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JP2021009997A5 - - Google Patents

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JP2021009997A5
JP2021009997A5 JP2020094403A JP2020094403A JP2021009997A5 JP 2021009997 A5 JP2021009997 A5 JP 2021009997A5 JP 2020094403 A JP2020094403 A JP 2020094403A JP 2020094403 A JP2020094403 A JP 2020094403A JP 2021009997 A5 JP2021009997 A5 JP 2021009997A5
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本発明は、ポリイミドフィルム、金属張積層板及びフレキシブル回路基板に関し、詳しくは、例えばフォルダブルデバイスのヒンジ部に使用されるフレキシブル回路基板、それに用いられるポリイミドフィルム及び金属張積層板に関する。
近年、携帯電話機、スマートフォン、ノート型パーソナルコンピュータ、ハードディスク装置、光ピックアップ装置、プリンタ等の電子機器において、フレキシブル回路基板(FPC;Flexible Printed Circuits)が広く利用されている。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話、スマートフォン等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。このようなFPCには、高い耐屈曲性が要求される。
特許文献1では、従来の携帯電話にみられるスライド屈曲部のような屈曲半径が一定量確保される使用形態に対応するFPCが提案され、特許文献2では、薄い筐体へ収納するために折り目をつけて折り曲げられるような使用形態に対応するフレキシブル銅張積層板が提案されている。
また、タッチパネルを利用したスマートフォン等の携帯用電子デバイスが幅広い分野で利用されており、その中でも、例えばディスプレイなどの表示領域内にヒンジ部が形成されて折り畳み可能な程度のフレキシブル性を有する電子デバイス(いわゆるフォルダブルデバイス)が検討され始めている(例えば、特許文献3、4など)。
実際に電子機器に組み込まれて繰り返し折り曲げられるFPCでは、折り曲げられた状態のFPCの形状、特に屈曲部の形状が電子機器に応じて異なるため、このようなニーズに応えるFPCが必要である。本発明者らは、このようなニーズに対応するため、従来の試験装置では制御できなかった屈曲部の形状を、所望の形状になるように制御可能なFPCの耐屈曲性試験装置を提案している(特願2017-249096)。
国際公開WO2012/020677号 特開2014-80021号公報 特開2109-12098号公報 特開2019-61194号公報
フォルダブルデバイスに使用されるFPCが従来のスマートフォンに使用されるものと異なる点は、ヒンジ部の折り曲げ軸を横断する過酷な使用態様にあり、そのように使用されるFPCには優れた「耐連続折り曲げ性」が求められる。
従って、本発明の目的は、フォルダブルデバイスのヒンジ部において、折り曲げサイクルの中でFPCの屈曲部先端での変形を抑制することで、優れた耐連続折り曲げ性を有するFPCを提供することである。
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、フォルダブルデバイスで想定される屈曲条件において、FPCの絶縁樹脂層に使用されるポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線における塑性変形領域の傾きと屈曲部先端への応力集中のしやすさとの関係に着目することで、上記課題を解決し得るFPCを提供し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリイミドフィルムは、平坦な状態と比べて形状が変化していない第1の非屈曲部及び第2の非屈曲部と、前記第1の非屈曲部と前記第2の非屈曲部の間に位置して湾曲変形した屈曲部と、を含む形状になるように前記第1の非屈曲部に対して前記第2の非屈曲部が180度反転して折り曲げられる動作が繰り返されるフレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として用いられるポリイミドフィルムである。
そして、本発明のポリイミドフィルムは、応力-ひずみ曲線の塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満の範囲内であることを特徴とする。
本発明のポリイミドフィルムは、前記第1の非屈曲部及び前記第2の非屈曲部の厚み方向に平行な軸方向をY軸方向とし、これに直交するとともに前記フレキシブル回路基板の長手方向に対して平行な軸方向をX軸方向と定義したとき、前記X軸方向及び前記Y軸方向の二次元座標軸において、前記屈曲部における変形領域の前記X軸方向の最大長さが1.0mm以上10.0mm以下の範囲内、前記Y軸方向の最大長さが1.0mm以上6.0mm以下の範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板は、上記いずれかのポリイミドフィルムによる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、を備えている。
本発明のフレキシブル回路基板は、上記いずれかのポリイミドフィルムによる絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に形成された配線層と、を備えている。
本発明のフレキシブル回路基板は、さらに、前記配線層を保護するカバーレイを備えていてもよい。
本発明のフレキシブル回路基板は、前記配線層が内側になるように180度反転して折り曲げられる動作が繰り返される方法で使用されるものであってもよい。
本発明のポリイミドフィルムを絶縁樹脂層に用いたFPCは、高い耐連続折り曲げ性を示すため、例えばフォルダブルデバイスのヒンジ部等の耐連続折り曲げ性が要求される電子部品に好適に用いることができる。
FPCの使用態様を説明するための側面図である。 図1のFPCを折り曲げた状態を説明する側面図である。 ポリイミドフィルムの引張試験における応力-ひずみ曲線を示す図面である。 中立面位置の計算方法の説明に使用する積層体モデルの断面図である。 連続折り曲げ試験で用いた試験片の銅配線の様子を示す平面説明図である。 連続折り曲げ試験の説明に供する図面であって、試験片をセットした状態の説明図である。 連続折り曲げ試験の説明に供する図面であって、試験片を折り曲げた状態の説明図である。
次に、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
[ポリイミドフィルム]
まず、本実施の形態のポリイミドフィルムが絶縁樹脂層として適用され得るFPCの使用態様について説明する。図1及び図2は、長尺な薄いフィルム状をなすFPC100の側面図である。図1及び図2では、絶縁樹脂層、回路配線層などの層構造については図示を省略している。FPC100は、回路配線層が形成されている側の第1の面101と、第1の面101とは反対側の第2の面102と、を備えている。なお、第2の面102にも回路配線層が形成されていてもよい。また、第1の面101、第2の面102には、回路配線層に積層してカバーレイが形成されていてもよい。
FPC100は、使用時に、回路配線層が形成されている側の第1の面101が内側になるように折り曲げられる動作が繰り返される。折り曲げられた状態では、図2に示すように、第1の面101が互いに対向することになり、FPC100の全体が平坦な展開状態(図1)と比べて形状が変化していない第1の非屈曲部110及び第2の非屈曲部120と、第1の非屈曲部110と第2の非屈曲部120の間に位置して湾曲変形した屈曲部130と、を含む形状になる。つまり、図2に示す折り曲げ状態では、屈曲部130を境に第1の非屈曲部110に対して第2の非屈曲部120が相対的に180度反転した状態に折り曲げられている。例えばフォルダブルデバイスのヒンジ部に適用される場合、表示領域の展開と折り畳みが繰り返されることによって、FPC100は、図1の展開状態と図2の折り曲げ状態との間(これらの中間位置に保持される場合もある)で展開動作と折り曲げる動作とを繰り返すことになる。
図1及び図2において、FPC100における第1の非屈曲部110及び第2の非屈曲部120の厚み方向に平行な軸方向をY軸方向とし、これに直交するとともにFPC100の長手方向に平行な軸方向をX軸方向と定義する。このとき、FPC100の使用態様としては、X軸方向及びY軸方向の二次元座標軸において、屈曲部130における変形領域のX軸方向の最大長さLが1.0mm以上10.0mm以下の範囲内であり、Y軸方向の最大長さLが1.0mm以上6.0mm以下の範囲内である使用態様が好ましい。この場合、図2における第1の非屈曲部110の外側の面(つまり、第2の面102)と、第2の非屈曲部120の外側の面(つまり、第2の面102)との間の距離(ギャップ)Gは、例えば1.0~3.0mmの範囲内である。特に、本実施の形態のFPC100は、変形領域のX軸方向の最大長さLが1.0~3.0mm、かつ、Y軸方向の最大長さLが1.0~3.0mmであり、ギャップGが1.0~2.0mmの範囲内に限定されるような比較的狭い設置スペースでの屈曲において優れた耐連続折り曲げ性を発揮する。そのような使用態様の代表例が、フォルダブルデバイスのヒンジ部をFPC100が横断するような使用方法である。
なお、「変形領域」とは、FPC100を図2に示す折り曲げ状態まで折り曲げたときに、図1の展開状態に比べて変形する領域を意味し、より具体的には、第1の非屈曲部110と屈曲部130の境界となる変曲点P1と、第2の非屈曲部120と屈曲部130との境界となる変曲点P2との間の領域として定義できる。
また、Y軸方向は、第1の非屈曲部110と屈曲部130の境界となる変曲点P1と、第2の非屈曲部120と屈曲部130との境界となる変曲点P2と、を通る直線に平行な軸方向、と定義してもよい。
以上のように、本実施の形態のポリイミドフィルムは、例えばフォルダブルデバイスのヒンジ部に使用されるFPCの絶縁樹脂層として好ましく適用され得るものである。そして、本実施の形態のポリイミドフィルムは、応力-ひずみ曲線(後述)の塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満の範囲内であり、好ましくは200MPa以上500MPa未満の範囲内、より好ましくは200MPa以上300MPa未満の範囲内である。塑性変形領域の傾きが上記範囲内であることによって、塑性変形後にも比較的大きな剛性を維持できることから、フォルダブルデバイスに使用されるFPC100の絶縁樹脂層として用いる場合に、連続屈曲時の断線を防止することができる。その理由は以下のとおりである。
フォルダブルデバイスに使用されるFPC100が従来のスマートフォンに使用されるものと異なる点は、ヒンジ部の折り曲げ軸を横断する過酷な使用態様にある。従って、フォルダブルデバイスに使用されるFPC100には、優れた「耐連続折り曲げ性」が求められる。
また、フォルダブルデバイスのヒンジ部は狭ギャップであることから、FPC100に使用する絶縁樹脂層は応力-ひずみ曲線の塑性変形領域での可動が想定される。このような屈曲条件では、絶縁樹脂層の塑性変形領域における剛性が低い場合、屈曲部130の先端部(つまり、図2における変曲点P1,P2とはX軸方向に反対側の湾曲部分の端部)の形状が鋭角になることで局所的に大きな応力が働き、断線に繋がるリスクが高くなると考えられる。
それに対し、FPC100の絶縁樹脂層であるポリイミドフィルムの塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満の範囲内であることによって、塑性変形がしにくく、折り曲げ形状が円弧状に維持されるため、屈曲時の応力を分散させることができ、高屈曲寿命につながると考えられる。より具体的には、折り曲げたときに、図2における屈曲部130を、第1の非屈曲部110及び第2の非屈曲部120の厚み方向(Y軸方向)に膨らんだ形状に湾曲変形させることができる。つまり、塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満の範囲内であることによって、屈曲部130のY軸方向の最大長さLがギャップGよりも大きくなる(L>G)ような湾曲形状が維持されるため、屈曲時の先端部への応力集中が回避されて耐連続折り曲げ性が向上する。
<塑性変形領域の傾きの算出法>
次に、塑性変形領域およびその傾きについて、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係るポリイミドフィルムの引張試験における応力-ひずみ曲線を示しており、縦軸は応力(MPa)、横軸はひずみ(伸度;%)である。横軸のE1は、応力がS1のときの降伏点のひずみを意味しており、E2は応力がS2のときのひずみ(=8%)を意味し、E3は応力がS3のときの破断点のひずみ意味している。「塑性変形領域」とは、引張試験におけるポリイミドフィルムの応力-ひずみ曲線において、降伏点以降、破断点までのひずみ領域(E1~E3)をいう。
ポリイミドフィルムの引張試験における降伏点のひずみは、材質によって異なるものの8%を超えることはなく、また、塑性変形領域では、応力-ひずみ曲線がほぼ線形となるため、本発明では、図3の応力-ひずみ曲線における、ひずみが「8%(E2)」から「破断ひずみ(E3)」までの間の傾きを「塑性変形領域の傾き」とする。「塑性変形領域の傾き」は、以下の計算式(a)によって求めることができる。
なお、「塑性変形のしにくさ」とは、塑性変形領域において、応力が大きく増加することを意味している。「塑性変形のしにくさ」とは、塑性変形領域における傾きの大きさといいかえることができる。
塑性変形領域の傾き=(S3-S2)/(E3-E2)・・・(a)
S2:8%ひずみ時応力
S3:破断応力
E2:8%ひずみ
E3:破断ひずみ
本実施の形態のポリイミドフィルムとしては、市販のポリイミドフィルムをそのまま使用することも可能であるが、厚さや物性のコントロールのしやすさから、ポリアミド酸溶液を銅箔等の基材上に塗布した後、熱処理により乾燥、硬化する所謂キャスト(塗布)法によるものが好ましい。ポリイミドフィルムを複数層とする場合、ある構成成分からなるポリアミド酸溶液の上に異なる構成成分からなる他のポリアミド酸溶液を順次塗布して形成することができる。キャスト法の場合、ポリイミドフィルムは、基材から剥離するか、基材をエッチングすることによって得られる。
本実施の形態のポリイミドフィルムの引張弾性率、厚み、積層構造、原料、熱膨張係数などは、後述するFPCにおけるポリイミド絶縁層(A)と同様であるため、ポリイミド絶縁層(A)の説明を参照し、説明を省略する。
[FPC]
次に、上記ポリイミドフィルムを絶縁樹脂層に適用した本発明の一実施の形態にかかるFPCについて説明する。なお、本実施の形態のFPCは、図1及び図2に示すFPC100と同様の構成であるため、同じ構成には同一の符号を付して説明する。FPC100は、絶縁樹脂層としてのポリイミド絶縁層(A)と、このポリイミド絶縁層(A)の片面又は両面に設けられた回路配線層(B)と、を備えている。FPC100は、さらに、回路配線層(B)に積層されたカバーレイ(C)を備えていてもよい。
<ポリイミド絶縁層(A)>
ポリイミド絶縁層(A)は、上記ポリイミドフィルムと同様に、引張試験における、応力-ひずみ曲線の塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満、好ましくは200MPa以上500MPa未満、より好ましくは200MPa以上300MPa未満の範囲内である。塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満であると、カバーレイ(C)を積層したFPC100を屈曲した際、回路配線層(B)には圧縮応力が主として加わるため、配線のネッキング(部分的なくびれ)が生じづらい傾向にある。その結果、FPC100の屈曲部130の先端形状が屈曲サイクルの中で維持されやすく、先端部に応力が集中しづらくなる。一方で、塑性変形領域の傾きが100MPa未満であると、回路配線層(B)に主として引張応力が加わるため、配線のネッキングが生じやすい傾向にある。その結果、FPC100の屈曲部130の先端形状が屈曲サイクルの中で鋭角に変形しやすく、先端部に応力が集中しやすくなる。
ポリイミド絶縁層(A)の引張弾性率は、例えば4~10GPaの範囲内が好ましく、6~8GPaの範囲内がより好ましい。引張弾性率が下限値未満ではFPC100の屈曲部130の先端部が鋭角に変形しやすくなることで、屈曲部130の先端部に応力集中が生じやすくなり、耐連続折り曲げ性が低下することがある。上限値を超えるとFPC100を折り曲げた際に回路配線層(B)により大きな応力が加わることとなり、その耐連続折り曲げ性が低下することがある。
ポリイミド絶縁層(A)は、その厚みが12~35μmの範囲内であり、好ましくは17~32μmの範囲内、より好ましくは23~27μmの範囲内である。ポリイミド絶縁層(A)の厚みが12μm未満では、FPC100の屈曲部130の先端部が鋭角に変形しやすくなることで、屈曲部130の先端部に応力集中が生じやすくなり、耐連続折り曲げ性が低下することがある。また、ポリイミド絶縁層(A)の厚みが35μmを超えると、FPC100を折り曲げた際に回路配線層(B)により大きな応力が加わることとなり、その耐連続折り曲げ性が低下することがある。
ポリイミド絶縁層(A)には、市販のポリイミドフィルムをそのまま使用することも可能であるが、絶縁層の厚さや物性のコントロールのしやすさから、ポリアミド酸溶液を銅箔上に直接塗布した後、熱処理により乾燥、硬化する所謂キャスト(塗布)法によるものが好ましい。また、ポリイミド絶縁層(A)は、単層のみから形成されるものでもよいが、ポリイミド絶縁層(A)と回路配線層(B)との接着性等を考慮すると複数層からなるものが好ましい。ポリイミド絶縁層(A)を複数層とする場合、ある構成成分からなるポリアミド酸溶液の上に異なる構成成分からなる他のポリアミド酸溶液を順次塗布して形成することができる。ポリイミド絶縁層(A)が複数層からなる場合、同一の構成のポリイミド酸溶液を2回以上使用してもよい。
ポリイミド絶縁層(A)について、より詳しく説明する。上述の通り、ポリイミド絶縁層(A)は複数層とすることが好ましいが、その具体例としては、ポリイミド絶縁層(A)を、低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)と、を含む積層構造とすることが好ましい。より好ましくは、ポリイミド絶縁層(A)は、低熱膨張性のポリイミド層(i)の少なくとも一方、好ましくはその両側に、高熱膨張性のポリイミド層(ii)を有する積層構造とし、高熱膨張性のポリイミド層(ii)が直接回路配線層(B)と接するようにすることがよい。ここで、「低熱膨張性のポリイミド層(i)」とは、熱膨張係数30×10-6/K未満、好ましくは1×10-6~25×10-6/Kの範囲内、特に好ましくは3×10-6~20×10-6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。また、「高熱膨張性のポリイミド層(ii)」とは、熱膨張係数30×10-6/K以上のポリイミド層を言い、好ましくは30×10-6~80×10-6/Kの範囲内、特に好ましくは30×10-6~70×10-6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。このようなポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望の熱膨張係数を有するポリイミド層とすることができる。
上記ポリイミド絶縁層(A)を与えるポリアミド酸溶液は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して製造することができる。この際、重合により得られるポリアミド酸溶液の粘度は、例えば、500cps以上35,000cps以下の範囲内とすることが好ましい。
ポリイミドの原料として用いられるジアミンとしては、例えば、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'- メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'- ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル) エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,7-ジアミノジベンゾフラン、1,5-ジアミノフルオレン、ジベンゾ-p-ジオキシン-2,7-ジアミン、4,4'-ジアミノベンジルなどが挙げられる。
また、ポリイミドの原料として用いられる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3, 6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフ ェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1 -ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン- 1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2, 3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4' -オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
上記ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用する こともできる。また、重合に使用される溶媒は、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、1種又は2種以上併用して使用することもできる。
本実施の形態において、熱膨張係数30×10-6/K未満の低熱膨張性のポリイミド 層(i)とするには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。
また、熱膨張係数30×10-6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)とするには、例えば、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。なお、このようにして得られる高熱膨張性のポリイミド層(ii)の好ましいガラス転移温度は、300~400℃の範囲内である。
また、ポリイミド絶縁層(A)を低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)との積層構造とした場合、好ましくは、低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)との厚み比(低熱膨張性のポリイミド層(i)/高熱膨張性のポリイミド層(ii))が2~15の範囲内、より好ましくは8~11の範囲内がよい。この比の値が、2に満たないとポリイミド絶縁層(A)全体に対する低熱膨張性のポリイミド層(i)が薄くなるため、ポリイミド絶縁層(A)の寸法特性の制御が困難となり、銅箔をエッチングして回路配線層(B)を形成した際の寸法変化率が大きくなり、15を超えると高熱膨張性のポリイミド層(ii)が薄くなるため、ポリイミド絶縁層(A)と回路配線層(B)との接着信頼性が低下する。
<回路配線層(B)>
本実施の形態のFPC100において、回路配線層(B)は、例えば銅箔を原料とする銅配線により構成される。回路配線層(B)に使用する銅箔は特に限定されるものではなく、市販されている圧延銅箔と電解銅箔のどちらを用いても良い。
回路配線層(B)を構成する銅配線の厚みは、例えば10~14μmの範囲内のものを用いることが好ましい。回路配線層(B)を構成する銅配線の厚みが10μm未満では、銅張積層板の剛性が低下し、FPC100を製造する際のハンドリングが悪化する傾向となり、14μmを超えるとFPC100を折り曲げた際に銅配線に加わる応力が大きくなることによって耐連続折り曲げ性が低下する傾向となる。
<カバーレイ(C)>
本実施の形態のFPC100において、カバーレイ(C)は、厚みが35~40μmの範囲内であることが好ましく、引張弾性率が2.0~3.5GPaの範囲内のものを用いることが好ましい。このようなカバーレイ(C)としては、市販品を用いることができる。その具体例としては、有沢製作所社製、CEA0525(商品名)などが挙げられる。
本実施の形態のFPC100は、その全体の厚み{つまり、ポリイミド絶縁層(A)と回路配線層(B)と、必要に応じてカバーレイ(C)が積層される場合は、カバーレイ(C)の厚み[ただし、配線充填後の厚み(後記表1を参照)を意味する。]を加えた合計の厚み}が63~73μmの範囲内が良い。その際、ポリイミド絶縁層(A)と回路配線層(B)との厚み比(ポリイミド絶縁層(A)/回路配線層(B))が好ましくは1.5~2.5の範囲にあるのが良い。この厚み比の範囲内であれば、折り曲げ時にポリイミド絶縁層(A)の物性の影響が優位となるため、耐連続折り曲げ性が良好となる。この比の値が1.5に満たないと、FPC100の屈曲部130の先端部が鋭角に変形しやすくなることで、屈曲部130の先端部に応力集中が生じやすくなり、耐連続折り曲げ性が低下することがある。また、この比の値が2.5を超えると、FPC100を折り曲げた際に、回路配線層(B)により大きな応力が加わることとなり、その耐連続折り曲げ性が低下することがある。
また、ポリイミド絶縁層(A)と回路配線層(B)との厚み比は、次に説明する配線部における中立面位置である[NP]Lineを考慮して決定することが好ましい。[NP]Lineが回路配線層(B)の中央に近いほど、屈曲時に回路配線層(B)に加わる応力が小さくなり、耐連続折り曲げ性が向上する傾向となる。
<中立面位置計算の積層体モデル>
FPC100の中立面位置の計算方法について、図4を参照して詳しく説明する。図4は、中立面位置の計算方法の説明に使用する積層体のモデルの断面図である。図4には、便宜上、積層体が2層であるモデルを示しているが、以下の説明は、積層体が2層以上である場合の全般に当てはまる。ここで、積層体の層の数をn(nは2以上の整数)とする。また、この積層体を構成する各層のうち下から数えてi番目(i=1,2,・・ ・,n)の層を第i番目と呼ぶ。図4において、符号Bは、積層体の幅を表している。なお、ここでいう幅とは、第1層の下面に平行で、積層体の長手方向に垂直な方向の寸法である。
本実施の形態におけるFPC100は、ポリイミド絶縁層(A)と回路配線層(B)とカバーレイ(C)により構成されるが、カバーレイ(C)を除いた状態を回路配線層(B)側から見たときに、銅配線が存在する部分と、銅配線が存在しない部分とがある。ここで、銅配線が存在する部分を配線部(Line)と呼び、銅配線が存在しない部分をスペース部(Space)と呼ぶ。配線部とスペース部では、構成が異なる。そのため、必要に応じて、配線部とスペース部とを分けて考える。
<中立面位置の計算>
ここで、第1層の下面を基準面SPとする。以下、基準面SPが図4おける下側に凸形状になるように積層体を屈曲させる場合について考える。図4において、符号NPは積層体の中立面を表している。ここで、中立面NPと基準面SPとの距離を中立面位置[NP]とし、この中立面位置[NP]を、配線部とスペース部とで別々に計算する。中立面位置[NP]は、次の式(1)によって算出される。
[NP]=Σi=1 /Σi=1 …(1)
ここで、Eは、第i層を構成する材料の弾性率である。この弾性率Eは、各層における応力とひずみの関係に対応する。Bは、第i層の幅であり、図4に示した幅Bに相当する。配線部の中立面位置[NP]を求める場合には、Bとして線幅(ライン幅)の値を用い、スペース部の中立面位置[NP]を求める場合には、Bとして線間幅(スペース幅)の値を用いる。hは、第i層の中央面と基準面SPとの距離である。なお、第i層の中央面とは、第i層の厚み方向の中央に位置する仮想の面である。tは、第i層の厚みである。また、記号“Σi=1 ”は、iが1からnまでの総和を表す。以下、配線部の中立面位置を[NP]Lineと記す。
[NP]Lineが、回路配線層(B)の中央面に近いほど、屈曲時に回路配線層(B)に加わる応力が小さくなり、耐連続折り曲げ性が向上する傾向にある。例えば、ポリイミド絶縁層(A)の厚みが23~27μmの範囲内であり、回路配線層(B)の10~14μmの範囲内であり、カバーレイ(C)の厚みが35~40μmの範囲内であって、これらの合計の厚みが63~73μmの範囲内である場合において、[NP]Lineは、28~32μmの範囲内であることが好ましい。
<FPCの製造>
FPC100は、例えば、ポリイミド絶縁層と銅箔層とを備えたフレキシブル銅張積層板の銅箔層をエッチングするなどしてパターン状に加工して配線層を形成し、その上に必要に応じてカバーレイを貼り付けることによって作製される。
[金属張積層板]
本実施の形態のFPC100を製造するために用いる金属張積層板は、FPC100に加工したときポリイミド絶縁層(A)となるポリイミド層と、回路配線層(B)となる金属層と、を備えている。ポリイミド層の構成は、FPC100におけるポリイミド絶縁層(A)と同様である。金属層の構成は、回路加工していない点以外は、FPC100における回路配線層(B)と同様である。
金属張積層板の好ましい態様であるフレキシブル銅張積層板は、例えば、回路配線層(B)の原料となる銅箔の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミド酸溶液ともいう。)を塗工し、次いで、乾燥、硬化させる熱処理工程を経て製造することができる。熱処理工程における熱処理は、塗工されたポリアミド酸溶液を160℃未満の温度で加熱してポリアミド酸中の溶媒を乾燥除去した後、更に、150℃から400℃の温度範囲で段階的に昇温し、硬化させることで行なわれる。このようにして得られた片面フレキシブル銅張積層板を両面銅張積層板とするには、前記片面フレキシブル銅張積層板と、これとは別に準備した銅箔とを300~400℃にて熱圧着する方法が挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[応力-ひずみ曲線の作成]
ポリイミドの応力-ひずみ曲線の作成には、フレキシブル銅張積層板をエッチングして銅箔を完全に除去したポリイミドフィルムを用いた。このようにして得られた材料に対し、株式会社東洋精機製作所製ストログラフR-1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張試験を行い、応力-ひずみ曲線を作成し、上記計算式(a)に基づき、塑性変形領域の傾きを求めた。
[連続折り曲げ試験]
特願2017-249096と同様の耐屈曲性試験装置を使用して行った。まず、銅張積層板の銅箔をエッチング加工し、その長手方向に沿って、図5に示すように、ライン幅100μm、スペース幅100μm、長さが110mmの16列の銅配線201を形成した試験片(試験回路基板片)200を作製した。図5は、試験片200における銅配線201のみを表すとともに、16列のうち9列のみを図示している。その試験片200における16列の銅配線201は、U字部202を介して全て連続して繋がっており、その両端には、抵抗値測定用の電極部分(図示せず)を設けた。
試験片200の電極部分を除いて厚さ37.5μmのカバーレイを圧着した後、図6に示すように、二つ折りが可能な試料ステージ220及び230上に固定した。次に、図示しない抵抗値測定の配線を接続して、抵抗値のモニタリングを開始した。折り曲げ試験は、16列の銅配線201に対して、銅配線201が内側になって向き合うように折り曲げ、図7に示すように、第1の非屈曲部、第2の非屈曲部及び屈曲部が形成されるようにして行った。なお、説明の便宜のため、図7では、図2と同様に第1の非屈曲部を符号110、第2の非屈曲部を符号120、屈曲部を符号130で示した。
試験片200を折り曲げた状態で、屈曲部130の変形領域におけるX軸方向及びY軸方向の長さは、それぞれ、非屈曲時の試料ステージ220,230間の距離Sと非屈曲時から180度屈曲した際の試料ステージ220,230間のギャップGによって、任意に設定することができる。本試験では、X軸方向及びY軸方向の長さを、表2(後述)に示す3段階に変化させた。
折り曲げ試験は、折り曲げ回数20万回を上限に実施し、それまでの間に抵抗値が折り曲げ試験前の値から10%以上上昇した時点を故障と判断し、その時までに繰り返した折り曲げ回数を測定値とした。また、折り曲げ回数20万回の時点で未故障の場合は20万回を測定値とした。
[引張弾性率の測定]
東洋精機製作所製のストログラフR-1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張弾性率の値を測定した。
試験片サイズ:長さ;160mm×幅;12.7mm
つかみ具間距離:101.6mm
引張速度:10mm/min(銅箔測定時)、50mm/min(ポリイミドフィルム測定時)
[熱膨張係数(CTE)の測定]
セイコーインスツルメンツ製のサーモメカニカルアナライザーを使用し、250℃まで昇温し、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
[ポリアミド酸溶液の合成]
(合成例1)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N-ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を投入して容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が12wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸aの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸aから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、55×10-6/Kであった。
(合成例2)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N-ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)を投入して容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が15wt%、各酸無水物のモル比率(BPDA:PMDA)が20:80となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸bの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸bから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10-6/Kであった。
[中立面位置]
表1に実施例1~3、比較例1~2の中立面位置([NP]Line)を示す。中立面位置の計算は表1に記載のポリイミド層、銅箔層、カバーレイ層それぞれの厚み、引張弾性率、中央面と基準面との距離を上記の式(1)に代入することで計算した。
[実施例1]
銅箔1(圧延銅箔、長尺状、厚み;12μm)の上に、合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが20.0μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側にポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体1を130℃から360℃まで段階的に熱処理し、片面フレキシブル銅張積層板1(ポリイミド層の厚み;25μm、ポリイミド層の引張弾性率;7.5GPa)を得た。片面フレキシブル銅張積層板1におけるポリイミド層の面に銅箔1を300~400℃にて熱圧着することで両面フレキシブル銅張積層板1を得た。両面フレキシブル銅張積層板1の塗布面側の銅箔層をエッチング除去し、もう一方の圧着面側の銅箔層(引張弾性率;19GPa)を配線回路加工して銅配線を形成後、カバーレイA(厚み;37.5μm、引張弾性率;3.3GPa)を貼り付け、FPC1を得た。得られたFPC1のポリイミド層、銅箔層及びカバーレイ層の各層の厚み、引張弾性率および中央面と基準面との距離並びに中央面位置を表1に示し、ポリイミド層の応力-ひずみ曲線における塑性変形領域の傾きと耐連続折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1における銅箔1の代わりに、銅箔2(電解銅箔、長尺状、厚み;12μm)を使用したこと以外、実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板2、両面フレキシブル銅張積層板2(圧着面側の銅箔層の引張弾性率;29GPa)及びFPC2を調製した。得られたFPC2のポリイミド層、銅箔層及びカバーレイ層の各層の厚み、引張弾性率および中央面と基準面との距離並びに中央面位置を表1に示し、ポリイミド層の応力-ひずみ曲線における塑性変形領域の傾きと耐連続折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
[実施例3]
市販の両面フレキシブル銅張積層板3(銅箔の厚み;12μm、ポリイミド層の厚み;25μm、ポリイミド層の引張弾性率;4.5GPa)の片面の銅箔層をエッチング除去し、もう一方の面側の銅箔層(引張弾性率;29GPa)を配線回路加工して銅配線を形成後、カバーレイAを貼り付け、FPC3を得た。得られたFPC3のポリイミド層、銅箔層及びカバーレイ層の各層の厚み、引張弾性率および中央面と基準面との距離並びに中央面位置を表1に示し、ポリイミド層の応力-ひずみ曲線における塑性変形領域の傾きと耐連続折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
比較例1
市販の両面フレキシブル銅張積層板4(銅箔の厚み;12μm、ポリイミド層の厚み;25μm、ポリイミド層の引張弾性率;5.0GPa)の片面の銅箔層をエッチング除去し、もう一方の面側の銅箔層(引張弾性率;19GPa)を配線回路加工して銅配線を形成後、カバーレイAを貼り付け、FPC4を得た。得られたFPC4のポリイミド層、銅箔層及びカバーレイ層の各層の厚み、引張弾性率および中央面と基準面との距離並びに中央面位置を表1に示し、ポリイミド層の応力-ひずみ曲線における塑性変形領域の傾きと耐連続折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
比較例2
市販の両面フレキシブル銅張積層板5(銅箔の厚み;12μm、ポリイミド層の厚み;25μm、ポリイミド層の引張弾性率;5.0GPa)の片面の銅箔層をエッチング除去し、もう一方の面側の銅箔層(引張弾性率;23GPa)を配線回路加工して銅配線を形成後、カバーレイAを貼り付け、FPC5を得た。得られたFPC5のポリイミド層、銅箔層及びカバーレイ層の各層の厚み、引張弾性率および中央面と基準面との距離並びに中央面位置を表1に示し、ポリイミド層の応力-ひずみ曲線における塑性変形領域の傾きと耐連続折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
以上の結果を表1及び表2に示す。表2において、「応力-ひずみ曲線の傾き(ポリイミド層)」の単位は10 MPaであり、「故障率」は試験回数(5回)に対する故障した回数を意味する。
Figure 2021009997000001
Figure 2021009997000002
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
100…FPC、101…第1の面、102…第2の面、110…第1の非屈曲部、120…第2の非屈曲部、130…屈曲部、200…試験片、201…銅配線、202…U字部、220,230…試料ステージ、P1,P2…変曲点

Claims (6)

  1. 平坦な状態と比べて形状が変化していない第1の非屈曲部及び第2の非屈曲部と、前記第1の非屈曲部と前記第2の非屈曲部の間に位置して湾曲変形した屈曲部と、を含む形状になるように前記第1の非屈曲部に対して前記第2の非屈曲部が180度反転して折り曲げられる動作が繰り返されるフレキシブル回路基板の絶縁樹脂層として用いられるポリイミドフィルムであって、
    応力-ひずみ曲線の塑性変形領域の傾きが100MPa以上500MPa未満の範囲内であることを特徴とするポリイミドフィルム。
  2. 前記第1の非屈曲部及び前記第2の非屈曲部の厚み方向に平行な軸方向をY軸方向とし、これに直交するとともに前記フレキシブル回路基板の長手方向に対して平行な軸方向をX軸方向と定義したとき、前記X軸方向及び前記Y軸方向の二次元座標軸において、前記屈曲部における変形領域の前記X軸方向の最大長さが1.0mm以上10.0mm以下の範囲内、前記Y軸方向の最大長さが1.0mm以上6.0mm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. 請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムによる絶縁樹脂層と、
    前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に積層された金属層と、
    を備えた金属張積層板。
  4. 請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムによる絶縁樹脂層と、
    前記絶縁樹脂層の少なくとも一方の面に形成された配線層と、
    を備えたフレキシブル回路基板。
  5. さらに、前記配線層を保護するカバーレイを備える請求項4に記載のフレキシブル回路基板。
  6. 前記配線層が内側になるように180度反転して折り曲げられる動作が繰り返される方法で使用されるものである請求項4又は5に記載のフレキシブル回路基板。

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