以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、電動パワーステアリング装置の一般的な構成を示した図である。車両用操向装置の1つである電動パワーステアリング装置(EPS)は、操舵者から与えられる力が伝達する順に、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2、減速機構3、ユニバーサルジョイント4a,4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、トーションバーを有するコラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクTsを検出するトルクセンサ10及び操舵角θhを検出する舵角センサ14が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速機構3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTsと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによって、モータ20に供給する電流を制御する。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40等の車載ネットワークが接続されている。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット30は、主としてCPU(MCU、MPU等も含む)で構成される。図2は、電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニットのハードウェア構成を示す模式図である。
コントロールユニット30を構成する制御用コンピュータ1100は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)1004、インターフェース(I/F)1005、A/D(Analog/Digital)変換器1006、PWM(Pulse Width Modulation)コントローラ1007等を備え、これらがバスに接続されている。
CPU1001は、電動パワーステアリング装置の制御用コンピュータプログラム(以下、制御プログラムという)を実行して、電動パワーステアリング装置を制御する処理装置である。
ROM1002は、電動パワーステアリング装置を制御するための制御プログラムを格納する。また、RAM1003は、制御プログラムを動作させるためのワークメモリとして使用される。EEPROM1004には、制御プログラムが入出力する制御データ等が格納されている。制御データは、コントロールユニット30に電源が投入された後にRAM1003に展開された制御用コンピュータプログラム上で使用され、所定のタイミングでEEPROM1004に上書きされる。
ROM1002、RAM1003、及びEEPROM1004等は情報を格納する記憶装置であって、CPU1001が直接アクセスできる記憶装置(一次記憶装置)である。
A/D変換器1006は、操舵トルクTs、モータ20の電流検出値Im、及び操舵角θhの信号等を入力し、ディジタル信号に変換する。
インターフェース1005は、CAN40に接続されている。インターフェース1005は、車速センサ12からの車速Vの信号(車速パルス)を受け付けるためのものである。
PWMコントローラ1007は、モータ20に対する電流指令値に基づいてUVW各相のPWM制御信号を出力する。
図3は、電動パワーステアリング装置におけるコントロールユニットの内部ブロック構成の一例を示す図である。操舵トルクTs及び車速Vsは、電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、操舵トルクTs及び車速Vsに基づき、予め記憶しているルックアップテーブル(アシストマップ等)を参照し、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値Iref1を演算する。
補償信号生成部34は、補償信号CMを生成する。補償信号生成部34は、収れん性推定部341、慣性推定部342、セルフアライニングトルク(SAT:Self Aligning Torque)推定部343を備える。収れん性推定部341は、モータ20の角速度に基づいて車両のヨーレートを推定し、ハンドル1が振れ回る動作を制動することで、車両のヨーの収れん性を改善する補償値を推定する。慣性推定部342は、モータ20の角加速度に基づいて、モータ20の慣性力を推定し、応答性を高めるためにモータ20の慣性力を補償する補償値を推定する。SAT推定部343は、操舵トルクTs、アシストトルク、モータ20の角速度及び角加速度に基づいてセルフアライニングトルクTSATを推定し、そのセルフアライニングトルクを反力としてアシストトルクを補償する補償値を推定する。補償信号生成部34は、収れん性推定部341、慣性推定部342、SAT推定部343に加え、他の補償値を推定する推定部を備えてもよい。補償信号CMは、加算部344において慣性推定部342の補償値と、SAT推定部343の補償値とが加算され、この加算値と収れん性推定部341の補償値とが加算部345において加算された加算値である。なお、本開示において、SAT推定部343によって推定されるセルフアライニングトルクTSATは、後述する目標操舵トルク生成部200にも出力される。
加算部32Aにおいて、補償信号生成部34からの補償信号CMが電流指令値Iref1に加算されており、補償信号CMの加算によって、電流指令値Iref1に操舵システム系の特性補償がされ、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。そして、電流指令値Iref1は加算部32Aを経て、特性補償された電流指令値Iref2となり、電流指令値Iref2が電流制限部33に入力されている。電流制限部33において、電流指令値Iref2の最大電流が制限され、電流指令値Irefmが生成される。電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、モータ20側からフィードバックされている電流検出値Imとの偏差I(Irefm−Im)が減算部32Bで演算される。偏差Iが操舵動作の特性改善のためのPI制御部35に入力される。そうすると、PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、さらにモータ駆動部としてのインバータ回路37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流検出値Imは、電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。また、インバータ回路37は、駆動素子として電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:(以下、FETという。))が用いられ、FETのブリッジ回路で構成されている。
従来の電動パワーステアリング装置でのアシスト制御では、運転者の手入力にて加えられた操舵トルクをトーションバーの捩れトルクとしてトルクセンサで検出し、主にそのトルクに応じたアシスト電流としてモータ電流を制御している。しかしながら、この方法で制御を行なう場合、路面の状態(例えば傾斜)の違いにより、操舵角によって異なる操舵トルクとなってしまうことがある。モータ出力特性の経年使用によるバラツキによっても、操舵トルクに影響を与えることがある。
図4は、舵角センサの設置例を示す構造図である。
コラム軸2には、トーションバー2Aが備えられている。操向車輪8L,8Rには、路面反力Rr及び路面情報(路面の摩擦抵抗μ)が作用する。トーションバー2Aを挟み、コラム軸2のハンドル側には、上側角度センサが設けられている。トーションバー2Aを挟み、コラム軸2の操向車輪側には、下側角度センサが設けられている。上側角度センサは、ハンドル角θ1を検出し、下側角度センサは、コラム角θ2を検出する。操舵角θhは、コラム軸2の上部に設けられた舵角センサで検出される。トーションバーの捩れ角Δθは、ハンドル角θ1及びコラム角θ2の偏差から、下記(1)式で表される。また、トーションバートルクTtは、(1)式で表されるトーションバーの捩れ角Δθ用いて、下記(2)式で表される。なお、Ktは、トーションバー2Aのバネ定数である。
Δθ=θ2−θ1・・・(1)
Tt=−Kt×Δθ・・・(2)
トーションバートルクTtは、トルクセンサを用いて検出することも可能である。本実施形態では、トーションバートルクTtを操舵トルクTsとしても扱うこととする。
図5は、実施形態1に係るコントロールユニットの内部ブロック構成の一例を示す図である。
コントロールユニット30は、内部ブロック構成として、目標操舵トルク生成部200、捩れ角制御部300、操舵方向判定部400、及び変換部500を備えている。
本実施形態において、運転者のハンドル操舵は、EPS操舵系/車両系100のモータ20でアシスト制御される。EPS操舵系/車両系100は、モータ20の他に、角度センサ、角速度演算部等を含む。
目標操舵トルク生成部200は、本開示において車両の操舵系をアシスト制御する際の操舵トルクの目標値である目標操舵トルクTrefを生成する。変換部500は、目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する。捩れ角制御部300は、モータ20に供給する電流の制御目標値であるモータ電流指令値Irefを生成する。
捩れ角制御部300は、捩れ角Δθが目標捩れ角Δθrefとなるようなモータ電流指令値Irefを演算する。モータ20は、モータ電流指令値Irefにより駆動される。
操舵方向判定部400は、EPS操舵系/車両系100から出力されるモータ角速度ωmに基づき、操舵方向が右切りか左切りかを判定し、判定結果を操舵状態信号STsとして出力する。図6は、操舵方向の説明図である。
操舵方向が右切りか左切りかを示す操舵状態は、例えば図6に示すような操舵角θh及びモータ角速度ωmの関係で求めることができる。すなわち、モータ角速度ωmが正の値の場合は「右切り」と判定し、負の値の場合は「左切り」と判定する。なお、モータ角速度ωmの代わりに、操舵角θh、ハンドル角θ1又はコラム角θ2に対して速度演算を行って算出される角速度を用いても良い。
変換部500は、上記(2)式の関係を用いて、目標操舵トルク生成部200で生成された目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する。
次に、実施形態1のコントロールユニットにおける基本的な動作例について説明する。図7は、実施形態1に係るコントロールユニットの動作例を示すフローチャートである。
操舵方向判定部400は、EPS操舵系/車両系100から出力されるモータ角速度ωmの符号に基づき、操舵方向が右切りか左切りかを判定し、判定結果を操舵状態信号STsとして、目標操舵トルク生成部200に出力する(ステップS10)。
目標操舵トルク生成部200は、車速Vs、車速判定信号Vfail、操舵状態信号STs、操舵角θh、及び実ヨーレートγreに基づき、目標操舵トルクTrefを生成する(ステップS20)。
変換部500は、目標操舵トルク生成部200で生成された目標操舵トルクTrefを目標捩れ角Δθrefに変換する(ステップS20)。目標捩れ角Δθrefは、捩れ角制御部300に出力される。
捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref、操舵角θh、捩れ角Δθ、及びモータ角速度ωmに基づき、モータ電流指令値Irefを演算する(ステップS30)。
そして、捩れ角制御部300から出力されたモータ電流指令値Irefに基づいて電流制御が実施され、モータ20が駆動される(ステップS40)。
図8は、実施形態1の目標操舵トルク生成部の一構成例を示すブロック図である。図8に示すように、目標操舵トルク生成部200は、基本マップ部210、乗算部211、符号抽出部213、微分部220、ダンパゲインマップ部230、ヒステリシス補正部240、SAT情報補正部250、乗算部260,264、加算部261,262,265、及び操舵反力補正部280を備える。図9は、基本マップ部が保持する基本マップの特性例を示す図である。図10は、ダンパゲインマップ部が保持するダンパゲインマップの特性例を示す図である。
基本マップ部210には、操舵角θh及び車速Vsが入力される。基本マップ部210は、図9に示す基本マップを用いて、車速Vsをパラメータとするトルク信号Tref_a0を出力する。すなわち、基本マップ部210は、車速Vsに応じたトルク信号Tref_a0を出力する。
図9に示すように、トルク信号Tref_a0は、操舵角θhの大きさ(絶対値)|θh|の増加に伴い増加する特性を有する。また、トルク信号Tref_aは、車速Vsの増加に伴い増加する特性を有する。なお、図9では操舵角θhの大きさ|θh|に応じたマップを構成しているが、正負の操舵角θhに応じたマップを構成しても良い。この場合は、トルク信号Tref_a0の値は、正負の値を取り、後述する符号計算は不要である。
符号抽出部213は、操舵角θhの符号を抽出する。具体的には、例えば、操舵角θhの値を、操舵角θhの絶対値で除算する。これにより、符号抽出部213は、操舵角θhの符号が「+」の場合には「1」を出力し、操舵角θhの符号が「−」の場合には「−1」を出力する。
微分部220には、操舵角θhが入力される。微分部220は、操舵角θhを微分して、角速度情報である舵角速度ωhを算出する。微分部220は、算出した舵角速度ωhを乗算部260に出力する。
ダンパゲインマップ部230には、車速Vsが入力される。ダンパゲインマップ部230は、図10に示す車速感応型のダンパゲインマップを用いて、車速Vsに応じたダンパゲインDGを出力する。
図10に示すように、ダンパゲインDGは、車速Vsが高くなるに従い徐々に大きくなる特性を有する。ダンパゲインDGは、操舵角θhに応じて可変する態様としても良い。
乗算部260は、微分部220から出力される舵角速度ωhに対して、ダンパゲインマップ部230から出力されるダンパゲインDGを乗算し、トルク信号Tref_bとして加算部262に出力する。
操舵方向判定部400は、例えば図6に示すような判定を行う。ヒステリシス補正部240には、操舵角θh、車速Vs、及び、図6に示す判定結果である操舵状態信号STsが入力される。ヒステリシス補正部240は、操舵角θh及び操舵状態信号STsに基づき、下記(3)式及び(4)式を用いてトルク信号Tref_cを演算する。なお、下記(3)式及び(4)式において、xは操舵角θh、yR=Tref_c及びyL=Tref_cはトルク信号Tref_cとする。また、係数aは1よりも大きい値であり、係数cは0よりも大きい値である。係数Ahysは、ヒステリシス特性の出力幅を示し、係数cは、ヒステリシス特性の丸みを表す係数である。
yR=Ahys{1−a−c(x−b)}・・・(3)
yL=−Ahys{1−ac(x−b’)}・・・(4)
右切り操舵の際には、上記(3)式を用いて、トルク信号Tref_c(yR)を算出する。左切り操舵の際には、上記(4)式を用いて、トルク信号Tref_c(yL)を算出する。なお、右切り操舵から左切り操舵へ切り替える際、又は、左切り操舵から右切り操舵へ切り替える際には、操舵角θh及びトルク信号Tref_cの前回値であるの最終座標(x1,y1)の値に基づき、操舵切り替え後の上記(3)式及び(4)式に対し、下記(5)式又は(6)式に示す係数b又はb’を代入する。これにより、操舵切り替え前後の連続性が保たれる。
b=x1+(1/c)loga{1−(y1/Ahys)}・・・(5)
b’=x1−(1/c)loga{1−(y1/Ahys)}・・・(6)
上記(5)式及び(6)式は、上記(3)式及び(4)式において、xにx1を代入し、yR及びyLにy1を代入することにより導出することができる。
係数aとして、例えば、ネイピア数eを用いた場合、上記(3)式、(4)式、(5)式、(6)式は、それぞれ下記(7)式、(8)式、(9)式、(10)式で表せる。
yR=Ahys[1−exp{−c(x−b)}]・・・(7)
yL=−Ahys[{1−exp{c(x−b’)}]・・・(8)
b=x1+(1/c)loge{1−(y1/Ahys)}・・・(9)
b’=x1−(1/c)loge{1−(y1/Ahys)}・・・(10)
図11は、ヒステリシス補正部の特性例を示す図である。図11に示す例では、上記(9)式及び(10)式において、Ahys=1[Nm]、c=0.3と設定し、0[deg]から開始し、+50[deg]、−50[deg]の操舵をした場合の、ヒステリシス補正されたトルク信号Tref_cの特性例を示している。図11に示すように、ヒステリシス補正部240から出力されるトルク信号Tref_cは、0の原点→L1(細線)→L2(破線)→L3(太線)のようなヒステリシス特性を有している。
なお、ヒステリシス特性の出力幅を表す係数であるAhys及び丸みを表す係数であるcを、車速Vs及び操舵角θhの一方又は双方に応じて可変としても良い。
また、舵角速度ωhは、操舵角θhに対する微分演算により求めているが、高域のノイズの影響を低減するために適度にローパスフィルタ(LPF)処理を実施している。また、ハイパスフィルタ(HPF)とゲインにより、微分演算とLPFの処理を実施しても良い。更に、舵角速度ωhは、操舵角θhではなく、上側角度センサが検出するハンドル角θ1又は下側角度センサが検出するコラム角θ2に対して微分演算とLPFの処理を行って算出しても良い。舵角速度ωhの代わりにモータ角速度ωmを角速度情報として使用しても良く、この場合、微分部220は不要となる。
図8に戻り、乗算部211は、基本マップ部210から出力されるトルク信号Tref_a0に対して、符号抽出部213から出力される操舵角θhの符号を乗算し、トルク信号Tref_aとして加算部261に出力する。これにより、正負の操舵角θhに応じたトルク信号Tref_aが得られる。
上述のように求められたトルク信号Tref_a、トルク信号Tref_b、及びトルク信号Tref_cは、加算部261,262で加算され、トルク信号Tref_eが得られる。
本実施形態におけるトルク信号Tref_aが、本開示の「第1トルク信号」に対応する。また、本実施形態におけるトルク信号Tref_eが、本開示の「第2トルク信号」に対応する。
図12は、操舵反力補正部の一構成例を示すブロック図である。図12に示すように、操舵反力補正部280は、補正ゲイン生成部281、補正トルクマップ282、符号抽出部283、及び乗算部284を備えている。
操舵反力補正部280には、操舵角θh及び低速運転モード検知部15(図1参照)から出力される低速運転モード信号Pfが入力される。
ここで、「低速運転モード(第2モード)」について説明する。本実施形態において、「低速運転モード(第2モード)」とは、例えば、車両を駐車場に駐車する場合等、車両を所定の停車位置に移動させる際や、進入した袋小路から戻るために後退移動させる等、運転者が予め定められた所定の低速運転モード移行操作を行ったときに選択される運転モードである。つまり、本実施形態における低速運転モード(第2モード)は、上述したような所定の低速運転モード移行操作が行われた際に、車両を低速で移動させるための運転モードである。
低速運転モード検知部15は、運転者によって所定の低速運転モード移行操作が行われたことを検知して、低速運転モード信号Pfを出力する構成部である。低速運転モード検知部15は、例えば、車両のセンターコンソール等に具備される「パーキングボタン」が運転者によって押されたことを検知して、低速運転モード信号Pfを出力する態様であっても良い。また、低速運転モード検知部15は、例えば、車両のシフトノブを運転者が操作して、「リバース(後退)」、「パーキングF(前進)」、又は「パーキングB(後退)」のポジションが選択されたことを検知して、低速運転モード信号Pfを出力する態様であっても良い。ここで、「パーキングF(前進)」は、低速運転モード(第2モード)において前進する際に選択するポジションを示し、「パーキングB(後退)」は、低速運転モード(第2モード)において後退する際に選択するポジションを示している。運転者による低速運転モード(第2モード)の選択手段としては、上記以外の態様であっても良く、運転者による低速運転モード(第2モード)の選択手段により本発明が限定されるものではない。なお、以下の説明では、低速運転モード(第2モード)非選択時における通常の運転モードを「ドライブモード(第1モード)」とも称する。すなわち、本開示において、低速運転モード検知部15は、所定の低速運転モード移行操作を検知して、ドライブモード(第1モード)とは異なる低速運転モード(第2モード)と判定する「判定部」に対応する。
補正ゲイン生成部281は、低速運転モード(第2モード)において、低速運転モード信号Pfに応じた補正ゲインG(Gは、1未満の正の値)を出力する。具体的に、補正ゲイン生成部281は、低速運転モード(第2モード)において、例えば、補正ゲインG=0.3を出力する。また、補正ゲイン生成部281は、ドライブモード(第1モード)において、補正ゲインG=1を出力する。低速運転モード(第2モード)における補正ゲインGの値は一例であって、0.3に限るものではない。低速運転モード(第2モード)における補正ゲインGの値は、1未満の正の所定値とすることができる。
補正トルクマップ282には、操舵角θhの大きさ|θh|に応じた補正トルクが設定されている。補正トルクマップ282は、操舵角θhの大きさ|θh|に応じた補正トルク信号Tref_p0を出力する。
符号抽出部283は、操舵角θhの符号を抽出する。具体的には、例えば、操舵角θhの値を、操舵角θhの絶対値で除算する。これにより、符号抽出部283は、操舵角θhの符号が「+」の場合には「1」を出力し、操舵角θhの符号が「−」の場合には「−1」を出力する。
乗算部284は、補正トルクマップ282から出力される補正トルク信号Tref_p0に対して、符号抽出部283から出力される操舵角θhの符号を乗算し、補正トルク信号Tref_pとして出力する。これにより、正負の操舵角θhに応じた補正トルク信号Tref_pが得られる。
図13は、補正トルクマップの一例を示す図である。図13において、横軸は操舵角θhの絶対値|θh|を示し、縦軸はトルクを示している。
図13では、トルク信号Tref_a0の一例を破線で示し、補正トルク信号Tref_p0を実線で示している。なお、図13では操舵角θhの大きさ(絶対値)|θh|に応じたマップを構成しているが、正負の操舵角θhに応じたマップを構成しても良い。この場合、補正トルク信号Tref_p0の値は、正負の値を取り得る。補正トルクマップ282は、例えば、コントロールユニット30を構成する制御用コンピュータ1100のEEPROM1004等に記憶されていても良いし、操舵反力補正部280が保持する態様であっても良い。
図13に示すように、補正トルク信号Tref_p0は、操舵角θhの絶対値|θh|が閾値θh_th未満となる領域において、操舵角θhの絶対値|θh|の増加に伴い徐々に変化率が小さくなる曲線に沿って増加する特性を有する。また、図13に示すように、補正トルク信号Tref_p0は、操舵角θhの絶対値|θh|が閾値|θh_th|以上となる領域において一定値|Tc|となる。本実施形態において、補正トルク信号Tref_p0の操舵角θhの絶対値|θh|=0における傾きK2は、トルク信号Tref_a0の操舵角θhの絶対値|θh|=0における傾きK1よりも大きい値としている。閾値|θh_th|及び一定値|Tc|は任意の所定値とすることができる。
操舵反力補正部280は、低速運転モード信号Pfに応じた補正トルク信号Tref_pを出力する。操舵反力補正部280は、低速運転モード(第2モード)において、操舵角θhに応じた補正トルク信号Tref_pを出力する。また、操舵反力補正部280は、ドライブモード(第1モード)において、操舵角θhに依らず、補正トルク信号Tref_p=0を出力する。
図8に戻り、乗算部264は、加算部261から出力されるトルク信号Tref_eに対し、操舵反力補正部280から出力される補正ゲインGを乗算し、トルク信号Tref_fとして加算部265に出力する。加算部265は、乗算部264から出力されるトルク信号Tref_fに対し、操舵反力補正部280から出力される補正トルク信号Tref_pを加算して、目標操舵トルクTrefとして出力する。すなわち、目標操舵トルクTrefは、下記(11)式で表せる。
Tref=(Tref_e)×G+Tref_p
=Tref_f+Tref_p ・・・(11)
本実施形態におけるトルク信号Tref_fが、本開示の「第3トルク信号」に対応する。また、本実施形態における補正トルク信号Tref_pが、本開示の「第4トルク信号」に対応する。
図14は、目標操舵トルク生成部から出力される目標操舵トルクの一例を示す図である。図14において、横軸は操舵角θhを示し、縦軸はトルクを示している。
図14では、ドライブモードにおける目標操舵トルクの一例を破線で示し、低速運転モードにおける目標操舵トルクを実線で示している。
ドライブモード(第1モード)では、上述したように、トルク信号Tref_e(第2トルク信号)に対して、補正ゲインG=1を乗じ、補正トルク信号Tref_p(第4トルク信号)=0を加算する。これにより、目標操舵トルクTref=トルク信号Tref_e(第2トルク信号)となり、ドライブモード(第1モード)に適した目標操舵トルクTrefを得ることができる。
低速運転モード(第2モード)では、上述したように、トルク信号Tref_e(第2トルク信号)に対し、1未満の正の補正ゲインG(例えば、G=0.3)を乗じてトルク信号Tref_f(第3トルク信号)を生成し、さらに、トルク信号Tref_f(第3トルク信号)に対し、トルク信号Tref_a(第1トルク信号)よりも操舵角θhの絶対値|θh|=0における傾きが大きい補正トルク信号Tref_p(第4トルク信号)を加算して、目標操舵トルクTrefを生成する。これにより、図14に示すように、低速運転モード(第2モード)では、ドライブモード(第1モード)よりも目標操舵トルクTrefを小さくすることができ、ハンドル1の操作を軽くすることができる。また、図14に示すように、操舵角θhが0前後の所定領域(図14中において一点鎖線で示した領域)では、操舵角θhの変化に対して操舵力の変化を大きくすることができる。換言すれば、ハンドル1の操舵角θhの絶対値|θh|がゼロ以上となる所定領域において、低速運転モード(第2モード)における目標操舵トルクTrefの変化率がドライブモード(第1モード)以上となり、所定領域以外の領域において、低速運転モード(第2モード)における目標操舵トルクTrefの変化率がドライブモード(第1モード)よりも小さくなる。これにより、運転者は、舵角ゼロを認識し易くなる。このため、運転者の負担を軽減することができ、操舵感を向上することができる。
なお、図8に示す例では、トルク信号Tref_a(第1トルク信号)、トルク信号Tref_b、及びトルク信号Tref_cを加算して得たトルク信号Tref_e(第2トルク信号)に対し、補正ゲインGを乗じて、トルク信号Tref_f(第3トルク信号)を生成する例を示したが、トルク信号Tref_a(第1トルク信号)、トルク信号Tref_b、トルク信号Tref_cのそれぞれに対して、それぞれ1未満の個別の補正ゲインGを乗じた後に加算して、トルク信号Tref_f(第3トルク信号)を生成する態様であっても良い。
以下、実施形態1の捩れ角制御部300(図5参照)について、図15を参照して説明する。
図15は、実施形態1の捩れ角制御部の一構成例を示すブロック図である。捩れ角制御部300は、目標捩れ角Δθref、捩れ角Δθ、操舵角θh及びモータ角速度ωmに基づいてモータ電流指令値Irefを演算する。捩れ角制御部300は、捩れ角フィードバック(FB)補償部310、速度制御部330、安定化補償部340、出力制限部350、舵角外乱補償部360、減算部361、加算部363、及び減速比部370を備えている。
変換部500から出力される目標捩れ角Δθrefは、減算部361に加算入力される。捩れ角Δθは、減算部361に減算入力される。操舵角θhは、舵角外乱補償部360に入力される。モータ角速度ωmは、安定化補償部340に入力される。
捩れ角FB補償部310は、減算部361で算出される目標捩れ角Δθrefと捩れ角Δθの偏差Δθ0に対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθが追従するような目標コラム角速度ωref1を出力する。目標コラム角速度ωref1は、加算部363に加算出力される。補償値CFBは、単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。
舵角外乱補償部360は、操舵角θhに対して補償値Ch(伝達関数)を乗算し、目標コラム角速度ωref2を出力する。目標コラム角速度ωref2は、加算部363に加算出力される。
加算部363は、目標コラム角速度ωref1と目標コラム角速度ωref2とを加算し、目標コラム角速度ωrefとして速度制御部330に出力する。これにより、運転者から入力される操舵角θhの変化による、トーションバー捩れ角Δθへの影響を抑制し、急操舵に対する目標捩れ角Δθrefへの捩れ角Δθの追従性を向上することができる。
運転者の操舵により操舵角θhが変化すると、操舵角θhの変化が外乱として捩れ角Δθに影響してしまい、目標捩れ角Δθrefに対してずれが発生する。特に、急な操舵に対しては、操舵角θhの変化による目標捩れ角Δθrefに対するずれが顕著に出てしまう。舵角外乱補償部360の基本的な目的は、この外乱としての操舵角θhの影響を低減させることである。
速度制御部330は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標コラム角速度ωrefにコラム角速度ωcが追従するようなモータ電流指令値Isを算出する。コラム角速度ωcは、図15のように、モータ角速度ωmに減速機構である減速比部370の減速比1/Nを乗算した値としても良い。
減算部333は、目標コラム角速度ωrefとコラム角速度ωcとの差分(ωref−ωc)を算出する。積分部331は、目標コラム角速度ωrefとコラム角速度ωcとの差分(ωref−ωc)を積分し、積分結果を減算部334に加算入力する。
捩れ角速度ωtは、比例部332にも出力される。比例部332は、コラム角速度ωcに対してゲインKvpによる比例処理を行い、比例処理結果を減算部334に減算入力する。減算部334での減算結果は、モータ電流指令値Isとして出力される。なお、速度制御部330は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Isを算出しても良い。
出力制限部350は、モータ電流指令値Isに対する上限値及び下限値が予め設定されている。モータ電流指令値Isの上下限値を制限して、モータ電流指令値Irefを出力する。
なお、本実施形態における捩れ角制御部300の構成は一例であり、図15に示す構成とは異なる態様であっても良い。例えば、捩れ角制御部300は、舵角外乱補償部360及び加算部363や、減速比部370を具備しない構成であっても良い。
(実施形態2)
図16は、実施形態2に係るコントロールユニットの内部ブロック構成の一例を示す図である。なお、上述した実施形態1で説明した構成と同じ構成部には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態2に係るコントロールユニット(ECU)30aは、目標操舵トルク生成部201及び捩れ角制御部300aの構成が実施形態1とは異なる。
目標操舵トルク生成部201には、操舵角θh、車速Vs、車速判定信号Vfailに加え、操舵トルクTs及びモータ角θmが入力される。
捩れ角制御部300aは、捩れ角Δθが目標捩れ角Δθrefとなるようなモータ電流指令値Imcを演算する。モータ20は、モータ電流指令値Imcにより駆動される。
図17は、実施形態2の目標操舵トルク生成部の一構成例を示すブロック図である。図17に示すように、実施形態2の目標操舵トルク生成部201は、実施形態1において説明した構成に加え、SAT情報補正部250及び加算部263を備える。
SAT情報補正部250には、操舵角θh、車速Vs、操舵トルクTs、モータ角θm及びモータ電流指令値Imcが入力される。SAT情報補正部250は、操舵トルクTs、モータ角θm及びモータ電流指令値Imcに基づいてセルフアライニングトルク(SAT)を算出し、更にフィルタ処理、ゲイン乗算及び制限処理を施して、トルク信号Tref_dを演算する。
図18は、SAT情報補正部の一構成例を示すブロック図である。SAT情報補正部250は、SAT算出部251、フィルタ部252、操舵トルク感応ゲイン部253、車速感応ゲイン部254、舵角感応ゲイン部255、及び制限部256を備える。
ここで、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子について、図19を参照して説明する。図19は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を示すイメージ図である。
運転者がハンドルを操舵することによって操舵トルクTsが発生し、その操舵トルクTsに従ってモータ20がアシストトルク(モータトルク)Tmを発生する。その結果、車輪が転舵され、反力としてセルフアライニングトルクTSATが発生する。その際、コラム軸換算慣性(モータ20(のロータ)、減速機構等によりコラム軸に作用する慣性)J及び摩擦(静摩擦)Frによってハンドル操舵の抵抗となるトルクが生じる。更に、モータ20の回転速度により、ダンパ項(ダンパ係数DM)として表現される物理的なトルク(粘性トルク)が発生する。これらの力の釣り合いから、下記(12)式に示す運動方程式が得られる。
J×αM+Fr×sign(ωM)+DM×ωM=Tm+Ts+TSAT・・・(12)
上記(12)式において、ωMはコラム軸換算(コラム軸に対する値に変換)されたモータ角速度であり、αMはコラム軸換算されたモータ角加速度である。そして、上記(12)式をTSATについて解くと、下記(13)式が得られる。
TSAT=−Tm−Ts+J×αM+Fr×sign(ωM)+DM×ωM・・・(13)
上記(13)式からわかるように、コラム軸換算慣性J、静摩擦Fr及びダンパ係数DMを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωM、モータ角加速度αM、アシストトルクTm及び操舵トルクTsよりセルフアライニングトルクTSATを算出することができる。なお、コラム軸換算慣性Jは、簡易的にモータ慣性と減速比の関係式を用いてコラム軸に換算した値でも良い。
SAT算出部251には、操舵トルクTs、モータ角θm、及びモータ電流指令値Imcが入力される。SAT算出部251は、上記(13)式を用いて、セルフアライニングトルクTSATを算出する。SAT算出部251は、換算部251A、角速度演算部251B、角加速度演算部251C、ブロック251D、ブロック251E、ブロック251F、ブロック251G、及び加算器251H,251I,251Jを備える。
換算部251Aには、モータ電流指令値Imcが入力される。換算部251Aは、予め定められたギア比及びトルク定数を乗算することにより、コラム軸換算されたアシストトルクTmを算出する。
角速度演算部251Bには、モータ角θmが入力される。角速度演算部251Bは、微分処理及びギア比の乗算により、コラム軸換算されたモータ角速度ωMが算出される。
角加速度演算部251Cには、モータ角速度ωMが入力される。角加速度演算部251Cは、モータ角速度ωMを微分し、コラム軸換算されたモータ角加速度αMを算出する。
そして、入力された操舵トルクTs並びに算出された上記アシストトルクTm、モータ角速度ωM及びモータ角加速度αMを用いて、ブロック251D、ブロック251E、ブロック251F、ブロック251G、及び加算器251H,251I,251Jにより、数8に基づいて、図18に示されるような構成によりセルフアライニングトルクTSATが算出される。
ブロック251Dには、角速度演算部251Bから出力されたモータ角速度ωMが入力される。ブロック251Dは、符号関数として機能し、入力データの符号を出力する。
ブロック251Eには、角速度演算部251Bから出力されたモータ角速度ωMが入力される。ブロック251Eは、入力データにダンパ係数DMを乗算して出力する。
ブロック251Fは、ブロック251Dからの入力データに静摩擦Frを乗算して出力する。
ブロック251Gには、角加速度演算部251Cから出力されたモータ角加速度αMが入力される。ブロック251Gは、入力データにコラム軸換算慣性Jを乗算して出力する。
加算器251Hは、操舵トルクTsと換算部251Aから出力されるアシストトルクTmとを加算する。
加算器251Iは、加算器251Hの出力からブロック251Gの出力を減算する。
加算器251Jは、ブロック251Eの出力とブロック251Fの出力とを加算し、加算器251Iの出力を減算する。
上記構成により、上記(13)式を実現することができる。すなわち、図18に示すSAT算出部251の構成により、セルフアライニングトルクTSATが算出される。
なお、コラム角が直接検出可能な場合は、モータ角θmの代わりにコラム角を角度情報として使用しても良い。この場合、コラム軸換算は不要となる。また、モータ角θmではなく、EPS操舵系/車両系100からのモータ角速度ωmをコラム軸換算した信号をモータ角速度ωMとして入力し、モータ角θmに対する微分処理を省略しても良い。更に、セルフアライニングトルクTSATは、上記以外の方法で算出しても良く、算出値ではなく、測定値を使用しても良い。
SAT算出部251にて算出されたセルフアライニングトルクTSATを活用し運転者に操舵感として適切に伝えるために、フィルタ部252により、伝えたい情報をセルフアライニングトルクTSATから抽出し、操舵トルク感応ゲイン部253、車速感応ゲイン部254及び舵角感応ゲイン部255により伝える量を調整し、更に、制限部256により上下限値を調整する。なお、本開示において、SAT算出部251にて算出されるセルフアライニングトルクTSATは、目標操舵トルク生成部201にも出力される。
フィルタ部252には、SAT算出部251からセルフアライニングトルクTSATが入力される。フィルタ部252は、例えばバンドバスフィルタにより、セルフアライニングトルクTSATに対してフィルタ処理を行い、SAT情報TST1を出力する。
操舵トルク感応ゲイン部253には、フィルタ部252から出力されるSAT情報TST1及び操舵トルクTsが入力される。操舵トルク感応ゲイン部253は、操舵トルク感応ゲインを設定する。
図20は、操舵トルク感応ゲインの特性例を示す図である。図20に示されるように、操舵トルク感応ゲイン部253は、直進走行状態であるオンセンタ近辺で感度が高くなるように、操舵トルク感応ゲインを設定する。操舵トルク感応ゲイン部253は、操舵トルクTsに応じて設定される操舵トルク感応ゲインをSAT情報TST1に乗算し、SAT情報TST2を出力する。
図20において、操舵トルク感応ゲインは、操舵トルクTsがTs1(例えば2Nm)以下では1.0で固定とし、操舵トルクTsがTs2(>Ts1)(例えば4Nm)以上では1.0より小さい値で固定とし、操舵トルクTsがTs1とTs2の間では一定の割合で減少するように設定した例を示している。
車速感応ゲイン部254には、操舵トルク感応ゲイン部253から出力されるSAT情報TST2及び車速Vsが入力される。車速感応ゲイン部254は、車速感応ゲインを設定する。
図21は、車速感応ゲインの特性例を示す図である。図21に示されるように、車速感応ゲイン部254は、高速走行時の感度が高くなるように、車速感応ゲインを設定する。車速感応ゲイン部254は、車速Vsに応じて設定される車速感応ゲインをSAT情報TST2に乗算し、SAT情報TST3を出力する。
図21において、車速感応ゲインは、車速VsがVs2(例えば70km/h)以上では1.0で固定とし、車速VsがVs1(<Vs2)(例えば50km/h)以下では1.0より小さい値で固定とし、車速VsがVs1とVs2の間では一定の割合で増加するように設定した例を示している。
舵角感応ゲイン部255には、車速感応ゲイン部254から出力されるSAT情報TST3及び操舵角θhが入力される。舵角感応ゲイン部255は、舵角感応ゲインを設定する。
図22は、舵角感応ゲインの特性例を示す図である。図22に示されるように、舵角感応ゲイン部255は、所定の操舵角から作用し始め、操舵角が大きい時の感度が高くなるように、舵角感応ゲインを設定する。舵角感応ゲイン部255は、操舵角θhに応じて設定される舵角感応ゲインをSAT情報TST3に乗算し、トルク信号Tref_d0を出力する。
図22において、舵角感応ゲインは、操舵角θhがθh1(例えば10deg)以下では所定のゲイン値Gαで、操舵角θhがθh2(例えば30deg)以上では1.0で固定とし、操舵角θhがθh1とθh2の間では一定の割合で増加するように設定した例を示している。操舵角θhが大きいときの感度を高くしたい場合は、Gαを0≦Gα<1の範囲に設定すれば良い。操舵角θhが小さいときの感度を高くしたい場合は、図示していないが、Gαを1<Gαの範囲に設定すれば良い。操舵角θhによる感度を変えたくない場合は、Gα=1として設定すれば良い。
制限部256には、舵角感応ゲイン部255から出力されるトルク信号Tref_d0が入力される。制限部256は、トルク信号Tref_d0の上限値及び下限値が設定されている。
図23は、制限部におけるトルク信号の上限値及び下限値の設定例を示す図である。図23に示されるように、制限部256は、トルク信号Tref_d0に対する上限値及び下限値が予め設定され、入力するトルク信号Tref_d0が、上限値以上の場合は上限値を、下限値以下の場合は下限値を、それ以外の場合はトルク信号Tref_d0を、トルク信号Tref_dとして出力する。
なお、操舵トルク感応ゲイン、車速感応ゲイン、及び舵角感応ゲインは、図20、図21、及び図22に示されるような直線的な特性ではなく、曲線的な特性でも良い。また、操舵トルク感応ゲイン、車速感応ゲイン、及び舵角感応ゲインは、操舵フィーリングに応じて設定を適宜調整しても良い。また、トルク信号の大きさが増大するおそれがない場合や他の手段で抑制する場合等では、制限部256を削除しても良い。操舵トルク感応ゲイン部253、車速感応ゲイン部254、及び舵角感応ゲイン部255についても、適宜、省略可能である。また、操舵トルク感応ゲイン、車速感応ゲイン、及び舵角感応ゲインの設置位置を入れ替えても良い。また、例えば、操舵トルク感応ゲイン、車速感応ゲイン、及び舵角感応ゲインを並列に求め、1つの構成部でSAT情報TST1に乗算する態様であっても良い。
すなわち、本実施形態におけるSAT情報補正部250の構成は一例であり、図18に示す構成とは異なる態様であっても良い。
本実施形態においても、上述した実施形態1において説明した操舵反力補正部280を目標操舵トルク生成部201に備えた構成とすることで、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
具体的に、トルク信号Tref_a(第1トルク信号)、トルク信号Tref_b、トルク信号Tref_c、及びトルク信号Tref_dは、加算部261,262,263で加算され、トルク信号Tref_e(第2トルク信号)が得られる。
また、乗算部264は、加算部261から出力されるトルク信号Tref_e(第2トルク信号)に対し、操舵反力補正部280から出力される補正ゲインGを乗算し、トルク信号Tref_f(第3トルク信号)として加算部265に出力する。加算部265は、乗算部264から出力されるトルク信号Tref_f(第3トルク信号)に対し、操舵反力補正部280から出力される補正トルク信号Tref_p(第4トルク信号)を加算して、目標操舵トルクTrefとして出力する。
ドライブモード(第1モード)では、実施形態1と同様に、トルク信号Tref_e(第2トルク信号)に対して、補正ゲインG=1を乗じ、補正トルク信号Tref_p(第4トルク信号)=0を加算する。これにより、目標操舵トルクTref=トルク信号Tref_e(第2トルク信号)となり、ドライブモード(第1モード)に適した目標操舵トルクTrefを得ることができる。
低速運転モード(第2モード)では、実施形態1と同様に、トルク信号Tref_e(第2トルク信号)に対し、1未満の正の補正ゲインG(例えば、G=0.3)を乗じてトルク信号Tref_f(第3トルク信号)を生成し、さらに、トルク信号Tref_f(第3トルク信号)に対し、トルク信号Tref_a(第1トルク信号)よりも操舵角θhの絶対値|θh|=0における傾きが大きい補正トルク信号Tref_p(第4トルク信号)を加算して、目標操舵トルクTrefを生成する。これにより、実施形態1と同様に、ドライブモード(第1モード)よりも目標操舵トルクTrefを小さくすることができ、ハンドル1の操作を軽くすることができる。また、実施形態1と同様に、操舵角θhが0前後の領域(図14中において一点鎖線で示した領域)では、操舵角θhの変化に対して操舵力の変化を大きくすることができ、舵角ゼロを認識し易くなる。これにより、運転者の負担を軽減することができ、操舵感を向上することができる。
以下、実施形態2の捩れ角制御部300aについて、図24を参照して説明する。
図24は、実施形態2の捩れ角制御部の一構成例を示すブロック図である。捩れ角制御部300aは、目標捩れ角Δθref、捩れ角Δθ及びモータ角速度ωmに基づいてモータ電流指令値Imcを演算する。捩れ角制御部300aは、捩れ角フィードバック(FB)補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、安定化補償部340、出力制限部350、減算部361及び加算部362を備えている。
変換部500から出力される目標捩れ角Δθrefは、減算部361に加算入力される。捩れ角Δθは、減算部361に減算入力されると共に、捩れ角速度演算部320に入力される。モータ角速度ωmは、安定化補償部340に入力される。
捩れ角FB補償部310は、減算部361で算出される目標捩れ角Δθrefと捩れ角Δθの偏差Δθ0に対して補償値CFB(伝達関数)を乗算し、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθが追従するような目標捩れ角速度ωrefを出力する。補償値CFBは、単純なゲインKppでも、PI制御の補償値など一般的に用いられている補償値でも良い。
目標捩れ角速度ωrefは、速度制御部330に入力される。捩れ角FB補償部310及び速度制御部330により、目標捩れ角Δθrefに捩れ角Δθを追従させ、所望の操舵トルクを実現することが可能となる。
捩れ角速度演算部320は、捩れ角Δθに対して微分演算処理を行い、捩れ角速度ωtを算出する。捩れ角速度ωtは、速度制御部330に出力される。捩れ角速度演算部320は、微分演算として、HPFとゲインによる擬似微分を行なっても良い。また、捩れ角速度演算部320は、捩れ角速度ωtを別の手段や捩れ角Δθ以外から算出し、速度制御部330に出力するようにしても良い。
速度制御部330は、I−P制御(比例先行型PI制御)により、目標捩れ角速度ωrefに捩れ角速度ωtが追従するようなモータ電流指令値Imca1を算出する。
減算部333は、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を算出する。積分部331は、目標捩れ角速度ωrefと捩れ角速度ωtとの差分(ωref−ωt)を積分し、積分結果を減算部334に加算入力する。
捩れ角速度ωtは、比例部332にも出力される。比例部332は、捩れ角速度ωtに対してゲインKvpによる比例処理を行い、比例処理結果を減算部334に減算入力する。減算部334での減算結果は、モータ電流指令値Imca1として出力される。なお、速度制御部330は、I−P制御ではなく、PI制御、P(比例)制御、PID(比例積分微分)制御、PI−D制御(微分先行型PID制御)、モデルマッチング制御、モデル規範制御等の一般的に用いられている制御方法でモータ電流指令値Imca1を算出しても良い。
安定化補償部340は、補償値Cs(伝達関数)を有しており、モータ角速度ωmからモータ電流指令値Imca2を算出する。追従性及び外乱特性を向上させるために、捩れ角FB補償部310及び速度制御部330のゲインを上げると、高域の制御的な発振現象が発生してしまう。この対策として、モータ角速度ωmに対し、安定化するために必要な伝達関数(Cs)を安定化補償部340に設定する。これにより、EPS制御システム全体の安定化を実現することができる。
加算部362は、速度制御部330からのモータ電流指令値Imca1と安定化補償部340からのモータ電流指令値Imca2とを加算し、モータ電流指令値Imcbとして出力する。
出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbに対する上限値及び下限値が予め設定されている。出力制限部350は、モータ電流指令値Imcbの上下限値を制限して、モータ電流指令値Imcを出力する。
なお、本実施形態における捩れ角制御部300aの構成は一例であり、図24に示す構成とは異なる態様であっても良い。例えば、捩れ角制御部300aは、安定化補償部340を具備しない構成であっても良い。
(実施形態3)
実施形態1,2では、車両用操向装置の1つとして、本開示をコラム型EPSに適用しているが、本開示はコラム型等の上流型に限られず、ラック&ピニオン等の下流型EPSにも適用可能である。更に、目標捩れ角に基づくフィードバック制御を行うということでは、トーションバー(バネ定数任意)及び捩れ角検出用のセンサを少なくとも備えるステアバイワイヤ(SBW)反力装置等にも適用可能である。本開示を、トーションバーを備えたSBW反力装置に適用した場合の実施形態(実施形態3)について説明する。
まずは、SBW反力装置を含むSBWシステム全体について説明する。図25は、SBWシステムの構成例を、図1に示される電動パワーステアリング装置の一般的な構成に対応させて示した図である。なお、上述した実施形態1,2で説明した構成と同一構成には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
SBWシステムは、図1におけるユニバーサルジョイント4aにてコラム軸2と機械的に結合されるインターミディエイトシャフトがなく、ハンドル1の操作を電気信号によって操向車輪8L,8R等からなる転舵機構に伝えるシステムである。図25に示されるように、SBWシステムは反力装置60及び駆動装置70を備え、コントロールユニット(ECU)50が両装置の制御を行う。反力装置60は、舵角センサ14にて操舵角θhの検出を行うと同時に、操向車輪8L,8Rから伝わる車両の運動状態を反力トルクとして運転者に伝達する。反力トルクは、反力用モータ61により生成される。なお、本開示では、トルクセンサ10にて操舵トルクTsを検出するが、これに限定されない。また、角度センサ74が、反力用モータ61のモータ角θmを検出する。駆動装置70は、運転者によるハンドル1の操舵に合わせて、駆動用モータ71を駆動し、その駆動力を、ギア72を介してピニオンラック機構5に付与し、タイロッド6a,6bを経て、操向車輪8L,8Rを転舵する。ピニオンラック機構5の近傍には角度センサ73が配置されており、操向車輪8L,8Rの転舵角θtを検出する。ECU50は、反力装置60及び駆動装置70を協調制御するために、両装置から出力される操舵角θhや転舵角θt等の情報に加え、車速センサ12からの車速Vs等を基に、反力用モータ61を駆動制御する電圧制御指令値Vref1及び駆動用モータ71を駆動制御する電圧制御指令値Vref2を生成する。
このようなSBWシステムに本開示を適用した実施形態3の構成について説明する。
図26は、実施形態3の構成を示すブロック図である。実施形態3は、捩れ角Δθに対する制御(以下、「捩れ角制御」とする)と、転舵角θtに対する制御(以下、「転舵角制御」とする)を行い、反力装置を捩れ角制御で制御し、駆動装置を転舵角制御で制御する。なお、駆動装置は他の制御方法で制御しても良い。
捩れ角制御では、実施形態2と同様の構成及び動作により、捩れ角Δθが、操舵角θh等を用いて目標操舵トルク生成部202及び変換部500を経て算出される目標捩れ角Δθrefに追従するような制御を行う。モータ角θmは角度センサ74で検出され、モータ角速度ωmは、角速度演算部951にてモータ角θmを微分することにより算出される。転舵角θtは角度センサ73で検出される。また、実施形態1ではEPS操舵系/車両系100内の処理として詳細な説明は行われていないが、電流制御部130は、図3に示される減算部32B、PI制御部35、PWM制御部36及びインバータ回路37と同様の構成及び動作により、捩れ角制御部300aから出力されるモータ電流指令値Imc及びモータ電流検出器140で検出される反力用モータ61の電流値Imrに基づいて、反力用モータ61を駆動して、電流制御を行う。
転舵角制御では、目標転舵角生成部910にて操舵角θhに基づいて目標転舵角θtrefが生成され、目標転舵角θtrefは転舵角θtと共に転舵角制御部920に入力され、転舵角制御部920にて、転舵角θtが目標転舵角θtrefとなるようなモータ電流指令値Imctが演算される。そして、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出される駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、電流制御部930が、電流制御部130と同様の構成及び動作により、駆動用モータ71を駆動して、電流制御を行う。なお、本開示において、転舵角制御部920にて算出されるモータ電流指令値Imctは、目標操舵トルク生成部202にも出力される。
図27は、目標転舵角生成部の構成例示す図である。目標転舵角生成部910は、制限部931、レート制限部932及び補正部933を備える。
制限部931は、操舵角θhの上下限値を制限して、操舵角θh1を出力する。図24に示す捩れ角制御部300a内の出力制限部350と同様に、操舵角θhに対する上限値及び下限値を予め設定して制限をかける。
レート制限部932は、操舵角の急変を回避するために、操舵角θh1の変化量に対して制限値を設定して制限をかけ、操舵角θh2を出力する。例えば、1サンプル前の操舵角θh1からの差分を変化量とし、その変化量の絶対値が所定の値(制限値)より大きい場合、変化量の絶対値が制限値となるように、操舵角θh1を加減算し、操舵角θh2として出力し、制限値以下の場合は、操舵角θh1をそのまま操舵角θh2として出力する。なお、変化量の絶対値に対して制限値を設定するのではなく、変化量に対して上限値及び下限値を設定して制限をかけるようにしても良く、変化量ではなく変化率や差分率に対して制限をかけるようにしても良い。
補正部933は、操舵角θh2を補正して、目標転舵角θtrefを出力する。例えば、操舵角θh2の大きさ|θh2|に対する目標転舵角θtrefの特性を定義したマップを用いて、操舵角θh2より目標転舵角θtrefを求める。或いは、単純に、操舵角θh2に所定のゲインを乗算することにより、目標転舵角θtrefを求めるようにしても良い。
図28は、転舵角制御部の構成例を示す図である。転舵角制御部920は、図24に示される捩れ角制御部300aの構成例において安定化補償部340及び加算部362を除いた構成と同様の構成をしており、目標捩れ角Δθref及び捩れ角Δθの代わりに目標転舵角θtref及び転舵角θtを入力し、転舵角フィードバック(FB)補償部921、転舵角速度演算部922、速度制御部923、出力制限部926及び減算部927が、それぞれ捩れ角FB補償部310、捩れ角速度演算部320、速度制御部330、出力制限部350及び減算部361と同様の構成で同様の動作を行う。
このような構成において、実施形態3の動作例を、図29のフローチャートを参照して説明する。図29は、実施形態3の動作例を示すフローチャートである。
動作を開始すると、角度センサ73は転舵角θtを検出し、角度センサ74はモータ角θmを検出し(ステップS110)、転舵角θtは転舵角制御部920に、モータ角θmは角速度演算部951にそれぞれ入力される。
角速度演算部951は、モータ角θmを微分してモータ角速度ωmを算出し、捩れ角制御部300aに出力する(ステップS120)。
その後、目標操舵トルク生成部202において、図7に示されるステップS10〜S40と同様の動作を実行し、反力用モータ61を駆動し、電流制御を実施する(ステップS130〜S160)。
一方、転舵角制御においては、目標転舵角生成部910が操舵角θhを入力し、操舵角θhは制限部931に入力される。制限部931は、予め設定された上限値及び下限値により操舵角θhの上下限値を制限し(ステップS170)、操舵角θh1としてレート制限部932に出力する。レート制限部932は、予め設定された制限値により操舵角θh1の変化量に対して制限をかけ(ステップS180)、操舵角θh2として補正部933に出力する。補正部933は、操舵角θh2を補正して目標転舵角θtrefを求め(ステップS190)、転舵角制御部920に出力する。
転舵角θt及び目標転舵角θtrefを入力した転舵角制御部920は、減算部927にて目標転舵角θtrefから転舵角θtを減算することにより、偏差Δθt0を算出する(ステップS200)。偏差Δθt0は転舵角FB補償部921に入力され、転舵角FB補償部921は、偏差Δθt0に補償値を乗算することにより偏差Δθt0を補償し(ステップS210)、目標転舵角速度ωtrefを速度制御部923に出力する。転舵角速度演算部922は転舵角θtを入力し、転舵角θtに対する微分演算により転舵角速度ωttを算出し(ステップS220)、速度制御部923に出力する。速度制御部923は、速度制御部330と同様にI−P制御によりモータ電流指令値Imctaを算出し(ステップS230)、出力制限部926に出力する。出力制限部926は、予め設定された上限値及び下限値によりモータ電流指令値Imctaの上下限値を制限し(ステップS240)、モータ電流指令値Imctとして出力する(ステップS250)。
モータ電流指令値Imctは電流制御部930に入力され、電流制御部930は、モータ電流指令値Imct及びモータ電流検出器940で検出された駆動用モータ71の電流値Imdに基づいて、駆動用モータ71を駆動し、電流制御を実施する(ステップS260)。
なお、図29におけるデータ入力及び演算等の順番は適宜変更可能である。また、転舵角制御部920内の速度制御部923は、捩れ角制御部300a内の速度制御部330と同様に、I−P制御ではなく、PI制御、P制御、PID制御、PI−D制御等、実現可能で、P、I及びDのいずれかの制御を用いていれば良く、更に、転舵角制御部920及び捩れ角制御部300aでの追従制御は、一般的に用いられている制御構造で行っても良い。転舵角制御部920については、目標角度(ここでは目標転舵角θtref)に対して実角度(ここでは転舵角θt)が追従する制御構成であれば、車両用装置に用いられている制御構成に限定されず、例えば、産業用位置決め装置や産業用ロボット等に用いられている制御構成を適用しても良い。
実施形態3では、図25に示されるように、1つのECU50で反力装置60及び駆動装置70の制御を行っているが、反力装置60用のECUと駆動装置70用のECUをそれぞれ設けても良い。この場合、ECU同士は通信によりデータの送受信を行うことになる。また、図25に示されるSBWシステムは反力装置60と駆動装置70の間には機械的な結合を持たないが、システムに異常が発生した場合に、コラム軸2と転舵機構をクラッチ等で機械的に結合する機械的トルク伝達機構を備えるSBWシステムにも、本開示は適用可能である。このようなSBWシステムでは、システム正常時はクラッチをオフにして機械的トルク伝達を開放状態とし、システム異常時はクラッチをオンにして機械的トルク伝達を可能状態とする。
上述の実施形態1から3での捩れ角制御部300,300aは、直接的にモータ電流指令値Imc及びアシスト電流指令値Iacを演算しているが、それらを演算する前に、先ず出力したいモータトルク(目標トルク)を演算してから、モータ電流指令値及びアシスト電流指令値を演算するようにしても良い。この場合、モータトルクからモータ電流指令値及びアシスト電流指令値を求めるには、一般的に用いられている、モータ電流とモータトルクの関係を使用する。
本実施形態においても、上述した実施形態1において説明した操舵反力補正部280を目標操舵トルク生成部202に備えた構成とすることで、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、上述で使用した図は、本開示に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本開示の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。また、ハンドルと、モータ又は反力モータの間に任意のバネ定数を有する機構であれば、トーションバーに限定しなくても良い。