剥離コーティングを形成するための組成物が開示される。この組成物は、(1)分岐状オルガノポリシロキサンと、(2)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との、ヒドロシリル化触媒の存在下での(A)反応生成物を含む。
(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、式(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(R1
2SiO2/2)z(SiO4/2)1.0(ZO1/2)w
[式中、各R1は、1~32個の炭素原子を有する独立して選択されたヒドロカルビル基であり、但し、各分子中の平均少なくとも2つのR1は独立してエチレン性不飽和基であり、各R2は、R1、アルコキシ基、及びヒドロキシル基から独立して選択され、Zは独立してH又はアルキル基であり、yは1~3の整数であり、下付き文字xによって示される各シロキシ単位において独立して選択され、下付き文字xは0.05~4であり、下付き文字zは10~3,000であり、下付き文字wは0~3である]を有する。
概して、R1に好適なヒドロカルビル基は、独立して、直鎖状、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式又は多環式であってもよい。直鎖状及び分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和であっても不飽和であってもよい。直鎖状及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。ヒドロカルビル基の全般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基等、並びに誘導体、修飾体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘキサデシル、オクタデシル並びに6~18個の炭素原子を有する分岐状飽和炭化水素基が挙げられる。好適な非共役環状基の例としては、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及びシシロヘプチル基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基(即ち、ハロ炭素基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチル基、並びにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基及びフルオロベンジル基が挙げられる。
特定の実施形態では、各R1は、1~32個、あるいは1~28個、あるいは1~24個、あるいは1~20個、あるいは1~16個、あるいは1~12個、あるいは1~8個、あるいは1~4個、あるいは1個の炭素原子を有するアルキル基から、及び2~32個、あるいは2~28個、あるいは2~24個、あるいは2~20個、あるいは2~16個、あるいは2~12個、あるいは2~8個、あるいは2~4個、あるいは2個の炭素原子を有するエチレン性不飽和基(即ち、アルケニル基及び/又はアルキニル基)から独立して選択される。「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基が挙げられる。「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、エチニル、プロピニル、及びブチニル基が挙げられる。エチレン性不飽和基の様々な例としては、CH2=CH-、CH2=CHCH2-、CH2=CH(CH2)4-、CH2=CH(CH2)6-、CH2=C(CH3)CH2-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)CH2-、H2C=CHCH2CH2-、H2C=CHCH2CH2CH2-、HC≡C-、HC≡CCH2-、HC≡CCH(CH3)-、HC≡CC(CH3)2-、及びHC≡CC(CH3)2CH2-が挙げられる。典型的には、R1がエチレン性不飽和基である場合、エチレン性不飽和はR1の末端にある。当技術分野で理解されるように、エチレン性不飽和は脂肪族不飽和と呼ばれることがある。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンでは、各分子中のR1の少なくとも2つは、独立してエチレン性不飽和基である。
特定の実施形態では、エチレン性不飽和基であるR1以外の(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の各R1は、独立して選択されたアルキル基である。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のR1の少なくとも2つがビニル基(エチレン性不飽和基として)である場合、残りのR1はそれぞれメチル基であり、下付き文字yが3である場合、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、ケイ素結合ビニル基を含む少なくとも1つのMシロキシ単位が存在する限り、以下のMシロキシ単位の任意の組み合わせを含み得る:((CH3)3SiO1/2)、((CH3)2(CH=CH2)SiO1/2)、((CH3)(CH=CH2)2SiO1/2)、及び((CH=CH2)3SiO1/2)。上記の例は単なる例示であり、任意のメチル基を他の任意のアルキル又は更にヒドロカルビル基で置き換えることができ、任意のビニル基を任意の他のアルケニル又はエチレン性不飽和基で置き換えることができることは理解される。
R2は、R1、アルコキシ基、及びヒドロキシル基から独立して選択される。典型的には、各R2はR1から独立して選択される。しかし、当技術分野で理解されるように、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、本質的に、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンの形成から生じるある程度のケイ素結合ヒドロキシル及び/又はアルコキシ基を含み得、それは、典型的には、共加水分解/縮合によって得られる。従って、R2のうちの1つ以上は、そのようなアルコキシ基又はヒドロキシル基が典型的には(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンに意図的に含まれない場合であっても、アルコキシ基又はヒドロキシル基であり得る。更に、本開示及び上記の平均式の目的のために、完全に縮合又はキャップされないケイ素結合ヒドロキシル基を含むシロキシ単位は、Qシロキシ単位と見なされ得る(ケイ素結合ヒドロキシル基を含むケイ素原子がケイ素-炭素結合を含まない限り)。このようなケイ素結合ヒドロキシル基は、縮合してQシロキシ単位を生じ得る。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、特定の実施形態では、最大4重量百分率、あるいは最大3重量百分率、あるいは最大2重量百分率のヒドロキシル基を含み得る。
下付き文字yは、0~3、あるいは1~3、あるいは2~3、あるいは3の整数である。更に、下付き文字yは、下付き文字xによって示される各Mシロキシ単位において独立して選択される。従って、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、例えば、yが3である場合、(R1
3SiO1/2)、及びyが2である場合、(R1
2R2SiO1/2)によって表されるMシロキシ単位を含み得る。典型的には、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の全てのMシロキシ単位の過半数、即ち、少なくとも50モル%、あるいは少なくとも60モル%、あるいは少なくとも70モル%、あるいは少なくとも80モル%、あるいは少なくとも90モル%、あるいは少なくとも95モル%はR1
3SiO1/2)で表される。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の全てのMシロキシ単位は、上記で定義された下付き文字xの目的で集まる。
様々な実施形態では、下付き文字xは、0.05~0.99、あるいは0.10~0.95、あるいは0.15~0.90、あるいは0.20~0.85、あるいは0.25~0.80、あるいは0.30~0.75である。特定の実施形態では、下付き文字xは、0.50~0.80、あるいは0.55~0.75、あるいは0.60~0.75、あるいは0.65~0.75、あるいは0.70~0.75である。別の特定の実施形態では、下付き文字xは0.05~0.85である。更に別の特定の実施形態では、下付き文字xは、0.40~0.90、あるいは0.70~0.85である。あるいは、下付き文字xは1より大きくてもよい。例えば、他の実施形態では、下付き文字xは、1.05~4、あるいは1.05~3、あるいは1.05~2.5である。
下付き文字wは、0~3、あるいは0~2、あるいは0~1、あるいは、0~0.9、あるいは0~0.8、あるいは0~0.7、あるいは0~0.6、あるいは0~0.5、あるいは0~0.4、あるいは0~0.3、あるいは0~0.2、あるいは0~0.1であり、(A1)分岐状オルガノポリシロキサンのSiOZ含有量を表す。SiOZ含有量は、SiOH(式中、ZはH、又はシラノール基)、又はケイ素結合アルコキシ(式中、Zはアルキル)である。例えば、「(SiO4/2)(ZO1/2)」は、単一の酸素を介して「Z」基に結合したケイ素原子を有するQ型基を指す。NMRの命名法では、このような「(SiO4/2)(ZO1/2)」部分は依然としてQシロキシ単位と見なされる。Zがアルキル基である場合、アルキル基は、典型的には、C1~C8、あるいはC1~C6、あるいはC1~C4、あるいはC1~C2、あるいはC1(即ちメチル)アルキル基である。このような部分をQ単位と見なすと、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは式(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(R1
2SiO2/2)z(SiO4/2)で表され得る。
Dシロキシ単位、即ち(R1
2SiO2/2)単位は、典型的には、以下に説明するように、環状シロキサンの開環と重合から形成される。典型的には、Dシロキシ単位は、2つのQシロキシ単位の間にあるのではなく、Qシロキシ単位とMシロキシ単位との間に存在する。任意の所与の直鎖状シロキサン部分の各特定のQ及びMシロキシ単位の間に存在するDシロキシ単位の数は、それぞれの場合に異なり得る。上記の式は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の位置に関係なく、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中に存在する全てのD単位を表す。特定の実施形態では、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の全てのQシロキシ単位がDシロキシ単位に結合するわけではない。代わりに、多数のQシロキシ単位を(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンにクラスター化し得る。
特定の実施形態では、zは、10~3,000、あるいは10~2,000、あるいは10~1,000、あるいは10~750、あるいは10~500、あるいは50~500、あるいは100~500、あるいは110~475、あるいは120~450、あるいは130~425、あるいは140~400、あるいは150~375、あるいは160~350、あるいは170~325、あるいは180~300、あるいは190~275、あるいは200~250である。他の実施形態では、zは10~3000、あるいは250~2500、あるいは500~1,000である。
下付き文字x及びzは、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中に存在するQシロキシ単位の数に基づいて正規化される。従って、下付き文字x及びzは、Qシロキシ単位含有量に対するモル比である。例えば、下付き文字xが1未満の場合、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のMシロキシ単位はQシロキシ単位よりも少なくなる。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンの式がQシロキシ単位の含有量を1に正規化するという事実は、((A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンが1つのQ単位のみを含むことを意味しない。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、共にクラスター化又は結合された複数のQシロキシ単位を含み得、及び、典型的にはそれを含む。
特定の実施形態では、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、
(i)式(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(SiO4/2)1.0(ZO1/2)w[式中、各R1は独立して選択され、上記で定義され、各R2は独立して選択され、上記で定義され、各Zは独立して選択され、上記で定義され、yは、下付き文字xによって示される上記で定義された各シロキシ単位において独立して選択され、下付き文字xは上で定義され、下付き文字wは上記で定義される]を有するシリコーン樹脂と、
(ii)式(R1
2SiO2/2)n[式中、各R1は独立してヒドロカルビル基であり、nは3~15の整数である]を有する環状シロキサンとの、重合触媒の存在下での反応生成物である。
(i)シリコーン樹脂は、MQ樹脂と呼ばれることもあり、Mは(R0
3SiO1/2)シロキシ単位を示し、式中、Qは(SiO4/2)シロキシ単位を示し、R0はケイ素結合置換基を示す。そのようなMQ樹脂は当技術分野で知られ、溶媒中に配置されない限り、しばしば固体(例えば、粉末又はフレーク)形態である。(i)シリコーン樹脂の平均式は(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(SiO4/2)1.0(ZO1/2)wであり、[M]x[Q]と表記することもできる。しかし、典型的には、当技術分野で使用される命名法では、Mシロキシ単位はトリメチルシロキシ単位であるが、(i)シリコーン樹脂中のR1及びR2がメチル基である必要はない。(i)シリコーン樹脂では、下付き文字xは、Qシロキシ単位のモル数を1に正規化した場合の、Mシロキシ単位とQシロキシ単位とのモル比を示す。xの値が大きいほど、(i)シリコーン樹脂の架橋密度は低くなる。xの値が減少すると、Mシロキシ単位の数が減少し、従って、Mシロキシ単位を末端とすることなく、より多くのQシロキシ単位が網目状になるため、逆も当てはまる。(i)シリコーン樹脂の式がQシロキシ単位の含有量を1に正規化するという事実は、(i)シリコーン樹脂が1つのQ単位のみを含むことを意味するものではない。(i)シリコーン樹脂は、共にクラスター化又は結合された複数のQシロキシ単位を含み得る。更に、本開示及び上記の平均式の目的のために、完全に縮合又はキャップされていないケイ素結合ヒドロキシル基を含むシロキシ単位は、Qシロキシ単位と見なされ得る(ケイ素結合ヒドロキシル基を含むケイ素原子がケイ素-炭素結合を含まない限り)。このようなケイ素結合ヒドロキシル基は、縮合してQシロキシ単位を生じ得る。従って、以下に説明するように、(i)シリコーン樹脂を本体化した後であっても、下付き文字xの値、及びMとQとのシロキシ単位の比率は、Qシロキシ単位中に存在する任意の残留ケイ素結合ヒドロキシル基が更に縮合した後も同じままである。例えば、(i)シリコーン樹脂は、特定の実施形態では、最大4重量百分率、あるいは最大3重量百分率、あるいは最大2重量百分率のヒドロキシル基を含み得る。(i)シリコーン樹脂は、得られた(A1)分岐状オルガノポリシロキサンよりも高レベルのSiOZ含有量を含み得る。
下付き文字yは、0~3、あるいは1~3、あるいは2~3、あるいは3の整数である。更に、下付き文字yは、下付き文字xによって示される各Mシロキシ単位において独立して選択される。従って、(i)シリコーン樹脂は、例えば、yが3である場合は(R1
3SiO1/2)、yが2である場合は(R1
2R2SiO1/2)で表されるMシロキシ単位を含み得る。典型的には、(i)シリコーン樹脂中の全てのMシロキシ単位の過半数、即ち少なくとも50モル%、あるいは少なくとも60モル%、あるいは少なくとも70モル%、あるいは少なくとも80モル%、あるいは少なくとも90モル%、あるいは少なくとも95モル%は、(R1
3SiO1/2)によって表される。(i)シリコーン樹脂中の全てのMシロキシ単位は、上記で定義された下付き文字xの目的で集まる。
特定の実施形態では、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、(i)シリコーン樹脂と(ii)式(R1
2SiO2/2)n[式中、R1は上記で定義され、nは3~15の整数である]を有する環状シロキサンとの反応生成物である。環状シロキサンでは、各R1は、典型的には、独立して選択されたアルキル基であり、最も典型的には、各R1は、メチル基である。各R1がメチル基である場合、(ii)環状シロキサンは、nに基づいて呼ばれ得る。例えば、nが3である場合、(ii)環状シロキサンはD3と呼ばれ、nが4である場合、(ii)環状シロキサンはD4と呼ばれ、nが5である場合、(ii)環状シロキサンはD5と呼ばれるなどである。しかし、他の実施形態では、(ii)環状シロキサンの少なくとも1つのR1は、ケイ素結合エチレン性不飽和基、即ち、ケイ素結合アルケニル又はアルキニル基である。例えば、(ii)環状シロキサンの少なくとも1つのR1がケイ素結合エチレン性不飽和基である場合、(ii)環状シロキサンは、例えば、メチルビニルシロキシ単位、又はジビニルシロキシ単位を含み得る。(ii)環状シロキサンの各Dシロキシ単位は、メチルビニルシロキシ単位がジメチルシロキシ単位と組み合わせて存在し得るように独立して選択される。
下付き文字nは、3~15、あるいは3~12、あるいは3~10、あるいは3~8、あるいは3~6、あるいは4~5である。更に、(ii)環状シロキサンは、異なる環状シロキサンのブレンド、例えば、nが4であるものと、nが5であるものとのブレンドを含み得る。特定の実施形態では、(ii)環状シロキサンは、シクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、及びそれらの組み合わせの群から選択される。説明のみを目的として、デカメチルシクロペンタシロキサン及びオクタメチルシクロテトラシロキサンの化学構造を以下に示す。
(ii)環状シロキサンは、典型的には、100~750g/mol、あるいは150~500g/mol、あるいは275~375g/molの分子量を有する。
(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとは、重合触媒の存在下で反応する。典型的には、重合触媒は、(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとの間の反応が酸触媒反応又は塩基触媒反応のいずれかであるよう、酸又は塩基である。従って、特定の実施形態では、重合触媒は、強酸触媒、強塩基触媒、及びそれらの組み合わせの群から選択され得る。強酸触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸などであり得る。重合触媒は、典型的には、強塩基触媒である。典型的には、この強塩基触媒はホスファゼン触媒であるが、ホスファゼン塩基触媒の代わりに、KOHなどの他の強塩基触媒を使用し得る。
ホスファゼン触媒は、概して少なくとも1つの-(N=P<)-単位((即ち、ホスファゼン単位))を含み、通常、最大10個のそのようなホスファゼン単位を有するオリゴマーであり、例えば、平均1.5から最大5のホスファゼン単位を有する。ホスファゼン触媒は、例えば、クロロホスファゼン(ホスホニトリルクロリド)などのハロホスファゼン、酸素含有ハロホスファゼン、ホスファゼニウム塩などのホスファゼンのイオン性誘導体、特にパークロロオリゴホスファゼニウム塩などのハロゲン化ホスホニトリルのイオン性誘導体、又はその部分的に加水分解された形態である。
特定の実施形態では、重合触媒は、ホスファゼン塩基触媒を含む。ホスファゼン塩基触媒は、当技術分野で知られる任意のものでもよいが、典型的には、以下の化学式
((R3
2N)3P=N)t(R3
2N)3-tP=NR3
[式中、各R3は、水素原子、R1及びそれらの組み合わせの群から独立して選択され、tは1~3の整数である]を有する。R3がR1である場合、R3は、典型的には、1~20個、あるいは1~10個、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。任意の(R3
2N)部分の2つのR3基は、同じ窒素(N)原子に結合し、連結し、好ましくは5又は6個のメンバーを有する複素環を完成させることができる。
あるいは、ホスファゼン塩基触媒は塩であり得、以下の代替化学式
[((R3
2N)3P=N)t(R3
2N)3-tP=N(H)R3]+[A-]、又は
[((R3
2N)3P=N)s(R3
2N)4-sP]+[A-]
[式中、各R3は独立して選択され、上記で定義され、下付き文字tは上記で定義され、下付き文字sは1~4の整数であり、[A]はアニオンであり、典型的には、フルオリド、ヒドロキシド、シラノレート、アルコキシド、カーボネート、バイカーボネートの群から選択される]のうちの1つを有し得る。一実施形態では、ホスファゼン塩基は水酸化アミノホスファゼニウムである。
(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとの、重合触媒の存在下での反応は、(ii)環状シロキサンの開環及び(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンへのDシロキシ単位の取り込みをもたらす。使用される(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとの相対量は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のDシロキシ単位の所望の含有量の関数であり、それは以下に記載される。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンはQシロキシ単位に帰属する分岐を含み、直鎖状ではないが、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のDシロキシ単位の数は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンの重合度(DP)と呼ばれ得る。
特定の実施形態では、(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとは、溶媒の存在下で、高温、例えば、125~175℃で反応する。好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、若しくはキシレン、及び/又は脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンが挙げられる。あるいは、溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンであってもよい。ビス(トリメチルシリル)水素リン酸塩などの錯化剤を反応後に使用し、重合触媒の活性を阻害し得る。当業者は、その選択及び反応条件の関数である、使用される重合触媒の触媒量を容易に決定し得る。
(i)シリコーン樹脂は、(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとを反応させる前に、任意選択で本体化され得る。当技術分野で理解されるように、シリコーン樹脂を本体化することは、典型的には、その形成からシリコーン樹脂中に存在し得る残留ケイ素結合ヒドロキシ基の更なる縮合を通じて分子量の増加をもたらす。(i)シリコーン樹脂を本体化することは、典型的には、概して(i)シリコーン樹脂が溶媒中に配置される間、(i)シリコーン樹脂を高温で加熱することを含む。好適な溶媒は上記に開示される。(i)シリコーン樹脂の本体化は、シラノール基の縮合からの副生成物として水をもたらす。
上記で紹介したように、(A)反応生成物は、(1)分岐状オルガノポリシロキサンと、(2)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との、ヒドロシリル化触媒の存在下での反応生成物である。(A)(2)有機ケイ素化合物は、直鎖状、分岐状、部分的に分岐状、環状、樹脂状(即ち、三次元網目を有する)であるか、又は異なる構造の組み合わせを含み得る。(A)(2)有機ケイ素化合物は、典型的には、架橋剤であり、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンのエチレン性不飽和基と反応する。典型的には、(A)(2)有機ケイ素化合物は、オルガノハイドロジェンシロキサンを含む。
(A)(2)有機ケイ素化合物は、(A)(2)有機ケイ素化合物が1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む限り、M、D、T及び/又はQシロキシ単位の任意の組み合わせを含み得る。これらのシロキシ単位を様々な方法で組み合わせて、環状、直鎖状、分岐状、及び/又は樹脂状(三次元網目状)の構造を形成することができる。(A)(2)有機ケイ素化合物は、M、D、T、及び/又はQ単位の選択に応じ、モノマー、ポリマー、オリゴマー、直鎖状、分岐状、環状、及び/又は樹脂状であり得る。
(A)(2)有機ケイ素化合物は、上記のシロキシ単位を参照し、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含むため、(A)(2)有機ケイ素化合物は、ケイ素結合水素原子を備えた以下のシロキシ単位のいずれか、すなわち(R1
2HSiO1/2)、(R1H2SiO1/2)、(H3SiO1/2)、(R1HSiO2/2)、(H2SiO2/2)、及び/又は(HSiO3/2)[式中、R1は独立して選択され、上記で定義される]を、任意選択で、ケイ素結合水素原子を含まないシロキシ単位と組み合わせて含み得る。
特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。実質的に直鎖状、又は直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(HR10
2SiO1/2)v’(HR10SiO2/2)w’(R10
2SiO2/2)x’(R10
3SiO1/2)y’[式中、各R10は、独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字v’は、0、1、又は2であり、下付き文字w’は1以上であり、下付き文字x’は0以上であり、下付き文字y’は、0、1、又は2であり、但し、数量(v’+y’)=2、数量(v’+w’)≧3である]を有する。R10の一価炭化水素基は、R1の一価炭化水素基について上に記載したしたとおりであってもよい。数量(v’+w’+x’+y’)は、2~1,000であってもよい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、
i)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
ii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
iii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びに/又は
v)i)、ii)、iii)、iv)、及びv)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
特定の一実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は直鎖状であり、ペンダントケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、平均式
(CH3)3SiO[(CH3)2SiO]x’[(CH3)HSiO]w’Si(CH3)3
[式中、x’及びw’は、上に定義される]を有するジメチル、メチル-ハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。当業者であれば、上の例示的な式において、ジメチルシロキシ単位及びメチルハイドロジェンシロキシ単位は、ランダム又はブロック形態で存在してもよく、任意のメチル基を、脂肪族不飽和を含まない任意の他の炭化水素基で置換してもよいことを理解する。
別の特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は直鎖状であり、末端ケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、平均式
H(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]x’Si(CH3)2H
[式中、x’は上に定義したとおりである]を有するSiH末端ジメチルポリシロキサンであってもよい。SiH末端ジメチルポリシロキサンは、単独で、又は上記開示のジメチル,メチルハイドロジェンポリシロキサンとの組み合わせで使用され得る。混合物が使用される場合、混合物中の各オルガノハイドロジェンシロキサンの相対量は変化し得る。当業者であれば、上の例示的な式における任意のメチル基が、脂肪族不飽和を含まない任意の他の炭化水素基で置換されてもよいことを理解する。
あるいは、(A)(2)有機ケイ素化合物は、ペンダント及び末端ケイ素結合水素原子の両方を含み得る。
特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、アルキルハイドロジェンシクロシロキサン又はアルキルハイドロジェンジアルキルシクロシロキサンコポリマーを含み得る。この種の好適なオルガノハイドロジェンシロキサンの具体例としては、(OSiMeH)4、(OSiMeH)3(OSiMeC6H13)、(OSiMeH)2(OSiMeC6H13)2、及び(OSiMeH)(OSiMeC6H13)3[式中、Meはメチル(-CH3)を表す]が挙げられる。
これら又は他の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、環状部分及び直鎖状部分の両方を有するオルガノポリシロキサンを含み得る。そのような実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子は、環状部分、直鎖状部分、又はその両方の中に存在し得る。このようなオルガノポリシロキサンの一例は、以下の式
[式中、下付き文字nは2~2,000で、各下付き文字oは独立して1~10である]を有するダンベル型のオルガノポリシロキサンである。このようなダンベル型のオルガノポリシロキサンは、DPが2~2,000の直鎖状ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンと環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを、ホウ素含有ルイス酸の存在下で反応させることによって調製され得る。このような調製方法は、例えば、国際出願PCT/US第2019/064350号に開示されている。
これら又は他の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、シリコーン樹脂を含み得る。そのような実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、典型的には、T及び/又はQシロキシ単位を含み、それは、任意選択で、M及び/又はDシロキシ単位と組み合わせることができる。そのような実施形態では、ケイ素結合水素原子は、M、D、及び/又はTシロキシ単位中に存在し得る。
(A)(2)有機ケイ素化合物に好適なシリコーン樹脂の特定の一具体例は、シルセスキオキサン、又はT樹脂である。例えば、シルセスキオキサンは、式TH、又はHSiO3/2を有し得る。シルセスキオキサンはまた、ケイ素結合水素原子を含まないTシロキシ単位、例えば、CH3SiO3/2単位を含み得る。シルセスキオキサンは当技術分野で知られ、様々な供給業者から市販されている。
(A)(2)有機ケイ素化合物に好適なシリコーン樹脂の別の例は、MQ樹脂である。当技術分野で理解されるように、MQ樹脂は、M及びQシロキシ単位を含む。これらの実施形態では、ケイ素結合水素原子は、Mシロキシ単位中に存在する。Mシロキシ単位は、MQ樹脂に少なくとも2つのケイ素結合水素原子が含まれる限り、(R1
2HSiO1/2)、(R1H2SiO1/2)、及び(H3SiO1/2)[式中、R1は独立して選択され、上記で定義される]の任意の組み合わせを含み得る。
(A)(2)有機ケイ素化合物に好適なオルガノハイドロジェンシロキサンの他の例は、1つの分子中に少なくとも2つのSiH含有シクロシロキサン環を有するものである。このようなオルガノハイドロジェンシロキサンは、各シロキサン環上に少なくとも1つのケイ素結合水素(SiH)原子を有する、少なくとも2つのシクロシロキサン環を有する任意のオルガノポリシロキサンであってもよい。シクロシロキサン環は、少なくとも3つのシロキシ単位(すなわち、シロキサン環を形成するために必要な最少数)を含有し、環状構造を形成するMシロキシ単位、Dシロキシ単位、Tシロキシ単位、及び/又はQシロキシ単位の任意の組み合わせであってもよく、但し、各シロキサン環における、Mシロキシ単位、Dシロキシ単位、及び/又はTシロキシ単位であってもよい環状シロキシ単位のうちの少なくとも1つは、1つのSiH単位を含む。これらのシロキシ単位は、それぞれ、その他の置換基がメチルである場合、MH、DH、及びTHシロキシ単位として表すことができる。
特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物の式はHy’R1
3-y’Si-(OSiR1
2)m-(OSiR1H)m’-OSiR1
3-y’Hy’[式中、各R1は独立して選択され、上記で定義され、各y’は0又は1から独立して選択され、下付き文字m及びm’はそれぞれ0~1,000であり、但し、m及びm’は同時に0ではなく、m+m’は1~1,000である]を有する。更により具体的な実施形態では、各R1はメチルであり、各y’は1であり、m’は0であり、mは1~1,000、あるいは1~500、あるいは1~250である。
(A)(2)有機ケイ素化合物は、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及びケイ素結合水素原子の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる組み合わせ又は2つ以上の異なるオルガノハイドロジェンシロキサンを含み得る。組成物は、(A)(2)有機ケイ素化合物を、成分(A)(1)中のケイ素結合エチレン性不飽和基と成分(A)(2)中のケイ素結合水素原子とのモル比を1:1~30:1、あるいは2:1~20:1、あるいは3:1~10:1、あるいは3:1~7:1、あるいは3:1~5:1、あるいは2:1~10:1、あるいは2:1~7:1、あるいは2:1~5:1、あるいは2:1~4:1の量で与える量で含み得る。典型的には、(A)(2)有機ケイ素化合物は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンを架橋するように選択され、末端ケイ素結合水素原子を有する直鎖状オルガノハイドロジェンシロキサンである。典型的には、(A)反応生成物が完全に架橋されず、部分的にのみ架橋されるように、成分(A)(1)中のケイ素結合エチレン性不飽和基が成分(A)(2)中のケイ素結合水素原子に対してモル過剰である。
ヒドロシリル化反応触媒は限定されず、ヒドロシリル化反応を触媒するための任意の既知のヒドロシリル化反応触媒であり得る。異なるヒドロシリル化反応触媒の組み合わせを使用してもよい。
特定の実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は、第VIII族から第XI族までの遷移金属を含む。第VIII族~第XI族遷移金属には、最新のIUPAC命名法を参照する。第VIII族遷移金属は、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びハシウム(Hs)であり、第IX族遷移金属は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、及びイリジウム(Ir)であり、第X族遷移金属は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)であり、第XI族遷移金属は、銅(Cu)、銀(Ag)、及び金(Au)である。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、有機金属錯体)、及び他の形態のそのような金属は、ヒドロシリル化反応触媒として使用され得る。
ヒドロシリル化反応触媒に好適な触媒の追加の例としては、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、第IV族遷移金属(即ち、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及び/又はハフニウム(Hf))、ランタニド、アクチニド、並びに第I族及び第II族の金属錯化物(例えば、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ストロンチウム(Sr)などを含むもの)が挙げられる。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、有機金属錯体)、及び他の形態のそのような金属は、ヒドロシリル化反応触媒として使用され得る。
ヒドロシリル化反応触媒は、任意の好適な形態であり得る。例えば、ヒドロシリル化反応触媒は固体であり得、その例としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、及び同様の貴金属系触媒、並びにニッケル系触媒が挙げられる。その具体例としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、及び同様の元素、並びにまた白金-パラジウム、ニッケル-銅-クロム、ニッケル-銅-亜鉛、ニッケル-タングステン、ニッケル-モリブデン、及び複数の金属の組み合わせを含む同様の触媒が挙げられる。固体触媒の更なる例としては、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Si、Cu-Fe-AI、Cu-Zn-Ti、及び同様の銅含有触媒などが挙げられる。
ヒドロシリル化反応触媒は、固体担体の中又は上にあってもよい。担体の例としては、活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト、及びその他の無機粉末/粒子(例えば硫酸ナトリウム)などが挙げられる。ヒドロシリル化反応触媒はまた、ビヒクル、例えば、ヒドロシリル化反応触媒を可溶化する溶媒、あるいは、ヒドロシリル化反応触媒を単に運ぶが可溶化しないビヒクルに配置され得る。このようなビヒクルは、当該技術分野において既知である。
特定の実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は白金を含む。これらの実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は、例えば、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)、塩化白金、及びそのような化合物とオレフィン又はオルガノポリシロキサンとの錯体、並びにマトリックス又はコアシェル型化合物にマイクロカプセル化された白金化合物などの化合物によって例示される。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒及びその調製方法はまた、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されるように、当該技術分野において既知であり、これらは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
ヒドロシリル化反応触媒としての使用に好適なオルガノポリシロキサンとの白金錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体を含み得る。ヒドロシリル化反応触媒は、クロロ白金酸を、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物、又はアルケン-白金-シリル錯体と反応させることを含む方法によって調製され得る。
ヒドロシリル化反応触媒はまた、又は代わりに、光活性化可能なヒドロシリル化反応触媒であり得、それは、照射及び/又は熱を介して硬化を開始し得る。光活性化可能ヒドロシリル化反応触媒は、特に、150~800ナノメートル(nm)の波長を有する放射線に曝露すると、ヒドロシリル化反応を触媒することができる、任意のヒドロシリル化触媒であってもよい。
ヒドロシリル化反応触媒に好適な光活性化可能なヒドロシリル化反応触媒の特定の例としては、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘキサンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘプタンジオエート)、白金(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオエート、白金(II)ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオエート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオエート)などの白金(II)β-ジケトネート錯体、(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ-Cp)トリメチル白金、及び(トリメチルシリル-Cp)トリメチル白金[式中、Cpがシクロペンタジエニルを表す]等、(h-シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、[Pt[C6H5NNNOCH3]4、Pt[p-CN-C6H4NNNOC6H11]4、Pt[p-H3COC6H4NNNOC6H11]4、Pt[p-CH3(CH2)x-C6H4NNNOCH3]4、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CN-C6H4NNNOC6H11]2、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CH3O-C6H4NNNOCH3]2、[(C6H5)3P]3Rh[p-CN-C6H4NNNOC6H11]、及びPd[p-CH3(CH2)x-C6H4NNNOCH3]2[式中、xは1、3、5、11、又は17である]等のトリアゼンオキシド-遷移金属錯体、(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(h4-1,3,5,7-シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(h4-2,5-ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-ジメチルアミノフェニル)白金、(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-アセチルフェニル)白金、及び(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-トリフルオロメチルフェニル)白金等の、(h-ジオレフィン)(σ-アリール)白金錯体が挙げられるが、それらに限定されない。典型的には、光活性化可能ヒドロシリル化反応触媒は、Pt(II)β-ジケトネート錯体であり、より典型的には、触媒は、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)である。
ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、即ち、所望の条件での硬化を促進するのに十分な量又は分量で組成物中に存在する。ヒドロシリル化反応触媒は、単一ヒドロシリル化反応触媒、又は2種以上の異なるヒドロシリル化反応触媒を含む混合物とすることができる。
ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、>0.01ppm~10,000ppmであり得、あるいは、>1,000ppm~5,000ppmであり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒の典型的な触媒量は、0.1ppm~5000ppm、あるいは1ppm~2000ppm、あるいは>0~1,000ppmである。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、成分(A)(1)、(A)(2)、及び反応に使用される溶媒の総重量に基づき、0.01ppm~1,000ppm、あるいは0.01ppm~100ppm、あるいは20ppm~200ppm、あるいは0.01ppm~50ppmの白金族金属であり得る。
特定の実施形態では、(A)反応生成物は、以下の構造
[式中、各R
1は独立して選択され、上記で定義され、下付き文字a、a’、b、及びb’はそれぞれ0より大きく、但し、a+bは0.05~4であり、a’+b’は0.05~4であり、下付き文字は100~3,000であり、下付き文字c’は100~3,000であり、各Dは独立して選択されたアルキレン基であり、下付き文字Xはシロキサン部分である]を有する部分を含む。
下付き文字a及びb、並びに下付き文字a’及びb’は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンのxに対応する(即ち、合計するとそれになる)。同様に、下付き文字c及び下付き文字c’は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンのzに対応する。上記の構造のMDQ部分は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンから形成され、-D-X-D-部分は(A)(2)有機ケイ素化合物から形成される。上記の構造の未定義の結合は、Si-R1部分を表すことも、追加の架橋部位からの更なるSi-D-X-D-部分を表すこともできる。
例えば、(A)(2)有機ケイ素化合物がジメチル水素末端ポリジメチルシロキサンである場合、及びR1がビニル基である場合、各Dはエチレンであり、Xは(A)(2)有機ケイ素化合物のDPと同等のDPを持つポリジメチルシロキサン部位である。
組成物は、組成物の総重量に基づき、0超~15重量百分率、あるいは0.5~10重量百分率、あるいは0.75~7重量百分率、あるいは1~4重量百分率の量の(A)反応生成物を含む。
この組成物は、(B)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサンを更に含む。特定の実施形態では、(B)オルガノポリシロキサンは、1分子あたり、末端脂肪族不飽和を有する平均少なくとも2つのケイ素結合基を有する。この(B)オルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、部分的に分岐状、環状、樹脂状(即ち、三次元網目を有する)であるか、又は異なる構造の組み合わせを含み得る。ポリオルガノシロキサンは平均式R4
aSiO(4-a)/2[式中、各R4は、一価炭化水素基又は一価ハロゲン化炭化水素基から独立して選択され、但し、各分子においてR4の少なくとも2つは脂肪族不飽和を含み、下付き文字aは0<a≦3.2となるように選択される]を有する。R4に好適な一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基は、R1について上に記載したとおりである。ポリオルガノシロキサンの上記の平均式は、代わりに(R4
3SiO1/2)b(R4
2SiO2/2)c(R4SiO3/2)d(SiO4/2)e[式中、R4は上記で定義され、下付き文字b、c、d、及びeは、それぞれ独立して≧0~≦1であり、但し、数量(b+c+d+e)=1である]と表記され得る。当業者であれば、このようなM、D、T、及びQ単位、並びにそれらのモル分率が、上述の平均式中の下付き文字aにどのように影響するかを理解する。T単位(下付き文字dによって示される)、Q単位(下付き文字eによって示される)、又はその両方は、典型的には、ポリオルガノシロキサン樹脂中に存在し、一方、下付き文字cによって示されるD単位は、典型的には、ポリオルガノシロキサンポリマー中に存在する(及びまた、ポリオルガノシロキサン樹脂又は分岐状ポリオルガノシロキサン中に存在してもよい)。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、実質的に直鎖状であり得るか、あるいは直鎖状であり得る。実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、平均式R4
a’SiO(4-a’)/2[式中、各R4は上で定義したとおりであり、下付き文字a’は、1.9≦a’≦2.2となるように選択される]を有してもよい。
成分(B)の実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、25℃で、流動性の液体であり得るか、又は未硬化のゴムの形態を有し得る。実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、25℃で、10mPa・s~30,000,000mPa・s、あるいは10mPa・s~10,000mPa・s、あるいは100mPa・s~1,000,000mPa・s、あるいは100mPa・s~100,000mPa・sの粘度を有してもよい。粘度は、実質的に直鎖状のポリオルガノポリシロキサンの粘度に対して適切に選択されたスピンドル、すなわちRV-1~RV-7を備えたBrookfield LV DV-E粘度計を介して、25℃で測定することができる。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状又は直鎖状である場合、(B)オルガノポリシロキサンは平均単位式(R6R5
2SiO1/2)aa(R6R5SiO2/2)bb(R6
2SiO2/2)cc(R5
3SiO1/2)dd[式中、各R5は、脂肪族不飽和を含まない独立して選択された一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R6は、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択され、下付き文字aaは、0、1、又は2であり、下付き文字bbは0以上であり、下付き文字ccは1以上であり、下付き文字ddは、0、1、又は2であり、但し、数量(aa+dd)≧2、数量(aa+dd)=2であり、但し、数量(aa+bb+cc+dd)は、3~2,000である]を有してもよい。あるいは、下付き文字cc≧0である。あるいは、下付き文字bb≧2である。あるいは、数量(aa+dd)は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。あるいは、下付き文字ccは、0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。あるいは、下付き文字bbは、2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
R5の一価炭化水素基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~10個の炭素原子を有するアリール基、1~6個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、6~10個の炭素原子を有するハロゲン化アリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は7~12個の炭素原子を有するハロゲン化アラルキル基によって例示され、アルキル、アリール、及びハロゲン化アルキルは本明細書に記載のとおりである。あるいは、各R5はアルキル基である。あるいは、各R5は、独立して、メチル、エチル、又はプロピルである。R5の各例は、同一でも異なってもよい。あるいは、各R5はメチル基である。
R6の脂肪族不飽和一価炭化水素基は、ヒドロシリル化反応することが可能である。R6に好適な脂肪族不飽和炭化水素基は、本明細書で定義され、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルによって例示されるアルケニル基によって例示され、アルキニル基は、本明細書で定義され、エチニル及びプロピニルによって例示される。あるいは、各R6は、ビニル又はヘキセニルであってもよい。あるいは、各R6は、ビニル基である。(B)オルガノポリシロキサンのアルケニル又はアルキニル含有量は、(B)オルガノポリシロキサンの重量に基づき、0.1重量%~1重量%、あるいは0.2重量%~0.5重量%であり得る。
(B)オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状であるか、あるいは直鎖状である場合、少なくとも2つの脂肪族不飽和基は、ペンダント位置、末端位置、又はペンダント位置と末端位置の両方でケイ素原子に結合し得る。ペンダントケイ素結合脂肪族不飽和基を有する(B)オルガノポリシロキサンの特定の例として、(B)オルガノポリシロキサンは、平均単位式
[(CH3)3SiO1/2]2[(CH3)2SiO2/2]cc[(CH3)ViSiO2/2]bb[式中、下付き文字bb及びccは上述で定義したとおりであり、Viはビニル基を示す]を有してもよい。この平均式に関して、任意のメチル基が、異なる一価炭化水素基(アルキル又はアリール等)で置換されてもよく、任意のビニル基が、異なる脂肪族不飽和一価炭化水素基(アリル又はヘキセニル等)で置換されてもよい。あるいは、1分子あたり、平均少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンの特定の例として、(B)オルガノポリシロキサンは平均式Vi(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]ccSi(CH3)2Vi[式中、下付き文字ccとViは上記で定義される]を有してもよい。ケイ素結合ビニル基で終端されたジメチルポリシロキサンは、単独で、又は(B)オルガノポリシロキサンとして直前に開示されたジメチル、メチル-ビニルポリシロキサンと組み合わせて使用され得る。この平均式に関して、任意のメチル基が、異なる一価炭化水素基で置換されてもよく、任意のビニル基が、任意の末端脂肪族不飽和一価炭化水素基で置換されてもよい。少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基がペンダント及び末端の両方であり得るので、(B)オルガノポリシロキサンは、代わりに平均単位式
[Vi(CH3)2SiO1/2]2[(CH3)2SiO2/2]cc[(CH3)ViSiO2/2]bb[式中、下付き文字bb及びcc並びにViは上述で定義されている]を有してもよい。
(B)オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンである場合、B)オルガノポリシロキサンは、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマーによって例示され得る。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン
xv)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xvi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)及び
xvii)これらの組み合わせからなる群から選択される、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノシロキサンを含み得る。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、樹脂状ポリオルガノシロキサンを含み得る。樹脂状ポリオルガノシロキサンは、平均式R4
a”SiO(4-a”)/2[式中、各R4は、上に定義したように独立して選択され、下付き文字a”は、0.5≦a”≦1.7となるように選択される]を有してもよい。
樹脂状ポリオルガノシロキサンは、分岐状又は三次元網目状の分子構造を有する。25℃で、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、液体の形態であっても固体の形態であってもよい。あるいは、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、T単位のみを含むポリオルガノシロキサン、T単位を他のシロキシ単位(例えば、M、D、及び/又はQシロキシ単位)と組み合わせて含むポリオルガノシロキサン、又はQ単位を他のシロキシ単位(すなわち、M、D、及び/又はTシロキシ単位)と組み合わせて含むポリオルガノシロキサンによって例示することができる。典型的には、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、T単位及び/又はQ単位を含む。樹脂状ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ビニル末端シルセスキオキサン(すなわち、T樹脂)及びビニル末端MDQ樹脂が挙げられる。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、分岐状シロキサン、シルセスキオキサン、又は分岐状シロキサン及びシルセスキオキサンの両方を含み得る。
(B)オルガノポリシロキサンが異なるオルガノポリシロキサンのブレンドを含む場合、ブレンドは物理的ブレンド又は混合物であり得る。例えば、(B)オルガノポリシロキサンが分岐状シロキサンとシルセスキオキサンを含む場合、分岐状シロキサンとシルセスキオキサンとは、組成物中に存在するすべての成分の総重量に基づき、分岐状シロキサンの量とシルセスキオキサンを合わせた量が合計100重量部になるように、互いに対する量で存在する。分岐状シロキサンは、50~100重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、0~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~90重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、10~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~80重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、20~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~76重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、24~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~70重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、30~50重量部の量で存在してもよい。
(B)オルガノポリシロキサンの分岐状シロキサンは単位式(R7
3SiO1/2)p(R8R7
2SiO1/2)q(R7
2SiO2/2)r(SiO4/2)s[式中、各R7は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R8はアルケニル基又はアルキニル基であり、どちらも上記のとおりであり、下付き文字p≧0、下付き文字q>0、15≧r≧995、下付き文字sは>0である]を有してもよい。
上述の単位式では、下付き文字p≧0である。下付き文字q>0である。あるいは、下付き文字q≧3である。下付き文字rは、15~995である。下付き文字s>0である。あるいは、下付き文字s≧1である。あるいは、下付き文字pについては、22≧p≧0、あるいは、20≧p≧0、あるいは、15≧p≧0、あるいは、10≧p≧0、あるいは、5≧p≧0である。あるいは、下付き文字qについては、22≧q>0、あるいは、22≧q≧4、あるいは、20≧q>0、あるいは、15≧p>1、あるいは、10≧q≧2、あるいは、15≧q≧4である。あるいは、下付き文字rについては、800≧r≧15、あるいは、400≧r≧15である。あるいは、下付き文字sについては、10≧s>0、あるいは、10≧s≧1、あるいは、5≧s>0、あるいは、s=1である。あるいは、下付き文字sは、1又は2である。あるいは、下付き文字s=1である場合、下付き文字pは0であってもよく、下付き文字qは4であってもよい。
分岐状シロキサンは、式(R
7
2SiO
2/2)
m[式中、各下付き文字mは独立して2~100である]の少なくとも2つのポリジオルガノシロキサン鎖を含み得る。あるいは、分岐状シロキサンは、式(R
7
2SiO
2/2)
o[式中、下付き文字oは、それぞれ独立して、1~100である]の4つのポリジオルガノシロキサン鎖に結合した式(SiO
4/2)の少なくとも一単位を含んでもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、式
[式中、下付き文字uは、0又は1であり、各下付き文字tは、独立して、0~995、あるいは15~995、あるいは0~100であり、各R
9は、上に記載したように、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R
7は、独立して選択された、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R
8は、上に記載したように、それぞれアルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択される]を有してもよい。好適な分岐状シロキサンは、米国特許第6,806,339号及び米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものによって例示される。
シルセスキオキサンは単位式
(R7
3SiO1/2)i(R8R7
2SiO1/2)f(R7
2SiO2/2)g(R7SiO3/2)h
[式中、R7及びR8は上記のとおりであり、下付き文字i≧0、下付き文字f>0、下付き文字gは15~995、下付き文字h>0である]を有してもよい。下付き文字iは、0~10であってもよい。あるいは、下付き文字iについて、12≧i≧0、あるいは、10≧i≧0、あるいは、7≧i≧0、あるいは、5≧i≧0、あるいは、3≧i≧0である。
あるいは、下付き文字f≧1である。あるいは、下付き文字f≧3である。あるいは、下付き文字fについて、12≧f>0、あるいは、12≧f≧3、あるいは、10≧f>0、あるいは、7≧p>1、あるいは、5≧f≧2、あるいは、7≧f≧3である。あるいは、下付き文字gについて、800≧g≧15、あるいは、400≧g≧15である。あるいは、下付き文字h≧1である。あるいは、下付き文字hは、1~10である。あるいは、下付き文字hについて、10≧h>0、あるいは、5≧h>0、あるいは、h=1である。あるいは、下付き文字hは、1~10であり、あるいは、下付き文字hは、1又は2である。あるいは、下付き文字h=1の場合、下付き文字fは3であってもよく、下付き文字iは0であってもよい。下付き文字fの値は、単位式(ii-II)のシルセスキオキサンが、シルセスキオキサンの重量に基づいて、0.1重量%~1重量%、あるいは0.2重量%~0.6重量%のアルケニル含有量となるのに十分であってもよい。好適なシルセスキオキサンは、米国特許第4,374,967号に開示されているものによって例示される。
(B)オルガノポリシロキサンは式(R3
yR1
3-ySiO1/2)x’(R1
2SiO2/2)z’(SiO4/2)1.0(ZO1/2)w[式中、各R3は、独立して選択されたエチレン性不飽和基であり、下付き文字yは、下付き文字xによって示される各シロキシ単位において独立して選択され、各R1は独立して選択され、上記で定義され、下付き文字x’は1.5~4であり、Zは独立して選択され、上記で定義され、下付き文字wは0~3であり、下付き文字z’は3~1,000である]を有してもよい。
(B)オルガノポリシロキサンは、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及び脂肪族不飽和基の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる組み合わせ又は2つ以上の異なるポリオルガノシロキサンを含み得る。組成物は、(B)オルガノポリシロキサンを、組成物の総重量に基づき、60~99.5重量百分率、あるいは60~98重量百分率、あるいは60~95重量百分率、あるいは70~95重量百分率、あるいは75から95重量百分率の量で含み得る。
組成物が本質的に成分(A)及び(B)からなるか、あるいはそれらからなる場合、即ち、触媒又は架橋剤が存在しない場合、その組成物は、塩基組成物と呼ばれ得る。塩基組成物は、典型的には、他の成分と組み合わせて、概してヒドロシリル化を介して硬化性である組成物を得て、この組成物を硬化して、剥離コーティングを得ることができる。別の言い方をすれば、塩基組成物は、典型的には、他の成分と組み合わせされて硬化性組成物を与え、これを使用し、剥離コーティング又はライナーを形成し得る。硬化性組成物は、剥離組成物又は剥離コーティング組成物と呼ばれ得る。
特定の実施形態では、組成物は、(C)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を更に含む。(C)有機ケイ素化合物の好適な例は、(A)(2)有機ケイ素化合物に関して上記に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。成分(C)及び(A)(2)は、互いに同じでも異なっていてもよい。特定の実施形態では、成分(A)(2)は、末端ケイ素結合水素原子を含み、一方、成分(C)は、ペンダントケイ素結合水素原子を含む。
(C)有機ケイ素化合物は、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及びケイ素結合水素原子の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる組み合わせ又は2つ以上の異なるオルガノハイドロジェンシロキサンを含み得る。組成物は、(C)有機ケイ素化合物を、成分(C)中のケイ素結合水素原子と成分(B)中のケイ素結合エチレン性不飽和基とのモル比を1:1~5:1、又は1.1:1~3.1の量で与える量で含み得る。
特定の実施形態では、組成物は、(D)ヒドロシリル化反応触媒を更に含む。(D)ヒドロシリル化反応触媒は限定されず、ヒドロシリル化反応を触媒するための任意の既知のヒドロシリル化反応触媒であり得る。異なるヒドロシリル化反応触媒の組み合わせを使用してもよい。好適な(D)ヒドロシリル化反応触媒の具体例は、(A)反応生成物を形成するのに好適なヒドロシリル化反応触媒に関して上記に記載され、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
(D)ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、即ち、所望の条件での硬化を促進するのに十分な量又は分量で組成物中に存在する。ヒドロシリル化反応触媒は、単一ヒドロシリル化反応触媒、又は2種以上の異なるヒドロシリル化反応触媒を含む混合物とすることができる。
(D)ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、>0.01ppm~10,000ppmであり得、あるいは、>1,000ppm~5,000ppmであり得る。あるいは、(D)ヒドロシリル化反応触媒の典型的な触媒量は、0.1ppm~5000ppm、あるいは1ppm~2000ppm、あるいは>0~1,000ppmである。あるいは、(D)ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、組成物の総重量に基づき、0.01ppm~1,000ppm、あるいは0.01ppm~100ppm、あるいは20ppm~200ppm、あるいは0.01ppm~50ppmの白金族金属であり得る。
組成物は、(E)阻害剤、(F)固定添加剤、(G)防曇剤、(H)剥離改質剤、及び(I)ビヒクルのうちの1つ以上を更に含み得る。
特定の実施形態では、組成物は、(E)阻害剤を更に含む。(E)阻害剤は、同じ出発物質を含むが(E)阻害剤が省略された組成物と比較し、組成物の反応速度又は硬化速度を変更するために使用され得る。(E)阻害剤は、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコール、並びにそれらの組み合わせ;シクロアルケニルシロキサン、例えば1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンにより例示されるメチルビニルシクロシロキサン、並びにこれらの組み合わせ;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン;トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン;ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、ジアルコキシアルキルフマレート、マレエート、例えばジアリルマレエート;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;アルケン、例えばシクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせにより例示される。あるいは、(E)阻害剤は、アセチレンアルコール(例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール)及びマレエート(例えば、ジアリルマレエート、ビスマレエート、又はn-プロピルマレエート)並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
あるいは、(E)阻害剤は、シリル化アセチレン化合物であり得る。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない組成物又は上述したものなどの有機アセチレンアルコール阻害剤を含有する組成物のヒドロシリル化からの反応生成物と比較したとき、組成物のヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
シリル化アセチレン化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、(E)阻害剤は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はそれらの組み合わせによって例示される。(E)阻害剤として有用なシリル化アセチレン化合物は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって上記のアセチレンアルコールをシリル化するなど、当技術分野で知られる方法によって調製され得る。
組成物中に存在する(E)阻害剤の量は、組成物の所望のポットライフ、組成物が一部分組成物であるか多部分組成物であるか、使用される特定の阻害剤、並びに成分(A)~(D)の選択及び量を含む様々な要因に依存する。しかし、存在する場合、(E)阻害剤の量は、組成物の総重量に基づき、0重量%~1重量%、あるいは0重量%~5重量%、あるいは0.001重量%~1重量%、あるいは0.01重量%~0.5重量%、あるいは0.0025重量%~0.025重量%であり得る。
特定の実施形態では、組成物は、(F)固定添加剤を更に含む。好適なアンカー添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)により例示される。あるいは、アンカー添加剤は、ポリオルガノシリケート樹脂を含んでもよい。好適なアンカー添加剤及びその調製方法は、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、同第2004/0254274号、及び同第2005/0038188号、並びに欧州特許第0556023号に開示されている。
好適なアンカー添加剤の更なる例としては、遷移金属キレート、アルコキシシラン等のハイドロカルボノオキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。(F)固定添加剤は、エポキシ、アセトキシ又はアクリレート基などの接着促進基を有する少なくとも1つの置換基を有するシランであり得る。接着促進基は、追加的又は代替的に、(D)ヒドロシリル化反応触媒に影響を与えない任意の加水分解性基であり得る。あるいは、(F)固定添加剤は、そのようなシランの部分縮合物、例えば、接着促進基を有するオルガノポリシロキサンを含み得る。あるいはまた、(F)アンカー添加剤は、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせを含んでもよい。
あるいは、(F)アンカー添加剤は、不飽和又はエポキシ官能性化合物を含んでもよい。(F)アンカー添加剤は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは、少なくとも1つの不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基を含んでもよい。エポキシ官能性有機基は、3-グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルによって例示される。不飽和有機基は、3-メタクリロイルオキシプロピル、3-アクリロイルオキシプロピル、及び、ビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニル(undecylenyl)などの不飽和一価炭化水素基により例示される。不飽和化合物の具体例1つは、ビニルトリアセトキシシランである。
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
(F)アンカー添加剤はまた、これらの化合物の1つ以上の反応生成物又は部分反応生成物を含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、(F)アンカー添加剤は、ビニルトリアセトキシシランと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物又は部分反応生成物を含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、(F)アンカー添加剤は、アルコキシ又はアルケニル官能性シロキサンを含んでもよい。
あるいは、(F)アンカー添加剤は、ヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンと上記のエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物、又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドなどのエポキシ官能性シロキサンを含んでもよい。(F)アンカー添加剤は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含んでもよい。例えば、(F)アンカー添加剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物との混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物によって例示される。
あるいは、(F)アンカー添加剤は、遷移金属キレートを含んでもよい。好適な遷移金属キレートとしては、チタネート、ジルコニウムアセチルアセトネート等のジルコネート、アルミニウムアセチルアセトネート等のアルミニウムキレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、(F)アンカー添加剤は、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせなどの、遷移金属キレートとアルコキシシランとの組み合わせを含んでもよい。
組成物中に存在する(F)固定添加剤の特定の量は、使用される場合、基材のタイプ及びプライマーが使用されるかどうかを含む様々な要因に依存する。特定の実施形態では、(F)固定添加剤は、成分(B)の100重量部あたり、0~2重量部の量で組成物中に存在する。あるいは、(F)固定添加剤は、成分(B)の100重量部あたり、0.01~2重量部の量で組成物中に存在する。
特定の実施形態では、組成物は、(G)防曇剤を更に含む。(G)防曇剤は、組成物が剥離コーティングを調製するために使用されるときに防曇剤としても機能する成分(A)とは区別される。(G)防曇剤は、特に高速コーティング装置を用い、コーティングプロセスにおけるシリコーンミスト形成を低減又は抑制するために組成物に使用され得る。(G)防曇剤は、有機水素ケイ素化合物、オキシアルキレン化合物、又は1分子あたり少なくとも3つのケイ素結合アルケニル基を有するオルガノアルケニルシロキサン、及び好適な触媒の反応生成物であり得る。好適な防曇剤は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287267号、米国特許第8,722,153号、米国特許第6,586,535号及び米国特許第5,625,023号に開示されている。
組成物に使用される(G)防曇剤の量は、組成物のために選択される他の出発物質の量及びタイプを含む様々な要因に依存する。しかし、(G)防曇剤は、典型的には、組成物の総重量に基づき、0重量%~10重量%、あるいは0.1重量%~3重量%の量で使用される。この量は、成分(A)に関連する量を除外し、成分(A)とは別個の異なる(G)防曇剤にのみ関連する。
特定の実施形態では、組成物は、剥離力(組成物から形成された剥離コーティングとその被着体、例えば感圧接着剤を含むラベル)との間の接着力のレベルを制御(減少)するために組成物において使用され得る(H)剥離改質剤を更に含む。(H)剥離改質剤のレベル又は濃度を調整することにより、必要な又は所望の剥離力を有する剥離コーティングが、改質剤を含まない組成物から配合され得る。成分(H)に好適な剥離改質剤の例としては、トリメチルシロキシ末端ジメチル、フェニルメチルシロキサンが挙げられる。あるいは、(H)剥離改質剤は、ヒドロキシル又はアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン樹脂と、少なくとも1つのヒドロキシル又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンとの縮合反応生成物であり得る。好適な剥離改質剤の例は、例えば、米国特許第8,933,177号及び米国特許出願公開第2016/0053056号に開示されている。使用される場合、(H)剥離改質剤は、成分(B)の100部あたり、0から85部、あるいは25~85部の量で組成物中に存在し得る。
特定の実施形態では、組成物は、(I)ビヒクルを更に含む。(I)ビヒクルは、典型的には、組成物の成分を可溶化し、成分が可溶化する場合、(I)ビヒクルは、溶媒と呼ばれ得る。好適なビヒクルとしては、直鎖状及び環状の両方のシリコーン、有機油、有機溶媒、並びにこれらの混合物が挙げられる。
典型的には、(I)ビヒクルは、組成物中に存在する場合、有機液体である。有機液体としては、油又は溶媒とみなされるものが挙げられる。有機液体としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、3つを超える炭素原子を有するアルコール、アルデヒド、ケトン、アミン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化芳香族が挙げられるが、それらに限定されない。炭化水素は、イソドデカン、イソヘキサデカン、アイソパーL(C11~C13)、アイソパーH(C11~C12)、水素化ポリデセン、芳香族炭化水素、及びハロゲン化炭化水素を含む。エーテル及びエステルとしては、イソデシルネオペンタノエート、ネオペンチルグリコールヘプタノエート、グリコールジステアレート、ジカプリリルカーボネート、ジエチルヘキシルカーボネート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチル-3エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリデシルネオペンタノエート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、オクチルドデシルネオペンタノエート、ジイソブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、オクチルエーテル、及びオクチルパルミテートが挙げられる。独立化合物又は(I)ビヒクルの成分として好適な追加の有機流体は、脂肪、油、脂肪酸、及び脂肪アルコールを含む。(I)ビヒクルはまた、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデアメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3,ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン ペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、並びにポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、カプリリルメチコン、及びそれらの任意の混合物などの、25℃で1~1,000mm2/秒の範囲の粘度を有する低粘度オルガノポリシロキサン又は揮発性メチルシロキサン又は揮発性エチルシロキサン又は揮発性メチルエチルシロキサンであり得る。
特定の実施形態では、(I)ビヒクルは、ポリアルキルシロキサン、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等のケトン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、又はキシレン、脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、又はオクタン、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル、又はそれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、組成物がエマルジョンの形態である場合、(I)ビヒクルは、代わりに、水性媒体、又は水を含み得る。
(I)ビヒクルの量は、選択されたビヒクルのタイプ、及び組成物中に存在する他の成分の量及びタイプを含む様々な要因に依存する。しかし、組成物中の(I)ビヒクルの量は、組成物の総重量に基づき、0重量%~99重量%、あるいは2重量%~50重量%であり得る。(I)ビヒクルは、例えば、混合及び送達を助けるために、組成物の調製中に添加され得る。(I)ビヒクルの全部又は一部は、組成物から剥離コーティングを調製する前及び/又はそれと同時に、組成物が調製された後に任意選択で除去され得る。
例えば、反応性希釈剤、芳香剤、防腐剤、着色剤、染料、及び充填剤、例えば、シリカ、石英又はチョークを含む、他の任意選択成分が組成物中に存在し得る。
あるいは、組成物及びそれから形成される剥離コーティングは、微粒子を含まないか、又は組成物の0~30重量%などの限られた量の微粒子(例えば、充填剤及び/又は顔料)のみを含み得る。微粒子は、剥離コーティングを形成するのに使用されるコーティング装置に凝集するか、又はそうでなければアンカーする場合がある。更に、光学的透明性が所望の場合、微粒子は、剥離コーティング及びそれを使用して形成された剥離ライナーの光学的特性、例えば、透明性を妨げる可能性がある。微粒子は、被着体の接着に不利になることがある。
特定の実施形態では、組成物は、フルオロオルガノシリコーン化合物を含まない。硬化中、フルオロ化合物は、その表面張力が低いため、組成物の界面又はそれと共に形成された剥離コーティング、及び組成物が適用され、剥離コーティングが形成される基材、例えば組成物/PETフィルム界面に急速に移行し得ると考えられる。このような移動は、フッ素含有バリアを作製することによって、基材への剥離コーティング(組成物を硬化させることによって調製される)の接着を防ぐことがある。バリアを作製することにより、フルオロオルガノシリコーン化合物は、組成物のいずれの成分も界面で反応することが防がれ、硬化及び関連する特性に影響を及ぼすことがある。更に、フルオロオルガノシリコーン化合物は、通常、高価である。
その硬化可能な形態の組成物は、成分(A)~(D)、並びに上記の任意の任意選択成分を、任意の添加順序で、任意選択でマスターバッチ内にて、任意選択で剪断下、組み合わせることによって調製され得る。以下でより詳細に説明するように、組成物は、1つの部分の組成物、2つの成分又は2Kの組成物、又は複数の部分の組成物であり得る。例えば、成分(A)及び(B)は、組成物の単一の部分であり得る。以下に記載されるように、組成物が剥離コーティング又はコーティングされた基材を調製するために使用される場合、成分(A)及び(B)は、組成物が硬化性組成物になるように、成分(C)及び(D)、並びに任意の任意選択成分と組み合わせされる。組成物が成分(C)及び(D)を更に含む場合、その組成物は硬化性組成物と呼ばれ得る。
様々な実施形態では、組成物は、その連続相及び不連続相の選択に応じ、エマルジョン、例えば、水中油型又は油中水型エマルジョンとして調製され得る。これらの実施形態では、(I)ビヒクルは、水性媒体又は水として組成物中に存在する。エマルジョンの油相は、組成物のシリコーン成分、即ち、少なくとも成分(A)及び(B)、並びに存在する場合成分(C)を含む。特定の実施形態では、油相は、少なくとも成分(A)及び(B)、並びに存在する場合成分(C)を運ぶための有機油又はシリコーン油を更に含み得る。しかし、有機油又はシリコーン油は、エマルジョンを調製するのに必須ではない。更に、エマルジョンは、異なる成分を有する異なるエマルジョンを有する複数部型エマルジョンとすることができ、エマルジョンの複数部は、硬化に関連して組み合わされ、混合される。エマルジョンは、任意の部分に、上述の任意選択成分のいずれかを含むことができる。
使用される場合、有機油は、典型的には非反応性又は不活性であり、即ち、有機油は、組成物の反応性成分の硬化に関連するいかなる反応にも関与しない。典型的には、シリコーン成分(例えば、成分(A)、(B)、及び存在する場合(C))は、エマルジョンの水相ではなく油相に分散する。
特定の実施形態では、好適な有機油は、少なくとも成分(A)及び(B)を溶解するもの、典型的には透明な溶液を形成するものである、少なくとも成分(A)及び(B)と組み合わせ、エマルジョンの形成前、形成中、及び/又は形成後に相分離することなく均一な分散液を形成し得るものを含む。有機油は、例えば以下のもの、直鎖状(例えば、n-パラフィン系)鉱油、分岐状(イソパラフィン系)鉱油、及び/又は環状(ナフテン系と呼ばれることもある)鉱油を含む油留分等の、油留分中の炭化水素が1分子当たり5~25個の炭素原子を含み、12~40個の炭素原子を含有する液体直鎖状又は分岐状パラフィンである炭化水素油、ポリイソブチレン(PIB)、トリオクチルホスファート等のホスフェートエステル、ポリアルキルベンゼン、重質アルキレート、ドデシルベンゼン及び他のアルキルアレーン等の直鎖状及び/又は分枝状アルキルベンゼン、脂肪族モノカルボン酸エステル、8~25個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状アルケンあるいはこれらの混合物等の、直鎖状又は分岐状モノ不飽和炭化水素、並びに天然油及びそれらの誘導体のいずれか1つ又は組み合わせであってもよい。
一実施形態では、有機油は、鉱油留分、天然油、アルキルシクロ脂肪族化合物、ポリアルキルベンゼンを含むアルキルベンゼン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
有機油としての使用に好適なアルキルベンゼン化合物としては、例えば、重質アルキレートアルキルベンゼン及びアルキルシクロ脂肪族化合物が挙げられる。重質アルキレートアルキルベンゼンとしては、例えば、アルキル及び/又は他の置換基により置換されたベンゼン等の、アリール基を有するアルキル置換アリール化合物が挙げられる。更なる例としては、米国特許第4,312,801号(その全体が参考として組み込まれる)に記載されている増量剤が挙げられる。
鉱油留分、又は任意の他の有機油と組み合わせた鉱油留分の任意の好適な混合物を、有機油として使用してもよい。有機油の更なる例としては、アルキルシクロヘキサン及びパラフィン系炭化水素が挙げられる(直鎖状、分枝状又は環状であってよい)。環状パラフィン系炭化水素は、単環式及び/又は多環式炭化水素(ナフテン系)であってよい。
別の実施形態では、有機油は天然油を含んでもよい。天然油は、石油由来でない油である。より具体的には、天然油は動物並びに/又は植物性物質(種子及びナッツを含む)に由来する。一般的な天然油としては、脂肪酸の混合物、特に、いくらかの不飽和脂肪酸を含有する混合物のトリグリセリドが挙げられる。あるいは、有機油は、エステル交換植物油、ボイル天然油、吹込天然油、又は濃化油(例えば加熱重合油)等の天然油の誘導体でもよい。天然油は種々の供給源に由来してよく、例えば、小麦胚芽、ヒマワリ、ブドウ種子、ヒマ、シア、アボカド、オリーブ、ダイズ、スイートアーモンド、ヤシ、菜種、綿実、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、クロフサスグリ、オオマツヨイグサ、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
上で例示した液体の代わりに、有機油はワックス等の固体であってもよい。有機油がワックスを含む場合、ワックスは、典型的には、30~100℃の融点を有する。ワックスは例えば、石油由来のワックス等の炭化水素ワックス、蜜蝋、ラノリン、タロー、カルナバ、キャンデリラ、トリベヘニン等の、カルボキシルエステルを含むワックス、又は、マンゴーバター、シアバター若しくはカカオバター等の、「バター」と呼ばれる、より柔らかいワックスを含む、植物種子、果物、ナッツ、若しくは穀粒由来のワックスであってよい。あるいは、ワックスはポリエーテルワックス又はシリコーンワックスであってよい。
特に、有機油が鉱油を含む場合、有機油と少なくとも成分(A)及び(B)とは、典型的には混和性であり、即ち、均一な混合物を形成する。対照的に、有機油が天然油を含む場合、有機油と少なくとも成分(A)及び(B)とは、一般に非混和性であり、即ち、不均一な混合物を形成する。
成分(A)、(B)、及び任意選択で成分(C)及び/又は(D)と、使用される場合、有機油及び/又はシリコーン油を組み合わせることによって形成される混合物は、不均一又は均一であり得る。有機油は、少なくとも成分(A)及び(B)、任意選択でまた存在する場合成分(C)及び(D)を可溶化するか、あるいは部分的に可溶化し得る。有機油は、成分(A)及び(B)が有機油に可溶化又は溶解するかどうかに応じ、担体又は溶媒と呼ばれることがある。混合物は、任意選択の混合又は撹拌を用い、任意の添加順序を含む任意の方法で形成され得る。
本方法は、混合物、水性媒体、及び界面活性剤を組み合わせてエマルジョンを形成することを更に含む。混合物は、典型的には、エマルジョンの水性媒体中の不連続相である。エマルジョンは、剪断の適用によって、例えば、混合、振盪、撹拌などによって形成され得る。エマルジョンの不連続相は、概して、水性媒体中に粒子として存在する。粒子は液体であり、概して、球状又は他の形状を有してよく、選択した成分、及びその相対量に基づいて、種々のサイズを有してよい。
水性媒体は水を含む。水は任意の供給源からのものであってよく、例えば、蒸留、逆浸透等により任意選択で精製されてよい。水性媒体は、以下に記載するように、水以外の1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。
界面活性剤は、様々な成分を乳化できるか、又はエマルジョンの安定性を改善できる任意の界面活性剤でもよい。例えば、界面活性剤は、1つ以上の、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び/又は両性界面活性剤、ジメチコンコポリオールなどの有機変性シリコーン:グリセロールのオキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エーテル;セテアレス-30、C12~15パレス-7などの脂肪アルコールのオキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エーテル;PEG-50ステアレート、PEG-40モノステアレートなどのポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;スクロースステアレート、スクロースココエート及びソルビタンステアレートなどの糖類エステル及びエーテル並びにそれらの混合物;DEAオレス-10ホスフェートなどのリン酸エステル及びそれらの塩;ジナトリウムPEG-5シトレートラウリルスルホサクシネート及びジナトリウムリシノールアミドMEAスルホサクシネートなどのスルホサクシネート;ナトリウムラウリルエーテルサルフェートなどのアルキルエーテルサルフェート;イセチオネート;ベタイン誘導体、並びにこれらの混合物を含んでもよい。
特定の実施形態では、界面活性剤にはアニオン性界面活性剤が含まれる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボキシレート(2-(2-ヒドロキシアルキルオキシ)酢酸ナトリウム))、アミノ酸誘導体(N-アシルグルタメート、N-アシルグリシネート、又はアシルサルコシネート)、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート及びそのオキシエチレン化誘導体、スルホネート、イセチオネート及びN-アシルイセチオネート、タウレート及びN-アシルN-メチルタウレート、スルホサクシネート、アルキルスルホアセテート、ホスフェート及びアルキルホスフェート、ポリペプチド、アルキルポリグルコシドのアニオン性誘導体(アシル-D-ガラクトシドウロネート)、及び脂肪酸石鹸、アルカリ金属スルホリシネート(sulforicinates);ヤシ油酸のスルホン化モノグリセリドなどの脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル;ナトリウムオレイリセチアネート(sodium oleylisethianate)などのスルホン化一価アルコールエステルの塩;オレイルメチルタウリドのナトリウム塩などのアミノスルホン酸のアミド;スルホン酸パルミトニトリルなどの脂肪酸ニトリルのスルホン化物;α-ナフタレンモノスルホン酸ナトリウムなどのスルホン化芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物;オクタヒドロアントラセンスルホン酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸アルカリ金属塩、ラウリル硫酸アンモニウム及びラウリル硫酸トリエタノールアミン;ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、アルキルアリールエーテル硫酸ナトリウム、及びアルキルアリールエーテル硫酸アンモニウムなどの、8個以上の炭素原子を有するアルキル基を有する硫酸エーテル;8個以上の炭素原子を有するアルキル基を1つ以上有するアルキルアリールスルホン酸塩;例えば、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、及びミリスチルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩によって例示されるアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩;CH3(CH2)6CH2O(C2H4O)2SO3H、CH3(CH2)7CH2O(C2H4O)3.5SO3H、CH3(CH2)8CH2O(C2H4O)8SO3H、CH3(CH2)19CH2O(C2H4O)4SO3H、及びCH3(CH2)10CH2O(C2H4O)6SO3Hをはじめとするポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;アルキルナフチルスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びアミン塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの又は他の実施形態では、界面活性剤にはカチオン性界面活性剤が含まれる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、様々な脂肪酸アミン及びアミド並びにそれらの誘導体、また脂肪酸アミン及びアミドの塩が挙げられる。脂肪族脂肪酸アミンの例としては、ドデシルアミン酢酸塩、オクタデシルアミン酢酸塩、及びタロー脂肪酸のアミンの酢酸塩、ドデシルアナリン(dodecylanalin)などの脂肪酸を有する芳香族アミンの同族体、ウンデシルイミダゾリンなどの脂肪族ジアミンから誘導された脂肪族アミド、ウンデシルイミダゾリンなどの脂肪族ジアミンから誘導された脂肪族アミド、オレイルアミノジエチルアミンなどの二置換アミンから誘導された脂肪族アミド、エチレンジアミンの誘導体、第四級アンモニウム化合物並びにその誘導体として、タロートリメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキサデシルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムヒドロキシドなどのジアルキルジメチルアンモニウムヒドロキシド、タロートリメチルアンモニウムヒドロキシドによって例示されるもの、ヤシ油、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルポリオキシエチレンココアンモニウムクロリド、及びジパルミチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、β-ヒドロキシエチルステアリルアミドなどのアミノアルコールのアミド誘導体、長鎖状脂肪酸のアミン塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの又は他の実施形態では、界面活性剤には非イオン性界面活性剤が含まれる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ラウリル、セチル、ステアリル、又はオクチルなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノレエート、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、エトキシル化トリメチルノナノール、ポリオキシアルキレングリコール変性ポリシロキサン界面活性剤、ポリオキシアルキレン置換シリコーン(レーキ型又はABn型)、シリコーンアルカノールアミド、シリコーンエステル、シリコーングリコシド、ジメチコンコポリオール、ポリオールの脂肪酸エステル、例えばソルビトール及びグリセリルモノ-、ジ-、トリ-及びセスキ-オレエート、及びステアレート、グリセリル及びポリエチレングリコールラウレート;ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(ポリエチレングリコールモノステアレート及びモノラウレートなど)、ソルビトールのポリオキシエチレン化脂肪酸エステル(ステアレート及びオレエートなど)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの又は他の実施形態では、界面活性剤には、両性界面活性剤が含まれる。両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸界面活性剤、ベタイン酸界面活性剤、トリメチルノニルポリエチレングリコールエーテル、及び2,6,8-トリメチル-4-ノニルオキシポリエチレンオキシエタノール(6EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)TMN-6として販売されている)等の11~15個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基を含有するポリエチレングリコールエーテルアルコール、2,6,8-トリメチル-4-ノニルオキシポリエチレンオキシエタノール(10EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)TMN-10として販売されている)、アルキレン-オキシポリエチレンオキシエタノール(C11~15第二級アルキル,9EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)15-S-9として販売されている)、アルキレンオキシポリエチレンオキシエタノール(C11~15第二級アルキル、15 EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)15-S-15として販売されている)、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(40EO)(Rohm and Haas Company(Philadelphia,Pa)によりTriton(登録商標)X405として販売されている)等の様々な量のエチレンオキシド単位を有するオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、非イオン性エトキシ化トリデシルエーテル(Emery Industries(Mauldin,S.C.)により、総合的な商品名Trycolとして入手可能)、ジアルキルスルホサクシネートのアルカリ金属塩(American Cyanamid Company(Wayne,N.J.)から総合的な商品名Aersolとして入手可能)、ポリエトキシ化第四級アンモニウム塩及び第一級脂肪族アミンのエチレンオキシド縮合生成物(Armak Company(Chicago,Illinois)から商品名Ethoquad,Ethomeen,又はArquadとして入手可能)、ポリオキシアルキレングリコール変性ポリシロキサン、N-アルキルアミドベタイン及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、グリシン誘導体、スルタイン、アルキルポリアミノカルボキシレート及びアルキルアンホアセテート、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらの界面活性剤はまた、他の供給元から様々な商標名で入手することができる。
当業者であれば、エマルジョン中の成分の相対量及びその調製方法を容易に最適化することができる。硬化性組成物がエマルジョンの形態である場合、エマルジョンは、反応性成分及び/又は触媒をそこから分離するための2つの部分又は複数の部分のエマルジョンであり得る。
組成物でコーティングされた基材を調製する方法は、基材上に組成物を適用する、即ち、配置することを含む。本方法は、基材上に硬化性組成物を硬化させ、その結果、基材上に剥離コーティングを形成させて、コーティングされた基材を得ることを更に含む。硬化は、高温、例えば、50℃~180℃、あるいは50℃~120℃、あるいは50℃~90℃で加熱し、コーティングされた基材を得ることによって実施され得る。当業者であれば、硬化性組成物の成分及び基材組成物又は構造体の材料の選択を含む様々な要因に応じて、適切な温度を選択することができる。
硬化性組成物は、任意の好適な方法で基材上に配置又は分配することができる。典型的には、硬化性組成物はウェットコーティング技術により、ウェット形態で適用される。硬化性組成物は、i)スピンコーティング;ii)ブラシコーティング;iii)ドロップコーティング;iv)スプレーコーティング;v)ディップコーティング;vi)ロールコーティング;vii)フローコーティング;viii)スロットコーティング;ix)グラビアコーティング;x)メイヤーバーコーティング;又はxi)i)~x)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ;によって適用することができる。典型的には、硬化性組成物を基材上に配置することにより、基材上にウェット付着物が生じ、次いで、これが硬化されて、硬化したフィルム、すなわち基材上の硬化性組成物から形成された剥離コーティングを含む、コーティングされた基材を得る。
基材は限定されず、任意の基材であってもよい。硬化したフィルムは、基材から分離可能であってもよく、又はその選択に応じて、物理的及び/又は化学的に基材に結合されていてもよい。基材は、ウェット付着物を硬化するための、一体型ホットプレート又は一体型若しくは独立型の炉にかけられてもよい。基材は、任意選択で、連続的又は非連続的な形状、サイズ、寸法、表面粗さ、及びその他の特性を有してもよい。あるいは、基材は、高温の軟化点温度を有してもよい。しかし、硬化性組成物及び方法は、そのようには限定されない。
あるいは、基材は、熱硬化性及び/又は熱可塑性であってもよいプラスチックを含んでもよい。しかし、基材は、ガラス、金属、セルロース(例えば、紙)、木材、厚紙、板紙、シリコーン、若しくはポリマー材料、又はこれらの組み合わせであるか、あるいは含んでいてもよい。
好適な基材の具体例としては、クラフト紙、ポリエチレンコーティングクラフト紙(PEKコーティング紙)、普通紙などの紙基材;ポリアミド(PA)等のポリマー基材;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィン;スチレン樹脂;ポリオキシメチレン(POM);ポリカーボネート(PC);ポリメチレンメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(PK);ポリエーテルケトン;ポリビニルアルコール(PVA);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリアリレート(PAR);ポリエーテルニトリル(PEN);フェノール樹脂;フェノキシ樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハン等のセルロース;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化樹脂;ポリスチレン型、ポリオレフィン型、ポリウレタン型、ポリエステル型、ポリアミド型、ポリブタジエン型、ポリイソプレン型、フルオロ型等の熱可塑性エラストマー;並びにこれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。
硬化性組成物、又はウェット付着物は、典型的には、ある時間にわたり、高温で硬化される。当該時間は、典型的には、硬化性組成物の硬化、すなわち架橋をもたらすのに十分である。時間は、0超~8時間、あるいは0超~2時間、あるいは0超~1時間、あるいは0超~30分、あるいは0超~15分、あるいは0超~10分、あるいは0超~5分、あるいは0超~2分であってもよい。時間は、使用される高温、選択される温度、所望のフィルム厚さ、及び硬化性組成物中の任意の水又はビヒクルの存在の有無を含む、様々な要因に応じて決定される。
硬化性組成物を硬化させるステップは、典型的には、0.1秒~50秒、あるいは1秒~10秒、あるいは0.5秒~30秒の滞留時間を有する。選択される滞留時間は、基材の選択、選択される温度、及びライン速度に応じて異なってもよい。本明細書で使用するとき、滞留時間は、硬化性組成物又はウェット付着物が高温にさらされる時間を指す。滞留時間は、硬化性組成物、ウェット付着物、又はその部分的に硬化した反応中間体が、典型的には硬化を開始する高温にさらされなくなった後であっても進行中の硬化がある場合があるので、硬化時間とは区別される。あるいは、コーティングされた物品は、オーブン内のコンベヤーベルト上で調製することができ、滞留時間は、オーブンの長さ(例えばメートル単位)をコンベヤーベルトのライン速度(例えば、メートル/秒)で割ることによって計算することができる。
当該時間は、硬化の反復、例えば、第1の硬化及び後硬化に細分でき、第1の硬化は、例えば1時間であり、後硬化は、例えば3時間である。高温は、このような反復において、室温を上回る任意の温度から、独立して選択されてもよく、各反復において同じであってもよい。
(I)ビヒクルの任意選択の存在及び選択に応じ、組成物の硬化はまた、乾燥のステップを含み得る。例えば、組成物が(I)ビヒクルが存在し、水を含むようなエマルジョンの形態である場合、硬化のステップはまた、典型的には、エマルジョンから水を乾燥又は除去して除去する。乾燥は、硬化と同時に行われてもよく、又は硬化と別個であってもよい。
フィルム及びコーティングされた基材の厚さ及び他の寸法に応じて、コーティングされた基材は、反復プロセスを介して形成することができる。例えば、第1の付着物を形成し、第1の高温に第1の時間にわたってさらして、部分的に硬化した付着物を得ることができる。次いで、第2の付着物を、上述の部分的に硬化した付着物上に配置し、第2の高温に第2の時間にわたってさらして、第2の部分的に硬化した付着物を得ることができる。部分的に硬化した付着物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間に更に硬化する。第3の付着物を、第2の部分的に硬化した付着物上に配置し、第3の高温に第3の時間にわたってさらして、第3の部分的に硬化した付着物を得ることができる。第2の部分的に硬化した付着物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間に更に硬化する。このプロセスを、コーティングされた物品を所望どおりに構築するために、例えば1~50回繰り返すことができる。部分的に硬化した層の複合体は、最終後硬化に供され、例えば、上述の高温及び時間にさらされる。各高温及び時間は独立して選択されてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。物品が反復プロセスを介して形成される時、各付着物は、独立して選択されてもよく、硬化性組成物において選択される成分、それらの量、又は両方が異なってもよい。あるいは、更に、各反復層は、このような反復プロセスにおいて部分的に硬化されるだけではなく、完全に硬化することができる。
あるいは、付着物は、ウェットフィルムを含んでもよい。あるいは、反復プロセスは、部分的に硬化した層の硬化状態に応じて、ウェットオンウェットであってもよい。あるいは、反復プロセスは、ウェットオンドライであってもよい。
基材上に硬化性組成物から形成されたフィルムを備えるコーティングされた基材は、フィルム及び基材の相対厚さ等の様々な寸法を有してもよい。フィルムは、最終使用用途に応じて変化し得る厚さを有する。フィルムは、0超~4,000μm、あるいは0超~3,000μm、あるいは0超~2,000μm、あるいは0超~1,000μm、あるいは0超~500μm、あるいは0超~250μmの厚さを有してもよい。しかし、他の厚さ、例えば、0.1~200μmも想到される。例えば、フィルムの厚さは、0.2~175μm;あるいは、0.5~150μm;あるいは、0.75~100μm;あるいは、1~75μm;あるいは、2~60μm;あるいは3~50μm、あるいは、4~40μmであってもよい。あるいは、基材がプラスチックである場合、フィルムは、0超~200μm、あるいは0超~150μm、あるいは0超~100μmの厚さを有してもよい。
所望であれば、フィルムは、その最終使用用途に応じて、更なる処理を受けることができる。例えば、フィルムは、酸化物付着(例えば、SiO2付着)、レジスト付着、及びパターニング、エッチング、化学ストリッピング、コロナ若しくはプラズマストリッピング、金属被覆、又は金属付着を受けることができる。このような更なる処理技術は、全般的に公知である。このような付着は、化学蒸着(低圧化学蒸着、プラズマ増強化学蒸着、及びプラズマ支援化学蒸着等)、物理蒸着、又は他の真空蒸着技術であってもよい。多くのこのような更なる処理技術は、高温、特に真空蒸着を伴い、優れた熱的安定性を考慮すると、これに対してフィルムは十分に適している。しかし、フィルムの最終用途に応じて、このような更なる処理によりフィルムを使用することができる。
コーティングされた基材は、多様な最終使用用途に使用することができる。例えば、コーティングされた基材は、コーティング用途、包装用途、接着剤用途、繊維用途、布地又は織物用途、建築用途、輸送用途、エレクトロニクス用途、又は電気用途に使用することができる。しかし、硬化性組成物は、コーティングされた基材を調製する以外の最終使用用途、例えばシリコーンゴムなどの物品の調製に使用することができる。
あるいは、コーティングされた基材は、例えば、アクリル樹脂型感圧接着剤、ゴム型感圧接着剤、及びシリコーン型感圧接着剤、並びにアクリル樹脂型接着剤、合成ゴム型接着剤、シリコーン型接着剤、エポキシ樹脂型接着剤、及びポリウレタン型接着剤などの任意の感圧接着剤を含む、テープ又は接着剤用の剥離ライナーとして使用することができる。基材の各主表面は、両面テープ又は接着剤のためにその上に配置されたフィルムを有し得る。
あるいは、硬化性組成物が、例えば剥離コーティング又はライナーを形成するために剥離コーティング組成物として配合される場合、剥離コーティング組成物は、例えば、成分を共に混合して一部分組成物を調製することによって調製され得る。しかし、使用時(例えば、基材に適用する直前)に部分が組み合わされるまで、SiH官能基(例えば、(C)有機ケイ素化合物)を有する成分及び(D)ヒドロシリル化反応触媒が別個の部分に貯蔵される多部分組成物として剥離コーティング組成物を調製することが望ましい場合がある。硬化性組成物が剥離コーティング組成物である場合、剥離コーティング組成物は、上記のようにコーティングされた基材を形成するために使用でき、剥離コーティングは、基材、例えば、基材の表面に剥離コーティング組成物を適用及び硬化することによって形成される。
例えば、多部分硬化性組成物は、
(A)反応生成物、(B)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を含むオルガノポリシロキサン、及び(D)ヒドロシリル化反応触媒、並びに任意選択で存在する場合、(F)固定添加剤、及び(I)ビヒクルのうちの1つ以上を含むベース部分という(A)部と、
(C)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、並びに任意選択で存在する場合、(F)固定添加剤及び/又は(I)ビヒクルを含む硬化剤部分という(B)部とを含む。使用される場合、(E)阻害剤は、(A)部、(B)部、又はその両方に添加され得る。(A)部と(B)部とは、1:1~30:1、あるいは1:1~10:1、あるいは1:1~5:1、あるいは1:1~2:1の重量比(A):(B)で組み合わせてもよい。(A)部及び(B)部は、例えば、剥離コーティング組成物を調製するために部を組み合わせる方法、剥離コーティング組成物を基材に適用する方法、及び剥離コーティング組成物を硬化する方法についての説明書と共に、キットに提供することができる。
あるいは、(F)固定添加剤が存在する場合、(A)部又は(B)部のいずれかに組み込むか、別個の(第3の)部分に追加することができる。
剥離コーティング組成物は、スプレー、ドクターブレード、ディッピング、スクリーン印刷などの任意の簡便な手段によって、又はロールコーター、例えば、オフセットウェブコーター、キスコーター、若しくはエッチングされたシリンダーコーターによって基材に適用することができる。
本発明の剥離コーティング組成物は、上述のもの等の任意の基材に適用することができる。あるいは、剥離コーティング組成物は、ポリマーフィルム基材、例えばポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリスチレンフィルムに適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、プラスチックコーティング紙、例えば、ポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又はクレーコーティングクラフトをはじめとする、紙基材に適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、金属箔基材、例えばアルミニウム箔に適用することができる。
特定の実施形態では、コーティングされた基材を調製する方法は、基材上に剥離コーティング組成物を適用又は配置する前に、基材を処理することを更に含んでもよい。基材の処理は、プラズマ処理又はコロナ放電処理等の任意の簡便な手段によって実施することができる。あるいは、基材は、プライマーを適用することによって処理することができる。特定の例では、剥離コーティング組成物から剥離コーティングを基材上に形成する前に基材が処理される場合、剥離コーティングのアンカーは改善され得る。
剥離コーティング組成物が(I)ビヒクルを含む場合、この方法は、(I)ビヒクルを除去することを更に含み得、それは、(I)ビヒクルの全部又は一部を除去するのに十分な時間50℃~100℃で加熱するなどの任意の従来の手段によって実施され得る。方法は、剥離コーティング組成物を硬化して、基材の表面上に剥離コーティングを形成することを更に含んでもよい。硬化は、100℃~200℃で加熱することなどの任意の従来の手段によって実施することができる。
製造コーター条件下で、硬化は、120℃~150℃の空気温度で、1秒~6秒、あるいは1.5秒~3秒の滞留時間で行うことができる。°°加熱は、オーブン、例えば、空気循環オーブン若しくはトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダの周りにコーティングされたフィルムを通すことによって行うことができる。
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。実施例で使用される特定の成分を下の表1に記載し、続いて、実施例でも使用される特性決定及び評価の手順を記載する。
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)スペクトル法
核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、ケイ素を含まない10mmのチューブ及びCDCl3/Cr(AcAc)3溶媒を使用して、NMR BRUKER AVIII(400MHz)上で得る。29Si-NMRスペクトルの化学シフトを、内部溶媒共鳴を基準とし、テトラメチルシランに対して報告する。
ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation chromatography:GPC)
ゲル浸透クロマトグラフィー分析は、示差屈折計、オンライン示差粘度計、低角度光散乱(LALS:15°及び90°の検出角度)、及びカラム(2 PL Gel Mixed C、Varian)から構成される三重検出器を備えたAgilent 1260 Infinity IIクロマトグラフ上で実施する。移動相として、トルエン(HPLC grade、Biosolve)を、流速1mL/分で使用する。
X線蛍光(XRF)
X線蛍光(XRF)は、Oxford Instruments Lab-X3500ベンチトップXRFアナライザーで実施される。
ミストレベル評価(MLE)
ミスト評価は、換気システムを備えた密閉チャンバー内に配置された特注の2ロールコータを含むミスト評価システムを使用して行われる。コータは、ゴム製の底部ロール(ネオプレン)の上に積み重ねられた構成で配置されたトップロール(クロム)を含み、試料パンの上に配置され、モータによって駆動される(動作中、毎分1000メートルの回転)。各ロールは、直径6インチ及び幅12インチである。換気システムは、空気を筺体の背壁に引き込むように構成され、空気流(マグネットゲージでの0.20~0.25インチの水(すなわち、0.05~0.062kPa)の速度)を測定/監視するための、筺体の天井に位置決めされたマグネチックゲージ、ミストを収集するための、コータのトップロール(6インチ)の中心の上方に位置決めされた2つのミスト収集管、及び各ミスト収集管に接続されたエアロゾルモニタ(DustTrak8530、5秒毎にミストレベルを記録する)を含む。
試料(600g)を試料パンに配置し、これを底部ロールの下方に挿入して収集し、フィルムとしてトップロールに移送する。コータを6分間動作させ、そこから発生するミストをミスト収集管で収集し、エアロゾルモニタで測定する。120秒間~360秒の間に得られたミストレベルが平均化され、試料のミスト値で報告される。
ミストレベル及び硬化性能工業評価(MLIE)
ミスト評価及び硬化性能評価は、6ロールコーティングヘッドをベースにした工業用パイロットラインで実施され、ここで5つのローラは、クロム鋼とゴムとのスリーブロールが交互に積み重ねられた構成で、2つの第1底部ロールが水平方向に整列し、コーティングバスが保持される「ニップ」を形成し、残りのロールは垂直に整列し、コーティングが最終的に2つのトップロール間の「ニップ」で紙の表面に移されるまで、あるロールから次のロールに移すようにする。各ロールは、独立した圧力設定を使用して共にプレスされ、それぞれが異なる速度に設定された異なるモータによって駆動されるため、コーティングが最終的に紙の表面に適用されるまで、コーティングの厚さが段階的に減少する。ミスト収集固定管は、最後の2つのコーティングローラの前面外側ニップから20cm未満に配置され、エアロゾルモニタDustrak8530に接続される。最後のトップ2つのローラーは、ミストレベルが記録され、平均化されてミスト値(mg/m3)として報告されるミスト評価期間中、1,000m/分間など、所望の速度に近い速度で回転するように設定される。剥離コーティング配合物の硬化性能は、以下に記載される抽出可能分百分率試験によって評価される。
硬化性能:抽出可能分百分率
試料組成物の硬化性能は、抽出可能分パーセント値(抽出可能分%)を決定することによって評価する。具体的には、試料組成物をコーティングし、基材(グラシン紙)上で硬化させて、コーティングされた基材を形成し、直ちに、3つの試料ディスクに切断する(ダイカッター、1.375インチ(3.49cm))。この試料ディスクは、混入及び/又は損傷を最小限に抑えるためにピンセットのみによって取り扱う。各試料ディスクを、XRFで分析して、初期コーティング重量(Wi
s)を決定し、溶媒(メチルイソブチルケトン、40mL)を入れた個々のボトル(100mL、蓋で覆う)内に入れ、実験台で30分間静置浸漬する。次いで、各試料ディスクをボトルから取り出し、コーティングした面を上にしてきれいな表面(ティッシュペーパ)に置き、(吸い取り/拭き取りせずに)残留溶媒を蒸発させ、XRFで分析して最終コーティング重量(Wf
s)を決定する。各試料の抽出可能分%は、溶媒浸漬からのコーティング重量の変化パーセントであり、すなわち、式[(Wi
s-Wf
s)/Wi×100%)を使用して計算する。抽出可能分%は、コーティングされた基材から抽出可能な試料組成物の非硬化成分(例えば、非架橋シリコーン)の量を示し、例えば、抽出可能分%が低いほど、硬化性能が高い/より良いことを示す。
硬化性能:アンカー(ROR%)
アンカー指数を介して、すなわち、耐摩擦パーセント(ROR%)値を決定することによって、試料組成物のアンカーを評価する。具体的には、試料組成物をコーティングし、基材(グラシン紙)上で硬化させて、コーティングされた基材を形成する。硬化直後に、コーティングされた基材を、2つの試料ディスクに切断し(ダイカッター、1.375インチ(3.49cm))、各試料ディスクをXRFで分析して、初期コーティング重量(Wi
a)を決定する。次に、各試料ディスクを、テーバータイプの摩耗試験(例えば、ASTM D4060-19、「耐摩耗性の標準試験方法」など)と同様の方法で、自動摩耗装置を使用して負荷下のフェルト(1.9kg)で摩耗させ、続いてXRFで分析して最終コート重量(Wf
a)を決定する。各試料のROR%を、式[Wf
s/Wi
s]× 100%)を使用して計算する。ROR%は、コーティングが基材にアンカーしている強度を示し、例えば、ROR%が高いほど、高い/良好なアンカー、ROR%が高いほど良好であることを示す。
調製例1-15:
以下の表2は、(1)分岐状オルガノポリシロキサンと(2)有機ケイ素化合物との(A)反応生成物の調製を伴う、調製例1~15で使用される成分の同定及び量を示す。調製例1~15のそれぞれにおいて、(A1)分岐状オルガノポリシロキサン及び特定の(A2)有機ケイ素化合物を、機械的撹拌機を介してプラスチックボトル内で十分に混合し、混合物が得られる。(D1)触媒を溶媒1に配置し、触媒溶液が得られる。室温で激しく撹拌しながら触媒溶液を混合物にゆっくりと加え、反応混合物が得られる。反応混合物を20分間撹拌し、ベントオーブン内にて40℃で12時間維持する。調製例1~15のそれぞれについて、透明で均一な粘性流動性生成物が100%の収率で得られる。
以下の表3は、利用可能な場合、29Si-NMRによる、調製例1~15で調製された各反応生成物の平均式を示す。表3では、MCH2CH2は、特定の(A2)有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子と反応する(A1)分岐状オルガノポリシロキサンのケイ素結合ビニル基からのケイ素結合エチレン基を含むMシロキシ単位を示す。MViは、特定の(A2)有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子と反応しなかった(A1)分岐状オルガノポリシロキサンからのケイ素結合ビニル基を含むMシロキシ単位を示す。MOZは、ケイ素結合ヒドロキシル基又はアルコキシ基(ZはH又はアルキル)を含むMシロキシ単位を示し、それは、(A1)分岐状オルガノポリシロキサン中にその形成から存在していたものであり、反応生成物に残っている。Dはジメチルシロキシ単位を示す。
実施例1~11及び比較例1~3:塩基組成物
剥離コーティングを形成するための様々な塩基組成物が調製される。実施例1~11は、調製例1~9で調製された(A)反応生成物を含む。調製例1からの(A)反応生成物は、以下の表4ではP.E.1と呼ばれる。調製例2からの(A)反応生成物は、以下の表4ではP.E.2などと呼ばれ、以下同様である。表4では、C.E.は比較例を示す。以下の表4の全ての値はグラム単位である。
表5は、上記の手順に従って測定された、実施例1~11及び比較例1~3の各塩基組成物のミストレベル評価(MLE)を示す。
実施例12~15及び比較例4~5:コーティングされた基材
硬化性組成物が調製され、コーティングされた基材を調製するために使用される。特に、各硬化性組成物は、基材(グラシン紙)上にコーティングされ、パイロットコータ(G-001,Milliken Engineering INC)を使用することによってコーティングされた基材を形成するために硬化され(出口ウェブオーブン温度:182℃、滞留時間:10秒間)、その試料は、即時抽出可能分%及び即時ROR%について評価される。以下の表6は、実施例12~15及び比較例4~5の硬化性組成物を形成するための成分及びその相対量を示す。実施例12~15及び比較例4~5の各硬化性組成物において、白金含有量は、(D1)に基づいて60ppmであり、(E1)と白金含有量とのモル比は40:1であり、SiHとViとのモル比は2:1である。
以下の表7は、実施例12~15及び比較例4~5で形成されたコーティングされた基材に関連する物理的特性を示す。7日間の剥離力(7dRF)は、様々な速度、つまり0.3m/分間(MPM)、10m/分間(MPM)、100m/分間(MPM)、及び300m/分間(MPM)で測定された。7dRFは、RT及び50%RHで、40ポンドで7日間エージングされたTesa 7475標準テープとラミネートした後、ImassSP-2100及びZPE-1100W剥離試験システムを介して試験された。
実施例16~21及び比較例6~7:コーティングされた基材
硬化性組成物が調製され、コーティングされた基材を調製するために使用される。特に、各硬化性組成物は、ミストレベル及び硬化性能工業評価(MLIE)について上記に記載されたプロセスに従って基材上にコーティングされる。以下の表8は、実施例16~21及び比較例6~7の硬化性組成物を形成するための成分及びその相対量を示す。実施例16~21は、調製例1、8、9、又は10で得られた(A)反応生成物を含む。調製例8からの(A)反応生成物は、以下の表8ではP.E.8と呼ばれる。調製例10からの(A)反応生成物は、以下の表8ではP.E.10などと呼ばれ、以下同様である。表8では、C.E.は比較例を示す。以下の表8の全ての値はグラム単位である。
表9は、実施例16~21及び比較例6~7のそれぞれについて、上記の手順に従って様々なライン速度で測定されたミストレベル工業評価(MLIE)値及び硬化性能(抽出可能分%)を示す。
用語の定義及び使用
仕様で使用される略語の定義は、以下の表8にある。
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を包含する。
「アルキル」は、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はiso-プロピルを含む)、ブチル(iso-ブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチルを含む)、ペンチル(iso-ペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチルを含む);並びにn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、及びn-デシル、並びに6個以上の炭素原子を有する分岐状飽和一価炭化水素基が挙げられる。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は、1~18個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有し得る。
「アラルキル」及び「アルカリール」は、それぞれ、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を指す。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、トリル、キシリル、ジメチルフェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、及びフェニルブチルが挙げられる。アラルキル基は、少なくとも7個の炭素原子を有する。単環式アラルキル基は7~12個の炭素原子、あるいは7~9個の炭素原子、あるいは7~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アラルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有していてよい。
「アルケニル」は、二重結合を有する、分岐状又は非分岐状一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
「アルキニル」は、三重結合を有する、分岐状又は非分岐状一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル及びプロピニルが挙げられる。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
「アリール」とは、環炭素原子からの水素原子の除去により、アレーンから誘導された炭化水素基を意味する。アリールは、フェニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、あるいは10~14個の炭素原子、あるいは12~14個の炭素原子を有し得る。
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は、単環式でも多環式でもよく、例えば、2環式又は2個を超える環を有するものでもよい。2環式炭素環は、縮合環、橋かけ環又はスピロ多環式環でもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式炭素環は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は、飽和(例えば、シクロペンタン又はシクロヘキサン)、部分不飽和(例えば、シクロペンテン又はシクロヘキセン)、又は完全不飽和(例えば、シクロペンタジエン又はシクロヘプタトリエン)であってもよい。
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式シクロアルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。
「一価炭化水素基」は、水素原子及び炭素原子からなる一価の基を意味する。一価炭化水素基としては、上述で定義したアルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキル基が挙げられる。
「一価ハロゲン化炭化水素基」とは、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、式としてはハロゲン原子で置換されている一価炭化水素基を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基(又はハロアルキル基)としては、水素原子のうちの1つ以上が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基及びフッ素化シクロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル(CF3)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル);並びに塩素化アルキル基及び塩素化シクロアルキル基(例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチル)が挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、クロロベンジル及びフルオロベンジルが挙げられる。
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。
剥離コーティングを形成するための組成物が開示される。この組成物は、(1)分岐状オルガノポリシロキサンと、(2)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との、ヒドロシリル化触媒の存在下での(A)反応生成物を含む。
(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、式(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(R1
2SiO2/2)z(SiO4/2)1.0(ZO1/2)w
[式中、各R1は、1~32個の炭素原子を有する独立して選択されたヒドロカルビル基であり、但し、各分子中の平均少なくとも2つのR1は独立してエチレン性不飽和基であり、各R2は、R1、アルコキシ基、及びヒドロキシル基から独立して選択され、Zは独立してH又はアルキル基であり、yは1~3の整数であり、下付き文字xによって示される各シロキシ単位において独立して選択され、下付き文字xは0.05~4であり、下付き文字zは10~3,000であり、下付き文字wは0~3である]を有する。
概して、R1に好適なヒドロカルビル基は、独立して、直鎖状、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせであり得る。環状ヒドロカルビル基は、アリール基、及び飽和又は非共役環状基を包含する。環状ヒドロカルビル基は、独立して、単環式又は多環式であってもよい。直鎖状及び分岐状ヒドロカルビル基は独立して、飽和であっても不飽和であってもよい。直鎖状及び環状ヒドロカルビル基の組み合わせの一例は、アラルキル基である。ヒドロカルビル基の全般的な例としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロカーボン基等、並びに誘導体、修飾体、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘキサデシル、オクタデシル並びに6~18個の炭素原子を有する分岐状飽和炭化水素基が挙げられる。好適な非共役環状基の例としては、シクロブチル基、シクロヘキシル基、及びシシロヘプチル基が挙げられる。好適なアリール基の例としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、及びシクロヘキセニル基が挙げられる。好適な一価ハロゲン化炭化水素基(即ち、ハロ炭素基)の例としては、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基の例としては、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチル基、並びにそれらの誘導体が挙げられる。ハロゲン化アリール基の例としては、1つ以上の水素原子が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアリール基が挙げられる。ハロゲン化アリール基の具体例としては、クロロベンジル基及びフルオロベンジル基が挙げられる。
特定の実施形態では、各R1は、1~32個、あるいは1~28個、あるいは1~24個、あるいは1~20個、あるいは1~16個、あるいは1~12個、あるいは1~8個、あるいは1~4個、あるいは1個の炭素原子を有するアルキル基から、及び2~32個、あるいは2~28個、あるいは2~24個、あるいは2~20個、あるいは2~16個、あるいは2~12個、あるいは2~8個、あるいは2~4個、あるいは2個の炭素原子を有するエチレン性不飽和基(即ち、アルケニル基及び/又はアルキニル基)から独立して選択される。「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する非環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、ビニル基、アリル基、及びヘキセニル基が挙げられる。「アルキニル」は、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する非環状、分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。その具体例としては、エチニル、プロピニル、及びブチニル基が挙げられる。エチレン性不飽和基の様々な例としては、CH2=CH-、CH2=CHCH2-、CH2=CH(CH2)4-、CH2=CH(CH2)6-、CH2=C(CH3)CH2-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)CH2-、H2C=CHCH2CH2-、H2C=CHCH2CH2CH2-、HC≡C-、HC≡CCH2-、HC≡CCH(CH3)-、HC≡CC(CH3)2-、及びHC≡CC(CH3)2CH2-が挙げられる。典型的には、R1がエチレン性不飽和基である場合、エチレン性不飽和はR1の末端にある。当技術分野で理解されるように、エチレン性不飽和は脂肪族不飽和と呼ばれることがある。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンでは、各分子中のR1の少なくとも2つは、独立してエチレン性不飽和基である。
特定の実施形態では、エチレン性不飽和基であるR1以外の(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の各R1は、独立して選択されたアルキル基である。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のR1の少なくとも2つがビニル基(エチレン性不飽和基として)である場合、残りのR1はそれぞれメチル基であり、下付き文字yが3である場合、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、ケイ素結合ビニル基を含む少なくとも1つのMシロキシ単位が存在する限り、以下のMシロキシ単位の任意の組み合わせを含み得る:((CH3)3SiO1/2)、((CH3)2(CH=CH2)SiO1/2)、((CH3)(CH=CH2)2SiO1/2)、及び((CH=CH2)3SiO1/2)。上記の例は単なる例示であり、任意のメチル基を他の任意のアルキル又は更にヒドロカルビル基で置き換えることができ、任意のビニル基を任意の他のアルケニル又はエチレン性不飽和基で置き換えることができることは理解される。
R2は、R1、アルコキシ基、及びヒドロキシル基から独立して選択される。典型的には、各R2はR1から独立して選択される。しかし、当技術分野で理解されるように、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、本質的に、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンの形成から生じるある程度のケイ素結合ヒドロキシル及び/又はアルコキシ基を含み得、それは、典型的には、共加水分解/縮合によって得られる。従って、R2のうちの1つ以上は、そのようなアルコキシ基又はヒドロキシル基が典型的には(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンに意図的に含まれない場合であっても、アルコキシ基又はヒドロキシル基であり得る。更に、本開示及び上記の平均式の目的のために、完全に縮合又はキャップされないケイ素結合ヒドロキシル基を含むシロキシ単位は、Qシロキシ単位と見なされ得る(ケイ素結合ヒドロキシル基を含むケイ素原子がケイ素-炭素結合を含まない限り)。このようなケイ素結合ヒドロキシル基は、縮合してQシロキシ単位を生じ得る。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、特定の実施形態では、最大4重量百分率、あるいは最大3重量百分率、あるいは最大2重量百分率のヒドロキシル基を含み得る。
下付き文字yは、0~3、あるいは1~3、あるいは2~3、あるいは3の整数である。更に、下付き文字yは、下付き文字xによって示される各Mシロキシ単位において独立して選択される。従って、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、例えば、yが3である場合、(R1
3SiO1/2)、及びyが2である場合、(R1
2R2SiO1/2)によって表されるMシロキシ単位を含み得る。典型的には、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の全てのMシロキシ単位の過半数、即ち、少なくとも50モル%、あるいは少なくとも60モル%、あるいは少なくとも70モル%、あるいは少なくとも80モル%、あるいは少なくとも90モル%、あるいは少なくとも95モル%はR1
3SiO1/2)で表される。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の全てのMシロキシ単位は、上記で定義された下付き文字xの目的で集まる。
様々な実施形態では、下付き文字xは、0.05~0.99、あるいは0.10~0.95、あるいは0.15~0.90、あるいは0.20~0.85、あるいは0.25~0.80、あるいは0.30~0.75である。特定の実施形態では、下付き文字xは、0.50~0.80、あるいは0.55~0.75、あるいは0.60~0.75、あるいは0.65~0.75、あるいは0.70~0.75である。別の特定の実施形態では、下付き文字xは0.05~0.85である。更に別の特定の実施形態では、下付き文字xは、0.40~0.90、あるいは0.70~0.85である。あるいは、下付き文字xは1より大きくてもよい。例えば、他の実施形態では、下付き文字xは、1.05~4、あるいは1.05~3、あるいは1.05~2.5である。
下付き文字wは、0~3、あるいは0~2、あるいは0~1、あるいは、0~0.9、あるいは0~0.8、あるいは0~0.7、あるいは0~0.6、あるいは0~0.5、あるいは0~0.4、あるいは0~0.3、あるいは0~0.2、あるいは0~0.1であり、(A1)分岐状オルガノポリシロキサンのSiOZ含有量を表す。SiOZ含有量は、SiOH(式中、ZはH、又はシラノール基)、又はケイ素結合アルコキシ(式中、Zはアルキル)である。例えば、「(SiO4/2)(ZO1/2)」は、単一の酸素を介して「Z」基に結合したケイ素原子を有するQ型基を指す。NMRの命名法では、このような「(SiO4/2)(ZO1/2)」部分は依然としてQシロキシ単位と見なされる。Zがアルキル基である場合、アルキル基は、典型的には、C1~C8、あるいはC1~C6、あるいはC1~C4、あるいはC1~C2、あるいはC1(即ちメチル)アルキル基である。このような部分をQ単位と見なすと、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは式(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(R1
2SiO2/2)z(SiO4/2)で表され得る。
Dシロキシ単位、即ち(R1
2SiO2/2)単位は、典型的には、以下に説明するように、環状シロキサンの開環と重合から形成される。典型的には、Dシロキシ単位は、2つのQシロキシ単位の間にあるのではなく、Qシロキシ単位とMシロキシ単位との間に存在する。任意の所与の直鎖状シロキサン部分の各特定のQ及びMシロキシ単位の間に存在するDシロキシ単位の数は、それぞれの場合に異なり得る。上記の式は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の位置に関係なく、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中に存在する全てのD単位を表す。特定の実施形態では、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中の全てのQシロキシ単位がDシロキシ単位に結合するわけではない。代わりに、多数のQシロキシ単位を(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンにクラスター化し得る。
特定の実施形態では、zは、10~3,000、あるいは10~2,000、あるいは10~1,000、あるいは10~750、あるいは10~500、あるいは50~500、あるいは100~500、あるいは110~475、あるいは120~450、あるいは130~425、あるいは140~400、あるいは150~375、あるいは160~350、あるいは170~325、あるいは180~300、あるいは190~275、あるいは200~250である。他の実施形態では、zは10~3000、あるいは250~2500、あるいは500~1,000である。
下付き文字x及びzは、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中に存在するQシロキシ単位の数に基づいて正規化される。従って、下付き文字x及びzは、Qシロキシ単位含有量に対するモル比である。例えば、下付き文字xが1未満の場合、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のMシロキシ単位はQシロキシ単位よりも少なくなる。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンの式がQシロキシ単位の含有量を1に正規化するという事実は、((A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンが1つのQ単位のみを含むことを意味しない。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、共にクラスター化又は結合された複数のQシロキシ単位を含み得、及び、典型的にはそれを含む。
特定の実施形態では、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、
(i)式(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(SiO4/2)1.0(ZO1/2)w[式中、各R1は独立して選択され、上記で定義され、各R2は独立して選択され、上記で定義され、各Zは独立して選択され、上記で定義され、yは、下付き文字xによって示される上記で定義された各シロキシ単位において独立して選択され、下付き文字xは上で定義され、下付き文字wは上記で定義される]を有するシリコーン樹脂と、
(ii)式(R1
2SiO2/2)n[式中、各R1は独立してヒドロカルビル基であり、nは3~15の整数である]を有する環状シロキサンとの、重合触媒の存在下での反応生成物である。
(i)シリコーン樹脂は、MQ樹脂と呼ばれることもあり、Mは(R0
3SiO1/2)シロキシ単位を示し、式中、Qは(SiO4/2)シロキシ単位を示し、R0はケイ素結合置換基を示す。そのようなMQ樹脂は当技術分野で知られ、溶媒中に配置されない限り、しばしば固体(例えば、粉末又はフレーク)形態である。(i)シリコーン樹脂の平均式は(R1
yR2
3-ySiO1/2)x(SiO4/2)1.0(ZO1/2)wであり、[M]x[Q]と表記することもできる。しかし、典型的には、当技術分野で使用される命名法では、Mシロキシ単位はトリメチルシロキシ単位であるが、(i)シリコーン樹脂中のR1及びR2がメチル基である必要はない。(i)シリコーン樹脂では、下付き文字xは、Qシロキシ単位のモル数を1に正規化した場合の、Mシロキシ単位とQシロキシ単位とのモル比を示す。xの値が大きいほど、(i)シリコーン樹脂の架橋密度は低くなる。xの値が減少すると、Mシロキシ単位の数が減少し、従って、Mシロキシ単位を末端とすることなく、より多くのQシロキシ単位が網目状になるため、逆も当てはまる。(i)シリコーン樹脂の式がQシロキシ単位の含有量を1に正規化するという事実は、(i)シリコーン樹脂が1つのQ単位のみを含むことを意味するものではない。(i)シリコーン樹脂は、共にクラスター化又は結合された複数のQシロキシ単位を含み得る。更に、本開示及び上記の平均式の目的のために、完全に縮合又はキャップされていないケイ素結合ヒドロキシル基を含むシロキシ単位は、Qシロキシ単位と見なされ得る(ケイ素結合ヒドロキシル基を含むケイ素原子がケイ素-炭素結合を含まない限り)。このようなケイ素結合ヒドロキシル基は、縮合してQシロキシ単位を生じ得る。従って、以下に説明するように、(i)シリコーン樹脂を本体化した後であっても、下付き文字xの値、及びMとQとのシロキシ単位の比率は、Qシロキシ単位中に存在する任意の残留ケイ素結合ヒドロキシル基が更に縮合した後も同じままである。例えば、(i)シリコーン樹脂は、特定の実施形態では、最大4重量百分率、あるいは最大3重量百分率、あるいは最大2重量百分率のヒドロキシル基を含み得る。(i)シリコーン樹脂は、得られた(A1)分岐状オルガノポリシロキサンよりも高レベルのSiOZ含有量を含み得る。
下付き文字yは、0~3、あるいは1~3、あるいは2~3、あるいは3の整数である。更に、下付き文字yは、下付き文字xによって示される各Mシロキシ単位において独立して選択される。従って、(i)シリコーン樹脂は、例えば、yが3である場合は(R1
3SiO1/2)、yが2である場合は(R1
2R2SiO1/2)で表されるMシロキシ単位を含み得る。典型的には、(i)シリコーン樹脂中の全てのMシロキシ単位の過半数、即ち少なくとも50モル%、あるいは少なくとも60モル%、あるいは少なくとも70モル%、あるいは少なくとも80モル%、あるいは少なくとも90モル%、あるいは少なくとも95モル%は、(R1
3SiO1/2)によって表される。(i)シリコーン樹脂中の全てのMシロキシ単位は、上記で定義された下付き文字xの目的で集まる。
特定の実施形態では、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンは、(i)シリコーン樹脂と(ii)式(R1
2SiO2/2)n[式中、R1は上記で定義され、nは3~15の整数である]を有する環状シロキサンとの反応生成物である。環状シロキサンでは、各R1は、典型的には、独立して選択されたアルキル基であり、最も典型的には、各R1は、メチル基である。各R1がメチル基である場合、(ii)環状シロキサンは、nに基づいて呼ばれ得る。例えば、nが3である場合、(ii)環状シロキサンはD3と呼ばれ、nが4である場合、(ii)環状シロキサンはD4と呼ばれ、nが5である場合、(ii)環状シロキサンはD5と呼ばれるなどである。しかし、他の実施形態では、(ii)環状シロキサンの少なくとも1つのR1は、ケイ素結合エチレン性不飽和基、即ち、ケイ素結合アルケニル又はアルキニル基である。例えば、(ii)環状シロキサンの少なくとも1つのR1がケイ素結合エチレン性不飽和基である場合、(ii)環状シロキサンは、例えば、メチルビニルシロキシ単位、又はジビニルシロキシ単位を含み得る。(ii)環状シロキサンの各Dシロキシ単位は、メチルビニルシロキシ単位がジメチルシロキシ単位と組み合わせて存在し得るように独立して選択される。
下付き文字nは、3~15、あるいは3~12、あるいは3~10、あるいは3~8、あるいは3~6、あるいは4~5である。更に、(ii)環状シロキサンは、異なる環状シロキサンのブレンド、例えば、nが4であるものと、nが5であるものとのブレンドを含み得る。特定の実施形態では、(ii)環状シロキサンは、シクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、及びそれらの組み合わせの群から選択される。説明のみを目的として、デカメチルシクロペンタシロキサン及びオクタメチルシクロテトラシロキサンの化学構造を以下に示す。
(ii)環状シロキサンは、典型的には、100~750g/mol、あるいは150~500g/mol、あるいは275~375g/molの分子量を有する。
(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとは、重合触媒の存在下で反応する。典型的には、重合触媒は、(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとの間の反応が酸触媒反応又は塩基触媒反応のいずれかであるよう、酸又は塩基である。従って、特定の実施形態では、重合触媒は、強酸触媒、強塩基触媒、及びそれらの組み合わせの群から選択され得る。強酸触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸などであり得る。重合触媒は、典型的には、強塩基触媒である。典型的には、この強塩基触媒はホスファゼン触媒であるが、ホスファゼン塩基触媒の代わりに、KOHなどの他の強塩基触媒を使用し得る。
ホスファゼン触媒は、概して少なくとも1つの-(N=P<)-単位((即ち、ホスファゼン単位))を含み、通常、最大10個のそのようなホスファゼン単位を有するオリゴマーであり、例えば、平均1.5から最大5のホスファゼン単位を有する。ホスファゼン触媒は、例えば、クロロホスファゼン(ホスホニトリルクロリド)などのハロホスファゼン、酸素含有ハロホスファゼン、ホスファゼニウム塩などのホスファゼンのイオン性誘導体、特にパークロロオリゴホスファゼニウム塩などのハロゲン化ホスホニトリルのイオン性誘導体、又はその部分的に加水分解された形態である。
特定の実施形態では、重合触媒は、ホスファゼン塩基触媒を含む。ホスファゼン塩基触媒は、当技術分野で知られる任意のものでもよいが、典型的には、以下の化学式
((R3
2N)3P=N)t(R3
2N)3-tP=NR3
[式中、各R3は、水素原子、R1及びそれらの組み合わせの群から独立して選択され、tは1~3の整数である]を有する。R3がR1である場合、R3は、典型的には、1~20個、あるいは1~10個、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。任意の(R3
2N)部分の2つのR3基は、同じ窒素(N)原子に結合し、連結し、好ましくは5又は6個のメンバーを有する複素環を完成させることができる。
あるいは、ホスファゼン塩基触媒は塩であり得、以下の代替化学式
[((R3
2N)3P=N)t(R3
2N)3-tP=N(H)R3]+[A-]、又は
[((R3
2N)3P=N)s(R3
2N)4-sP]+[A-]
[式中、各R3は独立して選択され、上記で定義され、下付き文字tは上記で定義され、下付き文字sは1~4の整数であり、[A]はアニオンであり、典型的には、フルオリド、ヒドロキシド、シラノレート、アルコキシド、カーボネート、バイカーボネートの群から選択される]のうちの1つを有し得る。一実施形態では、ホスファゼン塩基は水酸化アミノホスファゼニウムである。
(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとの、重合触媒の存在下での反応は、(ii)環状シロキサンの開環及び(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンへのDシロキシ単位の取り込みをもたらす。使用される(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとの相対量は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のDシロキシ単位の所望の含有量の関数であり、それは以下に記載される。(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンはQシロキシ単位に帰属する分岐を含み、直鎖状ではないが、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサン中のDシロキシ単位の数は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンの重合度(DP)と呼ばれ得る。
特定の実施形態では、(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとは、溶媒の存在下で、高温、例えば、125~175℃で反応する。好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、若しくはキシレン、及び/又は脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンが挙げられる。あるいは、溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンであってもよい。ビス(トリメチルシリル)水素リン酸塩などの錯化剤を反応後に使用し、重合触媒の活性を阻害し得る。当業者は、その選択及び反応条件の関数である、使用される重合触媒の触媒量を容易に決定し得る。
(i)シリコーン樹脂は、(i)シリコーン樹脂と(ii)環状シロキサンとを反応させる前に、任意選択で本体化され得る。当技術分野で理解されるように、シリコーン樹脂を本体化することは、典型的には、その形成からシリコーン樹脂中に存在し得る残留ケイ素結合ヒドロキシ基の更なる縮合を通じて分子量の増加をもたらす。(i)シリコーン樹脂を本体化することは、典型的には、概して(i)シリコーン樹脂が溶媒中に配置される間、(i)シリコーン樹脂を高温で加熱することを含む。好適な溶媒は上記に開示される。(i)シリコーン樹脂の本体化は、シラノール基の縮合からの副生成物として水をもたらす。
上記で紹介したように、(A)反応生成物は、(1)分岐状オルガノポリシロキサンと、(2)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物との、ヒドロシリル化触媒の存在下での反応生成物である。(A)(2)有機ケイ素化合物は、直鎖状、分岐状、部分的に分岐状、環状、樹脂状(即ち、三次元網目を有する)であるか、又は異なる構造の組み合わせを含み得る。(A)(2)有機ケイ素化合物は、典型的には、架橋剤であり、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンのエチレン性不飽和基と反応する。典型的には、(A)(2)有機ケイ素化合物は、オルガノハイドロジェンシロキサンを含む。
(A)(2)有機ケイ素化合物は、(A)(2)有機ケイ素化合物が1分子あたり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含む限り、M、D、T及び/又はQシロキシ単位の任意の組み合わせを含み得る。これらのシロキシ単位を様々な方法で組み合わせて、環状、直鎖状、分岐状、及び/又は樹脂状(三次元網目状)の構造を形成することができる。(A)(2)有機ケイ素化合物は、M、D、T、及び/又はQ単位の選択に応じ、モノマー、ポリマー、オリゴマー、直鎖状、分岐状、環状、及び/又は樹脂状であり得る。
(A)(2)有機ケイ素化合物は、上記のシロキシ単位を参照し、1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含むため、(A)(2)有機ケイ素化合物は、ケイ素結合水素原子を備えた以下のシロキシ単位のいずれか、すなわち(R1
2HSiO1/2)、(R1H2SiO1/2)、(H3SiO1/2)、(R1HSiO2/2)、(H2SiO2/2)、及び/又は(HSiO3/2)[式中、R1は独立して選択され、上記で定義される]を、任意選択で、ケイ素結合水素原子を含まないシロキシ単位と組み合わせて含み得る。
特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。実質的に直鎖状、又は直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(HR10
2SiO1/2)v’(HR10SiO2/2)w’(R10
2SiO2/2)x’(R10
3SiO1/2)y’[式中、各R10は、独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字v’は、0、1、又は2であり、下付き文字w’は1以上であり、下付き文字x’は0以上であり、下付き文字y’は、0、1、又は2であり、但し、数量(v’+y’)=2、数量(v’+w’)≧3である]を有する。R10の一価炭化水素基は、R1の一価炭化水素基について上に記載したしたとおりであってもよい。数量(v’+w’+x’+y’)は、2~1,000であってもよい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、
i)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
ii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
iii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びに/又は
v)i)、ii)、iii)、iv)、及びv)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
特定の一実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は直鎖状であり、ペンダントケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、平均式
(CH3)3SiO[(CH3)2SiO]x’[(CH3)HSiO]w’Si(CH3)3
[式中、x’及びw’は、上に定義される]を有するジメチル、メチル-ハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。当業者であれば、上の例示的な式において、ジメチルシロキシ単位及びメチルハイドロジェンシロキシ単位は、ランダム又はブロック形態で存在してもよく、任意のメチル基を、脂肪族不飽和を含まない任意の他の炭化水素基で置換してもよいことを理解する。
別の特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は直鎖状であり、末端ケイ素結合水素原子を含む。これらの実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、平均式
H(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]x’Si(CH3)2H
[式中、x’は上に定義したとおりである]を有するSiH末端ジメチルポリシロキサンであってもよい。SiH末端ジメチルポリシロキサンは、単独で、又は上記開示のジメチル,メチルハイドロジェンポリシロキサンとの組み合わせで使用され得る。混合物が使用される場合、混合物中の各オルガノハイドロジェンシロキサンの相対量は変化し得る。当業者であれば、上の例示的な式における任意のメチル基が、脂肪族不飽和を含まない任意の他の炭化水素基で置換されてもよいことを理解する。
あるいは、(A)(2)有機ケイ素化合物は、ペンダント及び末端ケイ素結合水素原子の両方を含み得る。
特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、アルキルハイドロジェンシクロシロキサン又はアルキルハイドロジェンジアルキルシクロシロキサンコポリマーを含み得る。この種の好適なオルガノハイドロジェンシロキサンの具体例としては、(OSiMeH)4、(OSiMeH)3(OSiMeC6H13)、(OSiMeH)2(OSiMeC6H13)2、及び(OSiMeH)(OSiMeC6H13)3[式中、Meはメチル(-CH3)を表す]が挙げられる。
これら又は他の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、環状部分及び直鎖状部分の両方を有するオルガノポリシロキサンを含み得る。そのような実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子は、環状部分、直鎖状部分、又はその両方の中に存在し得る。このようなオルガノポリシロキサンの一例は、以下の式
[式中、下付き文字nは2~2,000で、各下付き文字oは独立して1~10である]を有するダンベル型のオルガノポリシロキサンである。このようなダンベル型のオルガノポリシロキサンは、DPが2~2,000の直鎖状ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンと環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを、ホウ素含有ルイス酸の存在下で反応させることによって調製され得る。このような調製方法は、例えば、国際出願PCT/US第2019/064350号に開示されている。
これら又は他の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、シリコーン樹脂を含み得る。そのような実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物は、典型的には、T及び/又はQシロキシ単位を含み、それは、任意選択で、M及び/又はDシロキシ単位と組み合わせることができる。そのような実施形態では、ケイ素結合水素原子は、M、D、及び/又はTシロキシ単位中に存在し得る。
(A)(2)有機ケイ素化合物に好適なシリコーン樹脂の特定の一具体例は、シルセスキオキサン、又はT樹脂である。例えば、シルセスキオキサンは、式TH、又はHSiO3/2を有し得る。シルセスキオキサンはまた、ケイ素結合水素原子を含まないTシロキシ単位、例えば、CH3SiO3/2単位を含み得る。シルセスキオキサンは当技術分野で知られ、様々な供給業者から市販されている。
(A)(2)有機ケイ素化合物に好適なシリコーン樹脂の別の例は、MQ樹脂である。当技術分野で理解されるように、MQ樹脂は、M及びQシロキシ単位を含む。これらの実施形態では、ケイ素結合水素原子は、Mシロキシ単位中に存在する。Mシロキシ単位は、MQ樹脂に少なくとも2つのケイ素結合水素原子が含まれる限り、(R1
2HSiO1/2)、(R1H2SiO1/2)、及び(H3SiO1/2)[式中、R1は独立して選択され、上記で定義される]の任意の組み合わせを含み得る。
(A)(2)有機ケイ素化合物に好適なオルガノハイドロジェンシロキサンの他の例は、1つの分子中に少なくとも2つのSiH含有シクロシロキサン環を有するものである。このようなオルガノハイドロジェンシロキサンは、各シロキサン環上に少なくとも1つのケイ素結合水素(SiH)原子を有する、少なくとも2つのシクロシロキサン環を有する任意のオルガノポリシロキサンであってもよい。シクロシロキサン環は、少なくとも3つのシロキシ単位(すなわち、シロキサン環を形成するために必要な最少数)を含有し、環状構造を形成するMシロキシ単位、Dシロキシ単位、Tシロキシ単位、及び/又はQシロキシ単位の任意の組み合わせであってもよく、但し、各シロキサン環における、Mシロキシ単位、Dシロキシ単位、及び/又はTシロキシ単位であってもよい環状シロキシ単位のうちの少なくとも1つは、1つのSiH単位を含む。これらのシロキシ単位は、それぞれ、その他の置換基がメチルである場合、MH、DH、及びTHシロキシ単位として表すことができる。
特定の実施形態では、(A)(2)有機ケイ素化合物の式はHy’R1
3-y’Si-(OSiR1
2)m-(OSiR1H)m’-OSiR1
3-y’Hy’[式中、各R1は独立して選択され、上記で定義され、各y’は0又は1から独立して選択され、下付き文字m及びm’はそれぞれ0~1,000であり、但し、m及びm’は同時に0ではなく、m+m’は1~1,000である]を有する。更により具体的な実施形態では、各R1はメチルであり、各y’は1であり、m’は0であり、mは1~1,000、あるいは1~500、あるいは1~250である。
(A)(2)有機ケイ素化合物は、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及びケイ素結合水素原子の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる組み合わせ又は2つ以上の異なるオルガノハイドロジェンシロキサンを含み得る。組成物は、(A)(2)有機ケイ素化合物を、成分(A)(1)中のケイ素結合エチレン性不飽和基と成分(A)(2)中のケイ素結合水素原子とのモル比を1:1~30:1、あるいは2:1~20:1、あるいは3:1~10:1、あるいは3:1~7:1、あるいは3:1~5:1、あるいは2:1~10:1、あるいは2:1~7:1、あるいは2:1~5:1、あるいは2:1~4:1の量で与える量で含み得る。典型的には、(A)(2)有機ケイ素化合物は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンを架橋するように選択され、末端ケイ素結合水素原子を有する直鎖状オルガノハイドロジェンシロキサンである。典型的には、(A)反応生成物が完全に架橋されず、部分的にのみ架橋されるように、成分(A)(1)中のケイ素結合エチレン性不飽和基が成分(A)(2)中のケイ素結合水素原子に対してモル過剰である。
ヒドロシリル化反応触媒は限定されず、ヒドロシリル化反応を触媒するための任意の既知のヒドロシリル化反応触媒であり得る。異なるヒドロシリル化反応触媒の組み合わせを使用してもよい。
特定の実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は、第VIII族から第XI族までの遷移金属を含む。第VIII族~第XI族遷移金属には、最新のIUPAC命名法を参照する。第VIII族遷移金属は、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びハシウム(Hs)であり、第IX族遷移金属は、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、及びイリジウム(Ir)であり、第X族遷移金属は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)であり、第XI族遷移金属は、銅(Cu)、銀(Ag)、及び金(Au)である。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、有機金属錯体)、及び他の形態のそのような金属は、ヒドロシリル化反応触媒として使用され得る。
ヒドロシリル化反応触媒に好適な触媒の追加の例としては、レニウム(Re)、モリブデン(Mo)、第IV族遷移金属(即ち、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及び/又はハフニウム(Hf))、ランタニド、アクチニド、並びに第I族及び第II族の金属錯化物(例えば、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、ストロンチウム(Sr)などを含むもの)が挙げられる。それらの組み合わせ、それらの錯体(例えば、有機金属錯体)、及び他の形態のそのような金属は、ヒドロシリル化反応触媒として使用され得る。
ヒドロシリル化反応触媒は、任意の好適な形態であり得る。例えば、ヒドロシリル化反応触媒は固体であり得、その例としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、及び同様の貴金属系触媒、並びにニッケル系触媒が挙げられる。その具体例としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、及び同様の元素、並びにまた白金-パラジウム、ニッケル-銅-クロム、ニッケル-銅-亜鉛、ニッケル-タングステン、ニッケル-モリブデン、及び複数の金属の組み合わせを含む同様の触媒が挙げられる。固体触媒の更なる例としては、Cu-Cr、Cu-Zn、Cu-Si、Cu-Fe-AI、Cu-Zn-Ti、及び同様の銅含有触媒などが挙げられる。
ヒドロシリル化反応触媒は、固体担体の中又は上にあってもよい。担体の例としては、活性炭、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、ゼオライト、及びその他の無機粉末/粒子(例えば硫酸ナトリウム)などが挙げられる。ヒドロシリル化反応触媒はまた、ビヒクル、例えば、ヒドロシリル化反応触媒を可溶化する溶媒、あるいは、ヒドロシリル化反応触媒を単に運ぶが可溶化しないビヒクルに配置され得る。このようなビヒクルは、当該技術分野において既知である。
特定の実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は白金を含む。これらの実施形態では、ヒドロシリル化反応触媒は、例えば、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトネート)、塩化白金、及びそのような化合物とオレフィン又はオルガノポリシロキサンとの錯体、並びにマトリックス又はコアシェル型化合物にマイクロカプセル化された白金化合物などの化合物によって例示される。マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒及びその調製方法はまた、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されるように、当該技術分野において既知であり、これらは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
ヒドロシリル化反応触媒としての使用に好適なオルガノポリシロキサンとの白金錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体を含み得る。ヒドロシリル化反応触媒は、クロロ白金酸を、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物、又はアルケン-白金-シリル錯体と反応させることを含む方法によって調製され得る。
ヒドロシリル化反応触媒はまた、又は代わりに、光活性化可能なヒドロシリル化反応触媒であり得、それは、照射及び/又は熱を介して硬化を開始し得る。光活性化可能ヒドロシリル化反応触媒は、特に、150~800ナノメートル(nm)の波長を有する放射線に曝露すると、ヒドロシリル化反応を触媒することができる、任意のヒドロシリル化触媒であってもよい。
ヒドロシリル化反応触媒に好適な光活性化可能なヒドロシリル化反応触媒の特定の例としては、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘキサンジオエート)、白金(II)ビス(2,4-ヘプタンジオエート)、白金(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオエート、白金(II)ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオエート)、白金(II)ビス(1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオエート)などの白金(II)β-ジケトネート錯体、(Cp)トリメチル白金、(Cp)エチルジメチル白金、(Cp)トリエチル白金、(クロロ-Cp)トリメチル白金、及び(トリメチルシリル-Cp)トリメチル白金[式中、Cpがシクロペンタジエニルを表す]等、(h-シクロペンタジエニル)トリアルキル白金錯体、[Pt[C6H5NNNOCH3]4、Pt[p-CN-C6H4NNNOC6H11]4、Pt[p-H3COC6H4NNNOC6H11]4、Pt[p-CH3(CH2)x-C6H4NNNOCH3]4、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CN-C6H4NNNOC6H11]2、1,5-シクロオクタジエンPt[p-CH3O-C6H4NNNOCH3]2、[(C6H5)3P]3Rh[p-CN-C6H4NNNOC6H11]、及びPd[p-CH3(CH2)x-C6H4NNNOCH3]2[式中、xは1、3、5、11、又は17である]等のトリアゼンオキシド-遷移金属錯体、(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金、(h4-1,3,5,7-シクロオクタテトラエニル)ジフェニル白金、(h4-2,5-ノルボラジエニル)ジフェニル白金、(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-ジメチルアミノフェニル)白金、(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-アセチルフェニル)白金、及び(h4-1,5-シクロオクタジエニル)ビス-(4-トリフルオロメチルフェニル)白金等の、(h-ジオレフィン)(σ-アリール)白金錯体が挙げられるが、それらに限定されない。典型的には、光活性化可能ヒドロシリル化反応触媒は、Pt(II)β-ジケトネート錯体であり、より典型的には、触媒は、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオエート)である。
ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、即ち、所望の条件での硬化を促進するのに十分な量又は分量で組成物中に存在する。ヒドロシリル化反応触媒は、単一ヒドロシリル化反応触媒、又は2種以上の異なるヒドロシリル化反応触媒を含む混合物とすることができる。
ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、>0.01ppm~10,000ppmであり得、あるいは、>1,000ppm~5,000ppmであり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒の典型的な触媒量は、0.1ppm~5000ppm、あるいは1ppm~2000ppm、あるいは>0~1,000ppmである。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、成分(A)(1)、(A)(2)、及び反応に使用される溶媒の総重量に基づき、0.01ppm~1,000ppm、あるいは0.01ppm~100ppm、あるいは20ppm~200ppm、あるいは0.01ppm~50ppmの白金族金属であり得る。
特定の実施形態では、(A)反応生成物は、以下の構造
[式中、各R
1は独立して選択され、上記で定義され、下付き文字a、a’、b、及びb’はそれぞれ0より大きく、但し、a+bは0.05~4であり、a’+b’は0.05~4であり、下付き文字cは100~3,000であり、下付き文字c’は100~3,000であり、各Dは独立して選択されたアルキレン基であり、下付き文字Xはシロキサン部分である]を有する部分を含む。
下付き文字a及びb、並びに下付き文字a’及びb’は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンのxに対応する(即ち、合計するとそれになる)。同様に、下付き文字c及び下付き文字c’は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンのzに対応する。上記の構造のMDQ部分は、(A)(1)分岐状オルガノポリシロキサンから形成され、-D-X-D-部分は(A)(2)有機ケイ素化合物から形成される。上記の構造の未定義の結合は、Si-R1部分を表すことも、追加の架橋部位からの更なるSi-D-X-D-部分を表すこともできる。
例えば、(A)(2)有機ケイ素化合物がジメチル水素末端ポリジメチルシロキサンである場合、及びR1がビニル基である場合、各Dはエチレンであり、Xは(A)(2)有機ケイ素化合物のDPと同等のDPを持つポリジメチルシロキサン部位である。
組成物は、組成物の総重量に基づき、0超~15重量百分率、あるいは0.5~10重量百分率、あるいは0.75~7重量百分率、あるいは1~4重量百分率の量の(A)反応生成物を含む。
この組成物は、(B)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサンを更に含む。特定の実施形態では、(B)オルガノポリシロキサンは、1分子あたり、末端脂肪族不飽和を有する平均少なくとも2つのケイ素結合基を有する。この(B)オルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、部分的に分岐状、環状、樹脂状(即ち、三次元網目を有する)であるか、又は異なる構造の組み合わせを含み得る。ポリオルガノシロキサンは、次の平均式を有してもよい。ポリオルガノシロキサンは平均式R4
aSiO(4-a)/2[式中、各R4は、一価炭化水素基又は一価ハロゲン化炭化水素基から独立して選択され、但し、各分子においてR4の少なくとも2つは脂肪族不飽和を含み、下付き文字aは0<a≦3.2となるように選択される]を有する。R4に好適な一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基は、R1について上に記載したとおりである。ポリオルガノシロキサンの上記の平均式は、代わりに(R4
3SiO1/2)b(R4
2SiO2/2)c(R4SiO3/2)d(SiO4/2)e[式中、R4は上記で定義され、下付き文字b、c、d、及びeは、それぞれ独立して≧0~≦1であり、但し、数量(b+c+d+e)=1である]と表記され得る。当業者であれば、このようなM、D、T、及びQ単位、並びにそれらのモル分率が、上述の平均式中の下付き文字aにどのように影響するかを理解する。T単位(下付き文字dによって示される)、Q単位(下付き文字eによって示される)、又はその両方は、典型的には、ポリオルガノシロキサン樹脂中に存在し、一方、下付き文字cによって示されるD単位は、典型的には、ポリオルガノシロキサンポリマー中に存在する(及びまた、ポリオルガノシロキサン樹脂又は分岐状ポリオルガノシロキサン中に存在してもよい)。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、実質的に直鎖状であり得るか、あるいは直鎖状であり得る。実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、平均式R4
a’SiO(4-a’)/2[式中、各R4は上で定義したとおりであり、下付き文字a’は、1.9≦a’≦2.2となるように選択される]を有してもよい。
成分(B)の実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、25℃で、流動性の液体であり得るか、又は未硬化のゴムの形態を有し得る。実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンは、25℃で、10mPa・s~30,000,000mPa・s、あるいは10mPa・s~10,000mPa・s、あるいは100mPa・s~1,000,000mPa・s、あるいは100mPa・s~100,000mPa・sの粘度を有してもよい。粘度は、実質的に直鎖状のポリオルガノポリシロキサンの粘度に対して適切に選択されたスピンドル、すなわちRV-1~RV-7を備えたBrookfield LV DV-E粘度計を介して、25℃で測定することができる。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状又は直鎖状である場合、(B)オルガノポリシロキサンは平均単位式(R6R5
2SiO1/2)aa(R6R5SiO2/2)bb(R6
2SiO2/2)cc(R5
3SiO1/2)dd[式中、各R5は、脂肪族不飽和を含まない独立して選択された一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R6は、アルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択され、下付き文字aaは、0、1、又は2であり、下付き文字bbは0以上であり、下付き文字ccは1以上であり、下付き文字ddは、0、1、又は2であり、但し、数量(aa+dd)≧2、数量(aa+dd)=2であり、但し、数量(aa+bb+cc+dd)は、3~2,000である]を有してもよい。あるいは、下付き文字cc≧0である。あるいは、下付き文字bb≧2である。あるいは、数量(aa+dd)は、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6である。あるいは、下付き文字ccは、0~1,000、あるいは1~500、あるいは1~200である。あるいは、下付き文字bbは、2~500、あるいは2~200、あるいは2~100である。
R5の一価炭化水素基は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~10個の炭素原子を有するアリール基、1~6個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、6~10個の炭素原子を有するハロゲン化アリール基、7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、又は7~12個の炭素原子を有するハロゲン化アラルキル基によって例示され、アルキル、アリール、及びハロゲン化アルキルは本明細書に記載のとおりである。あるいは、各R5はアルキル基である。あるいは、各R5は、独立して、メチル、エチル、又はプロピルである。R5の各例は、同一でも異なってもよい。あるいは、各R5はメチル基である。
R6の脂肪族不飽和一価炭化水素基は、ヒドロシリル化反応することが可能である。R6に好適な脂肪族不飽和炭化水素基は、本明細書で定義され、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルによって例示されるアルケニル基によって例示され、アルキニル基は、本明細書で定義され、エチニル及びプロピニルによって例示される。あるいは、各R6は、ビニル又はヘキセニルであってもよい。あるいは、各R6は、ビニル基である。(B)オルガノポリシロキサンのアルケニル又はアルキニル含有量は、(B)オルガノポリシロキサンの重量に基づき、0.1重量%~1重量%、あるいは0.2重量%~0.5重量%であり得る。
(B)オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状であるか、あるいは直鎖状である場合、少なくとも2つの脂肪族不飽和基は、ペンダント位置、末端位置、又はペンダント位置と末端位置の両方でケイ素原子に結合し得る。ペンダントケイ素結合脂肪族不飽和基を有する(B)オルガノポリシロキサンの特定の例として、(B)オルガノポリシロキサンは、平均単位式
[(CH3)3SiO1/2]2[(CH3)2SiO2/2]cc[(CH3)ViSiO2/2]bb[式中、下付き文字bb及びccは上述で定義したとおりであり、Viはビニル基を示す]を有してもよい。この平均式に関して、任意のメチル基が、異なる一価炭化水素基(アルキル又はアリール等)で置換されてもよく、任意のビニル基が、異なる脂肪族不飽和一価炭化水素基(アリル又はヘキセニル等)で置換されてもよい。あるいは、1分子あたり、平均少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシロキサンの特定の例として、(B)オルガノポリシロキサンは平均式Vi(CH3)2SiO[(CH3)2SiO]ccSi(CH3)2Vi[式中、下付き文字ccとViは上記で定義される]を有してもよい。ケイ素結合ビニル基で終端されたジメチルポリシロキサンは、単独で、又は(B)オルガノポリシロキサンとして直前に開示されたジメチル、メチル-ビニルポリシロキサンと組み合わせて使用され得る。この平均式に関して、任意のメチル基が、異なる一価炭化水素基で置換されてもよく、任意のビニル基が、任意の末端脂肪族不飽和一価炭化水素基で置換されてもよい。少なくとも2つのケイ素結合脂肪族不飽和基がペンダント及び末端の両方であり得るので、(B)オルガノポリシロキサンは、代わりに平均単位式
[Vi(CH3)2SiO1/2]2[(CH3)2SiO2/2]cc[(CH3)ViSiO2/2]bb[式中、下付き文字bb及びcc並びにViは上述で定義されている]を有してもよい。
(B)オルガノポリシロキサンが実質的に直鎖状のポリオルガノシロキサンである場合、B)オルガノポリシロキサンは、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたジメチルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルポリシロキサン、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がジメチルビニルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとジフェニルシロキサンとのコポリマー、両方の分子末端がトリメチルシロキシ基でキャップされたメチルビニルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのコポリマーによって例示され得る。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン
xv)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xvi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)及び
xvii)これらの組み合わせからなる群から選択される、実質的に直鎖状、あるいは直鎖状のポリオルガノシロキサンを含み得る。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、樹脂状ポリオルガノシロキサンを含み得る。樹脂状ポリオルガノシロキサンは、平均式R4
a”SiO(4-a”)/2[式中、各R4は、上に定義したように独立して選択され、下付き文字a”は、0.5≦a”≦1.7となるように選択される]を有してもよい。
樹脂状ポリオルガノシロキサンは、分岐状又は三次元網目状の分子構造を有する。25℃で、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、液体の形態であっても固体の形態であってもよい。あるいは、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、T単位のみを含むポリオルガノシロキサン、T単位を他のシロキシ単位(例えば、M、D、及び/又はQシロキシ単位)と組み合わせて含むポリオルガノシロキサン、又はQ単位を他のシロキシ単位(すなわち、M、D、及び/又はTシロキシ単位)と組み合わせて含むポリオルガノシロキサンによって例示することができる。典型的には、樹脂状ポリオルガノシロキサンは、T単位及び/又はQ単位を含む。樹脂状ポリオルガノシロキサンの具体例としては、ビニル末端シルセスキオキサン(すなわち、T樹脂)及びビニル末端MDQ樹脂が挙げられる。
あるいは、(B)オルガノポリシロキサンは、分岐状シロキサン、シルセスキオキサン、又は分岐状シロキサン及びシルセスキオキサンの両方を含み得る。
(B)オルガノポリシロキサンが異なるオルガノポリシロキサンのブレンドを含む場合、ブレンドは物理的ブレンド又は混合物であり得る。例えば、(B)オルガノポリシロキサンが分岐状シロキサンとシルセスキオキサンを含む場合、分岐状シロキサンとシルセスキオキサンとは、組成物中に存在するすべての成分の総重量に基づき、分岐状シロキサンの量とシルセスキオキサンを合わせた量が合計100重量部になるように、互いに対する量で存在する。分岐状シロキサンは、50~100重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、0~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~90重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、10~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~80重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、20~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~76重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、24~50重量部の量で存在してもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、50~70重量部の量で存在してもよく、シルセスキオキサンは、30~50重量部の量で存在してもよい。
(B)オルガノポリシロキサンの分岐状シロキサンは単位式(R7
3SiO1/2)p(R8R7
2SiO1/2)q(R7
2SiO2/2)r(SiO4/2)s[式中、各R7は、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R8はアルケニル基又はアルキニル基であり、どちらも上記のとおりであり、下付き文字p≧0、下付き文字q>0、15≧r≧995、下付き文字sは>0である]を有してもよい。
上述の単位式では、下付き文字p≧0である。下付き文字q>0である。あるいは、下付き文字q≧3である。下付き文字rは、15~995である。下付き文字s>0である。あるいは、下付き文字s≧1である。あるいは、下付き文字pについては、22≧p≧0、あるいは、20≧p≧0、あるいは、15≧p≧0、あるいは、10≧p≧0、あるいは、5≧p≧0である。あるいは、下付き文字qについては、22≧q>0、あるいは、22≧q≧4、あるいは、20≧q>0、あるいは、15≧p>1、あるいは、10≧q≧2、あるいは、15≧q≧4である。あるいは、下付き文字rについては、800≧r≧15、あるいは、400≧r≧15である。あるいは、下付き文字sについては、10≧s>0、あるいは、10≧s≧1、あるいは、5≧s>0、あるいは、s=1である。あるいは、下付き文字sは、1又は2である。あるいは、下付き文字s=1である場合、下付き文字pは0であってもよく、下付き文字qは4であってもよい。
分岐状シロキサンは、式(R
7
2SiO
2/2)
m[式中、各下付き文字mは独立して2~100である]の少なくとも2つのポリジオルガノシロキサン鎖を含み得る。あるいは、分岐状シロキサンは、式(R
7
2SiO
2/2)
o[式中、下付き文字oは、それぞれ独立して、1~100である]の4つのポリジオルガノシロキサン鎖に結合した式(SiO
4/2)の少なくとも一単位を含んでもよい。あるいは、分岐状シロキサンは、式
[式中、下付き文字uは、0又は1であり、各下付き文字tは、独立して、0~995、あるいは15~995、あるいは0~100であり、各R
9は、上に記載したように、独立して選択された一価炭化水素基であり、各R
7は、独立して選択された、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各R
8は、上に記載したように、それぞれアルケニル及びアルキニルからなる群から独立して選択される]を有してもよい。好適な分岐状シロキサンは、米国特許第6,806,339号及び米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものによって例示される。
シルセスキオキサンは単位式
(R7
3SiO1/2)i(R8R7
2SiO1/2)f(R7
2SiO2/2)g(R7SiO3/2)h
[式中、R7及びR8は上記のとおりであり、下付き文字i≧0、下付き文字f>0、下付き文字gは15~995、下付き文字h>0である]を有してもよい。下付き文字iは、0~10であってもよい。あるいは、下付き文字iについて、12≧i≧0、あるいは、10≧i≧0、あるいは、7≧i≧0、あるいは、5≧i≧0、あるいは、3≧i≧0である。
あるいは、下付き文字f≧1である。あるいは、下付き文字f≧3である。あるいは、下付き文字fについて、12≧f>0、あるいは、12≧f≧3、あるいは、10≧f>0、あるいは、7≧p>1、あるいは、5≧f≧2、あるいは、7≧f≧3である。あるいは、下付き文字gについて、800≧g≧15、あるいは、400≧g≧15である。あるいは、下付き文字h≧1である。あるいは、下付き文字hは、1~10である。あるいは、下付き文字hについて、10≧h>0、あるいは、5≧h>0、あるいは、h=1である。あるいは、下付き文字hは、1~10であり、あるいは、下付き文字hは、1又は2である。あるいは、下付き文字h=1の場合、下付き文字fは3であってもよく、下付き文字iは0であってもよい。下付き文字fの値は、単位式(ii-II)のシルセスキオキサンが、シルセスキオキサンの重量に基づいて、0.1重量%~1重量%、あるいは0.2重量%~0.6重量%のアルケニル含有量となるのに十分であってもよい。好適なシルセスキオキサンは、米国特許第4,374,967号に開示されているものによって例示される。
(B)オルガノポリシロキサンは式(R3
yR1
3-ySiO1/2)x’(R1
2SiO2/2)z’(SiO4/2)1.0(ZO1/2)w[式中、各R3は、独立して選択されたエチレン性不飽和基であり、下付き文字yは、下付き文字xによって示される各シロキシ単位において独立して選択され、各R1は独立して選択され、上記で定義され、下付き文字x’は1.5~4であり、Zは独立して選択され、上記で定義され、下付き文字wは0~3であり、下付き文字z’は3~1,000である]を有してもよい。
(B)オルガノポリシロキサンは、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及び脂肪族不飽和基の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる組み合わせ又は2つ以上の異なるポリオルガノシロキサンを含み得る。組成物は、(B)オルガノポリシロキサンを、組成物の総重量に基づき、60~99.5重量百分率、あるいは60~98重量百分率、あるいは60~95重量百分率、あるいは70~95重量百分率、あるいは75から95重量百分率の量で含み得る。
組成物が本質的に成分(A)及び(B)からなるか、あるいはそれらからなる場合、即ち、触媒又は架橋剤が存在しない場合、その組成物は、塩基組成物と呼ばれ得る。塩基組成物は、典型的には、他の成分と組み合わせて、概してヒドロシリル化を介して硬化性である組成物を得て、この組成物を硬化して、剥離コーティングを得ることができる。別の言い方をすれば、塩基組成物は、典型的には、他の成分と組み合わせされて硬化性組成物を与え、これを使用し、剥離コーティング又はライナーを形成し得る。硬化性組成物は、剥離組成物又は剥離コーティング組成物と呼ばれ得る。
特定の実施形態では、組成物は、(C)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を更に含む。(C)有機ケイ素化合物の好適な例は、(A)(2)有機ケイ素化合物に関して上記に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。成分(C)及び(A)(2)は、互いに同じでも異なっていてもよい。特定の実施形態では、成分(A)(2)は、末端ケイ素結合水素原子を含み、一方、成分(C)は、ペンダントケイ素結合水素原子を含む。
(C)有機ケイ素化合物は、構造、分子量、ケイ素原子に結合した一価基、及びケイ素結合水素原子の含有量などの少なくとも1つの特性が異なる組み合わせ又は2つ以上の異なるオルガノハイドロジェンシロキサンを含み得る。組成物は、(C)有機ケイ素化合物を、成分(C)中のケイ素結合水素原子と成分(B)中のケイ素結合エチレン性不飽和基とのモル比を1:1~5:1、又は1.1:1~3.1の量で与える量で含み得る。
特定の実施形態では、組成物は、(D)ヒドロシリル化反応触媒を更に含む。(D)ヒドロシリル化反応触媒は限定されず、ヒドロシリル化反応を触媒するための任意の既知のヒドロシリル化反応触媒であり得る。異なるヒドロシリル化反応触媒の組み合わせを使用してもよい。好適な(D)ヒドロシリル化反応触媒の具体例は、(A)反応生成物を形成するのに好適なヒドロシリル化反応触媒に関して上記に記載され、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
(D)ヒドロシリル化反応触媒は、触媒量、即ち、所望の条件での硬化を促進するのに十分な量又は分量で組成物中に存在する。ヒドロシリル化反応触媒は、単一ヒドロシリル化反応触媒、又は2種以上の異なるヒドロシリル化反応触媒を含む混合物とすることができる。
(D)ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、>0.01ppm~10,000ppmであり得、あるいは、>1,000ppm~5,000ppmであり得る。あるいは、(D)ヒドロシリル化反応触媒の典型的な触媒量は、0.1ppm~5000ppm、あるいは1ppm~2000ppm、あるいは>0~1,000ppmである。あるいは、(D)ヒドロシリル化反応触媒の触媒量は、組成物の総重量に基づき、0.01ppm~1,000ppm、あるいは0.01ppm~100ppm、あるいは20ppm~200ppm、あるいは0.01ppm~50ppmの白金族金属であり得る。
組成物は、(E)阻害剤、(F)固定添加剤、(G)防曇剤、(H)剥離改質剤、及び(I)ビヒクルのうちの1つ以上を更に含み得る。
特定の実施形態では、組成物は、(E)阻害剤を更に含む。(E)阻害剤は、同じ出発物質を含むが(E)阻害剤が省略された組成物と比較し、組成物の反応速度又は硬化速度を変更するために使用され得る。(E)阻害剤は、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコール、並びにそれらの組み合わせ;シクロアルケニルシロキサン、例えば1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンにより例示されるメチルビニルシクロシロキサン、並びにこれらの組み合わせ;エン-イン化合物、例えば3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン;トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン;ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、ジアルコキシアルキルフマレート、マレエート、例えばジアリルマレエート;ニトリル;エーテル;一酸化炭素;アルケン、例えばシクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサン;アルコール、例えばベンジルアルコール;並びにこれらの組み合わせにより例示される。あるいは、(E)阻害剤は、アセチレンアルコール(例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール)及びマレエート(例えば、ジアリルマレエート、ビスマレエート、又はn-プロピルマレエート)並びにそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
あるいは、(E)阻害剤は、シリル化アセチレン化合物であり得る。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない組成物又は上述したものなどの有機アセチレンアルコール阻害剤を含有する組成物のヒドロシリル化からの反応生成物と比較したとき、組成物のヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。
シリル化アセチレン化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、(E)阻害剤は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はそれらの組み合わせによって例示される。(E)阻害剤として有用なシリル化アセチレン化合物は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって上記のアセチレンアルコールをシリル化するなど、当技術分野で知られる方法によって調製され得る。
組成物中に存在する(E)阻害剤の量は、組成物の所望のポットライフ、組成物が一部分組成物であるか多部分組成物であるか、使用される特定の阻害剤、並びに成分(A)~(D)の選択及び量を含む様々な要因に依存する。しかし、存在する場合、(E)阻害剤の量は、組成物の総重量に基づき、0重量%~1重量%、あるいは0重量%~5重量%、あるいは0.001重量%~1重量%、あるいは0.01重量%~0.5重量%、あるいは0.0025重量%~0.025重量%であり得る。
特定の実施形態では、組成物は、(F)固定添加剤を更に含む。好適なアンカー添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)により例示される。あるいは、アンカー添加剤は、ポリオルガノシリケート樹脂を含んでもよい。好適なアンカー添加剤及びその調製方法は、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、同第2004/0254274号、及び同第2005/0038188号、並びに欧州特許第0556023号に開示されている。
好適なアンカー添加剤の更なる例としては、遷移金属キレート、アルコキシシラン等のハイドロカルボノオキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。(F)固定添加剤は、エポキシ、アセトキシ又はアクリレート基などの接着促進基を有する少なくとも1つの置換基を有するシランであり得る。接着促進基は、追加的又は代替的に、(D)ヒドロシリル化反応触媒に影響を与えない任意の加水分解性基であり得る。あるいは、(F)固定添加剤は、そのようなシランの部分縮合物、例えば、接着促進基を有するオルガノポリシロキサンを含み得る。あるいはまた、(F)アンカー添加剤は、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせを含んでもよい。
あるいは、(F)アンカー添加剤は、不飽和又はエポキシ官能性化合物を含んでもよい。(F)アンカー添加剤は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは、少なくとも1つの不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基を含んでもよい。エポキシ官能性有機基は、3-グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルによって例示される。不飽和有機基は、3-メタクリロイルオキシプロピル、3-アクリロイルオキシプロピル、及び、ビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニル(undecylenyl)などの不飽和一価炭化水素基により例示される。不飽和化合物の具体例1つは、ビニルトリアセトキシシランである。
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
(F)アンカー添加剤はまた、これらの化合物の1つ以上の反応生成物又は部分反応生成物を含んでもよい。例えば、特定の実施形態では、(F)アンカー添加剤は、ビニルトリアセトキシシランと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物又は部分反応生成物を含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、(F)アンカー添加剤は、アルコキシ又はアルケニル官能性シロキサンを含んでもよい。
あるいは、(F)アンカー添加剤は、ヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンと上記のエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物、又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドなどのエポキシ官能性シロキサンを含んでもよい。(F)アンカー添加剤は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含んでもよい。例えば、(F)アンカー添加剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物との混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物によって例示される。
あるいは、(F)アンカー添加剤は、遷移金属キレートを含んでもよい。好適な遷移金属キレートとしては、チタネート、ジルコニウムアセチルアセトネート等のジルコネート、アルミニウムアセチルアセトネート等のアルミニウムキレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、(F)アンカー添加剤は、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせなどの、遷移金属キレートとアルコキシシランとの組み合わせを含んでもよい。
組成物中に存在する(F)固定添加剤の特定の量は、使用される場合、基材のタイプ及びプライマーが使用されるかどうかを含む様々な要因に依存する。特定の実施形態では、(F)固定添加剤は、成分(B)の100重量部あたり、0~2重量部の量で組成物中に存在する。あるいは、(F)固定添加剤は、成分(B)の100重量部あたり、0.01~2重量部の量で組成物中に存在する。
特定の実施形態では、組成物は、(G)防曇剤を更に含む。(G)防曇剤は、組成物が剥離コーティングを調製するために使用されるときに防曇剤としても機能する成分(A)とは区別される。(G)防曇剤は、特に高速コーティング装置を用い、コーティングプロセスにおけるシリコーンミスト形成を低減又は抑制するために組成物に使用され得る。(G)防曇剤は、有機水素ケイ素化合物、オキシアルキレン化合物、又は1分子あたり少なくとも3つのケイ素結合アルケニル基を有するオルガノアルケニルシロキサン、及び好適な触媒の反応生成物であり得る。好適な防曇剤は、例えば、米国特許出願公開第2011/0287267号、米国特許第8,722,153号、米国特許第6,586,535号及び米国特許第5,625,023号に開示されている。
組成物に使用される(G)防曇剤の量は、組成物のために選択される他の出発物質の量及びタイプを含む様々な要因に依存する。しかし、(G)防曇剤は、典型的には、組成物の総重量に基づき、0重量%~10重量%、あるいは0.1重量%~3重量%の量で使用される。この量は、成分(A)に関連する量を除外し、成分(A)とは別個の異なる(G)防曇剤にのみ関連する。
特定の実施形態では、組成物は、剥離力(組成物から形成された剥離コーティングとその被着体、例えば感圧接着剤を含むラベル)との間の接着力のレベルを制御(減少)するために組成物において使用され得る(H)剥離改質剤を更に含む。(H)剥離改質剤のレベル又は濃度を調整することにより、必要な又は所望の剥離力を有する剥離コーティングが、改質剤を含まない組成物から配合され得る。成分(H)に好適な剥離改質剤の例としては、トリメチルシロキシ末端ジメチル、フェニルメチルシロキサンが挙げられる。あるいは、(H)剥離改質剤は、ヒドロキシル又はアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン樹脂と、少なくとも1つのヒドロキシル又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンとの縮合反応生成物であり得る。好適な剥離改質剤の例は、例えば、米国特許第8,933,177号及び米国特許出願公開第2016/0053056号に開示されている。使用される場合、(H)剥離改質剤は、成分(B)の100部あたり、0から85部、あるいは25~85部の量で組成物中に存在し得る。
特定の実施形態では、組成物は、(I)ビヒクルを更に含む。(I)ビヒクルは、典型的には、組成物の成分を可溶化し、成分が可溶化する場合、(I)ビヒクルは、溶媒と呼ばれ得る。好適なビヒクルとしては、直鎖状及び環状の両方のシリコーン、有機油、有機溶媒、並びにこれらの混合物が挙げられる。
典型的には、(I)ビヒクルは、組成物中に存在する場合、有機液体である。有機液体としては、油又は溶媒とみなされるものが挙げられる。有機液体としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、3つを超える炭素原子を有するアルコール、アルデヒド、ケトン、アミン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化アルキル及びハロゲン化芳香族が挙げられるが、それらに限定されない。炭化水素は、イソドデカン、イソヘキサデカン、アイソパーL(C11~C13)、アイソパーH(C11~C12)、水素化ポリデセン、芳香族炭化水素、及びハロゲン化炭化水素を含む。エーテル及びエステルとしては、イソデシルネオペンタノエート、ネオペンチルグリコールヘプタノエート、グリコールジステアレート、ジカプリリルカーボネート、ジエチルヘキシルカーボネート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、エチル-3エトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリデシルネオペンタノエート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、オクチルドデシルネオペンタノエート、ジイソブチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、プロピレングリコールジカプリレート/ジカプレート、オクチルエーテル、及びオクチルパルミテートが挙げられる。独立化合物又は(I)ビヒクルの成分として好適な追加の有機流体は、脂肪、油、脂肪酸、及び脂肪アルコールを含む。(I)ビヒクルはまた、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ヘキサデアメチルヘプタシロキサン、ヘプタメチル-3-{(トリメチルシリル)オキシ)}トリシロキサン、ヘキサメチル-3,3,ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン ペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン、並びにポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、カプリリルメチコン、及びそれらの任意の混合物などの、25℃で1~1,000mm2/秒の範囲の粘度を有する低粘度オルガノポリシロキサン又は揮発性メチルシロキサン又は揮発性エチルシロキサン又は揮発性メチルエチルシロキサンであり得る。
特定の実施形態では、(I)ビヒクルは、ポリアルキルシロキサン、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトン等のケトン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、又はキシレン、脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、又はオクタン、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル、又はそれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、組成物がエマルジョンの形態である場合、(I)ビヒクルは、代わりに、水性媒体、又は水を含み得る。
(I)ビヒクルの量は、選択されたビヒクルのタイプ、及び組成物中に存在する他の成分の量及びタイプを含む様々な要因に依存する。しかし、組成物中の(I)ビヒクルの量は、組成物の総重量に基づき、0重量%~99重量%、あるいは2重量%~50重量%であり得る。(I)ビヒクルは、例えば、混合及び送達を助けるために、組成物の調製中に添加され得る。(I)ビヒクルの全部又は一部は、組成物から剥離コーティングを調製する前及び/又はそれと同時に、組成物が調製された後に任意選択で除去され得る。
例えば、反応性希釈剤、芳香剤、防腐剤、着色剤、染料、及び充填剤、例えば、シリカ、石英又はチョークを含む、他の任意選択成分が組成物中に存在し得る。
あるいは、組成物及びそれから形成される剥離コーティングは、微粒子を含まないか、又は組成物の0~30重量%などの限られた量の微粒子(例えば、充填剤及び/又は顔料)のみを含み得る。微粒子は、剥離コーティングを形成するのに使用されるコーティング装置に凝集するか、又はそうでなければアンカーする場合がある。更に、光学的透明性が所望の場合、微粒子は、剥離コーティング及びそれを使用して形成された剥離ライナーの光学的特性、例えば、透明性を妨げる可能性がある。微粒子は、被着体の接着に不利になることがある。
特定の実施形態では、組成物は、フルオロオルガノシリコーン化合物を含まない。硬化中、フルオロ化合物は、その表面張力が低いため、組成物の界面又はそれと共に形成された剥離コーティング、及び組成物が適用され、剥離コーティングが形成される基材、例えば組成物/PETフィルム界面に急速に移行し得ると考えられる。このような移動は、フッ素含有バリアを作製することによって、基材への剥離コーティング(組成物を硬化させることによって調製される)の接着を防ぐことがある。バリアを作製することにより、フルオロオルガノシリコーン化合物は、組成物のいずれの成分も界面で反応することが防がれ、硬化及び関連する特性に影響を及ぼすことがある。更に、フルオロオルガノシリコーン化合物は、通常、高価である。
その硬化可能な形態の組成物は、成分(A)~(D)、並びに上記の任意の任意選択成分を、任意の添加順序で、任意選択でマスターバッチ内にて、任意選択で剪断下、組み合わせることによって調製され得る。以下でより詳細に説明するように、組成物は、1つの部分の組成物、2つの成分又は2Kの組成物、又は複数の部分の組成物であり得る。例えば、成分(A)及び(B)は、組成物の単一の部分であり得る。以下に記載されるように、組成物が剥離コーティング又はコーティングされた基材を調製するために使用される場合、成分(A)及び(B)は、組成物が硬化性組成物になるように、成分(C)及び(D)、並びに任意の任意選択成分と組み合わせされる。組成物が成分(C)及び(D)を更に含む場合、その組成物は硬化性組成物と呼ばれ得る。
様々な実施形態では、組成物は、その連続相及び不連続相の選択に応じ、エマルジョン、例えば、水中油型又は油中水型エマルジョンとして調製され得る。これらの実施形態では、(I)ビヒクルは、水性媒体又は水として組成物中に存在する。エマルジョンの油相は、組成物のシリコーン成分、即ち、少なくとも成分(A)及び(B)、並びに存在する場合成分(C)を含む。特定の実施形態では、油相は、少なくとも成分(A)及び(B)、並びに存在する場合成分(C)を運ぶための有機油又はシリコーン油を更に含み得る。しかし、有機油又はシリコーン油は、エマルジョンを調製するのに必須ではない。更に、エマルジョンは、異なる成分を有する異なるエマルジョンを有する複数部型エマルジョンとすることができ、エマルジョンの複数部は、硬化に関連して組み合わされ、混合される。エマルジョンは、任意の部分に、上述の任意選択成分のいずれかを含むことができる。
使用される場合、有機油は、典型的には非反応性又は不活性であり、即ち、有機油は、組成物の反応性成分の硬化に関連するいかなる反応にも関与しない。典型的には、シリコーン成分(例えば、成分(A)、(B)、及び存在する場合(C))は、エマルジョンの水相ではなく油相に分散する。
特定の実施形態では、好適な有機油は、少なくとも成分(A)及び(B)を溶解するもの、典型的には透明な溶液を形成するものである、少なくとも成分(A)及び(B)と組み合わせ、エマルジョンの形成前、形成中、及び/又は形成後に相分離することなく均一な分散液を形成し得るものを含む。有機油は、例えば以下のもの、直鎖状(例えば、n-パラフィン系)鉱油、分岐状(イソパラフィン系)鉱油、及び/又は環状(ナフテン系と呼ばれることもある)鉱油を含む油留分等の、油留分中の炭化水素が1分子当たり5~25個の炭素原子を含み、12~40個の炭素原子を含有する液体直鎖状又は分岐状パラフィンである炭化水素油、ポリイソブチレン(PIB)、トリオクチルホスファート等のホスフェートエステル、ポリアルキルベンゼン、重質アルキレート、ドデシルベンゼン及び他のアルキルアレーン等の直鎖状及び/又は分枝状アルキルベンゼン、脂肪族モノカルボン酸エステル、8~25個の炭素原子を含有する直鎖状又は分岐状アルケンあるいはこれらの混合物等の、直鎖状又は分岐状モノ不飽和炭化水素、並びに天然油及びそれらの誘導体のいずれか1つ又は組み合わせであってもよい。
一実施形態では、有機油は、鉱油留分、天然油、アルキルシクロ脂肪族化合物、ポリアルキルベンゼンを含むアルキルベンゼン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
有機油としての使用に好適なアルキルベンゼン化合物としては、例えば、重質アルキレートアルキルベンゼン及びアルキルシクロ脂肪族化合物が挙げられる。重質アルキレートアルキルベンゼンとしては、例えば、アルキル及び/又は他の置換基により置換されたベンゼン等の、アリール基を有するアルキル置換アリール化合物が挙げられる。更なる例としては、米国特許第4,312,801号(その全体が参考として組み込まれる)に記載されている増量剤が挙げられる。
鉱油留分、又は任意の他の有機油と組み合わせた鉱油留分の任意の好適な混合物を、有機油として使用してもよい。有機油の更なる例としては、アルキルシクロヘキサン及びパラフィン系炭化水素が挙げられる(直鎖状、分枝状又は環状であってよい)。環状パラフィン系炭化水素は、単環式及び/又は多環式炭化水素(ナフテン系)であってよい。
別の実施形態では、有機油は天然油を含んでもよい。天然油は、石油由来でない油である。より具体的には、天然油は動物並びに/又は植物性物質(種子及びナッツを含む)に由来する。一般的な天然油としては、脂肪酸の混合物、特に、いくらかの不飽和脂肪酸を含有する混合物のトリグリセリドが挙げられる。あるいは、有機油は、エステル交換植物油、ボイル天然油、吹込天然油、又は濃化油(例えば加熱重合油)等の天然油の誘導体でもよい。天然油は種々の供給源に由来してよく、例えば、小麦胚芽、ヒマワリ、ブドウ種子、ヒマ、シア、アボカド、オリーブ、ダイズ、スイートアーモンド、ヤシ、菜種、綿実、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、クロフサスグリ、オオマツヨイグサ、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
上で例示した液体の代わりに、有機油はワックス等の固体であってもよい。有機油がワックスを含む場合、ワックスは、典型的には、30~100℃の融点を有する。ワックスは例えば、石油由来のワックス等の炭化水素ワックス、蜜蝋、ラノリン、タロー、カルナバ、キャンデリラ、トリベヘニン等の、カルボキシルエステルを含むワックス、又は、マンゴーバター、シアバター若しくはカカオバター等の、「バター」と呼ばれる、より柔らかいワックスを含む、植物種子、果物、ナッツ、若しくは穀粒由来のワックスであってよい。あるいは、ワックスはポリエーテルワックス又はシリコーンワックスであってよい。
特に、有機油が鉱油を含む場合、有機油と少なくとも成分(A)及び(B)とは、典型的には混和性であり、即ち、均一な混合物を形成する。対照的に、有機油が天然油を含む場合、有機油と少なくとも成分(A)及び(B)とは、一般に非混和性であり、即ち、不均一な混合物を形成する。
成分(A)、(B)、及び任意選択で成分(C)及び/又は(D)と、使用される場合、有機油及び/又はシリコーン油を組み合わせることによって形成される混合物は、不均一又は均一であり得る。有機油は、少なくとも成分(A)及び(B)、任意選択でまた存在する場合成分(C)及び(D)を可溶化するか、あるいは部分的に可溶化し得る。有機油は、成分(A)及び(B)が有機油に可溶化又は溶解するかどうかに応じ、担体又は溶媒と呼ばれることがある。混合物は、任意選択の混合又は撹拌を用い、任意の添加順序を含む任意の方法で形成され得る。
本方法は、混合物、水性媒体、及び界面活性剤を組み合わせてエマルジョンを形成することを更に含む。混合物は、典型的には、エマルジョンの水性媒体中の不連続相である。エマルジョンは、剪断の適用によって、例えば、混合、振盪、撹拌などによって形成され得る。エマルジョンの不連続相は、概して、水性媒体中に粒子として存在する。粒子は液体であり、概して、球状又は他の形状を有してよく、選択した成分、及びその相対量に基づいて、種々のサイズを有してよい。
水性媒体は水を含む。水は任意の供給源からのものであってよく、例えば、蒸留、逆浸透等により任意選択で精製されてよい。水性媒体は、以下に記載するように、水以外の1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。
界面活性剤は、様々な成分を乳化できるか、又はエマルジョンの安定性を改善できる任意の界面活性剤でもよい。例えば、界面活性剤は、1つ以上の、アニオン性、カチオン性、非イオン性、及び/又は両性界面活性剤、ジメチコンコポリオールなどの有機変性シリコーン:グリセロールのオキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エーテル;セテアレス-30、C12~15パレス-7などの脂肪アルコールのオキシエチレン化及び/又はオキシプロピレン化エーテル;PEG-50ステアレート、PEG-40モノステアレートなどのポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;スクロースステアレート、スクロースココエート及びソルビタンステアレートなどの糖類エステル及びエーテル並びにそれらの混合物;DEAオレス-10ホスフェートなどのリン酸エステル及びそれらの塩;ジナトリウムPEG-5シトレートラウリルスルホサクシネート及びジナトリウムリシノールアミドMEAスルホサクシネートなどのスルホサクシネート;ナトリウムラウリルエーテルサルフェートなどのアルキルエーテルサルフェート;イセチオネート;ベタイン誘導体、並びにこれらの混合物を含んでもよい。
特定の実施形態では、界面活性剤にはアニオン性界面活性剤が含まれる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボキシレート(2-(2-ヒドロキシアルキルオキシ)酢酸ナトリウム))、アミノ酸誘導体(N-アシルグルタメート、N-アシルグリシネート、又はアシルサルコシネート)、アルキルサルフェート、アルキルエーテルサルフェート及びそのオキシエチレン化誘導体、スルホネート、イセチオネート及びN-アシルイセチオネート、タウレート及びN-アシルN-メチルタウレート、スルホサクシネート、アルキルスルホアセテート、ホスフェート及びアルキルホスフェート、ポリペプチド、アルキルポリグルコシドのアニオン性誘導体(アシル-D-ガラクトシドウロネート)、及び脂肪酸石鹸、アルカリ金属スルホリシネート(sulforicinates);ヤシ油酸のスルホン化モノグリセリドなどの脂肪酸のスルホン化グリセリルエステル;ナトリウムオレイリセチアネート(sodium oleylisethianate)などのスルホン化一価アルコールエステルの塩;オレイルメチルタウリドのナトリウム塩などのアミノスルホン酸のアミド;スルホン酸パルミトニトリルなどの脂肪酸ニトリルのスルホン化物;α-ナフタレンモノスルホン酸ナトリウムなどのスルホン化芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物;オクタヒドロアントラセンスルホン酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸アルカリ金属塩、ラウリル硫酸アンモニウム及びラウリル硫酸トリエタノールアミン;ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、アルキルアリールエーテル硫酸ナトリウム、及びアルキルアリールエーテル硫酸アンモニウムなどの、8個以上の炭素原子を有するアルキル基を有する硫酸エーテル;8個以上の炭素原子を有するアルキル基を1つ以上有するアルキルアリールスルホン酸塩;例えば、ヘキシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、及びミリスチルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩によって例示されるアルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩;CH3(CH2)6CH2O(C2H4O)2SO3H、CH3(CH2)7CH2O(C2H4O)3.5SO3H、CH3(CH2)8CH2O(C2H4O)8SO3H、CH3(CH2)19CH2O(C2H4O)4SO3H、及びCH3(CH2)10CH2O(C2H4O)6SO3Hをはじめとするポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;アルキルナフチルスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びアミン塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの又は他の実施形態では、界面活性剤にはカチオン性界面活性剤が含まれる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、様々な脂肪酸アミン及びアミド並びにそれらの誘導体、また脂肪酸アミン及びアミドの塩が挙げられる。脂肪族脂肪酸アミンの例としては、ドデシルアミン酢酸塩、オクタデシルアミン酢酸塩、及びタロー脂肪酸のアミンの酢酸塩、ドデシルアナリン(dodecylanalin)などの脂肪酸を有する芳香族アミンの同族体、ウンデシルイミダゾリンなどの脂肪族ジアミンから誘導された脂肪族アミド、ウンデシルイミダゾリンなどの脂肪族ジアミンから誘導された脂肪族アミド、オレイルアミノジエチルアミンなどの二置換アミンから誘導された脂肪族アミド、エチレンジアミンの誘導体、第四級アンモニウム化合物並びにその誘導体として、タロートリメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキサデシルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、及びヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムヒドロキシドなどのジアルキルジメチルアンモニウムヒドロキシド、タロートリメチルアンモニウムヒドロキシドによって例示されるもの、ヤシ油、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルポリオキシエチレンココアンモニウムクロリド、及びジパルミチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、β-ヒドロキシエチルステアリルアミドなどのアミノアルコールのアミド誘導体、長鎖状脂肪酸のアミン塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの又は他の実施形態では、界面活性剤には非イオン性界面活性剤が含まれる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ラウリル、セチル、ステアリル、又はオクチルなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノレエート、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、エトキシル化トリメチルノナノール、ポリオキシアルキレングリコール変性ポリシロキサン界面活性剤、ポリオキシアルキレン置換シリコーン(レーキ型又はABn型)、シリコーンアルカノールアミド、シリコーンエステル、シリコーングリコシド、ジメチコンコポリオール、ポリオールの脂肪酸エステル、例えばソルビトール及びグリセリルモノ-、ジ-、トリ-及びセスキ-オレエート、及びステアレート、グリセリル及びポリエチレングリコールラウレート;ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル(ポリエチレングリコールモノステアレート及びモノラウレートなど)、ソルビトールのポリオキシエチレン化脂肪酸エステル(ステアレート及びオレエートなど)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
これらの又は他の実施形態では、界面活性剤には、両性界面活性剤が含まれる。両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸界面活性剤、ベタイン酸界面活性剤、トリメチルノニルポリエチレングリコールエーテル、及び2,6,8-トリメチル-4-ノニルオキシポリエチレンオキシエタノール(6EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)TMN-6として販売されている)等の11~15個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基を含有するポリエチレングリコールエーテルアルコール、2,6,8-トリメチル-4-ノニルオキシポリエチレンオキシエタノール(10EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)TMN-10として販売されている)、アルキレン-オキシポリエチレンオキシエタノール(C11~15第二級アルキル,9EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)15-S-9として販売されている)、アルキレンオキシポリエチレンオキシエタノール(C11~15第二級アルキル、15 EO)(OSi Specialties,Witco Company(Endicott,NY)によりTergitol(登録商標)15-S-15として販売されている)、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(40EO)(Rohm and Haas Company(Philadelphia,Pa)によりTriton(登録商標)X405として販売されている)等の様々な量のエチレンオキシド単位を有するオクチルフェノキシポリエトキシエタノール、非イオン性エトキシ化トリデシルエーテル(Emery Industries(Mauldin,S.C.)により、総合的な商品名Trycolとして入手可能)、ジアルキルスルホサクシネートのアルカリ金属塩(American Cyanamid Company(Wayne,N.J.)から総合的な商品名Aersolとして入手可能)、ポリエトキシ化第四級アンモニウム塩及び第一級脂肪族アミンのエチレンオキシド縮合生成物(Armak Company(Chicago,Illinois)から商品名Ethoquad,Ethomeen,又はArquadとして入手可能)、ポリオキシアルキレングリコール変性ポリシロキサン、N-アルキルアミドベタイン及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、グリシン誘導体、スルタイン、アルキルポリアミノカルボキシレート及びアルキルアンホアセテート、並びにこれらの混合物が挙げられる。これらの界面活性剤はまた、他の供給元から様々な商標名で入手することができる。
当業者であれば、エマルジョン中の成分の相対量及びその調製方法を容易に最適化することができる。硬化性組成物がエマルジョンの形態である場合、エマルジョンは、反応性成分及び/又は触媒をそこから分離するための2つの部分又は複数の部分のエマルジョンであり得る。
組成物でコーティングされた基材を調製する方法は、基材上に組成物を適用する、即ち、配置することを含む。本方法は、基材上に硬化性組成物を硬化させ、その結果、基材上に剥離コーティングを形成させて、コーティングされた基材を得ることを更に含む。硬化は、高温、例えば、50℃~180℃、あるいは50℃~120℃、あるいは50℃~90℃で加熱し、コーティングされた基材を得ることによって実施され得る。当業者であれば、硬化性組成物の成分及び基材組成物又は構造体の材料の選択を含む様々な要因に応じて、適切な温度を選択することができる。
硬化性組成物は、任意の好適な方法で基材上に配置又は分配することができる。典型的には、硬化性組成物はウェットコーティング技術により、ウェット形態で適用される。硬化性組成物は、i)スピンコーティング;ii)ブラシコーティング;iii)ドロップコーティング;iv)スプレーコーティング;v)ディップコーティング;vi)ロールコーティング;vii)フローコーティング;viii)スロットコーティング;ix)グラビアコーティング;x)メイヤーバーコーティング;又はxi)i)~x)のうちのいずれか2つ以上の組み合わせ;によって適用することができる。典型的には、硬化性組成物を基材上に配置することにより、基材上にウェット付着物が生じ、次いで、これが硬化されて、硬化したフィルム、すなわち基材上の硬化性組成物から形成された剥離コーティングを含む、コーティングされた基材を得る。
基材は限定されず、任意の基材であってもよい。硬化したフィルムは、基材から分離可能であってもよく、又はその選択に応じて、物理的及び/又は化学的に基材に結合されていてもよい。基材は、ウェット付着物を硬化するための、一体型ホットプレート又は一体型若しくは独立型の炉にかけられてもよい。基材は、任意選択で、連続的又は非連続的な形状、サイズ、寸法、表面粗さ、及びその他の特性を有してもよい。あるいは、基材は、高温の軟化点温度を有してもよい。しかし、硬化性組成物及び方法は、そのようには限定されない。
あるいは、基材は、熱硬化性及び/又は熱可塑性であってもよいプラスチックを含んでもよい。しかし、基材は、ガラス、金属、セルロース(例えば、紙)、木材、厚紙、板紙、シリコーン、若しくはポリマー材料、又はこれらの組み合わせであるか、あるいは含んでいてもよい。
好適な基材の具体例としては、クラフト紙、ポリエチレンコーティングクラフト紙(PEKコーティング紙)、普通紙などの紙基材;ポリアミド(PA)等のポリマー基材;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン等のポリオレフィン;スチレン樹脂;ポリオキシメチレン(POM);ポリカーボネート(PC);ポリメチレンメタクリレート(PMMA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリフェニレンエーテル(PPE);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリスルホン(PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(PK);ポリエーテルケトン;ポリビニルアルコール(PVA);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリアリレート(PAR);ポリエーテルニトリル(PEN);フェノール樹脂;フェノキシ樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハン等のセルロース;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化樹脂;ポリスチレン型、ポリオレフィン型、ポリウレタン型、ポリエステル型、ポリアミド型、ポリブタジエン型、ポリイソプレン型、フルオロ型等の熱可塑性エラストマー;並びにこれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。
硬化性組成物、又はウェット付着物は、典型的には、ある時間にわたり、高温で硬化される。当該時間は、典型的には、硬化性組成物の硬化、すなわち架橋をもたらすのに十分である。時間は、0超~8時間、あるいは0超~2時間、あるいは0超~1時間、あるいは0超~30分、あるいは0超~15分、あるいは0超~10分、あるいは0超~5分、あるいは0超~2分であってもよい。時間は、使用される高温、選択される温度、所望のフィルム厚さ、及び硬化性組成物中の任意の水又はビヒクルの存在の有無を含む、様々な要因に応じて決定される。
硬化性組成物を硬化させるステップは、典型的には、0.1秒~50秒、あるいは1秒~10秒、あるいは0.5秒~30秒の滞留時間を有する。選択される滞留時間は、基材の選択、選択される温度、及びライン速度に応じて異なってもよい。本明細書で使用するとき、滞留時間は、硬化性組成物又はウェット付着物が高温にさらされる時間を指す。滞留時間は、硬化性組成物、ウェット付着物、又はその部分的に硬化した反応中間体が、典型的には硬化を開始する高温にさらされなくなった後であっても進行中の硬化がある場合があるので、硬化時間とは区別される。あるいは、コーティングされた物品は、オーブン内のコンベヤーベルト上で調製することができ、滞留時間は、オーブンの長さ(例えばメートル単位)をコンベヤーベルトのライン速度(例えば、メートル/秒)で割ることによって計算することができる。
当該時間は、硬化の反復、例えば、第1の硬化及び後硬化に細分でき、第1の硬化は、例えば1時間であり、後硬化は、例えば3時間である。高温は、このような反復において、室温を上回る任意の温度から、独立して選択されてもよく、各反復において同じであってもよい。
(I)ビヒクルの任意選択の存在及び選択に応じ、組成物の硬化はまた、乾燥のステップを含み得る。例えば、組成物が(I)ビヒクルが存在し、水を含むようなエマルジョンの形態である場合、硬化のステップはまた、典型的には、エマルジョンから水を乾燥又は除去して除去する。乾燥は、硬化と同時に行われてもよく、又は硬化と別個であってもよい。
フィルム及びコーティングされた基材の厚さ及び他の寸法に応じて、コーティングされた基材は、反復プロセスを介して形成することができる。例えば、第1の付着物を形成し、第1の高温に第1の時間にわたってさらして、部分的に硬化した付着物を得ることができる。次いで、第2の付着物を、上述の部分的に硬化した付着物上に配置し、第2の高温に第2の時間にわたってさらして、第2の部分的に硬化した付着物を得ることができる。部分的に硬化した付着物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間に更に硬化する。第3の付着物を、第2の部分的に硬化した付着物上に配置し、第3の高温に第3の時間にわたってさらして、第3の部分的に硬化した付着物を得ることができる。第2の部分的に硬化した付着物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間に更に硬化する。このプロセスを、コーティングされた物品を所望どおりに構築するために、例えば1~50回繰り返すことができる。部分的に硬化した層の複合体は、最終後硬化に供され、例えば、上述の高温及び時間にさらされる。各高温及び時間は独立して選択されてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。物品が反復プロセスを介して形成される時、各付着物は、独立して選択されてもよく、硬化性組成物において選択される成分、それらの量、又は両方が異なってもよい。あるいは、更に、各反復層は、このような反復プロセスにおいて部分的に硬化されるだけではなく、完全に硬化することができる。
あるいは、付着物は、ウェットフィルムを含んでもよい。あるいは、反復プロセスは、部分的に硬化した層の硬化状態に応じて、ウェットオンウェットであってもよい。あるいは、反復プロセスは、ウェットオンドライであってもよい。
基材上に硬化性組成物から形成されたフィルムを備えるコーティングされた基材は、フィルム及び基材の相対厚さ等の様々な寸法を有してもよい。フィルムは、最終使用用途に応じて変化し得る厚さを有する。フィルムは、0超~4,000μm、あるいは0超~3,000μm、あるいは0超~2,000μm、あるいは0超~1,000μm、あるいは0超~500μm、あるいは0超~250μmの厚さを有してもよい。しかし、他の厚さ、例えば、0.1~200μmも想到される。例えば、フィルムの厚さは、0.2~175μm;あるいは、0.5~150μm;あるいは、0.75~100μm;あるいは、1~75μm;あるいは、2~60μm;あるいは3~50μm、あるいは、4~40μmであってもよい。あるいは、基材がプラスチックである場合、フィルムは、0超~200μm、あるいは0超~150μm、あるいは0超~100μmの厚さを有してもよい。
所望であれば、フィルムは、その最終使用用途に応じて、更なる処理を受けることができる。例えば、フィルムは、酸化物付着(例えば、SiO2付着)、レジスト付着、及びパターニング、エッチング、化学ストリッピング、コロナ若しくはプラズマストリッピング、金属被覆、又は金属付着を受けることができる。このような更なる処理技術は、全般的に公知である。このような付着は、化学蒸着(低圧化学蒸着、プラズマ増強化学蒸着、及びプラズマ支援化学蒸着等)、物理蒸着、又は他の真空蒸着技術であってもよい。多くのこのような更なる処理技術は、高温、特に真空蒸着を伴い、優れた熱的安定性を考慮すると、これに対してフィルムは十分に適している。しかし、フィルムの最終用途に応じて、このような更なる処理によりフィルムを使用することができる。
コーティングされた基材は、多様な最終使用用途に使用することができる。例えば、コーティングされた基材は、コーティング用途、包装用途、接着剤用途、繊維用途、布地又は織物用途、建築用途、輸送用途、エレクトロニクス用途、又は電気用途に使用することができる。しかし、硬化性組成物は、コーティングされた基材を調製する以外の最終使用用途、例えばシリコーンゴムなどの物品の調製に使用することができる。
あるいは、コーティングされた基材は、例えば、アクリル樹脂型感圧接着剤、ゴム型感圧接着剤、及びシリコーン型感圧接着剤、並びにアクリル樹脂型接着剤、合成ゴム型接着剤、シリコーン型接着剤、エポキシ樹脂型接着剤、及びポリウレタン型接着剤などの任意の感圧接着剤を含む、テープ又は接着剤用の剥離ライナーとして使用することができる。基材の各主表面は、両面テープ又は接着剤のためにその上に配置されたフィルムを有し得る。
あるいは、硬化性組成物が、例えば剥離コーティング又はライナーを形成するために剥離コーティング組成物として配合される場合、剥離コーティング組成物は、例えば、成分を共に混合して一部分組成物を調製することによって調製され得る。しかし、使用時(例えば、基材に適用する直前)に部分が組み合わされるまで、SiH官能基(例えば、(C)有機ケイ素化合物)を有する成分及び(D)ヒドロシリル化反応触媒が別個の部分に貯蔵される多部分組成物として剥離コーティング組成物を調製することが望ましい場合がある。硬化性組成物が剥離コーティング組成物である場合、剥離コーティング組成物は、上記のようにコーティングされた基材を形成するために使用でき、剥離コーティングは、基材、例えば、基材の表面に剥離コーティング組成物を適用及び硬化することによって形成される。
例えば、多部分硬化性組成物は、
(A)反応生成物、(B)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合エチレン性不飽和基を含むオルガノポリシロキサン、及び(D)ヒドロシリル化反応触媒、並びに任意選択で存在する場合、(F)固定添加剤、及び(I)ビヒクルのうちの1つ以上を含むベース部分という(A)部と、
(C)1分子あたり平均少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物、並びに任意選択で存在する場合、(F)固定添加剤及び/又は(I)ビヒクルを含む硬化剤部分という(B)部とを含む。使用される場合、(E)阻害剤は、(A)部、(B)部、又はその両方に添加され得る。(A)部と(B)部とは、1:1~30:1、あるいは1:1~10:1、あるいは1:1~5:1、あるいは1:1~2:1の重量比(A):(B)で組み合わせてもよい。(A)部及び(B)部は、例えば、剥離コーティング組成物を調製するために部を組み合わせる方法、剥離コーティング組成物を基材に適用する方法、及び剥離コーティング組成物を硬化する方法についての説明書と共に、キットに提供することができる。
あるいは、(F)固定添加剤が存在する場合、(A)部又は(B)部のいずれかに組み込むか、別個の(第3の)部分に追加することができる。
剥離コーティング組成物は、スプレー、ドクターブレード、ディッピング、スクリーン印刷などの任意の簡便な手段によって、又はロールコーター、例えば、オフセットウェブコーター、キスコーター、若しくはエッチングされたシリンダーコーターによって基材に適用することができる。
本発明の剥離コーティング組成物は、上述のもの等の任意の基材に適用することができる。あるいは、剥離コーティング組成物は、ポリマーフィルム基材、例えばポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリスチレンフィルムに適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、プラスチックコーティング紙、例えば、ポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又はクレーコーティングクラフトをはじめとする、紙基材に適用することができる。剥離コーティング組成物は、あるいは、金属箔基材、例えばアルミニウム箔に適用することができる。
特定の実施形態では、コーティングされた基材を調製する方法は、基材上に剥離コーティング組成物を適用又は配置する前に、基材を処理することを更に含んでもよい。基材の処理は、プラズマ処理又はコロナ放電処理等の任意の簡便な手段によって実施することができる。あるいは、基材は、プライマーを適用することによって処理することができる。特定の例では、剥離コーティング組成物から剥離コーティングを基材上に形成する前に基材が処理される場合、剥離コーティングのアンカーは改善され得る。
剥離コーティング組成物が(I)ビヒクルを含む場合、この方法は、(I)ビヒクルを除去することを更に含み得、それは、(I)ビヒクルの全部又は一部を除去するのに十分な時間50℃~100℃で加熱するなどの任意の従来の手段によって実施され得る。方法は、剥離コーティング組成物を硬化して、基材の表面上に剥離コーティングを形成することを更に含んでもよい。硬化は、100℃~200℃で加熱することなどの任意の従来の手段によって実施することができる。
製造コーター条件下で、硬化は、120℃~150℃の空気温度で、1秒~6秒、あるいは1.5秒~3秒の滞留時間で行うことができる。°°加熱は、オーブン、例えば、空気循環オーブン若しくはトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダの周りにコーティングされたフィルムを通すことによって行うことができる。
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しており、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。実施例で使用される特定の成分を下の表1に記載し、続いて、実施例でも使用される特性決定及び評価の手順を記載する。
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)スペクトル法
核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、ケイ素を含まない10mmのチューブ及びCDCl3/Cr(AcAc)3溶媒を使用して、NMR BRUKER AVIII(400MHz)上で得る。29Si-NMRスペクトルの化学シフトを、内部溶媒共鳴を基準とし、テトラメチルシランに対して報告する。
ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation chromatography:GPC)
ゲル浸透クロマトグラフィー分析は、示差屈折計、オンライン示差粘度計、低角度光散乱(LALS:15°及び90°の検出角度)、及びカラム(2 PL Gel Mixed C、Varian)から構成される三重検出器を備えたAgilent 1260 Infinity IIクロマトグラフ上で実施する。移動相として、トルエン(HPLC grade、Biosolve)を、流速1mL/分で使用する。
X線蛍光(XRF)
X線蛍光(XRF)は、Oxford Instruments Lab-X3500ベンチトップXRFアナライザーで実施される。
ミストレベル評価(MLE)
ミスト評価は、換気システムを備えた密閉チャンバー内に配置された特注の2ロールコータを含むミスト評価システムを使用して行われる。コータは、ゴム製の底部ロール(ネオプレン)の上に積み重ねられた構成で配置されたトップロール(クロム)を含み、試料パンの上に配置され、モータによって駆動される(動作中、毎分1000メートルの回転)。各ロールは、直径6インチ及び幅12インチである。換気システムは、空気を筺体の背壁に引き込むように構成され、空気流(マグネットゲージでの0.20~0.25インチの水(すなわち、0.05~0.062kPa)の速度)を測定/監視するための、筺体の天井に位置決めされたマグネチックゲージ、ミストを収集するための、コータのトップロール(6インチ)の中心の上方に位置決めされた2つのミスト収集管、及び各ミスト収集管に接続されたエアロゾルモニタ(DustTrak8530、5秒毎にミストレベルを記録する)を含む。
試料(600g)を試料パンに配置し、これを底部ロールの下方に挿入して収集し、フィルムとしてトップロールに移送する。コータを6分間動作させ、そこから発生するミストをミスト収集管で収集し、エアロゾルモニタで測定する。120秒間~360秒の間に得られたミストレベルが平均化され、試料のミスト値で報告される。
ミストレベル及び硬化性能工業評価(MLIE)
ミスト評価及び硬化性能評価は、6ロールコーティングヘッドをベースにした工業用パイロットラインで実施され、ここで5つのローラは、クロム鋼とゴムとのスリーブロールが交互に積み重ねられた構成で、2つの第1底部ロールが水平方向に整列し、コーティングバスが保持される「ニップ」を形成し、残りのロールは垂直に整列し、コーティングが最終的に2つのトップロール間の「ニップ」で紙の表面に移されるまで、あるロールから次のロールに移すようにする。各ロールは、独立した圧力設定を使用して共にプレスされ、それぞれが異なる速度に設定された異なるモータによって駆動されるため、コーティングが最終的に紙の表面に適用されるまで、コーティングの厚さが段階的に減少する。ミスト収集固定管は、最後の2つのコーティングローラの前面外側ニップから20cm未満に配置され、エアロゾルモニタDustrak8530に接続される。最後のトップ2つのローラーは、ミストレベルが記録され、平均化されてミスト値(mg/m3)として報告されるミスト評価期間中、1,000m/分間など、所望の速度に近い速度で回転するように設定される。剥離コーティング配合物の硬化性能は、以下に記載される抽出可能分百分率試験によって評価される。
硬化性能:抽出可能分百分率
試料組成物の硬化性能は、抽出可能分パーセント値(抽出可能分%)を決定することによって評価する。具体的には、試料組成物をコーティングし、基材(グラシン紙)上で硬化させて、コーティングされた基材を形成し、直ちに、3つの試料ディスクに切断する(ダイカッター、1.375インチ(3.49cm))。この試料ディスクは、混入及び/又は損傷を最小限に抑えるためにピンセットのみによって取り扱う。各試料ディスクを、XRFで分析して、初期コーティング重量(Wi
s)を決定し、溶媒(メチルイソブチルケトン、40mL)を入れた個々のボトル(100mL、蓋で覆う)内に入れ、実験台で30分間静置浸漬する。次いで、各試料ディスクをボトルから取り出し、コーティングした面を上にしてきれいな表面(ティッシュペーパ)に置き、(吸い取り/拭き取りせずに)残留溶媒を蒸発させ、XRFで分析して最終コーティング重量(Wf
s)を決定する。各試料の抽出可能分%は、溶媒浸漬からのコーティング重量の変化パーセントであり、すなわち、式[(Wi
s-Wf
s)/Wi×100%)を使用して計算する。抽出可能分%は、コーティングされた基材から抽出可能な試料組成物の非硬化成分(例えば、非架橋シリコーン)の量を示し、例えば、抽出可能分%が低いほど、硬化性能が高い/より良いことを示す。
硬化性能:アンカー(ROR%)
アンカー指数を介して、すなわち、耐摩擦パーセント(ROR%)値を決定することによって、試料組成物のアンカーを評価する。具体的には、試料組成物をコーティングし、基材(グラシン紙)上で硬化させて、コーティングされた基材を形成する。硬化直後に、コーティングされた基材を、2つの試料ディスクに切断し(ダイカッター、1.375インチ(3.49cm))、各試料ディスクをXRFで分析して、初期コーティング重量(Wi
a)を決定する。次に、各試料ディスクを、テーバータイプの摩耗試験(例えば、ASTM D4060-19、「耐摩耗性の標準試験方法」など)と同様の方法で、自動摩耗装置を使用して負荷下のフェルト(1.9kg)で摩耗させ、続いてXRFで分析して最終コート重量(Wf
a)を決定する。各試料のROR%を、式[Wf
s/Wi
s]× 100%)を使用して計算する。ROR%は、コーティングが基材にアンカーしている強度を示し、例えば、ROR%が高いほど、高い/良好なアンカー、ROR%が高いほど良好であることを示す。
調製例1-15:
以下の表2は、(1)分岐状オルガノポリシロキサンと(2)有機ケイ素化合物との(A)反応生成物の調製を伴う、調製例1~15で使用される成分の同定及び量を示す。調製例1~15のそれぞれにおいて、(A1)分岐状オルガノポリシロキサン及び特定の(A2)有機ケイ素化合物を、機械的撹拌機を介してプラスチックボトル内で十分に混合し、混合物が得られる。(D1)触媒を溶媒1に配置し、触媒溶液が得られる。室温で激しく撹拌しながら触媒溶液を混合物にゆっくりと加え、反応混合物が得られる。反応混合物を20分間撹拌し、ベントオーブン内にて40℃で12時間維持する。調製例1~15のそれぞれについて、透明で均一な粘性流動性生成物が100%の収率で得られる。
以下の表3は、利用可能な場合、29Si-NMRによる、調製例1~15で調製された各反応生成物の平均式を示す。表3では、MCH2CH2は、特定の(A2)有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子と反応する(A1)分岐状オルガノポリシロキサンのケイ素結合ビニル基からのケイ素結合エチレン基を含むMシロキシ単位を示す。MViは、特定の(A2)有機ケイ素化合物のケイ素結合水素原子と反応しなかった(A1)分岐状オルガノポリシロキサンからのケイ素結合ビニル基を含むMシロキシ単位を示す。MOZは、ケイ素結合ヒドロキシル基又はアルコキシ基(ZはH又はアルキル)を含むMシロキシ単位を示し、それは、(A1)分岐状オルガノポリシロキサン中にその形成から存在していたものであり、反応生成物に残っている。Dはジメチルシロキシ単位を示す。
実施例1~11及び比較例1~3:塩基組成物
剥離コーティングを形成するための様々な塩基組成物が調製される。実施例1~11は、調製例1~10で調製された(A)反応生成物を含む。調製例1からの(A)反応生成物は、以下の表4ではP.E.1と呼ばれる。調製例2からの(A)反応生成物は、以下の表4ではP.E.2などと呼ばれ、以下同様である。表4では、C.E.は比較例を示す。以下の表4の全ての値はグラム単位である。
表5は、上記の手順に従って測定された、実施例1~11及び比較例1~3の各塩基組成物のミストレベル評価(MLE)を示す。
実施例12~15及び比較例4~5:コーティングされた基材
硬化性組成物が調製され、コーティングされた基材を調製するために使用される。特に、各硬化性組成物は、基材(グラシン紙)上にコーティングされ、パイロットコータ(G-001,Milliken Engineering INC)を使用することによってコーティングされた基材を形成するために硬化され(出口ウェブオーブン温度:182℃、滞留時間:10秒間)、その試料は、即時抽出可能分%及び即時ROR%について評価される。以下の表6は、実施例12~15及び比較例4~5の硬化性組成物を形成するための成分及びその相対量を示す。実施例12~15及び比較例4~5の各硬化性組成物において、白金含有量は、(D1)に基づいて60ppmであり、(E1)と白金含有量とのモル比は40:1であり、SiHとViとのモル比は2:1である。
以下の表7は、実施例12~15及び比較例4~5で形成されたコーティングされた基材に関連する物理的特性を示す。7日間の剥離力(7dRF)は、様々な速度、つまり0.3m/分間(MPM)、10m/分間(MPM)、100m/分間(MPM)、及び300m/分間(MPM)で測定された。7dRFは、RT及び50%RHで、40ポンドで7日間エージングされたTesa 7475標準テープとラミネートした後、ImassSP-2100及びZPE-1100W剥離試験システムを介して試験された。
実施例16~21及び比較例6~7:コーティングされた基材
硬化性組成物が調製され、コーティングされた基材を調製するために使用される。特に、各硬化性組成物は、ミストレベル及び硬化性能工業評価(MLIE)について上記に記載されたプロセスに従って基材上にコーティングされる。以下の表8は、実施例16~21及び比較例6~7の硬化性組成物を形成するための成分及びその相対量を示す。実施例16~21は、調製例1、8、9、又は10で得られた(A)反応生成物を含む。調製例8からの(A)反応生成物は、以下の表8ではP.E.8と呼ばれる。調製例10からの(A)反応生成物は、以下の表8ではP.E.10などと呼ばれ、以下同様である。表8では、C.E.は比較例を示す。以下の表8の全ての値はグラム単位である。
表9は、実施例16~21及び比較例6~7のそれぞれについて、上記の手順に従って様々なライン速度で測定されたミストレベル工業評価(MLIE)値及び硬化性能(抽出可能分%)を示す。
用語の定義及び使用
仕様で使用される略語の定義は、以下の表8にある。
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を包含する。
「アルキル」は、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はiso-プロピルを含む)、ブチル(iso-ブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチルを含む)、ペンチル(iso-ペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチルを含む);並びにn-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、及びn-デシル、並びに6個以上の炭素原子を有する分岐状飽和一価炭化水素基が挙げられる。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は、1~18個の炭素原子、あるいは1~12個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有し得る。
「アラルキル」及び「アルカリール」は、それぞれ、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を指す。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、トリル、キシリル、ジメチルフェニル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、及びフェニルブチルが挙げられる。アラルキル基は、少なくとも7個の炭素原子を有する。単環式アラルキル基は7~12個の炭素原子、あるいは7~9個の炭素原子、あるいは7~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アラルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有していてよい。
「アルケニル」は、二重結合を有する、分岐状又は非分岐状一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
「アルキニル」は、三重結合を有する、分岐状又は非分岐状一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル及びプロピニルが挙げられる。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
「アリール」とは、環炭素原子からの水素原子の除去により、アレーンから誘導された炭化水素基を意味する。アリールは、フェニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、あるいは10~14個の炭素原子、あるいは12~14個の炭素原子を有し得る。
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は、単環式でも多環式でもよく、例えば、2環式又は2個を超える環を有するものでもよい。2環式炭素環は、縮合環、橋かけ環又はスピロ多環式環でもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式炭素環は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は、飽和(例えば、シクロペンタン又はシクロヘキサン)、部分不飽和(例えば、シクロペンテン又はシクロヘキセン)、又は完全不飽和(例えば、シクロペンタジエン又はシクロヘプタトリエン)であってもよい。
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式シクロアルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。
「一価炭化水素基」は、水素原子及び炭素原子からなる一価の基を意味する。一価炭化水素基としては、上述で定義したアルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキル基が挙げられる。
「一価ハロゲン化炭化水素基」とは、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、式としてはハロゲン原子で置換されている一価炭化水素基を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基(又はハロアルキル基)としては、水素原子のうちの1つ以上が、F又はClなどのハロゲン原子で置換された、上述のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基及びフッ素化シクロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル(CF3)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル);並びに塩素化アルキル基及び塩素化シクロアルキル基(例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチル)が挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、クロロベンジル及びフルオロベンジルが挙げられる。
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。