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JP2021195597A - 内部マニホールド型複極式水電解エレメント - Google Patents

内部マニホールド型複極式水電解エレメント Download PDF

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Abstract

【課題】リーク電流による不純物ガスの発生や電食を抑制し、負荷変動に応じて電解電流を変動させて出力を制御することができ、長期間高効率および高純度水素の製造を維持することを目的とする。【解決手段】陽極と、陰極と、隔壁と、外枠で構成され、ヘッダー部と枝管部とで構成されるマニホールドを有する内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメントであり、ヘッダー部及び枝管部は脱着可能な流路構成部材で構成されることを特徴とする、内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。【選択図】図1

Description

本発明は、内部マニホールド型複極式水電解エレメントに関する。
近年、二酸化炭素等の温室効果ガスによる地球温暖化、化石燃料の埋蔵量の減少等の問題を解決するため、再生可能エネルギーを利用した風力発電や太陽光発電等の技術が注目されている。
再生可能エネルギーは、出力が気候条件に依存するため、その変動が非常に大きいという性質がある。そのため、再生可能エネルギーによる発電で得られた電力を一般電力系統に輸送することが常に可能とはならず、電力需給のアンバランスや電力系統の不安定化等の社会的な影響が懸念されている。
そこで、再生可能エネルギーから発電された電力を、貯蔵及び輸送が可能な形に代えて、これを利用しようとする研究が行われている。具体的には、再生可能エネルギーから発電された電力を利用した水の電気分解(電解)により、貯蔵及び輸送が可能な水素を発生させ、水素をエネルギー源や原料として利用することが検討されている。
水素は、石油精製、化学合成、金属精製等の場面において、工業的に広く利用されており、近年では、燃料電池車(FCV)向けの水素ステーションやスマートコミュニティ、水素発電所等における利用の可能性も広がっている。このため、再生可能エネルギーから特に水素を得る技術の開発に対する期待は高い。
水の電気分解の方法としては、固体高分子型水電解法、高温水蒸気電解法、アルカリ水電解法等があるが、数十年以上前から工業化されていること、大規模に実施することができること、他の水電解システムに比べると安価であること等から、アルカリ水電解は特に有力なものの一つとされている。
しかしながら、アルカリ水電解を今後エネルギーの貯蔵及び輸送のための手段として適応させるためには、前述のとおり出力の変動が大きい電力を効率的且つ安定的に利用して水電解を行うことを可能にする必要があり、アルカリ水電解用の電解セルや装置の諸課題を解決することが求められている。
アルカリ水電解においては、電解時に、カソードでの水の還元反応が生じ、これにより生成したOH−は、隔膜を介してアノードへ拡散するが、電解液の供給配管であるマニホールドは隔膜と同様、イオン電導性を有するため、一部のOH−はマニホールドを介してアノードへ移動する。その際にOH−の流れとは逆にイオン電流が流れる。このように、マニホールドを介して流れるイオン電流をリーク電流と呼ばれる。リーク電流は、電解時に複数の水電解エレメントのアノード間またはカソード間におけるポテンシャル差が駆動力となってマニホールドを流れる。リーク電流が流れると、不純ガス発生によって電解効率が低下したり、セル構造体の電食が発生したりする場合がある。
このような諸課題に対し、フッ素樹脂などの高耐薬品性の電気絶縁材料をライニングする方法がある。例えば、特許文献1では、気液ボックスの接液面にフッ素樹脂をライニングする方法が挙げられている。この方法をマニホールドへ用いれば、リーク電流による不純ガスの発生や電食を防止することができ、高電解効率を長期間持続することができる。
国際公開第2018−182005号
しかしながら、特許文献1に記載されているような樹脂ライニングであっても、セル構造体との線膨張係数の違いやライニング末端における流体摩擦によって界面剥離を引き起こす可能性がある。界面剥離が発生すると、セル一式の交換が必要になり、かえって費用負担が大きくなる場合がある。また、一般的にセル交換の期間中は電解設備の停止期間が発生する為、電解槽の稼働率が低下してしまう問題があった。
そこで、本発明は、リーク電流による不純物ガスの発生や電食を抑制し、負荷変動に応じて電解電流を変動させて出力を制御することができ、長期間高効率および高純度水素の製造を維持することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
陽極と、陰極と、隔壁と、外枠で構成され、ヘッダー部と枝管部とで構成されるマニホールドを有する内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメントであり、前記ヘッダー部及び枝管部は脱着可能な流路構成部材で構成されることを特徴とする、内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[2]
前記マニホールドは、入口マニホールド及び出口マニホールドを含み、前記入口マニホールド及び前記出口マニホールドの両方が前記流路構成部材で構成されていることを特徴とする、[1]記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[3]
前記流路構成部材は、少なくとも、前記ヘッダー部を構成するヘッダー部構成部材と、前記枝管部を構成する枝管部構成部材とで構成されることを特徴とする、[1]または[2]記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[4]
前記枝管部構成部材は、前記ヘッダー部構成部材により支持されていることを特徴とする、[3]記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[5]
前記枝管部構成部材の流路断面積は、前記ヘッダー部構成部材の流路断面積よりも小さいことを特徴とする、[3]または[4]記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[6]
前記ヘッダー部構成部材の流路断面の形状は矩形あるいは楕円形であることを特徴とする、[3]〜[5]のいずれかに記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[7]
前記流路構成部材は、少なくとも絶縁材料で構成されることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[8]
前記流路構成部材は、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料で構成されることを特徴とする、[7]記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[9]
前記流路構成部材は、少なくとも水素または酸素発生活性が低い金属材料で構成されることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[10]
前記ヘッダー部構成部材の端部開放部またはその周囲に絶縁性ガスケットが配置されることを特徴とする、[3]〜[9]のいずれかに記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
[11]
[1]〜[10]のいずれかに記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメントとイオン透過性隔膜とが前記絶縁性ガスケットを介してスタックされて電解セルが構成されることを特徴とする、アルカリ水電解槽。
[12]
前記絶縁性ガスケットのエレメント外側に前記絶縁性ガスケット以外の樹脂ガスケットが配置され、前記樹脂ガスケットの圧縮弾性率は、前記絶縁性ガスケットの圧縮弾性率よりも大きいことを特徴とする、[11]記載のアルカリ水電解槽。
[13]
[11]または[12]に記載のアルカリ水電解槽で水の電気分解することを特徴とする、水素の製造方法。
[14]
負荷変動を有する電気を使用し、負荷変動に応じて電解電流を変動させることを特徴とする、[13]記載の水素の製造方法。
本発明によれば、リーク電流による不純物ガスの発生や電食を抑制でき、負荷変動に応じて電解電流を変動させて出力を制御することができ、長期間高効率および高純度水素の製造を維持できる。その上、工業生産が用意容易である上に、配管部流路構成部材のメンテナンスが容易であり、電解槽枠一式の交換が不要となるだけでなく、作業時間を大幅に短縮でき、電解停止時間を最小化することができる。
本実施形態の一例のアルカリ水電解装置の概要を示す図である。 本実施形態の一例のアルカリ水電解装置の電解槽の一例の全体について示す図である。 本実施形態の一例の内部マニホールド型のアルカリ水電解装置の電解槽の例を示す図である。 図3に示す内部マニホールド型のアルカリ水電解装置の電解槽を線A−Aに沿う面により切断した時の断面の一部を示す図である。 本実施形態の一例のヘッダー部構成部材の一部を示す図である。 本実施形態の一例の枝管部構成部材の一部を示す図である。 図5に示すヘッダー部構成部材と図6に示す枝管部構成部材とを組み立てたときの様子を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
図1に、本実施形態のアルカリ水電解装置の概要を示す。
(電解装置)
電解装置70は、例えば、図1に示すように、電解槽50と、電解液を循環させるための送液ポンプ71と、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンク72と、電解により消費した水を補給するための水補給器とを有する。また、より具体的には、本実施形態の電解装置70は、相互に隔膜4で区画された、陽極2aを有する陽極室5aと陰極2cを有する陰極室5cとを備える。
また、陰極2cの少なくとも一部が、隔膜4の非被覆上端4tよりも鉛直方向上方に存在していてもよく、この電解装置によれば、変動電源下における陰極2cの劣化を抑制するとともに、隔膜4を介した各電極室5間の気体の拡散・混合を抑制することができる。
初めに、電解装置70の構成要素のうち、主に電解槽50について説明する。
(電解槽)
電解装置70における電解槽50は、特に限定されることなく、単極式としても複極式としてもよいが、図1等に示すように、工業的に、複極式の電解槽が好ましい。
複極式は、多数のセルを電源に接続する方法の1つであり、片面が陽極2a、片面が陰極2cとなる複数の複極式水電解エレメント60を同じ向きに並べて直列に接続し、両端のみを電源に接続する方法である。
複極式電解槽50は、電源の電流を小さくできるという特徴を持ち、電解により化合物や所定の物質等を短時間で大量に製造することができる。電源設備は出力が同じであれば、定電流、高電圧の方が安価でコンパクトになるため、工業的には単極式よりも複極式の方が好ましい。
図2に、本実施形態の一例のアルカリ水電解装置の電解槽の一例の全体について示す。 電解装置70の複極式電解槽50は、図2に示すとおり、陽極2aと、陰極2cと、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1と、隔壁1を縁取る外枠3とを備える複数の複極式水電解エレメント60が隔膜4を挟んで重ね合わせられている複極式電解槽50である。
本実施形態では、特に、複極式電解槽50における、隣接する2つの複極式エレメント60間の互いの隔壁1間における部分、及び、隣接する複極式エレメント60とターミナルエレメントとの間の互いの隔壁1間における部分を電解セル65と称する。電解セル65は、一方のエレメントの隔壁1、陽極室5a、陽極2a、及び、隔膜4、及び、他方のエレメントの陰極2c、陰極室5c、隔壁1を含む。
((複極式水電解エレメント))
一例のアルカリ水電解システム70の複極式電解槽50に用いられる複極式水電解エレメント60は、図2に示すように、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1を備え、隔壁1を縁取る外枠3を備えている。より具体的には、隔壁1は導電性を有し、外枠3は隔壁1の外縁に沿って隔壁1を取り囲むように設けられている。
なお、本実施形態では、複極式水電解エレメント60は、通常、隔壁1に沿う所与の方向D1が、鉛直方向となるように、使用してよく、具体的には、図3に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、隔壁1に沿う所与の方向D1が、向かい合う2組の辺のうちの1組の辺の方向と同じ方向となるように、使用してよい(図3参照)。そして、本明細書では、上記鉛直方向を電解液通過方向とも称する。
本実施形態では、図2に示すとおり、複極式電解槽50は複極式水電解エレメント60を必要数積層することで構成されている。
図2に示す一例では、複極式電解槽50は、一端からファストヘッド51g、絶縁板51i、陽極ターミナルエレメント51aが順番に並べられ、更に、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7、複極式水電解エレメント60が、この順番で並べて配置される。このとき、複極式水電解エレメント60は陽極ターミナルエレメント51a側に陰極2cを向けるよう配置する。陽極側ガスケット部分7から複極式水電解エレメント60までは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。陽極側ガスケット部分7から複極式水電解エレメント60までを必要数だけ繰り返し配置した後、再度、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7を並べて配置し、最後に陰極ターミナルエレメント51c、絶縁板51i、ルーズヘッド51gをこの順番で配置される。複極式電解槽50は、全体をタイロッド方式51r(図2参照)や油圧シリンダー方式等の締め付け機構により締め付けることによりー体化され、複極式電解槽50となる。
複極式電解槽50を構成する配置は、陽極2a側からでも陰極2c側からでも任意に選択でき、上述の順序に限定されるものではない。
図2に示すように、複極式電解槽50では、複極式水電解エレメント60が、陽極ターミナルエレメント51aと陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置されている。隔膜4は、陽極ターミナルエレメント51aと複極式水電解エレメント60との間、隣接して並ぶ複極式水電解エレメント60同士の間、及び複極式水電解エレメント60と陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置されている。
また、本実施形態における複極式電解槽50では、図3、図4に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。
本実施形態では、特に、複極式電解槽50における、隣接する2つの複極式水電解エレメント60間の互いの隔壁1間における部分、及び、隣接する複極式水電解エレメント60とターミナルエレメントとの間の互いの隔壁1間における部分を電解エレメント65と称する。電解エレメント65は、一方のエレメントの隔壁1、陽極室5a、陽極2a、及び、隔膜4、及び、他方のエレメントの陰極2c、陰極室5c、隔壁1を含む。
詳細には、電極室5は、外枠3との境界において、電極室5に電解液を導入する電解液入口5iと、電極室5から電解液を導出する電解液出口5oとを有する。より具体的には、陽極室5aには、陽極室5aに電解液を導入する陽極電解液入口5aiと、陽極室5aから導出する電解液を導出する陽極電解液出口5aoとが設けられる。同様に、陰極室5cには、陰極室5cに電解液を導入する陰極電解液入口5ciと、陰極室5cから導出する電解液を導出する陰極電解液出口5coとが設けられる(図4参照)。
本実施形態では、陽極室5a及び陰極室5cにおいて、電解液を電解槽50内部で、電極面内に均一に分配するための内部ディストリビュータを備えてもよい。また、電極室5は、電解槽50内部での液の流れを制限する機能を備えるバッフル板を備えてもよい。さらに、陽極室5a及び陰極室5cにおいて、電解槽50内部での電解液の濃度や温度の均一化、及び、電極2や隔膜4に付着するガスの脱泡の促進のために、カルマン渦を作るための突起物を備えてもよい。
複極式電解槽50には、通常、電解液を配液又は集液する管であるマニホールド30が取り付けられる。
マニホールド30は、外枠3を含めた電解槽に電解液を出し入れするヘッダー部20と、ヘッダー部20から電解室5(陽極室5a、陰極室5c)電解液を出し入れする枝管部10とを含み、好適にはこれらからなる。
本実施形態では、詳細には、1個又は複数個のヘッダー部構成部材と、1個又は複数個の枝管部構成部材とを、組み合わせて用いてもよい。
隔壁1の端縁にある外枠3のうちの下方に、陽極室5aに電解液を入れる陽極入口枝管部10aiと、陰極室5cに電解液を入れる陰極入口枝管部10ciとを備えている。また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの上方に、陽極室5aから電極液を出す陽極出口枝管部10aoと、陰極室5cから電解液を出す陰極出口枝管部10coとを備えている。
なお、図1〜図4に示す複極式電解槽50に取り付けられるマニホールド10の配設態様として、代表的には、内部マニホールド30I型と外部マニホールド型とがあるが、本発明では、いずれの型を採用してもよく、特に限定されない。
図3に、本実施形態の一例の内部マニホールド型のアルカリ水電解装置の電解槽の例を平面図で示す。
図4に、図3に示す内部マニホールド型のアルカリ水電解装置の電解槽を線A−Aに沿う面により切断したときの断面の一部を示す。
さらに、図3、図4に示す一例では、マニホールド10に、ヘッダー部に配液する又は集液されたガスや電解液を集める管である枝管部10が取り付けられる。詳細には、枝管部10は、入口ヘッダー部に連通する枝管部と出口ヘッダー部に連通する枝管部とからなる。
一例では、外枠3のうちの下方に、陽極用入口枝管部10Iaiに連通する陽極用ヘッダー部20Iaiと、陰極用入口枝管部10Iciに連通する陰極用ヘッダー部20Iciとを備えており、また、同様に、外枠3のうちの上方に、陽極用出口枝管部10Iaoに連通する陽極用ヘッダー部20Iaoと、陰極用出口枝管部10Icoに連通する陰極用ヘッダー部20Icoとを備えている。
通常、図3、図4に示すように、陽極用入口枝管部10Iai、陰極用入口枝管部10Ici、陽極用出口枝管部10Iao、陰極用出口枝管部10Icoは、各電極室5に1つずつ設けられるが、本実施形態では、これに限定されず、各電極室5にそれぞれ複数設けられてもよい。
また、通常、図3、図4に示すように、陽極用入口ヘッダー部20Iaiは、陽極用入口枝管部10Iaiの全てを連通し、陰極用入口ヘッダー部20Iciは、陰極用入口枝管部10Iciの全てを連通し、陽極用出口ヘッダー部20Iaoは、陽極用出口枝管部Iaoの全てを連通し、陰極用出口ヘッダー部20Icoは、陰極用出口枝管部10Icoの全てを連通してよい。
通常、図3、図4に示すように、陽極用入口枝管部10Oai、陰極用入口枝管部10Oci、陽極用出口枝管部10Oao、陰極用出口枝管部10Ocoは、各電極室5に1つずつ設けられるが、本実施形態では、これに限定されず、各電極室5にそれぞれ複数設けられてもよい。
また、通常、陽極用ヘッダー部20Oai、陰極用ヘッダー部20Oci、陽極用ヘッダー部20Oao、陰極用ヘッダー部20Ocoは、各電極室5に1つずつ設けられるが、本実施形態では、これに限定されず、複数の電極室5で兼用されてもよい。
本実施形態では、枝管部10の延在方向は、特に限定されないが、図3、図4に示す一例のように、本発明の効果を得られやすくする観点から、入口枝管部(陽極用入口枝管部10Iai、陰極用入口枝管部10Ici)及び出口枝管部(陽極用出口枝管部10Iao、陰極用出口枝管部10Ico)は、ぞれぞれ、隔壁1に沿う所与の方向D1に対して平行に延びることが好ましく、枝管部10のいずれもが、隔壁1に沿う所与の方向D1に対して平行に延びることがさらに好ましい。
なお、ここで、隔壁1に沿う所与の方向D1に対して平行に延びるとは、隔壁1に沿う所与の方向D1と厳密な意味で同じ方向に延びることを意味するものではなく、隔壁1に沿う所与の方向D1に対して、例えば、10°以下の範囲で、傾斜する方向に延びる場合も含むことを意味する。なお、上記傾斜角度は、5°以下であることが好ましく、2°以下であることがより好ましい。
本実施形態では、ヘッダー部20の延在方向は、特に限定されないが、図3、図4に示す一例のように、本発明の効果を得られやすくする観点から、ヘッダー部(陽極用ヘッダー部20Iai、陰極用ヘッダー部20Ici)及びヘッダー部(陽極用ヘッダー部20Iao、陰極用ヘッダー部20Ico)は、ぞれぞれ、隔壁1に垂直な方向に延びることが好ましく、ヘッダー部20のいずれもが、隔壁1に垂直な方向に延びることがさらに好ましい。
なお、ここで、隔壁1に垂直な方向に延びるとは、隔壁1に厳密な意味で垂直な方向に延びることを意味するものではなく、隔壁1に垂直な方向に対して、例えば、隔壁1に沿う方向にみて45°以下の範囲で、傾斜する方向に延びる場合も含むことを意味する。なお、上記傾斜角度は、30°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましい。
本実施形態では、電極室5と枝管部10との位置関係は、特に限定されず、図3、図4に示すように、複極式水電解エレメント60を隔壁1に沿う所与の方向D1が鉛直方向となるように使用した場合に、入口枝管部は、電極室5に対して下方や側方に位置し(図示では、下方)、出口枝管部は、電極室5に対して上方や側方に位置していてよく(図示では、側方)、また、入口枝管部に連通するヘッダー部は、電極室5に対して下方や側方に位置し(図示では、下方)、出口枝管部に連通するヘッダー部は、電極室5に対して上方や側方に位置していてよい(図示では、側方)。
本実施形態では、枝管部10の延在方向は、特に限定されない。
本実施形態では、ヘッダー部20の延在方向は、特に限定されないが、図3、図4に示す一例のように、本発明の効果を得られやすくする観点から、ヘッダー部(陽極用ヘッダー部20Oai、陰極用ヘッダー部20Oci)及びヘッダー管(陽極用ヘッダー管20Oao、陰極用ヘッダー管20Oco)は、ぞれぞれ、隔壁1に垂直な方向に延びることが好ましく、ヘッダー部20のいずれもが、隔壁1に垂直な方向に延びることがさらに好ましい。
本実施形態では、陽極室5a及び陰極室5cにおいて、入口マニホールドと出口マニホールドとは、水電解効率の観点から、離れた位置に設けられることが好ましく、電極室5の中央部を挟んで向かい合うように設けられることが好ましく、図3、図4に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、長方形の中心に関して対称となるように設けられることが好ましい。
なお、図3、図4に図示した例では、平面視で長方形形状の隔壁1と平面視で長方形形状の隔膜4とが平行に配置され、また、隔壁1の端縁に設けられる直方体形状の外枠3の隔壁1側の内面が隔壁1に垂直となっているため、電極室5の形状が直方体となっている。しかしながら、本発明において、電極室5の形状は、図示の例の直方体に限定されることなく、隔壁1や隔膜4の平面視形状、外枠3の隔壁1側の内面と隔壁1とのなす角度等により、適宜変形されてよく、本発明の効果が得られる限り、いかなる形状であってもよい。
なお、本実施形態のアルカリ水電解システム70の複極式電解槽50では、電解室5内における気液の流れの乱れにより電解室5に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制するため、隔壁1に沿う所与の方向D1に対して平行に配置される複数の整流板6を備えていてもよい。
本実施形態のアルカリ水電解システム70の電解槽50は、特に限定されず、50〜500の複極式水電解エレメント60を有することが好ましく、70〜300の複極式水電解エレメント60を有することがさらに好ましく、100〜200の複極式水電解エレメント60を有することが特に好ましい。
対数が減ると、リーク電流によるガス純度の影響は緩和される一方で、対数が増加すると、電解液を各電解エレメント65に均一に分配することが困難になる。下限未満の場合や上限超の場合には、電力供給を停止した際に生じる自己放電を低減して、電気制御システムの安定化を可能にする効果、及び、高効率での電力の貯蔵、具体的には、ポンプ動力の低減やリーク電流の低減を実現することを可能にする効果の並立が困難になる。
また、複極式水電解エレメント60の数(対数)が増え過ぎると、電解槽50の製作が困難になるおそれがあり、製作精度が悪い複極式水電解エレメント60を多数スタックした場合には、シール面圧が不均一になりやすく、電解液の漏れやガス漏洩が生じやすい。
以下、本実施形態のアルカリ水電解装置70の複極式電解槽50の構成要素について詳細に説明する。
また、以下では、本発明の効果を高めるための好適形態についても詳述する。
−隔壁−
隔壁1の形状は、所定の厚みを有する板状の形状としてよいが、特に限定されない。
なお、隔壁1は、通常、隔壁1に沿う所与の方向D1が、鉛直方向となるように、使用してよく、具体的には、図3、図4に示すように隔壁1の平面視形状が長方形である場合、隔壁1に沿う所与の方向D1が、向かい合う2組の辺のうちの1組の辺の方向と同じ方向となるように、使用してよい。
隔壁1の材料としては、電力の均一な供給を実現する観点から、導電性を有する材料が好ましく、耐アルカリ性や耐熱性といった面から、ニッケル、ニッケル合金、軟鋼、ニッケル合金上にニッケルメッキを施したものが好ましい。
−電極−
アルカリ水電解による水素製造において、エネルギー消費量の削減、具体的には電解電圧の低減は、大きな課題である。この電解電圧は電極2に大きく依存するため、両電極2の性能は重要である。
アルカリ水電解の電解電圧は、理論的に求められる水の電気分解に必要な電圧の他に、陽極反応(酸素発生)の過電圧、陰極反応(水素発生)の過電圧、陽極2aと陰極2cとの電極2間距離による電圧とに分けられる。ここで、過電圧とは、ある電流を流す際に、理論分解電位を越えて過剰に印加する必要のある電圧のことを言い、その値は電流値に依存する。同じ電流を流すとき、過電圧が低い電極2を使用することで消費電力を少なくすることができる。
低い過電圧を実現するために、電極2に求められる要件としては、導電性が高いこと、酸素発生能(或いは水素発生能)が高いこと、電極2表面で電解液の濡れ性が高いこと等が挙げられる。
アルカリ水電解の電極2として、過電圧が低いこと以外に、再生可能エネルギーのような不安定な電流を用いても、電極2の基材及び触媒層の腐食、触媒層の脱落、電解液への溶解、隔膜4への含有物の付着等が起きにくいことが挙げられる。
電極2としては、電解に用いられる表面積を増加させるため、また、電解により発生するガスを効率的に電極2表面から除去するために、多孔体が好ましい。特に、ゼロギャップ電解槽の場合、隔膜4との接触面の裏側から発生するガスを脱泡する必要があるため、電極2の膜に接する面と反対に位置する面が、貫通していることが好ましい。
多孔体の例としては、平織メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル、金属発泡体等が挙げられる。
電極2は、基材そのものとしてもよく、基材の表面に反応活性の高い触媒層を有するものとしてもよいが、基材の表面に反応活性の高い触媒層を有するものが好ましい。
基材の材料は、特に制限されないが、使用環境への耐性から、軟鋼、ステンレス、ニッケル、ニッケル基合金が好ましい。
陽極2aの触媒層は、酸素発生能が高いものであることが好ましく、ニッケルやコバルト、鉄もしくは白金族元素等を使用することができる。これらは、所望の活性や耐久性を実現するために、金属単体や、酸化物等の化合物、複数の金属元素からなる複合酸化物や合金、或いはそれらの混合物として、触媒層を形成できる。耐久性や基材との接着性を向上させるために高分子等の有機物が含まれていてもよい。
陰極2cの触媒層は、水素発生能が高いものであることが好ましく、ニッケルやコバルト、鉄もしくは白金族元素等を使用することができる。これらは、所望の活性や耐久性を実現するために、金属単体や、酸化物等の化合物、複数の金属元素からなる複合酸化物や合金、或いはそれらの混合物として、触媒層を形成できる。耐久性や基材との接着性を向上させるために高分子材料等の有機物が含まれていてもよい。
基材上に触媒層を形成させる方法としては、めっき法、プラズマ溶射法等の溶射法、基材上に前駆体層溶液を塗布した後に熱を加える熱分解法、触媒物質をバインダー成分と混合して基材に固定化する方法、及び、スパッタリング法等の真空成膜法といった手法が挙げられる。
−外枠−
外枠3の形状は、隔壁1を縁取ることができる限り特に限定されないが、隔壁1の平面に対して垂直な方向に沿う内面を隔壁1の外延に亘って備える形状としてよい。
外枠3の形状としては、特に限定されることなく、隔壁1の平面視形状に合わせて適宜定められてよい。
外枠3の材料としては、導電性を有する材料が好ましく、耐アルカリ性や耐熱性といった面から、ニッケル、ニッケル合金、軟鋼、ニッケル合金上にニッケルメッキを施したものが好ましい。
−隔膜−
電解装置70の複極式電解槽50において用いられる隔膜4としては、イオンを導通しつつ、発生する水素ガスと酸素ガスを隔離するために、イオン透過性の隔膜4が使用される。このイオン透過性の隔膜4は、イオン交換能を有するイオン交換膜と、電解液を浸透することができる多孔膜が使用できる。このイオン透過性の隔膜4は、ガス透過性が低く、イオン伝導率が高く、電子電導度が小さく、強度が強いものが好ましい。
−−多孔膜−−
多孔膜は、複数の微細な貫通孔を有し、隔膜4を電解液が透過できる構造を有する。電解液が多孔膜中に浸透することにより、イオン伝導を発現するため、孔径や気孔率、親水性といった多孔構造の制御が非常に重要となる。一方、電解液だけでなく、発生ガスを通過させないこと、すなわちガスの遮断性を有することが求められる。この観点でも多孔構造の制御が重要となる。
多孔膜は、複数の微細な貫通孔を有するものであるが、高分子多孔膜、無機多孔膜、織布、不織布等が挙げられる。これらは公知の技術により作製することができる。
高分子多孔膜の製法例としては、相転換法(ミクロ相分離法)、抽出法、延伸法、湿式ゲル延伸法等が挙げられる。
多孔膜は、高分子材料と親水性無機粒子とを含むことが好ましく、親水性無機粒子が存在することによって多孔膜に親水性を付与することができる。
−−−高分子材料−−−
高分子材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロスルホン酸、パーフルオロカルボン酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、であることが好ましく、ポリスルホンであることがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多孔膜は、分離能、強度等適切な膜物性を得る為に、孔径を制御することが好ましい。また、アルカリ水電解に用いる場合、陽極2aから発生する酸素ガス及び陰極2cから発生する水素ガスの混合を防止し、かつ電解における電圧損失を低減する観点から、多孔膜の孔径を制御することが好ましい。
多孔膜の平均孔径が大きいほど、単位面積あたりの多孔膜透過量は大きくなり、特に、電解においては多孔膜のイオン透過性が良好となり、電圧損失を低減しやすくなる傾向にある。また、多孔膜の平均孔径が大きいほど、アルカリ水との接触表面積が小さくなるので、ポリマーの劣化が抑制される傾向にある。
一方、多孔膜の平均孔径が小さいほど、多孔膜の分離精度が高くなり、電解においては多孔膜のガス遮断性が良好となる傾向にある。さらに、後述する粒径の小さな親水性無機粒子を多孔膜に担持した場合、欠落せずしっかりと保持することができる。これにより、親水性無機粒子が持つ高い保持能力を付与でき、長期に亘ってその効果を維持することができる。
かかる観点から、多孔膜においては、平均孔径は、0.1μm以上1.0μm以下の範囲であることが好ましい。多孔膜は、孔径がこの範囲であれば、優れたガス遮断性と高いイオン透過性とを両立することができる。また、多孔膜の孔径は実際に使用する温度域において制御されることが好ましい。従って、例えば90℃の環境下での電解用隔膜4として使用する場合は、90℃で上記の孔径の範囲を満足させることが好ましい。また、多孔膜は、アルカリ水電解用隔膜4として、より優れたガス遮断性と高いイオン透過性とを発現できる範囲として、平均孔径が0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。
多孔膜の平均孔径は、以下の方法で測定することができる。
多孔膜の平均孔径とは、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP−Plus」)を使用して以下の方法で測定した平均透水孔径をいう。まず、多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとする。このサンプルを任意の耐圧容器にセットして、容器内を純水で満たす。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始する。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から純水が透過してくる際の圧力及び透過流量の数値を記録する。平均透水孔径は、圧力が10kPaから30kPaの間の圧力と透水流量との勾配を使い、以下のハーゲンポアズイユの式から求めることができる。
平均透水孔径(m)={32ηLμ/(εP)}0.5
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは多孔膜の厚み(m)、μは見かけの流速であり、μ(m/s)=流量(m/s)/流路面積(m)である。また、εは空隙率、Pは圧力(Pa)である。
アルカリ水電解用隔膜4は、ガス遮断性、親水性の維持、気泡の付着によるイオン透過性低下の防止、さらには長時間安定した電解性能(低電圧損失等)が得られるといった観点から、多孔膜の気孔率を制御することが好ましい。
ガス遮断性や低電圧損失等を高いレベルで両立させるといった観点から、多孔膜の気孔率の下限は30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。また、気孔率の上限は70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、55%以下であることが更に好ましい。多孔膜の気孔率が上記上限値以下であれば、膜内をイオンが透過しやすく、膜の電圧損失を抑制できる。
多孔膜の気孔率とは、アルキメデス法により求めた開気孔率をいい、以下の式により求めることができる。
気孔率P(%)=ρ/(1+ρ)×100
ここで、ρ=(W3−W1)/(W3−W2)であり、W1は多孔膜の乾燥質量(g)、W2は多孔膜の水中質量(g)、W3は多孔膜の飽水質量(g)である。
気孔率の測定方法としては、純水で洗浄した多孔膜を3cm×3cmの大きさで3枚に切出して、測定サンプルとする。まず、サンプルのW2及びW3を測定する。その後、多孔膜を50℃に設定された乾燥機で12時間以上静置して乾燥させて、W1を測定する。そして、W1、W2、W3の値から気孔率を求める。3枚のサンプルについて気孔率を求め、それらの算術平均値を気孔率Pとする。
多孔膜の厚みは、特に限定されないが、100μm以上700μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上600μm以下、更に好ましくは200μm以上600μm以下である。
多孔膜の厚みが、上記下限値以上であると、突刺し等で破れにくく、電極間がショートしにくい。また、ガス遮断性が良好となる。また、上記上限値以下であると、電圧損失が増大しにくい。また、多孔膜の厚みのばらつきによる影響が少なくなる。
また、隔膜の厚みが、100μm以上であると、突刺し等で破れにくく、電極間がショートしにくい。また、ガス遮断性が良好となる。600μm以下であると、電圧損失が増大しにくい。また、多孔膜の厚みのばらつきによる影響が少なくなる。
多孔膜の厚みが、250μm以上であれば、一層優れたガス遮断性が得られ、また、衝撃に対する多孔膜の強度が一層向上する。この観点より、多孔膜の厚みの下限は、300μm以上であることがより好ましく、350μm以上であることが更に好ましく400μm以上でることがより一層好ましい。一方で、多孔膜の厚みが、700μm以下であれば、運転時に孔内に含まれる電解液の抵抗によりイオンの透過性を阻害されにくく、一層優れたイオン透過性を維持すことができる。かかる観点から、多孔膜の厚みの上限は、600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることが更に好ましく、500μm以下であることがより一層好ましい。
−−−親水性無機粒子−−−
多孔膜は、高いイオン透過性及び高いガス遮断性を発現するために親水性無機粒子を含有していることが好ましい。親水性無機粒子は多孔膜の表面に付着していても良いし、一部が多孔膜を構成する高分子材料に埋没していても良い。また親水性無機粒子が多孔膜の空隙部に内包されると、多孔膜から脱離しにくくなり、多孔膜の性能を長時間維持できる。
親水性無機粒子としては、例えば、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物又は水酸化物;周期律表第IV族元素の酸化物;周期律表第IV族元素の窒化物、及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機物が挙げられる。これらの中でも、化学的安定性の観点から、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物、周期律表第IV族元素の酸化物がより好ましく、ジルコニウム、ビスマス、セリウムの酸化物が更に好ましく、酸化ジルコニウムがより更に好ましい。
親水性無機粒子の形態は、微粒子形状であることが好ましい。
−−多孔性支持体−−
隔膜4として多孔膜を用いる場合、多孔膜は多孔性支持体と共に用いてよい。好ましくは、多孔膜が多孔性支持体を内在した構造であり、より好ましくは、多孔性支持体の両面に多孔膜を積層した構造である。また、多孔性支持体の両面に対称に多孔膜を積層した構造であってもよい。
多孔性支持体としては、例えば、メッシュ、多孔質膜、不織布、織布、不織布及びこの不織布に内在する織布とを含む複合布等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。多孔性支持体のより好適な態様としては、例えば、ポリフェニレンサルファイドのモノフィラメントで構成されるメッシュ基材、又は不織布及び該不織布内に内在する織布とを含む複合布等が挙げられる。
−−イオン交換膜−−
イオン交換膜としては、カチオンを選択的に透過させるカチオン交換膜とアニオンを選択的に透過させるアニオン交換膜があり、いずれの交換膜でも使用することができる。
イオン交換膜の材質としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、含フッ素系樹脂やポリスチレン・ジビニルベンゼン共重合体の変性樹脂が好適に使用できる。特に耐熱性及び耐薬品性等に優れる点で、含フッ素系イオン交換膜が好ましい。
含フッ素系イオン交換膜としては、電解時に発生するイオンを選択的に透過する機能を有し、かつイオン交換基を有する含フッ素系重合体を含むもの等が挙げられる。ここでいうイオン交換基を有する含フッ素系重合体とは、イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体、を有する含フッ素系重合体をいう。例えば、フッ素化炭化水素の主鎖を有し、加水分解等によりイオン交換基に変換可能な官能基をペンダント側鎖として有し、かつ溶融加工が可能な重合体等が挙げられる。
含フッ素系共重合体の分子量は、特に限定されないが、該前駆体を、ASTM:D1238に準拠して(測定条件:温度270℃、荷重2160g)測定されたメルトフローインデックス(MFI)の値で0.05〜50(g/10分)であることが好ましく、0.1〜30(g/10分)であることがより好ましい。
イオン交換膜が有するイオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基等のカチオン交換基、4級アンモニウム基等のアニオン交換基が挙げられる。
イオン交換膜は、イオン交換基の当量質量EWを調整することによって、優れたイオン交換能と親水性を付与することができる。また、より小さなクラスター(イオン交換基が水分子を配位及び/又は吸着した微小部分)を数多く有するように制御でき、耐アルカリ性やイオン選択透過性を向上する傾向にある。
この当量質量EWは、イオン交換膜を塩置換し、その溶液をアルカリ又は酸溶液で逆滴定することにより測定することができる。当量質量EWは、原料であるモノマーの共重合比、モノマー種の選定等により調整することができる。
イオン交換膜の当量質量EWは、親水性、膜の耐水性の観点から300以上であることが好ましく、親水性、イオン交換能の観点から1300以下であることが好ましい。
イオン交換膜の厚みは特に制限されないが、イオン透過性や強度の観点から、5μm〜300μmの範囲が好ましい。
イオン交換膜の表面の親水性を向上させる目的で、表面処理を施してもよい。具体的には、酸化ジルコニウム等の親水性無機粒子をコーティングする方法や、表面に微細な凹凸を付与する方法が挙げられる。
イオン交換膜は、膜強度の観点から、補強材と共に用いることが好ましい。補強材としては、特に限定されず、一般的な不織布や織布、各種素材からなる多孔膜が挙げられる。この場合の多孔膜としては、特に限定されないが、延伸されて多孔化したPTFE系膜が好ましい。
((ゼロギャップ構造))
ゼロギャップ型セルにおける複極式水電解エレメント60では、極間距離を小さくする手段として、電極2と隔壁1との間に弾性体であるバネを配置し、このバネで電極2を支持する形態をとることが好ましい。例えば、第1の例では、隔壁1に導電性の材料で製作されたバネを取り付け、このバネに電極2を取り付けてよい。また、第2の例では、隔壁1に取り付けた電極リブにバネを取り付け、そのバネに電極2を取り付けてよい。なお、このような弾性体を用いた形態を採用する場合には、電極2が隔膜4に接する圧力が不均一にならないように、バネの強度、バネの数、形状等必要に応じて適宜調節する必要がある。
−電極室−
複極式電解槽50では、図4に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。
本実施形態において、複極式電解槽のマニホールド10の配設態様としては、内部マニホールド型30が採用できるところ、例えば、図示の例の場合、陽極2a及び陰極2c自身が占める空間も電極室5の内部にある空間であるものとしてよい。また、特に、気液分離ボックスが設けられている場合、気液分離ボックスが占める空間も電極室5の内部にある空間であるものとしてよい。
−整流板−
電解装置70の複極式電解槽50では、隔壁1に整流板6(陽極整流板6a、陰極整流板6c)が取り付けられ、整流板6が電極2と物理的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、整流板6が電極2の支持体となり、ゼロギャップ構造Zを維持しやすい。
ここで、整流板6に、電極2が設けられていてもよく、整流板6に、集電体2r、導電性弾性体2e、電極2がこの順に設けられていてもよい。
前述の一例の電解装置70の複極式電解槽50では、陰極室5cにおいて、整流板6−集電体2r−導電性弾性体2e−電極2の順に重ね合わせられた構造が採用され、陽極室5aにおいて、整流板6−電極2の順に重ね合わせられた構造が採用されている。
なお、前述の一例の電解装置70の複極式電解槽50では、陰極室5cにおいて上記「整流板6−集電体2r−導電性弾性体2e−電極2」の構造が採用され、陽極室5aにおいて上記「整流板6−電極2」の構造が採用されているが、本発明ではこれに限定されることなく、陽極室5aにおいても「整流板6−集電体2r−導電性弾性体2e−電極2」構造が採用されてもよい。
整流板6(陽極整流板6a、陰極整流板6c)には、陽極2a又は陰極2cを支える役割だけでなく、電流を隔壁1から陽極2a又は陰極2cへ伝える役割を備えることが好ましい。
電解装置70の複極式電解槽50では、整流板6の少なくとも一部が導電性を備えことが好ましく、整流板6全体が導電性を備えことがさらに好ましい。かかる構成によれば、電極たわみによるセル電圧の上昇を抑制することができる。
整流板6の材料としては、一般的に導電性の金属が用いられる。例えば、ニッケルメッキを施した軟鋼、ステンレススチール、ニッケル等が利用できる。
隣接する陽極整流板6a同士の間隔、又は隣接する陰極整流板6c同士の間隔は、電解圧力や陽極室5aと陰極室5cの圧力差等を勘案して決められる。
整流板6(陽極整流板6a、陰極整流板6c)の長さは、隔壁1のサイズに応じて、適宜に定められてよい。
整流板6の高さは、隔壁1から各フランジ部までの距離、ガスケット7の厚さ、電極2(陽極2a、陰極2c)の厚さ、陽極2aと陰極2cとの間の距離等に応じて、適宜に定められてよい。
また、整流板6の厚みは、コストや製作性、強度等も考慮して、0.5mm〜5mmとしてよく、1mm〜2mmのものが用いやすいが、特に限定されない。
−ガスケット−
電解装置70の複極式電解槽50では、隔壁1を縁取る外枠3同士の間に隔膜4を有するガスケット7が挟持されることが好ましい。
ガスケット7は、複極式水電解エレメント60と隔膜4の間、複極式水電解エレメント60間を電解液と発生ガスに対してシールするために使用され、電解液や発生ガスの電解槽外への漏れや両極室間におけるガス混合を防ぐことができる。
ガスケット7の一般的な構造としては、エレメントの枠体に接する面に合わせて、電極面をくり抜いた四角形状又は環状である。このようなガスケット2枚で隔膜4を挟み込む形でエレメント間に隔膜4をスタックさせることができる。さらに、ガスケット7は、隔膜4を保持できるように、隔膜4を収容することが可能なスリット部を備え、収容された隔膜4がガスケット7両表面に露出することを可能にする開口部を備えることも好ましい。これにより、ガスケット7は、隔膜4の縁部をスリット部内に収容し、隔膜4の縁部の端面を覆う構造がとれる。したがって、隔膜4の端面から電解液やガスが漏れることをより確実に防止できる。
ガスケット7の材質としては、特に制限されるものではなく、絶縁性を有する公知のゴム材料や樹脂材料等を選択することができる。
ゴム材料や樹脂材料としては、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン−プロピレンゴム(EPT)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン−イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素樹脂材料や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアセタール等の樹脂材料を用いることができる。これらの中でも、弾性率や耐アルカリ性の観点でエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)が特に好適である。
ガスケット7は、補強材が埋設されていてもよい。これにより、スタック時に枠体に挟まれて押圧されたときに、ガスケット7が潰れることを抑制でき、破損を防止し易くできる。
このような補強材は公知の金属材料、及びその酸化物、樹脂材料、炭素材料等が使用でき、具体的には、ニッケル、ステンレス等の金属、アルミナ、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、ナイロン、ポリプロピレン、PVDF、PTFE、PPS等の樹脂、カーボン粒子や炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。
ガスケット7のサイズは、特に制限されるものではなく、電極室5や膜の寸法に合わせて設計すればよいが、幅が10mm〜40mmにするのがよい。
この場合、ガスケット7がスリット部を備える場合、スリット部のサイズはスリットの内寸が膜のサイズより縦横で0.5mm〜5mm大きくなるようにするのがよい。
ガスケット7の厚みは、特に制限されるものではなく、ガスケット7の材質や弾性率、セル面積に応じて設計される。好ましい厚みの範囲としては、1.0mm〜10mmが好ましく、3.0mm〜10mmがより好ましい。
また、ガスケット7がスリット部を備える場合、スリット部の開口幅としては、膜の厚みの0.5倍〜1.0倍としてよい。
ガスケット7の弾性率は、特に制限されるものではなく、電極2の材質やセル面積に応じて設計される。好ましい弾性率の範囲としては、100%変形時の引張応力で、0.20MPa〜20MPaの範囲がより好ましく、シーリング特性やスタック時のセル強度の観点から、1.0MPa〜10MPaの範囲がより好ましい。
なお、引張応力は、JIS K6251に準拠して、測定することができる。例えば、島津製作所社製のオートグラフAGを用いてよい。
特に、ガスケット7の厚みが3.0mm〜10mmであり、100%変形時の引張応力で1.0MPa〜10MPaであることが、電極たわみによるセル電圧の上昇を抑制する観点、また、シーリング特性やスタック時のセル強度の観点から、好ましい。
電解装置70においては、ガスケット7の表面を絶縁性の樹脂シート(例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等)で覆うことが好ましい。このようにすることにより、複数のエレメント60間では相互に絶縁された状態となるので、通電工程(電解液の電気分解が行われる工程)でそれぞれのエレメント60に蓄積された電荷が、停止工程(電解液の電気分解が停止している工程)において他のエレメント60に影響することを抑制することができる。
本実施形態の水電解エレメントは、シール対象に応じて複数のガスケットを配置しても良い。例えば、後述の内部マニホールド型水電解エレメントでは、電極室部をシールする1次ガスケットと、マニホールドをシールするマニホールドガスケットを配置しても良い。また、さらに水電解エレメント外周を囲う、2次ガスケットを配置しても良い。2次ガスケットを用いることで、1次ガスケットでシールしきれなかった場合でも、電解液や発生ガスが漏洩することを防ぐことができ、水電解槽の隔膜に多孔膜を使用した場合により効果的である。マニホールドガスケットや2次ガスケットは、1次ガスケットのエレメント外側に設けられてよい。
1次ガスケット、2次ガスケット、マニホールドガスケットの材質は、シール対象により適宜選択することができる。
隔膜の保護を目的に、1次ガスケットは絶縁性のゴム材のOリングで構成されたものあることが好ましい。また、内圧によるOリングのセルフシールの効果を高めるために、必要に応じてバックアップリングを使用することが好ましい。
一方、2次ガスケットは、1次ガスケットよりも圧縮弾性率の大きい樹脂ガスケットであることが好ましい。2次ガスケットの圧縮弾性率が1次ガスケットの圧縮弾性率よりも大きいと、長期的な電解においてガスケットにクリープが発生した場合でも、1次ガスケット及び2次ガスケットのシール面圧のバランスが保ちやすい。なお、圧縮弾性率は、JIS K 6254規格に準拠して、測定することができる。例えば、島津製作所社製のオートグラフを用いてよい。
−マニホールド−
電解装置70の複極式電解槽50は、電解エレメント65電解エレメント65毎に、陰極室5c、陽極室5aを有する。電解槽50で、電気分解反応を連続的に行うためには、各電解エレメント65の陰極室5cと陽極室5aとに電気分解によって消費される原料を十分に含んだ電解液を供給し続ける必要がある。
電解エレメント65は、複数の電解エレメント65に共通するマニホールド10と呼ばれる電解液の給排配管と繋がっている。一般に、陽極用ヘッダー部は陽極入口ヘッダー部10ai、陰極用ヘッダー部は陰極入口ヘッダー部10ci、陽極用ヘッダー部は陽極出口ヘッダー部10ao、陰極用ヘッダー部は陰極出口ヘッダー部10coと呼ばれる。また各マニホールド電解エレメント65各電極用配液管である枝管部及び各電極用集液管であるヘッダー部で構成される。
マニホールド10の材質は特に限定されないが、使用する電解液の腐食性や、圧力や温度等の運転条件に十分耐えうるものを採用する必要がある。マニホールド10の材質に、鉄、ニッケル、コバルト、PTFE、ETFE,PFA、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等を採用しても良い。
電極室5の範囲は、隔壁1の外端に設けられる外枠3の詳細構造により、変動するところ、外枠3の詳細構造は、外枠3に取り付けられるマニホールド30(電解液を配液又は集液する管)の配設態様により異なることがある。複極式電解槽50のマニホールド30の配設態様としては、内部マニホールド30I型及び外部マニホールド型が代表的である。
−内部マニホールド型−
内部マニホールド型とは、複極式電解槽50とマニホールド30(電解液を配液又は集液する管)とが一体化されている形式をいう。
内部マニホールド型複極式電解槽50では、より具体的には、陽極入口マニホールド及び陰極入口マニホールドが、隔壁1内及び/又は外枠3内の下部に設けられ、且つ、隔壁1に垂直な方向に延在するように設けられ、また、陽極出口マニホールド及び陰極出口マニホールドが、隔壁1内及び/又は外枠3内の上部に設けられ、且つ、隔壁1に垂直な方向に延在するように設けられる。
内部マニホールド型複極式電解槽50が内在的に有する、陽極入口マニホールドと、陰極入口マニホールドと、陽極出口マニホールドと、陰極出口マニホールドを総称して、内部マニホールドと呼ぶ。
内部マニホールド型の例では、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの下方に位置する部分の一部に、陽極入口マニホールドと陰極入口マニホールドとを備えており、また、同様に、隔壁1の端縁にある外枠3のうちの上方に位置する部分の一部に、陽極出口マニホールドと陰極出口マニホールドとを備えている。
内部マニホールド型複極式水電解エレメントは、構造的にリーク電流による影響が大きい。従って、リーク電流による不純ガスの発生や電解枠の電食を防止する目的で、内部マニホールドの接液面をコーティング材で保護しても良い。接液面の保護は、入口マニホールドと出口マニホールドの両方に施すことで、その効果を高める事ができる。コーティング材料の材質は、電解槽内部でのリーク電流回路の電気抵抗を大きくする目的で、絶縁性のものを採用してもよい。コーティング材料の材質としては、EPDM、PTFE、ETFE、PFA、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスルホン、PPS等を採用してもよい。また、リーク電流による不純ガス発生を抑制する目的で、ガス発生活性の低い金属材料で保護しても良い。特に、アルカリ水電解槽においては、酸素および水素発生活性の低い金属材料が好ましい。
コーティングの方法としては、特に限定されないが、樹脂ライニング、鍍金等の他、マニホールド表面の保護を目的とした脱着可能な流路構成部材の挿入であっても良い。
本実施形態では、コーティングの方法として、マニホールド部及び枝管部を脱着可能な流路構成部材で構成することが好ましい。
流路構成部材は、マニホールドの形状に合わせて適宜形状を選択でき、マニホールド部及び枝管部一体型の単独パーツであっても良いし、マニホールド部構成部材と枝管部構成部材とに分解できるセパレート型であっても良い。
セパレート型であれば、流路構成部材を後から電解エレメントに装着できるため、経年劣化による交換が容易となる。
流路構成部材の材質としては、絶縁材料を少なくとも含むことが好ましい。
流路構成部材の材質としては、EPDM、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ETFE,PFA、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等といった樹脂を採用して良い。
また、流路構成部材の材質としては、酸素および水素発生活性の低い金属材料を採用して良い。かかる酸素および水素発生活性の低い金属材料としては、クロム、マンガン、亜鉛、ガリウム、ニオブ、モリブデン、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、金、タリウム、鉛、ビスマス等を採用して良い。
流路構成部材の肉厚は、特に限定されないが、1mm以上10mm以下であることが好ましい。1mm以上であれば、流路構成部材として十分な強度を得ることができる。かかる観点から、肉厚の下限は2mm以上であることがより好ましく、3mm以上がさらに好ましい。一方、10mm以下であれば、流路の圧力損失を低く保つことができる。かかる観点から、肉厚の上限は8mm以下であることがより好ましく、6mm以下がさらに好ましい。
流路構成部材(ヘッダー部構成部材及び枝管部構成部材)の流路断面の形状は、特に限定されないが、丸形、矩形、楕円形が好ましい。断面形状が丸形であれば、電解槽スタック時の締付による応力に対して十分な強度を有する。また、断面形状が矩形、楕円形であれば、セパレート型の流路構成部材を使用した場合に、ヘッダー部構成部材が回転し、枝管部構成部材との接合不良を抑制することができる。さらに、流路構成部材の強度を高める目的で、各構成部材の流路の一部が隔壁により分断され、複数の流路を備えていても良い。
ヘッダー部構成部材及び枝管部構成部材の流路断面積は、流路の圧損や流路閉塞を考慮して自由に設計できるが、ヘッダー部構成部材の流路断面積は、枝管部構成部材の流路断面積よりも大きい、言い換えれば、枝管部構成部材の流路断面積は、ヘッダー部構成部材の流路断面積よりも小さい、ことが好ましい。このような設計により、電解槽の対数が増えた場合にも各セルに均一に電解液を供給することができる。
ヘッダー部または枝管部構成部材の脱落を防止する目的で、一方の構成部材が他方の構成部材を支持ないし固定する構成であっても良い。支持ないし固定する方法としては、電解槽のスタック形態に応じて任意に選択できるが、穴の開いた一方の構成部材に他方の構成部材を挿入する方法が挙げられる。電解液と発生ガスの流れを安定させる目的で、枝管部構成部材がヘッダー部構成部材に支持ないし固定されていることがより好ましい。
各エレメントをスタックする時は、エレメント間のシール性を高めるため、ヘッダー部構成部材の端部開放部またはその周囲にガスケットを配置しても良い。ガスケットを配置することで、シール性を高められる以外に、マニホールド同士の接触による破損を防止することも可能となる。マニホールド端部開放部またはその周辺に配置されるガスケットの材質は、特に限定されないが、エレメント同士の短絡を防止する目的で、絶縁性のガスケットを用いることが好ましい。
なお、内部マニホールド30I型の複極式電解槽50において、その内部に電解によって発生した気体と、電解液を分離する気液分離ボックスを有してもよい。気液分離ボックスの取付位置は、特に限定されないが、陽極室5aと陽極出口マニホールドとの間や、陰極室5cと陰極出口マニホールドとの間に取付けられてもよい。
本実施形態のアルカリ水電解システム70は、気液分離タンク72の内面に、1層又は2層以上の樹脂ライニング層(図示せず)を有していることが好ましい。
樹脂ライニング層の材料としては、フッ素系樹脂が好ましく、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられる。
フッ素系樹脂を選択することで、特に、本発明のアルカリ水電解に用いる電極液に対する耐久性を向上させることができる。
樹脂ライニング層の厚みは、0.5〜4.0mmであることが好ましく、1.0〜2.0mmであることがさらに好ましい。0.5mmよりも薄い場合、ガスや電解液によるタンク内面の劣化が生じやすく、4.0mmよりも厚い場合、高温及びアルカリにより残留応力が開放され、変形や剥離を引き起こしてしまう可能性がある。上記範囲の厚みを採用することにより、気液分離タンク72の耐久性が向上する。
また、樹脂ライニング層の厚みの標準偏差は、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましい。厚みのバラつきを制御することで耐久性の向上を達成することが可能となる。
厚みのバラつきを制御は、ライニング層を形成する前に行うタンクの表面のブラストの条件を調整することにより行うことができる。
本実施形態では、樹脂ライニング層は、通常用いられる手法で製造することができる。
本実施形態では、樹脂ライニング層を形成するにあたり、前もって、気液分離タンク72の内面に、脱脂処理、砂等を用いたブラスト処理、プライマー処理を、1つ又は複数施してもよい。
樹脂ライニング層の形成は、例えば、回転焼成、紛体塗装による塗布、液体塗布、吹付等により行ってよい。
本実施形態のアルカリ水電解システム70では、気液分離タンク72の内面に樹脂ライニング層を有している場合には、気液分離タンク72の外面が保温材で覆われていることが好ましい。タンク72の内面の劣化は特に高温条件下において顕著になることから、保温材が使用される際には、前述のガスや電解液によるタンクの72内面の劣化を抑制する効果を有利に得ることが可能になる。
保温材としては、通常の断熱材としてよく、ガラスウール、発泡材等が挙げられる。
気液分離ボックスの表面は、電解液の腐食性や、圧力や温度等の運転条件に十分耐えうる材質のコーティング材料で、被覆されていても良い。コーティング材料の材質は、電解槽内部での漏洩電流回路の電気抵抗を大きくする目的で、絶縁性のものを採用してもよい。コーティング材料の材質に、EPDM、PTFE、ETFE、PFA、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等を採用してもよい。
−液面計−
電解装置70の電解槽50は、電解槽50の各電極室5a、5c内の液面を測定することができる液面計を有していてよい。特に、本実施形態では、上記液面計を有することが好ましい。当該液面計により、各電極室5a、5c内の液面を監視し(電極室5a、5c内での液面の高さを監視し)、各電極室5a、5c内の隔膜4の表面が電解液に対して浸漬状態であるか、または浸漬していない非浸漬状態であるかを把握することができる。
液面計としては、特に限定されないが例えば、直視式、接触式、差圧式の液面計を用いることができる。
続いて、電解装置70の構成要素のうち、主に電解槽50以外について説明する。
−送液ポンプ−
送液ポンプ71としては、特に限定されず、適宜定められてよい。
また、本実施形態に使用することができる電解装置70の送液ポンプ71として、陰極室5cへ送液するための陰極側送液ポンプ、陽極室5aへ送液するための陽極側送液ポンプを有することができ、それぞれ別々に稼働することができる。
−気液分離タンク−
気液分離タンク72は、電解液と水素ガスとを分離する水素分離タンク72hと、電解液と酸素ガスとを分離する酸素分離タンク72oとを含む。
水素分離タンク72hは陰極室5cに接続され、酸素分離タンク72oは陽極室5aに接続されて用いられる。
電解装置70の気液分離タンク72は、陽極室5a用に用いられる酸素分離タンク72oと、陰極室5cに用に用いられる水素分離タンク72hの二つが備えられる。
陽極室5a用の気液分離タンク72は、陽極室5aで発生した酸素ガスと電解液を分離し、陰極室5c用の気液分離タンク72は、陰極室5cで発生した水素ガスと電解液を分離する。
−水補給器−
電解装置70において用いる水補給器としては、特に限定されず、適宜定められてよい。
水としては、一般上水を使用してもよいが、長期間に亘る運転を考慮した場合、イオン交換水、RO水、超純水等を使用することが好ましい。
−電気回路−
電解装置70は電解電源(整流器)74を備えている。さらに、電解槽50と電解電源(整流器)74とを含む電気回路が形成されていてよい。また、電解装置70では、電解槽50に接続される外部負荷を備えていてよい。特に、本実施形態では、電気回路及び外部負荷を備えていることが好ましい。
具体的には、図1の例では、電解槽50中の端部となる電解エレメント65の陽極2aと、電解電源74の正極とがケーブルで接続され、また、電解槽50中の端部となる電解エレメント65の陰極2cと、電解電源74の負極とがケーブルで接続されているが、当該ケーブル間を外部負荷と開閉器とで接続している。これにより、例えば、停止工程において、電解電源74が停止している状態で開閉器を閉じることにより、電解槽50(全ての電解エレメント65)と外部負荷との回路を形成することができる。また、図1の例では、外部負荷を電解槽50の電解エレメント65の全体と接続しているが、図示は省略するが、外部負荷を電解槽50の電解槽50のうちの一部と接続してもよい。これにより、例えば、停止工程において、電解槽50のうちの一部の電解エレメント65と外部負荷との回路を形成することができる。
−貯留タンク−
電解装置70では、電解液を貯留する貯留タンクを有することができる。また、当該貯留タンクは、電解装置70の電解槽50よりも鉛直方向上方に位置することが好ましい。貯留タンクが電解槽50と配管等で接続することで、重力を利用して貯留タンク内の電解液を電解槽へ注入することができる。また当該配管等にバルブ等を設けることで流量を適切に調節することもできる。
−その他−
電解装置70は、電解槽50、気液分離タンク72、水補給器以外にも、整流器74、酸素濃度計75、水素濃度計76、流量計77、圧力計78、熱交換器、圧力制御弁80等を備えてよい。
また、電解装置70は、さらに、電力供給の停止を検知する検知器、及び、送液ポンプを自動停止する制御器を備えることが好ましい。検知器及び制御器を備えることで、再生可能エネルギーのように、変動が激しい電力源下でも、人為的な操作なしに、自己放電の影響を効率的に低減することが可能になる。
(電解装置の運転方法)
本実施形態のアルカリ水電解方法は、本実施形態のアルカリ水電解システム70を用いて、実施することができる。
本実施形態では、本実施形態のアルカリ水電解システム70を、電流密度0〜20kA/mで継時的に電流密度が変動する電源下で、且つ、電解温度が0〜120℃で問題なく使用することができる。
一方で、本実施形態のアルカリ水電解方法において、電解エレメント65内にある電解液の温度は、40℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、また、110℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがさらに好ましい。
上記温度範囲とすれば、高い電解効率を維持しながら、アルカリ水電解シスレム70の部材が熱により劣化することを効果的に抑制することができる。
さらに、本実施形態のアルカリ水電解方法において、電解エレメント65に与える電流密度としては、1kA/m以上であることが好ましく、8kA/m以上であることがさらに好ましく、また、15kA/m以下であることが好ましく、10kA/m以下であることがさらに好ましい。
特に、変動電源を使用する場合には、電流密度の上限を上記範囲にすることが好ましい。
以下に、本実施形態のアルカリ水電解方法の好適な条件を記載する。
本実施形態において用いられる電解液としては、アルカリ塩が溶解されたアルカリ性の水溶液としてよく、例えば、NaOH水溶液、KOH水溶液等が挙げられる。
アルカリ塩の濃度としては、20質量%〜50質量%が好ましく、25質量%〜40質量%がより好ましい。
本実施形態では、イオン導電率、動粘度、冷温化での凍結の観点から、25質量%〜40質量%のKOH水溶液が特に好ましい。
本実施形態のアルカリ水電解方法において、電解エレメント65内の圧力としては、3kPa〜1000kPaであることが好ましく、3kPa〜300kPaであることがさらに好ましい。
本実施形態では、前述のアルカリ水電解システム70の構成要素を用いて、例えば、図1に示すような構成のアルカリ水電解システム70を作製することができるが、これに限定されるものではない。
また、本実施形態では、電解槽50への電力供給の停止時に、送液ポンプ71を停止することで、出口ホース内の電解液の流れを停止することが好ましい。出口ホース内の電解液の流れを停止することで、電解液の自重によって電解液が出口マニホールドに流れ落ちるため、出口ホース内に絶縁性のガス層が形成される。これにより、出口ホースの液抵抗が無限に増大するため、出口ホースにリーク電流がほぼ流れなくなる。その結果、自己放電の影響を低減することが可能になる。
本実施形態のアルカリ水電解方法は、太陽光や風力等の変動電源を使用することによって、上述の効果が顕著になる。
上記のような、変動電源を用いた場合、具体的には、アルカリ水電解システム70に低電流密度から高電流密度までがランダムに印可されることとなり、特に低電流密度時に酸素中水素濃度が悪化することとなるところ、本実施形態のアルカリ水電解方法を採用すれば、酸素中水素濃度の悪化を抑制することが可能となる。本実施形態の電解装置の運転方法は、上述した本実施形態の電解装置70を用いて、実施することができる。
本実施形態の水素の製造方法は、本実施形態のアルカリ水電解槽で水の電気分解することを特徴とする。
本実施形態の水素の製造方法は、負荷変動を有する電気を使用し、負荷変動に応じて電解電流を変動させることを特徴とする。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例)
複極式水電解エレメント及びそれを用いたアルカリ水電解システムは、下記のとおり作製した。
−隔壁、外枠−
複極式水電解エレメントとして、陽極と陰極とを区画する隔壁と、隔壁を取り囲む外枠と、を備えたものを用いた。隔壁及び複極式水電解エレメントのフレーム等の電解液に接液する部材の材料は、全てニッケルとした。
−陽極−
陽極としては、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用い、酸化ニッケルの造粒物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けて製作した。
−陰極−
導電性基材として、直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材上に白金を担持したものを用いた。
−隔膜−
隔膜としてAgfa社製Zirfon perl UTP500を使用した。
−ゼロギャップ構造−
複極式水電解エレメントを隔膜を挟んだガスケットを介してスタックさせ、複極式電解槽を組み立てることによって、陰極と陽極とを隔膜の両側から押し付けて接触させ、ゼロギャップ構造を形成した。
陽極側では陽極のみを用い、陰極側は「陰極−導電性弾性体−集電体」の組み合わせからなる陰極構造体を用いた。
集電体として、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmであり、開口率は54%であった。
導電性弾性体として、線径0.15mmのニッケル製ワイヤーを織ったものを、波高さ5mmになるように波付け加工したものを使用した。
導電性弾性体を集電体上にスポット溶接して固定した。
陽極及び陰極としては、前述のものを用いた。
−複極式電解槽、複極式水電解エレメント
複極式水電解エレメントを49個使用し、図2に示すように、一方の端側で、ファストヘッド、絶縁板、陽極ターミナルユニットを配置し、さらに、陽極側ガスケット部分、隔膜、陰極側ガスケット部分、複極式水電解エレメントをこの順に並べたものを49組配置し、さらに、陽極側ガスケット部分、隔膜、陰極側ガスケット部分を配置し、もう一方の端側で、陰極ターミナルユニット、絶縁板、ルーズヘッドを配列し、その後、これらをファストヘッド及びルーズヘッドの両側からガスケットのシール面圧で25N/mmで締め付けることでスタックし、複極式電解槽を組み立てた。
この実施例においては、陰極室及び陽極室が、それぞれ50室ある50対の直列接続構造を有していた。
−ガスケット−
ガスケットとして、水電解エレメントの外縁部にPTFEを材質とし、50%圧縮時の面圧が30MPaであり、厚みが2.0mmであるもの2枚を配置した。このガスケットは、平面視での開口部の寸法がセル枠の電極室の寸法であり、2枚のPTFEの間に隔膜を挟んだ。
また、マニホールド端部開放部のガスケットとして、EPDMゴムを材質とし、50%圧縮時の面圧が5MPaであり、厚みが1.0mmであるものを配置した。
−マニホールド−
内部マニホールド10I型の複極式水電解エレメント60を採用した。
そして、図3、図4に示すように、マニホールド部(陽極入口マニホールド10Iai、陰極入口マニホールド10Ici、陽極出口マニホールド10Iao、陰極出口マニホールド10Ico)のいずれもが、複極式水電解エレメント60の隔壁1の側方の2辺に対して平行に延びるように(隔壁1の上方の辺及び下方の辺に対して直交して延びるように)、配置した。
また、図3、図4に示すように、ヘッダー部(陽極用ヘッダー部20Iai、陰極用ヘッダー部20Ici、陽極用ヘッダー部20Iao、陰極用ヘッダー部20Ico)のいずれもが、複極式水電解エレメント60の隔壁1に垂直な方向に延びるように(スタック方向に沿う方向に延びるように)、配置した。
ヘッダー部構成部材の流路断面積は枝管部構成部材の流路断面積よりも大きいものとした。
さらに、図5、図6に示すように、流路断面の形状が矩形であるヘッダー部構成部材には、その形状に合うように、隔壁側から貫通穴の開いた矩形の枝管部構成部材を挿入し、同じく矩形のヘッダー部構成部材の陽極側から上述の貫通穴を通す様に挿入した。枝管部構成部材はヘッダー部構成部材に支持されていた。両構成部材により、マニホールドを形成した。それぞれの構成部材は肉厚が2mmのポリスルホン成型体を使用した。
ヘッダー部構成部材の端部開放部またはその周囲に絶縁性ガスケットを配置した。
こうして、内部マニホールド10I型の電解槽を作製した。
図5に、本実施形態の一例のヘッダー部構成部材の一部を示す。
図6に、本実施形態の一例の枝管部構成部材の一部を示す。
図7に、図5に示すヘッダー部構成部材と図6に示す枝管部構成部材とを組み立てたときの様子を示す。
なお、図5〜図7には、ヘッダー部構成部材の流路と、枝管部構成部材の流路とが交わる一箇所の周辺部分についてのみ示している。
陰極入口枝管部10Iciを介して陰極室5cへ、陰極室5cから陰極出口枝管部10Icoを介して、電解液を流した。また、陽極入口枝管部10Iaiを介して陽極室5aへ、陽極室5aから陽極出口枝管部10Icoを介して、電解液を流した。
図3に示すように、陰極電解液入口5ciは平面視で長方形の外枠の下辺の一方端側に、陰極電解液出口5coは平面視で長方形の外枠3の下辺の他方端側に繋がる側辺の上側に、それぞれ接続されている。ここでは、陰極電解液入口5ciと陰極電解液出口5coとを、平面視で長方形の電解室5において電極室5の電極室5の中央部を挟んで向かい合うように、設けた。電解液は、鉛直方向に対して傾斜しながら下方から上方へ流れ、電極面に沿って上昇した。
この実施例の複極式電解槽50では、陽極室5aや陰極室5cの電解液入口5iから、陽極室5aや陰極室5cに、電解液が流入し、陽極室5aや陰極室5cの電解液出口5oから、電解液と生成ガスとが、電解槽50外へ流出する構造とした。
陰極室5cでは、電解により水素ガスが発生し、陽極室5aでは、電解により酸素ガスが発生するため、前述した、陰極出口枝管部10Icoでは、電解液と水素ガスとの混相流となり、陽極出口枝管部10Icoでは、電解液と酸素ガスとの混相流となった。
送液ポンプ、水補給器等は、いずれも当該技術分野において通常使用されるものを用いて、図1に示すようなアルカリ水電解システムを作製した。
アルカリ水電解システムを用いたアルカリ水電解方法を、下記の条件で実施した。
電解液として、30%KOH水溶液を用いた。
整流器から複極式電解槽に対して、複極式電解槽の陰極及び陽極の面積に対して、2kA/mとなるように通電をした。
送液ポンプにより、陽極室、酸素分離タンク(陽極用気液分離タンク)、陽極室1aの循環を、また、陰極室、水素分離タンク(陰極用気液分離タンク)、陰極室、の循環を行った。
通電開始後の槽内圧力は、圧力計で測定し、陰極(水素ガス)側圧力が50kPa、陽極(酸素ガス)側圧力が49kPaとなるとように、調整した。圧力調整は、圧力計下流に設置した制御弁により行った。
(電解試験)
整流器から電解槽に対して、電流密度が2kA/mとなるように連続で2時間通電後、周波数30Hz、振幅2〜4kA/mのsinカーブを描く変動電流を24時間流し、水電解を行った。この条件において、変動電流を24時間通電時に評価を行った。
水電解により得られた水素中の酸素濃度(%)の値をガスクロマトグラフィーにより測定した。酸素濃度は0.1%以下であった。尚、水素中に酸素濃度が少ない方が、水素の純度が上がることとなるため、より良質な水素を得たことになる。
その結果を表1に記す。
(比較例)
流路構成部材を使用せず、マニホールドの接液面を絶縁性材料でコーティングしない点以外は実施例1と同様の内部マニホールド型複極式電解槽を使用してアルカリ水電解システムを作製した。実施例同様の電解試験において、水素中の酸素濃度(%)を測定した結果、1.1%であった。
本発明によれば、太陽光や風力等の変動電源下において電解停止時に生じ得る陽極及び陰極の劣化を抑制することができる。また、本発明によれば、さらに、隔膜を介した各電極室間の気体の拡散・混合を抑制することが可能な電解装置を提供することができる。
1 隔壁
2 電極
2a 陽極
2c 陰極
2e 導電性弾性体
2r 集電体
3 外枠
4 隔膜
5 電極室
5a 陽極室
5c 陰極室
5i 電解液入口
5o 電解液出口
5ai 陽極電解液入口
5ao 陽極電解液出口
5ci 陰極電解液入口
5co 陰極電解液出口
6 整流板
7 ガスケット
10 枝管部
10Iai 陽極用入口枝管部
10Ici 陰極用入口枝管部
10Iao 陽極用出口枝管部
10Ico 陰極用出口枝管部
20 ヘッダー部
20Iai 陽極用入口ヘッダー部
20Iao 陽極用出口ヘッダー部
20Ici 陰極用入口ヘッダー部
20Ico 陰極用出口ヘッダー部
30 マニホールド
50 複極式電解槽
51g ファストヘッド、ルーズヘッド
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
51r タイロッド
51i 絶縁板
60 複極式水電解エレメント
65 電解セル
70 電解装置
71 送液ポンプ
72 気液分離タンク
72h 水素分離タンク
72o 酸素分離タンク
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
77 流量計
78 圧力計
80 圧力制御弁
D1 隔壁に沿う所与の方向(鉛直方向)
Z ゼロギャップ構造

Claims (14)

  1. 陽極と、陰極と、隔壁と、外枠で構成され、ヘッダー部と枝管部とで構成されるマニホールドを有する内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメントであり、前記ヘッダー部及び枝管部は脱着可能な流路構成部材で構成されることを特徴とする、内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  2. 前記マニホールドは、入口マニホールド及び出口マニホールドを含み、前記入口マニホールド及び前記出口マニホールドの両方が前記流路構成部材で構成されていることを特徴とする、請求項1記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  3. 前記流路構成部材は、少なくとも、前記ヘッダー部を構成するヘッダー部構成部材と、前記枝管部を構成する枝管部構成部材とで構成されることを特徴とする、請求項1または2記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  4. 前記枝管部構成部材は、前記ヘッダー部構成部材により支持されていることを特徴とする、請求項3記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  5. 前記枝管部構成部材の流路断面積は、前記ヘッダー部構成部材の流路断面積よりも小さいことを特徴とする、請求項3または4記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  6. 前記ヘッダー部構成部材の流路断面の形状は矩形あるいは楕円形であることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  7. 前記流路構成部材は、少なくとも絶縁材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  8. 前記流路構成部材は、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料で構成されることを特徴とする、請求項7記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  9. 前記流路構成部材は、少なくとも水素または酸素発生活性が低い金属材料で構成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  10. 前記ヘッダー部構成部材の端部開放部またはその周囲に絶縁性ガスケットが配置されることを特徴とする、請求項3〜9のいずれか1項に記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメント。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の内部マニホールド型複極式アルカリ水電解エレメントとイオン透過性隔膜とが前記絶縁性ガスケットを介してスタックされて電解セルが構成されることを特徴とする、アルカリ水電解槽。
  12. 前記絶縁性ガスケットのエレメント外側に前記絶縁性ガスケット以外の樹脂ガスケットが配置され、前記樹脂ガスケットの圧縮弾性率は、前記絶縁性ガスケットの圧縮弾性率よりも大きいことを特徴とする、請求項11記載のアルカリ水電解槽。
  13. 請求項11または12に記載のアルカリ水電解槽で水の電気分解することを特徴とする、水素の製造方法。
  14. 負荷変動を有する電気を使用し、負荷変動に応じて電解電流を変動させることを特徴とする、請求項13記載の水素の製造方法。
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