JP2021163663A - ガス流路構造、支持板、及び、燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガス流路は、同一ガス流路内に、2つ以上の第1の領域と、当該第1の領域よりも流路断面積が小さい2つ以上の第2の領域と、を備え、且つ、同一ガス流路内で各当該第1の領域と各当該第2の領域とが交互に配置され、前記ガス流路は、隣り合う前記ガス流路間で各前記第1の領域と各前記第2の領域とが交互に配置され、前記ガス流路は、各前記第2の領域中に、当該第2の領域よりも流路断面積が小さい第3の領域を少なくとも1つ備えることを特徴とする燃料電池用のガス流路構造。
【選択図】図2
Description
この燃料電池の単セルは、通常、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、必要に応じて当該膜電極接合体の両面を挟持する2枚のセパレータにより構成される。
膜電極接合体は、プロトン(H+)伝導性を有する固体高分子型電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ、触媒層及びガス拡散層が順に形成された構造を有している。
セパレータは、通常、ガス拡散層に接する面に反応ガスの流路としての溝が形成された構造を有している。なお、このセパレータは発電した電気の集電体としても機能する。
燃料電池の燃料極(アノード)では、流路及びガス拡散層から供給される水素が触媒層の触媒作用によりプロトン化し、電解質膜を通過して酸化剤極(カソード)へと移動する。同時に生成した電子は、外部回路を通って仕事をし、カソードへと移動する。カソードに供給される酸素は、カソード上でプロトンおよび電子と反応し、水を生成する。
生成した水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水はガス拡散層を透過して、流路を通って系外へと排出される。
例えば、特許文献1には、ガス流路にガス流れ方向の断面積を局所的に小さくした絞り部を設ける事で、ガス流路からの反応ガスをガス拡散層中に対流させるいわゆる潜り込みを発生させることで、電極へのガス供給性を向上させ、発電性能を向上させる技術が開示されている。
また、特許文献2では、セパレータのリブ幅を小さくした部分でガス拡散層との接触面積が小さくなるため、セパレータとガス拡散層の接触抵抗の上昇と局所面圧増大によるガス拡散層の座屈が起こる恐れがある。これにより、ガス拡散層が盛り上がりセパレータのガス流路に入り込むことでガス流路の断面積が小さくなり、生成水によるガス流路の閉塞が発生しやすくなり、電極へのガス供給性が低下する。また、セパレータのガス流路の断面積が小さくなることで、燃料電池の圧損が増加し燃料電池の発電性能が低下する。
前記ガス流路は、同一ガス流路内に、2つ以上の第1の領域と、当該第1の領域よりも流路断面積が小さい2つ以上の第2の領域と、を備え、且つ、同一ガス流路内で各当該第1の領域と各当該第2の領域とが交互に配置され、
前記ガス流路は、隣り合う前記ガス流路間で各前記第1の領域と各前記第2の領域とが交互に配置され、
前記ガス流路は、各前記第2の領域中に、当該第2の領域よりも流路断面積が小さい第3の領域を少なくとも1つ備えることを特徴とする燃料電池用のガス流路構造を提供する。
前記膜電極接合体の2つの前記ガス拡散層のうちの少なくとも1つのガス拡散層に隣接して配置される少なくとも1つの支持板と、を有し、
前記支持板が、前記ガス流路構造を備え、
前記ガス流路構造は、前記支持板の前記ガス拡散層に接する面に少なくとも形成されていることを特徴とする燃料電池を提供する。
本開示においては、触媒層及びガス拡散層を含む2つの電極と、2つの当該触媒層の間に配置される電解質膜と、を備える膜電極接合体の、2つの当該ガス拡散層のうちの少なくとも1つのガス拡散層に隣接して配置される少なくとも1つの支持板の当該ガス拡散層に接する面に形成された溝状の複数のガス流路を含むガス流路構造であって、
前記ガス流路は、同一ガス流路内に、2つ以上の第1の領域と、当該第1の領域よりも流路断面積が小さい2つ以上の第2の領域と、を備え、且つ、同一ガス流路内で各当該第1の領域と各当該第2の領域とが交互に配置され、
前記ガス流路は、隣り合う前記ガス流路間で各前記第1の領域と各前記第2の領域とが交互に配置され、
前記ガス流路は、各前記第2の領域中に、当該第2の領域よりも流路断面積が小さい第3の領域を少なくとも1つ備えることを特徴とする燃料電池用のガス流路構造を提供する。
本研究者は、3種類の流路断面積の異なるガス流路領域を組合せることにより、同一ガス流路内のガスの潜り込み量を均一化させ、且つ、異なるガス流路間で、リブとガス拡散層との接触部における面圧を均等にして、燃料電池の圧損の上昇を最低限に抑え、その発電性能を向上させるガス流路構造を見出した。
図1に示すように、本開示のガス流路構造においては、第2の領域(狭溝)は、第1の領域(広溝)よりも流路断面積が小さい。
図2に示すように、本開示のガス流路構造においては、同一ガス流路内に、2つ以上の第1の領域と、当該第1の領域(広溝)よりも流路断面積が小さい2つ以上の第2の領域(狭溝)と、を備え、且つ、同一ガス流路内で各当該第1の領域(広溝)と各当該第2の領域(狭溝)とが交互に配置されている。また、隣り合うガス流路間で各第1の領域(広溝)と各第2の領域(狭溝)とが交互に配置されている。さらに、各第2の領域中に、当該第2の領域(狭溝)よりも流路断面積が小さい第3の領域(絞り部)を1つ備えている。
膜電極接合体及び支持板については、後述する。
ガス流路の第1の領域と第2の領域の溝の深さは、同じであっても、異なっていてもよいが、燃料電池の出力を安定にする観点からは、同じであってもよい。
また、ガス流路は、隣り合うガス流路間で各第1の領域と各第2の領域とが交互に配置される。そのため、ガス流路の第1の領域と第2の領域の流路長さは、同じである。
第1の領域と第2の領域の流路長さは、特に限定されず、燃料電池の大きさに合わせて適宜設定することができる。
同一ガス流路内に配置される第1の領域と第2の領域はそれぞれ2つ以上備えられていれば、その数は特に限定されず、燃料電池の大きさに合わせて適宜設定することができる。
第3の領域(絞り部)に対する第2の領域(狭溝)の流路断面積比(狭溝/絞り部)は、1.00を超えていればよく、燃料電池の出力向上の観点から、3.00以上であってもよく、5.00以上であってもよい。また、流路断面積比(狭溝/絞り部)は、例えば、燃料電池の出力向上の観点から、10.00以下であってもよく、8.00以下であってもよく、6.00以下であってもよい。
ガス流路の第2の領域と第3の領域の溝の深さは、同じであっても、異なっていてもよいが、燃料電池の出力を安定にする観点からは、同じであってもよい。
第3の領域(絞り部)に対する第2の領域(狭溝)の流路長さ比(狭溝/絞り部)は、1.00を超えていればよく、燃料電池の出力向上の観点から、3.00以上であってもよく、5.00以上であってもよい。また、流路長さ比(狭溝/絞り部)は、例えば、燃料電池の出力向上の観点から、100.00以下であってもよく、50.00以下であってもよく、10.00以下であってもよい。
各第2の領域中に配置される第3の領域は少なくとも1つ備えられていれば、その数は特に限定されないが、燃料電池の出力を安定化させる観点からは、1つであってもよい。
第3の領域は、具体的には絞り部であり、従来公知の絞り部を採用してもよい。
本開示の燃料電池用の支持板は、上記ガス流路構造を備える。
支持板は、その少なくとも一面に上記ガス流路構造を備えていればよく、その両面に上記ガス流路構造を備えていてもよい。
支持板は、触媒層及びガス拡散層を含む2つの電極と、2つの当該触媒層の間に配置される電解質膜と、を備える膜電極接合体の2つのガス拡散層のうちの少なくとも1つのガス拡散層に隣接させて用いられる。
支持板は、例えば、セパレータ、及び、集電体等であってもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
本開示の燃料電池は、触媒層及びガス拡散層を含む2つの電極と、2つの当該触媒層の間に配置される電解質膜と、を備える膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の2つの前記ガス拡散層のうちの少なくとも1つのガス拡散層に隣接して配置される少なくとも1つの支持板と、を有し、
前記支持板が、前記ガス流路構造を備え、
前記ガス流路構造は、前記支持板の前記ガス拡散層に接する面に少なくとも形成されていることを特徴とする。
燃料電池の単セルは、膜電極接合体と、当該膜電極接合体の少なくとも片面に支持板を備える。また、燃料電池の単セルは、膜電極接合体と、当該膜電極接合体の両面を挟持する2枚の支持板を備えてもよい。
支持板は、少なくともガス拡散層に接する面に上記ガス流路構造を有していればよく、両面に上記ガス流路構造を有していてもよい。
触媒層は、例えば、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有するカーボン粒子等を備えていてもよい。
触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
電解質としては、フッ素系樹脂等であってもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ナフィオン溶液等を用いてもよい。
上記触媒金属はカーボン粒子上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持したカーボン粒子(触媒粒子)と電解質とが混在していてもよい。
触媒金属を担持するためのカーボン粒子(担持用カーボン粒子)は、例えば、一般に市販されているカーボン粒子(カーボン粉末)を加熱処理することにより自身の撥水性が高められた撥水化カーボン粒子等を用いてもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
支持板は、例えば、セパレータとして機能するものであってもよく、集電体として機能するものであってもよい。
セパレータとしては、上記「2.支持板」に記載のセパレータとして挙げられる材料等を挙げることができる。
支持板が備えるガス流路構造は、当該支持板の当該ガス拡散層に接する面に少なくとも形成されていればよく、当該支持板の両面に形成されていてもよい。
膜電極接合体は、通常、2枚の支持板でその両側を挟持され、アノードと支持板との間には燃料ガス流路が形成され、カソードと支持板との間には酸素含有ガス流路が形成される。
触媒層及びガス拡散層を含む2つの電極と、2つの当該触媒層の間に配置される電解質膜と、を備える膜電極接合体と、当該膜電極接合体の2つのガス拡散層にそれぞれ隣接して配置される2つの支持板と、を有し、2つの当該支持板が、ガス流路構造を備え、ガス流路構造は、各支持板のガス拡散層に接する面に形成されている燃料電池を準備した。
支持板が備えるガス流路構造は、以下の通りである。
同一ガス流路内に、所定の数の第1の領域と、当該第1の領域よりも流路断面積が小さい所定の数の第2の領域と、を備える。
同一ガス流路内で各当該第1の領域と各当該第2の領域とが交互に配置されている。
隣り合うガス流路間で各第1の領域と各第2の領域とが交互に配置されている。
各第2の領域中に、当該第2の領域よりも流路断面積が小さい第3の領域を1つ備える。
第2の領域(狭溝)に対する第1の領域(広溝)の流路断面積比(広溝/狭溝)は、1.84とした。
準備した燃料電池について所定の条件で運転を実施し、所定の電流密度における燃料電池の圧損及び電圧、並びに、支持板のリブからガス拡散層へのガスの平均潜り込み流速を測定した。結果を表1〜2、図3、図7、図8に示す。
図3は、上図が実施例1で用いたガス流路構造のガス流路配置の模式図であり、下図が当該ガス流路配置箇所でのガス拡散層へのガス潜り込み流速を示す図である。
実施例1では、圧損は24kPaであり、電圧は0.6115Vであり、平均潜り込み流速は0.40m/sであった。
ガス流路構造において、第2の領域(狭溝)に対する第1の領域(広溝)の流路断面積比(広溝/狭溝)を、1.00としたこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の圧損及び電圧、並びに、支持板のリブからガス拡散層へのガスの平均潜り込み流速を測定した。結果を表1〜2、図4、図7、図8に示す。
図4は、上図が比較例1で用いたガス流路構造のガス流路配置の模式図であり、下図が当該ガス流路配置箇所でのガス拡散層へのガス潜り込み流速を示す図である。
比較例1では、圧損は32kPaであり、電圧は0.6030Vであり、平均潜り込み流速は0.21m/sであった。
ガス流路構造において、第3の領域を設けなかったこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の圧損、及び、支持板のリブからガス拡散層へのガスの平均潜り込み流速を測定した。結果を表1、図5、図7に示す。
図5は、上図が比較例2で用いたガス流路構造のガス流路配置の模式図であり、下図が当該ガス流路配置箇所でのガス拡散層へのガス潜り込み流速を示す図である。
比較例2では、圧損は18kPaであり、平均潜り込み流速は0.20m/sであった。
ガス流路構造において、各第2の領域中に、第3の領域を設けず、その代わりに、各第1の領域中に、第3の領域を1つ設けたこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の圧損、及び、支持板のリブからガス拡散層へのガスの平均潜り込み流速を測定した。結果を表1、図6、図7に示す。
図6は、上図が比較例3で用いたガス流路構造のガス流路配置の模式図であり、下図が当該ガス流路配置箇所でのガス拡散層へのガス潜り込み流速を示す図である。
比較例3では、圧損は35kPaであり、平均潜り込み流速は0.35m/sであった。
図8は、実施例1と比較例1の各燃料電池の運転時の電流密度に対する燃料電池の電圧と圧損との関係を示す図である。図8において、実線が電圧を示し、破線が圧損を示す。また、三角形が実施例1の値を示し、ひし形が比較例1の値を示す。
ガス流路構造において、第2の領域(狭溝)に対する第1の領域(広溝)の流路断面積比(広溝/狭溝)を、1.15としたこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の電圧を測定した。結果を表2、図9に示す。
実施例2では、電圧は0.6080Vであった。
ガス流路構造において、第2の領域(狭溝)に対する第1の領域(広溝)の流路断面積比(広溝/狭溝)を、1.42としたこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の電圧を測定した。結果を表2、図9に示す。
実施例3では、電圧は0.6105Vであった。
ガス流路構造において、第2の領域(狭溝)に対する第1の領域(広溝)の流路断面積比(広溝/狭溝)を、2.24としたこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の電圧を測定した。結果を表2、図9に示す。
実施例4では、電圧は0.6100Vであった。
ガス流路構造において、第2の領域(狭溝)に対する第1の領域(広溝)の流路断面積比(広溝/狭溝)を、2.74としたこと以外は実施例1と同様の条件の燃料電池を準備し、実施例1と同じ条件での所定の電流密度における燃料電池の電圧を測定した。結果を表2、図9に示す。
実施例5では、電圧は0.6078Vであった。
表2、図9に示すように、流路断面積比(広溝/狭溝)が1.15〜2.74の範囲であれば燃料電池の電圧が高くなり、1.84の場合が最も燃料電池の電圧が高くなることが実証された。
Claims (3)
- 触媒層及びガス拡散層を含む2つの電極と、2つの当該触媒層の間に配置される電解質膜と、を備える膜電極接合体の、2つの当該ガス拡散層のうちの少なくとも1つのガス拡散層に隣接して配置される少なくとも1つの支持板の当該ガス拡散層に接する面に形成された溝状の複数のガス流路を含むガス流路構造であって、
前記ガス流路は、同一ガス流路内に、2つ以上の第1の領域と、当該第1の領域よりも流路断面積が小さい2つ以上の第2の領域と、を備え、且つ、同一ガス流路内で各当該第1の領域と各当該第2の領域とが交互に配置され、
前記ガス流路は、隣り合う前記ガス流路間で各前記第1の領域と各前記第2の領域とが交互に配置され、
前記ガス流路は、各前記第2の領域中に、当該第2の領域よりも流路断面積が小さい第3の領域を少なくとも1つ備えることを特徴とする燃料電池用のガス流路構造。 - 少なくとも一面に請求項1に記載のガス流路構造を備えることを特徴とする燃料電池用の支持板。
- 触媒層及びガス拡散層を含む2つの電極と、2つの当該触媒層の間に配置される電解質膜と、を備える膜電極接合体と、
前記膜電極接合体の2つの前記ガス拡散層のうちの少なくとも1つのガス拡散層に隣接して配置される少なくとも1つの支持板と、を有し、
前記支持板が、請求項1に記載のガス流路構造を備え、
前記ガス流路構造は、前記支持板の前記ガス拡散層に接する面に少なくとも形成されていることを特徴とする燃料電池。
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