、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。また、ストランド弾性率を403GPa以下とすることで、炭素繊維束の黒鉛結晶サイズが過剰に大きくなることを抑制することができ、繊維軸方向の圧縮強度の低下を抑制することができるため、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。
本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束は、結節強度が80N/mm以上であることが好ましい。
結節強度は、繊維軸方向以外の繊維束の機械的な性能を反映させる指標となりうるものであり、特に繊維軸に垂直な方向の性能を簡易的に評価することができる。繊維強化複合材料においては、擬似等方積層により材料を形成することが多く、複雑な応力場を形成する。その際、繊維軸方向の引張、圧縮応力の他に、繊維軸方向以外の応力も発生している。さらに、衝撃試験のような比較的高速なひずみを付与した場合、材料内部の発生応力状態はかなり複雑であり、繊維軸方向と異なる方向の強度が重要となる。したがって、炭素繊維束の結節強度を80N/mm以上とすることで、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。
これらの観点から、結節強度は90N/mm以上であることがより好ましい。一方、炭素繊維束の結節強度が高くなると、繊維軸方向以外の圧縮強度も高くなり、黒鉛結晶サイズが小さくなって弾性率が低下する傾向にある。ストランド弾性率と結節強度のバランスが取れた炭素繊維束を得るため、結節強度は600N/mm以下であることが好ましく、400N/mm以下であることがより好ましく、200N/mm以下であることがさらに好ましい。
結節強度の測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束は、密度が1.79g/cm以上であることが好ましい。
炭素繊維束の密度が1.79g/cm以上であれば、ストランド強度、ストランド弾性率をより高くできる。
この観点から、炭素繊維束の密度は1.81g/cm以上がより好ましく、1.83g/cm以上がさらに好ましい。また、炭素繊維束の密度は1.90g/cm以下が好ましく、1.88g/cm以下がより好ましく、1.86g/cm以下がさらに好ましい。炭素繊維束の密度が1.90g/cm以下であれば、炭素繊維束の黒鉛結晶サイズが過剰に大きくなることを抑制することができ、繊維軸方向の圧縮強度の低下を抑制することができるため、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。
密度の測定条件は、後述する実施例に記載のとおりである。
本発明の第一の態様及び第二の態様の炭素繊維束は、実質上無撚りであることが好ましい。
本発明において「実質上無撚り」とは、繊維束に撚りが存在しないか、又は局所的に撚りが存在するものの、S撚りとZ撚りが同等に存在し、炭素化工程全体として正味の撚り数が0.5ターン/m以下であることを意味する。
炭素繊維束が実質的に無撚りであることで、炭素繊維束の開繊性が良好となり、得られる繊維強化複合材料の性能をより高くすることが可能となる。
[炭素繊維束の製造方法]
本発明の第三の態様の炭素繊維の製造方法は、下記(1)~(6)の工程を含む。
(1)アクリロニトリル系重合体溶液を、乾湿式紡糸法を用いて吐出孔から一旦空気中に吐出させた後、温度10℃以下、有機溶剤の濃度が80.0質量%以上81.0質量%以下の水溶液からなる凝固浴中で凝固させて前記有機溶剤を含む凝固糸束を得る工程。
(2)前記凝固糸束を温度75℃以上、有機溶剤の濃度が40質量%以上65質量%以下の温水溶液中で、延伸倍率2.0倍以上3.2倍以下に延伸して炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得る工程。
(3)前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、雰囲気温度が200℃以上260℃以下の範囲内で温度勾配を有する酸化性雰囲気中で、伸長率が3.0%以上8.0%以下で加熱し、密度が1.33g/cm以上1.36g/cm以下の耐炎化繊維束を得る耐炎化工程。
(4)前記耐炎化繊維束を、雰囲気温度が300℃以上900℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、伸長率が4.0%以上5.0%以下で加熱する第一炭素化工程。
(5)前記第一炭素化工程後に、雰囲気温度が1000℃以上1800℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.21cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第二炭素化工程。
(6)前記第二炭素化工程後に、雰囲気温度が1700℃以上2300℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.23cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第三炭素化工程。
<(1)の工程>
(1)の工程は、アクリロニトリル系重合体溶液を、乾湿式紡糸法を用いて吐出孔から一旦空気中に吐出させた後、温度10℃以下、有機溶剤の濃度が80.0質量%以上81.0質量%以下の水溶液(A)からなる凝固浴中で凝固させて前記有機溶剤を含む凝固糸束を得る工程である。
凝固浴、すなわち水溶液(A)の温度は、10℃以下である。水溶液(A)の温度を10℃以下とすることで、緻密な凝固繊維を形成しやすく、特に繊維表面の緻密性を高めることができ、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
水溶液(A)の温度は、4℃以上であることが好ましく、6℃以上であることがより好ましい。水溶液(A)の温度を4℃以上とすることで、凝固繊維の過度な緻密化を抑制する事ができ、後の工程での延伸性を確保することが可能となる。
凝固浴、すなわち水溶液(A)の有機溶剤の濃度は、水溶液(A)の総質量に対して80.0質量%以上81.0質量%以下であり、80.2質量%以上80.6質量%以下であることが好ましい。有機溶剤の濃度を80.0質量%以上81.0質量%以下とすることで、表面及び内部が共に緻密な凝固糸を得ることができ、その結果、得られる炭素繊維束のストランド弾性率を低下させることなくストランド強度及び結節強度を高くすることが可能となる。
水溶液(A)に含まれる有機溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、より緻密な構造を形成するという観点から、ジメチルホルムアミドが好ましい。
<(2)の工程>
(2)の工程は、前記凝固糸束を温度75℃以上、有機溶剤の濃度が40質量%以上65質量%以下の温水溶液(B)中で、延伸倍率2.0倍以上3.2倍以下に延伸して炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得る工程である。
温水溶液(B)の温度は、75℃以上であり、85℃以上であることが好ましい。温水溶液(B)の温度を75℃以上とすることで、十分な延伸性を確保することができるため、安定な延伸が可能となる。
温水溶液(B)の温度は、98℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましい。温水溶液(B)の温度を98℃以下とすることで、凝固糸束の急激な温度変化を抑制する事ができ、均一な延伸が可能となる。
温水溶液(B)の有機溶剤の濃度は、温水溶液(B)の総質量に対して40質量%以上65質量%以下であり、50質量%以上60質量%以下であることが好ましい。温水溶液(B)の有機溶剤の濃度を40質量%以上65質量%以下とすることで、表面及び内部が共に緻密な構造を形成することができ、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
温水溶液(B)に含まれる有機溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、より緻密な構造を形成するという観点から、ジメチルホルムアミドが好ましい。
温水溶液(B)中での延伸倍率は2.0倍以上3.2倍以下であり、2.7倍以上3.0倍以下であることが好ましい。温水溶液(B)中での延伸倍率を2.0倍以上とすることで、十分な分子配向性を持った炭素繊維前駆体アクリル繊維束を製造することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。温水溶液(B)中での延伸倍率を3.2倍以下とすることで、過剰な延伸を抑制でき、安定に延伸することが可能となる。
(2)の工程においては、温水溶液(B)中で凝固糸束を延伸した後に、有機溶剤を除去する工程、温水で延伸する工程、加圧水蒸気府に気化で延伸する工程、乾熱で延伸する工程、油剤を付与する工程、乾燥する工程等を適宜組合せて炭素繊維前駆体アクリル繊維を得ることが好ましい。具体的には、凝固糸束を延伸した後に、有機溶剤を除去し、温度90℃以上の温水(C)中で倍率0.96倍以上1.30倍以下に収縮又は延伸し、加圧水蒸気雰囲気下で延伸倍率3.7倍以上4.2倍以下に延伸して炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得ることが好ましい。
すなわち、(2)の工程は、凝固糸束を温水溶液(B)中で延伸倍率2.0倍以上3.2倍以下に延伸する工程(2-1)、有機溶剤を除去する工程(2-2)、温度90℃以上の温水(C)中で倍率0.96倍以上1.30倍以下に収縮又は延伸する工程(2-3)、加圧水蒸気雰囲気下で延伸倍率3.7倍以上4.2倍以下に延伸する工程(2-5)を順に有することが好ましい。また、(2)の工程は、油剤組成物を付与する工程(2-4)をさらに有することがより好ましい。工程(2-4)は、工程(2-3)と工程(2-5)の間に行うことが好ましい。
工程(2-2)は、温水溶液(B)中で延伸した後の凝固糸束(以下、「延伸繊維束」ともいう。)から有機溶剤を除去する工程である。有機溶剤を除去方法としては、脱溶剤することができればいかなる方法でもよい。例えば、50℃以上100℃未満の範囲の温度に設定された多段洗浄槽にて、延伸繊維束を洗浄・延伸を行うことが好ましい。
工程(2-3)は、有機溶剤を除去した後の延伸繊維束を、温度90℃以上の温水(C)中で倍率0.96倍以上1.30倍以下に収縮又は延伸する工程である。工程(2-3)により延伸の歪みを緩和することができる。
温水(C)の温度は90℃以上である。温水(C)の温度を90℃以上とすることで均一に延伸の歪みを緩和することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、より高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。温水(C)の温度は、97℃以下であることが好ましい。温水(C)の温度を97℃以下とすることで、延伸繊維束の急激な温度変化を抑制する事ができ、均一に延伸の歪みを緩和することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、より高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
温水(C)中での収縮又は延伸倍率は0.96倍以上1.30倍以下である。収縮又は延伸倍率を0.96倍以上とすることで、繊維束のバラケによる引取不良を防止でき、安定に延伸の歪みを緩和することが可能となる。収縮又は延伸倍率を1.30倍以下とすることで、過剰な負荷を抑制でき、安定に延伸の歪みを緩和することが可能となる。
工程(2-3)においては、有機溶剤を除去した後の延伸繊維束を温水(C)中で、収縮倍率(緩和倍率)0.96倍以上1.00倍未満に収縮(緩和)するか、延伸倍率1.00倍以上1.30倍以下に延伸することが好ましく、収縮倍率(緩和倍率)0.96倍以上0.99倍以下に収縮(緩和)するか、延伸倍率1.05倍以上1.30倍以下に延伸することがより好ましく、収縮倍率(緩和倍率)0.96倍以上0.99倍以下に収縮(緩和)することがさらに好ましい。
工程(2-4)は、温水(C)中で収縮又は延伸した後の延伸繊維束に油剤組成物を付与する工程である。
油剤組成物は、炭素繊維前駆体アクリル繊維束に求める機能等を勘案して決定でき、シリコーン系油剤組成物が好ましい。油剤組成物には、必要に応じて、さらに酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、浸透剤等の添加物を配合することができる。
油剤組成物を延伸繊維束に付与する方法としては、ローラー法、ガイド法、スプレー法、ディップ法等、公知の方法を用いることができる。
油剤組成物を延伸繊維束に付与した後、必要に応じて、従来公知の方法で乾燥することが好ましい。
工程(2-5)は、温水(C)中で収縮又は延伸した後、好ましくは油剤組成物を付与し、必要に応じて乾燥した後の延伸繊維束を加圧水蒸気雰囲気下で延伸倍率3.7倍以上4.2倍以下に延伸する工程である。
加圧水蒸気雰囲気中での延伸倍率は3.7倍以上4.2倍以下である。加圧水蒸気雰囲気中での延伸倍率を3.7倍以上とすることで、得られる炭素繊維前駆体アクリル繊維束の分子配向性が向上され、ストランド弾性率を低下させることなく、より高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。加圧水蒸気雰囲気中での延伸倍率を4.2倍以下とすることで、過剰な延伸を抑制することができ、安定に延伸することが可能となる。
<(3)の工程:耐炎化工程>
(3)の工程は、前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、雰囲気温度が200℃以上260℃以下の範囲内で温度勾配を有する酸化性雰囲気中で、伸長率が3.0%以上8.0%以下で加熱し、密度が1.33g/cm以上1.36g/cm以下の耐炎化繊維束を得る耐炎化工程である。
耐炎化工程では、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を酸化性雰囲気中で、雰囲気温度が200℃以上260℃以下の範囲内で直線的な温度勾配を有する耐炎化炉内で加熱することが好ましい。
耐炎化工程では、熱による環化反応と酸素による酸化反応が起こっており、この2つの反応をバランスよく生じさせることがストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得るために重要である。
耐炎化工程での雰囲気温度は200℃以上260℃以下である。耐炎化工程での炭素繊維前駆体アクリル繊維束を走行させる雰囲気の温度を200℃以上とすることで、酸化反応が十分に生じていない部分を少なくでき、単繊維の断面方向で大きな構造斑が発生することを抑制できるため、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。耐炎化工程での炭素繊維前駆体アクリル繊維束を走行させる雰囲気の温度を260℃以下とすることで、単繊維の表面に近い部分により多くの酸素が存在することを抑制でき、その結果、後述する第一炭素化工程以降での加熱処理により過剰の酸素が消失、欠陥点を形成する反応を抑制することができ、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
耐炎化工程では、本工程で得られる耐炎化繊維束の密度が1.33g/cm以上1.36g/cm以下となるまで炭素繊維前駆体アクリル繊維束を加熱する。耐炎化繊維束の密度を1.33g/cm以上とすることで、耐炎化が不十分な箇所が発生することを抑制でき、その結果、後述する第一炭素化工程以降での加熱処理により分解反応が生じて欠陥点を形成することを抑制できるため、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。耐炎化繊維束の密度を1.36g/cm以下とすることで、耐炎化繊維束内に多くの酸素が存在することを抑制でき、その結果、後述する第一炭素化工程以降での加熱処理により過剰の酸素が消失、欠陥点を形成する反応を抑制することができ、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
耐炎化工程では、伸長率3.0%以上8.0%以下で炭素繊維前駆体アクリル繊維束を伸長して耐炎化繊維束とする。耐炎化工程での伸長率は4.0%以上7.0%以下とすることが好ましく、5.0%以上6.5%以下とすることがより好ましい。耐炎化工程での伸長率を3.0%以上とすることで耐炎化繊維束の分子配向性が向上できるため、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。耐炎化工程での伸長率を8.0%以下とすることで過剰な伸長を抑制することができ、安定に耐炎化繊維束を得ることが可能となる。
酸化性雰囲気を形成するガスとしては、例えば空気、酸素、二酸化窒素等が挙げられる。これらの中でも、経済性の面から空気が好ましい。
耐炎化炉内での処理時間(耐炎化処理の時間)は、例えば、30分以上100分以下が好ましい。
<(4)の工程:第一炭素化工程>
(4)の工程は、前記耐炎化繊維束を、雰囲気温度が300℃以上900℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、伸長率が4.0%以上5.0%以下で加熱する第一炭素化工程である。
第一炭素化工程では、耐炎化繊維束を非酸化性雰囲気中で、雰囲気温度が300℃以上900℃以下の範囲内で直線的な温度勾配を有する第一炭素化炉内で加熱することが好ましい。
第一炭素化工程での雰囲気温度は300℃以上900℃以下である。第一炭素化工程での雰囲気温度を900℃以下とすることで、耐炎化繊維束が非常に脆くなることを抑制することが可能となり、安定に第一炭素化工程(第一炭素化炉)を通過させることができるだけでなく、後述する第二炭素化工程以降での加熱処理にて欠陥点の形成を抑制し、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
第一炭素化工程での伸長率は4.0%以上5.0%以下である。第一炭素化工程での伸長率を4.0%以上とすることで、得られる炭素繊維束の分子配向性を向上することができ、ストランド弾性率を低下させることなくストランド強度及び結節強度を向上させることが可能となる。第一炭素化工程での伸長率を5.0%以下とすることで過剰な伸長を抑制することができ、安定に第一炭素化工程(第一炭素化炉)を通過させることが可能となる。
第一炭素化炉での処理時間(第一炭素化処理の時間)は1.0分以上3.0分以下が好ましく、1.2分以上2.5分以下がより好ましい。第一炭素化炉での処理時間を1.0分以上とすることで、急激な温度上昇に伴う激しい分解反応を抑制することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。第一炭素化炉での処理時間を3.0分以下とすることで、炭素繊維束の結晶の配向度が低下することを抑制でき、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
非酸化性雰囲気を形成するガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。これらの中でも、経済性の面から窒素が好ましい。
<(5)の工程:第二炭素化工程>
(5)の工程は、前記第一炭素化工程後に、雰囲気温度が1000℃以上1800℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.21cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第二炭素化工程である。なお、(5)の工程における繊維束とは、第一炭素化工程を通過した耐炎化繊維束のことである。
第二炭素化工程では、第一炭素化炉内を通過した繊維束を非酸化性雰囲気中で、雰囲気温度が1000℃以上1800℃以下の範囲内で直線的な温度勾配を有する第二炭素化炉内で加熱することが好ましい。
第二炭素化工程での雰囲気温度は1000℃以上1800℃以下である。第二炭素化工程での雰囲気温度を1800℃以下とすることで、後述する第三炭素化工程での加熱処理にて欠陥点の形成を抑制し、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
第二炭素化工程(第二炭素化炉)を通過する繊維束は大きな収縮を伴うために、緊張下で加熱をすることが重要である。第二炭素化工程では、耐炎化工程(耐炎化炉)を通過させる直前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の総繊度に対して0.15cN/dtex以上0.21cN/dtex以下の張力を付与し、好ましくは0.17cN/dtex以上0.21cN/dtex以下の張力を付与する。第二炭素化工程(第二炭素化炉)を通過する繊維束に付与する張力を0.15cN/dtex以上とすることで、得られる炭素繊維束の分子配向性を高い状態に維持することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなくストランド強度及び結節強度を向上させることが可能となる。第二炭素化工程(第二炭素化炉)を通過する繊維束に付与する張力を0.21cN/dtex以下とすることで、過剰な張力による炭素繊維束の単繊維破断を抑制することが可能となり、繊維強化複合材料を安定に得ることが可能となる。
第二炭素化炉での処理時間(第二炭素化処理の時間)は1.3分以上5.0分以下が好ましい。第二炭素化炉での処理時間を1.3分以上とすることで、急激な温度上昇に伴う激しい分解反応を抑制することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。第二炭素化炉での処理時間を5.0分以下とすることで、高い生産性を維持しつつ炭素繊維束の結晶の配向度を十分高くすることが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を効率よく得ることが可能となる。
<(6)の工程:第三炭素化工程>
(6)の工程は、前記第二炭素化工程後に、雰囲気温度が1700℃以上2300℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.23cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第三炭素化工程である。なお、(6)の工程における繊維束とは、第一炭素化工程及び第二炭素化工程を通過した耐炎化繊維束のことである。
第三炭素化工程では、第二炭素化炉内を通過した繊維束を非酸化性雰囲気中で、雰囲気温度が1700℃以上2300℃以下の範囲内で直線的な温度勾配を有する第三炭素化炉内で加熱して、炭素繊維束を得ることが好ましい。
第三炭素化工程での雰囲気温度は1700℃以上2300℃以下である。第二炭素化工程の温度を考えると、第三炭素化工程での雰囲気温度を第二炭素化工程での雰囲気温度より高くすることが好ましく、1800℃以上とすることがより好ましい。第三炭素化工程での雰囲気温度を2300℃以下とすることで、第三炭素化炉の劣化を防止できるだけでなく、得られる炭素繊維束の欠陥点の形成を抑制し、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
第三炭素化工程(第三炭素化炉)を通過する繊維束は大きな収縮を伴うために、緊張下で加熱をすることが重要である。第三炭素化工程では、耐炎化工程(耐炎化炉)を通過させる直前の炭素繊維前駆体アクリル繊維束の総繊度に対して0.15cN/dtex以上0.23cN/dtex以下の張力を付与し、好ましくは0.18cN/dtex以上0.22cN/dtex以下の張力を付与する。第三炭素化工程(第三炭素化炉)を通過する繊維束に付与する張力を0.15cN/dtex以上とすることで、得られる炭素繊維束の分子配向性を高い状態に維持することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなくストランド強度及び結節強度を向上させることが可能となる。第三炭素化工程(第三炭素化炉)を通過する繊維束に付与する張力を0.23cN/dtex以下とすることで、過剰な張力による炭素繊維束の単繊維破断を抑制することが可能となり、繊維強化複合材料を安定に得ることが可能となる。
第三炭素化炉での処理時間(第三炭素化処理の時間)は1.0分以上3.0分以下が好ましい。第三炭素化炉での処理時間を1.0分以上とすることで、急激な温度上昇に伴う激しい分解反応を抑制することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。第三炭素化炉での処理時間を3.0分以下とすることで、高い生産性を維持しつつ炭素繊維束の結晶の配向度を十分高くすることが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を効率よく得ることが可能となる。
(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度は、200℃/分以上500℃/分以下であることが好ましく、210℃/分以上340℃/分以下であることがより好ましく、215℃/分以上300℃/分以下であることがさらに好ましい。雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度を200℃/分以上とすることで、高い生産性で炭素繊維束を製造することが可能となる。雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度を500℃/分以下とすることで、急激な温度上昇に伴う激しい分解反応を抑制することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。前述の昇温速度は雰囲気温度1800℃から2200℃での繊維束の走行時間で、2200℃と1800℃の差である400℃を割った値である。
また、(5)の工程での最高雰囲気温度と(6)の工程での入口雰囲気温度との差は500℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。(5)の工程での最高雰囲気温度と(6)の工程での入口雰囲気温度との差を500℃以下とすることで、(6)の工程初期での激しい分解反応を抑制することが可能となり、ストランド弾性率を低下させることなく、密度が高く、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。
(5)の工程での最高雰囲気温度と(6)の工程での入口雰囲気温度との差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
<その他の工程>
本発明の第三の態様の炭素繊維の製造方法は、(1)の工程の前に下記(a)の工程を有していてもよい。また、(1)の工程と(2)の工程の間に、下記(b)の工程を有することが好ましい。また、(6)の工程の後に、下記(c)の工程及び(d)の工程を有していてもよい。
(a)アクリロニトリル系重合体溶液を調製する工程。
(b)前記凝固糸束を空気中で延伸倍率1.00倍以上1.20倍以下に延伸する工程。
(c)前記第三炭素化工程で得られた炭素繊維束を表面酸化処理する工程。
(d)前記表面酸化処理後の炭素繊維束をサイジング処理する工程。
((a)の工程)
(a)の工程は、アクリロニトリル系重合体溶液を調製する工程である。
本発明で用いられるアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーであってもよいし、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体が共重合したコポリマーであってもよい。
アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル単位の含有量は、得られる炭素繊維束に求める品質等を勘案して決定でき、例えば、アクリロニトリル系重合体を構成する単量体単位の総質量に対して、90質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、96質量%以上99.5質量%以下であることがより好ましい。アクリロニトリル単位の含有量が90質量%以上であれば、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を炭素繊維束に転換するための耐炎化及び炭素化のそれぞれの工程で、単繊維同士の融着を抑制でき、炭素繊維束のストランド強度の低下を防ぐことができる。さらに、加熱ローラーや加圧水蒸気による延伸等の処理において、単繊維間の接着を抑制できる。アクリロニトリル単位の含有量が99.5質量%以下であれば、溶剤への溶解性が低下しにくく、アクリロニトリル系重合体の析出・凝固を防止できるため、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を安定して製造できる。
アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル以外の単量体単位としては、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体から適宣選択することができ、アクリロニトリル系重合体の親水性を向上させるビニル系単量体単位、耐炎化反応を促進するビニル系単量体単位が好ましい。
アクリロニトリル系重合体を合成する方法はどのような重合方法であってもよく、重合方法の相違によって本発明が制約されるものではない。
アクリロニトリル系重合体溶液の溶剤にはジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液が挙げられる。中でもジメチルホルムアミドはアクリロニトリル系重合体に対する溶解力が高い点から好ましい。
アクリロニトリル系重合体溶液の重合体濃度は、アクリロニトリル系重合体溶液の総質量に対して、20質量%以上25質量%以下であることが好ましく、21質量%以上24質量%以下であることがより好ましい。重合体濃度を20質量%以上とすることで、凝固糸内部のボイドが減少するため、炭素繊維束のストランド強度を高くすることができる。重合体濃度を25質量%以下とすることでアクリロニトリル系重合体溶液は適度な粘度と流動性を保つことができるため、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造が容易となる。
アクリロニトリル系重合体溶液の温度は、50℃以上70℃以下に調整することが好ましく、より好ましくは55℃以上65℃以下である。アクリロニトリル系重合体溶液の温度を50℃以上70℃以下とすることで、アクリロニトリル系重合体溶液は適度な粘度と流動性を保つことができるため、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の製造が容易となる。
((b)の工程)
(b)の工程は、前記凝固糸束を空気中で延伸倍率1.00倍以上1.20倍以下に延伸する工程である。
(b)の工程は、(1)の工程と(2)の工程の間に行われることが好ましい。
(b)の工程では、(1)の工程で引き取られた凝固糸束を、凝固液を含んだ状態のまま、空気中にて延伸を実施する。空気中での延伸倍率は、1.00倍以上1.20倍以下であり、1.05倍以上1.15倍以下であることが好ましい。空気中での延伸倍率を1.00倍以上とすることで不均一な収縮を抑えることが可能となり、結果的にストランド弾性率を低下させることなく、高いストランド強度及び結節強度をもつ炭素繊維束を得ることが可能となる。空気中での延伸倍率を1.20倍以下とすることで、過剰な延伸を抑制でき、安定に延伸することが可能となる。
((c)の工程)
(c)の工程は、前記第三炭素化工程で得られた炭素繊維束を表面酸化処理する工程である。
(c)の工程は、(6)の工程(第三炭素化工程)の後に行われることが好ましい。
第三炭素化工程(第三炭素化炉)を通過して得られた炭素繊維束は、表面酸化処理に供されることが好ましい。表面処理方法としては、公知の方法、すなわち電解酸化、薬剤酸化及び空気酸化等による酸化処理が挙げられ、いずれの方法を用いてもよいが、工業的に広く実施されている電解酸化処理は、安定な表面酸化処理が可能であり、より好適である。
表面酸化処理では、表面処理状態を表すipaを0.05μA/cm以上0.25μA/cm以下にすることが好ましい。このような範囲に制御するためには、電解酸化処理にて電気量を調整する方法が簡便である。電解酸化処理では、同一電気量であっても、用いる電解質及びその濃度によってipaは大きく異なってくるが、pHが7より大きいアルカリ性水溶液中では、炭素繊維束を陽極として10クーロン/g以上200クーロン/g以下の電気量を流して酸化処理を行うことが好ましい。
電解質としては、例えば炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
((d)の工程)
(d)の工程は、前記表面酸化処理後の炭素繊維束をサイジング処理する工程である。
(d)の工程は、(c)の工程の後に行われることが好ましい。
表面酸化処理された炭素繊維束は、続けてサイジング処理に供されることが好ましい。サイジング剤は、有機溶剤に溶解させたものや、乳化剤などで水に分散させたエマルジョン液を、ローラー浸漬法、ローラー接触法等によって炭素繊維束に付与する。次いで、これを乾燥することによってサイジング処理を行うことができる。
なお、炭素繊維の表面へのサイジング剤の付着量の調節は、サイジング剤液の濃度調整や絞り量調整によって行うことができる。
また、乾燥は、熱風、熱板、加熱ローラー、各種赤外線ヒーターなどを利用して行うことができる。
サイジング剤としては、公知のものを使用でき、例えばエポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を主成分としたサイジング剤等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の記載によっては限定されない。本実施例で行った各種測定方法は、以下の通りである。
[炭素繊維の単繊維の直径の測定方法]
炭素繊維束の密度(g/cm)、炭素繊維束1m当たりの質量、すなわち目付(g/m)、炭素繊維束のフィラメント数より、炭素繊維の単繊維1本当たりの断面積を算出した。その断面積と等しい面積を有する真円の直径を算出し、炭素繊維の単繊維の直径とした。
なお、炭素繊維束の密度は、JIS R 7063:1999に記載されたC法(密度こう配管法)に準拠して測定した。
[ストランド強度、ストランド弾性率の測定方法]
JIS R 7608:2007に準拠して、炭素繊維束のストランド強度及びストランド弾性率を測定した。
なお、ストランド弾性率は、同法のA法で算出した。
[結節強度の測定方法]
結節強さの測定は以下のように実施した。
150mm長の炭素繊維束の両端に長さ25mmの掴み部を取り付け試験体とした。試験体の作製の際、0.1×10-3N/デニールの荷重を掛けて炭素繊維束の引き揃えを行った。この試験体に結び目を1つ、ほぼ中央部に形成し、引張時のクロスヘッド速度は100mm/分で実施した。試験数は12本で実施し、最小と最大値を取り除き、10本の平均値で測定値とした。
[実施例1]
<炭素繊維前駆体アクリル繊維束の作製>
アクリロニトリル単位を98質量%、メタクリル酸単位を2質量%含むアクリロニトリル系重合体をジメチルホルムアミドに溶解し、濃度23.5質量%のアクリロニトリル系重合体溶液を調製した。
このアクリロニトリル系重合体溶液を直径0.15mm、数2000の吐出孔を配置した紡糸口金から紡出させて乾湿式紡糸した。すなわち、空気中に紡出させて約5mmの空間を通過させた後、8℃に調温した80.4質量%ジメチルホルムアミドを含有する水溶液(A)を満たした凝固液中で凝固させ、凝固糸束を引き取った。
次いで凝固糸束をフィラメント数12000に合糸して凝固浴から引き出し、空気中で1.1倍延伸した後、90℃に調温した55質量%ジメチルホルムアミドを含有する温水溶液(B)を満たした延伸槽中にて2.9倍延伸した。延伸後、溶剤を含有している延伸繊維束を清浄な水で洗浄し、次に、96℃の温水(C)中で0.98倍の緩和を行った。引き続き、延伸繊維束にアミノ変性シリコーンを主成分とする油剤を1.1質量%となるよう付与し乾燥緻密化した。乾燥緻密化後の延伸繊維束を、加圧水蒸気雰囲気下にて4.0倍延伸して、更なる配向の向上と緻密化を行った後に巻き取って、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得た。この繊維の繊度は、1.08dtexであった。
<炭素繊維束の作製>
複数の炭素繊維前駆体アクリル繊維束を平行に揃えた状態で入口雰囲気温度を220℃、最高雰囲気温度を245℃として直線的な温度勾配を有する耐炎化炉に導入した。耐炎化炉内にて加熱された空気を炭素繊維前駆体アクリル繊維束に吹き付けることによって、炭素繊維前駆体アクリル繊維束を耐炎化処理し、密度1.345g/cmの耐炎化繊維束を得た。伸長率は6.0%とし、耐炎化処理時間は70分とした。
次いで、耐炎化繊維束を窒素中、入口雰囲気温度を300℃、最高雰囲気温度を700℃として直線的な温度勾配を有する第一炭素化炉にて4.5%の伸長を加えながら通過させ、第一炭素化処理を行った。処理時間は2.0分とした。
さらに、窒素雰囲気中で入口雰囲気温度を1100℃、最高雰囲気温度を1700℃として直線的な温度勾配を設定した第二炭素化炉を用いて第二炭素化処理を行った。その際、伸長率は-2.0%、処理時間は1.6分とした。このとき、処理中の糸束にかかっている張力は0.20cN/dtexであった。
引き続き、窒素雰囲気中で入口雰囲気温度を1800℃、最高雰囲気温度を2300℃として直線的な温度勾配を設定した第三炭素化炉を用いて第三炭素化処理して炭素繊維束を得た。その際、伸長率は-2.0%、処理時間は1.9分とした。このとき、処理中の糸束にかかっている張力は0.22cN/dtexであった。
また、第二炭素化炉の最高雰囲気温度と第三炭素化炉の入口雰囲気温度の差を100℃とし、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度を350℃/分とした。
引き続いて、重炭酸アンモニウム10質量%水溶液中を走行せしめ、炭素繊維束を陽極として、被処理炭素繊維1g当たり40クーロンの電気量となるように対極との間で通電処理を行った。
次いで、温水90℃で洗浄した後、乾燥した。
次いで、サイジング剤(DIC株式会社製、商品名「ハイドランN320」)を0.5質量%付着させ(サイジング処理)、ボビンに巻きとり、炭素繊維束を得た。
サイジング処理後の炭素繊維束について、単繊維の直径、密度、目付、結節強度、ストランド強度及びストランド弾性率を測定した。これらの結果を表3に示す。
なお、表3中の「直径×強度」は、単繊維の直径×ストランド強度である。
[実施例2~7]
炭素繊維束の作製条件を表2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を作製し、各種測定を行った。結果を表3に示す。
[比較例1]
炭素繊維前駆体アクリル繊維束の作製条件を表1に示す通りに変更し、炭素繊維前駆体アクリル繊維束の単繊維繊度が1.0dtexとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維前駆体アクリル繊維束を作製した。
得られた炭素繊維前駆体アクリル繊維束を用い、炭素繊維束の作製条件を表2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を作製し、各種測定を行った。結果を表3に示す。
[参考例A]
市販されている炭素繊維束(東レ株式会社製、商品名「M40JB」)について、各種測定を行った。結果を表3に示す。
Figure 2023146345000001
Figure 2023146345000002
Figure 2023146345000003
表3の結果から明らかなように、各実施例で得られた炭素繊維束は、単繊維の直径が太く、ストランド弾性率が低下することなく、高いストランド強度を発現できた。なお、各実施例で得られた炭素繊維束は、実質上無撚りであった。
一方、比較例1で得られた炭素繊維束及び市販品である参考例Aで使用した炭素繊維束は、実施例で得られた炭素繊維束に比べてストランド強度が低かった。また、繊維径も小さいため、繊維強化複合材料を作製する場合に高いマトリックス樹脂粘度により含浸不足を生じて繊維強化複合材料の引張強度低下する懸念がある。
本発明の炭素繊維束は、弾性率が低下することなく高いストランド強度、結節強度が発現できており、繊維径も太いため、高い機械特性が要求される用途、例えば自動車用部材、航空宇・宙素材、土木・建築用素材、スポーツ・レジャー用素材、圧力容器、風車ブレード等の工業用素材等、幅広い用途において有用である。

Claims (19)

  1. 複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている炭素繊維束であって、
    前記単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下であり、ストランド強度が4.5GPa以上であり、ストランド弾性率が310GPa以上である、炭素繊維束。
  2. 複数本の炭素繊維の単繊維が集束されている炭素繊維束であって、
    前記単繊維の直径が6.5μm以上8.5μm以下であり、ストランド強度が4.5GPa以上であり、前記単繊維の直径と前記ストランド強度の積が31以上である、炭素繊維束。
  3. ストランド弾性率が310GPa以上である、請求項2に記載の炭素繊維束。
  4. 前記ストランド強度が4.85GPa以上であり、前記ストランド弾性率が365GPa以上である、請求項1又は3に記載の炭素繊維束。
  5. 前記単繊維の直径が6.8μm以上であり、前記ストランド強度が4.65GPa以上であり、前記ストランド弾性率が365GPa以上403GPa以下である、請求項1又は3に記載の炭素繊維束。
  6. 前記単繊維の直径が7.5μm以上である、請求項1又は2に記載の炭素繊維束。
  7. 結節強度が80N/mm以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の炭素繊維束。
  8. 密度が1.79g/cm以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の炭素繊維束。
  9. 実質上無撚りである、請求項1~8のいずれか一項に記載の炭素繊維束。
  10. 下記(1)~(6)の工程を含む、炭素繊維束の製造方法。
    (1)アクリロニトリル系重合体溶液を、乾湿式紡糸法を用いて吐出孔から一旦空気中に吐出させた後、温度10℃以下、有機溶剤の濃度が80.0質量%以上81.0質量%以下の水溶液からなる凝固浴中で凝固させて前記有機溶剤を含む凝固糸束を得る工程。
    (2)前記凝固糸束を温度75℃以上、有機溶剤の濃度が40質量%以上65質量%以下の温水溶液中で、延伸倍率2.0倍以上3.2倍以下に延伸して炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得る工程。
    (3)前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束を、雰囲気温度が200℃以上260℃以下の範囲内で温度勾配を有する酸化性雰囲気中で、伸長率が3.0%以上8.0%以下で加熱し、密度が1.33g/cm以上1.36g/cm以下の耐炎化繊維束を得る耐炎化工程。
    (4)前記耐炎化繊維束を、雰囲気温度が300℃以上900℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、伸長率が4.0%以上5.0%以下で加熱する第一炭素化工程。
    (5)前記第一炭素化工程後に、雰囲気温度が1000℃以上1800℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.21cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第二炭素化工程。
    (6)前記第二炭素化工程後に、雰囲気温度が1700℃以上2300℃以下の範囲内で温度勾配を有する非酸化性雰囲気中で、0.15cN/dtex以上0.23cN/dtex以下の張力を繊維束に付与しながら、繊維束を加熱する第三炭素化工程。
  11. 前記(1)の工程と前記(2)の工程の間に、前記凝固糸束を空気中で延伸倍率1.00倍以上1.20倍以下に延伸する工程を有する、請求項10に記載の炭素繊維束の製造方法。
  12. 前記(2)の工程において、前記凝固糸束を延伸した後に、有機溶剤を除去し、温度90℃以上の温水中で倍率0.96倍以上1.30倍以下に収縮又は延伸し、加圧水蒸気雰囲気下で延伸倍率3.7倍以上4.2倍以下に延伸して前記炭素繊維前駆体アクリル繊維束を得る、請求項10又は11に記載の炭素繊維束の製造方法。
  13. 前記(1)の工程で用いる前記水溶液の有機溶剤の濃度が80.2質量%以上80.6質量%以下である、請求項10~12のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
  14. 前記有機溶剤がジメチルホルムアミドである、請求項10~13のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
  15. 前記(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度が200℃/分以上500℃/分以下である、請求項10~14のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
  16. 前記(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度が210℃/分以上340℃/分以下である、請求項10~15のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
  17. 前記(6)の工程において、雰囲気温度を1800℃から2200℃まで昇温するときの昇温速度が215℃/分以上300℃/分以下である、請求項10~16のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
  18. 前記(5)の工程での最高雰囲気温度と、前記(6)の工程での入口雰囲気温度の差が500℃以下である、請求項10~17のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
  19. 前記(5)の工程での最高雰囲気温度と、前記(6)の工程での入口雰囲気温度の差が300℃以下である、請求項10~18のいずれか一項に記載の炭素繊維束の製造方法。
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