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JP2021008424A - 口腔用組成物 - Google Patents

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JP2021008424A JP2019121934A JP2019121934A JP2021008424A JP 2021008424 A JP2021008424 A JP 2021008424A JP 2019121934 A JP2019121934 A JP 2019121934A JP 2019121934 A JP2019121934 A JP 2019121934A JP 2021008424 A JP2021008424 A JP 2021008424A
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諒太郎 西岡
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Shuhei Ishii
修平 石井
拓 井手上
Taku Idegami
拓 井手上
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Abstract

【課題】象牙細管の封鎖性を有し、且つ象牙細管内での固着性に優れた粒子を含有する口腔用組成物を提供すること。【解決手段】ヒドロキシアパタイト粒子を含有する口腔用組成物であって、前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5である、口腔用組成物。【選択図】なし

Description

本開示は口腔用組成物等に関し、より詳細にはヒドロキシアパタイト粒子を含有する口腔用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献(特に特開第2017−036176号公報)の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
歯牙における知覚過敏は、ブラッシング等の物理的磨耗、酸による化学的磨耗等により歯牙の象牙質が露出することによって発症する。象牙質が露出すると、外部刺激が象牙質中の象牙細管内の神経を刺激し、疼痛が生じ易くなる。
知覚過敏に対しては、例えば、フッ化物、アルミニウム塩(一例として、特許文献1)等の粒子により象牙細管を封鎖することにより、外部刺激の神経への到達を抑制することが行われている。しかし、従来法の多くは、封鎖後の固着性が不十分であり、効果の持続性に問題があった。
特開第2010−222325号公報 特開第2017−036176号広報
象牙細管の封鎖性を有し、且つ象牙細管内での固着性に優れた粒子を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、特定のヒドロキシアパタイト粒子(X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5であるヒドロキシアパタイト粒子)が、上記課題を解決し得ることを見出した。そして、この知見に基づいてさらに検討を進めた。
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
ヒドロキシアパタイト粒子を含有する口腔用組成物であって、
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5である、
口腔用組成物。
項2.
前記ヒドロキシアパタイト粒子のCa/Pモル比が1.67未満(好ましくは1.60以下)である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
前記ヒドロキシアパタイト粒子のメジアン径が5μm以下である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
前記ヒドロキシアパタイト粒子の比表面積が55〜200m/gである、項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5.
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=32°付近の回折ピーク強度に対する2θ=34°付近の回折ピーク強度の比が1以下である、項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6.
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、ヒドロキシアパタイト板状結晶の凝集体である、
項1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。
項7.
さらに、硝酸カリウム及び/又は乳酸アルミニウムを含有する、項1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物。
項8.
知覚過敏予防又は改善用である、項1〜7のいずれかに記載の口腔用組成物。
項9.
前記前記ヒドロキシアパタイト粒子が、pHが4以上7未満であるリン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合して35〜85℃で反応させる工程を含む、ヒドロキシアパタイト粒子製造方法により製造されたものである、項1〜8のいずれかに記載の口腔用組成物。
項10.
前記水酸化カルシウムスラリーが磨砕処理水酸化カルシウムスラリーである、項9に記載の口腔用組成物。
項11.
前記水酸化カルシウムスラリーのシュウ酸反応性(5質量%の濃度に調製され、25±1℃に保たれた水酸化カルシウムスラリー50gに、25±1℃に保たれた0.5モル/リットルの濃度のシュウ酸水溶液40gを一気に添加し、添加後pH7.0になるまでの時間(分))が40分以下である、項9又は10に記載の口腔用組成物。
項12.
前記水酸化カルシウムスラリーのBET比表面積が5m/g以上である、項9〜11のいずれかに記載の口腔用組成物。
項1a.
ヒドロキシアパタイト粒子及び硝酸カリウムを含有する口腔用組成物であって、
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5である、
口腔用組成物。
項2a.
前記ヒドロキシアパタイト粒子のCa/Pモル比が1.67未満(好ましくは1.60以下)である、項1aに記載の口腔用組成物。
項3a.
前記ヒドロキシアパタイト粒子のメジアン径が5μm以下である、項1a又は2aに記載の口腔用組成物。
項4a.
前記ヒドロキシアパタイト粒子の比表面積が55〜200m/gである、項1a〜3aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項5a.
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=32°付近の回折ピーク強度に対する2θ=34°付近の回折ピーク強度の比が1以下である、項1a〜4aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項6a.
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、ヒドロキシアパタイト板状結晶の凝集体である、
項1a〜5aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項7a.
さらに、乳酸アルミニウムを含有する、項1a〜6aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項8a.
知覚過敏予防又は改善用である、項1a〜7aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項9a.
前記前記ヒドロキシアパタイト粒子が、pHが4以上7未満であるリン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合して35〜85℃で反応させる工程を含む、ヒドロキシアパタイト粒子製造方法により製造されたものである、項1a〜8aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項10a.
前記水酸化カルシウムスラリーが磨砕処理水酸化カルシウムスラリーである、項9aに記載の口腔用組成物。
項11a.
前記水酸化カルシウムスラリーのシュウ酸反応性(5質量%の濃度に調製され、25±1℃に保たれた水酸化カルシウムスラリー50gに、25±1℃に保たれた0.5モル/リットルの濃度のシュウ酸水溶液40gを一気に添加し、添加後pH7.0になるまでの時間(分))が40分以下である、項9a又は10aに記載の口腔用組成物。
項12a.
前記水酸化カルシウムスラリーのBET比表面積が5m/g以上である、項9a〜11aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項13a.
硝酸カリウムを0.1〜15質量%含有する、項1a〜12aのいずれかに記載の口腔用組成物。
項13b.
硝酸カリウムを0.1〜15質量%含有する、項1a〜12aのいずれかに記載の口腔用組成物(但し、硝酸カリウムを5質量%含有する口腔用組成物は除く)。
項13c.
ヒドロキシアパタイト粒子及び硝酸カリウムを含有する口腔用組成物であって、
前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5である、項1a〜12aのいずれかに記載の口腔用組成物(但し、硝酸カリウムを5質量%含有する口腔用組成物は除く)。
なお、特に制限はされないが、本開示の主題からは、例えば下記実施例の表1〜表3に記載の口腔用組成物が除かれてもよい。
象牙細管の封鎖性を有し、且つ象牙細管内での固着性に優れた口腔用組成物が提供される。
実施例1のヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 市販される試薬品ヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 実施例1のヒドロキシアパタイト粒子のSEM写真を示す。 実施例2のヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 実施例2のヒドロキシアパタイト粒子のSEM写真を示す。 実施例3のヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 実施例3のヒドロキシアパタイト粒子のSEM写真を示す。 実施例4のヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 実施例4のヒドロキシアパタイト粒子のSEM写真を示す。 実施例5のヒドロキシアパタイト微粒子のX線回折ピークを示す。 実施例5のヒドロキシアパタイト微粒子のSEM写真を示す。 比較例1のヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 比較例1のヒドロキシアパタイト粒子のSEM写真を示す。 比較例2の試料のX線回折ピークを示す。黒丸で示したピークはモネタイトの回折ピーク 比較例2の試料のSEM写真を示す。 比較例3の試料のX線回折ピークを示す。 比較例3の試料のSEM写真を示す。 比較例4のヒドロキシアパタイト粒子のX線回折ピークを示す。 比較例4のヒドロキシアパタイト粒子のSEM写真を示す。 比較例5の試料のX線回折ピークを示す。黒丸で示したピークはモネタイトの回折ピーク 比較例5の試料のSEM写真を示す。 ヒドロキシアパタイト粒子の人口唾液浸漬前後のX線回折ピーク(試験例1)を示す。 ブラッシング前後の象牙細管のSEM写真(試験例2)を示す。 水圧処理前後の象牙細管のSEM写真(試験例3)を示す。 ヒドロキシアパタイト粒子を含有する歯磨剤溶液を用いてブラッシングした前後の象牙細管のSEM写真(試験例4)を示す。 ヒドロキシアパタイト粒子を含有するゲル製剤をソフトピックにより象牙質に適用した前後の象牙細管のSEM写真(試験例5)を示す。 ヒドロキシアパタイト粒子を含有するゲル製剤を用いた臨床試験のフローを示す。 ヒドロキシアパタイト粒子を含有するゲル製剤を用いた臨床試験において、擦過痛の度合いをVASスケールで評価した結果を示す。 左から順に、参考例1、参考例2、参考例3、比較例1、実施例1、比較例2、の各口腔用組成物のb*値を示す。
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本開示は、口腔用組成物、特に特定のヒドロキシアパタイト粒子を含む口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
本開示に包含される口腔用組成物は、特定のヒドロキシアパタイト粒子を含有する。なお、本明細書において当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」と呼ぶことがある。
当該特定のヒドロキシアパタイト粒子は、X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5である、ヒドロキシアパタイト粒子である。なお、本明細書において、当該ヒドロキシアパタイト粒子を「本開示の粒子」と呼ぶことがある。
2θ=26°付近の回折ピークは、ヒドロキシアパタイトのピークであり、具体的には、2θ=25.5〜26.5°の回折ピークであり、好ましくは2θ=25.8〜26.2°の回折ピークである。2θ=26°付近に回折ピークが複数存在する場合、最も強度が高い回折ピークを意味する。
2θ=32°付近の回折ピークは、ヒドロキシアパタイトのピークであり、具体的には、2θ=31.5〜32.5°の回折ピークであり、好ましくは2θ=31.8〜32.2°の回折ピークである。2θ=32°付近に回折ピークが複数存在する場合、最も強度が高い回折ピークを意味する。
本明細書において、X線回折パターンは、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンである。測定条件の一例として、次の条件を挙げることができる。ターゲット:Cu、管電圧40kV、管電流:30mA、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:2.00°/min、発散スリット:1.0°、散乱スリット:1.0°、受光スリット:0.3mm。
本開示の粒子は、2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比(32°/26°)が0.8〜1.5である。該ピーク強度比は、好ましくは0.9〜1.3、より好ましくは1.0〜1.25、さらに好ましくは1.05〜1.2、よりさらに好ましくは1.05〜1.15である。
本開示の粒子は、一つ一つの粒子それ自体が、ヒドロキシアパタイト板状結晶の凝集体であることが好ましい。本開示の粒子を構成する板状結晶の形状は特に制限されず、円形、多角形(特に六角形)、棒状に近い形状、或いはこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。また、板状結晶は、面が折り曲げられてなる状態、面が折り曲げられずに平面構造を保った状態のいずれの状態でもよい。なお、通常、板状ヒドロキシアパタイト結晶は、板の頂面をc面、側面をa面とした六方晶と呼ばれる構造をしている。また、粒子が複数の結晶により形成されている場合、その結晶を結晶子という。
本開示の粒子は、ヒドロキシアパタイトを主成分として含む粒子であり、好ましくは本質的にヒドロキシアパタイトからなる粒子である。本開示の粒子のX線回折パターンにおいては、他の物質(例えばモネタイト等)が含まれている場合であっても、そのピークは分離して観察されないか、或いはそのピーク強度は比較的低い。このため、本開示の粒子は、これらのピークのピーク強度が高い粒子とは区別されるものである。
限定的な解釈を望むものではないが、本開示の粒子は、特定のX線回折パターンで表される形状・構造を有すること及び板状粒子が凝集して構成されていることを一因として、これらが相まって、象牙細管の優れた封鎖性と象牙細管内での優れた固着性を発揮すると考えられる。
本開示の粒子は、好ましくは、X線回折パターンにおける2θ=32°付近の回折ピーク強度に対する2θ=34°付近の回折ピーク強度の比(34°/32°)が1以下である。2θ=34°付近の回折ピークは、具体的には、2θ=33.5〜34.5°の回折ピークであり、好ましくは2θ=33.8〜34.2°の回折ピークである。2θ=34°付近に回折ピークが複数存在する場合、最も強度が高い回折ピークを意味する。該ピーク強度比は、好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.2〜0.9、さらに好ましくは0.3〜0.8、よりさらに好ましくは0.4〜0.7、特に好ましくは0.4〜0.6である。
本開示の粒子は、好ましくは、25°≦2θ≦35°の範囲内の全ての回折ピークの面積の総和100%に対して、25.5°≦2θ≦26.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積と31.5°≦2θ≦32.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積との総和が30〜45%である。該値は、好ましくは33〜42%、より好ましくは35〜40%である。また、本開示の粒子は、2θ=40°付近の(130)面による回折ピークから算出した結晶子サイズは、好ましくは4〜12nm、より好ましくは5〜10nmである。限定的な解釈を望むものではないが、結晶性が比較的低いことにより、象牙細管封鎖後に細管内での結晶成長性がより高まると考えられ、これにより細管内での固着性がより向上すると考えられる。
本開示の粒子のCa/Pモル比は、ヒドロキシアパタイトがとり得る値である限り特に制限されない。限定的な解釈を望むものではないが、本開示の粒子においては、カルシウムの一部が他の元素(ナトリウム等)に置換しているとも考えられ、このため、Ca/Pモル比は比較的低い値であり得る。この観点から、本開示の粒子のCa/Pモル比は、好ましくは1.67未満、より好ましくは1.65以下又は1.60以下、さらに好ましくは1.55以下又は1.50以下、よりさらに好ましくは1.45以下又は1.40以下である。本開示の粒子のCa/Pモル比の下限は、特に制限されず、例えば1.0、1.1、又は1.2でありえる。なお、当該Ca/Pモル比は、誘導結合プラズマ発光分光分析によって本開示の粒子のCa及びP含有量を測定し、その測定値から算出した値である。
本開示の粒子のメジアン径(d50)は、特に制限されるものではないが、象牙細管封鎖性、固着性等の観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは4.5μm以下である。該メジアン径の下限は、特に制限されないが、例えば1μm以上、2μm以上、又は3μm以上が挙げられる。より具体的には、例えば1〜5μmが挙げられる。なお、該メジアン径は、レーザー回折・散乱法により測定される値である。より具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して乾式粒度分布測定により測定される値である。
本開示の粒子の比表面積は、特に制限されるものではないが、象牙細管封鎖性、固着性等の観点から、例えば30m/g以上、好ましくは40m/g以上、より好ましくは50m/g以上、さらに好ましくは55m/g以上である。該比表面積の上限は、特に制限されないが、例えば150m/g、120m/g、100m/g、90m/gである。なお、当該比表面積は窒素ガス吸着法によって測定される値である。
本開示の粒子は、好ましくは、唾液と反応して、結晶性が向上する。ここでの結晶性が向上するとは、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおいて、唾液反応前より後の方が、少なくとも1つ(好ましくは1、2、3、4、又はそれ以上)のピークのシャープさが向上(より具体的には、回折強度が向上する)することをいう。唾液としては、人工唾液(CaCl:1.5mM,KHPO:0.9mM,KCl:130mM,HEPES:20mM,pH7.0(KOH))を用いる。また反応は、唾液に粒子を7日間浸漬させることで行う。
本開示の粒子は、例えば、pHが4以上7未満であるリン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合して35〜85℃で反応させる工程を含む、ヒドロキシアパタイト粒子を製造する方法により調製することができる。
リン酸アルカリ塩としては、特に制限されず、水和物及び無水物を包含する。リン酸アルカリ塩としては、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられ、好ましくはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩が挙げられ、より好ましくはリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
リン酸アルカリ塩水溶液中のリン酸アルカリ塩の濃度は、特に制限されず、例えば3〜50質量%である。該濃度は、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは7〜15質量%である。
リン酸アルカリ塩水溶液のpHは、好ましくは4以上7未満である。該pHは、より好ましくは5〜6.5である。なお、後述のように、リン酸アルカリ塩水溶液のpHが比較的低い場合(例えば、pH4以上5未満の場合)は、リン酸アルカリ塩として無水物を使用し、且つ反応温度を比較的高い温度、例えば65〜85℃、好ましくは70〜85℃、より好ましくは75〜85℃に設定することが望ましい。
水酸化カルシウムスラリーはシュウ酸反応性を有するところ、前記水酸化カルシウムスラリーは、シュウ酸に対して特定の反応性を有する水酸化カルシウムのスラリーであることが好ましい。
シュウ酸に対する反応性は、例えば、以下の定義で表すことができる:
シュウ酸反応性:5質量%の濃度に調製され、25±1℃に保たれた水酸化カルシウムスラリー50gに、25±1℃に保たれた0.5モル/リットルの濃度のシュウ酸水溶液40gを一気に添加し、添加後pH7.0になるまでの時間(分)。
前記シュウ酸に対する特定の反応性としては、上記定義で表す場合、好ましくは1〜40分、より好ましくは5〜30分、さらに好ましくは10〜20分である。
水酸化カルシウムスラリーのBET比表面積は、好ましくは5m/g以上、より好ましくは6m/g以上である。該BET比表面積の上限は、特に制限されないが、例えば20m/g、15m/g、10m/gである。
シュウ酸反応性が高い(例えば上述した特定のシュウ酸に対する反応性を有する)水酸化カルシウムスラリーは、典型的には、水酸化カルシウムスラリーを磨砕処理することにより得ることができる。磨砕処理により、シュウ酸反応性をより高める(上記定義の時間をより短くする)ことができる。磨砕処理は、例えばビーズミルを用いて行われる。磨砕処理の条件としては特に制限されず、例えば特開2017−036176号公報に記載の方法に従った条件を採用することができる。
水酸化カルシウムスラリーは、例えば、石灰石を焼成して得られる生石灰(酸化カルシウム)に水を反応させることにより、調製することができる。例えば、石灰石をキルン内において約1000℃で焼成して、生石灰を生成し、この生石灰に約10倍量の熱水を投入し、30分間攪拌させることにより、水酸化カルシウムスラリーを調製することができる。
水酸化カルシウムスラリーの固形分濃度は、特に制限されないが、例えば1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%、さらに好ましくは6〜12質量%である。
リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとの量比は、ヒドロキシアパタイト粒子を製造できる比である限り特に制限されない。該量比は、Ca/Pモル比が、好ましくは0.3〜0.7、より好ましくは0.4〜0.6、さらに好ましくは0.45〜0.55になるように調整されることが望ましい。
リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーとを混合する態様は特に制限されない。例えば、リン酸アルカリ塩水溶液を含む反応容器に水酸化カルシウムスラリーを添加する態様(態様1)、水酸化カルシウムスラリーを含む反応容器にリン酸アルカリ塩水溶液を添加する態様(態様2)、リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーを同時に反応容器に添加する態様(態様3)等が挙げられる。これらの中でも、態様1が好ましい。反応容器への上記添加の際には、通常、反応容器中の液は攪拌されている。
反応容器への上記添加は、一定程度の時間をかけて行うことが望ましい。添加開始から添加終了までの時間は、例えば10〜90分間、好ましくは20〜60分間、より好ましくは20〜40分間である。
反応は、通常、攪拌下で行う。反応温度は、35〜85℃である。該反応温度は、好ましくは40〜75℃、より好ましくは45〜70℃、さらに好ましくは50〜70℃、よりさらに好ましくは55〜65℃である。反応温度は、リン酸アルカリ塩水溶液のpHが比較的低い場合(例えば、pH4以上5未満の場合)は、比較的高い温度、例えば65〜85℃、好ましくは70〜85℃、より好ましくは75〜85℃である。反応時間(リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーが全て混合されてから開始する時間、上記態様1〜3において、リン酸アルカリ塩水溶液と水酸化カルシウムスラリーの添加が終了した時点から開始する時間)は、例えば10〜180分間、好ましくは20〜120分間、より好ましくは40〜90分間、さらに好ましくは50〜70分間である。
上記工程により生成した本開示の粒子は、必要に応じて、精製処理に供される。精製処理としては、例えばろ過処理、水洗処理等が挙げられる。また、必要に応じて、乾燥処理に供することもできる。
本開示の粒子は、象牙細管の封鎖性を有し、且つ象牙細管内での固着性に優れる。したがって、本開示の粒子を含有する口腔用組成物(すなわち、本開示の口腔用組成物)は、特に知覚過敏の予防又は改善用として好ましく用いることができる。
本開示の粒子は、口腔用組成物に、例えば1〜10質量%程度含有させることができる。当該含有割合範囲の上限または下限は、例えば1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、2〜8質量%又は3〜7質量%であることがより好ましい。
本開示の口腔用組成物は、常法により製造することができ、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品としても用いることができる。また、本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定するものではないが、常法に従って例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、塗布剤等の形態(剤形)にすることができる。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ペースト剤、液剤、スプレー剤、ジェル剤、塗布剤であることが好ましく、練歯磨剤、ペースト剤、ジェル剤がより好ましい。また、口腔用組成物を歯ブラシにのせて、あるいは口腔用組成物を口腔内に適用した後に、ブラッシングを行うことが好ましく、このため、ブラッシングに適した形態であることが好ましい。ブラッシングにより、本開示の粒子を歯牙象牙質の空洞に押し込むことができ、より好適に効果を得ることができる。
本開示の口腔用組成物には、本開示の粒子の他に、効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
このような成分としては、硝酸カリウムが好ましく挙げられる。言い換えれば、本開示の口腔用組成物は、本開示の粒子及び硝酸カリウムを含有する形態を好ましく包含する。これは、本開示の粒子に加え硝酸カリウムをも含有する口腔用組成物は、経時的に生じる黄ばみが抑制され得るからである。
より詳細に説明すると、本開示の粒子は、従来のヒドロキシアパタイト粒子とは異なり、口腔用組成物に含有された場合、当該口腔用組成物を比較的高温(例えば40〜60℃程度)で保存すると、当該口腔用組成物が(経時的に)黄ばむという問題があることを、本発明者らは見出した。この程度の温度は、口腔用組成物製品の流通(特に夏場の流通)において充分にあり得る温度であり、黄ばみは、消費者が口腔用組成物を選択する際に敬遠する原因の一つになり得るため、抑制されることが好ましい。ここで、上述の通り、本開示の粒子に加え、さらに硝酸カリウムを含有する口腔用組成物では、当該経時的に生じ得る黄ばみが抑制されるため、とくに好ましいのである。
硝酸カリウムは、口腔用組成物に、例えば0.1〜15質量%程度含有させることができる。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、又は14質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、0.5〜10質量%、又は1〜8質量%程度であってもよい。
その他の任意成分としては、例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8〜10、アルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が例示される。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が例示される。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N−ココイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N−ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が例示される。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1〜5質量%である。
また、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤を配合し得る。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらは、組成物全量に対して0.01〜1質量%配合することができる。
また、粘結剤として、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ジェランガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリンなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、ビーガム、増粘性シリカなどの無機粘結剤、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに、湿潤剤として、ソルビット、グリセリン、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を単独又は2種以上組み合わせて配合することができる。
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を単独又は2種以上組み合わせて配合してもよい。
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4〜8、好ましくは5〜7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01〜2重量%が例示される。
薬効成分として、殺菌剤を配合してもよい。例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ヒノキチオール等が挙げられる。またさらに、殺菌剤以外の薬効成分を配合することもできる。例えば、乳酸アルミニウム、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、フッ化ナトリウム等を配合してもよい。薬効成分は単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。中でも、乳酸アルミニウムは、知覚過敏予防のための薬効成分であるため、本開示の口腔用組成物に配合するのに特に好ましい。
また、基剤として、例えば、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を単独または2種以上を組み合わせて添加することも可能である。
なお、以上の任意成分の記載は例示であり、用い得る任意成分を限定するものではない。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
以下に、例に基づいて本開示の主題をより詳細に説明するが、本開示の主題はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積:6.7m/g シュウ酸反応性:15分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温し撹拌停止まで維持した。10%NaOH水溶液を添加してpHを5.5に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉末)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト粒子についてX線結晶回折、比表面積測定、粒度分布測定、Ca/Pモル比測定、及び形状観察を行った。
X線回折装置MultiFlex(株式会社リガク製)によって2θ=25〜45°の範囲で測定を行った。測定条件は以下の通りである。ターゲット:Cu、管電圧40kV、管電流:30mA、サンプリング幅:0.02°、スキャンスピード:2.00°/min、発散スリット:1.0°、散乱スリット:1.0°、受光スリット:0.3mm。結果を図1に示す。また、市販される試薬品であるヒドロキシアパタイト(試薬HAp)のX線回折パターンを図2に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.1であり、試薬HApの同ピーク強度比2.7に比べ明確に低い結果となった。これより、得られたヒドロキシアパタイト粒子は、c面が比較的多く露出している板状結晶の凝集体であることが分かった。また、25°≦2θ≦35°の範囲内の全ての回折ピークの面積の総和100%に対して、25.5°≦2θ≦26.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積と31.5°≦2θ≦32.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積との総和は、37.2%であった。これは試薬HApが示した52.1%よりも明確に低い値を示しており、またX線回折パターンが比較的ブロードであることからも結晶性が低いことが示される。また、2θ=40°付近の(130)面による回折ピークから算出した結晶子サイズは7nmであり、試薬HApが示す52nmに比べて明確に小さく、この点からも結晶性が低いことが示される。
ヒドロキシアパタイト粒子の比表面積は、全自動比表面積測定装置Macsorb HMmodel−1208 (株式会社マウンテック製)を使用し、窒素ガス吸着法によって測定した。その結果、比表面積は61.9 m/gであった。
ヒドロキシアパタイト粒子の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置MASTER SIZER 3000を使用して乾式粒度分布測定により測定した。その結果、メジアン径(d50)は3.76μmであった。
ヒドロキシアパタイト粒子のCa/Pモル比は、iCAP 6000 ICP−OES (ThermoFisher社製) を使用して誘導結合プラズマ発光分光分析によってCa及びP含有量を測定し、その測定値から算出した。その結果、Ca/Pモル比は1.33であった。
ヒドロキシアパタイト粒子の形状観察は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製:以下SEM)を用いて行った。結果を図3に示す。この結果より得られたヒドロキシアパタイト粒子は板状結晶の凝集体であることが示された。
実施例2
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積:7.9m/g シュウ酸反応性:12分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温し撹拌停止まで維持した。10%NaOH水溶液を添加してpHを6.0に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉体)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト粒子について、実施例1と同様にしてX線結晶回折、比表面積測定及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図4に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.1であり、実施例1と同等の値であった。また、25°≦2θ≦35°の範囲内の全ての回折ピークの面積の総和100%に対して、25.5°≦2θ≦26.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積と31.5°≦2θ≦32.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積との総和は、38.6%であった。また、2θ=40°付近の(130)面による回折ピークから算出した結晶子サイズは7nmであった。
比表面積は75.4 m/gであった。
形状観察結果を図5に示す。実施例1と同様に板状結晶の凝集体であることが確認された。
実施例3
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積7.9m/g シュウ酸反応性:12分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら40℃に加温し撹拌停止まで維持した。10%NaOH水溶液を添加してpHを5.5に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを50分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉体)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト粒子について、実施例1と同様にしてX線結晶回折、比表面積測定及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図6に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.2であり、実施例1と同等の値であった。また、25°≦2θ≦35°の範囲内の全ての回折ピークの面積の総和100%に対して、25.5°≦2θ≦26.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積と31.5°≦2θ≦32.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積との総和は、36.0%であった。また、2θ=40°付近の(130)面による回折ピークから算出した結晶子サイズは6nmであった。
比表面積は81.5 m/gであった。
形状観察結果を図7に示す。実施例1と同様に得られたヒドロキシアパタイト粒子は板状結晶の凝集体であることが確認された。
実施例4
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム無水物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積7.9m/g シュウ酸反応性:12分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム無水物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら80℃に加温した。pHは4.2のまま調整しなかった。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉体)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト粒子について、実施例1と同様にしてX線結晶回折、比表面積測定及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図8に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.4であり、実施例1と同等の値であった。また、25°≦2θ≦35°の範囲内の全ての回折ピークの面積の総和100%に対して、25.5°≦2θ≦26.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積と31.5°≦2θ≦32.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積との総和は、37.8%であった。また、2θ=40°付近の(130)面による回折ピークから算出した結晶子サイズは9nmであった。
比表面積は163.4 m/gであった。
形状観察結果を図9に示す。実施例1と同様に得られたヒドロキシアパタイト粒子は板状結晶の凝集体であることが確認された。
実施例5
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム無水物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積7.9m/g シュウ酸反応性:12分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム無水物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温した。pHは4.2のまま調整しなかった。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト微粒子(粉末)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト微粒子について、実施例1と同様にしてX線結晶回折、比表面積測定及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図10に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.1であり、実施例1と同等の値であった。また、25°≦2θ≦35°の範囲内の全ての回折ピークの面積の総和100%に対して、25.5°≦2θ≦26.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積と31.5°≦2θ≦32.5°の範囲内の全ての回折ピークの面積との総和は、31.6%であった。また、2θ=40°付近の(130)面による回折ピークから算出した結晶子サイズは7nmであった。
比表面積は94.7m/gであった。
形状観察結果を図11に示す。実施例1と同様に板状微粒子の凝集体であることが確認された。
比較例1
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム無水物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積7.9m/g シュウ酸反応性:12分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。水酸化カルシウムスラリーをステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら40℃に加温した。そこにリン酸二水素ナトリウム無水物水溶液(pH:4.2)を30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト得られたヒドロキシアパタイト粒子(粉体)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト粒子について、実施例1と同様にしてX線結晶回折、比表面積測定及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図12に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.7であり、実施例1と比較して明確に高い値を示した。また、2θ=33°付近の(300)面による回折ピークが分離して現れた。
比表面積は50.9 m/gであった。
形状観察結果を図13に示す。得られたヒドロキシアパタイト粒子は紡錘状の結晶が凝集して形成されていることが確認された。
比較例2
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温し撹拌停止まで維持した。pHは4.2のまま調整しなかった。そこに水酸化カルシウムスラリーを45分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ試料を得た。
得られた試料について、実施例1と同様にしてX線結晶回折及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図14に示す。ヒドロキシアパタイトの回折ピークに加え、他の物質の回折ピークが確認された。図中に黒丸で示したピークはモネタイトの回折ピークであり、酸性状態で生成しやすいリン酸カルシウムである。
形状観察結果を図15に示す。モネタイトの板状の大きな粒子が確認された。
比較例3
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%高純度水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積:2.4m/g、シュウ酸反応性:25秒 特開第2011−126772号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら60℃に加温し撹拌停止まで維持した。10%NaOH水溶液を添加してpHを5.5に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを30分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、試料を得た。
得られた試料について、実施例1と同様にしてX線結晶回折を行った。
X線結晶回折結果を図16に示す。ヒドロキシアパタイトの回折ピークに加え、2θ=28°付近及び34°付近に水酸化カルシウムの回折ピークが確認された。
また、形状観察結果を図17に示す。水酸化カルシウムの板状の大きな粒子が確認された。実施例1との違いが出たことについて、原料水酸化カルシウムの物性が影響していると考えられた。
比較例4
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(BET比表面積7.9m/g シュウ酸反応性:12分30秒 特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、10%NaOH水溶液を添加してpHを5.5に調整した。そこに水酸化カルシウムスラリーを50分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに撹拌を停止し、9日間常温で静置後、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ、ヒドロキシアパタイト粒子(粉体)を得た。
得られたヒドロキシアパタイト粒子について、実施例1と同様にしてX線結晶回折及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図18に示す。2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が1.3であった。
形状観察結果を図19に示す。粒子の形状は微小な紡錘状粒子の凝集体であることが確認された。
比較例5
Ca/Pモル比が0.5になるように、10.7質量%リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液及び、固形分濃度8.6質量%磨砕処理水酸化カルシウムスラリー(特開第2017−036176号公報)を調製した。リン酸二水素ナトリウム・2水和物水溶液をステンレスビーカーに入れ、撹拌しながら80℃に加温し撹拌停止まで維持した。pHは4.2のまま調整しなかった。そこに水酸化カルシウムスラリーを50分かけて添加した。添加終了後、更に1時間撹拌したあとに、ろ過、水洗、及び80℃にて乾燥させ試料を得た。
得られた試料について、実施例1と同様にしてX線結晶回折及び形状観察を行った。
X線結晶回折結果を図20に示す。ヒドロキシアパタイトの回折ピークに加え、他の物質の回折ピークが確認された。図中に黒丸で示したピークはモネタイトの回折ピークであり、酸性状態で生成しやすいリン酸カルシウムである。
形状観察結果を図21に示す。モネタイトの板状の大きな粒子が確認された。
試験例1.結晶性変化確認試験
[試験目的]
ヒドロキシアパタイト粒子の口腔内での反応性を評価するべく、人工唾液浸漬前後の結晶性の変化を粉末X線回折装置により測定した。
[試験方法]
実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子0.5gを人工唾液(CaCl:1.5mM,KHPO:0.9mM,KCl:130mM,HEPES:20mM,pH7.0(KOH))200mLに7日間浸漬させた。吸引ろ過によりろ別した粉体を粉末X線回折装置により測定し、人工唾液浸漬前後での結晶性の変化を観測した。
[測定条件]
・使用機種:Miniflex II (株式会社リガク)
・開始角度:20°
・終了角度:40°
・サンプリング幅:0.02°
・スキャンスピード:4.0°/min
・ターゲット:Cu、
・管電圧:30kV
・管電流:15mA
・発散スリット:1.25°
・散乱スリット:8.0mm
・受光スリット:0.3mm。
結果を図22に示す。人工唾液浸漬により、結晶性の向上(ピークのシャープさが上昇、ブロードで隠れていたピークの出現)が確認された。これより当該ヒドロキシアパタイト粒子は口腔内で変化する(反応性を有した)粒子であることが確認できた。
なお、実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子にかえて、公知のヒドロキシアパタイト粒子を用いて同様の検討を行ったところ、人工唾液浸漬の前後においてピークは全く変化せず、結晶性は変化しなかった。
試験例2.ヒドロキシアパタイト粒子の象牙細管封鎖性試験
[試験目的]
ヒドロキシアパタイト粒子の象牙細管を封鎖する能力を評価するべく、ウシ象牙質表面をヒドロキシアパタイト粒子液でブラッシングし、象牙細管の封鎖度合いを電子顕微鏡(SEM)観察で調べた。
[試験方法]
象牙質ブロック(サンプル)の作成
1. ウシ抜去歯根面部の象牙質を5×5mmのサイズに切り出した。
2. 切り出した歯片をレジン樹脂(ポリメチルメタクリレート)に埋没、ブロックを作成し、耐水研磨紙を用いて研磨し、表面出しを行った。
3. 当該象牙質ブロックを5%w/w EDTA水溶液(pH7.0)に2分間浸漬させた。
4. 蒸留水中で5分間超音波処理を行った。
ヒドロキシアパタイト粒子液の調製
5. 実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子0.3gを粘性希釈液39.7gに懸濁させ、ヒドロキシアパタイト粒子を液得た。なお、当該粘性希釈液は、0.5w/w% カルボキシメチルセルロースナトリウム、10w/w% グリセリンを含む水溶液である。
ブラッシング処理
6. ヒドロキシアパタイト粒子液(40g)中で、象牙質ブロックを30秒間歯ブラシ(GUM #211)でブラッシングした(ストローク:150rpm、荷重:160g)。
7. 象牙質ブロックを水洗したのち、人工唾液(CaCl:1.5mM,KHPO:0.9mM,KCl:130mM,HEPES:20mM,pH7.0(KOH))に5分間浸漬させた。
8. 上記操作1と2を6回繰り返した。
SEM観察
9. 表面を蒸着処理した後、電子顕微鏡にて観察した。
[観察測定条件]
{蒸着処理}
・使用機種:MCI1000(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・電流:20mA
・処理時間:120秒
{SEM観察}
・使用機種:S−3400N(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・検出器:SE(二次電子像)
・印加電圧:5kV
・プローブ電流:50mA
・倍率:25000倍。
結果を図23に示す。ヒドロキシアパタイト粒子液中でのブラッシングにより、象牙細管が封鎖されていることが確認できた。これより当該ヒドロキシアパタイト粒子は、象牙質表面に存在する象牙細管を封鎖する粒子であることが確認できた。
試験例3.固着性試験
[試験目的]
ヒドロキシアパタイト粒子の象牙細管内で固着する能力を評価するべく、ウシ象牙質表面をヒドロキシアパタイト粒子溶液でブラッシングした後、象牙質裏面から水圧をかけ、その水圧にヒドロキシアパタイト粒子の封鎖が耐えたかどうかを電子顕微鏡(SEM)観察で調べた。
[試験方法]
象牙質ディスク(サンプル)の作成
1. ウシ抜去歯根面部の象牙質を5×5mmのサイズに切り出した。
2. 切り出した歯片を耐水研磨紙で研磨した。
3. 得られた象牙質ディスクを5%w/w EDTA水溶液(pH7.0)に2分間浸漬させた。
4. 蒸留水中で5分間超音波処理を行った。
ヒドロキシアパタイト粒子液の調製
5. 実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子1gを粘性希釈液39gに懸濁させ、ヒドロキシアパタイト粒子液を得た。なお、当該粘性希釈液は、0.5w/w% カルボキシメチルセルロースナトリウム、10w/w% グリセリンを含む水溶液である。
ブラッシング処理
6. ヒドロキシアパタイト粒子液(40g)中で、象牙質ディスクを30秒間歯ブラシ(GUM #211)でブラッシングした(ストローク:150rpm、荷重:160g)。
7. ディスクを水洗したのち、人工唾液(CaCl:1.5mM,KHPO:0.9mM,KCl:130mM,HEPES:20mM,pH7.0(KOH))に5分間浸漬させた。
8. 上記操作1と2を6回繰り返した。
9. 人工唾液に7日間浸漬させた。
水圧処理
10. ブラッシング処理後の象牙質ディスクを、pashleyらの報告(Pashley DH, Galloway SE. The effects of oxalate treatment on the smear layer of ground surfaces of human dentin. Arch Oral Biol 1983; 30: 731−737.)を参考にした装置を用いて0.1MPaで30分加圧した。
SEM観察
11. 表面を蒸着処理した後、電子顕微鏡にて観察した。
[観察測定条件]
{蒸着処理}
・使用機種:MCI1000(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・電流:20mA
・処理時間:120秒
{SEM観察}
・使用機種:S−3400N(株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・検出器:SE(二次電子像)
・印加電圧:5kV
・プローブ電流:50mA
・倍率:25000倍。
結果を図24に示す。水圧処理後も象牙細管が封鎖されていることが確認できた。これよりヒドロキシアパタイト粒子は、象牙細管内で固着し、封鎖状態を維持する粒子であることが確認できた。
試験例4.歯磨剤の象牙細管封鎖性試験
[試験目的]
素材配合のハミガキ製剤の象牙細管を封鎖する能力を確認するべく、ウシ象牙質表面を素材溶液でブラッシングし、象牙細管の封鎖度合いを電子顕微鏡(SEM)で調べた。
[試験方法]
象牙質ブロック(サンプル)の作成
1. ウシ抜去歯根面部の象牙質を5×5 mmのサイズに切り出した。
2. 切り出した歯片をレジン樹脂(ポリメチルメタクリレート)に埋没、ブロックを作成し、耐水研磨紙を用いて研磨し、表面出しを行った。
3. 当該象牙質ブロックを5w/w% EDTA 水溶液(pH 7.0)に2分間浸漬させた。
4. 蒸留水中で5分間超音波処理を行った。
歯磨剤溶液の調製
5. 実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子を3w/w%配合した歯磨剤10 gを常法により調製した。当該歯磨剤の組成を以下の表1に示す。なお、以下、表中の配合量の単位「%」は質量%を示す。
ブラッシング処理
6. 当該歯磨剤10gを蒸留水で4倍希釈し、歯磨剤溶液を得た。当該歯磨剤溶液(40 g)中で、象牙質ブロックを30秒間歯ブラシ(GUM #211)でブラッシングした (ストローク:150rpm、荷重:160g)。
7. 象牙質ブロックを水洗したのち、人工唾液(CaCl: 1.5mM, KHPO:0.9mM, KCl: 130mM, HEPES: 20mM, pH 7.0(KOH))に5分間浸漬させた。
8. 上記操作1と2を6回繰り返した。
SEM観察
9. 表面を蒸着処理した後、電子顕微鏡にて観察した。
[観察測定条件]
{蒸着処理}
・使用機種: MCI1000 (株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・電流: 20mA
・処理時間: 120秒
{SEM観察}
・使用機種: S−3400N (株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・検出器:SE (二次電子像)
・印加電圧:5 kV
・プローブ電流 50mA
・倍率: 25000倍
結果を図25に示す。ヒドロキシアパタイト粒子を含有する歯磨剤溶液中でのブラッシングにより、象牙細管が封鎖されていることが確認できた。これより当該ヒドロキシアパタイト粒子を配合した歯磨剤は、象牙細管を封鎖する効果が高いことが確認できた。
試験例5.ゲル製剤をソフトピックで塗布した際の象牙細管封鎖性試験
[試験目的]
ヒドロキシアパタイト粒子配合のゲル製剤の象牙細管を封鎖する能力を確認するべく、ウシ象牙質表面にソフトピック(ゴム製の歯間ブラシ)を用いてゲル製剤を塗布し、象牙細管の封鎖度合いを電子顕微鏡(SEM)で調べた。
[試験方法]
象牙質ブロック(サンプル)の作成
1. ウシ抜去歯根面部の象牙質を5×5 mmのサイズに切り出した。
2. 切り出した歯片をレジン樹脂(ポリメチルメタクリレート)に埋没、ブロックを作成し、耐水研磨紙を用いて研磨し、表面出しを行った。
3. 当該象牙質ブロックを5w/w% EDTA 水溶液(pH 7.0)に2分間浸漬させた。
4. 蒸留水中で5分間超音波処理を行った。
5. 当該象牙質ブロック2つを、象牙質表面が間隔1.1 mmで向かい合うようにテープで固定し、疑似的歯間空隙とした。
塗布処理
6. ソフトピック(ガム・ソフトピック カーブ型:サンスター株式会社)のブラシ部分に、実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子を含有する(あるいは含有しない)ゲル製剤を載せ、空隙に挿入して5往復させた。なお、当該ゲル製剤の組成を以下の表2に示す。
7. 象牙質ブロックを水洗した。
SEM観察
8. 表面を蒸着処理した後、電子顕微鏡にて観察した。
[観察測定条件]
{蒸着処理}
・使用機種: MCI1000 (株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・電流: 20mA
・処理時間: 120秒
{SEM観察}
・使用機種: S−3400N (株式会社日立ハイテクノロジーズ)
・検出器:SE (二次電子像)
・印加電圧:5 kV
・プローブ電流 50mA
・倍率: 25000倍
結果を図26に示す。ソフトピックによるヒドロキシアパタイト粒子を配合したゲル製剤を塗布することにより、象牙細管が封鎖されていることが確認できた。
試験例6.ゲル製剤臨床試験
[試験目的]
ヒドロキシアパタイト粒子配合のゲル製剤の抗知覚過敏に関する臨床効果を検討した。なお、当該検討において、ヒドロキシアパタイト粒子として実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子を用いた。
[試験デザイン]
(i)ヒドロキシアパタイト粒子、乳酸アルミニウム、及び硝酸カリウムを含有するゲル製剤(HAp+Al+K)、(ii)乳酸アルミニウム及び硝酸カリウムを含有するゲル製剤(Al+K)、並びに(iii)硝酸カリウムを含有するゲル製剤(K)、の3製剤での比較を行った。これらのゲル製剤の組成を以下の表3に示す。
各ゲル製剤を、それぞれ20人に使用してもらい、使用後1、2、又は4週時点での擦過痛(露出根面部位に探針を当て、水平方向に擦過する)の度合いをVASスケールで記載してもらった。なお、VASスケールは、長さ10cmの黒い線(左端が「全く痛みを感じない」、右端が「最もしみる/強い痛み」)を患者さんに見せて、現在の痛みがどの程度かを指し示す視覚的なスケールである。また、当該試験のフローを図27に示す。図27において、「知覚過敏ケアセット(ジェル製剤(試験品))」は上記(i)〜(iii)のゲル製剤を示し、「知覚過敏ケアセット(ジェル製剤(プラセボ品))」は、上記(iii)のゲル製剤から硝酸カリウムを抜いたゲル製剤を示す。
[試験品使用方法]
被験者にジェル製剤(試験品)を1日2回(朝・晩)(起床後や食事後、就寝前等の規定はせず、各自の口腔清掃習慣に合わせることとする。)使用させた。具体的には、まず、指定のハブラシ(ガム・プロズデンタルブラシ#3C:サンスター株式会社)と歯磨剤(コープ ノンフォームハミガキ N)でブラッシング後、約10 mlの水で20秒間洗口させ(ブラッシング時間の規定はしない。)、その後にジェル製剤を使用させた。ジェル製剤の使用は、具体的には、被験歯1歯に対し、ジェル製剤(試験品)約0.04 g(米粒大くらい)をタフトブラシ(バトラーシングルタフトブラシ#01F:サンスター株式会社)で被験部位に塗布し、被験部位とその両隣接歯を1歯につき5秒以上ブラッシングさせた。被験部位と両隣接歯との歯間に指定の歯間清掃具(ガム・ソフトピック カーブ型:サンスター株式会社)を挿入可能な場合は、当該歯間清掃具を被験部位と両隣接歯との歯間部に頬側から挿入し、5回往復させた。ジェル製剤(試験品)の使用後、約10 mlの水で20秒間洗口させた。
擦過痛の度合いをVASスケールで評価した結果を図28に示す。当該ヒドロキシアパタイト配合製剤使用群は、未配合使用群よりも、使用後1週目に有意に擦過痛が改善した。これから、当該ヒドロキシアパタイト配合製剤は、公知の知覚過敏予防のための薬効成分である乳酸アルミニウム及び硝酸カリウムと組み合わせて用いることにより、早期に知覚過敏症状を抑える効果があることが分かった。
試験例7.ヒドロキシアパタイト粒子及び硝酸カリウム含有口腔用組成物の効果の検討
実施例1と同様にして得られたヒドロキシアパタイト粒子(実施例1手順製造HAp)又は市販ヒドロキシアパタイト粒子(市販HAp(富田製薬(株)製);上記試薬HApとは別の市販ヒドロキシアパタイト)、並びに硝酸カリウムを用いて、口腔用組成物を調製した。具体的には、表4に示す各成分を混合して各口腔用組成物を調製した。なお、表4に示す各成分の数値は質量%を示す。また、実施例1手順製造HAp及び市販HApについて、上記実施例1と同様にしてX線結晶回折を行ったところ、2θ=26°付近の(002)面による回折ピーク強度比に対する、2θ=32°付近の(211)面による回折ピーク強度の比が、実施例1手順製造HApは1.44、市販HApでは2.72であった。
得られた各口腔用組成物を口径8mmのラミネートチューブに25g充填し、55℃、暗所にて6ヶ月間保存して室温に戻した後、色差を次のようにして測定した。保存後の口腔用組成物をポリスチレン製の容器に高さ2cmとなるよう充填し、白板の上でFD−5(コニカミノルタ社製蛍光分光濃度計)にて撮影を行った。撮影条件は一定の照明、シャッター速度、しぼり、焦点距離とした。6か所の被測定部位のL*a*b*表色系におけるb*を測定し、平均値を算出して黄変色(黄ばみ)の評価の指標とした。当該結果(各口腔用組成物のb*値)を図29に示す。なお、図29の9本棒グラフは、それぞれ、左から順に、参考例1a、参考例2a、参考例3a、比較例1a、実施例1a、比較例2a、のb*値を示す。
当該結果から、実施例で得られたヒドロキシアパタイト粒子は、従来のヒドロキシアパタイト粒子とは異なり、口腔用組成物に含有された場合、当該口腔用組成物を比較的高温(例えば40〜60℃程度)で保存すると、当該口腔用組成物が(経時的に)黄ばむこと(参考例2a及び参考例3a)、並びに、実施例で得られたヒドロキシアパタイト粒子に加え硝酸カリウムを含有する口腔用組成物は、当該黄ばみが著しく抑制される(実施例1a)ことが確認できた。

Claims (9)

  1. ヒドロキシアパタイト粒子及び硝酸カリウムを含有する口腔用組成物であって、
    前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=26°付近の回折ピーク強度に対する2θ=32°付近の回折ピーク強度の比が0.8〜1.5である、
    口腔用組成物。
  2. 前記ヒドロキシアパタイト粒子のCa/Pモル比が1.67未満である、請求項1に記載の口腔用組成物。
  3. 前記ヒドロキシアパタイト粒子のメジアン径が5μm以下である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
  4. 前記ヒドロキシアパタイト粒子の比表面積が55〜200m/gである、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
  5. 前記ヒドロキシアパタイト粒子が、CuKα特性X線により測定される粉末X線回折パターンにおける2θ=32°付近の回折ピーク強度に対する2θ=34°付近の回折ピーク強度の比が1以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。
  6. 前記ヒドロキシアパタイト粒子が、ヒドロキシアパタイト板状結晶の凝集体である、
    請求項1〜5のいずれかに記載の口腔用組成物。
  7. さらに、乳酸アルミニウムを含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の口腔用組成物。
  8. 知覚過敏予防又は改善用である、請求項1〜7のいずれかに記載の口腔用組成物。
  9. 硝酸カリウムを0.1〜15質量%含有する、項1〜8のいずれかに記載の口腔用組成物。
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