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JP2021088039A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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JP2021088039A JP2019220379A JP2019220379A JP2021088039A JP 2021088039 A JP2021088039 A JP 2021088039A JP 2019220379 A JP2019220379 A JP 2019220379A JP 2019220379 A JP2019220379 A JP 2019220379A JP 2021088039 A JP2021088039 A JP 2021088039A
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英利 淺沼
Hidetoshi Asanuma
英利 淺沼
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Abstract

【課題】特に、チタン合金、ニッケル合金等の高速切削に供しても、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する切削工具を提供する。【解決手段】WC粒子を硬質相成分とし、Coを結合相の主成分とするWC基超硬合金からなる工具基体の表面に硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具であって、(a)工具基体と硬質被覆層との間には界面層が存在し、(b)界面層において、工具基体を構成する硬質相成分の直上の領域A、工具基体を構成する結合相の直上の領域Bとするとき、界面層の平均層厚の1/2の箇所において、領域AのW含有割合WAが90〜99質量%で、Cの含有割合がCAとし領域BのW含有割合WBが、30〜65質量%で、Cの含有割合がCBとし、かつ、CA≦0.05質量%、CA≦CB≦0.09質量%であることを特徴とする表面被覆切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は、特に、チタン合金、ニッケル合金等の高速切削加工に用いても、硬質被覆層(硬質皮膜層)が優れた耐溶着性、耐チッピング性を有し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサート、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またインサートを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミルなどが知られている。
従来から、被覆工具としては、例えば、WC基超硬合金等を工具基体とし、その表面に硬質被覆層を形成したものが知られており、工具基体と硬質皮膜層との界面における密着性に注目して、切削性能の改善を目的として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、Crイオンおよび/またはMoイオンにより工具基体表面にエッチング処理がなされたTiAlN層を被覆した被覆工具が記載され、Crイオンおよび/またはMoイオンはドロップレットが少ないとの説明がなされている。
また、例えば、特許文献2には、WC基超硬合金基体の表面にbcc構造を有する改質相を介して硬質皮膜を形成した硬質皮膜を有し、前記改質相は、不可避的不純物を除いて下記一般式:
100−x−yCo
[ただし、MはCr、V、Ni、Fe及びMnからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素であり、Crは必須でM元素全体の70質量%以上であり、かつW、M元素及びCoの含有量(質量%)を表す(100−x−y)、x及びyはそれぞれ80≦100−x−y≦95、5≦x≦20、及び0.1≦y≦3の条件を満たす数である。]により表される金属組成を有することを特徴とする被覆工具が記載され、前記改質層はイオンボンバード処理により形成されることが説明され、この切削工具は、硬質皮膜の密着性が向上し、高硬度鋼、ステンレス鋼、鋳鋼などの切削に用いることができるとされている。
さらに、例えば、特許文献3、4には、工具基体と、前記工具基体の上に配置され、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、WとCrを含有する炭化物からなる膜厚が1nm以上10nm以下の中間皮膜を有する被覆工具が記載されており、この中間皮膜により硬質被覆層と工具基体との密着性が向上し、鋼や鋳鉄、耐熱合金等の切削加工において工具寿命が向上するとされている。
特開平9−217168号公報 特開2014−153345号公報 特開2016−64487号公報 特許第6385233号公報
近年において、高速化・高能率化する切削加工に対応し、かつ、できるだけ多くの材種の被削材の切削加工が可能となるような汎用性のある切削工具が求められている。
前記特許文献1〜4に開示された従来の被覆工具は、これを鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工に用いた場合には、特段の問題は生じないが、例えば、Ti合金、Ni合金等の難削材の高速切削加工に供した場合には、切刃へ被削材の溶着物の形成と剥離が繰返し生じることによって、硬質被覆層の剥離が生じやすくなり、また、摩耗進行も促進されてしまう。
すなわち、特許文献1に記載された被覆工具では、工具基体表面のエッチング処理がドロップレットの低減により表面粗度の増加の防止を目的とするものであって、硬質被覆層の剥離防止を直接の目的とはしていない。
また、特許文献2〜4に記載された改質相や中間皮膜は、工具基体(超硬基材)と硬質被覆層との密着性を向上させるために設けられているものの、Ti合金、Ni合金等の難削材の高速切削加工に適用することまでは考えられていない。
そこで、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであって、特に、チタン合金、ニッケル合金等の熱伝導度が低く、靱性の高い材料の高速切削に供しても、優れた耐溶着性、耐チッピング性を示し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する切削工具を提供することを目的とする。
本発明者等は、上述のような観点から、特に、Ti合金、Ni合金等の難削材の高速切削加工下で、硬質被覆層がすぐれた耐剥離性を有し、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を開発すべく、鋭意研究を行った。
すなわち、工具基体がWC基超硬合金であるとき、硬質被覆層の硬質相(WC粒子)に対する密着性と結合相に対する密着性とは求められるものが異なることを発見して、硬質被覆層と工具基体との間の界面層について研究を重ねた。
その結果、界面層に含まれるC含有量を極めて少なくすると、工具基体と硬質被覆層との密着性が向上し、Ti合金、Ni合金等の難削材の高速切削加工に供した場合であっても、硬質被覆層が剥離せず、満足する寿命となる被覆工具を得ることができ、その際、Cの含有割合は、工具基体表面の硬質相(WC粒子)に接する部分が結合相に接する部分に比して少なくなるとより好ましいという新規な知見を得た。
さらに、このようなC含有割合の異なる界面層は、金属イオンによる工具基体のボンバード処理を特定の条件で制御することにより得ることができることも見出した。
本発明は、前記知見に基づくものであって、次のとおりのものである。
「(1)WC粒子を硬質相成分とし、Coを結合相の主成分とするWC基超硬合金からなる工具基体の表面に硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具であって、
(a)前記工具基体と前記硬質被覆層との間には界面層が存在し、
(b)前記界面層において、前記工具基体を構成する前記硬質相成分の直上の領域A、前記工具基体を構成する前記結合相の直上の領域Bとするとき、
前記界面層の平均層厚の1/2の箇所において、
前記領域AのW含有割合Wが90〜99質量%で、Cの含有割合がCとし
前記領域BのW含有割合Wが、30〜65質量%で、Cの含有割合がCとし、
かつ
≦0.05質量%、
≦C≦0.09質量%
である
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記領域Aには、Cr:1〜10質量%が、前記領域Bには、Co:30〜60質量%、Cr:5〜10質量%が、それぞれ、さらに含まれることを特徴とする前記(1)に記載された表面被覆切削工具。」
本発明の表面被覆切削工具は、特に、チタン合金、ニッケル合金等の難削材の高速切削加工に用いても、硬質被覆層(硬質皮膜層)が優れた耐溶着性、耐チッピング性を有し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する。
本発明の表面被覆切削工具の工具基体表面に垂直な断面(縦断面)において、工具基体と界面層を表した模式図の一例である。
以下、本発明の表面被覆切削工具についてより詳細に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲において、数値範囲を「X〜Y」を用いて表現する場合は、その数値範囲は上限(Y)および下限(X)の範囲を含むものである。また、上限(Y)および下限(X)は同じ単位である。
工具基体:
本発明の表面被覆切削工具の工具基体は、硬質相成分としてWC粒子を含有し、結合相はCoを主成分とするものであれば特段の制約がなく使用できる。
ここで、結合相について、「Coを主成分とする」と表現したのは、WC基超硬合金では結合相中に分散して、あるいは、結合相中に固溶することにより含有されるTiC、VC、TaC、NbC、Cr等の成分を、本発明の工具基体で用いるWC基超硬合金でも含むことができるからである。
そして、WC基超硬合金におけるW含有量は、85〜95質量%であることが好ましく、また、結合相の主成分であるCoの含有量は、4〜14質量%であることが好ましい。
界面層:
本発明の表面被覆切削工具は、工具基体と硬質被覆層との間に界面層が存在する。
(1)界面層における領域の構成
界面層は、工具基体を構成する硬質相成分(WC粒子)の直上の領域Aと、工具基体を構成する結合相の直上の領域Bとを有している。
ここで、工具基体を構成する硬質相成分(WC粒子)の直上の領域Aとは、工具基体表面の硬質相成分(WC粒子)に接する界面層の部分を界面層の最上部(硬質被覆層に接する界面)までその層厚方向に延長した領域である。
また、工具基体を構成する結合相の直上の領域Bとは、工具基体表面の結合相に接する界面層の部分を界面層の最上部(硬質被覆層に接する界面)までその層厚方向に延長した領域である。
なお、工具基体と界面層の領域Aおよび領域Bとの位置関係を図1に模式的に示した。図1では、硬質被覆層の図示を省略している。
(2)組成
界面層の平均層厚の1/2の箇所における領域AのW含有割合Wは、90〜99質量%であり、他方、同箇所における領域BのW含有割合Wは、30〜65質量%が好ましい。
そして、同箇所における領域AのC含有量をC、領域BのC含有量をCとするとき、
≦0.05質量%、
≦C≦0.09質量
とすることが好ましい。
ここで、CおよびCの下限値は分析限界未満であってよく、この場合は、C=Cと扱う。
また、後述するようにCrイオンを用いてイオンボンバード処理を行って界面層を形成するときは、Cr含有割合が、領域Aでは1〜10質量%、領域Bでは5〜10質量%であることが好ましい。
さらに、領域Bでは、Coが30〜60質量%含まれていることがより好ましい。
つぎに、領域Aおよび領域Bにおいて、C、W、CoおよびCrの含有割合を前記の範囲が好ましいとした理由について説明する。なお、界面層の平均層厚の1/2の箇所とは、領域Aと領域Bのそれぞれで独立して決定するものであり、領域Aと領域Bの箇所が同じになるとは限らない。
(2−1)領域A
Wの含有割合Wについて前記範囲が好ましいとした理由は、90質量%未満では、領域Aの硬質相成分(WC粒子)と界面層との密着性が十分でなく、99質量%を超えると、工具基体のWが減少してしまい工具基体中の巣(空孔)が多くなって工具基体自体の耐摩耗性・靱性が劣化するためである。Wの含有割合は、93〜96質量%がより好ましい。
また、Cの含有割合Cは、領域Aの硬質相成分(WC粒子)と界面層との密着性を高めるために、少ない方が好ましく、その上限は0.05質量%であって、領域BのC含有量C以下が好ましい。その下限は、分析限界未満であってよい(すなわち、Cを全く含有しなくてもよい)。
さらに、Crの含有割合が前記範囲にあると、硬質被覆層と界面層との密着性が向上し、工具基体表面の脆化が生じ難い。Crの含有割合は、3〜7質量%がより好ましい。
(2−2)領域B
の含有割合について前記範囲が好ましいとした理由は、30質量%未満では、領域Bの結合相と界面層との密着性が十分ではなく、65質量%を超えると、工具基体のWが減少してしまい工具基体中の巣(空孔)が多くなって工具基体自体の耐摩耗性・靱性が劣化するためである。Wの含有割合は、40〜60質量%がより好ましい。
また、Cの含有割合Cは、0.09質量%を超えると、工具基体表面のCの減少量が多くなって、工具基体表面に脆化領域が形成されるためである。また、Cの含有割合の下限は、分析限界未満であってよい(すなわち、Cを全く含有しなくてもよい)。
さらに、Crの含有割合が前記範囲にあると、硬質被覆層と界面層との密着性が向上し、工具基体表面の脆化が生じ難い。Crの含有割合は、6〜9質量%がより好ましい。
加えて、Coの含有割合が前記範囲にあると、結合相と界面層の密着性がより向上し、工具基体のCo量が減少することなく、工具基体の耐欠損性・耐チッピング性が低下しない。
なお、本発明の表面被覆切削工具が、チタン合金、ニッケル合金等の難削材の高速切削加工に用いても、硬質被覆層が優れた耐溶着性、耐チッピング性を有し、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する理由は定かではないが、界面層にCrはWCrとして存在してWとWCrの2つの相が独立し、さらに、C含有割合が少ないため、炭化物がほとんどなく、硬質被覆層の靱性が向上するためであろうと推定している。
(3)平均層厚
界面層の平均層厚は、1〜500nmが好ましい。その理由は、平均層厚が1nm未満では、界面層の存在による工具基体表面と硬質被覆層との密着性改善が十分ではなく、他方、その平均層厚が500nmを超えると、界面層を形成時の工具基体表面の脆化によって硬質被覆層が剥離しやすくなるからである。平均層厚は、1〜250nmがより好ましく、5〜50nmがより一層好ましい。
(4)測定方法
つぎに、界面層の組成と平均層厚の測定方法について説明する。
(4−1)工具基体を構成する硬質相成分(WC粒子)の直上の領域Aの組成
領域Aの組成は、硬質相成分(WC粒子)の直上の硬質被覆層から工具基体内部に向かって、工具基体表面に垂直な方向(層厚方向)の断面(縦断面)において、少なくとも550nmの測定長にわたり、透過型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光法を用いた線分析(TEM−EDS線分析)を行い、Nが検出されなくなった点を界面層の工具表面側の端部とし、WとCのみが同時に検出されるようになった点を界面層の工具基体側の端部とし、この2つの端部の中間の位置(1/2の位置)におけるW、Cr、Cの含有割合を測定する。
そして、この線分析を硬質相成分(WC粒子)の直上の少なくとも5箇所で行って、それらの測定値を平均して、領域Aの組成とする。
(4−2)工具基体を構成する結合相の直上の領域Bの組成
領域Bの組成は、結合相成分の直上の硬質被覆層から工具基体内部に向かって、縦断面において、少なくとも550nmの測定長にわたりTEM−EDS線分析を行い、Nが検出されなくなった点を界面層の工具表面側の端部とし、Wは検出されずCoが検出されるようになった点を界面層の工具基体側の端部とし、この2つの端部の中間の位置(1/2の位置)のW、Cr、C、Coの含有割合を測定する。
そして、この線分析を結合相の直上の少なくとも5箇所で行って、それらの測定値を平均して、領域Bの組成とする。
なお、領域Aおよび領域Bの組成を求める際に、ボンバード処理に使用した金属(例えば、Cr)のみが検出される領域の存在を示す線分析結果が得られたときは、この金属のドロップレットが生成しているため、当該線分析の結果は採用せず、新たな線分析を行う。
(4−3)平均層厚
平均層厚は、前述のように、平均層厚は、領域Aおよび領域Bのそれぞれ5箇所で求めた、工具表面側の端部と工具基体側の端部との距離を平均したものである。
(5)製造方法
界面層は、金属イオンのボンバード処理によって形成することができる。金属イオンとしては、例えば、ドロップレットが生じ難いCrが使用できる。Cr以外にもドロップレットが生じ難いMoや、よくボンバードに用いられえるTiなども使用できる。ドロップレットが生じ難い金属を用いることにより、工具基体表面が平滑になり、結果として表面被覆切削工具の寿命が向上する。ボンバード処理において、処理温度を通常の温度よりも高めに設定することが好ましい。
ここで、ボンバード処理により、領域Aと領域Bという組成の異なる2つの領域が生じる理由は現時点では定かではないが、ボンバード処理温度が高いことやボンバード時にArなどのガスを導入することでガスもイオン化し、工具基体表面へのイオン照射量が増加することによって、組成の違いに起因する選択的な原子の拡散・反応が促進したためではないかと推定している。
硬質被覆層:
硬質被覆層は、金属を含む複合窒化物層であれば、本発明が解決しようとする課題の解決を阻害するものでない限り、従来公知のものが使用できる。例えば、TiとAlとの複合窒化物、TiとAlとCrとの複合窒化物、TiとAlとSiとの複合窒化物、AlとCrとの複合窒化物等を例示できる。
成膜した硬質被覆層の平均層厚は、0.5〜10.0μmとすることが好ましい。これは、平均層厚が0.5μm未満であると、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、工具寿命が短命となるからであり、一方、平均層厚が10μmを超えるとであると、チッピング、欠損等の異常損傷を発生する恐れがあるからである。
なお、平均層厚は、縦断面を適当な倍率(例えば、5000倍)に拡大して、5点の層厚をもめて平均したものである。
硬質被覆層の成膜は、従来公知のPVD法、CVD法のいずれであってもよい。PVD法であれば、アークイオンプレーティング装置(AIP装置)を用いることが好ましい。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明の被覆工具の実施例として、インサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体は前述のとおりWCが含まれていればよく、また、工具としてドリル、エンドミル等に適用した場合も同様である。また、硬質被覆層は、(Ti(1−x−y)Al)N、0.35≦x≦0.80、0.00≦y≦0.15(ただし、x、yは原子比、MはIUPACの周期表の4〜6族の原子、Ce、La、Hf、Ndの少なくとも一つ)に限らない。
まず、原料粉末として、Co粉末、VC粉末、Cr粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格SEEN1203AFTN1のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体1〜3を作製した。
次に、工具基体1〜3をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、AIP装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着する。また、カソード電極(蒸発源)として、Crターゲット、Tiターゲット、Moターゲットのいずれかを、そして、所定組成の硬質皮膜を得るためのTi−Al−M合金ターゲットを配置した。
続いて、成膜装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を960〜1100℃に加熱した後、表2に示すように、0.1〜2.0Paの不活性雰囲気に設定し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000〜−1600Vの直流バイアス電圧を印加し、Crイオン、Tiイオン、Moイオンのいずれかによって、工具基体表面を5〜40分間ボンバード処理した。
その後、表2に示すように、分圧が1.0〜5.0Paの範囲内の窒素ガスを所定時間導入して、Ti−Al−M合金ターゲットからなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に、表2に示す80〜240Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させ、表3に示す本発明の被覆工具(以下、「本発明工具」という)1〜9を作製した。
一方、比較のため、前記工具基体1〜3に対して、前記と同じ成膜装置を用いて、表2に示す条件で界面層を形成し、硬質被覆層を成膜して、表4に示す比較例の皮膜工具(以下、「比較例工具」という)1〜3を作製した。
これら本発明工具1〜9、比較例工具1〜3について、平均層厚、界面層の組成を前述のとおりに測定し、その結果を、それぞれ、表3、4に示す。表3、4における測定値は平均値である。
Figure 2021088039

Figure 2021088039
Figure 2021088039
Figure 2021088039
次いで、本発明工具1〜9および比較例工具1〜3について、SE445R0506Eのカッタを用いて、単刃の正面フライス切削加工試験を実施した。以下の切削条件で、ニッケル合金およびチタン合金について高速切削加工試験を実施した。
切削条件A:
被削材:質量%で、Ni−19%Cr−18.5%Fe−5.2%Cd−5%Ta−3%Mo−0.9%Ti−0.5%Al−0.3%Si−0.2%Mn−0.05%Cu−0.04%Cの組成を有するNi基合金の幅60mm×長さ200mmのブロック材
切削速度: 75 m/min.
切り込み: 1.1 mm
送り: 0.09 mm/tooth.
の条件でのNi基合金の湿式高速高送り切削加工試験( 通常の切削速度および送りは、25〜40 m/min.、0.08mm/tooth)を行った。切削長(試験切削長さ)1.8mまで切削し、逃げ面摩耗幅を測定し、刃先の損耗状態を観察した。
切削試験の結果を表5に示す。
切削条件B:
被削材:質量%で、Ti−6%Al−4%Vの幅60mm×長さ200mmのブロック材
切削速度: 90 m/min.
切り込み: 1.1 mm
送り: 0.09 mm/tooth.
の条件でのTi基合金の湿式高速高送り切削加工試験( 通常の切削速度および送りは、30〜45 m/min.、0.08mm/tooth)を行った。切削長(試験切削長さ)1.8mまで切削し、逃げ面摩耗幅を測定し、刃先の損耗状態を観察した。
切削試験の結果を表6に示す。
Figure 2021088039
Figure 2021088039
表5および表6の結果によれば、本発明工具1〜9については、切削条件A、Bのいずれでもチッピング、剥離等の異常損傷の発生はなく耐溶着性、耐チッピング性、のいずれにも優れていることがわかる。
これに対して、比較例工具1〜3については、切削条件A、Bのいずれにおいても、チッピングの発生、あるいは、逃げ面摩耗の進行により、短時間で寿命に至ることは明らかである。
本発明の表面被覆切削工具は、各種の鋼などの通常の切削条件での切削加工は勿論のこと、特に、高熱発生を伴うとともに、切刃部に対して大きな負荷がかかるチタン合金、ニッケル合金等の高速切削加工において、優れた耐溶着性および耐チッピング性を発揮し、長期にわたってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. WC粒子を硬質相成分とし、Coを結合相の主成分とするWC基超硬合金からなる工具基体の表面に硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具であって、
    (a)前記工具基体と前記硬質被覆層との間には界面層が存在し、
    (b)前記界面層において、前記工具基体を構成する前記硬質相成分の直上の領域A、前記工具基体を構成する前記結合相の直上の領域Bとするとき、
    前記界面層の平均層厚の1/2の箇所において、
    前記領域AのW含有割合Wが90〜99質量%で、Cの含有割合がCとし
    前記領域BのW含有割合Wが、30〜65質量%で、Cの含有割合がCとし、
    かつ
    ≦0.05質量%、
    ≦C≦0.09質量%
    である
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記領域Aには、Cr:1〜10質量%が、前記領域Bには、Co:30〜60質量%、Cr:5〜10質量%が、それぞれ、さらに含まれることを特徴とする請求項1に記載された表面被覆切削工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024018889A1 (ja) * 2022-07-21 2024-01-25 京セラ株式会社 被覆工具および切削工具

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