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JP2021006390A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 Download PDF

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JP2021006390A
JP2021006390A JP2019120995A JP2019120995A JP2021006390A JP 2021006390 A JP2021006390 A JP 2021006390A JP 2019120995 A JP2019120995 A JP 2019120995A JP 2019120995 A JP2019120995 A JP 2019120995A JP 2021006390 A JP2021006390 A JP 2021006390A
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treatment liquid
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明子 松▲崎▼
Akiko Matsuzaki
明子 松▲崎▼
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Seiko Epson Corp
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Abstract

【課題】水系インクと処理液を用いた非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対するインクジェット記録において、画質の向上が可能なインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供する。【解決手段】本発明のンクジェット記録方法は、ある主走査において、第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす。第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)【選択図】図4

Description

本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法において、フィルム等の非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対して水系インクジェットインク(以下、単に「インク」、「水系インク」ともいう。)を用いた記録が検討されている。水系インクとは、水を主成分とし、色材と樹脂を含むインクが挙げられる。
このような水系インクを用いた非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対するインクジェット記録方法において、凝集剤を含む処理液を用い画像を記録する技術がある(例えば、特許文献1)。
特開2018−138354号公報
水系インクと処理液を用いた非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対するインクジェット記録において、更なる画質の向上が求められている。
〔1〕
複数回の主走査により、インク組成物と、水を含有する処理液と、を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体から選択される記録媒体に吐出して記録を行う、インクジェット記録方法であって、
前記記録は、
インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群を主走査軸に沿って移動させながら、前記インク組成物と前記処理液とを吐出する主走査と、
前記主走査軸に交差する副走査軸に沿って前記記録媒体を移動させる副走査と、を備え、
前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群を前記主走査軸に沿って投影したときに、前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群は前記副走査軸に沿って互いに位置が重なる領域を有し、
前記副走査の1回の長さが、前記インク吐出ノズル群の副走査軸方向の長さより短く、
前記記録媒体の前記インク組成物が付着される記録領域のうち、前記副走査の1回の長さに対応するバンド領域に、2回以上の前記主走査により前記インク組成物の付着を行い、
前記インク吐出ノズル群は、前記副走査の1回の長さ以下の長さである第1インクノズル部と第2インクノズル部と、を備え、
前記処理液吐出ノズル群は、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第1インクノズル部と重なる第1処理液ノズル部と、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第2インクノズル部と重なる第2処理液ノズル部と、を備え、
ある主走査において、前記第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、前記第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、前記第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、前記第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす、インクジェット記録方法。
第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
〔2〕
前記ある主走査で前記第1インクノズル部から前記インク組成物を吐出して付着させた前記記録領域に対して、他の主走査で前記第2インクノズル部から前記インク組成物を吐出して付着させる、〔1〕に記載のインクジェット記録方法。
〔3〕
前記処理液が凝集剤を含む、〔1〕または〔2〕に記載のインクジェット記録方法。
〔4〕
前記第1インクノズル部と前記第2インクノズル部は、それぞれノズル数が10個以上100個以下である、〔1〕ないし〔3〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔5〕
前記記録において、前記第2インクノズル部吐出量が、前記インク吐出ノズル群において吐出量が最大であって、前記第1インクノズル部吐出量が前記第2インクノズル部吐出量の30質量%以下である、〔1〕ないし〔4〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔6〕
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)が、1.5以上2.5以下である、〔5〕に記載のインクジェット記録方法。
〔7〕
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)が、0.1以上0.5以下である、〔5〕または〔6〕に記載のインクジェット記録方法。
〔8〕
前記第1インクノズル部が、前記インク吐出ノズル群の端から前記副走査の1回の長さに相当する領域にあり、
前記第2インクノズル部が、前記インク吐出ノズル群の端から前記副走査の1回の長さに相当する領域以外の領域にある、〔1〕ないし〔7〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔9〕
前記第1インクノズル部と前記第2インクノズル部が、前記インク吐出ノズル群にそれぞれ2箇所以上ある、〔1〕ないし〔8〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔10〕
前記第1インクノズル部において、前記第1インクノズル部の一方の端から他方の端に向かって吐出量が漸減している、〔1〕ないし〔9〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔11〕
前記インク組成物が、顔料を含有する水系インク組成物である、〔1〕ないし〔10〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔12〕
前記インク組成物は、有機溶剤の含有量が15質量%以上である、〔1〕ないし〔11〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔13〕
前記インク組成物は、標準沸点が180℃以上280℃以下の有機溶剤を含む、〔1〕ないし〔12〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔14〕
前記バンド領域に対して、前記インク組成物を吐出する主走査の回数よりも、前記処理液を吐出する主走査の回数の方が少なく、
前記バンド領域に対して、前記インク組成物を吐出する主走査よりも、前記処理液を吐出する主走査の方が早く完了する、〔1〕ないし〔13〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔15〕
前記記録媒体を加熱する工程を備え、
加熱された前記記録媒体に、前記主走査を行う、〔1〕ないし〔14〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔16〕
前記インク吐出ノズル群の吐出量は、前記記録媒体に所定の単一濃度画像を記録する場合における前記ある主走査の付着量である、〔1〕ないし〔15〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔17〕
前記主走査は、第1方向へ行う第1の主走査と、前記第1方向の反対の方向である第2方向へ行う第2の主走査と、を備え、
前記第1の主走査と前記第2の主走査において、前記処理液の吐出と前記インク組成物の吐出の順番が同じである、〔1〕ないし〔16〕のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法。
〔18〕
複数回の主走査により、インク組成物と、水を含有する処理液と、を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体から選択される記録媒体に吐出して記録を行う、インクジェット記録装置であって、
前記記録は、
インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群を主走査軸に沿って移動させながら、前記インク組成物と前記処理液とを吐出する主走査と、
前記主走査軸に交差する副走査軸に沿って前記記録媒体を移動させる副走査と、を備え、
前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群を前記主走査軸に沿って投影したときに、前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群は前記副走査軸に沿って互いに位置が重なる領域を有し、
前記副走査の1回の長さが、前記インク吐出ノズル群の副走査軸方向の長さより短く、
前記記録媒体の前記インク組成物が付着される記録領域のうち、前記副走査の1回の長さに対応するバンド領域に、2回以上の前記主走査により前記インク組成物の付着を行い、
前記インク吐出ノズル群は、前記副走査の1回の長さ以下の長さである第1インクノズル部と第2インクノズル部と、を備え、
前記処理液吐出ノズル群は、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第1インクノズル部と重なる第1処理液ノズル部と、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第2インクノズル部と重なる第2処理液ノズル部と、を備え、
ある主走査において、前記第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、前記第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、前記第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、前記第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす、インクジェット記録装置。
第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図。 図1のインクジェット記録装置のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図。 インクジェットヘッドにおけるノズル群の配列を模式的に示す概略上方図。 インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図。 インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図。 インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図。 インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図。 インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図。 インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図。
以下に、本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
本実施形態に係るインクジェット記録方法の一態様は、下記を特徴とする。
複数回の主走査により、インク組成物と、水を含有する処理液と、を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体から選択される記録媒体に吐出して記録を行う、インクジェット記録方法であって、
前記記録は、
インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群を主走査軸に沿って移動させながら、前記インク組成物と前記処理液とを吐出する主走査と、
前記主走査軸に交差する副走査軸に沿って前記記録媒体を移動させる副走査と、を備え、
前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群を前記主走査軸に沿って投影したときに、前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群は前記副走査軸に沿って互いに位置が重なる領域を有し、
前記副走査の1回の長さが、前記インク吐出ノズル群の前記副走査軸方向の長さより短く、
前記記録媒体の前記インク組成物が付着される記録領域のうち、前記副走査の1回の長さに対応するバンド領域に、2回以上の前記主走査により前記インク組成物の付着を行い、
前記インク吐出ノズル群は、前記副走査の1回の長さ以下の長さである第1インクノズル部と第2インクノズル部と、を備え、
前記処理液吐出ノズル群は、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第1インクノズル部と重なる第1処理液ノズル部と、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第2インクノズル部と重なる第2処理液ノズル部と、を備え、
ある主走査において、前記第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、前記第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、前記第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、前記第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす、インクジェット記録方法。
第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
本実施形態に係るインクジェット記録装置の一態様は、下記を特徴とする。
複数回の主走査により、インク組成物と、水を含有する処理液と、を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体から選択される記録媒体に吐出して記録を行う、インクジェット記録装置であって、
前記記録は、
インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群を主走査軸に沿って移動させながら、前記インク組成物と前記処理液とを吐出する主走査と、
前記主走査軸に交差する副走査軸に沿って前記記録媒体を移動させる副走査と、を備え、
前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群を前記主走査軸に沿って投影したときに、前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群は前記副走査軸に沿って互いに位置が重なる領域を有し、
前記副走査の1回の長さが、前記インク吐出ノズル群の副走査軸方向の長さより短く、
前記記録媒体の前記インク組成物が付着される記録領域のうち、前記副走査の1回の長さに対応するバンド領域に、2回以上の前記主走査により前記インク組成物の付着を行い、
前記インク吐出ノズル群は、前記副走査の1回の長さ以下の長さである第1インクノズル部と第2インクノズル部と、を備え、
前記処理液吐出ノズル群は、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第1インクノズル部と重なる第1処理液ノズル部と、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第2インクノズル部と重なる第2処理液ノズル部と、を備え、
ある主走査において、前記第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、前記第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、前記第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、前記第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす、インクジェット記録装置。
第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について、インクジェット記録装置、インクジェットヘッド、インク組成物、処理液、記録媒体、インクジェット記録方法の順に説明する。
1.各構成
1.1.インクジェット記録装置
本実施形態に係るインクジェット記録方法が実施されるインクジェット記録装置の一例をについて図面を参照しながら説明する。
図1は、インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図である。図2は、図1のインクジェット記録装置1のキャリッジ周辺の構成の一例を示す斜視図である。図1、2に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、加熱ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、キャリッジ9と、プラテン11と、キャリッジ移動機構13と、搬送手段14と、制御部CONTを備える。インクジェット記録装置1は、図2に示す制御部CONTにより、インクジェット記録装置1全体の動作が制御される。
インクジェットヘッド2は、インク組成物と、インク組成物の成分を凝集させる処理液とをそれぞれインク吐出ノズル群15と処理液吐出ノズル群16(図3参照)から吐出して付着させることにより記録媒体10に記録を行う手段である。本実施形態において、インクジェットヘッド2は、シリアル記録方式のインクジェットヘッドであり、記録媒体10に対して相対的に主走査軸に沿って複数回主走査してインク組成物と処理液を記録媒体10に付着させる。
インクジェットヘッド2は、図2に示すキャリッジ9に搭載される。インクジェットヘッド2は、キャリッジ9の移動によって記録媒体10の媒体幅方向、すなわち、主走査軸に沿って移動させるキャリッジ移動機構13の動作により、記録媒体10に対して相対的に主走査軸に沿って複数回走査される。主走査軸に沿った走査を主走査ともいう。
ここで、主走査軸とは、図2において矢印MSで示す軸である。主走査軸に沿って複数回走査とは、インクジェットヘッド2を主走査軸MSのS1からS2方向への走査と、S2からS1方向への走査との一方又は両方を、複数回行うことを意味する。インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9が移動するS1からS2方向と、S2からS1方向の両方向を併せて、主走査軸方向ともよぶ。すなわち、主走査軸方向は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9の移動する方向であり、記録媒体10の幅方向である。
また、主走査軸に交差する軸を副走査軸といい、副走査とは副走査軸に沿って記録媒体10を移動させることである。図2において、副走査軸は矢印SSで示す軸である。すなわち、記録媒体10の移動方向である、T1→T2の方向が副走査軸SSであり、副走査軸方向ともよぶ。そして、1回の走査で主走査軸方向、つまり、インクジェット記録装置1の左右方向の何れか一方の方向に走査が行われ、その後、副走査が行われる。そして、インクジェットヘッド2の主走査と、記録媒体10の搬送である副走査を交互に繰り返し行うことで、記録媒体10に対して記録する。なお、1回の主走査を1パスとも呼ぶ。
ここで、本明細書において、図2に示す記録媒体10のインク組成物が付着される記録領域10aにおいて、副走査の1回の長さ、すなわち図2において矢印10cで示す所定の幅をもつ帯状の画像領域をバンド領域10bとよぶ。本実施形態では、このバンド領域10bを2回以上の主走査によりインク組成物の付着を行う。すなわち、本実施形態では、記録媒体10のバンド領域10bに対して2回以上のパスで記録を行う。
インクジェットヘッド2の吐出には従来公知の方式を使用することができる。本実施形態では、圧電素子の振動を利用して液滴を吐出する方式、すなわち、電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成する吐出方式を使用する。
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からのインク組成物や処理液の吐出時に記録媒体10を加熱するための、つまり、一次加熱または一次乾燥用のIRヒーター3、プラテンヒーター4、通気ファン8を備える。本実施形態において、後述するインク付着工程で記録媒体10を加熱する際には、IRヒーター3、プラテンヒーター4、通気ファン8の少なくとも1つを用いればよい。
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から記録媒体10を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4等の記録媒体10の裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体10の厚みの影響を受けずに昇温することができる。また、記録媒体10を加熱する際にプラテンヒーター4を用いると、インクジェットヘッド2側と反対側から記録媒体10を加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2が比較的加熱されにくくなる。一方、通気ファン8で送風する場合は、インクの成分の蒸発を促進でき、乾燥が進みやすく好ましい。送風は温風が好ましいが、常温風もインクの成分の蒸発を促進できるため好ましい。これらは加熱機構の一例である。
なお、処理液やインクを付着させるときの記録媒体10の表面温度の上限は45℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、38℃以下であることがさらにより好ましく、35℃以下であることが特に好ましい。また、記録媒体10の表面温度の下限は25℃以上であることが好ましく、28℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、32℃以上であることが特により好ましい。
記録媒体を加熱機構により加熱する場合でも、温度が上記範囲以下であることにより、IRヒーター3及びプラテンヒーター4などから受ける輻射熱が少ない又は受けなくなることから、インクジェットヘッド2内及びノズル近傍のインク組成物や処理液の乾燥及び組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に対するインク組成物や処理液成分の溶着及びノズル近傍での増粘や固化が抑制される。また、インク組成物や処理液を早期に固定することができ、画質を向上させることができる。
加熱ヒーター5は、記録媒体10に付着されたインク組成物や処理液を乾燥及び固化させる、つまり、二次加熱または二次乾燥用の加熱機構である。加熱ヒーター5が、画像が記録された記録媒体10を加熱することにより、インク組成物や処理液に含まれる水分等がより速やかに蒸発飛散して、インクに含まれる樹脂によってインク塗膜が形成される。このようにして、記録媒体10上においてインク塗膜が強固に定着または接着して造膜性が優れたものとなり、優れた高画質な画像が短時間で得られる。加熱ヒーター5による記録媒体10の表面温度の上限は120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがさらに好ましい。また、記録媒体10の表面温度の下限は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。温度が前記範囲にあることにより、高画質な画像が短時間で得られる。
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体10に記録されたインク組成物を乾燥後、冷却ファン6により記録媒体10上のインク組成物を冷却することにより、記録媒体10上に密着性よくインク塗膜を形成することができる。
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体10に対してインク組成物や処理液が付着される前に、記録媒体10を予め加熱するプレヒーター7を備えていてもよい。さらに、インクジェット記録装置1は、記録媒体10に付着したインク組成物や処理液がより効率的に乾燥するように通気ファン8を備えていてもよい。
キャリッジ9の下方には、記録媒体10が搬送されるプラテン11と、キャリッジ9を記録媒体10に対して相対的に移動させるキャリッジ移動機構13と、記録媒体10を副走査軸方向に搬送するローラーである搬送手段14を備える。キャリッジ移動機構13は、インクジェットヘッド2を主走査軸方向に走査する走査手段である。キャリッジ移動機構13と搬送手段14の動作は、制御部CONTにより制御される。
1.2.インクジェットヘッド
上記のように、本実施形態において、インクジェットヘッド2は、キャリッジ9の移動によって主走査軸方向に移動しながら、記録媒体10上にインク組成物や処理液を吐出して付着させる。このように、本実施形態では、インクジェットヘッド2を記録媒体10に対して相対的に主走査軸方向に複数回走査して記録する。
本実施形態において、インクジェットヘッド2にインク組成物や処理液を供給するカートリッジ12は、独立した複数のカートリッジからなる。カートリッジ12は、インクジェットヘッド2を搭載したキャリッジ9に対して着脱可能に装着される。複数のカートリッジのそれぞれには異なる種類のインク組成物や処理液が充填されており、カートリッジ12から各ノズルにインク組成物や処理液が供給される。なお、本実施形態においては、カートリッジ12はキャリッジ9に装着される例を示しているが、これに限定されず、キャリッジ9以外の場所に設けられ、供給管(図示せず)によって各ノズルに供給される形態でも良い。
図3に、インクジェットヘッド2におけるノズル面2aのノズル群の配列の一例を模式的に示す。図3において、MSは主走査軸、すなわち主走査軸方向を、SSは副走査軸、すなわち、副走査軸方向を示す。インクジェットヘッド2は、インク組成物や処理液を吐出する複数のノズルを含むノズル面2aを有する。図3に示す例では、インクジェットヘッド2のノズル面2aは、インクが充填されるノズルが副走査軸方向に複数配列され、記録に用い記録時にインクを吐出する複数のインク吐出ノズル群15と、処理液が充填されるノズルが副走査軸方向に複数配列され、記録に用い記録時に処理液を吐出する処理液吐出ノズル群16を有する。図3において、処理液吐出ノズル群16は2列であるが、片側の端部にのみ、またはそれ以外の領域に1列のみあっても良い。また、処理液吐出ノズル群16は、ノズル面2aの左右の端部にそれぞれ1列または2列以上あっても良い。
本実施形態において、図3に示すノズル群の配列の一例では、処理液吐出ノズル群16はインク吐出ノズル群15と副走査軸方向において互いに位置が重なる領域を有する。ここで、重なる領域とは、図3においてXで示す副走査軸方向における長さを指す。図3に示す例では、重なる領域Xは処理液吐出ノズル群16の副走査軸方向における長さの100%であり、インク吐出ノズル群15の副走査軸方向における長さの100%である。この例では、重なる領域Xが各ノズル群の副走査軸方向における長さの100%であるため、処理液とインクとを1走査で同時に付着させることができ、記録速度が速くなる。
なお、図3に示すノズル群の配列の一例において、処理液吐出ノズル群16の副走査軸方向の半分より上流側のみを使用し、インク吐出ノズル群15の副走査軸方向の半分より下流側のみを使用した場合、処理液吐出ノズル群16とインク吐出ノズル群15の重なる領域Xは0%であり、実際に使用する処理液吐出ノズル群とインク吐出ノズル群の重なる領域は存在しなくなる。この場合、1の主走査で先に処理液のみを記録媒体10に付着させ、その主走査の後の主走査で同じ位置にインクを付着させるため、画質は向上する。しかし、インクジェットヘッド2のノズルの半分しか使わないため、記録速度は遅くなる。本実施形態では、そのような場合は考慮しない。本実施形態では、実際に使用する処理液吐出ノズル群とインク吐出ノズル群の重なる領域が存在し、重なる領域Xは処理液吐出ノズル群16の副走査軸方向における長さの%超であり、インク吐出ノズル群15の副走査軸方向における長さの0%超である。
図3に示すように、インク吐出ノズル群15は、副走査の1回の長さ、すなわち図2において矢印10cで示す幅の長さ以下の長さである2箇所の第1インクノズル部15bと第2インクノズル部15aとを備える。同様に、処理液吐出ノズル群16は、副走査の1回の長さ以下の長さである2箇所の第1処理液ノズル部16bと第2処理液ノズル部16aとを備え、第1処理液ノズル部16bは、主走査軸MSに投影したときに副走査軸SSに沿って第1インクノズル部15bと重なり、第2処理液ノズル部16aは主走査軸に投影したときに副走査軸に沿って第2インクノズル部15aと重なる。
図3に示す例では、第2インクノズル部15aは、インク吐出ノズル群15全体の中央部分の2分の1の長さであるA1領域の中に位置し、A1領域の一部分である。第1インクノズル部15bは、A1領域に隣接してその両側にあるB1領域、B2領域の中に位置し、B1領域、B2領域の少なくとも一部分である。
本実施形態では、図3の例に限らず、第1インクノズル部15bと第2インクノズル部15aが、インク吐出ノズル群15においてそれぞれ1箇所であっても良いが、それぞれ2箇所以上設けられても良い。また、第1処理液ノズル部16bと第2処理液ノズル部16aが、処理液吐出ノズル群16においてそれぞれ1箇所であっても良いが、それぞれ2箇所以上設けられても良い。また、第1インクノズル部15bと第2インクノズル部15aは、それぞれノズル数が10個以上100個以下であることが好ましい。同様に、第1処理液ノズル部16bと第2処理液ノズル部16aは、それぞれノズル数が10個以上100個以下であることが好ましい。さらには、各ノズル部のノズル数は、それぞれ、より好ましくは、10個以上50個以下である。
第1インクノズル部15bと第2インクノズル部15aは、それぞれSS方向の長さが、副走査の1回の長さ以下であり、副走査の1回の長さの5%以上70%以下が好ましい。また、第1インクノズル部15bと第2インクノズル部15aは、それぞれノズル数が、副走査の1回の長さに存在するインク吐出ノズル群のノズル数以下であり、副走査の1回の長さに存在するインク吐出ノズル群のノズル数の5%以上70%以下が好ましい。
同様に、第1処理液ノズル部16bと第2処理液ノズル部16aは、それぞれSS方向の長さが、副走査の1回の長さ以下であり、副走査の1回の長さの5%以上70%以下が好ましい。また、第1処理液ノズル部16bと第2処理液ノズル部16aは、それぞれノズル数が、副走査の1回の長さに存在する処理液吐出ノズル群のノズル数以下であり、副走査の1回の長さに存在する処理液吐出ノズル群のノズル数の5%以上70%以下が好ましい。
なお、図3の例では、第1インクノズル部15bと第2処理液ノズル部16aが存在するA1領域は、インク吐出ノズル群15と処理液吐出ノズル群16の各ノズル群全体の2分の1の長さであり、副走査の1回の長さを超える場合がある。この場合、第2インクノズル部15aは、図3のA1領域の、副走査の1回の長さ以下の、所定の一部に着目するものとする。例えば、A1領域に存在するインク吐出ノズル群15のうちの所定の連続するノズル30個を指して第2インクノズル部15aとよぶ。第1インクノズル部15bも同様であり、図3のB1領域またはB2領域の所定の一部に着目するものとする。例えば、ノズル使用率が30%の位置にあるノズルを中心とした、連続する30個のノズルを指して第1インクノズル部15bとよぶ。
ここで、インク吐出ノズル群15と処理液吐出ノズル群16は、それぞれノズルの使用頻度を調整することにより、インクや処理液の吐出量を調整することができる。このノズルの使用頻度をノズル使用率(%)ともよぶ。ノズルの使用率は、インク吐出ノズル群15と処理液吐出ノズル群16における、主走査中に、インクや処理液を吐出している時間が多いノズルとして表しても良いし、インクや処理液を吐出する回数の多いノズルとして表しても良い。
ここで、ノズル使用率についての一例を説明する。例えば、記録媒体に所定の濃度の画像を記録する場合に、ある主走査において、画像の主走査軸方向の一方の端から他方の端まで主走査を行った時に、インクを吐出した回数が最も多いノズルを例えばノズル使用率100%とする。その時に、他のノズルについても、ノズル使用率100%のノズルと比較したときのインクを吐出した回数をカウントして、ノズル使用率を算出する。1回の主走査においてインクを1回も吐出しないノズルのノズル使用率は0%とする。所定の画像の濃度は、例えば、記録に際して記録が行われる最も高濃度の画像の濃度とする。このようにしてノズル使用率を算出する。
後述するように、本実施形態では下記(式1)および(式2)を満たすように設定される。そして、本実施形態では下記(式1)および(式2)を満たすように設定されればよく、上記の各ノズル使用率は限定されるものではない。
第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
なお、第1インクノズル部15bは、インク吐出ノズル群15の端から副走査の1回の長さに相当する領域にあり、第2インクノズル部15aが、インク吐出ノズル群15の端から副走査の1回の長さに相当する領域以外の領域にあることが好ましい。このように、第1インクノズル部15bと第2インクノズル部15aを設定することにより、水系インクと処理液を用いた非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対するインクジェット記録において、画質が向上する。
1.3.インク組成物
次に、本実施形態に係るインクジェット記録方法で用いられる水系インクジェットインクであるインク組成物(以下、「水系インク組成物」、「水系インク」、「インク」ともよぶ。)について説明する。
本実施形態で用いられる水系のインク組成物は、凝集剤を含有する処理液と共に用いられるものであり、水を主成分とする。
ここで、インクジェットインクとは、インクジェット法による記録方法に用いるインク組成物である。「水系」の組成物とは、水を主要な溶媒の1つとする組成物である。インク組成物中の水の含有量は40質量%以上が好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。上限は限られないが例えば98質量%以下が好ましい。インク組成物は、それぞれ、用いる色材の種類が異なる等により色相角が異なること、及びまたは、用いる色材の含有量が異なりインクの色濃度が異なること、以外は、その基本組成は同様のものを例示することができる。
また、本実施形態において、インク組成物は有機溶剤を含んでも含まなくてもよく、インク組成物中の有機溶剤の含有量は、後述する。必要に応じて、色材、樹脂、ワックス、消泡剤、界面活性剤を含むことができる。
以下、本実施形態で用いられるインク組成物に含まれる成分および含まれ得る成分つい説明する。
1.3.1.水
本実施形態において、インク組成物は水を含有する。水は、水系インクジェットインクの主となる媒体であり、乾燥によって蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
水の含有量は、インク組成物の全質量に対して、40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
1.3.2.色材
本実施形態において、インク組成物は色材を含むカラーインクであっても良い。また、複数のカラーインクを使用するものであっても良く、色材を含まないクリアインクであっても良い。
色材としては、染料と顔料のいずれも用いることができる。顔料は、光やガス等に対して退色しにくい性質を有していることから、好ましく用いられる。顔料を用いて記録媒体上に形成された画像は、画質に優れるだけでなく、耐水性、耐ガス性、耐光性等に優れ、保存性が良好となる。この性質は、特にインク低吸収性または非吸収性である非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体上に画像が形成される場合に顕著である。
本実施形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。一方、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等が挙げられる。
本実施形態で使用可能な顔料の具体例のうち、ブラックインクに使用される顔料としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、もしくはチャンネルブラック等(C.I.ピグメントブラック7)、また市販品としてNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA77、MA100、No.2200B等(以上全て商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上全て商品名、デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上全て商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上全て商品名、キャボットジャパン株式会社製)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、及び酸化ジルコニウムの白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂微粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、およびイエロー以外のカラーインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、10、C.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
カラーインクに含まれ得る色材の含有量の下限値は、インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。一方、カラーインクに含まれ得る色材の含有量の上限値は、インク組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。色材の含有量が前記範囲にあることにより、記録媒体上に形成された画像は、耐水性、耐ガス性、耐光性等に優れ、インク保存性も良好となる。
色材が顔料である場合には、顔料分散液の状態で用いることができる。顔料の分散方法は、顔料粒子に分散性を持たせる分散剤を用いることができる。顔料分散液は、顔料及び分散剤の他、必要に応じて溶剤を含んでもよい。溶剤としては、水及びジエチレングリコールなどの親水性溶剤が挙げられる。また、分散剤としては、スチレン−アクリル酸共重合体が挙げられる。特に制限されないが、分散剤の酸価はその分散性の観点から、20mgKOH/g以上が好ましい。
また、本実施形態において、インク組成物としてクリアインクを用いる場合には、クリアインクの色材の含有量は0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、含有量の下限は0質量%でもよい。なお、クリアインクは、記録媒体に着色するために用いるインクではなく、その他の目的で用いるインクである。その他の目的は、記録物の耐擦性などの特性の向上や、記録媒体の光沢度の調整や、カラーインクの定着性、発色性を向上させるためなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、クリアインクは後述する処理液ではなく、凝集剤を含まない。
1.3.3.有機溶剤
本実施形態において、インク組成物は有機溶剤を含有することが好ましい。インク組成物が有機溶剤を含有することにより、記録の際に耐目詰まり性に優れる。また、インク組成物が有機溶剤を含有することにより、記録媒体上に吐出されたインク組成物の乾燥性が良好となり、画質と耐擦性に優れた画像を得ることができる。
インク組成物に用いる有機溶剤としては、水溶性有機溶剤であることが好ましい。水溶性有機溶剤を使用することにより、よりインクの乾燥性が良好となり、画質と耐擦性に優れた画像を得ることができる。
水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカンジオール類、ポリオール類、含窒素溶剤、エステル類、グリコールエーテル類、環状エステル類等が挙げられる。
アルカンジオール類としては、例えば、1,2−アルカンジオール類である、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。アルカンジオール類は、記録媒体に対するインク組成物の濡れ性を高めて均一に濡らす作用や、記録媒体に対する浸透溶剤としての作用に優れている。これらの中でも、特に、1,2−アルカンジオール類は浸透溶剤としての作用に優れており、好ましい。アルカンジオール類としては、好ましくは炭素数5以上のアルカンのジオールが挙げられる。アルカンの炭素数は5〜9であることが好ましく、直鎖型でも分枝型でもよい。
ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。ポリオール類は、保湿剤としての作用に優れている。ポリオール類としては、好ましくは2個以上の水酸基を有する炭素数4以下のアルカン、2個以上の水酸基を有する炭素数4以下のアルカンであって水酸基同士が分子間縮合したものが挙げられ、縮合数は2〜4が好ましい。ここで、ポリオール類とは、分子中に水酸基を2個以上有する化合物であり、本実施形態において、水酸基数は2又は3であることが好ましい。
含窒素溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。含窒素溶剤は、樹脂の良好な溶解剤として作用し、画質や耐擦性に優れた記録物を得たり、インクジェットヘッドやノズルの目詰まりを防止することができる。
含窒素溶剤としては、アルコキシアルキルアミド類も挙げることができ、例えば、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−メトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−メトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−エトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−n−ブトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−n−プロポキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−iso−プロポキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−ジエチルプロピオンアミド、3−tert−ブトキシ−N,N−メチルエチルプロピオンアミド等を例示することができる。
含窒素溶剤としてアミド系溶剤も挙げられる。アミド系溶剤としては、環状アミド系溶剤、非環状アミド系溶剤が上げられ好ましい。環状アミド系溶剤としては上記のピロリドン類などが挙げられる。非環状アミド系溶剤としては上記のアルコキシアルキルアミド類が挙げられる。
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート等のグリコールジエステル類が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。これらは、インク組成物の記録媒体に対する濡れ性等を制御することできる。
また、上記のグリコールエーテル類は、モノエーテルよりもジエーテルの方が、インク中の樹脂を溶解又は膨潤させやすい傾向があり、形成される画像の耐擦性を向上させる点でより好ましい。グリコールエーテル類のインク中の含有量は1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
環状エステル類としては、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、β−ヘキサノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、β−ヘプタノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、δ−ヘプタノラクトン、ε−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−オクタノラクトン、δ−ノナラクトン、ε−ノナラクトン、ε−デカノラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1〜4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して合計で1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上が好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましい。また、有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して合計で40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。さらに25質量%以下であることがより好ましく、23質量%以下であることが特に好ましい。有機溶剤の含有量が前記範囲である場合、インク組成物の耐目詰まり性や画質・耐擦性の点でより優れ、好ましい。
有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の標準沸点は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の標準沸点が前記範囲である場合、インク組成物の耐目詰まり性や画質・耐擦性の点でより優れ、好ましい。
なお、トリエチレングリコールやグリセリン等の標準沸点が280℃超のポリオール系有機溶剤は、保湿剤として機能するため、含有するとインクジェットヘッドの乾燥を抑制して耐目詰まり性に優れる。一方、標準沸点が280℃超のポリオール系有機溶剤は、インク組成物の水分を吸収して、インクジェットヘッド付近のインクを増粘させたり、記録媒体に付着した際にインクの乾燥性が低下する場合がある。このため、本実施形態において、インク組成物は、標準沸点が280℃超のポリオール系有機溶剤の含有量が、インク組成物の全質量に対して、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。この場合には、記録媒体上でのインク組成物の乾燥性が高くなるので、特に非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体への記録に適するものとなり、耐擦性に優れた画像が得られる。さらには、耐擦性に優れた画像が得られる点により、ポリオール類に限らず、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が上記の範囲とすることもより好ましい。
1.3.4.樹脂
本実施形態において、インク組成物は樹脂を含有することが好ましい。樹脂は、インク組成物を固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有する。本実施形態において、樹脂は、インク組成物中に溶解された状態またはインク組成物中に分散された状態のいずれの状態であってもよい。溶解状態の樹脂としては、インクの顔料を分散させる場合に使用する上記の樹脂分散剤や、有機溶剤溶解性または水溶性の樹脂を用いることができる。また、分散状態の樹脂としては、インクの液媒体に難溶あるいは不溶である樹脂を、微粒子状にして分散させて、すなわちエマルジョン状態、あるいはサスペンジョン状態にして、含ませることができる。
本実施形態において用いられる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン樹脂、フッ素樹脂、及び水溶性樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する単量体を組み合わせた共重合体が挙げられる。共重合体としては、特に限定されないが、例えば、スチレンブタジエン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂が挙げられる。また、樹脂としては、これら樹脂を含むポリマーラテックスを用いることができる。例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン樹脂、ウレタン樹脂の微粒子を含むポリマーラテックスが挙げられる。なお、樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
アクリル樹脂は少なくともアクリル系モノマーを単量体として用いて重合して得た単重合体または共重合体である樹脂である。アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。アクリル樹脂が共重合体の場合、他のモノマーとしてビニル系モノマーを用いたアクリル−ビニル樹脂などがあげられ、中でもビニル系モノマーとしてスチレンを用いたスチレンアクリル樹脂などが上げられる。これらの樹脂の中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが入手しやすく、所望の特性を有する樹脂として得やすい点で好ましい。
樹脂の含有量の合計の下限値は、固形分換算でインク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。また、樹脂の含有量の上限は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、記録時の耐目詰まり性を確保すると共に、非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体上においても、画質や耐擦性に優れた画像を形成することができる。
1.3.5.界面活性剤
本実施形態において、インク組成物は界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を含有することが好ましく、これらの中でもアセチレングリコール系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を含有することがより好ましい。インク組成物がアセチレングリコール系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤を含有することにより、インクの動的表面張力を下がり、耐目詰まり性を向上させることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エアープロダクツジャパン株式会社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業株式会社製)、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG014(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、インク組成物の全質量に対して0.1質量%以上1.5質量%以下とすることが好ましい。
1.3.6.ワックス
本実施形態において、インク組成物はワックスを含有してもよい。ワックスとしては、インク組成物中で溶解するもの、又は、エマルションなど微粒子の形態で分散するものが挙げられる。このようなワックスを用いることにより、画質や耐擦性により優れた記録物が得られる傾向にある。特に、記録媒体上のインク塗膜の表面、すなわち、空気とインク塗膜の界面に偏在することによる耐擦性の向上に寄与する傾向がある。このようなワックスとしては、特に制限されないが、例えば、高級脂肪酸と高級1価アルコールまたは2価アルコールとのエステルワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス若しくはポリオレフィンワックス又はこれらの混合物が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンまたはその誘導体から製造したワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、市販されているものを利用することができ、具体的には、ノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を用いることができる。
ワックスの含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。ワックスの含有量が前記範囲にあると、画質や耐擦性が向上し、また、インクの粘度が低下し吐出安定性や目詰まり回復性に優れるため好ましい。
1.3.7.消泡剤
消泡剤としては、特に制限されないが、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤が挙げられる。消泡剤の市販品としては、BYK−011、BYK−012、BYK−017、BYK−018、BYK−019、BYK−020、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−038、BYK−044、BYK−080A、BYK−094、BYK−1610、BYK−1615、BYK−1650、BYK−1730、BYK−1770(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、サーフィノールDF37、DF110D、DF58、DF75、DF220、MD−20、エンバイロジェムAD01(以上全て商品名、日信化学工業社製)が挙げられる。消泡剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
消泡剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.03質量%以上0.7質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0.08質量%以上0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
1.3.8.その他の含有成分
本実施形態において、インク組成物には、その保存安定性およびインクジェットヘッドの吐出安定性を良好に維持するため、また、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、有機溶剤ではない保湿剤、および分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤等の、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
1.3.9.インク組成物の調製方法
本実施形態において、インクは前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.3.10.インク組成物の物性
本実施形態において、インク組成物は画像品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力(静的表面張力)が18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
本実施形態において、インクの20℃における粘度は、インク組成物は画質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.4.処理液
次に、本実施形態に係るインクジェット記録方法で上記のインク組成物と共に用いられる処理液について説明する。
本実施形態において、処理液とはインク組成物の成分を凝集させる、水を含有する組成物であり、水系の処理液が好ましい。好ましくは、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む組成物である。処理液と反応するインクの成分としては、色材や樹脂等が挙げられる。処理液は、上記の色材の含有量が0.2質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、下限は0質量%である。
処理液は記録媒体に着色するために用いる上述のインクではなく、インクと同時に記録媒体へ付着させて用いる補助液である。
インクの付着と処理液の付着を同時に行うとは、同一走査内で記録媒体の所定の領域へ付着させることを意味する。所定の領域は、記録媒体の主走査軸方向に延び、副走査軸方向に所定の幅を有する、上述のバンド領域10b(図2参照)である。つまり、前述のインク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群とを主走査軸に沿って投影したときに、インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群とが、副走査軸に沿って重なる領域を有するような場合である。
処理液は、上述のインク組成物の、色材以外の、含んでもよい成分の含有や、それらの含有量、特性、組成などを、上述のインク組成物と同様のものにすることができ、インク組成物とは独立したものにすることができる。本実施形態では、処理液を用いることで画質に優れる画像の記録ができる。反面、処理液を用いることで、得られる画像の耐擦性や耐目詰まり性が低下する場合がある。
1.4.1.水
本実施形態で用いられる処理液は、水を主溶媒とする水系の組成物である。この水は、処理液を記録媒体に付着させた後、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、処理液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止できるので好適である。処理液に含まれる水の含有量は、処理液の全質量に対して、例えば、40質量%以上とすることができ、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。
1.4.2.凝集剤
本実施形態で用いられる処理液は、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有することが好ましい。処理液が凝集剤を含むことにより、後述するインク付着工程において、凝集剤とインク組成物に含まれる色材や樹脂等が速やかに反応する。そうすると、インク組成物中の色材や樹脂の分散状態が破壊されて凝集し、この凝集物が色材の記録媒体上での流動を阻害するため、記録画像の画質の向上の点で優れたものとなると考えられる。
凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオンポリマー、カチオン性界面活性剤等のカチオン性化合物、有機酸が挙げられる。これらの凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの凝集剤の中でも、インク組成物に含まれる成分との反応性に優れるという点から、多価金属塩、有機酸、カチオンポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の凝集剤を用いることが好ましい。
多価金属塩としては、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な化合物である。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン;Al3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンが挙げられる。陰イオンとしては、Cl、I、Br、SO 2−、ClO3−、NO3−、およびHCOO、CHCOOなどが挙げられる。これらの多価金属塩の中でも、処理液の安定性や凝集剤としての反応性の観点から、カルシウム塩およびマグネシウム塩が好ましい。
有機酸としては、例えば、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で多価金属塩でもあるものは多価金属塩に含めるものとする。
カチオンポリマーとしては、例えば、カチオン性のウレタン樹脂、カチオン性のオレフィン樹脂、カチオン性のアミン系樹脂、カチオン性のアミド系樹脂などが挙げられる。カチオン性のアミン系樹脂はアミノ基を有する樹脂であればよく、アリルアミン樹脂、ポリアミン樹脂、4級アンモニウム塩ポリマー等が挙げられる。ポリアミン樹脂として樹脂の主骨格中にアミノ基を有するものが挙げられる。アリルアミン樹脂としては樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有するものが挙げられる。4級アンモニウム塩ポリマーは構造中に4級アンモニウム塩を有する樹脂が挙げられる。カチオンポリマーの中でも、カチオン性のアミン系樹脂は反応性が優れるだけでなく、入手しやすいため好ましい。
処理液の凝集剤の濃度は、処理液の全質量に対し、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、処理液の凝集剤の濃度は、処理液の全質量に対し、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
1.4.3.有機溶剤
本実施形態で用いられる処理液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、記録媒体に対する処理液の濡れ性を向上させることができる。有機溶剤としては、上述のインク組成物で例示した有機溶剤と同様のものを使用できる。有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、処理液の全質量に対して、例えば、10質量%以上80質量%以下とすることができ、好ましくは15質量%以上70質量%以下である。
有機溶剤の標準沸点は、前述のインク組成物に含有してもよい有機溶剤の標準沸点の好ましい範囲の温度に、インク組成物に含有してもよい有機溶剤の標準沸点とは独立して含有することができる。あるいは、有機溶剤の標準沸点は、180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の標準沸点は、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。
なお、処理液は、有機溶剤として、上述のインク組成物と同様に、標準沸点が280℃超のポリオール系有機溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。前記場合には、処理液の乾燥性が良いため、処理液の乾燥が迅速に行われる。また、記録媒体上でのインク組成物の乾燥性が高くなるので、特に非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体への記録に適するものとなり、耐擦性に優れた画像が得られる。さらには、耐擦性に優れた画像が得られる点により、ポリオール類に限らず、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が上記の範囲とすることもより好ましい。
1.4.4.界面活性剤
本実施形態で用いられる処理液には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を添加することにより、処理液の表面張力を低下させ、記録媒体との濡れ性を向上させることができる。界面活性剤の中でも、例えば、上記のアセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。これらの界面活性剤の具体例については、上述のインク組成物で例示する界面活性剤と同様のものを使用できる。界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、処理液の全質量に対して、0.1質量%以上5.0質量%以下とすることができる。
1.4.5.その他の成分
本実施形態で用いられる処理液には、必要に応じて、上記のようなpH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を添加してもよい。
1.4.6.処理液の調製方法
本実施形態で用いられる処理液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためにろ過を行って、目的の処理液を得ることができる。
1.4.7.処理液の物性
本実施形態で用いられる処理液は、インクジェットヘッドで吐出させる場合には、20℃における表面張力(静的表面張力)は、18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートを処理液で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
本実施形態において、処理液20℃における粘度は、画像品質とインクジェット記録用の処理液としての信頼性とのバランスの観点から、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.5.記録媒体
本実施形態では、水系インクと処理液とを組み合わせて、所定の記録方法で記録するため、非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対して、画質に優れた画像を記録することができる。この記録は、非吸収性または低吸収性の記録媒体10の記録領域10aのうち、副走査の1回の長さに対応するバンド領域10cに、2回以上の主走査によりインク組成物と処理液を付着して行う。
非吸収性記録媒体としては、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない、すなわち、インク吸収層を形成していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
低吸収性記録媒体としては、例えば、表面にインクを受容するための塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、親水性ポリマーが塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。
ここで、本明細書において「非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
これらの記録媒体は、半透明記録媒体や、透明記録媒体であってもよい。また、エンボスメディア等の、表面に凹凸を有する非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対しても、好適に用いることができる。
2.インクジェット記録方法
本実施形態において、インクジェット記録方法としては、上述のインク組成物と処理液を用い、複数回の主走査により記録を行うシリアル式の記録方法である。詳細には、本実施形態に係るインクジェット記録方法において、記録は、インク吐出ノズル群15と処理液吐出ノズル群16とを備えるインクジェットヘッド2を主走査軸MSに沿って移動させながら、インク組成物と処理液とを吐出する主走査と、主走査軸に交差する副走査軸SSに沿って記録媒体10を移動させる副走査と、を行い、副走査の1回の長さが、インク吐出ノズル群15の副走査軸方向の長さより短く、記録媒体10の記録領域10aのうち、副走査の1回の長さに対応するバンド領域10bに、2回以上の主走査によりインク組成物と処理液の付着を行う。
シリアル式の記録方法の場合において、インク組成物の主走査数とは、記録媒体10の記録領域10aの所定の領域、例えば、上述のバンド領域10bのある一点に対して、インク吐出ノズル群15が対向して通過する主走査の回数をいう。例えば、図3のインク吐出ノズル群15の所定のノズル群に充填し、このノズル群を記録に用いる場合に、1回の副走査の長さが該ノズル群の副走査軸方向の長さの2分の1の長さだった場合、該インクの主走査数は2である。主走査数は、1回の副走査の長さを短くすることで数を多くすることができ、該長さを長くすることで数を少なくすることができる。
主走査数はパス数とも呼ぶ。主走査数は、多い方が付着させる組成物の合計の付着量を多くできるため好ましい。また、インク組成物を複数回の主走査で分けて付着させることにより乾燥性及び画質が向上するため、主走査数は多い方が好ましい。一方、主走査数が少ない場合、記録速度が速くなるため好ましい。なお、本実施形態において、主走査数は、上記のインク吐出ノズル群15を実際に記録に用いる吐出ノズル群として考えた場合の主走査数である。主走査数は、2以上25以下が好ましく、3以上20以下がより好ましく、4以上16以下がさらに好ましい。
本実施形態において、インクジェット記録方法は、上記の主走査により記録媒体10にインク組成物の付着を行うインク付着工程と、上記の主走査により記録媒体10に処理液の付着を行う処理液付着工程を有し、必要に応じて加熱工程(一次加熱工程)と二次加熱工程を有する。
2.1.処理液付着工程
処理液付着工程は、インク組成物と反応する上述の処理液を記録媒体10へ付着させる工程である。本実施形態では処理液を用いて記録し、更には下記(式1)および(式2)を満たすことにより、インク組成物を凝集させてブリード等の発生を抑制し、画質に優れた画像を得ることができる。
本実施形態において、処理液付着工程は、インク組成物の付着と同時に行う。「同時である」とは、前述のように、記録媒体10の所定の領域、例えばバンド領域10bに対して同一の主走査で処理液を付着させることをいう。なお、「同時ではない」とは、記録媒体の所定の領域へ、主走査でインク組成物を付着させ、該領域へ他の主走査で処理液を付着させることをいう。本実施形態では、インク組成物と処理液を同時に付着させる場合に、下記の(式1)および(式2)を満たすことにより、不均等なパスで記録することに由来するバンディングムラや凝集ムラを抑制し、画質に優れた画像を得ることができる。
すなわち、本実施形態において、ある主走査において、第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす。
第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
このように、本実施形態では、ある主走査でインクの吐出量の低いインクノズルと横並びする位置にある処理液ノズルは、吐出量の高いインクノズルと横並びする位置にある処理液ノズルと比べて、インクノズルの吐出量に対する処理液ノズルの吐出量を高くする。このようにインクと処理液の吐出量を設定することで、画質に優れた画像を得ることができる。
ここで、ある主走査における吐出量は、記録媒体における単位面積当たりに付着するインク組成物又は処理液の質量で示し、単位は、例えば、mg/inchで示す。すなわち、1回の主走査で記録媒体の単位面積あたりに付着させるべく吐出した処理液の質量である。複数個のノズルからなるノズル部の吐出量を表す場合には、そのノズル部の平均の吐出量である。
処理液の吐出量や記録密度はインク組成物に比べて少ない場合があり、処理液の吐出量が少なすぎると乾燥が進み凝集剤が析出し凝集力が低下する場合がある。また、記録媒体上での処理液とインクとの接触確率が極端に下がることで、隣接インクドットとでインクドットが寄り集まって凝集ムラが発生する場合がある。
そこで、吐出量が第2インク吐出部よりも少ない第1インク吐出部は、第1インクノズル部のインクの吐出量に対する第1処理液ノズル部の処理液の吐出量を、第2インクノズル部のインクの吐出量に対する第2処理液ノズル部の処理液の吐出量よりも多くする。こうすることで、吐出量が少ない第1インク吐出部でも、記録媒体上の、ある主走査で記録する領域においても、ある主走査における、インクドットと処理液ドットとの接触確率が高くなり、凝集ムラの発生を防止することができる。
また、画像内で面内色差悪化が見られる場合がある。例えば、記録媒体10の記録領域10aの主走査方向における端部では主走査によって印字された後、直ぐに副走査が行われ、次いで主走査により印字される。この際、重なる印字領域では乾燥時間が殆どないが、中央部では各走査後の乾燥時間があり、処理液及びインクの乾燥性に差が生じる。これにより、複数色インクを用いて記録する場合、混色度合い及び凝集の差により色差が生じることがある。
本実施形態では、処理液の吐出量を上記(式1)および(式2)を満たすように設定することにより、処理液とインクとの接触確率を確保し、画質に優れた画像を得ることができる。また、面内色差低減の点においても、上記のように設定することが好ましい。さらには、耐擦性に優れた画像を得ることができ、好ましい。
一方、処理液の吐出量が多すぎると記録媒体上の液量が多くなり乾燥性が悪化し、耐擦性が低下する可能性がある。また、多量の処理液中に少量のインクが滴下されることによって過凝集が起こり、ドットが広がらないためにピンホールが発生して優れた画質が得られにくくなる。そこで、後述するように、吐出量等を所定の範囲とすることにより、画質を確保する。
本実施形態において、ある主走査の、処理液の吐出量は、(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)が、1超であり、1.3以上4以下が好ましく、1.5以上3以下がより好ましく、2以上2.5以下がさらに好ましい。
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)は、0.1以上0.5以下が好ましい。
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は、0.1以上2以下が好ましく、0.3以上1以下がより好ましく、0.4以上0.8以下がさら好ましい。
例えば、本実施形態において、処理液の液滴当たりの吐出量は4ng以上であることが好ましく、10ng以上であることが好ましく、14ng以上であることが好ましい。また、処理液の液滴当たりの吐出量は25ng以下であることが好ましく、20ng以下であることが好ましく、18ng以下であることが好ましい。処理液の吐出量を前記範囲に設定することにより、処理液とインクとの接触確率をより確保し、画質により優れた画像を得ることができる。さらには、耐擦性に優れた画像を得ることができる。
本実施形態において、記録媒体の記録を行う領域において、処理液の合計の吐出量が、インク組成物の吐出量の10質量%以上である領域を有することが好ましく、15質量%以上である領域を有することがより好ましく、20質量%以上である領域を有することがさらに好ましい。また、処理液の合計の吐出量が、インク組成物の吐出量の50質量%以下である領域を有することが好ましく、40質量%以下である領域を有することがより好ましく、35質量%以下である領域を有することがさらに好ましい。インク吐出量に対する処理液吐出量が前記範囲にあることにより、非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対して、より良好な画質を得ることができ、更には得られた画像の耐擦性低下を防止することができる。
ここで、インク吐出量に対する処理液吐出量が所定の値であるとは、記録媒体の、インクと処理液とを付着させる付着領域において、インク付着量に対する処理液付着量が所定の値である領域を少なくとも有することを意味する。好ましくは、付着領域のうちのインクの付着量が最大である付着領域において、インク付着量に対する処理液付着量が上記の範囲であることが好ましい。または、付着領域のうちのインク付着量に対する処理液付着量が最大の付着領域において、インク付着量に対する処理液付着量が上記の範囲であることが好ましい。
なお、処理液ドットの記録密度は、300dpi×300dpi以上が好ましく、600dpi×600dpi以上が好ましく、720dpi×720dpi以上であることが好ましい。上記の処理液の付着量において、記録密度が上記範囲以上であることにより、インク組成物と処理液の濡れ広がりを調整し、非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対して、より良好な画質を得ることができ、更には得られた画像の耐擦性低下を防止することができる。
なお、処理液付着工程の前に図1に示すプレヒーター7などの加熱機構により、または処理液付着工程の際に、図1に示す加熱機構により記録媒体10が加熱されていることが好ましい。加熱された記録媒体10上に処理液を付着させることにより、記録媒体10上に吐出された処理液及びインクが記録媒体10上で塗れ広がりやすくなり、処理液及びインクを均一塗布することができる。このため、インクと処理液が十分に反応し、優れた画質が得られるようになる。また、処理液及びインクは記録媒体10上で水分の蒸発が進むため、流動性が低下し、ムラなどの画質低下を抑制することができる。
ここで、処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度は、45℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、38℃以下であることがさらに好ましい。また、処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度の下限値は、20℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましい。処理液を付着させる際の記録媒体10の表面温度が前記範囲にある場合には、処理液を記録媒体10に均一に塗布することができ、耐擦性や画質を向上させることができる。また、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑えることができる。本実施形態では、インクと処理液とを同時に付着させるため、インクを付着させる際の記録媒体10の表面温度も、上記の範囲にすることが好ましい。
2.2.インク付着工程
インク付着工程は、上述のインク組成物をインクジェットヘッド2から吐出して非吸収性または低吸収性の記録媒体10に吐出して付着させる工程である。詳細には、記録媒体10の記録領域10aのうち、副走査の1回の長さに対応するバンド領域10bに、2回以上の主走査によりインク組成物の付着を行う工程である。
本実施形態において、インク付着工程は、ある主走査において、前述の(式1)および(式2)を満たす。
本実施形態では、上記(式1)を満たすように記録するため、2回以上の主走査で記録媒体に対してインクの付着量が不均等に付着させることになる。このように、記録媒体に対してインクを不均等に付着させる場合、ある場所に付着させるインク滴のドット発生率(「ドット密度」ともよぶ)が高い主走査と、低い主走査がある。また、ノズル群を用いて行うある主走査において、ノズル群中に、インク滴のドット発生率の高いノズル部と低いノズル部が存在する。ある主走査でインク滴のドット発生率の高いノズル部、すなわち第2インクノズル部15aによりインク滴を付着させた領域には、別の主走査ではドット発生率が低いノズル部、すなわち第1インクノズル部15bでインク滴を付着させることで、最終的な画像のインク付着量は、記録すべき画像に応じた付着量にできる。
こうすることで、例えば、第1インクノズル部15bでドット発生率を低くしてインクを付着させるため、第1インクノズル部15bが、第2インクノズル部15aと比べて、インク滴あたりの吐出質量の精度や、インク滴の着弾位置精度が劣るものであったとしても、画像全体へのこれらの影響を抑制して、これらによる画素低下を抑えることができる。
例えば、メカ的な様々な要因、例えば、副走査精度ばらつきや印字精度ばらつき等により、記録した領域に、画像のバンディングムラ等が生じる場合がある。特に、図3の各ノズル群のうち、SS軸方向の上端に近い部分や下端に近い部分は、SS軸方向の中央に近い部分と比べて、バンディングムラ等が生じやすい場合がある。メカ的な様々な要因としては、例えば、ヘッドをキャリッジに設置した際に、ヘッドが図3のMS軸を中心に回転して傾いて設置されたり、図3の図の手前方向へ延びる軸に対して時計方向または半時計方向に回転して傾いて設置された場合が挙げられる。
ノズル群のうち、SS軸方向の上端に近い部分や下端に近い部分は、SS軸方向の中央に近い部分と比べて、インクを吐出させるための圧力室においてインク吐出の際に生じる圧力の大きさの精度が劣ることがある。その場合、SS軸方向の上端に近い部分や下端に近い部分は、インク滴当たりの吐出量の精度やインク滴の着弾位置精度が低下する。
ノズル群のうち、SS軸方向の上端に近い部分や下端に近い部分から吐出するインク滴は、SS軸方向の中央に近い部分から吐出するインク滴と比べて風の影響を受けて着弾位置ずれが大きくなりやすい。
このような場合に、SS軸方向の上端に近い部分や下端に近い部分に属する第1インクノズル群のある主走査における吐出量を、中央に近い部分に属する第2インクノズル群のある主走査における吐出量よりも少なくする。こうすることで、ある主走査における第1インクノズル群の吐出量と第2インクノズル群の吐出量を同じにする場合と比べて、バンディングムラを低減して画質を向上させることができる。
メカ的な要因による、インク滴当たりの吐出量の精度やインク滴の着弾位置精度の低下は、上記のものに限らない。よって、第1インクノズル群と第2インクノズル群の位置の関係は上記のものに限られない。例えば、ノズル群のうち、SS軸方向の中央に近い部分が、インク滴当たりの吐出量の精度やインク滴の着弾位置精度が低下する場合もある。例えば、ノズル群の中央に近い部分は、ヘッドの駆動により発生した熱が逃げにくいためヘッドの温度が高くなり、インク滴の吐出量の精度が低下する場合がある。このような場合は、SS軸方向の中央に近い部分に第1インクノズル群を設け、第1インクノズル部よりも中央から離れた部分に第2インクノズル部を設けるとよい。
第1インクノズル群と第2インクノズル群を設ける理由は、メカ的な要因に限らない。例えば、吐出量の少ない第1インクノズル群と、吐出量の多い第2インクノズル群とを設けることで、より画質に優れ、かつ、記録速度も比較的高く、画質と記録速度のバランスに優れた画像の記録が行える。
本実施形態では、インク吐出ノズル群15と処理液吐出ノズル群16とが横並びになって同時打ちする記録方法において、ある主走査において、あるインクノズルの吐出量に応じて処理液ノズルの吐出量も調整し、記録媒体に対してインクの付着量を不均等に付着させる。本実施形態では、上記(式1)および(式2)を満たすような処理液ノズルのドット発生率にすることにより、第1インクノズル部においても処理液の液滴とが反応しやすくなり、バンディングムラ等が抑制されて画質が向上する。
本実施形態において、ある主走査において、第2インクノズル部吐出量が、インク吐出ノズル群15において吐出量が最大であって、第1インクノズル部吐出量が第2インクノズル部吐出量の30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。ここで、吐出量が最大とは、インク吐出ノズル群15を、第2インクノズル部15aのノズル数程度のノズル数のノズル部に分けて、ノズル部ごとの吐出量に着目したときに、第2インクノズル部15aの吐出量が、最も多くなっていることをいう。例えば、第2インクノズル部15aのノズル数が30個の場合は、インク吐出ノズル群15を30個ずつのノズルのノズル部に分けていきノズル部ごとの吐出量に着目する。ただし、ノズルが残ってしまう場合は、30個未満のノズル部として扱う。
また、本実施形態において、(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は、1.5以上30以下であることが好ましく、1.8以上2.5以下であることがより好ましく、1.8以上2.3以下であることがより好ましく、2.0以上2.2以下であることがさらに好ましい。前記範囲にあることにより、より画質が向上する。
さらに、本実施形態において、(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)は、0.1以上0.5以下であることが好ましく、0.2以上0.4以下であることがより好ましい。前記範囲にあることにより、より画質が向上する。
(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は、0.1以上1.0以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましく、0.5以上0.7以下がさらに好ましい。前記範囲にあることにより、より画質が向上する。
本実施形態において、第1インクノズル部15bの一方の端から他方の端に向かって吐出量が漸減していることが好ましい。このように第1インクノズル部15bのインク吐出量を調整することで、より画質が向上する。
また、本実施形態において、バンド領域10bに対してインク組成物を吐出する主走査の回数よりも、処理液を吐出する主走査の回数の方が少なく、バンド領域10bに対して、インク組成物を吐出する主走査よりも、処理液を吐出する主走査の方が早く完了することが好ましい。このように、処理液の付着をインクの付着よりも先に行うことにより、主走査の間に処理液が乾燥するため、より画質が向上する。
インク吐出ノズル群15の吐出量は、記録媒体10に所定の単一濃度画像を記録する場合におけるある主走査の付着量であることが好ましい。すなわち、単一濃度のベタ画像を記録させたときに、インク吐出ノズル群15の吐出量は、記録媒体10に所定の単一濃度画像を記録する場合におけるある主走査の付着量であることが好ましい。
図3において、処理液吐出ノズル群を図のMS軸の方向の左右の両端に配置し、その間にインク吐出ノズル群を配置するか、または、処理液吐出ノズル群を図3のMS軸の方向の中央に配置し、その左右の両側にインク吐出ノズル群を配置することが好ましい。こうすることで、第1方向へ行う第1の主走査と、第2方向へ行う第2の主走査とで、処理液の付着とインクの付着の順番を揃えることができる。この場合、処理液の付着とインクの付着の順番が常に同じであるため、色着順による発色の差が生じることなく、色バンディングの発生が抑制され、更に画質が向上する。ここで、図3のMS軸の方向の左右で各インクが対称となるように、必要に応じて同色で複数のインク吐出ノズル群を配置した場合、インク間の付着の順番も第1の主走査と第2の主走査とで順番が揃い、より好ましい。
記録における、記録媒体10への単位面積当たりのインク組成物の最大付着量は、上記を満たしていれば特に限定されないが、好ましくは5mg/inch以上であり、より好ましくは7mg/inch以上であり、さらに好ましくは10mg/inch以上である。記録媒体の単位面積当たりインク組成物の付着量の上限は、例えば、20mg/inch以下が好ましく、好ましくは18mg/inch以下であり、特に好ましくは16mg/inch以下である。なお、インク組成物の最大付着量は、付着させる全てのインク組成物の付着量の合計である。
インク付着工程は、上記のようにインク付着工程の前またはインク付着工程と同時に、記録媒体10を加熱する加熱工程を備えるものであってもよく、加熱工程により加熱された記録媒体10へ主走査を行うことが好ましい。加熱工程は、IRヒーター3や、プラテンヒーター4や、ファンによる温風の記録媒体への送風であることが好ましい。加熱工程により、記録媒体10上でインクを迅速に乾燥させることができ、ブリードが抑制される。また、画質、更には耐擦性に優れた画像を形成することができる。なお、記録媒体10にインクが付着する時のノズル面の温度は、インクジェットヘッド2自体などの記録装置の発熱等により昇温したものであっても良いし、上記の加熱工程の熱の影響を受けたものであってもよい。
2.3.二次加熱工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記インク付着工程の後に、図1に示す加熱ヒーター5によりインク組成物が付着した記録媒体10を加熱する二次加熱工程(「後加熱工程」ともいう。)を有していてもよい。これにより、記録媒体10上のインク組成物に含まれる樹脂等が溶融してインク塗膜が形成され、記録媒体10上においてインク塗膜が強固に定着して造膜性に優れたものとなり、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
加熱ヒーター5による記録媒体10の表面温度の上限は120℃以下であることが好ましく、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、記録媒体10の表面温度の下限は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがより好ましい。温度が前記範囲にあることにより、確実にインク塗膜が形成されるため、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
なお、二次加熱工程の後に、図1に示す冷却ファン6により、記録媒体10上のインク組成物を冷却する工程を有していてもよい。
2.4.その他の工程
本実施形態に係る記録方法は、インクを吐出して記録するための圧力発生手段以外の手段により、つまり、インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構ではない他の機構により、インク組成物や処理液を循環させる工程や、排出させるクリーニング工程を備えていてもよい。
インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構としては、圧力室(図示せず)に備えられてインクに圧力を付与するピエゾ素子やヒーター素子が挙げられる。このクリーニング工程は、インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してノズルから、インク組成物や処理液を排出させる工程としてもよい。この工程を備えることで、インクジェットヘッド2の内壁に樹脂が溶着する懸念がある場合にも、これを抑制し、吐出安定性を一層優れたものとすることができる。
なお、上述の他の機構としては、負圧の付与や、インクジェットヘッドの上流から正圧を付与すること、等の圧力を付与する機構が挙げられる。これらは、インクジェットヘッド自身の機能によるインク排出、つまりフラッシングではない。つまり、記録に際して、インクジェットヘッドからインクを吐出させる機能を用いての排出ではない。
以上示したように、本実施形態に係るインクジェット記録方法では、水系インクと処理液を用いた非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対する記録において、上記のように(式1)および(式2)を満たすことにより、画質が向上する。
3.実施例
以下、本発明の実施形態を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
3.1.処理液およびインクの調製
表1、2に記載の配合割合になるように各成分をビーズミルで混合攪拌し、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過してインク1〜12および処理液1〜4を得た。なお、顔料は、予め、顔料に対し50質量%の水溶性のスチレンアクリル分散剤樹脂を用いて水に分散した顔料分散液にしてから、用いた。表1、2中の数値は全て質量%を示し、水はインクと処理液の全質量が100質量%となるように添加した。また、表1に記載の顔料、樹脂およびワックスと表2に記載のカチオン樹脂については、固形分換算した値を示す。
表1、2において記載した物質の詳細は、以下の通りである。
ワックスエマルジョン:商品名「AQUACER507」、水系用変性パラフィンワックスエマルション、ビックケミー・ジャパン株式会社製
界面活性剤1:シリコーン系界面活性剤、商品名「BYK−348」、ビッグケミージャパン株式会社製
界面活性剤2:フッ素系界面活性剤、商品名「Capstone FS−30(25%水溶液)」、DuPont社製
界面活性剤3:シリコーン系界面活性剤、商品名「BYK−333」、ビッグケミージャパン株式会社製
消泡剤:アセチレンジオール系界面活性剤、商品名「サーフィノール DF110D」、日信化学工業株式会社製
カチオン樹脂:アミン・エピクロルヒドリン縮合型ポリマー、商品名「カチオマスターPD−7」、四日市合成株式会社製
スチレンアクリル樹脂エマルジョンは、スチレン/アクリル酸/メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレートが75/0.5/0.5/14.5/10の比率の共重合体のモノマー全量を100質量部として、乳化重合用界面活性剤である日本乳化剤株式会社製、商品名「ニューコールNT−30」を2質量部の割合で添加して乳化重合した。
3.2.記録方法
表1、2に記載のインクと処理液を用いて、表3〜5に記載の条件で記録した。装置として、セイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンター、商品名「SC−S80650」を改造して、図1に示す加熱ヒーター4を温度調整可能とした。インクジェットヘッド2の各ノズル列は図3のように10列を横並び配置した。各ノズル列、すなわちノズル群は、ノズル600個、ノズル密度600npiとした。
各ノズル列には、表3の配列例1〜3のようにインクまたは処理液を充填した。図3の左端から右端へ向かい、ノズル列1→10とした。プラテンヒーター4の温度を調整して、記録中にインクジェットヘッド2と対向する場所の記録媒体10の表面温度が表5に記載の温度になるようにした。表4に記載の記録方法ごとに第1ノズル部、第2ノズル部を設定し、吐出量を図4〜9及び下記のように設定した。記録は、プリンターにセットした記録媒体に、ヘッドが搭載されたキャリッジによる主走査と紙送りである副走査を交互に行い、4パス記録で双方向記録とした。つまり、副走査の長さがノズル列の長さの4分の1であり、バンド領域10bに4回の主走査(パス)でインクと処理液を付着した。
図4〜図9は、インクジェット記録における処理液とインクの吐出量の関係を概念的に説明する図であり、各ノズル番号に対応するノズルの使用率を示している。図3ではノズル列は10列であるが、図4〜図9の右側では、10列のうちのインク用のインクノズル列1列と処理液用の処理液ノズル列1列のみを代表して示している。残りのインクノズル列、処理液ノズル列も同様である。各ノズル列は、ノズル数600個、ノズル密度600npiとした。
下記例では、4パスともノズル列の全ての領域を使用している。例えば、記録方法1を示す図4では、処理液ノズル列およびインクノズル列の色を付けている部分が使用しているノズル部であり、ノズル使用率にあわせて濃淡がついている。一方、白い部分は使用していない、すなわちノズルの使用率が0%の領域を示す。図4のインクノズル列では、下端に近い方、上端に近い方は色が徐々に薄くなっているが真白ではない。両端部のみ真白であり、ここではノズルの使用率が0%である。図4左側のグラフが右側のノズルの使用率に対応する。使用率100%ではノズルをフルに使い、0%では全く使っていない。例えば、インクノズル列の1番ノズルと600番ノズルは、使用率0%で使用していない。
記録画像の最終的な記録解像度は、主走査方向が1200dpiで、副走査方向は600dpi以上とし、インク付着量(mg/inch)を表5中の値とした。
インク付着量に関し、例えば図4に示す記録方法1では、例えば、あるバンド領域に、1パス目をB2領域、2パス目をA1領域の下半分、3パス目をA1領域の上半分、4パス目をB1領域、で記録した場合とする。2、3パス目は、1パス当たりの付着量を10/3(mg/inch)とし、B1およびB2領域を用いた1、4パス目は、2パス分で10/3(mg/inch)の付着量とする。4パス合計で画像の最終的な付着量が10(mg/inch)となる。
各記録方法において、A領域とB領域のいずれか一方に属する30個のノズル部を第2インクノズル部とし、他方に属する30個のノズル部を第1インクノズル部とする。詳細は下記に記す。なお、第1処理液ノズル部、第2処理液ノズル部は、それぞれ、第1インクノズル部、第2インクノズル部と、同じノズル番号の処理液ノズルとした。
記録媒体としては、下記の記録媒体1〜3を用いた、ここで、吸液量は上記のブリストー法を用いて測定した。ここで、試験液として水/1,2−ヘキサンジオール=95/5を使用し、試験液の吸液量が、接触開始から30msecの最大吸液量が30mL/m以下を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体とした。
記録媒体1:商品名「IJ180Cv3−10」、吸液量0.77mL/m、塩ビフィルム、3Mジャパン株式会社製
記録媒体2:商品名「3684 TriSolv Poster Paper Prime 130 Glossy」、吸液量1.85mL/m、コート紙、SiHL社製
記録媒体3:商品名「マイペイパー」、吸液量38.60mL/m、普通紙、株式会社リコー製
記録方法1;図4
インク付着量100%〜50%まで処理液付着量比25%。
インク付着量50%〜10%まで処理液付着量を25%〜10%までリニアに減らす。
インク付着量30%での処理液付着量は15.6%である。
インク付着10%以下は、処理液10%を維持した。
B2領域のインクノズル使用率30%のノズルを中心とする30個のノズルを第1インクノズル部とし、A1領域の30個のノズルを第2インクノズル部とした。
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は2.1倍。
記録方法2;図5
B1、B2領域は、インク100%、処理液25%。
A2領域は、インク30%、処理液15%。
A1領域は、インク70%、処理液17.5%。
A2領域のインクノズル使用率30%の30個のノズルを第1インクノズル部とし、B2領域の30個のノズルを第2インクノズル部とした。
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は2倍。
記録方法3;図6
インク付着量100%〜25%まで処理液付着量比25%。
インク付着量25%以下は、処理液付着量を25%〜15%までリニアに減らす。
B3領域のインクノズル使用率48%のノズルを中心とする30個のノズルを第1インクノズル部とし、A2領域の30個のノズルを第2インクノズル部とした。
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は2.1倍
記録方法4;図7
B2領域のインクノズル使用率30%のノズルを中心とする30個のノズルを第1インクノズル部とし、A1領域の30個のノズルを第2インクノズル部とした。
第1インクノズル部と第2インクノズル部とで、処理液付着量/インク付着量が同じである。
記録方法5;図示せず
記録方法2において、A1、A2領域の処理液付着量比をB1領域の付着量比(25%)と同じにした。
ノズル部は記録方法2と同じに設定した。
第1インクノズル部と第2インクノズル部とで、処理液付着量/インク付着量が同じである。
記録方法6;図示せず
記録方法1において、記録方法処理液のB1、B2領域の付着量を記録方法1よりも減らした。
すなわち、
インク付着量100%記録方法1と同じ。
インク付着量100%〜10%まで処理液付着量をリニアに減らす。
インク付着量30%のとき処理液付着量を12.9%。
インク付着量10%以下は10%の時の処理液付着量を維持。
ノズル部は記録方法1と同じに設定した。
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は1.7倍
記録方法7;図示せず
記録方法1において処理液のB1、B2領域の付着量を記録方法1よりも増やした
すなわち、
インク付着量100%〜50%まで記録方法1と同じ。
インク付着量50%〜10%まで処理液付着量を25%〜15%までリニアに減らす。
インク付着量30%のとき処理液付着量を20%。
インク付着量10%以下は10%の時の処理液付着量を維持。
ノズル部は記録方法1と同じに設定した。
(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)は2.7倍
記録方法8;図8
記録方法1において処理液ノズルの下流側のB1領域を使用せず、処理液は3パス記録にした。4パス目で付着させるはずだった処理液を1〜3パス目に分配した。
B2領域のインクノズル使用率48%のノズルを中心とする30個のノズルを第1インクノズル部とし、A1領域のノズル使用率100%の30個のノズルを第2インクノズル部とした。
第1インクノズル部と第2インクノズル部の、処理液とインクの付着量比は、記録方法1と同じにした。
記録方法9;図9
A領域とB領域とでインクおよび処理液の付着量を一定にした。
B2領域の30個のノズルを第1インクノズル部とし、A2領域の30個のノズルを第2インクノズル部とした。
3.3.評価方法
3.3.1.濃淡バンディングの有無による画質の評価
上記の記録方法により赤、青、緑ベタ画像(各色700×120mm)を、それぞれ、紙送り方向に700mmで印刷し、紙送り量周期と一致した濃淡バンディングが発生するかにより評価した。評価は、目視及び顕微鏡で観察することにより行った。濃淡バンディングとは、濃度が異なって見える部分がバンディング状にみえるものである。
(評価基準)
A:ベタ面内に濃淡のバンディングが目視で見られない。
B:ベタ面内に若干濃淡のバンディングが目視で見られる。
C:ベタ面内に明確に濃淡のバンディングが目視で見られる。顕微鏡観察で観察すると、下地色(インクが付着していない部分)は見えない。
D:ベタ面内に明確に濃淡のバンディングが目視で見られる。顕微鏡観察で観察すると、下地色が見える部分が存在する。
3.3.2.色バンディングの有無による画質の評価
上記の記録方法により赤、青、緑ベタ画像(各色700×120mm)を、それぞれ紙送り方向に700mmで印刷し、紙送り量周期と一致した色バンディングが発生するかにより評価した。評価は、目視で観察することにより行った。色バンディングとは、色が異なって見える部分がバンディング状にみえるものである。
(評価基準)
A:ベタ面内に色バンディングが見られない。
B:ベタ面内に若干色バンディングが見られる。
C:ベタ面内に明確に色バンディングが見られる。
3.3.3.凝集ムラの有無による画質の評価
上記の記録方法により赤、青、緑ベタ画像(各色30×30mm)を印刷し、凝集ムラが発生するかを評価した。各色パターンはそれぞれ記録して、それぞれ評価した。評価は、目視及び顕微鏡で観察することにより行った。なお、どの色のパターンも評価結果は同じだった。 (評価基準)
A:ベタ面内に顕微鏡で観察しても凝集ムラは見られない。
B:ベタ面内に顕微鏡で若干凝集ムラが見られる。目視ではわからない。
C:ベタ面内に目視でも、2mm未満の濃淡状の凝集ムラがみられる。
D:ベタ面内に目視でも、明確に凝集ムラが見られる。
3.4.記録方法の評価結果
記録方法の評価試験の結果を、表5に示す。
実施例は、何れも、(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対し、(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)が大きく、処理液を用いたものであり、何れも、濃淡バンディング抑制が優れていた。これに対し、そうではない比較例は、何れも、濃淡バンディング抑制が劣っていた。以下詳細を記す。
実施例1では、いずれの評価もB以上で優れた画質が得られた。
実施例2では、濃淡バンディングが見られた。これは、A領域とB領域が交互となっており、1パス目のインク吐出量が多いため、着弾干渉による濃淡バンディングではなく、紙送りのばらつきにより、吐出量が過多の部分で筋状に濃淡バンディングが発生したと考えられる。
実施例3では、紙送り幅に対応して2つの山が形成されるような吐出プロファイルを持たせた。この例では、紙送りのばらつきによる筋状のバンディング、着弾干渉による濃淡バンディングのいずれも見られず、また凝集ムラも見られず、優れた画質が得られた。
実施例4は、処理液の凝集剤としてカチオン樹脂凝集剤を用いたが、実施例1と評価に差がなかった。ただし、ミストにより目詰まりしやすかった。
実施例5は、処理液は凝集剤を含有しない。この場合、着弾干渉による濃淡バンディングと異なる濃淡バンディングが見られた。これは、処理液が凝集剤を含まないためインク成分の流動が起こり、インク及び処理液の吐出密度に応じて凝集ムラの程度が異なり、濃淡ムラがバンディング状に認識されたためと考えられる。
実施例6では、処理液の界面活性剤としてフッ素系界面活性剤を用いた。この場合、処理液の濡れ性が高くなってインク成分の流動が起こり、凝集ムラが若干見られた。
実施例7は、インクの溶剤の濡れ性が良いが、乾燥しにくい。このため、インク成分の流動が起こり、凝集ムラが若干見られた。
実施例8はインクの充填が対称配列であるが、処理液は片側に寄っている。この例では、双方向印刷のため、復路では凝集剤が不足して凝集ムラの評価が低下した。また、往路と復路でインク成分の混色の度合いが変わり、色バンディングの評価が低下した。
実施例9は、インクの充填が非対称である。この例では、往路復路で着弾順が変わり、発色がかわるため、色バンディングの評価結果がかなり低下した。また、混色の度合いが変わるため、凝集ムラとしても認識された。
実施例10では、印字温度が高いため、乾燥が進み、着弾滴が小さくなる。このため、着弾干渉が少なく、かつ、インクや処理液の流動性も低下するため、混色、凝集ムラも起こりにくいが、目詰まりの可能性がある。
実施例11は印字温度が低いため、着弾干渉、混色、流動が起こりやすく、画質が低下した。
実施例12はインクの吐出量が多いため、インクの流動性の低下までに時間がかかり、凝集ムラの評価が低下した。
実施例13はインクの吐出量が少ないため、ドット密度の低いところと高いところの差が少なく、濃淡バンディング、色バンディングが認識されなかった。また、液量が少ないため、凝集ムラも見られなかった。
実施例14では、吸液性の低いコート紙でも同様にバンディングが発生した。吸収性が若干ある分、処理液の吸収が起こり、混色有無の差が目立つ結果となった。
実施例に対し、インク吸収性の記録媒体である普通紙に対して記録を行った例である参考例1、2では、普通紙はインクの浸透性が高いため、処理液を用いなくてもバンディングが見られず、画質は低下しなかった。このように、吸収性記録媒体に対しては本発明の課題が生じなかった。
比較例1では、記録全体においてA1領域とB1、B2領域で、処理液付着量/インク付着量が同じであり、バンディングが発生した。
比較例2では、処理液を用いていないため濃淡バンディングと凝集ムラの評価が低下した。
比較例3では、A1領域とB1、B2領域で処理液付着量/インク付着量が同じであり、バンディングが発生した。
比較例4では、A領域とB領域とでインクおよび処理液の付着量を一定にしたため、バンディングが発生した。
以上示したように、実施例では、水系インクと処理液を用いた非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体に対するインクジェット記録において優れた画質の画像が得られた。一方、比較例では画質が低下し、課題の解決ができなかった。また、吸収性記録媒体を用いた参考例では、画質は低下せず、課題が生じなかった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、2a…ノズル面、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…加熱ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、9…キャリッジ、10…記録媒体、10a…記録領域、10b…バンド領域、10c…所定の幅、11…プラテン、12…カートリッジ、13…キャリッジ移動機構、14…搬送手段、15…インク吐出ノズル群、15a…第2インクノズル部、15b…第1インクノズル部、16…処理液吐出ノズル群、16a…第2処理液ノズル部、16b…第1処理液ノズル部、A1、A2…第2インクノズル部と第2処理液ノズル部が存在す領域、B1、B2…第1インクノズル部と第1処理液ノズル部が存在す領域、CONT…制御部、MS…主走査軸、SS…副走査軸、X…重なる領域、Y…バンド領域

Claims (18)

  1. 複数回の主走査により、インク組成物と、水を含有する処理液と、を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体から選択される記録媒体に吐出して記録を行う、インクジェット記録方法であって、
    前記記録は、
    インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群を主走査軸に沿って移動させながら、前記インク組成物と前記処理液とを吐出する主走査と、
    前記主走査軸に交差する副走査軸に沿って前記記録媒体を移動させる副走査と、を備え、
    前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群を前記主走査軸に沿って投影したときに、前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群は前記副走査軸に沿って互いに位置が重なる領域を有し、
    前記副走査の1回の長さが、前記インク吐出ノズル群の副走査軸方向の長さより短く、
    前記記録媒体の前記インク組成物が付着される記録領域のうち、前記副走査の1回の長さに対応するバンド領域に、2回以上の前記主走査により前記インク組成物の付着を行い、
    前記インク吐出ノズル群は、前記副走査の1回の長さ以下の長さである第1インクノズル部と第2インクノズル部と、を備え、
    前記処理液吐出ノズル群は、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第1インクノズル部と重なる第1処理液ノズル部と、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第2インクノズル部と重なる第2処理液ノズル部と、を備え、
    ある主走査において、前記第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、前記第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、前記第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、前記第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす、インクジェット記録方法。
    第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
    (第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
  2. 前記ある主走査で前記第1インクノズル部から前記インク組成物を吐出して付着させた前記記録領域に対して、他の主走査で前記第2インクノズル部から前記インク組成物を吐出して付着させる、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記処理液が凝集剤を含む、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第1インクノズル部と前記第2インクノズル部は、それぞれノズル数が10個以上100個以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記記録において、前記第2インクノズル部吐出量が、前記インク吐出ノズル群において吐出量が最大であって、前記第1インクノズル部吐出量が前記第2インクノズル部吐出量の30質量%以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. (第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)に対する(第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)が、1.5以上3.0以下である、請求項5に記載のインクジェット記録方法。
  7. (第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)が、0.1以上0.5以下である、請求項5または請求項6に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記第1インクノズル部が、前記インク吐出ノズル群の端から前記副走査の1回の長さに相当する領域にあり、
    前記第2インクノズル部が、前記インク吐出ノズル群の端から前記副走査の1回の長さに相当する領域以外の領域にある、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記第1インクノズル部と前記第2インクノズル部が、前記インク吐出ノズル群にそれぞれ2箇所以上ある、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記第1インクノズル部において、前記第1インクノズル部の一方の端から他方の端に向かって吐出量が漸減している、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記インク組成物が、顔料を含有する水系インク組成物である、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記インク組成物は、有機溶剤の含有量が15質量%以上である、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記インク組成物は、標準沸点が180℃以上280℃以下の有機溶剤を含む、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記バンド領域に対して、前記インク組成物を吐出する主走査の回数よりも、前記処理液を吐出する主走査の回数の方が少なく、
    前記バンド領域に対して、前記インク組成物を吐出する主走査よりも、前記処理液を吐出する主走査の方が早く完了する、請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記記録媒体を加熱する工程を備え、
    加熱された前記記録媒体に、前記主走査を行う、請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記インク吐出ノズル群の吐出量は、前記記録媒体に所定の単一濃度画像を記録する場合における前記ある主走査の付着量である、請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  17. 前記主走査は、第1方向へ行う第1の主走査と、前記第1方向の反対の方向である第2方向へ行う第2の主走査と、を備え、
    前記第1の主走査と前記第2の主走査において、前記処理液の吐出と前記インク組成物の吐出の順番が同じである、請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  18. 複数回の主走査により、インク組成物と、水を含有する処理液と、を非吸収性記録媒体または低吸収性記録媒体から選択される記録媒体に吐出して記録を行う、インクジェット記録装置であって、
    前記記録は、
    インク吐出ノズル群と処理液吐出ノズル群を主走査軸に沿って移動させながら、前記インク組成物と前記処理液とを吐出する主走査と、
    前記主走査軸に交差する副走査軸に沿って前記記録媒体を移動させる副走査と、を備え、
    前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群を前記主走査軸に沿って投影したときに、前記インク吐出ノズル群と前記処理液吐出ノズル群は前記副走査軸に沿って互いに位置が重なる領域を有し、
    前記副走査の1回の長さが、前記インク吐出ノズル群の副走査軸方向の長さより短く、
    前記記録媒体の前記インク組成物が付着される記録領域のうち、前記副走査の1回の長さに対応するバンド領域に、2回以上の前記主走査により前記インク組成物の付着を行い、
    前記インク吐出ノズル群は、前記副走査の1回の長さ以下の長さである第1インクノズル部と第2インクノズル部と、を備え、
    前記処理液吐出ノズル群は、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第1インクノズル部と重なる第1処理液ノズル部と、前記主走査軸に投影したときに前記副走査軸に沿って前記第2インクノズル部と重なる第2処理液ノズル部と、を備え、
    ある主走査において、前記第1インクノズル部の吐出量を第1インクノズル部吐出量、前記第1処理液ノズル部の吐出量を第1処理液ノズル部吐出量、前記第2インクノズル部の吐出量を第2インクノズル部吐出量、前記第2処理液ノズル部の吐出量を第2処理液ノズル部吐出量としたときに、下記(式1)および(式2)を満たす、インクジェット記録装置。
    第1インクノズル部吐出量<第2インクノズル部吐出量・・・(式1)
    (第1処理液ノズル部吐出量/第1インクノズル部吐出量)>(第2処理液ノズル部吐出量/第2インクノズル部吐出量)・・・(式2)
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