以下、複数の実施形態による流体制御弁、および、バルブタイミング調整装置を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。また、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位は、同一または同様の作用効果を奏する。
(第1実施形態)
第1実施形態による流体制御弁、および、それを適用したバルブタイミング調整装置を図1、2に示す。バルブタイミング調整装置10は、内燃機関としてのエンジン1のクランク軸2に対するカム軸3の回転位相を変化させることによって、カム軸3が開閉駆動する吸気弁4または排気弁5のうち吸気弁4のバルブタイミングを調整するものである。バルブタイミング調整装置10は、クランク軸2からカム軸3までの動力伝達経路に設けられている。クランク軸2は、「駆動軸」に対応する。カム軸3は、「従動軸」に対応する。吸気弁4、排気弁5は、「バルブ」に対応する。
バルブタイミング調整装置10の構成について図1、2に基づき説明する。バルブタイミング調整装置10は、位相変換部PC、流体供給源としての作動油供給源OS、作動油制御部OC、オイル排出部OD、遅角供給油路RRs、進角供給油路RAs、ドレン油路としての遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAd等を備えている。
位相変換部PCは、ハウジング20、ベーンロータ30を有している。ハウジング20は、ギア部21およびケース22を有している。ケース22は、筒部221、板部222、223を有している。筒部221は、筒状に形成されている。板部222は、筒部221の一端を塞ぐよう筒部221と一体に形成されている。板部223は、筒部221の他端を塞ぐよう設けられている。これにより、ハウジング20の内側に空間200が形成されている。板部223は、ボルト12により筒部221に固定されている。ギア部21は、板部223の外縁部に形成されている。
板部223は、カム軸3の端部に嵌合している。カム軸3は、ハウジング20を回転可能に支持している。ギア部21とクランク軸2とには、チェーン6が巻き掛けられている。ギア部21は、クランク軸2と連動して回転する。ケース22は、筒部221から径方向内側に突き出す複数の隔壁部23を形成している。ケース22の板部222の中央には、ケース22の外側の空間に開口する開口部24が形成されている。開口部24は、ベーンロータ30に対してカム軸3とは反対側に位置する。
ベーンロータ30は、ボス31、および、複数のベーン32を有している。ボス31は、筒状であり、カム軸3の端部に固定される。ベーン32は、ボス31から径方向外側に向かって各隔壁部23間に突き出している。ハウジング20の内側の空間200は、ベーン32により遅角室201と進角室202とに仕切られている。すなわち、ハウジング20は、ベーンロータ30との間に遅角室201および進角室202を形成している。遅角室201は、ベーン32に対して周方向の一方に位置している。進角室202は、ベーン32に対して周方向の他方に位置している。ベーンロータ30は、遅角室201および進角室202に供給される流体としての作動油の油圧に応じて、ハウジング20に対して遅角方向または進角方向へ相対回転する。ここで、遅角室201および進角室202は、流体供給対象としての「油圧室」に対応する。
本実施形態では、流体制御弁としての作動油制御弁11は、作動油制御部OCに対応する。作動油制御弁11は、スリーブ400、弁座面としての弁座面56、流路部としての遅角供給開口部ORs、流路部としての進角供給開口部OAs、スプール60、リサイクル油路Rre、チェック弁としての遅角供給チェック弁71、チェック弁としての進角供給チェック弁72、リサイクルチェック弁81、回転規制部95等を備えている。
本実施形態では、作動油制御弁11は、ハウジング20およびベーンロータ30すなわち位相変換部PCの中央部に設けられる(図1、2参照)。作動油制御弁11は、少なくとも一部がハウジング20の内側に位置するよう設けられている。なお、作動油制御弁11は、位相変換部PCの回転軸上に位置する。
スリーブ400は、外筒部としてのアウタースリーブ40、内筒部としてのインナースリーブ50を有している。アウタースリーブ40は、例えば鉄を含む比較的硬度が高い材料により略円筒状に形成されている。アウタースリーブ40は、内周壁が略円筒面状に形成されている。図3に示すように、アウタースリーブ40の一方の端部の外周壁には、ねじ部41が形成されている。アウタースリーブ40の他方の端部側には、外周壁から径方向外側へ環状に延びる係止部49が形成されている。
カム軸3のバルブタイミング調整装置10側の端部には、軸穴部100、供給穴部101が形成されている。軸穴部100は、カム軸3のバルブタイミング調整装置10側の端面の中央からカム軸3の軸方向に延びるようにして形成されている。供給穴部101は、カム軸3の外壁から径方向内側に延びて軸穴部100に連通するよう形成されている(図1参照)。
カム軸3の軸穴部100の内壁には、アウタースリーブ40のねじ部41にねじ結合可能な軸側ねじ部110が形成されている。アウタースリーブ40は、ベーンロータ30のボス31の内側を通り、ねじ部41がカム軸3の軸側ねじ部110に結合するようにしてカム軸3に固定される。このとき、係止部49は、ベーンロータ30のボス31のカム軸3とは反対側の端面を係止する。これにより、ベーンロータ30は、カム軸3と係止部49とに挟み込まれるようにしてカム軸3に固定される。このように、アウタースリーブ40は、ベーンロータ30の中央部に設けられる。
本実施形態では、作動油供給源OSは、オイルポンプ8である。また、オイル排出部ODは、オイルパン7である。オイルポンプ8は、供給穴部101に接続される。オイルポンプ8は、オイルパン7に貯留されている作動油を汲み上げ、供給穴部101に供給する。これにより、軸穴部100には、作動油が流入する。
インナースリーブ50は、例えばアルミニウムを含む比較的硬度が低い材料により略円筒状に形成されている。つまり、インナースリーブ50は、アウタースリーブ40よりも硬度が低い材料により形成されている。インナースリーブ50は、内周壁および外周壁が略円筒面状に形成されている。インナースリーブ50は、表面にアルマイト等の表面硬化処理が施されており、表面に母材と比較して高硬度の表面層を有する。
図3に示すように、インナースリーブ50は、外周壁がアウタースリーブ40の内周壁に嵌合するようアウタースリーブ40の内側に設けられている。インナースリーブ50は、アウタースリーブ40に対し相対移動不能である。インナースリーブ50の一端には、スリーブ封止部51が設けられている。スリーブ封止部51は、インナースリーブ50の一端を塞いでいる。ここで、インナースリーブ50は、「スリーブ」に対応する。
スプール60は、例えば金属により略円筒状に形成されている。スプール60は、外周壁がインナースリーブ50の内周壁と摺動し、軸方向に往復移動可能なようインナースリーブ50の内側に設けられている。すなわち、スプール60は、インナースリーブ50の内側においてインナースリーブ50に対し軸方向に相対移動可能に設けられている。スプール60の一端には、スプール封止部62が設けられている。スプール封止部62は、スプール60の一端を塞いでいる。
インナースリーブ50の内側におけるスリーブ封止部51とスプール60の他端との間には、容積可変空間Svが形成されている。容積可変空間Svは、スプール60がインナースリーブ50に対し軸方向へ移動するとき、容積が変化する。すなわち、スリーブ封止部51は、スプール60との間に、容積が変化する容積可変空間Svを形成している。
容積可変空間Svには、スプリング63が設けられている。スプリング63は、所謂コイルスプリングであり、一端がスリーブ封止部51に当接し、他端がスプール60の他端に当接している。スプリング63は、スプール60をスリーブ封止部51とは反対側へ付勢している。
アウタースリーブ40の他方の端部の径方向内側には、係止部59が設けられている。係止部59は有底筒状に形成され、外周壁がアウタースリーブ40の内周壁に嵌合するよう設けられている。係止部59の底部の中央には、穴部が形成されており、当該穴部の内側にスプール封止部62が位置している。
係止部59は、底部により、スプール60の一端を係止可能である。係止部59は、スプール60のスリーブ封止部51とは反対側へのスプール60の移動を規制可能である。これにより、スプール60は、インナースリーブ50の内側からの脱落が抑制されている。
スプール60は、係止部59に当接する位置から、スリーブ封止部51に当接する位置まで、軸方向に移動可能である。すなわち、係止部59に当接する位置(図3参照)から、スリーブ封止部51に当接する位置までが、スリーブ400に対する移動可能範囲である。以下、このスプール60の移動可能範囲を適宜「ストローク区間」と呼ぶ。
図3に示すように、インナースリーブ50のスリーブ封止部51側の端部は、外径がアウタースリーブ40の内径より小さく形成されている。これにより、インナースリーブ50のスリーブ封止部51側の端部の外周壁とアウタースリーブ40の内周壁との間には、略円筒状の空間である筒状空間St1が形成されている。
また、インナースリーブ50には、環状凹部Htが形成されている。環状凹部Htは、インナースリーブ50の外周壁の係止部49に対応する位置から径方向内側へ環状に凹むよう形成されている。これにより、環状凹部Htとアウタースリーブ40の内周壁との間には、環状の空間である環状空間St2が形成されている。
また、インナースリーブ50には、流路溝部52が形成されている。流路溝部52は、インナースリーブ50の外周壁から径方向内側へ凹み、かつ、インナースリーブ50の軸方向へ延びるようにして形成されている(図3参照)。流路溝部52は、インナースリーブ50の周方向に等間隔で2つ形成されている。流路溝部52は、軸方向流路部としての軸方向供給油路RsAを形成している。すなわち、軸方向供給油路RsAは、アウタースリーブ40とインナースリーブ50との界面T1においてスリーブ400の軸方向に延びるよう形成されている。軸方向供給油路RsAは、一端が筒状空間St1に接続し、他端が環状空間St2に接続している。
図3に示すように、インナースリーブ50には、規制溝部511、512が形成されている。規制溝部511は、インナースリーブ50の内周壁の筒状空間St1の端部に対応する位置から径方向外側へ環状に凹むよう形成されている。規制溝部512は、インナースリーブ50の内周壁の環状凹部Htに対応する位置から径方向外側へ環状に凹むよう形成されている。
弁座面56は、スリーブとしてのインナースリーブ50の内壁である規制溝部511、512の底面において略円筒状に形成されている。
また、インナースリーブ50には、移動規制部513が形成されている。移動規制部513は、規制溝部511と規制溝部512との間においてインナースリーブ50の外周壁から径方向内側へ環状に凹むよう形成されている。そのため、移動規制部513の周方向の一部は、流路溝部52に接続している。
移動規制部513は、環状流路部Rriを形成している。つまり、環状流路部Rriは、アウタースリーブ40とインナースリーブ50との間において軸方向供給油路RsAに接続しつつスリーブ400の周方向に延びるよう環状に形成されている。
スリーブ400は、遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAs、遅角開口部OR、進角開口部OA、リサイクル開口部Oreを有している。
遅角供給開口部ORsは、スリーブ400の径方向に延びてインナースリーブ50の弁座面56と筒状空間St1および軸方向供給油路RsAとを接続するよう形成されている(図3参照)。すなわち、遅角供給開口部ORsは、スリーブとしてのインナースリーブ50の外側と弁座面56とを連通する。遅角供給開口部ORsは、弁座面56に開口している。なお、遅角供給開口部ORsは、インナースリーブ50の周方向において180度の範囲に等間隔で5つ形成されている。ここで、遅角供給開口部ORsは、「流路部」に対応する。
進角供給開口部OAsは、スリーブ400の径方向に延びてインナースリーブ50の弁座面56と環状空間St2および軸方向供給油路RsAとを接続するよう形成されている(図3参照)。すなわち、進角供給開口部OAsは、スリーブとしてのインナースリーブ50の外側と弁座面56とを連通する。進角供給開口部OAsは、弁座面56に開口している。なお、進角供給開口部OAsは、インナースリーブ50の周方向において180度の範囲に等間隔で5つ形成されている(図4参照)。ここで、進角供給開口部OAsは、「流路部」に対応する。
遅角開口部ORは、スリーブ400の径方向に延びてインナースリーブ50の内側の空間とアウタースリーブ40の外側の空間とを接続するよう形成されている。なお、遅角開口部ORは、スリーブ400の周方向に複数形成されている。遅角開口部ORは、遅角油路301を経由して遅角室201に連通している。
進角開口部OAは、スリーブ400の径方向に延びてインナースリーブ50の内側の空間とアウタースリーブ40の外側の空間とを接続するよう形成されている。進角開口部OAは、遅角開口部ORに対し係止部49側に形成されている。なお、進角開口部OAは、スリーブ400の周方向に複数形成されている。進角開口部OAは、進角油路302を経由して進角室202に連通している。
インナースリーブ50の移動規制部513には、略円筒状の弁座面55が形成されている(図3参照)。すなわち、弁座面55は、環状流路部Rriのインナースリーブ50側に筒状に形成されている。リサイクル開口部Oreは、スリーブ400の径方向に延びて弁座面55とインナースリーブ50の内側とを連通するよう形成されている。つまり、リサイクル開口部Oreは、環状流路部Rriとインナースリーブ50の内側の空間とを接続している。リサイクル開口部Oreは、インナースリーブ50の周方向に等間隔で複数形成されている。
スプール60は、遅角供給凹部HRs、遅角ドレン凹部HRd、進角ドレン凹部HAd、進角供給凹部HAs、ドレン開口部Od1、Od2を有している。遅角供給凹部HRs、遅角ドレン凹部HRd、進角ドレン凹部HAd、進角供給凹部HAsは、それぞれ、スプール60の外周壁から径方向内側へ凹むようにして環状に形成されている。遅角供給凹部HRs、遅角ドレン凹部HRd、進角ドレン凹部HAd、進角供給凹部HAsは、この順でスプール60の軸方向に並ぶよう形成されている。また、遅角ドレン凹部HRdと進角ドレン凹部HAdとは、一体に形成されている。遅角ドレン凹部HRdおよび進角ドレン凹部HAdは、インナースリーブ50の内周壁との間に特定空間Ssを形成している。すなわち、スプール60は、スリーブ400との間に特定空間Ssを形成している。
ドレン開口部Od1は、スプール60の内側の空間と遅角ドレン凹部HRdおよび進角ドレン凹部HAd、すなわち、特定空間Ssとを連通するよう形成されている。ドレン開口部Od2は、スプール60のスプール封止部62側の端部において内側の空間と外側の空間とを連通するよう形成されている。ドレン開口部Od1は、スプール60の周方向に例えば等間隔で2つ形成されている。ドレン開口部Od2は、スプール60の周方向に例えば等間隔で4つ形成されている。
遅角供給油路RRsは、作動油制御弁11を経由してオイルポンプ8と遅角室201とを接続する。進角供給油路RAsは、作動油制御弁11を経由してオイルポンプ8と進角室202とを接続する。ドレン油路としての遅角ドレン油路RRdは、遅角室201とオイルパン7とを接続する。ドレン油路としての進角ドレン油路RAdは、進角室202とオイルパン7とを接続する。
遅角供給油路RRsは、供給穴部101、軸穴部100、筒状空間St1、軸方向供給油路RsA、遅角供給開口部ORs、規制溝部511、遅角供給凹部HRs、遅角開口部OR、遅角油路301を経由して、オイルポンプ8と遅角室201とを接続する。すなわち、流路部としての遅角供給開口部ORsには、オイルポンプ8と遅角室201との間の作動油が流通可能である。
進角供給油路RAsは、供給穴部101、軸穴部100、筒状空間St1、軸方向供給油路RsA、進角供給開口部OAs、規制溝部512、進角供給凹部HAs、進角開口部OA、進角油路302を経由して、オイルポンプ8と進角室202とを接続する。すなわち、流路部としての進角供給開口部OAsには、オイルポンプ8と進角室202との間の作動油が流通可能である。
遅角ドレン油路RRdは、遅角油路301、遅角開口部OR、遅角ドレン凹部HRd、ドレン開口部Od1、Od2を経由して、遅角室201とオイルパン7とを接続する。
進角ドレン油路RAdは、進角油路302、進角開口部OA、進角ドレン凹部HAd、ドレン開口部Od1、Od2を経由して、進角室202とオイルパン7とを接続する。
このように、遅角供給油路RRs、進角供給油路RAs、遅角ドレン油路RRd、進角ドレン油路RAdは、一部が作動油制御弁11の内部に形成される。また、軸方向供給油路RsAは、進角供給油路RAsにおいてスリーブ400の軸方向に延びるよう形成されている。すなわち、スリーブ400は、進角供給油路RAsにおいてスリーブ400の軸方向に延びる軸方向供給油路RsAを有している。
リサイクル油路Rreは、ドレン油路としての遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdと遅角供給油路RRsおよび進角供給油路RAsとを接続する。図3に示すように、リサイクル油路Rreは、特定空間Ssからリサイクル開口部Ore、移動規制部513、環状流路部Rriを経由して遅角供給油路RRsおよび進角供給油路RAs、すなわち、軸方向供給油路RsAに接続している。
ドレン油路としての遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdは、遅角油路301、遅角開口部OR、進角油路302、進角開口部OA、特定空間Ss、ドレン開口部Od1を経由してスプール60の内側の空間に接続している。
ドレン開口部Od1は、ドレン油路において特定空間Ssに接続し特定空間Ssからスリーブ400またはスプール60の径方向へ延びるよう形成されている。リサイクル開口部Oreは、リサイクル油路Rreにおいて特定空間Ssに接続し特定空間Ssからドレン開口部Od1とは反対側へ延びるよう形成されている。リサイクル油路Rreは、特定空間Ssにおいて遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdに接続している。
図3に示すように、ドレン開口部Od1は、少なくとも一部がスリーブ400またはスプール60の軸方向においてリサイクル開口部Oreと重なるよう形成されている。また、ドレン開口部Od1は、特定空間Ssからスリーブ400またはスプール60の径方向内側へ延びるようスプール60に形成されている。また、リサイクル開口部Oreは、特定空間Ssからスリーブ400またはスプール60の径方向外側へ延びるようインナースリーブ50に形成されている。
スプール60が係止部59に当接しているとき(図3参照)、すなわち、スプール60がストローク区間の一方の端部に位置するとき、スプール60が遅角開口部ORを開いているため、オイルポンプ8は、遅角供給油路RRsの供給穴部101、軸穴部100、筒状空間St1、軸方向供給油路RsA、遅角供給開口部ORs、規制溝部511、遅角供給凹部HRs、遅角開口部OR、遅角油路301を経由して遅角室201に連通する。これにより、オイルポンプ8から遅角供給油路RRsを経由して遅角室201に作動油を供給することができる。また、このとき、進角室202は、進角ドレン油路RAdの進角油路302、進角開口部OA、進角ドレン凹部HAd、ドレン開口部Od1、Od2を経由してオイルパン7に連通する。これにより、進角室202から進角ドレン油路RAdを経由してオイルパン7に作動油を排出することができる。
スプール60が係止部59とスリーブ封止部51との間に位置しているとき、すなわち、スプール60がストローク区間の中間に位置するとき、オイルポンプ8は、進角供給油路RAsの供給穴部101、軸穴部100、筒状空間St1、軸方向供給油路RsA、進角供給開口部OAs、規制溝部512、進角供給凹部HAs、進角開口部OA、進角油路302を経由して進角室202に連通する。なお、このとき、遅角供給油路RRsによりオイルポンプ8と遅角室201とは連通している。これにより、オイルポンプ8から遅角供給油路RRs、進角供給油路RAsを経由して遅角室201、進角室202に作動油を供給することができる。ただし、スプール60により遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdは閉じられている、すなわち、遮断されているため、作動油は、遅角室201および進角室202からオイルパン7に排出されない。
スプール60がスリーブ封止部51に当接しているとき、すなわち、スプール60がストローク区間の他方の端部に位置するとき、遅角室201は、遅角ドレン油路RRdの遅角油路301、遅角開口部OR、遅角ドレン凹部HRd、ドレン開口部Od1、Od2を経由してオイルパン7に連通する。なお、このとき、進角供給油路RAsによりオイルポンプ8と進角室202とは連通している。これにより、遅角室201から遅角ドレン油路RRdを経由してオイルパン7に作動油を排出することができるとともに、オイルポンプ8から進角供給油路RAsを経由して進角室202に作動油を供給することができる。
アウタースリーブ40のスリーブ封止部51側の端部の内側、すなわち、遅角供給油路RRsおよび進角供給油路RAsの途中には、フィルタ58が設けられている。フィルタ58は、例えば円板状のメッシュである。フィルタ58は、作動油に含まれる異物を捕集可能である。そのため、フィルタ58の下流側、すなわち、オイルポンプ8とは反対側に異物が流れるのを抑制することができる。
遅角供給チェック弁71は、単一の板材としての長方形の金属薄板を巻くことにより筒状に形成され外周壁が弁座面56に当接可能に設けられた弁本体700、および、弁本体700の周方向の一方の端部である弁外端部701側の部位が、周方向の他方の端部である弁内端部702側の部位の径方向外側に重なることで形成される重なり部703を有している。本実施形態では、弁本体700の周方向の一方の端部である弁外端部701側の部位は、周方向の他方の端部である弁内端部702側の部位の径方向外側に位置し、周方向において弁内端部702側の部位と重なるよう設けられ、重なり部703を形成している(図4〜7参照)。
遅角供給チェック弁71は、弁本体700の外周壁が弁座面56に当接可能なよう規制溝部511に設けられている。遅角供給チェック弁71は、規制溝部511において径方向に弾性変形可能に設けられている。遅角供給チェック弁71は、遅角供給開口部ORsに対しインナースリーブ50の径方向内側に設けられている。遅角供給チェック弁71は、規制溝部511に設けられ、遅角供給油路RRsに作動油が流れていない状態、すなわち、外力が作用していない状態では、弁外端部701側の部位が弁内端部702側の部位に重なった状態である。
作動油が遅角供給油路RRsにおいて遅角供給開口部ORs側から遅角供給凹部HRs側へ流れるとき、遅角供給チェック弁71は、弁本体700の外周壁が作動油により押され径方向内側へ縮まるよう、すなわち、縮径するようにして変形する。これにより、遅角供給チェック弁71の弁本体700の外周壁が弁座面56から離間することにより開弁し、作動油は、遅角供給開口部ORs、遅角供給チェック弁71を経由して遅角供給凹部HRs側へ流れることができる。このとき、弁外端部701側の部位は、弁内端部702側の部位との重なり範囲の長さを拡大しながら一部が重なった状態を維持する。
遅角供給油路RRsを流れる作動油の流量が所定値以下になると、遅角供給チェック弁71は、径方向外側へ拡がるよう、すなわち、拡径するようにして変形する。さらに、作動油が遅角供給凹部HRs側から遅角供給開口部ORs側へ流れる場合、遅角供給チェック弁71の弁本体700の内周壁が作動油により径方向外側へ押され、弁本体700の外周壁が弁座面56に当接することにより閉弁する。これにより、遅角供給凹部HRs側から遅角供給開口部ORs側への作動油の流れが規制される。
このように、遅角供給チェック弁71は、逆止弁として機能し、遅角供給開口部ORs側から遅角供給凹部HRs側への作動油の流れを許容し、遅角供給凹部HRs側から遅角供給開口部ORs側への作動油の流れを規制可能である。すなわち、遅角供給チェック弁71は、遅角供給油路RRsにおいて作動油制御弁11のスプール60に対しオイルポンプ8側に設けられ、オイルポンプ8側から遅角室201側への作動油の流れのみ許容する。
進角供給チェック弁72の構成は、遅角供給チェック弁71と同様(図4〜7参照)のため、詳細な構成の説明を省略する。
進角供給チェック弁72は、弁本体700の外周壁が弁座面56に当接可能なよう規制溝部512に設けられている。進角供給チェック弁72は、規制溝部512において径方向に弾性変形可能に設けられている。進角供給チェック弁72は、進角供給開口部OAsに対しインナースリーブ50の径方向内側に設けられている。進角供給チェック弁72は、規制溝部512に設けられ、進角供給油路RAsに作動油が流れていない状態、すなわち、外力が作用していない状態では、弁外端部701側の部位が弁内端部702側の部位に重なった状態である。
作動油が進角供給油路RAsにおいて進角供給開口部OAs側から進角供給凹部HAs側へ流れるとき、進角供給チェック弁72は、弁本体700の外周壁が作動油により押され径方向内側へ縮まるよう、すなわち、縮径するようにして変形する。これにより、進角供給チェック弁72の弁本体700の外周壁が弁座面56から離間することにより開弁し、作動油は、進角供給開口部OAs、進角供給チェック弁72を経由して進角供給凹部HAs側へ流れることができる。このとき、弁外端部701側の部位は、弁内端部702側の部位との重なり範囲の長さを拡大しながら一部が重なった状態を維持する。
進角供給油路RAsを流れる作動油の流量が所定値以下になると、進角供給チェック弁72は、径方向外側へ拡がるよう、すなわち、拡径するようにして変形する。さらに、作動油が進角供給凹部HAs側から進角供給開口部OAs側へ流れる場合、進角供給チェック弁72の弁本体700の内周壁が作動油により径方向外側へ押され、弁本体700の外周壁が弁座面56に当接することにより閉弁する。これにより、進角供給凹部HAs側から進角供給開口部OAs側への作動油の流れが規制される。
このように、進角供給チェック弁72は、逆止弁として機能し、進角供給開口部OAs側から進角供給凹部HAs側への作動油の流れを許容し、進角供給凹部HAs側から進角供給開口部OAs側への作動油の流れを規制可能である。すなわち、進角供給チェック弁72は、進角供給油路RAsにおいて作動油制御弁11のスプール60に対しオイルポンプ8側に設けられ、オイルポンプ8側から進角室202側への作動油の流れのみ許容する。
リサイクルチェック弁81の構成は、外径の違い、および、後述する係止部91が形成されていない点を除き遅角供給チェック弁71と同様(図6参照)のため、詳細な構成の説明を省略する。
リサイクルチェック弁81は、移動規制部513、すなわち、環状流路部Rriにおいてリサイクル油路Rre上に設けられている。リサイクルチェック弁81は、環状流路部Rriにおいて径方向に弾性変形可能に設けられている。リサイクルチェック弁81は、弁座面55に対しインナースリーブ50の径方向外側に設けられている。リサイクルチェック弁81は、環状流路部Rriに設けられ、リサイクル油路Rreに作動油が流れていない状態、すなわち、外力が作用していない状態では、周方向の一方の端部が他方の端部側の部位に重なった状態である。
作動油がリサイクル油路Rreにおいてリサイクル開口部Ore側から環状流路部Rri側へ流れるとき、リサイクルチェック弁81は、内周壁が作動油により押され径方向外側へ拡がるよう、すなわち、拡径するようにして変形する。これにより、リサイクルチェック弁81の内周壁が弁座面55から離間することにより開弁し、作動油は、リサイクルチェック弁81を経由して環状流路部Rri側へ流れることができる。
リサイクル油路Rreを流れる作動油の流量が所定値以下になると、リサイクルチェック弁81は、径方向内側へ縮まるよう、すなわち、縮径するようにして変形する。さらに、作動油が環状流路部Rri側からリサイクル開口部Ore側へ流れる場合、リサイクルチェック弁81の外周壁が作動油により径方向内側へ押され、弁座面55に当接し閉弁する。これにより、環状流路部Rri側からリサイクル開口部Ore側への作動油の流れが規制される。
このように、リサイクルチェック弁81は、逆止弁として機能し、リサイクル開口部Ore側から環状流路部Rri側への作動油の流れを許容し、環状流路部Rri側からリサイクル開口部Ore側への作動油の流れを規制可能である。すなわち、リサイクルチェック弁81は、リサイクル油路Rreにおいてドレン油路側から遅角供給油路RRs側および進角供給油路RAs側への作動油の流れのみ許容する。移動規制部513は、リサイクルチェック弁81の軸方向の移動を規制可能である。
図6、7に示すように、遅角供給チェック弁71は、係止部91をさらに有している。係止部91は、弁本体700の外周壁に形成されている。より具体的には、係止部91は、弁本体700の弁外端部701の外周壁から径方向外側へ突出するよう弁本体700と一体に形成されている。
図4に示すように、回転規制部95は、弁座面56に開口するよう弁座面56に形成されている。遅角供給チェック弁71は、係止部91が回転規制部95内に位置するよう規制溝部511に設けられる。これにより、回転規制部95は、開口部によって係止部91を係止することでインナースリーブ50に対する遅角供給チェック弁71の周方向の回転を規制可能である。
<2>
図4〜7に示すように、弁本体700は、周方向の一方の端部である弁外端部701側の部位が、周方向の他方の端部である弁内端部702側の部位の径方向外側に重なることで形成される重なり部703を有している。係止部91は、弁本体700のうち弁外端部701側の部位の外周壁に形成されている。
<4>
図4に示すように、係止部91は、弁本体700の外周壁から径方向外側へ突出するよう形成されている。回転規制部95は、弁座面56から径方向外側へ凹むよう形成されている。
ここで、係止部91を含む遅角供給チェック弁71の製造方法について説明する。図6〜8に示すように、遅角供給チェック弁71は、長方形の金属薄板である弁本体700(図8参照)を筒状に巻くことにより形成される。
<5>
図6〜8に示すように、係止部91は、弁本体700の周方向の一方の端部である弁外端部701から周方向に延びる部位911を径方向外側へ折り曲げることにより形成される。
<7>
図5に示すように、弁本体700の板厚をt、係止部91の弁本体700の外周壁からの突出高さをhとすると、遅角供給チェック弁71は、0.5≦h/t≦2となるよう形成されている。本実施形態では、弁本体700と同一の板厚の部位を折り曲げて係止部91を形成している。そのため、h=tであり、遅角供給チェック弁71は、h/t=1となるよう形成されている。
<6>
図4、5に示すように、回転規制部95は、弁座面56から径方向外側へ凹み、インナースリーブ50を径方向に貫くよう形成されている。つまり、回転規制部95は、弁座面56とインナースリーブ50の外側とを連通するよう形成されている。なお、回転規制部95は、インナースリーブ50の周方向において遅角供給開口部ORsの形成されていない範囲に形成されている。より具体的には、インナースリーブ50の軸Ax1を含む仮想平面VP1でインナースリーブ50を2つの領域に分けたとき、回転規制部95は、2つの領域の一方に形成されている(図4参照)。
<3>
図4に示すように、遅角供給開口部ORsは、インナースリーブ50の周方向に5つ形成されている。5つの遅角供給開口部ORsのうち半分以上である4つの遅角供給開口部ORsが、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されている。
図9に示すグラフでは、x軸は、複数の遅角供給開口部ORsの開口面積の合計に対する、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口する遅角供給開口部ORsの開口面積の割合に対応している。y軸は、開弁時における弁本体700のうち重なり部703の変位に対応している。
図9に示すように、xの値が小さくなる程、yの値が大きくなることがわかる。また、xの値が0.5以上のとき、yの値は0になることがわかる。以上より、複数の遅角供給開口部ORsのうち半分以上が、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されていれば、開弁時における重なり部703の変位を低減できることがわかる。
本実施形態では、上述のように、5つの遅角供給開口部ORsのうち半分以上である4つの遅角供給開口部ORsが、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されている。そのため、開弁時における重なり部703の変位を低減でき、係止部91の弁本体700の外周壁からの突出高さが小さくても、係止部91が回転規制部95から抜け出るのを抑制できる。
進角供給チェック弁72の構成は、遅角供給チェック弁71と同様(図4〜7参照)であり、弁本体700の外周壁に係止部91が形成されている。また、進角供給開口部OAsについても、遅角供給開口部ORsと同様(図4参照)、インナースリーブ50の周方向に複数形成されている。さらに、回転規制部95も、インナースリーブ50の周方向において進角供給開口部OAsと並ぶよう形成されている。
図1に示すように、スプール60のカム軸3とは反対側には、リニアソレノイド9が設けられる。リニアソレノイド9は、スプール封止部62に当接するようにして設けられる。リニアソレノイド9は、通電により、スプール封止部62を介してスプール60をスプリング63の付勢力に抗してカム軸3側へ押圧する。これにより、スプール60は、ストローク区間においてスリーブ400に対する軸方向の位置が変化する。
容積可変空間Svは、遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdに連通している。そのため、容積可変空間Svは、遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdのドレン開口部Od2を経由して大気に開放されている。これにより、容積可変空間Svの圧力を大気圧と同等にすることができる。そのため、スプール60の軸方向の移動を円滑にすることができる。
次に、スリーブ400に対するスプール60の位置による作動油の流れの変化について説明する。
スプール60が係止部59に当接しているとき、すなわち、スプール60がストローク区間の一方の端部に位置するとき、作動油は、オイルポンプ8から遅角供給油路RRsを経由して遅角室201に供給される。また、このとき、作動油は、進角室202から進角ドレン油路RAdを経由してオイルパン7に排出される。さらに、進角ドレン油路RAdを流れる作動油の一部は、リサイクル油路Rreを経由して軸方向供給油路RsA側、遅角供給油路RRs側へ戻される。これにより、進角室202から排出される作動油を再利用できる。なお、このとき、リサイクルチェック弁81により、リサイクル油路Rreにおける軸方向供給油路RsA側からドレン油路側への逆流が抑制されている。
スプール60が係止部59とスリーブ封止部51との間に位置しているとき、すなわち、スプール60がストローク区間の中間に位置するとき、作動油は、オイルポンプ8から遅角供給油路RRsを経由して遅角室201に供給される。また、このとき、作動油は、オイルポンプ8から進角供給油路RAsを経由して進角室202に供給される。なお、このとき、スプール60により遅角ドレン油路RRdおよび進角ドレン油路RAdは閉じられているため、ドレン油路に作動油は流れず、作動油はリサイクル油路Rreを経由して軸方向供給油路RsA側へ戻されない。
スプール60がスリーブ封止部51に当接しているとき、すなわち、スプール60がストローク区間の他方の端部に位置するとき、作動油は、オイルポンプ8から進角供給油路RAsを経由して進角室202に供給される。また、このとき、作動油は、遅角室201から遅角ドレン油路RRdを経由してオイルパン7に排出される。さらに、遅角ドレン油路RRdを流れる作動油の一部は、リサイクル油路Rreを経由して軸方向供給油路RsA側、進角供給油路RAs側へ戻される。これにより、遅角室201から排出される作動油を再利用できる。なお、このとき、リサイクルチェック弁81により、リサイクル油路Rreにおける軸方向供給油路RsA側からドレン油路側への逆流が抑制されている。
本実施形態は、ロックピン33をさらに備えている(図1、2参照)。ロックピン33は、有底円筒状に形成され、ベーン32に形成された収容穴部321に軸方向に往復移動可能に収容されている。ロックピン33の内側には、スプリング34が設けられている。スプリング34は、ロックピン33をケース22の板部222側へ付勢している。ケース22の板部222のベーン32側には、嵌入凹部25が形成されている。
ロックピン33は、ハウジング20に対しベーンロータ30が最遅角位置にあるとき、嵌入凹部25に嵌入可能である。ロックピン33が嵌入凹部25に嵌入しているとき、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が規制される。一方、ロックピン33が嵌入凹部25に嵌入していないとき、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容される。
ベーン32のロックピン33と進角室202との間には、進角室202に連通するピン制御油路304が形成されている(図2参照)。進角室202からピン制御油路304に流入する作動油の圧力は、ロックピン33がスプリング34の付勢力に抗して嵌入凹部25から抜け出す方向に働く。
以上のように構成されたバルブタイミング調整装置10では、進角室202に作動油が供給されると、ピン制御油路304に作動油が流入し、ロックピン33が嵌入凹部25から抜け出し、ハウジング20に対するベーンロータ30の相対回転が許容された状態となる。
次に、バルブタイミング調整装置10の作動について説明する。バルブタイミング調整装置10は、リニアソレノイド9の駆動により作動油制御弁11のスプール60を押圧し、作動油制御弁11を、オイルポンプ8と遅角室201とを接続しつつ、進角室202とオイルパン7とを接続する第1作動状態と、オイルポンプ8と進角室202とを接続しつつ、遅角室201とオイルパン7とを接続する第2作動状態と、オイルポンプ8と遅角室201および進角室202とを接続しつつ、遅角室201および進角室202とオイルパン7との間を遮断し位相変換部PCの位相を保持する位相保持状態と、に作動させる。
第1作動状態では、遅角供給油路RRsを経由して遅角室201に作動油が供給されつつ、進角ドレン油路RAdを経由して進角室202から作動油がオイルパン7に戻される。また、リサイクル油路Rreを経由して進角ドレン油路RAdから作動油が遅角供給油路RRsに戻される。
第2作動状態では、進角供給油路RAsを経由して進角室202に作動油が供給されつつ、遅角ドレン油路RRdを経由して遅角室201から作動油がオイルパン7に戻される。また、リサイクル油路Rreを経由して遅角ドレン油路RRdから作動油が進角供給油路RAsに戻される。
位相保持状態では、遅角供給油路RRsおよび進角供給油路RAsを経由して遅角室201および進角室202に作動油が供給されつつ、遅角室201および進角室202の作動油の排出が規制される。
バルブタイミング調整装置10は、カム軸3の回転位相が目標値よりも進角側である場合、作動油制御弁11を第1作動状態とする。これにより、ベーンロータ30がハウジング20に対して遅角方向へ相対回転し、カム軸3の回転位相が遅角側へ変化する。
また、バルブタイミング調整装置10は、カム軸3の回転位相が目標値よりも遅角側である場合、作動油制御弁11を第2作動状態とする。これにより、ベーンロータ30がハウジング20に対して進角方向へ相対回転し、カム軸3の回転位相が進角側へ変化する。
また、バルブタイミング調整装置10は、カム軸3の回転位相が目標値と一致する場合、作動油制御弁11を位相保持状態とする。これにより、カム軸3の回転位相が保持される。
本実施形態では、作動油制御弁11が第1作動状態または第2作動状態のとき、リサイクル油路Rreを経由してドレン油路側から遅角供給油路RRs側または進角供給油路RAs側へ作動油が戻される。これにより、進角室202または遅角室201から排出される作動油を再利用することができる。
また、作動油制御弁11が第1作動状態または第2作動状態のとき、リサイクルチェック弁81により、リサイクル油路Rreにおける各供給油路側からドレン油路側への逆流が抑制される。
以上説明したように、<1>本実施形態は、流体供給源としての作動油供給源OSから流体供給対象としての遅角室201、進角室202に供給する流体の流れを制御可能な作動油制御弁11であって、スリーブとしてのインナースリーブ50と弁座面56と流路部としての遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAsとスプール60とチェック弁としての遅角供給チェック弁71、進角供給チェック弁72と回転規制部95とを備えている。インナースリーブ50は、筒状に形成されている。弁座面56は、インナースリーブ50の内壁において筒状に形成されている。遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAsは、作動油供給源OSと遅角室201、進角室202との間の作動油が流通可能なよう、インナースリーブ50の外側と弁座面56とを連通する。スプール60は、インナースリーブ50内で軸方向に移動可能に設けられ、インナースリーブ50に対する軸方向の位置に応じて作動油供給源OSと遅角室201、進角室202との間の作動油の流れを制御可能である。
遅角供給チェック弁71、進角供給チェック弁72は、単一の板材を巻くことにより筒状に形成され外周壁が弁座面56に当接可能に設けられた弁本体700、および、弁本体700の外周壁に形成された係止部91を有し、弁本体700の外周壁が弁座面56から離間するよう縮径することにより開弁し、弁本体700の外周壁が弁座面56に当接するよう拡径することにより閉弁する。回転規制部95は、弁座面56に形成され、係止部91を係止することでインナースリーブ50に対する遅角供給チェック弁71、進角供給チェック弁72の回転を規制可能である。
本実施形態では、回転規制部95によりインナースリーブ50に対する遅角供給チェック弁71、進角供給チェック弁72の回転を規制可能である。そのため、インナースリーブ50の周方向において、遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAsに対し、弁本体700の周方向の一方の端部である弁外端部701または他方の端部である弁内端部702の位置が変化するのを抑制できる。これにより、弁本体700の開閉弁時の変形形状の変化を抑制できる。したがって、作動油制御弁11の性能を安定させることができる。
また、<2>本実施形態では、弁本体700は、周方向の一方の端部である弁外端部701が、周方向の他方の端部である弁内端部702側の部位の径方向外側に重なることで形成される重なり部703を有している。係止部91は、弁本体700のうち弁外端部701側の部位の外周壁に形成されている。
そのため、係止部91を比較的容易に形成できる。
また、<3>本実施形態では、遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAsは、インナースリーブ50の周方向に複数形成されている。複数の遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAsのうち半分以上が、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されている。
そのため、遅角供給チェック弁71の開弁時、弁本体700の外周壁は、遅角供給開口部ORsからの作動油の流れF1により回転規制部95側へ付勢される(図4参照)。また、進角供給チェック弁72の開弁時、弁本体700の外周壁は、進角供給開口部OAsからの作動油の流れにより回転規制部95側へ付勢される。これにより、係止部91の弁本体700の外周壁からの突出高さが小さい場合でも、係止部91が回転規制部95から抜け出るのを抑制できる。したがって、係止部91を小さくすることで組み付け時のチェック弁の挿入性を確保し組み付けコストを低減しつつ、回転規制部95によるチェック弁の回転規制の機能を確実に発揮させることができる。
また、<4>本実施形態では、係止部91は、弁本体700の外周壁から径方向外側へ突出するよう形成されている。回転規制部95は、弁座面56から径方向外側へ凹むよう形成されている。
そのため、係止部91および回転規制部95を比較的容易に形成できる。
また、<5>本実施形態では、係止部91は、弁本体700の周方向の一方の端部である弁外端部701から周方向に延びる部位911を径方向外側へ折り曲げることにより形成される。
そのため、係止部91を比較的低コストで形成できる。
また、<6>本実施形態では、回転規制部95は、弁座面56とインナースリーブ50の外側とを連通するよう形成されている。
そのため、回転規制部95を、インナースリーブ50の外側から機械加工により容易に形成できる。これにより、作動油制御弁11を低コストで製造できる。
また、<7>本実施形態では、弁本体700の板厚をt、係止部91の弁本体700の外周壁からの突出高さをhとすると、遅角供給チェック弁71、進角供給チェック弁72は、0.5≦h/t≦2となるよう形成されている。
そのため、係止部91を小さくでき、組み付け時のチェック弁の挿入性を確保することができる。これにより、組み付けコストを低減できる。
また、<9>本実施形態は、エンジン1のバルブタイミングを調整するバルブタイミング調整装置10であって、位相変換部PCと作動油制御弁11とを備える。位相変換部PCは、エンジン1のクランク軸2に連動して回転可能なようエンジン1のカム軸3に取り付けられ、流体供給対象としての油圧室(遅角室201、進角室202)を有し、遅角室201、進角室202に供給される作動油によりクランク軸2とカム軸3との位相を変換する。作動油制御弁11は、作動油供給源OSから遅角室201、進角室202に供給される作動油を制御する。
本実施形態の作動油制御弁11は、弁本体700の開閉弁時の変形形状の変化を抑制できる。したがって、作動油制御弁11の性能を安定させることができる。よって、バルブタイミング調整装置10の性能を安定させることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態による作動油制御弁一部を図10に示す。第2実施形態は、回転規制部95の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、回転規制部95は、インナースリーブ50の周方向に並ぶ複数の遅角供給開口部ORsのうち最も端に位置する1つの遅角供給開口部ORsに形成されている。すなわち、本実施形態では、複数の遅角供給開口部ORsのうちの1つを回転規制部95としても利用している。そのため、加工コストを低減できる。
遅角供給チェック弁71は、係止部91が回転規制部95内に位置するよう規制溝部511に設けられる。第1実施形態と同様、回転規制部95は、係止部91を係止することでインナースリーブ50に対する遅角供給チェック弁71の周方向の回転を規制可能である。
<3>
また、複数の遅角供給開口部ORsのうち半分以上が、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されている。
そのため、第1実施形態と同様、係止部91を小さくすることで組み付け時のチェック弁の挿入性を確保し組み付けコストを低減しつつ、回転規制部95によるチェック弁の回転規制の機能を確実に発揮させることができる。
進角供給チェック弁72の構成は、遅角供給チェック弁71と同様である。また、進角供給開口部OAsについても、遅角供給開口部ORsと同様、インナースリーブ50の周方向に複数形成されている。さらに、回転規制部95は、インナースリーブ50の周方向に並ぶ複数の進角供給開口部OAsのうち最も端に位置する1つの進角供給開口部OAsに形成されている。
(第3実施形態)
第3実施形態による作動油制御弁の一部を図11に示す。第3実施形態は、回転規制部95の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、回転規制部95は、インナースリーブ50の周方向の遅角供給開口部ORsとは異なる位置において、弁座面56から径方向外側へ凹むよう形成されている。なお、回転規制部95は、弁座面56とインナースリーブ50の外側とを連通するようには形成されていない。
インナースリーブ50の軸Ax1を含む仮想平面VP1でインナースリーブ50を2つの領域に分けたとき、回転規制部95は、2つの領域の一方に形成されている(図11参照)。
遅角供給チェック弁71は、係止部91が回転規制部95内に位置するよう規制溝部511に設けられる。第1実施形態と同様、回転規制部95は、係止部91を係止することでインナースリーブ50に対する遅角供給チェック弁71の周方向の回転を規制可能である。
<3>
また、複数の遅角供給開口部ORsのうち半分以上が、弁本体700のうち重なり部703以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されている。
そのため、第1実施形態と同様、係止部91を小さくすることで組み付け時のチェック弁の挿入性を確保し組み付けコストを低減しつつ、回転規制部95によるチェック弁の回転規制の機能を確実に発揮させることができる。
進角供給チェック弁72の構成は、遅角供給チェック弁71と同様である。また、進角供給開口部OAsについても、遅角供給開口部ORsと同様、インナースリーブ50の周方向に複数形成されている。さらに、回転規制部95は、インナースリーブ50の周方向の進角供給開口部OAsとは異なる位置において、弁座面56から径方向外側へ凹むよう形成されている。
(第4実施形態)
第4実施形態による作動油制御弁の一部を図12に示す。第4実施形態は、チェック弁の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、係止部91は、遅角供給チェック弁71の弁本体700の弁外端部701から弁本体700の短手方向に延びる2つの部位911(図12(A)参照)を一方の面側、すなわち、弁本体700の外周壁側へ折り曲げることにより形成される(図12(B)参照)。そのため、係止部91を比較的低コストで形成できる。
<7>
ここで、弁本体700の板厚をt、係止部91の弁本体700の外周壁からの突出高さをhとすると、遅角供給チェック弁71は、0.5≦h/t≦2となるよう形成されている。本実施形態では、h=2tであり、遅角供給チェック弁71は、h/t=2となるよう形成されている。
そのため、係止部91を小さくでき、組み付け時のチェック弁の挿入性を確保することができる。これにより、組み付けコストを低減できる。
進角供給チェック弁72の構成は、遅角供給チェック弁71と同様である。
(第5実施形態)
第5実施形態による作動油制御弁の一部を図13に示す。第5実施形態は、チェック弁の構成等が第1実施形態と異なる。
本実施形態では、係止部91は、遅角供給チェック弁71の弁本体700の弁外端部701の外周壁から径方向外側へ略円柱状に突出するよう形成されている。
図13に示すように、例えば、長方形の金属薄板である弁本体700を筒状に巻く前、弁本体700の一方の端部である弁外端部701の一方の面側からパンチ加工等することにより、他方の面側へ突出する係止部91を形成することができる。そのため、係止部91を比較的低コストで形成できる。
<7>
ここで、弁本体700の板厚をt、係止部91の弁本体700の外周壁からの突出高さをhとすると、遅角供給チェック弁71は、0.5≦h/t≦2となるよう形成されている。本実施形態では、h=tであり、遅角供給チェック弁71は、h/t=1となるよう形成されている。
そのため、係止部91を小さくでき、組み付け時のチェック弁の挿入性を確保することができる。これにより、組み付けコストを低減できる。
進角供給チェック弁72の構成は、遅角供給チェック弁71と同様である。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、作動油制御弁11が、インナースリーブ50の周方向に5つの流路部(遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAs)を備える例を示した。これに対し、他の実施形態では、作動油制御弁11は、インナースリーブ50の周方向に1〜4つ、または、6つ以上の流路部(遅角供給開口部ORs、進角供給開口部OAs)を備えることとしてもよい。ここで、1つの流路部を備える場合、回転規制部95を流路部と異なる位置に形成することが望ましい。
また、上述の実施形態では、複数の流路部のうち半分以上が、弁本体のうち重なり部以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されている例を示した。これに対し、他の実施形態では、複数の流路部のうち半分未満が、弁本体のうち重なり部以外の部分の外周壁に向かって開口するよう形成されていてもよい。
また、他の実施形態では、係止部91は、弁本体700の周方向において一方の端部である弁外端部701以外の位置に形成されていてもよい。また、弁本体700は、周方向の弁外端部701側の部位と弁内端部702側の部位とが重なっていなくてもよい。
また、他の実施形態では、チェック弁は、h/t<0.5、2<h/tとなるよう形成されていてもよい。
<8>
また、他の実施形態では、係止部は、弁本体の外周壁から径方向内側へ凹むよう形成され、回転規制部は、弁座面から径方向内側へ突出するよう形成されていてもよい。
また、他の実施形態では、作動油制御弁11は、遅角供給チェック弁71および進角供給チェック弁72のうちいずれか一方のみ備えていてもよい。また、リサイクルチェック弁81を備えていなくてもよい。また、アウタースリーブ40を備えていなくてもよい。
本開示による流体制御弁は、バルブタイミング調整装置に限らず、その他の機器等の供給対象に供給する流体の流れを制御するのに用いることもできる。
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。