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JP2023097762A - 銅合金異形条材、電子・電気機器用部品、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板 - Google Patents

銅合金異形条材、電子・電気機器用部品、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板 Download PDF

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JP2023097762A JP2021214036A JP2021214036A JP2023097762A JP 2023097762 A JP2023097762 A JP 2023097762A JP 2021214036 A JP2021214036 A JP 2021214036A JP 2021214036 A JP2021214036 A JP 2021214036A JP 2023097762 A JP2023097762 A JP 2023097762A
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裕隆 松永
Hirotaka Matsunaga
健二 森川
Kenji Morikawa
真一 船木
Shinichi Funaki
航世 福岡
Kosei FUKUOKA
優樹 伊藤
Yuki Ito
一誠 牧
Kazumasa Maki
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Abstract

【課題】高い導電率と優れた耐熱性とを有する銅合金異形条材を提供する。【解決手段】長手方向に直交する断面において互い厚さの異なる厚部と薄部とを備えた銅合金異形条材であって、Mgの含有量が10massppm超え1.2mass%未満の範囲内、Pの含有量が0massppm以上200massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、導電率が48%IACS以上、前記厚部の耐熱温度T1が260℃以上、前記薄部の耐熱温度T2が240℃以上、0.9<T1/T2<1.25とされ、前記厚部の小傾角粒界割合B1が80%以下、前記薄部の小傾角粒界割合B2が80%以下、かつ、0.8<B1/B2<1.2とされ、Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合が、前記厚部および前記薄部でそれぞれ1%以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品に適した銅合金異形条材、この銅合金異形条材からなる電子・電気機器用部品、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板に関するものである。
従来、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品には、導電性の高い銅又は銅合金が用いられている。
ここで、電子機器や電気機器等の大電流化にともない、電流密度の低減およびジュール発熱による熱の拡散のために、これら電子機器や電気機器等に使用される電子・電気機器用部品の大型化、厚肉化も図られている。
ここで、大電流に対応するために、上述の電子・電気機器用部品には、導電率に優れた無酸素銅等の純銅材が適用される。しかしながら、通電時の発熱や使用環境の高温化に伴い、銅材には高温での硬度低下のしにくさを表す耐熱性に優れた銅材が求められているが、純銅材は、これらの特性に劣っており、高温環境下での使用ができないといった問題があった。
そこで、特許文献1には、Mgを0.005mass%以上0.1mass%未満の範囲で含む銅圧延板が開示されている。
特許文献1に記載された銅圧延板においては、Mgを0.005mass%以上0.1mass%未満の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有しているので、Mgを銅の母相中に固溶させることで、導電率を大きく低下させることなく、強度、耐熱性を向上させることが可能であった。
また、上述の電子・電気機器用部品の素材として、例えば特許文献2,3に開示されているように、長手方向に直交する断面において互い厚さの異なる厚部と薄部とを備えた銅合金異形条材が用いられている。
特開2016-056414号公報 特開2007-039735号公報 特開2009-009887号公報
ここで、これらの材料は耐熱特性を溶質元素の添加により改善させているが、互い厚さの異なる厚部と薄部とを備えた銅合金異形条材においては、材料組織が厚部と薄部とでは組織構造が異なり易く、厚部と薄部とで強度や耐熱性等の特性に差が生じやすく、高温環境下で安定して使用することができないおそれがあった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、厚部と薄部とで強度や耐熱性等の特性に差が生じにくく、高温環境下で安定して使用することが可能な銅合金異形条材、および、この銅合金異形条材からなる電子・電子機器用部品、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板を提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明の銅合金異形条材は、長手方向に直交する断面において互い厚さの異なる厚部と薄部とを備えた銅合金異形条材であって、Mgの含有量が10massppm超え1.2mass%未満の範囲内、Pの含有量が0massppm以上200massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、導電率が48%IACS以上とされ、前記厚部の耐熱温度T1が260℃以上、前記薄部の耐熱温度T2が240℃以上、かつ、0.9<T1/T2<1.25とされ、EBSD法により、圧延面、すなわちND面(Normal direction)において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析し、隣接する測定点間の方位差が2°以上15°以下となる測定点間である小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの長さをLLB、隣接する測定点間の方位差が15°を超える測定点間である大傾角粒界の長さをLHBとし、小傾角粒界割合B=LLB/(LLB+LHB)としたとき、前記厚部の小傾角粒界割合B1が80%以下、前記薄部の小傾角粒界割合B2が80%以下、かつ、0.8<B1/B2<1.2とされ、Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合が、前記厚部および前記薄部でそれぞれ1%以上であることを特徴としている。
この構成の銅合金異形条材によれば、Mgの含有量が10massppm超え1.2mass%未満の範囲内、Pの含有量が0massppm以上200massppm以下の範囲内とされているので、Mgが銅の母相中に固溶することにより、耐熱性を十分に向上させることができる。
また、導電率が48%IACS以上とされているので、通電時の発熱を抑えることができ、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品の素材として適している。
さらに、前記厚部の耐熱温度T1が260℃以上、前記薄部の耐熱温度T2が240℃以上、かつ、0.9<T1/T2<1.25とされているので、十分に耐熱性に優れるとともに、厚部と薄部との耐熱性の差が小さく、銅合金異形条材全体で安定して耐熱性が向上されている。
そして、前記厚部および前記薄部の小傾角粒界割合およびGoss方位の結晶の面積割合が、上述の範囲内となるように結晶組織を制御しているので、転位の移動による回復や再結晶が起こりにくく、前記厚部および前記薄部において、耐熱性を十分に向上させることが可能となる。
ここで、本発明の銅合金異形条材においては、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が24massppm以下とされていることが好ましい。
この場合、Mgと化合物を生成する元素であるS,Se,Te,Sb,Bi,Asの含有量が上述のように規定されているので、Mgを確実に固溶させることができ、耐熱性をさらに確実に向上させることが可能となる。
また、本発明の銅合金異形条材においては、Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、Agを上述の範囲で含有しているので、Agが粒界近傍に偏析し、粒界拡散が抑制され、耐熱性をさらに向上させることが可能となる。
また、本発明の銅合金異形条材においては、前記厚部のビッカース硬さH1が70Hv以上、前記薄部のビッカース硬さH2が75Hv以上、かつ、0.7<H1/H2<1.2とされていることが好ましい。
この場合、前記厚部のビッカース硬さH1が70Hv以上および前記薄部のビッカース硬さH2が75Hv以上とされるとともに、ビッカース硬さの比H1/H2が0.7<H1/H2<1.2とされているので、強度に優れるとともに、厚部11と薄部12とで強度の差異が小さく、安定して使用することができる。
また、本発明の銅合金異形条材においては、表面に金属めっき層を有することが好ましい。
この場合、表面に金属めっき層を有しているので、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
本発明の電子・電気機器用部品は、上述の銅合金異形条材からなることを特徴としている。なお、本発明における電子・電気機器用部品とは、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等を含むものである。
この構成の電子・電気機器用部品は、上述の銅合金異形条材を用いて製造されているので、高温環境下においても優れた特性を発揮することができる。
本発明の端子は、上述の銅合金異形条材からなることを特徴としている。
この構成の端子は、上述の銅合金異形条材を用いて製造されているので、高温環境下においても優れた特性を発揮することができる。
本発明のバスバーは、上述の銅合金異形条材からなることを特徴としている。
この構成のバスバーは、上述の銅合金異形条材を用いて製造されているので、高温環境下においても優れた特性を発揮することができる。
本発明のリードフレームは、上述の銅合金異形条材からなることを特徴としている。
この構成のリードフレームは、上述の銅合金異形条材を用いて製造されているので、高温環境下においても優れた特性を発揮することができる。
本発明の放熱基板は、上述の銅合金異形条材からなることを特徴としている。
この構成の放熱基板は、上述の銅合金異形条材を用いて製造されているので、高温環境下においても優れた特性を発揮することができる。
本発明によれば、厚部と薄部とで強度や耐熱性等の特性に差が生じにくく、高温環境下で安定して使用することが可能な銅合金異形条材、および、この銅合金異形条材からなる電子・電子機器用部品、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板を提供することが可能となる。
本実施形態である銅合金異形条材の断面説明図である。 本実施形態である銅合金異形条材の製造方法のフロー図である。
以下に、本発明の一実施形態である銅合金異形条材について、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である銅合金異形条材は、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品の素材として最適に用いられるものである。
本実施形態である銅合金異形条材10は、図1に示すように、長手方向に直交する断面において互い厚さの異なる厚部11と薄部12とを備えている。
また、厚部11の厚さt1と薄部12の厚さt2との比t1/t2は8以下であることが好ましく、6以下であることが好ましい。
本実施形態である銅合金異形条材10は、Mgの含有量が10massppm超え1.2mass%未満の範囲内、Pの含有量が0massppm以上200massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有している。
本実施形態である銅合金異形条材10においては、前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が24massppm以下とされていることが好ましい。
また、本実施形態である銅合金異形条材10においては、Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内であってもよい。
また、本実施形態である銅合金異形条材10においては、導電率が48%IACS以上とされている。
さらに、本実施形態である銅合金異形条材10においては、厚部11の耐熱温度T1が260℃以上、薄部12の耐熱温度T2が240℃以上、かつ、0.9<T1/T2<1.25とされている。
そして、本実施形態である銅合金異形条材10においては、EBSD法により、圧延面、すなわちND面(Normal direction)において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析し、隣接する測定点間の方位差が2°以上15°以下となる測定点間である小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの長さをLLB、隣接する測定点間の方位差が15°を超える測定点間である大傾角粒界の長さをLHBとし、小傾角粒界割合B=LLB/(LLB+LHB)としたとき、厚部11の小傾角粒界割合B1が80%以下、薄部12の小傾角粒界割合B2が80%以下、かつ、0.8<B1/B2<1.2とされている。
また、本実施形態である銅合金異形条材10においては、Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合が、厚部11および薄部12でそれぞれ1%以上とされている。
さらに、本実施形態である銅合金異形条材10においては、厚部11のビッカース硬さH1が70Hv以上、薄部12のビッカース硬さH2が75Hv以上、かつ、0.7<H1/H2<1.2とされていることが好ましい。
ここで、本実施形態の銅合金異形条材10において、ここで、上述のように成分組成、各種特性、結晶組織を規定した理由について以下に説明する。
(Mg)
Mgは、銅の母相中に固溶することで、導電率を大きく低下させることなく、強度及び耐熱温度性を向上させる作用効果を有する元素である。
ここで、Mgの含有量が10massppm以下の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることができなくなるおそれがある。一方、Mgの含有量が1.2mass%以上の場合には、導電率が低くなり、電子・電気機器用部品の素材として安定して使用することができないおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Mgの含有量を10massppm超え1.2mass%未満の範囲内に設定している。
ここで、耐熱温度をさらに向上させるためには、Mgの含有量の下限を20massppm以上とすることが好ましく、30massppm以上とすることがさらに好ましく、40massppm以上とすることがより好ましい。
また、導電率の低下をさらに抑制するためには、Mgの含有量の上限を1.0mass%以下とすることが好ましく、0.8mass%以下とすることがさらに好ましく、0.6mass%以下とすることがより好ましく、0.4mass%以下とすることがより一層好ましい。
(P)
Pは、鋳造性を向上させる作用効果を有する元素であり、生産性を向上させるために添加してもよい。一方、過剰に添加すると、Mgと反応して化合物を形成し、Mg固溶の効果が低下するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、Pの含有量を0massppm以上200massppm以下の範囲内に設定している。
ここで、Mg固溶の効果をさらに確実に奏功せしめるためには、Pの含有量の上限を160massppm以下とすることが好ましく、120massppm以下とすることがさらに好ましく、80massppm以下とすることがより好ましく、60massppm以下とすることがより一層好ましい。
(S,Se,Te,Sb,Bi,As)
上述のS,Se,Te,Sb,Bi,Asといった元素は、一般的に銅合金に混入しやすい元素である。そして、これらの元素は、Mgと反応し化合物を形成しやすく、微量添加したMgの固溶効果を低減するおそれがある。このため、これらの元素の含有量は厳しく制御する必要がある。
そこで、本実施形態においては、Sの含有量を10massppm以下、Seの含有量を5massppm以下、Teの含有量を5massppm以下、Sbの含有量を5massppm以下、Biの含有量を5masppm以下、Asの含有量を5masppm以下に制限することが好ましい。
さらに、SとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量を24massppm以下に制限することが好ましい。
なお、Sの含有量は、9massppm以下であることがより好ましく、8massppm以下であることがさらに好ましい。
Seの含有量は、4massppm以下であることがより好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Teの含有量は、4massppm以下であることがより好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Sbの含有量は、4massppm以下であることがより好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Biの含有量は、4massppm以下であることがより好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
Asの含有量は、4massppm以下であることがより好ましく、2massppm以下であることがさらに好ましい。
さらに、SとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量は、20massppm以下であることがより好ましく、16massppm以下であることがさらに好ましい。
(Ag:5massppm以上20massppm以下)
Agは、250℃以下の通常の電子・電気機器の使用温度範囲ではほとんどCuの母相中に固溶することができない。このため、銅中に微量に添加されたAgは、粒界近傍に偏析することとなる。これにより粒界での原子の移動は妨げられ、粒界拡散が抑制されるため、耐熱性が向上することになる。
ここで、Agの含有量が5massppm以上の場合には、その作用効果を十分に奏功せしめることが可能となる。一方、Agの含有量が20massppm以下である場合には、導電率が確保されるとともに製造コストの増加を抑制することができる。
以上のことから、本実施形態では、Agの含有量を5massppm以上20massppm以下の範囲内に設定している。
ここで、耐熱性をさらに向上させるためには、Agの含有量の下限を6massppm以上とすることが好ましく、7massppm以上とすることがより好ましく、8massppm以上とすることがさらに好ましい。また、導電率の低下およびコストの増加を確実に抑制するためには、Agの含有量の上限を18massppm以下とすることが好ましく、16massppm以下とすることがより好ましく、14massppm以下とすることがさらに好ましい。
なお、Agを意図して添加しない場合には、Agの含有量が5mass%未満であってもよい。
(その他の不可避不純物)
上述した元素以外のその他の不可避的不純物としては、Al,B,Ba,Be,Ca,Cd,Cr,Sc,希土類元素,V,Nb,Ta,Mo,Ni,W,Mn,Re,Ru,Sr,Ti,Os,Co,Rh,Ir,Pb,Pd,Pt,Au,Zn,Zr,Hf,Hg,Ga,In,Ge,Y,Tl,N,Si,Sn,Li等が挙げられる。これらの不可避不純物は、特性に影響を与えない範囲で含有されていてもよい。
ここで、これらの不可避不純物は、導電率を低下させるおそれがあることから、総量で0.1mass%以下とすることが好ましく、0.05mass%以下とすることがより好ましく、0.03mass%以下とすることがさらに好ましく、0.01mass%以下とすることがより一層好ましい。
また、これらの不可避不純物のそれぞれの含有量の上限は、10massppm以下とすることが好ましく、5massppm以下とすることがより好ましく、2massppm以下とすることがさらに好ましい。
(小傾角粒界割合)
粒界において、小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーは加工時に導入された転位の密度が高い領域であるため、小傾角粒界およびサブグレインバウンダリー長さ比率である小傾角粒界割合B=LLB/(LLB+LHB)が高すぎると、転位を経路とした原子の高速拡散が起こりやすくなり、高温環境下での再結晶とそれに伴う軟化が起こりやすくなるため、耐熱性は損なわれるおそれがある。また、厚部11および薄部12は、同様の温度環境で使用されるため、厚部11と薄部12とで耐熱性に大きな差異が無いことが求められる。
そこで、本実施形態では、厚部11の小傾角粒界割合B1を80%以下、薄部12の小傾角粒界割合B2を80%以下に設定している。
また、厚部11の小傾角粒界割合B1と薄部12の小傾角粒界割合B2との比B1/B2を、0.8<B1/B2<1.2としている。
ここで、厚部11の小傾角粒界割合B1は76%以下であることがより好ましく、72%以下であることがさらに好ましい。
また、薄部12の小傾角粒界割合B1は76%以下であることがより好ましく、72%以下であることがさらに好ましい。
さらに、小傾角粒界割合の比B1/B2は、0.85<T1/T2<1.15の範囲内であることが好ましく、0.90<T1/T2<1.10の範囲内であることがより好ましい。
(Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合)
Goss方位{011}〈100〉を有する結晶は比較的転位が溜まりにくいため、高温環境下での転位の移動によっておこる原子の拡散とそれによる回復を抑制することが可能となり、耐熱性を向上させる。また、厚部11および薄部12は、同様の温度環境で使用されるため、厚部11と薄部12とで耐熱性に大きな差異が無いことが求められる。
なお、上述のGoss方位{011}〈100〉は、銅材料においては、一般的な圧延や熱処理では発生せず、異形加工とその後の加工および熱処理によって形成することが可能となる。
本実施形態では、Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合を、厚部11および薄部12でそれぞれ1%以上となるように設定している。
なお、厚部11および薄部12におけるGoss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合は、1.4%以上であることが好ましく、1.8%以上とすることがより好ましく、2.2%以上とすることがさらに好ましい。
(導電率)
本実施形態である銅合金異形条材10においては、導電率が48%IACS以上とされている。導電率を48%IACS以上とすることにより、通電時の発熱を抑えて、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品として良好に使用することが可能となる。
ここで、導電率は53%IACS以上であることが好ましく、58%IACS以上であることがより好ましく、63%IACS以上であることがさらに好ましく、75%IACS以上であることがより一層好ましい。
(耐熱温度)
本実施形態である銅合金異形条材10においては、厚部11の耐熱温度T1が260℃以上、薄部12の耐熱温度T2が240℃以上であることが好ましい。耐熱温度を上述のように構成することで、耐熱性を十分に確保することができる。
また、銅合金異形条材10においては、厚部11、薄部12ともに等しい温度環境で使用されることが多い。そのため、厚部11の耐熱温度T1と薄部12の耐熱温度T2は近い値であることが好ましく、厚部11の耐熱温度T1と薄部12の耐熱温度T2との比T1/T2が、0.9<T1/T2<1.25とされていることが好ましい。
ここで、厚部11の耐熱温度T1は280℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましく、320℃以上であることがより一層好ましい。
また、薄部12の耐熱温度T2は260℃以上であることがより好ましく、280℃以上であることがさらに好ましく、300℃以上であることがより一層好ましい。
さらに、耐熱温度の比T1/T2は、0.92<T1/T2<1.20の範囲内であることがより好ましい。
(ビッカース硬さ)
本実施形態である銅合金異形条材10においては、厚部11のビッカース硬さH1が70Hv以上、薄部12のビッカース硬さH2が75Hv以上とされている場合には、強度が確保され、電気・電子部品の素材として特に適している。
また、厚部11と薄部12での硬度差が大きい場合、電子・電気機器用部品、特に端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板を製造する際のプレス加工で材料のゆがみが発生する可能性がある。そのため、厚部11の硬度H1と薄部12の硬度H2は近い値であることが好ましく、厚部11のビッカース硬さH1と薄部12のビッカース硬さH2との比H1/H2が、0.7<H1/H2<1.2とされていることが好ましい。
ここで、厚部11のビッカース硬さH1は72Hv以上であることがより好ましく、74Hv以上であることがさらに好ましい。
また、薄部12のビッカース硬さH2は77Hv以上であることがより好ましく、79Hv以上であることがさらに好ましい。
さらに、ビッカース硬さの比H1/H2は、0.8<H1/H2<1.1の範囲内であることがより好ましい。
次に、このような構成とされた本実施形態である銅合金異形条材10の製造方法について、図2に示すフロー図を参照して説明する。
(溶解・鋳造工程S01)
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、各種元素の添加には、元素単体や母合金等を用いることができる。また、上述の元素を含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。
ここで、銅原料は、純度が99.99mass%以上とされたいわゆる4NCu、あるいは99.999mass%以上とされたいわゆる5NCuとすることが好ましい。
溶解時においては、Mgの酸化を抑制するため、また水素濃度低減のため、HOの蒸気圧が低い不活性ガス雰囲気(例えばArガス)による雰囲気溶解を行い、溶解時の保持時間は最小限に留めることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
(均質化/溶体化工程S02)
次に、得られた鋳塊の均質化および溶体化のために加熱処理を行う。鋳塊の内部には、凝固の過程においてMgが偏析で濃縮することにより発生したCuとMgを主成分とする金属間化合物等が存在することがある。そこで、これらの偏析および金属間化合物等を消失または低減させるために、鋳塊を300℃以上1080℃以下にまで加熱する加熱処理を行うことで、鋳塊内において、Mgを均質に拡散させたり、Mgを母相中に固溶させたりする。なお、この均質化/溶体化工程S02は、非酸化性または還元性雰囲気中で実施することが好ましい。
ここで、加熱温度が300℃未満では、溶体化が不完全となり、母相中にCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く残存するおそれがある。一方、加熱温度が1080℃を超えると、銅素材の一部が液相となり、組織や表面状態が不均一となるおそれがある。よって、加熱温度を300℃以上1080℃以下の範囲に設定している。
なお、後述する粗圧延の効率化と組織の均一化のために、前述の均質化/溶体化工程S02の後に熱間加工を実施してもよい。この場合、加工方法に特に限定はなく、例えば圧延、引抜、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。また、熱間加工温度は、300℃以上1080℃以下の範囲内とすることが好ましい。
(粗加工工程S03)
所定の形状に加工するために、粗加工を行う。なお、この粗加工工程S03における温度条件は特に限定はないが、再結晶を抑制するために、あるいは寸法精度の向上のため、冷間または温間圧延となる-200℃から200℃の範囲内とすることが好ましく、特に常温が好ましい。加工率については、20%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。また、加工方法については、特に限定はなく、例えば圧延、引抜、押出、溝圧延、鍛造、プレス等を採用することができる。
なお、粗加工工程S03と後述する中間熱処理工程S04を繰り返し実施してもよい。
(中間熱処理工程S04)
粗加工工程S03後に、加工性向上のための軟化、または再結晶組織にするために熱処理を実施する。
この際、連続焼鈍炉による短時間の熱処理が好ましく、Agが添加された場合には、Agの粒界への偏析の局在化を防ぐことができる。
この熱処理条件については特に限定しないが、一般的には200℃から1000℃の範囲で行う。
(機械的表面処理工程S05)
中間熱処理工程S04後に、機械的表面処理を行う。機械的表面処理は、表面近傍に圧縮応力を与える処理であり、後述の上前熱処理工程S07と組み合わせることGoss方位{011}〈100〉が高まり、耐熱性を向上させることができる。
機械的表面処理は、ショットピーニング処理、ブラスト処理、ラッピング処理、ポリッシング処理、バフ研磨、グラインダー研磨、サンドペーパー研磨、テンションレベラー処理、1パス当りの圧下率が低い軽圧延(1パス当たりの圧下率1%以上10%以下とし、3回以上繰り返す)など一般的に使用される種々の方法が使用できる。
(異形圧延加工工程S06)
異形圧延加工では、凹凸面を有する平板状のダイと、このダイの成形面に対向して成形面に沿って往復移動される圧延ロールとにより、機械的表面処理工程S05後の材料を、冷間にて異形圧延加工して、粗厚部と粗薄部とが幅方向に並んだ粗異形条材を得る。
なお、加工の減面率を5%以上90%以下の範囲内とすることで、上前熱処理工程S07においてGoss方位が形成されやすくなる。加工の減面率は、10%以上85%以下の範囲内とすることがさらに好ましく、15%以上80%以下の範囲内とすることがさらに好ましい。
また、粗厚部の厚さと粗薄部の厚さの比を6以下とすることで、上前熱処理工程S07において、厚部11および薄部12における小傾角粒界割合B=LLB/(LLB+LHB)の比B1/B2を0.8<B1/B2<1.2とすることができ、厚部11および薄部12におけるビッカース硬さの比H1/H2を0.7<H1/H2<1.2とすることができる。なお、粗厚部の厚さと粗薄部の厚さの比は5以下とすることがさらに好ましい。
(上前熱処理工程S07)
次に、異形圧延加工工程S06の後に熱処理することで再結晶組織とし、Goss方位を形成させる。また、再結晶によって小傾角粒界割合Bを低下させる。さらに、厚部11と薄部12の組織を近いものとする。
この上前熱処理工程S07では、異形圧延加工工程S06によって導入された厚部と薄部でのひずみ差をなくし、再結晶とその後の粒成長による均一な組織形成をおこなうために、一定以下の昇温速度と十分長い熱処理時間が必要となる。そのため、バッチ焼鈍による熱処理が好ましい。熱処理条件は、熱処理温度が250℃以上650℃以下の範囲内、昇温速度が500℃/h以下、熱処理時間が1時間以上100時間以下であることが好ましい。
(仕上加工工程S08)
上前熱処理工程S07後に、冷間加工を行う。段付きロールと平ロールとからなる圧延ロールによる冷間加工にて実施する。
なお、厚部11のビッカース硬さH1を70Hv,薄部12のH2を75Hv以上とするためには、加工率は5%以上とすることが好ましく、8%以上とすることがより好ましい。
一方、加工率が高すぎると、小傾角粒界割合B1,B2が高くなり、再結晶組織であるGoss方位の面積割合も低下するため、加工率は50%以下とすることが好ましく、45%以下とすることがより好ましい。
(低温焼鈍工程S09)
仕上加工工程S08後には、必要に応じて、低温焼鈍を行う。この低温焼鈍工程S09によって、残留応力の除去、回復による小傾角粒界割合の低下の効果が得られる。
この低温焼鈍工程S09においては、焼鈍温度を100℃以上600℃以下の範囲内、焼鈍温度での保持時間を0.1秒以上24時間以下の範囲内とすることが好ましい。なお、熱処理温度が低い場合には長時間、熱処理温度が高い場合には短時間の熱処理をすればよい。
低温焼鈍工程S09での焼鈍温度が100℃未満、または焼鈍温度での保持時間が0.1秒未満では、十分なひずみ取りの効果が得られなくなるおそれがあり、一方、焼鈍温度が600℃を超える場合は再結晶のおそれがあり、さらに焼鈍温度での保持時間が24時間を超えることは、コスト上昇を招くだけである。
なお、本実施形態においては、低温焼鈍工程S09の後にテンションレベラー等による矯正工程を加えてもよい。
さらに、本実施形態の銅合金異形条材10においては、表面に金属めっき層を形成してもよい。なお、金属めっき層としては、例えば、Snめっき、Agめっき、Niめっき、Auめっき、Pdめっき、Rhめっき等を適用することができる。
以上の工程により、本実施形態である銅合金異形条材10が製造される。
以上のような構成とされた本実施形態である銅合金異形条材10においては、Mgの含有量が10massppm超え1.2mass%未満の範囲内、Pの含有量が0massppm以上200massppm以下の範囲内とされているので、Mgが銅の母相中に固溶することにより、耐熱性を十分に向上させることができる。
また、導電率が48%IACS以上とされているので、通電時の発熱を抑えることができ、端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等の電子・電気機器用部品の素材として適している。
さらに、厚部11の耐熱温度T1が260℃以上、薄部12の耐熱温度T2が240℃以上、かつ、0.9<T1/T2<1.25とされているので、十分に耐熱性に優れるとともに、厚部11と薄部12との耐熱性の差が小さく、高温環境下であっても安定して使用することができる。
そして、厚部11および薄部12の小傾角粒界割合B1,B2がそれぞれ80%以下、かつ、小傾角粒界割合の比B1/B2が0.8<B1/B2<1.2とされ、Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合が、前記厚部および前記薄部でそれぞれ1%以上となるように結晶組織が制御されているので、転位の移動による回復や再結晶が起こりにくく、厚部11および薄部12において、耐熱性を十分に向上させることが可能となる。
本実施形態の銅合金異形条材10において、不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が24massppm以下とされている場合には、Mgと化合物を生成する元素であるS,Se,Te,Sb,Bi,Asの含有量が低く抑えられているので、Mgを確実に固溶させることができ、耐熱性をさらに確実に向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態の銅合金異形条材10において、Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内とされている場合には、Agが粒界近傍に偏析することになり、このAgによって粒界拡散が抑制され、耐熱温度をさらに確実に向上させることが可能となる。
また、本実施形態の銅合金異形条材10において、厚部11のビッカース硬さH1が70Hv以上、薄部12のビッカース硬さH2が75Hv以上、かつ、0.7<H1/H2<1.2とされているである場合には、強度に優れるとともに、厚部11と薄部12とで強度の差異が小さく、安定して使用することができる。
さらに、本実施形態である銅合金異形条材10の表面に、金属めっき層を形成した場合には、表面に様々な特性を付与することができ、端子、バスバー、放熱基板等の電子・電気機器用部品の素材として特に適している。
さらに、本実施形態である電子・電気機器用部品(端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等)は、上述の銅合金異形条材10で構成されているので、高温環境下においても、優れた特性を発揮することができる。
以上、本発明の実施形態である銅合金異形条材10、電子・電気機器用部品(端子、バスバー、リードフレーム、放熱基板等)について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述の実施形態では、銅合金異形条材10の製造方法の一例について説明したが、銅合金異形条材10の製造方法は、実施形態に記載したものに限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
また、本実施形態では、図1に示す形状の異形条を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他の断面形状の異形条であってもよい。
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
帯溶融精製法により、純度99.999mass%以上の純銅からなる原料を高純度グラファイト坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。
得られた銅溶湯内に、6N(純度99.9999mass%)以上の高純度銅と2N(純度99mass%)以上の純度を有する純金属を用いて作製した各種0.1mass%母合金を用いて表1,2に示すに示す成分組成に調製し、断熱材(イソウール)鋳型に注湯して、鋳塊を製出した。なお、鋳塊の大きさは、厚さ約30mm×幅約60mm×長さ約150~200mmとした。
得られた鋳塊に対して、Arガス雰囲気中において、各種温度条件で1時間の加熱を行い、酸化被膜を除去するために表面研削を実施し、所定の大きさに切断を行った。
その後、適宜最終厚みになる様に厚みを調整して切断を行った。切断されたそれぞれの試料について、室温にて、表3,4に示す加工率で粗圧延を行った後、表3,4に記載された熱処理条件にて中間熱処理を実施した。
次に、これらの試料に表3,4に記載された手法で機械的表面処理工程を施した。
なお、バフ研磨は♯1000の研磨紙を用いて行った。
テンションレベラーはφ16mmのロールを複数備えたテンションレベラーを用い、ラインテンション100N/mmにて実施した。
軽圧延(1パス当りの圧下率が低い圧延)は、最終3パスを1パス当たりの圧下率を4%として実施した。
そして、厚部と薄部の厚さがそれぞれ表3,4に記載された値となるように、平板状のダイと、このダイの成形面に対向して成形面に沿って往復移動される圧延ロールとにより段付き異形加工を実施した。
そして、表3,4に記載された条件で上前熱処理を実施した。
その後、表3,4に記載の条件で仕上加工を行い、一部の試料を除いて低温焼鈍を行うことで、表3,4に示す厚さで幅が約60mmの特性評価用条材を製出した。
得られた特性評価用条材に対して、以下のようにして評価を実施した。
(組成分析)
得られた鋳塊から測定試料を採取し、Mgは誘導結合プラズマ発光分光分析法で、その他の元素はグロー放電質量分析装置(GD-MS)を用いて測定した。
なお、測定は試料中央部と幅方向端部の2カ所で測定を行い、含有量の多い方をそのサンプルの含有量とした。その結果、表1,2に示す成分組成であることを確認した。
(小傾角粒界割合)
圧延面、すなわちND面(Normal direction)を観察面として、EBSD測定装置及びOIM解析ソフトによって、次のように、厚部および薄部における小傾角粒界割合B1,B2を求めた。
耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM
Data Analysis ver.7.3.1)によって、電子線の加速電圧15kV、10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、データ解析ソフトOIMを用いてArea Fractionによる平均粒径Aを求めた。その後、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析し、隣接する測定点間の方位差が2°以上15°以下となる測定点間を小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーとし、その長さをLLB、15°を超える測定点間を大傾角粒界としその長さをLHBとすることで、全粒界における小傾角粒界およびサブグレインバウンダリー長さ比率として小傾角粒界割合B=LLB/(LLB+LHB)を求めた。
(Goss方位)
上記の小傾角粒界およびサブグレインバウンダリー長さ比率測定の際、各結晶粒の方位の解析もあわせて行い、各解析点が、対象とするGoss方位(理想方位から10°以内)か否かを判定し、測定領域におけるGoss方位割合(結晶方位の面積率)を求めた。
(耐熱温度)
耐熱温度は日本伸銅協会のJCBA T325:2013に準拠し、1時間の熱処理でのビッカース硬度による等時軟化曲線を取得し、熱処理前の硬度の80%の硬度となる加熱温度を求めることで評価した。なお、ビッカース硬度の測定面は圧延面とした。評価結果を表5,6に示す。
(ビッカース硬さ)
JIS-Z2244に規定されているマイクロビッカース硬さ試験方法に準拠し、特性評価用条材の表面すなわちND面(Normal Direction)で試験加重0.98Nでビッカース硬度を測定した。評価結果を表3,4に示す。
(導電率)
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。評価結果を表5,6に示す。
Figure 2023097762000001
Figure 2023097762000002
Figure 2023097762000003
Figure 2023097762000004
Figure 2023097762000005
Figure 2023097762000006
比較例1は、Mgの含有量が本発明の範囲よりも少ないため、耐熱温度が低く、耐熱性が不十分であった。
比較例2は、Mgの含有量が本発明の範囲を超えており、導電率が低くなった。
比較例3は、Pの含有量が200massppmを超えており、耐熱温度が低く、耐熱性が不十分であった。
比較例4は、小傾角粒界割合が80%を超えており、耐熱温度が低く、耐熱性が不十分であった。
比較例5は、Goss方位の面積割合が1%未満であり、耐熱温度が低く、耐熱性が不十分であった。
比較例6は、厚部の小傾角粒界割合B1と薄部の小傾角粒界割合B2との比B1/B2が本発明の範囲外となり、厚部の耐熱温度T1と薄部の耐熱温度T2との比T1/T2が本発明の範囲外となり、耐熱性にばらつきが生じた。
これに対して、本発明例1~30においては、厚部と薄部とで耐熱性がバランス良く向上されていることが確認された。
以上のことから、本発明例によれば、厚部と薄部とで強度や耐熱性等の特性に差が生じにくく、高温環境下で安定して使用することが可能な銅合金異形条材を提供可能であることが確認された。

Claims (10)

  1. 長手方向に直交する断面において互い厚さの異なる厚部と薄部とを備えた銅合金異形条材であって、
    Mgの含有量が10massppm超え1.2mass%未満の範囲内、Pの含有量が0massppm以上200massppm以下の範囲内、残部がCu及び不可避不純物とした組成を有し、
    導電率が48%IACS以上とされ、
    前記厚部の耐熱温度T1が260℃以上、前記薄部の耐熱温度T2が240℃以上、かつ、0.9<T1/T2<1.25とされ、
    EBSD法により、圧延面において10000μm以上の測定面積を、0.25μmの測定間隔のステップでCI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とし、Area Fractionにより平均粒径Aを求め、平均粒径Aの10分の1以下となる測定間隔のステップで測定して、総数1000個以上の結晶粒が含まれるように、複数視野で10000μm以上となる測定面積で、データ解析ソフトOIMにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除いて解析し、隣接する測定点間の方位差が2°以上15°以下となる測定点間である小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの長さをLLB、隣接する測定点間の方位差が15°を超える測定点間である大傾角粒界の長さをLHBとし、小傾角粒界割合B=LLB/(LLB+LHB)としたとき、前記厚部の小傾角粒界割合B1が80%以下、前記薄部の小傾角粒界割合B2が80%以下、かつ、0.8<B1/B2<1.2とされ、
    Goss方位{011}<100>に対して10°以内の結晶方位を有する結晶の面積割合が、前記厚部および前記薄部でそれぞれ1%以上であることを特徴とする銅合金異形条材。
  2. 前記不可避不純物のうち、Sの含有量が10massppm以下、Seの含有量が5massppm以下、Teの含有量が5massppm以下、Sbの含有量が5massppm以下、Biの含有量が5masppm以下、Asの含有量が5masppm以下とされるとともに、SとSeとTeとSbとBiとAsの合計含有量が24massppm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅合金異形条材。
  3. Agの含有量が5massppm以上20massppm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅合金異形条材。
  4. 前記厚部のビッカース硬さH1が70Hv以上、前記薄部のビッカース硬さH2が75Hv以上、かつ、0.7<H1/H2<1.2とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の銅合金異形条材。
  5. 表面に金属めっき層を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の銅合金異形条材。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅合金異形条材からなることを特徴とする電子・電気機器用部品。
  7. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅合金異形条材からなることを特徴とする端子。
  8. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された銅合金異形条材からなることを特徴とするバスバー。
  9. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅合金異形条材からなることを特徴とするリードフレーム。
  10. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の銅合金異形条材からなることを特徴とする放熱基板。
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