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JP4697389B2 - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、硬質被覆層が、すぐれた高温硬さおよび耐熱性を有する耐摩耗硬質層と、すぐれた高温耐酸化性を有する表面層によって構成され、したがって特に各種のTi系合金や高Si含有Al−Si系合金などの硬質難削材の切削加工を高熱発生を伴う高速切削条件で行った場合にも、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものである。
一般に、被覆超硬工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
また、被覆超硬工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された超硬基体の表面に、
組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.40〜0.75を示す)、
を満足するTiとAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層からなる耐摩耗硬質層を硬質被覆層として1〜10μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られており、前記(Ti,Al)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Tiによって高温強度を具備することから、前記被覆超硬工具を各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
さらに、上記の被覆超硬工具が、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記の超硬基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するTi−Al合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記超硬基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬基体の表面に、上記(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層を硬質被覆層として蒸着することにより製造されることも知られている。
特許第2644710号明細書
近年の切削加工装置の高性能化および自動化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化し、かつ被削材の種類に限定されない汎用性のある被覆超硬工具が強く望まれる傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、これを各種の鋼や鋳鉄などの被削材を通常の切削加工条件で行うのに用いた場合には問題はないが、これを特に各種のTi系合金や高Si含有Al−Si系合金などの硬質難削材の切削加工を高速切削条件で行うのに用いた場合、切削時に発生するきわめて高い発熱によって、耐摩耗硬質層の摩耗進行が著しく促進するようになることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に上記の硬質難削材の高速切削加工で耐摩耗硬質層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具を開発すべく、上記の従来被覆超硬工具に着目し、研究を行った結果、
(1)例えば図1(a)に概略平面図で、同(b)に概略正面図で示される構造のアークイオンプレーティング装置(以下、AIP装置と略記する)とスパッタリング装置(以下、SP装置と略記する)が共存の蒸着装置、すなわち装置中央部に超硬基体装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側に前記AIP装置のカソード電極(蒸発源)として所定の組成を有するTi−Al合金、他方側に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)としてCr硼化物(以下、CrBで示す)粉末の焼結体(以下、CrB焼結体という)を対向配置した蒸着装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って複数の超硬基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、蒸着形成される耐摩耗硬質層の層厚均一化を図る目的で超硬基体自体も自転させながら、基本的に、まず前記Ti−Al合金のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記超硬基体の表面に(Ti,Al)N層を0.8〜5μmの平均層厚で耐摩耗硬質層として蒸着形成し、さらに前記蒸着装置内の雰囲気を、窒素雰囲気に代って、実質的にAr雰囲気とすると共に、前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したCrB焼結体のスパッタリングを開始し、前記(Ti,Al)N層に重ねて表面層として0.8〜5μmの平均層厚でCrB層を蒸着形成すると、この結果の被覆超硬工具は、特に著しい高熱発生を伴なう各種のTi系合金や高Si含有Al−Si系合金などの硬質難削材の高速切削で、上記(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層が、すぐれた高温耐酸化性を有する前記CrB層からなる表面層によって切削時の高温酸化雰囲気から保護され、摩耗促進の原因となる雰囲気酸化が著しく抑制されることから、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するようになること、
2)上記の耐摩耗硬質層形成後に、前記耐摩耗硬質層形成用Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を継続したまま、装置内に窒素ガスに代えてArと窒素の混合ガスを導入し、同時に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したCrB 焼結体にスパッタを発生させ、この状態で所定時間保持して、密着接合層としてTiとAlとCrの複合硼窒化物[以下、(Ti,Al,Cr)BN]で示す]層を0.1〜0.5μmの平均層厚で形成すると、上記の既に蒸着形成された耐摩耗硬質層としての(Ti,Al)N層と、この後で蒸着形成される表面層としてのCrB 層との間にすぐれた密着接合性が確保されること、
以上(1)および(2)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、超硬基体の表面に硬質被覆層を物理蒸着してなる被覆超硬工具において、前記硬質被覆層を、AIP装置とSP装置が共存する蒸着装置を用い、前記超硬基体側から、
(a)耐摩耗硬質層として、上記AIP装置を用いて蒸着形成され
組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.40〜0.75を示す)、
を満足し、0.8〜5μmの平均層厚を有する(Ti,Al)N層、
(b)密着接合層として、上記AIP装置とSP装置を同時に用いて蒸着形成された、0.1〜0.5μmの平均層厚を有する(Ti,Al,Cr)BN層
(c)表面層として、上記SP装置を用いて蒸着形成された、0.8〜5μmの平均層厚を有するCrB層、
以上(a)〜(c)からなる硬質被覆層で構成してなる、高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆超硬工具の硬質被覆層の構成層に関し、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)耐摩耗硬質層の組成式のX値
耐摩耗硬質層を構成する(Ti,Al)N層におけるAl成分には高温硬さと耐熱性を向上させ、一方同Ti成分には、高温強度を向上させる作用があるが、Alの割合を示すX値がTiとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.40未満になると、相対的にTiの割合が多くなり過ぎて、高速切削に要求されるすぐれた高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示すX値が同0.75を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、この結果切刃部にチッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、X値を0.40〜0.75と定めた。
(b)耐摩耗硬質層の平均層厚
その平均層厚が0.8μm未満では、自身のもつすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その平均層厚が5μmを越えると、上記の硬質難削材の高速切削では切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.8〜5μmと定めた。
(c)表面層の平均層厚
硬質被覆層は、上記の通り耐摩耗硬質層のもつすぐれた高温硬さおよび耐熱性と、表面層であるCrB層のもつすぐれた高温耐酸化性との共存によって、高い発熱を伴なう硬質難削材の高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮するようになるものであるが、前記CrB層の平均層厚が0.8μm未満では、上記耐摩耗硬質層を切削時における高温酸化雰囲気から使用寿命に至るまで保護するには不十分であり、一方その平均層厚が5μmを越えると切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.8〜5μmと定めた。
この発明の被覆超硬工具は、すぐれた高温硬さおよび耐熱性を有する(Ti,Al)N層の耐摩耗硬質層と、すぐれた高温耐酸化性を有し、切削時の高温酸化雰囲気から前記耐摩耗硬質層を保護するCrB層の表面層で構成された硬質被覆層によって、硬質難削材の切削加工を高い発熱を伴う高速で行っても、すぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆超硬工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN系超硬製の超硬基体B−1〜B−6を形成した。
(a)ついで、上記の超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示される蒸着装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、一方側のAIP装置のカソード電極(蒸発源)として所定の組成を有する耐摩耗硬質層形成用Ti−Al合金、他方側のSP装置のカソード電極(蒸発源)として表面層形成用CrB焼結体を対向配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Ti−Al合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層を硬質被覆層の耐摩耗硬質層として蒸着形成し、
(d)ついで、既に蒸着形成された上記の耐摩耗硬質層としての(Ti,Al)N層と、これから蒸着形成される表面層としてのCrB層との密着接合性を向上させる目的で、上記耐摩耗硬質層形成用Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を継続したまま、装置内に窒素ガスに代えてArと窒素の混合ガス(N:Ar=容積比で3:1)を導入して、装置内雰囲気を同じく3Paとし、同時に前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したCrB焼結体に、3kWの出力でスパッタを発生させ、この状態を20分間保持して、密着接合層としての(Ti,Al,Cr)BN層をいずれも0.3μmの平均層厚(後述の実施例2,3の本発明被覆エンドミル1〜8および本発明被覆ドリル1〜8の硬質被覆層形成においても、密着接合層の平均層厚はいずれも0.3μmとした)で形成し、
(e)引き続いて、前記SP装置のカソード電極(蒸発源)として配置したCrB焼結体のスパッタを同一条件(スパッタ出力:3kW)で続行しながら、前記装置内に導入するガスをArと窒素の混合ガスからArガスに代えると共に、装置内雰囲気を0.5Paとし、同時に上記耐摩耗硬質層形成用Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間のアーク放電を停止し、この条件で層厚に対応した時間スパッタリングを行い、同じく表3に示される目標層厚のCrB層を硬質被覆層の表面層として蒸着形成しすることにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、これら超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図2に示される蒸着装置に装入し、カソード電極(蒸発源)として種々の成分組成をもったTi−Al合金を装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面をTi−Al合金でボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、前記Ti−Al合金のカソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれの表面に、表4に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、従来被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆チップ1〜16および従来被覆チップ1〜16について、
被削材:質量%で、Ti−6%Al−4%V合金の丸棒、
切削速度:100m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Aという)でのTi系合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は60m/min.)、
被削材:質量%で、Al−13%Si合金の丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:2.0mm、
送り:0.15mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Bという)での高Si含有Al−Si系合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は180m/min.)、
被削材:質量%で、Al−18%Si合金の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.18mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Cという)での高Si含有Al−Si系合金の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は150m/min.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
Figure 0004697389
Figure 0004697389
Figure 0004697389
Figure 0004697389
Figure 0004697389
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表6に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表7に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層と、同じく表7に示される目標層厚のCrB層からなる表面層で構成された硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、同じく表7に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層を硬質被覆層として蒸着することにより、従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬製エンドミル(以下、従来被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆エンドミル1〜8および従来被覆エンドミル1〜8のうち、本発明被覆エンドミル1〜3および従来被覆エンドミル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったTi系合金(質量%で、Ti−3%Al−2.5%V合金)の板材、
切削速度:100m/min.、
溝深さ(切り込み):2mm、
テーブル送り:800mm/分、
の条件でのTi系合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は50m/min.)、本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったTi系合金(質量%で、Ti−6%Al−4%V合金)の板材、
切削速度:150m/min.、
溝深さ(切り込み):4mm、
テーブル送り:960mm/分、
の条件でのTi系合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもった高Si含有Al−Si系合金(質量%で、Al−18%Si合金)の板材、
切削速度:300m/min.、
溝深さ(切り込み):12mm、
テーブル送り:950mm/分、
の条件での高Si含有Al−Si系合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は150m/min.)をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表7にそれぞれ示した。
Figure 0004697389
Figure 0004697389
上記の実施例2で製造した直径が8mm(超硬基体C−1〜C−3形成用)、13mm(超硬基体C−4〜C−6形成用)、および26mm(超硬基体C−7、C−8形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(超硬基体D−1〜D−3)、8mm×22mm(超硬基体D−4〜D−6)、および16mm×45mm(超硬基体D−7、D−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体(ドリル)D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの超硬基体(ドリル)D−1〜D−8の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表8に示される目標組成および目標層厚の(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層と、同じく表8に示される目標層厚のCrB層からなる表面層で構成された硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の超硬基体(ドリル)D−1〜D−8の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示される蒸着装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、同じく表8に示される目標組成および目標層厚を有する(Ti,Al)N層からなる耐摩耗硬質層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬製ドリル(以下、従来被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆ドリル1〜8および従来被覆ドリル1〜8のうち、本発明被覆ドリル1〜3および従来被覆ドリル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250、厚さ:50mmの寸法をもったTi系合金(質量%で、Ti−3%Al−2.5%V合金)の板材、
切削速度:50m/min.、
送り:0.2mm/rev、
穴深さ:10mm、
の条件でのTi系合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)、本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもったTi系合金(質量%で、Ti−6%Al−4%V合金)の板材、
切削速度:75m/min.、
送り:0.15mm/rev、
穴深さ:15mm、
の条件でのTi系合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は40m/min.)、本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法をもった高Si含有Al−Si系合金(質量%で、Al−18%Si合金)の板材、
切削速度:120m/min.、
送り:0.4mm/rev、
穴深さ:30mm、
の条件での高Si含有Al−Si系合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表8にそれぞれ示した。
Figure 0004697389
この結果得られた本発明被覆超硬工具としての本発明被覆チップ1〜16、本発明被覆エンドミル1〜8、および本発明被覆ドリル1〜8の硬質被覆層を構成する耐摩耗硬質層の組成、並びに比較被覆超硬工具としての従来被覆チップ1〜16、従来被覆エンドミル1〜8、および従来被覆ドリル1〜8の硬質被覆層の耐摩耗硬質層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、上記の硬質被覆層の表面層および耐摩耗硬質層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表3〜8に示される結果から、硬質被覆層が、高温硬さと耐熱性を有する(Ti,Al)N層の耐摩耗硬質層と、すぐれた高温耐酸化性を有し、切削時の高温酸化雰囲気から前記耐摩耗硬質層を保護するCrB層の表面層で構成された本発明被覆超硬工具は、いずれも各種のTi系合金や高Si含有Al−Si系合金などの硬質難削材の高速切削で、高い発熱を伴うのにもかかわらず、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、(Ti,Al)N層の耐摩耗硬質層だけからなる従来被覆超硬工具においては、高熱発生を伴う高速切削加工では切刃部の摩耗進行が速く、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆超硬工具は、特に各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工は勿論のこと、特に高い発熱を伴なう上記の硬質難削材の高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化および自動化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
被覆超硬工具を構成する表面被覆層を形成するのに用いた蒸着装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。 通常のアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン系サーメットからなる超硬基体の表面に、硬質被覆層を物理蒸着してなる表面被覆超硬合金製切削工具において、前記硬質被覆層を、アークイオンプレーティング装置とスパッタリング装置が共存する蒸着装置を用い、前記超硬基体側から、
    (a)耐摩耗硬質層として、上記アークイオンプレーティング装置を用いて蒸着形成され
    組成式:(Ti1-X AlX )N(ただし、原子比で、Xは0.40〜0.75を示す)、
    を満足し、0.8〜5μmの平均層厚を有するTiとAlの複合窒化物層、
    (b)密着接合層として、上記アークイオンプレーティング装置とスパッタリング装置を同時に用いて蒸着形成された、0.1〜0.5μmの平均層厚を有するTiとAlとCrの複合硼窒化物層
    (c)表面層として、上記スパッタリング装置を用いて蒸着形成された、0.8〜5μmの平均層厚を有するCr硼化物層、
    以上(a)〜(c)からなる硬質被覆層で構成したことを特徴とする、高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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