JP2022030063A - 車両の前部車体構造 - Google Patents
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Abstract
Description
また、SORB(Small Overlap Rigid Barrier)試験に代表されるフロントサイドフレームよりも車幅方向外側部分(オーバラップ領域が25%以下)に障害物が衝突する、所謂スモールオーバーラップ衝突の際、エプロンレインを車幅方向内側に内折れ変形させることにより、衝撃エネルギーを吸収して乗員空間を安全に確保することも知られている。
スモールオーバーラップ衝突時、エプロンレインの後部と先端部との接合部には、剪断方向に向かう剪断応力が主に作用し、最終的に、両者の接合は破断分離される。
それ故、スモールオーバーラップ衝突時の衝撃エネルギ吸収性能は、ヒンジピラーを用いることなく、エプロンレインの板厚増加や補強部材の追加等により確保している。
つまり、エプロンレインに入力した衝突荷重がヒンジピラーインナ部材に伝達されないため、ヒンジピラーインナ部材の座屈強度を衝撃エネルギ吸収に寄与させることができない。エプロンレインに入力した応力をヒンジピラーインナ部材に伝達することにより、ヒンジピラーインナ部材の座屈強度を衝撃エネルギ吸収に利用することができ、結果的に車体重量の軽量化を図ることも可能であるが、具体的な提案は現時点なされていない。
前記先端部が、前記エプロンレインフォースメントの後部に接合された接合部と、前記本体部との連結部近傍位置に形成された脆弱部と、前記接合部と脆弱部との間に車幅方向内側に突出するように形成された突出部とを有するため、脆弱部及び突出部の座屈により接合部の姿勢を変更することができる。前記脆弱部及び突出部の座屈強度が前記接合部の接合強度よりも低く設定されているため、エプロンレインフォースメントと接合部の破断よりも脆弱部及び突出部の座屈を早期に発生させることができる。しかも、脆弱部及び突出部の座屈を用いて接合部の姿勢を変更することにより、接合部に作用する応力を剪断応力から圧縮応力に変換し、エプロンレインフォースメントとヒンジピラーインナ部材との接合の破断を抑制してヒンジピラーインナ部材の座屈強度を衝撃エネルギ吸収に寄与させることができる。
この構成によれば、本体部と先端部の材料強度差によって脆弱部を形成することができる。
この構成によれば、本体部の板厚と先端部の板厚によって脆弱部を形成することができる。
この構成によれば、スモールオーバーラップ衝突時、突出部の変形を用いて脆弱部を車幅方向内側に折り曲げられるように誘導することができる。
以下の説明は、本発明を車両の前部車体構造に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
図1,図2に示すように、車両Vは、車室床面を構成するフロアパネル1と、前後に延びる左右1対のサイドシル2と、車体前部に形成されたエンジンルーム(図示略)と車室とを仕切るダッシュパネル3と、このダッシュパネル3から前方に延びる左右1対のフロントサイドフレーム4と、1対のサイドシル2の前端部から鉛直上方に夫々延びる左右1対のヒンジピラー20と、これら1対のヒンジピラー20の上端部から前方に延びる左右1対のエプロンレインフォースメント(以下、エプロンレインと略す)30等を備えている。
以下、車両Vが左右対称構造に構成されているため、右側部分について主に説明する。また、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印OUT方向を車幅方向外方とし、矢印U方向を車体上下方向上方としている。
サイドシル2は、フロアパネル1の車幅方向両端に沿って前後に延びるように設けられている。このサイドシル2は、車幅方向内側に開放された断面略ハット状のサイドシルアウタと、車幅方向外側に開放された断面略ハット状のサイドシルインナとを有し(何れも図示略)、両者のフランジ部が接合されて前後に延びる閉断面が形成されている。
ダッシュアッパパネル3aの後端部には、車幅方向に延びるカウルインナパネルが接合され、このカウルインナパネルの前側に車幅方向に延びるカウルアウタパネルが接合されている(何れも図示略)。
図1~図7に示すように、ヒンジピラー20は、断面略ハット状のピラーアウタ部材21と、このピラーアウタ部材21と協働して上方に延びる略矩形閉断面を形成する板状のピラーインナ部材22とを有している。ピラーアウタ部材21及びピラーインナ部材22は、高張力鋼或いは超高張力鋼にて構成されている。
ピラーアウタ部材21は、断面略コ字状の本体部21aと、この本体部21aの前端部と後端部から前方と後方に夫々延びる前後1対のフランジ部21bから構成されている。
本体部21aの上段部及び下段部には、ドアヒンジを取り付けるため、車幅方向外側に膨出した上下1対のヒンジ取付部が夫々形成されている。
図12,図13に示すように、ピラーインナ部材22は、本体部21aと協働して略直方体状の閉断面を形成する本体部22aと、この本体部22aの上端部から前方に延びる上側延長部22bと、本体部22aの下端部から後方に延びる下側延長部22cとを備えている。本体部22aの前部及び後部にはピラーアウタ部材21の前後1対のフランジ部21bがスポット溶接にて夫々接合されている。サイドシルアウタとサイドシルインナは、下側延長部22cを間に介在させた状態で接合されている。それ故、サイドシル2の閉断面は、下側延長部22cにて車幅方向内外に区分されている。
図14,図15に示すように、先端部材23は、側面視にて略台形状の本体部23aと、この本体部23aの上端部から車幅方向内側に屈曲された接合部23bとを有している。
接合部23bは、後述するエプロンレイン30の下壁部31cにスポット溶接にて接合される。接合部23bとエプロンレイン30の接合強度は、脆弱部23e及び突出部23dの座屈強度よりも高く設定されている。
突出部23dは、底辺が開放され且つ2辺が稜線で規定された三角形状ビードで構成されている。具体的には、後側稜線は、前方下り傾斜状に形成された連結部23cと略平行になるように配置され、前側稜線は、水平状に形成された接合部23bと略平行になるように配置されている。
脆弱部23e及び突出部23dの座屈を用いて接合部23bの姿勢を変更することにより、接合部23bに作用する応力を剪断応力から圧縮応力に変換し、エプロンレイン30とピラーインナ部材22との接合の破断を一層抑制している。これにより、図17の矢印に示すように、先端部材23が、エプロンレイン30を後方に流れる応力の一部を車幅方向内側に向かう成分に変換し、上側延長部22bを車幅方向内側に押圧(内折れ誘導)している。
図1~図3に示すように、エプロンレイン30は、ヒンジピラー20との連結部から前方に延びる直線部30aと、この直線部30aの前端部から車幅方向内側且つ下側に延びる湾曲部30bとを備えている。これにより、タイヤ幅が太くされたタイヤを収容可能なホイールハウス6をエプロンレイン30(直線部30a)の下方に形成している。
断面略L字状のレインインナ部材32は、レインアウタ部材31の前半部に対応するように設けられ、レインアウタ部材31と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を形成している。具体的には、レインアウタ部材31の後半部が直線部30aを形成し、レインアウタ部材31の前半部とレインインナ部材32が閉断面を構成する湾曲部30bを形成している。
図18,図19に示すように、レインアウタ部材31は、車幅方向に略直交する面からなる外面部31aと、この外面部31aの上端部から車幅方向外側に延びる上壁部31bと、外面部31aの下端部から車幅方向内側に延びる下壁部31cとを備えている。
外面部31aのうち直線部30aに対応した外面部31aには、横ビード部31sと、第1縦ビード部31tと、第2縦ビード部31uが設けられている。
図8~図10に示すように、横ビード部31sは断面略矩形状に形成されている。
横ビード部31sの上下寸法は、レインアウタ部材31の後端部の上下寸法の15%から30%までの範囲で設定している。本実施形態では、横ビード部31sの上下寸法をレインアウタ部材31の後端部の上下寸法の略20%に設定している。
図7~図10に示すように、横ビード部31sは前方程断面積(車幅方向外側突出量)が小さくなる、換言すれば、横ビード部31sの断面重心を結ぶ線Lが前方程車幅方向内側に移行するように構成されている。
図3に示すように、この第2縦ビード部31uは、側面視にて、先端部材23の上方位置に配置され、先端部材23の前後方向位置と略同じ前後方向位置に配置されている。
これにより、スモールオーバーラップ衝突時、レインアウタ部材31を後方に向かって流れる応力を第2縦ビード部31uに集中させ、先端部材23と協働してレインアウタ部材31に作用する車幅方向内側に向かう応力成分を増加することができる。
インナパネル11は、ダッシュアッパパネル3aと上壁部31bの上端部を連結している。このインナパネル11は、上壁部31bの後端部から第2縦ビード部31uに対応した前後方向位置に亙って設けられている。本実施形態では、インナパネル11の外側前端部が、第2縦ビード部31uの後端部よりも前方で且つ第2縦ビード部31uの前端部よりも後方になるよう配設されている。
図8に示すように、横ビード部24aは断面略矩形状に形成されている。カウルサイドレイン24をレインアウタ部材31に接合する際、横ビード部24aは、車幅方向内側から横ビード部31sに部分的に重畳されている。
スモールオーバーラップ衝突時、レインアウタ部材31(横ビード部31s)を後方に流れてきた応力がカウルサイドレイン24に伝達される際、応力は縦ビード部24bに沿って上下方向に分散される。これにより、図22の矢印に示すように、レインアウタ部材31を後方に向かって流れてきた応力を縦ビード部24bにより上下方向の広い範囲に亙って車幅方向内側に作用させることができ、レインアウタ部材31が後端部分で内折れ変形するように誘導することができる。
本実施形態によれば、ヒンジピラー20が、車幅方向外側に配置されたピラーアウタ部材21と、このピラーアウタ部材21と協働して上下に延びる閉断面を形成するピラーインナ部材22とを有し、ピラーインナ部材22は、車幅方向に直交する面を備えた本体部22aと、レインアウタ部材31(エプロンレイン30)と略同じ高さ位置において本体部22aから前方に延びる先端部材23とを備えるため、ピラーインナ部材22を本体部22aとこの本体部22aに接合された先端部材23とにより形成することができる。先端部材23が、レインアウタ部材31の後部に接合された接合部23bと、本体部22aに連結する連結部23cの近傍位置に形成された脆弱部23eと、接合部23bと脆弱部23eとの間に車幅方向内側に突出するように形成された突出部23dとを有するため、脆弱部23e及び突出部23dの座屈により接合部23bの姿勢を変更することができる。脆弱部23e及び突出部23dの座屈強度が接合部23bの接合強度よりも低く設定されているため、レインアウタ部材31と接合部23bの破断よりも脆弱部23e及び突出部23dの座屈を早期に発生させることができる。しかも、脆弱部23e及び突出部23dの座屈を用いて接合部23bの姿勢を変更することにより、接合部23bに作用する応力を剪断応力から圧縮応力に変換し、レインアウタ部材31と先端部材23(ピラーインナ部材22)との接合の破断を抑制してピラーインナ部材22の座屈強度を衝撃エネルギ吸収に寄与させることができる。
1〕前記実施形態においては、脆弱部23eを本体部22aの材料強度と先端部材23の材料強度との強度差によって構成した例について説明したが、脆弱部23eを本体部22aの板厚よりも先端部材23の板厚を薄くして構成しても良い。これにより、本体部22aと先端部材23が同じ引張強度であっても、本体部22aの板厚と先端部材23の板厚によって脆弱部23eを形成することができる。また、脆弱部23eをエッチング加工やスリット加工等により成形しても良い。
21 ピラーアウタ部材
22 ピラーインナ部材
23 先端部材(先端部)
23b 接合部
23d 突出部
23e,23g 脆弱部
30 エプロンレイン
31 レインアウタ部材
V 車両
Claims (5)
- 車体前後方向に延びる左右1対のエプロンレインフォースメントと、これら1対のエプロンレインフォースメントの後端部に夫々連結された左右1対のヒンジピラーとを備えた車両の前部車体構造において、
前記ヒンジピラーが、車幅方向外側に配置されたヒンジピラーアウタ部材と、このヒンジピラーアウタ部材と協働して上下に延びる閉断面を形成するヒンジピラーインナ部材とを有し、
前記ヒンジピラーインナ部材は、車幅方向に直交する面を備えた本体部と、前記エプロンレインフォースメントと略同じ高さ位置において前記本体部から前方に延びる先端部とを備え、
前記先端部が、前記エプロンレインフォースメントの後部に接合された接合部と、前記本体部との連結部近傍位置に形成された脆弱部と、前記接合部と脆弱部との間に車幅方向内側に突出するように形成された突出部とを有し、
前記脆弱部及び突出部の座屈強度が前記接合部の接合強度よりも低く設定されたことを特徴とする車両の前部車体構造。 - 前記脆弱部は、前記本体部の材料強度と前記先端部の材料強度との強度差によって構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
- 前記脆弱部は、前記本体部の板厚よりも前記先端部の板厚を薄くしたことにより構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の前部車体構造。
- 前記脆弱部は、前記先端部に形成されたビードにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部車体構造。
- 前記突出部は、2つの稜線を有し且つ底辺が開放された三角形状ビードにより構成されたことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の車両の前部車体構造。
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